JP5535129B2 - 光ファイバの製造方法 - Google Patents

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本発明は、ガラス光ファイバに被覆を形成した光ファイバの製造方法に関するものである。
光ファイバは、ガラスからなる光ファイバ母材の一端を線引炉にて加熱溶融し、この一端からガラス光ファイバを線引きし、線引きしたガラス光ファイバの外周に樹脂からなる被覆を形成することによって製造される。
光ファイバの被覆は、一般的に以下のように形成される。まず、紫外線硬化型樹脂(以下、適宜、樹脂と記載する)が溜められた樹脂塗布ダイスにガラス光ファイバを通過させ、樹脂を塗布する。つぎに、樹脂を塗布したガラス光ファイバを被覆形成装置に通過させる。
被覆形成装置は、たとえば石英ガラスからなり、紫外線を透過する透明管と、この透明管の外周に配置された紫外線源とを備えている。そして、この被覆形成装置の透明管内に、樹脂を塗布したガラス光ファイバを通過させながら、透明管の周囲から紫外線源によって紫外線を照射することによって樹脂を硬化させ、被覆を形成する。
ここで、紫外線硬化型樹脂は、一般に酸素濃度が高い雰囲気下で硬化させると、酸素と反応して硬化が不十分となり、品質の低い被覆となる。これを防ぐために、不活性ガス雰囲気下で樹脂に紫外線を照射する技術が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
一方、樹脂を硬化する工程において、樹脂の一部の成分は、樹脂が硬化する際に発生する反応熱や照射される光エネルギーの吸収による発熱によって揮発し、透明管の内面に付着する。透明管の内面に付着した樹脂成分は、紫外線照射により変質して透明管を曇らせる。すると、この曇りによって樹脂に到達する紫外線の量が減少するため、ガラス光ファイバに塗布された樹脂の硬化が不十分となり、品質の低い被覆となる。
これを防ぐために、特許文献2には、透明管内においてガラス光ファイバが走行している走行領域に不活性ガスを供給するとともに、透明管内の走行領域の周囲には酸素を含むガスを供給し、不活性ガスの流れと酸素を含むガスの流れとの二層流を形成して、樹脂を十分に硬化させる技術が開示されている。
特開平6−211545号公報 特開2005−224689号公報 特開2007−261919号公報
しかしながら、特許文献2に開示された方法は、不活性ガスと酸素を含むガスとの二層流を安定して形成するために複雑な装置構成を用いる必要があり、かつ各ガスの流速や排気量を厳密に制御する必要があるという問題がある。また、特許文献2に開示された方法を用いても、透明管内面の曇りは防止されるものの、製造された光ファイバにおいて樹脂の硬化が不十分となる場合があるという問題がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、樹脂が十分に硬化された良質な被覆を有する光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ファイバの製造方法は、走行するガラス光ファイバの外周に紫外線硬化型の樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、前記樹脂を塗布した直後のガラス光ファイバを不活性ガス雰囲気下に通過させ、該樹脂の表面近傍に該不活性ガスからなる随伴流を形成する随伴流形成工程と、前記随伴流を伴うガラス光ファイバを、1.8m/s以上の流速で排気した紫外線透過管内に通過させながら、前記随伴流に覆われた樹脂に紫外線を照射して硬化させ、被覆を形成する被覆形成工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバの製造方法は、上記の発明において、前記ガラス光ファイバの線速を850m/min以上とすることを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバの製造方法は、上記の発明において、前記随伴流形成工程において前記随伴流を形成するために前記不活性ガスが供給される不活性ガス雰囲気形成部と、前記紫外線透過管と前記紫外線を出射する紫外光源とを含む紫外線照射部とが離間していることを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバの製造方法は、上記の発明において、前記不活性ガス雰囲気形成部と前記紫外線照射部との間の間隙を覆い、かつ該不活性ガス雰囲気形成部および該紫外線照射部の両方には同時に接触しないカバーを設けることを特徴とする。
本発明によれば、樹脂を塗布した直後のガラス光ファイバの樹脂の表面近傍に不活性ガスからなる随伴流を形成して樹脂と酸素との反応を防止し、かつ紫外線透過管内を1.8m/s以上の流速で排気して内面の曇りを防止するので、樹脂が十分に硬化された良質な被覆を形成できるという効果を奏する。
図1は、実施の形態1に係る光ファイバの製造方法の実施に用いる光ファイバの製造装置の全体構成を示す模式図である。 図2は、図1に示す樹脂塗布ダイスおよび被覆形成装置の模式図である。 図3は、樹脂を塗布したガラス光ファイバを不活性ガス雰囲気下に所定の線速で走行させた後の、ガラスに塗布された樹脂の表面からの距離と、その位置における不活性ガス濃度との関係を示す図である。 図4は、排気管内の排気圧と透明管内の流速との関係の一例を示す模式図である。 図5は、実施の形態2に係る光ファイバの製造方法の実施に用いる光ファイバの製造装置の全体構成を示す模式図である。 図6は、被覆形成装置の別の態様の模式図である。 図7は、被覆形成装置のさらに別の態様の模式図である。 図8は、実施例1〜6、比較例1の実施条件、石英管の曇りの状態、および樹脂硬化性を示す図である。 図9は、実施例7、8の実施条件、石英管の曇りの状態、樹脂硬化性、および付着物の有無を示す図である。
本発明者らは、特許文献2に開示された方法を用いても、製造された光ファイバにおいて樹脂の硬化が不十分となる場合がある原因は、樹脂を塗布したガラス光ファイバが、樹脂塗布ダイスを送出してから被覆形成装置に進入するまでに、ガラス光ファイバの樹脂の表面近傍に、酸素を含んだ外気を主成分とする随伴流が形成されているためであることを見出した。
このように酸素を含んだ外気を主成分とする随伴流が形成されると、ガラス光ファイバが透明管内へと進入した後も、その周囲は酸素を含んだ外気を主成分とする随伴流に覆われている。このように酸素を含んだ外気を主成分とする随伴流が既に形成されたガラス光ファイバに対して、不活性ガスを供給しても、ガラス光ファイバは酸素を含んだ外気を主成分とする随伴流に覆われたままであり、その樹脂表面近傍を不活性ガス雰囲気とするのは困難である。その結果、樹脂は随伴流に含まれる酸素と反応して、その硬化が不十分となる。
また、たとえばガラス光ファイバに不活性ガスを吹き付けて随伴流を剥ぎ取ろうとしても、そのためには、不活性ガスを多量に吹き付ける必要があるため、走行している光ファイバの線ぶれや断線が発生する原因となるおそれがある。
本発明者らは、上記問題を解決するために、樹脂を塗布した直後のガラス光ファイバを不活性ガス雰囲気下に通過させ、樹脂の表面近傍に不活性ガスからなる随伴流を形成することに想到し、本発明を完成させたものである。
以下に、図面を参照して本発明に係る光ファイバの製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、図において、同一または対応する要素には同一の符号を付している。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ファイバの製造方法の実施に用いる光ファイバの製造装置の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、この製造装置100は、石英ガラスを主成分とする光ファイバ母材1の一端を加熱溶融するための、ヒータ11aを有する線引炉11と、線引炉11の下方において、光ファイバ母材1の一端から線引きしたガラス光ファイバ2の通路に配置された、樹脂塗布装置としての樹脂塗布ダイス12と、被覆形成装置13と、被覆形成装置13の下方に配置されたガイドローラ14、15および巻取りドラム16とを備えている。
図2は、図1に示す樹脂塗布ダイス12および被覆形成装置13の模式図である。図2に示すように、樹脂塗布ダイス12は、ガラス光ファイバ2に塗布すべき、2種類の液状の樹脂を供給するための樹脂供給管12a、12bを備えている。また、被覆形成装置13は、樹脂塗布ダイス12に連接して設けられた不活性ガス雰囲気形成部としての保護管131と、保護管131の下方に、保護管131とは離間して設けられた紫外線透過管としての透明管132と、透明管132の外周に配置された紫外光源133と、透明管132および紫外光源133を収容保持する筐体134と、透明管132を筐体134に固定するための固定具135と、保護管131に設けられたカバー136と、透明管132の下端に接続し、排気管137aが設けられた封止部材137とを備えている。
保護管131は、管状に形成されたものであり、その材質はたとえばガラス、金属、プラスチック等であるが、特に限定はされない。また、保護管131と樹脂塗布ダイス12との間は、大気が侵入しないような密閉構造とされている。また、保護管131は、保護管131内に不活性ガスG1を供給するための不活性ガス供給管131aを有している。不活性ガス供給管131aは、流量調節器(不図示)を介して、不活性ガスG1を供給するガス供給源(不図示)に接続している。この流量調節器によって不活性ガスG1の供給量及び流速が制御される。流量調節器は、たとえばマスフローコントローラであるが、調節弁でもよい。なお、不活性ガスG1は、たとえば窒素ガスである。
透明管132はたとえば石英ガラスからなるが、樹脂を硬化させるための紫外線を透過するものであれば特に限定されない。また、紫外光源133は、たとえばUVランプであるが、紫外線硬化型樹脂を硬化させることができる紫外線を出射できるものであれば特に限定はされない。また、筐体134は、紫外線を外部に漏洩させないような材質、構造のものが好ましい。
固定具135は、透明管132を筐体134に固定するものであり、その構造は特に限定されない。ここで、透明管132、紫外光源133、筐体134、および固定具135を紫外線照射部138とする。
カバー136は、保護管131から、固定具135の側面を周囲から覆うように延設しており、保護管131と紫外線照射部138との間の間隙を覆っている。ただし、カバー136は、固定具135を含む紫外線照射部138には接触しないような内径および長さを有する。カバー136の材質はたとえばガラス、金属、プラスチック等であるが、特に限定はされない。
封止部材137は、透明管132の下端に接続し、透明管132を封止している。封止部材に設けられた排気管137aは、調整弁を介して吸気ポンプ(いずれも不図示)に接続している。排気管137aからは、吸気ポンプによって透明管132内のガスG2が排気される。
つぎに、この製造装置100を用いた、本実施の形態1に係る光ファイバの製造方法について説明する。まず、光ファイバ母材1を線引炉11にセットする。つぎに、光ファイバ母材1の一端を線引炉11が有するヒータ11aにより加熱溶融し、加熱溶融した一端からガラス光ファイバ2を線引きする。線引きされたガラス光ファイバ2は、下方に走行し、樹脂塗布ダイス12を通過する。樹脂塗布ダイス12には、樹脂供給管12a、12bのそれぞれから供給された2種類の樹脂が溜められている。そして、樹脂塗布ダイス12は、走行し通過するガラス光ファイバ2の外周に樹脂を2層に塗布する。2層の樹脂を塗布されたガラス光ファイバ2aは、樹脂を塗布された直後に被覆形成装置13に進入する。
被覆形成装置13において、ガラス光ファイバ2aは、はじめに保護管131を通過する。ガラス光ファイバ2aが樹脂を塗布された直後に通過する保護管131内は、不活性ガス供給管131aから供給された不活性ガスG1により、不活性ガス雰囲気となっている。ガラス光ファイバ2aをこの不活性ガス雰囲気に通過させることによって、樹脂の周囲の表面近傍に不活性ガスG1からなる随伴流fを形成する。
つぎに、ガラス光ファイバ2aは、不活性ガスG1からなる随伴流fを伴って透明管132に進入する。この随伴流fはガラス光ファイバ2aから容易には剥ぎ取ることはできないものであるため、ガラス光ファイバ2aの樹脂は随伴流fによって保護され、酸素に触れることが防止される。
紫外光源133は、透明管132を通過するガラス光ファイバ2aの、随伴流fに覆われた2層の樹脂に紫外線を照射して硬化させ、2層の被覆を形成する。ここで、調整弁で流量を調整しながら、吸気ポンプによって排気管137aから透明管132内のガスG2を排気することによって、透明管132内を1.8m/s以上の流速で排気している。このように、透明管132内を1.8m/s以上の流速にすることによって、揮発した樹脂成分が内面に付着せずに十分に排気されるので、透明管132の曇りを防止することができる。したがって、随伴流fに覆われた2層の樹脂に到達する紫外線の量は十分となる。
このように、2層の樹脂は酸素との反応が防止され、かつ透明管132は内面の曇りが防止されているため、樹脂は十分な量の紫外線によって十分に硬化する。その結果、良質の被覆を有する光ファイバ3が製造される。
つぎに、ガイドローラ14、15は、被覆を形成した光ファイバ3をガイドし、最後に巻取りドラム16がガイドローラ14、15によってガイドされた光ファイバ3を巻き取る。なお、ガラス光ファイバ2、2a、光ファイバ3の走行速度(線速)は、巻取りドラム16の回転数を調整することによって制御される。
上記のように、本実施の形態1に係る光ファイバの製造方法によれば、樹脂が十分に硬化された良質な被覆を有する光ファイバ3を製造することができる。特に、本実施の形態1に係る光ファイバの製造方法では、ガラス光ファイバ2aを不活性ガス雰囲気下に通過させることによって形成される随伴流を積極的に利用しているため、透明管内に2層流を形成させる場合のような複雑な装置構成や各ガスの流速や排気量の厳密な制御が不要でありながら、良質な被覆を形成できるのである。
また、本実施の形態1では、保護管131と紫外線照射部138との間の間隙を覆うカバー136を設け、外部からの大気の巻き込みを防止しているので、形成された随伴流fが乱れず、ガラス光ファイバ2aはより確実に保護される。
また、紫外線照射部138では、紫外光源133の冷却のために吸気を行っているため、それに伴って紫外線照射部138は振動している。この振動が樹脂塗布ダイス12に伝わると、ガラス光ファイバ2に樹脂を塗布する際に塗布不良が起こり、その結果被覆不良が発生するおそれがある。しかしながら、本実施の形態1では、カバー136が紫外線照射部138には接触しないように構成されているため、樹脂塗布ダイス12には紫外線照射部138の振動が伝わらず、塗布不良および被覆不良は防止される。
つぎに、本実施の形態1に係る光ファイバの製造方法において、好ましい不活性ガスの条件、光ファイバの線速の条件、および透明管内の流速の設定条件について説明する。
まず、不活性ガスとしては、窒素ガスや、ヘリウムガス、アルゴンガス等の希ガスなどを特に限定無く用いることができる。また、これらの不活性ガスは、純度の高いものの方が好ましいが、樹脂の硬化を阻害しない程度であれば、不純物として酸素を含んでいてもよい。含有される酸素の濃度は、好ましくは2%以下である。また、供給する不活性ガスの流量は、たとえば1〜50SLM程度であることが好ましい。
供給する不活性ガスの流量が1SLMより小さい場合、保護管131内を完全な不活性ガス雰囲気とすることができず、樹脂の周囲の表面近傍に不活性ガスG1からなる随伴流fが形成できない場合がある。また供給する不活性ガスの流量が50SLMより大きい場合、走行している光ファイバの振動や断線が発生するおそれがある。
つぎに、ガラス光ファイバの線速の条件について説明する。ガラス光ファイバの線速が高速であれば、樹脂を塗布したガラス光ファイバを不活性ガス雰囲気下に走行させたときに、樹脂の周囲にいっそう厚く、剥ぎ取りにくい随伴流が形成されるので好ましい。
図3は、樹脂を塗布したガラス光ファイバを不活性ガス雰囲気下に所定の線速で走行させた後の、ガラスに塗布された樹脂の表面からの距離と、その位置における不活性ガス濃度との関係を示す図である。この図3は、図2における透明管132の入口近傍における随伴流を流動解析によって求めたものである。なお、供給する不活性ガスの流量は40SLMとし、供給する酸素含有ガスの流量は35SLMとして解析を行った。また、透明管の内径はガラス光ファイバの外径と比べて十分大きければよく、例えば直径5mm以上あればよいので、5mmとして解析を行なった。また、不活性ガスとして窒素ガスを用いた。なお、縦軸は不活性ガスの濃度を相対値で表しており、「0.0」は、その位置において雰囲気中に不活性ガスが存在しないことを意味し、「1.0」は、その位置において雰囲気の100%が不活性ガスであることを意味している。
図3に示すように、ガラス光ファイバの線速が500m/minから1700m/minまで大きくなるにつれて、その周囲に形成される不活性ガスの厚さが増加しており、随伴流がよりいっそう厚く形成されている。特に、線速が850m/min以上になると随伴流が十分に発達しており、この随伴流に酸素含有ガスを吹き付けても容易には剥ぎ取れないと考えられる。すなわち、ガラス光ファイバの線速としては、850m/min以上とすることが好ましい。
つぎに、透明管132内の流速の設定条件について説明する。通常、光ファイバの製造中に透明管132内の流速を測定するのは困難である。一方、排気管137a内の排気圧は、圧力計を設けることによって容易に測定できる。したがって、たとえば光ファイバの製造時の不活性ガスG1の供給条件のもとで予備実験を行い、透明管132内の排気圧と排気管137a内の流速との関係を求めておく。その後、製造中は、排気管137a内の排気圧を測定しながら、その測定結果をもとに調整弁の制御を行えば、透明管132内の流速を1.8m/s以上の所望の値に制御することができる。
図4は、排気管137a内の排気圧と透明管132内の流速との関係の一例を示す模式図である。図4に示すように、排気管137a内の排気圧を増加していくと、透明管132内の流速は、当初は排気管137a内の排気圧に比例して増加するが、その後は略一定となる。したがって、たとえば、予備実験において、図4に示すような透明管132内の流速が1.8m/sとなる排気管137a内の排気圧P1を求めておき、製造中は測定した排気管137a内の排気圧がP1以上になるように制御を行えば、透明管132内の流速を1.8m/s以上に制御することができる。
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2に係る光ファイバの製造方法の実施に用いる光ファイバの製造装置の全体構成を示す模式図である。図5に示すように、この製造装置200は、図1に示す製造装置100において、樹脂塗布ダイス12を樹脂塗布ダイス12Aに置き換え、かつ被覆形成装置13とガイドローラ14との間に、樹脂塗布装置としての樹脂塗布ダイス12Bと被覆形成装置13とをもう一組追加した構成を有しており、その他の点は製造装置100と同様の構成である。なお、樹脂塗布ダイス12A、12Bは、それぞれ、液状の樹脂を供給するための樹脂供給管12Aa、12Baを備えている。また、樹脂塗布ダイス12Bは、一次被覆光ファイバ2Aを導入するためのニップルを備えている(たとえば、特許文献3参照)。
つぎに、本実施の形態2に係る光ファイバの製造方法について説明する。本製造方法は、基本的に、一次被覆用の樹脂が樹脂塗布ダイス12Aに、二次被覆用の樹脂が樹脂塗布ダイス12Bに、それぞれ供給され、塗布される以外は実施の形態1と同様である。そして、上側の被覆形成装置13でガラス光ファイバ2に一次被覆を形成し、下側の被覆形成装置13で、一次被覆を形成した一次被覆光ファイバ2Aに二次被覆を形成する。このとき、上側の被覆形成装置13の透明管132内を1.8m/s以上の流速にすることによって、透明管132は内面の曇りが防止される。
このように、2つの被覆形成装置を用いてそれぞれ1層ずつ、計2層の被覆を形成する場合においては、一次被覆用の樹脂の揮発成分が一次被覆光ファイバ2Aに随伴して樹脂塗布ダイス12Bに導入される場合がある。このとき、樹脂塗布ダイス12Bにおいては、一次被覆光ファイバ2Aをダイス方向へと導くニップルに形成されている導入孔の内壁あるいはその周辺部に樹脂成分が付着する問題が生じる場合がある。このように、導入孔の内壁あるいはその周辺部に樹脂成分が付着すると、その樹脂成分は時間と共に成長し、結果として導入孔の内径が小さくなる場合がある。すると、走行する一次被覆光ファイバ2Aの被覆表面が傷つけられ、品質の低い被覆となるおそれがある。(特許文献3参照)
本実施の形態2では、一次被覆から揮発した樹脂成分は上側の被覆形成装置13の透明管132で内面に付着せずに排気されるため、一次被覆光ファイバ2Aに随伴されやすく、樹脂塗布ダイス12Bへ導入されることがある。その結果、二次被覆を行う樹脂塗布ダイス12Bのニップルへの付着が発生し、塗布された樹脂が傷つけられる問題が生じやすい。
この問題は、上側の被覆形成装置13の保護管131と紫外線照射部138との間の間隙を覆うカバー136を設けることにより、解決することができる。なお、カバー136は、保護管131と紫外線照射部138とが接触しないように、かつ、間隙から外部の大気の巻き込みが発生しないように設けることが好ましく、たとえば、カバー136内の酸素濃度を4%以下に保つことが好ましい。カバー136を設けることにより、不活性ガスG1からなる随伴流fが乱れず、ガラス光ファイバ2aはより確実に保護されるとともに、一次被覆用の樹脂の揮発成分のニップルへの付着が抑制される。
このように、上側の被覆形成装置13にカバー136を設けることにより、塗布された樹脂は、十分な量の紫外線によって十分に硬化し、その後傷つけられることもない。その結果、良質の被覆を有する光ファイバ3Aが製造される。
本実施の形態2では、上側の被覆形成装置13の透明管132内を1.8m/s以上の流速にしている。しかしながら、たとえば、下側の被覆形成装置13の透明管132内に曇りが発生する場合には、その防止のために下側の被覆形成装置13の透明管132内を1.8m/s以上の流速にしてもよい。
つぎに、実施の形態1、2に係る光ファイバの製造方法において用いることができる被覆形成装置の別の態様について説明する。図6は、被覆形成装置の別の態様の模式図である。
図6において、樹脂塗布ダイス12は、図1に示したものと同一であり、2種類の液状の樹脂を供給するための樹脂供給管12a、12bを備えている。また、被覆形成装置23は、図1に示す被覆形成装置13と比較して、保護管131を保護管231に置き換えた構成を有している。
この保護管231は、不活性ガス供給管231aの下方の位置に、内周にわたって設けられた邪魔板231bを有している。邪魔板231bの形状はたとえば中心部にガラス光ファイバ用の挿通孔を有する円板状である。
この被覆形成装置23では、邪魔板231bの存在によって、保護管231内においてガラス光ファイバが樹脂を塗布された直後に通過する不活性ガス雰囲気の圧力が高くなるので、不活性ガス雰囲気に大気が混入しにくくなる。その結果、樹脂の周囲の表面近傍に不活性ガスからなる随伴流がさらに確実に形成されるので、樹脂をさらに確実に硬化させることができる。
図7は、被覆形成装置のさらに別の態様の模式図である。
図7において、樹脂塗布ダイス12は、図1に示したものと同一である。また、被覆形成装置33は、図6に示す被覆形成装置23からカバー136を削除した構成を有している。
この被覆形成装置33を使用する場合、樹脂塗布ダイス12によって樹脂供給管12a、12bから供給された樹脂を塗布されたガラス光ファイバ2aは、はじめに保護管231を通過する。保護管231内は、不活性ガス供給管231aから供給された不活性ガスG1により、不活性ガス雰囲気となっている。ガラス光ファイバ2aをこの保護管231内に通過させることによって、樹脂の周囲の表面近傍に不活性ガスG1からなる随伴流fを形成する。なお、保護管231内は邪魔板231bの存在によって不活性ガス雰囲気の圧力が高くなっており、大気の混入が防止されている。
つぎに、ガラス光ファイバ2aは、不活性ガスG1からなる随伴流fを伴って透明管132に進入する。この随伴流fはガラス光ファイバ2aから容易には剥ぎ取ることはできないものであるため、ガラス光ファイバ2aの樹脂は随伴流fによって保護され、酸素に触れることが防止される。
紫外光源133は、ガラス光ファイバ2aの2層の樹脂に紫外線を照射して硬化させ、2層の被覆を形成する。ここで、透明管132は、1.8m/s以上の流速で排気されているので、透明管132の曇りを防止することができる。したがって、随伴流fに覆われた2層の樹脂に到達する紫外線の量は十分となる。その結果、良質の被覆を有する光ファイバ3が製造される。
このように、保護管231と紫外線照射部138との間の間隙を覆うカバーが無い被覆形成装置23を使用しても、透明管132の流速を1.8m/s以上にすることによって、樹脂が十分に硬化された良質の被覆を有する光ファイバ3を製造することができる。
なお、この被覆形成装置33は、邪魔板231bを有する保護管231を備えているが、この保護管231を図2に示す邪魔板の無い保護管131に置き換えてもよい。
(実施例1〜6、比較例1)
つぎに、本発明の実施例1〜6、比較例1として、図6に示すカバーを有する構成の被覆形成装置、または図7に示すカバーが無い構成の被覆形成装置を図1に示す光ファイバの製造装置に用いて、ガラス光ファイバの線速および透明管(石英管)内の流速を様々な値として光ファイバの製造を行なった。ここで、不活性ガスとしては純度が99.9%の窒素ガスを用いた。保護管へ供給する窒素ガスの流量を35SLMとした。保護管と固定具との間の間隙の幅を40mmとした。また、カバー有りの実施例においては、カバーの長さを45mmとし、カバーが紫外線照射部には接触しないようにした。
図8は、実施例1〜6、比較例1の実施条件、石英管の曇りの状態、および樹脂硬化性を示す図である。なお、樹脂の硬化性については、被覆された光ファイバが断線せず巻取りドラムに巻き取られた場合を「○」と判定し、ガイドローラまたは巻取りドラムにおいて断線が発生した場合を「×」と判定した。また、石英管の曇りの状態については、目視により曇りの有無を判定した。
図8に示すように、実施例1〜6のように石英管内の流速を1.8m/s以上とした場合には、ガラス光ファイバの線速が850、1000、1700m/minのいずれの場合においても、カバーの有無にかかわらず、すなわち石英管内の酸素ガスの有無にかかわらず、透明管の曇りは生じなかった。また、樹脂の硬化性についても、ガイドローラおよび巻取りドラムにおいて断線は発生せず、製造された光ファイバの被覆を確認したところ十分に硬化したものであった。
これに対して、石英管内を排気せず、石英管内の流速を1.8m/s未満の1.3m/sとした比較例1では、石英管が曇るとともに、光ファイバに断線が発生した。断線の原因は、石英管に曇りが生じたため、この曇りによって樹脂に到達する紫外線の量が減少し、硬化が不十分となったためと考えられる。
(実施例7、8)
つぎに、本発明の実施例7、8として、図6に示すカバーを有する構成の被覆形成装置、または図7に示すカバーが無い構成の被覆形成装置を図5に示す光ファイバの製造装置に用いて光ファイバの製造を行なった。ここで、不活性ガスとしては純度が99.9%の窒素ガスを用いた。保護管へ供給する窒素ガスの流量を35SLMとした。保護管と固定具との間の間隙の幅を40mmとした。また、カバー有りの実施例においては、カバーの長さを45mmとし、カバーが紫外線照射部には接触しないようにした。
図9は実施例7、8の実施条件、石英管の曇りの状態、樹脂硬化性、および付着物の有無を示す図である。なお、石英管内の流速は上側の被覆形成装置でのものである。また、樹脂の硬化性、石英管の曇りの状態の判定については、図8の場合と同様にした。また、付着物の有無については、光ファイバを長さ300kmだけ線引きした後に、下側の樹脂塗布ダイスのニップルを目視により観察し、付着物の有無を判定した。
図9に示すように、実施例7、8のように石英管内の流速を1.8m/s以上とした場合には、カバーの有無にかかわらず、透明管の曇りは生じなかった。また、樹脂の硬化性についても、ガイドローラおよび巻取りドラムにおいて断線は発生せず、製造された光ファイバの被覆を確認したところ十分に硬化したものであった。また、付着物の有無については、カバーが有る場合に付着物が無かった。
ところで、この実施例では、ガラス光ファイバの線速が850m/min以上の場合について示している。しかしながら、ガラス光ファイバの線速が850m/minより小さく、たとえば500m/min程度であっても、その線速に応じて保護管へ供給する窒素ガスの流量を増加させる等の制御によって、ガラス光ファイバの樹脂の周囲の表面近傍に窒素ガスからなる随伴流を形成でき、本発明の効果を奏するものとなる。
また、上記実施の形態では、不活性ガス雰囲気形成部としての保護管にカバーを設けているが、紫外線照射部側にカバーを設けてもよい。カバーは、紫外線照射部から不活性ガス雰囲気形成部へ振動が伝わるのを防止するために、不活性ガス雰囲気形成部および紫外線照射部の両方には同時に接触しないようにすることが好ましい。
また、上記各実施の形態により本発明が限定されるものではない。上記各実施形態の各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明に含まれる。
1 光ファイバ母材
2、2a ガラス光ファイバ
2A 一次被覆光ファイバ
3、3A 光ファイバ
11 線引炉
11a ヒータ
12、12A、12B 樹脂塗布ダイス
12a、12b、12Aa、12Ba 樹脂供給管
13〜33 被覆形成装置
14、15 ガイドローラ
16 巻取りドラム
100 製造装置
131、231 保護管
131a、231a 不活性ガス供給管
132 透明管
133 紫外光源
134 筐体
135 固定具
136 カバー
137 封止部材
137a 排気管
138 紫外線照射部
231b 邪魔板
f 随伴流
G1 不活性ガス
G2 ガス

Claims (3)

  1. 走行するガラス光ファイバの外周に紫外線硬化型の樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、
    前記樹脂を塗布した直後のガラス光ファイバを不活性ガス雰囲気下に通過させ、該樹脂の表面近傍に該不活性ガスからなる随伴流を形成する随伴流形成工程と、
    前記随伴流を伴うガラス光ファイバを、雰囲気ガスが1.8m/s以上の流速で流れる紫外線透過管内に通過させながら、前記随伴流に覆われた樹脂に紫外線を照射して硬化させ、被覆を形成する被覆形成工程と、
    を含み、前記随伴流形成工程において前記随伴流を形成するために前記不活性ガスが供給される不活性ガス雰囲気形成部と、前記紫外線透過管と前記紫外線を出射する紫外光源とを含む紫外線照射部とが離間していることを特徴とする光ファイバの製造方法。
  2. 前記ガラス光ファイバの線速を850m/min以上とすることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの製造方法。
  3. 前記不活性ガス雰囲気形成部と前記紫外線照射部との間の間隙を覆い、かつ該不活性ガス雰囲気形成部および該紫外線照射部の両方には同時に接触しないカバーを設けることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバの製造方法。
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