以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
図1は、本実施の形態に係る絶縁部材を備える回転電機100の概略構成を示す側断面図である。図1に示すように、回転電機100は、回転中心線Oを中心に回転可能に支持された回転シャフト110と、この回転シャフト110に固設され、回転シャフト110と共に回転可能に設けられたロータ120と、このロータ120の周囲に設けられた環状のステータ140とを備える。回転電機100は、典型的には、ハイブリッド車両に搭載され、車輪を駆動する駆動源や、エンジンなどの動力によって電気を発電する発電機として機能する。また、回転電機100は、エンジンを備えずに電力のみで走行する電気自動車や、燃料を用いて電気エネルギを発生する燃料電池を車載電源として備える燃料電池車にも適用可能である。
ロータ120は、複数の電磁鋼板などを軸方向DR2に積層して構成されたロータコア125と、ロータコア125に形成された磁石挿入孔126内に挿入された永久磁石123と、ロータコア125の軸方向DR2の端面に設けられたエンドプレート122とを備える。永久磁石123は、磁石挿入孔126内に充填された樹脂124によって接着固定されている。
ステータ140は、環状に形成されており、ロータ120の周囲を取り囲むように環状に形成されたステータコア141と、ステータコア141に装着されたU相コイル180U,V相コイル180V,W相コイル180Wとを備える。ステータコア141は、複数の電磁鋼板300が軸方向DR2に積層されて構成されている。なおステータコア141は、鉄粒子などの磁性粒子と樹脂などの絶縁物とを含む混合物を加圧成形した圧粉磁心から形成されてもよい。
ステータ140(ステータコア141)の軸方向端面177,178には、絶縁性のモールド樹脂172が形成されている。このモールド樹脂172は、たとえばBMC(Bulk Molding Compound)、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂や、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)などの熱可塑性樹脂などを含んでいる。
ステータコア141は、環状に延びるヨーク部本体170と、ヨーク部本体170から突出する複数のステータティース171とを備える。ステータティース171は、ステータコア141のティース部を形成し、ヨーク部本体170の内周面から径方向DR3内方に向けて突出する。
図2は、図1に示すII−II線に沿った、ステータ140の断面図である。図2に示すように、ステータ140は、環状に配列された複数の分割ステータコア175と、分割ステータコア175に装着されたインシュレータ160と、インシュレータ160を介在させて分割ステータコア175に装着されたコイル180とを備える。
各々の分割ステータコア175は、ステータ140の周方向DR1に延びる円環状のヨーク部176と、ヨーク部176からステータ140の径方向DR3内方に向けて突出するステータティース171とを備える。ステータティース171は、ステータコア141の内周面142側に形成されている。ステータティース171は、ステータ140の周方向DR1に沿って、等間隔に形成されている。複数の分割ステータコア175は、分割ステータコア175の外周側に環状のリングが装着されて一体に固定されてもよく、ステータ140を収容するケースに分割ステータコア175の外周面が接触することで固定されてもよい。
ヨーク部176の表面のうち、ステータ140の周方向DR1に配列される周方向端面190,191は、当該分割ステータコア175に対してステータ140の周方向DR1に隣接する、他の分割ステータコア175の周方向端面190,191と、当接している。そして、各分割ステータコア175のヨーク部176が周方向に配列されることで、環状のヨーク部本体170が構成されている。
複数のステータティース171のうち、周方向DR1に隣接するステータティース171に、異なる相のコイル180が巻回されている。図2に示す例では、U相コイル180Uが巻回されたステータティース171に対し、反時計回り方向に隣接する他のステータティース171に、V相コイル180Vが巻回されている。V相コイル180Vが巻回されたステータティース171に対し、反時計回り方向に隣接する他のステータティース171に、W相コイル180Wが巻回されている。各相のコイル180U,180V,180Wが1つのステータティース171の周囲に集中的に巻回されリング状に配列されており、コイル180は、ステータティース171に集中巻きにて巻回されている。
図3は、図2に示すステータ140の一部を拡大視した拡大断面図である。図3に示すように、分割ステータコア175のヨーク部176の外周面199には、外周面199の一部が窪んだ窪み部173が形成されている。この窪み部173は、たとえば、複数の分割ステータコア175を一体に固定するための環状のリングまたはケースに対して分割ステータコア175を位置決めするために使用されてもよい。またたとえば、窪み部173は、同相のコイル180同士を連結する渡り線を支持するための支持部材の脚部を挿通して支持部材を固定するために使用されてもよく、コイル180と外部の電線とを連結するための端子の脚部を挿通して端子を固定するために使用されてもよい。
隣り合うステータティース171間にはスロットが形成されており、スロット内には、ステータティース171に巻回されるコイル180が収容されている。コイル180は、このコイル180の延在方向に対して、垂直な断面形状が方形形状とされており、具体的には、エッジワイズコイルなどの平角線が採用されている。このため、丸線を巻回して形成されるコイルと比較して、スロット内に収容されるコイル180の占積率(コイルの断面に占める導体の割合)の向上が図られており、またコイル180からの放熱性も優れている。
このコイル180は、ステータティース171の表面のうち、ステータ140の周方向DR1に配列され径方向DR3に沿って延びる側面174に沿って積層されるように、ステータティース171の周囲に順次巻回されている。
コイル180と分割ステータコア175との間には、絶縁性のインシュレータ160が設けられており、コイル180と分割ステータコア175との間の絶縁が確保されている。インシュレータ160は、コイル180と、ステータコア141に含まれる分割ステータコア175との間に配置され、コイル180を分割ステータコア175から絶縁する、絶縁部材である。
インシュレータ160は、側面対向部161を含む。側面対向部161は、ステータティース171の周方向DR1の側面174に対向する。インシュレータ160は、ヨーク対向部168を含む。ヨーク対向部168は、側面対向部161の径方向DR3外側の端部に形成され、ヨーク部176の内周面198に沿って延び、ヨーク部176の内周面198に対向する。側面対向部161の周面のうち、径方向DR3内側に位置する端部には、周方向DR1に沿って側面対向部161から突出する、張出部164が形成されている。
このように形成されたインシュレータ160には、コイル180が巻回されて装着されている。図3に示すように、コイル180は、延在方向に対して垂直な断面の形状が方形形状とされたコイル線280を巻回することで、構成されている。導体であるコイル線280は、径方向DR3に沿って積層されるようにステータティース171の周囲に巻回され、コイル180を形成している。インシュレータ160の側面対向部161は、巻回されたコイル180の内周と接する。インシュレータ160のヨーク対向部168は、巻回されたコイル180の側面と接する。
図4は、インシュレータ160の斜視図である。図5は、図4中のV−V線に沿うインシュレータ160の断面図である。図4および図5に示すように、絶縁部材としてのインシュレータ160は、周方向DR1に並べられた第一部材160aと第二部材160bとを備える。第一部材160aと第二部材160bとは、互いに別々の部材である。
インシュレータ160がステータティース171に装着された状態で、第一部材160aは、ステータティース171の周方向DR1の一方側の側面174を覆い、また第二部材160bは、ステータティース171の周方向DR1の他方側の側面174を覆う。第一部材160aと第二部材160bとの間には、開口部163が形成されており、この開口部163内に対応するステータティース171(図2および図3参照)を通すことで、インシュレータ160がステータティース171に装着される。
第一部材160aは、ステータティース171の周方向DR1の側面174に対向する平板状の側面対向部161aと、ヨーク部176の内周面198に対向する平板状のヨーク対向部168aと、を含む。ヨーク対向部168aは、インシュレータ160がステータティース171に装着されたとき、コイル180とスロット奥のヨーク部176の内周面198との間に配設され、コイル180をヨーク部176から絶縁する。
側面対向部161aは、インシュレータ160がステータティース171に装着されたとき、ステータティース171のスロット側の側面174を被覆可能なように、ヨーク対向部168aの開口部163側の端部からステータコア141の径方向DR3内側に向かって延在する。側面対向部161aは、インシュレータ160および対応するコイル180がステータティース171に装着されたとき、コイル180とステータティース171の側面174との間に配設され、スロット内のコイル180をステータティース171から絶縁する。
側面対向部161aの径方向DR3内側の先端部(径方向DR3においてヨーク対向部168aから離れる側の側面対向部161aの端部)には、張出部164aが設けられる。張出部164aは、平板状の側面対向部161aに対し、周方向DR1の外方へ張り出すように形成されている。張出部164aは、インシュレータ160に装着されたコイル180を積層方向(径方向DR3)に支持可能に形成される。すなわち、張出部164aは、ヨーク対向部168aとの間にコイル180を保持するコイル保持部としての機能を有する。
張出部164aとヨーク対向部168aとがコイル180を挟持することで、インシュレータ160に装着されたコイル180がステータコア141の内周方向に巻崩れるのを防止する。インシュレータ160のヨーク対向部168aと張出部164aとによってコイル180を保持し固定することができるので、コイル180の固定のための他の部品を別途設ける必要がない。そのため、部品点数を削減し、かつ他部品の組み付けのための工数を不要とすることができるので、ステータ140のコストを低減できる。
コイル180としてエッジワイズコイルなどの平板導体が採用されている場合、コイル180の一部分のみを張出部164aで支持するだけで、コイル180を支持することができる。コイル180が丸線や角線により形成される場合は、コイルの巻崩れを防止するために張出部164の周方向DR1への張出長さを十分に確保しなければならないのに対し、コイル180が平角線であれば、張出部164の周方向DR1への張出長さを小さくできる。そのため、インシュレータ160を小型化してインシュレータ160の製造コストを低減することが可能であり、また、ステータティース171間のスロット内の占積率を向上することができる。
張出部164aの径方向DR3内側の表面には、二箇所の凹部169aが形成されている。凹部169aは、インシュレータ160を構成する張出部164aの表面の一部が、凹部169aの周辺の張出部164aの表面に対して相対的に窪んだ箇所である。第一部材160aを樹脂成形する場合、金型内部に樹脂を供給するためのゲートを設ける必要があるが、このゲートに相当する位置に凹部169aを形成することができる。
樹脂成形品では、一般的に、ゲートに相当する位置において成形後に表面が突起する場合がある。樹脂成形品の表面が相対的に窪むように設計された凹部169aに相当する部分をゲートとして樹脂材料を供給すれば、仮に成形後の製品に突起が残存しても、凹部169aの周辺の第一部材160aの表面よりも上記突起が突出することを回避できる。これにより、上記突起を除去するための仕上げ加工を不要とでき、第一部材160aの製造時の工数増加を回避することができる。
側面対向部161aの軸方向DR2の両端部には、ステータコア141の軸方向端面177,178に対向する一対の端面対向部165aが形成されている。端面対向部165aの周方向DR1における一方側の端部に、側面対向部161aの端部が連結されている。平板状の端面対向部165aは、側面対向部161aが連結される側の表面である内側表面と、内側表面に対し反対側の表面である外側表面とを有する。
周方向DR1において側面対向部161aから離れる側の端面対向部165aの他方側の端部には、軸方向DR2に延びる平板状の突出部166aが形成されている。突出部166aは、端面対向部165aの上記外側表面から突出し、端面対向部165aに対し第一部材160aの軸方向DR2における外方へ向かって突出している。端面対向部165aと突出部166aとは、軸方向DR2における側面対向部161aの各端部において、コイル180とステータティース171との絶縁を確保するために形成される。
インシュレータ160および対応するコイル180がステータティース171に装着されたとき、突出部166aは、コイル180を軸方向DR2に支持するとともに、コイル180とステータティース171との軸方向DR2における絶縁距離を確保する。すなわち、第一部材160aと第二部材160bとは周方向DR1に分離され、第一部材160aと第二部材160bとの間に開口部163が形成されることにより、ステータティース171のコイルエンド側の軸方向端面177,178は、インシュレータ160によって全面が覆われない。そのため、軸方向DR2に延在し、コイル180とステータティース171とを絶縁可能な距離に相当する軸方向DR2の寸法を少なくとも有するように、突出部166aが形成される。
平板状の端面対向部165aの、径方向DR3における外径側の端部には、軸方向DR2に延びる平板状の突出部167aが形成されている。突出部167aは、平板状の端面対向部165aの上記外側表面から突出し、端面対向部165aに対し第一部材160aの軸方向DR2における外方へ向かって突出している。平板状の突出部167aの径方向DR3内側の表面は、平板状のヨーク対向部168aの径方向DR3内側の表面と同一の平面上に存在する。
ヨーク対向部168aがステータコア141のヨーク部176の内周面198に対向するように配置されるのに対し、ヨーク対向部168aに対して軸方向DR2の両端部に設けられた突出部167aは、ステータティース171の軸方向端面177,178よりも軸方向DR2における外側に配置される。ステータティース171の側面174を覆う側面対向部161aと、ヨーク対向部168aとは、軸方向DR2の寸法が等しいように形成されている。そのため、ヨーク対向部168aは、ヨーク部176の内周面198の軸方向DR2における全長に亘って、ヨーク部176の内周面198を覆うことが可能に形成されている。突出部167aは、ステータティース171の軸方向端面177,178に対して、軸方向DR2に張り出すように配置されている。
突出部167aとヨーク対向部168aとは、側面対向部161aに対し周方向DR1の外側へ突出し、端面対向部165aに対し軸方向DR2の外側へ突出する形状の、フランジ部162aを構成する。フランジ部162aは、ヨーク部176の内周面198と面接触し、ヨーク部176の内周面198に支持される。
突出部166aと突出部167aとは、軸方向DR2における延在長さが等しいように形成されている。そのため、突出部166aが端面対向部165aに対し軸方向DR2の外側へ突出する長さと、突出部167aが端面対向部165aに対し軸方向DR2の外側へ突出する長さとは、等しくなっている。つまり、突出部166aの軸方向DR2における先端部と、突出部167aの軸方向DR2における先端部とは、同一平面上に存在する。突出部166a,167aは、一体としてL字形状の部材を形成し、このL字形状の部材が平板状の端面対向部165aの外側表面に取り付けられて、第一部材160aの軸方向DR2の両端部が形成されている。
第一部材160aは、樹脂成形品である。第一部材160aは、PPS、LCP(液晶ポリマー)などの任意の樹脂材料を使用して、射出成形に代表される任意の成形加工によって形成されている。第一部材160aの形状に対応する金型を準備して、その金型内部に樹脂を注入して固化させることにより、容易に第一部材160aを量産することができる。
第二部材160bは、第一部材160aに対して、軸方向DR2と径方向DR3とを含む平面を対称面とする鏡映対称の形状に形成されている。第二部材160bは、上述した第一部材160aを構成する各部材に対応する形状および機能を有する、側面対向部161b、フランジ部162b、張出部164b、端面対向部165b、突出部166b、突出部167b、ヨーク対向部168bおよび凹部169bを備える。
第二部材160bは、第一部材160aと同一の形状に形成されてもよい。この場合、同一形状の樹脂成形品を作製して、その樹脂成形品を第一部材160aと第二部材160bとの両方に適用できる。同一の部品を量産することによって、ステータ140の製造コストをより低減することができる。また、別形状の第一部材160aと第二部材160bとを予め同数準備する必要がなく、生産管理が容易になる。
第一部材160aの側面対向部161aおよび端面対向部165aと、第二部材160bの側面対向部161bおよび端面対向部165bとは、ステータティース171を受入れ可能な略筒状のティース受入部を構成する。
ティース受入部において、側面対向部161a,161bは、端面対向部165a,165bよりも厚みが薄い、薄肉に形成されている。側面対向部161a,161bは、インシュレータ160の他の部分よりも薄肉に形成されている。
フランジ部162a,162bにおいて、ヨーク対向部168a,168bは、突出部167a,167bよりも厚みが薄い、薄肉に形成されている。ヨーク対向部168a,168bは、インシュレータ160の他の部分よりも薄肉に形成されている。
コイル180とステータティース171との間に配置される側面対向部161a,161bが薄肉であり、かつ、コイル180とヨーク部176との間に配置されるヨーク対向部168a,168bが薄肉であるように、インシュレータ160は形成されている。側面対向部161a,161bとヨーク対向部168a,168bとは、インシュレータ160においてコイル180とステータコア141との間に介在する部分であるが、その厚みは、インシュレータ160の他の部分と比較して相対的に小さく形成されている。
インシュレータ160は、コイル180とステータコア141とを絶縁するとともに、コイル180の発する熱をステータコア141に逃がす目的を併せ持っている。側面対向部161a,161bは、コイル180からステータコア141のステータティース171への放熱経路に配置される。ヨーク対向部168a,168bは、コイル180からステータコア141のヨーク部176への放熱経路に配置される。そのため、側面対向部161a,161bとヨーク対向部168a,168bとの厚みを小さくすることにより、コイル180からステータコア141への放熱の効率を向上させることができる。
一方、インシュレータ160の、コイル180からステータコア141への放熱経路中に配置されていない部分の厚みを相対的に大きくすることにより、インシュレータ160に必要な強度を確保することができる。また、インシュレータ160を樹脂成形するときの樹脂の経路を大きくできるので、インシュレータ160の成形し易さを向上させることができる。
側面対向部161a,161bとヨーク対向部168a,168bとは、厚みが小さいほど放熱性が向上するため好ましいが、厚みが小さすぎると成形が困難になるため、成形可能な範囲の最小の厚みを有するように形成されてもよい。たとえば、側面対向部161a,161bとヨーク対向部168a,168bとは0.25mm以上0.35mm以下の範囲の厚みを有し、インシュレータ160の他の部分は1.6mmの厚みを有するように、インシュレータ160を形成してもよい。
図6は、インシュレータ160に装着されたコイル180がステータティース171に装着された状態の斜視図である。図7は、図6に示すVII−VII線に沿った、インシュレータ160にコイル180が装着された状態の断面図である。図8は、コイルユニットの分解斜視図である。図9は、図8中に示すIX−IX線に沿う、コイルユニットの断面図である。
図6〜図9に示すように、コイルユニットは、分割ステータコア175、インシュレータ160、絶縁紙181およびコイル180を含む。分割ステータコア175のステータティース171に、インシュレータ160、絶縁紙181、コイル180の順に組み付けられて、ステータ140に用いられるコイルユニットが形成される。コイルユニットが周方向DR1に複数個並べられて、ステータ140が形成される。
このコイルユニットにおいて、コイル180は、絶縁紙181を介在させてインシュレータ160に装着されている。コイル180は、インシュレータ160の突出部166a,166bによって軸方向DR2に支持される。またコイル180は、側面対向部161a,161bの径方向DR3内側の先端に設けられた張出部164a,164bとフランジ部162a,162bとによって挟持されることにより、コイル180の積層方向である径方向DR3に支持される。
リング状のコイル180の内周側にインシュレータ160が配置され、コイル180と分割ステータコア175との間が絶縁されている。コイル180の周方向DR1における外周側に、絶縁紙181が配置されている。絶縁紙181がリング状のコイル180の外周側の表面を覆うことにより、コイル180と、周方向DR1に隣接する他のコイルユニットに含まれる他相のコイルと、の間の相間絶縁が確保されている。
インシュレータ160とコイル180との間に介在する絶縁紙181には、厚み方向に絶縁紙181を貫通する貫通孔182が形成されている。貫通孔182は、インシュレータ160の張出部164a,164b、側面対向部161a,161bおよび突出部166a,166bが貫通孔182を貫通可能な形状に、形成されている。絶縁紙181は、図6および図7に示すコイルユニットが組み立てられた状態で、インシュレータ160のフランジ部162a,162bと対向する部分と、コイル180の外周面を覆う部分とを有する。
図8および図9に示す第一部材160aと第二部材160bとは、図6および図7に示すインシュレータ160がステータティース171の周囲に取り付けられた状態と同じ位置に配置されている。このように第一部材160aと第二部材160bとが配置された状態において、図9に示すように、第一部材160aと第二部材160bとの周方向DR1の間隔を寸法Aとする。第一部材160aの張出部164aが側面対向部161aに対して周方向DR1に突出する先端と、第二部材160bの張出部164bが側面対向部161bに対して周方向に突出する先端と、の周方向DR1の間隔を寸法Bとする。また、リング状に形成されたコイル180の内周面の、周方向DR1における径の最小値を寸法Cとする。
以上説明したインシュレータ160を備えるステータ140の製造方法について、以下説明する。本実施の形態に係るステータ140の製造方法は、複数のステータティース171を有する環状のステータコア141を準備する工程と、ステータティース171に巻回されるコイル180を準備する工程と、ステータコア141とコイル180との間に配置されコイル180をステータコア141から絶縁する樹脂成形品のインシュレータ160を準備する工程と、を備える。インシュレータ160は、ステータティース171の周方向DR1一方側の側面174を覆う第一部材160aと、ステータティース171の周方向DR1他方側の側面174を覆う第二部材160bと、を含む。
次の工程において、図10に示すように、ステータティース171の一部を、インシュレータ160の筒状のティース受入部の内部に嵌入する。図10は、ステータティース171の一部をインシュレータ160に嵌入した状態を示す断面模式図である。図10には、インシュレータ160の第一部材160aと第二部材160bとの間に形成される開口部163(図4参照)に、ステータティース171の先端部179側の一部を挿し入れた状態が図示されている。図9に示す分割ステータコア175とインシュレータ160とが組み付けられていない状態から、分割ステータコア175とインシュレータ160とを径方向DR3に互いに接近させることで、図10に示す状態が得られる。
この状態で、第一部材160aと第二部材160bとの周方向DR1の間隔は任意としてよい。図10には、代表的な例として、第一部材160aと第二部材160bとの間の周方向DR1の間隔を寸法Aに保ったまま、インシュレータ160にステータティース171の一部を嵌入した状態が示されている。
次の工程において、第一部材160aと第二部材160bとを周方向DR1に接近させる。図11は、第一部材160aと第二部材160bとを周方向DR1に接近させた状態を示す断面模式図である。図11には、第一部材160aと第二部材160bとを互いに接近させた結果、第一部材160aと第二部材160bとが接触している状態が図示されている。このときの、第一部材160aの張出部164aの先端と第二部材160bの張出部164bの先端との間隔を寸法B1とすると、上述した寸法Aと寸法Bとの関係において、B1=B−Aという式が成立する。
図11では、第一部材160aと第二部材160bとが周方向DR1に互いに接触している状態で、第一部材160aの側面対向部161aとステータティース171の側面174とが接触し、かつ第二部材160bの側面対向部161bとステータティース171の側面174とが接触している例が図示されている。本実施の形態はこのような例に限られるものではない。
たとえば、図10に示す前工程において分割ステータコア175をインシュレータ160に嵌入する嵌入深さをより浅くして(つまり、分割ステータコア175とインシュレータ160とを径方向DR3により離れた状態として)、第一部材160aと第二部材160bとを周方向DR1に互いに接触させてもよい。この場合、インシュレータ160の側面対向部161a,161bとステータティース171の側面174とは接触しない。また、第一部材160aの張出部164aの先端と第二部材160bの張出部164bの先端との周方向DR1の間隔を、コイル180をインシュレータ160に装着できる程度に十分小さくできればよいので、第一部材160aと第二部材160bとを周方向に必ずしも接触させなくてもよい。
次の工程において、インシュレータ160の周囲にコイル180を装着する。図12は、インシュレータ160の周囲にコイル180を装着した状態を示す断面模式図である。図11に示す状態から、インシュレータ160にまず絶縁紙181を装着し、続いて絶縁紙181を介在させてコイル180をインシュレータ160に装着する。
このとき、第一部材160aと第二部材160bとを周方向DR1に接近させ、第一部材160aの張出部164aと第二部材160bの張出部164bとの周方向DR1の間隔が小さくされている。そのため、コイル180の内周面の径を示す寸法Cと、張出部164a,164b間の間隔を示す寸法B1とを比較すると、寸法Cの方が相対的に大きくなっている。すなわち、B1<Cという不等式が成立する。
そのため、コイル180をインシュレータ160に組み付けるときに、インシュレータ160に外力を加えてインシュレータ160を変形させる必要がない。インシュレータ160が周方向DR1に分割された第一部材160aと第二部材160bとを含み、インシュレータ160にコイルを装着する際に第一部材160aと第二部材160bとを周方向DR1に接近させて、インシュレータ160の周方向DR1の寸法が小さくされている。したがって、コイル180の装着時にインシュレータ160を屈撓させる必要がないので、インシュレータ160の割れや破壊の発生が抑制される。
次の工程において、インシュレータ160とコイル180とを一体として径方向DR3に移動させて、ステータティース171の周囲に配置する。図13は、インシュレータ160とコイル180とを径方向DR3に移動させた状態を示す断面模式図である。前工程においてインシュレータ160にコイル180が装着された後、コイル180およびインシュレータ160が一体的にステータティース171に装着される。
本工程または図11に示す工程において、インシュレータ160の側面対向部161a,161bは、ステータティース171の側面174に接触する。図9〜図13に示すステータティース171の断面視において、径方向DR3に先端部179に近づくにつれて周方向DR1の寸法が小さくなるように、ステータティース171の側面174は径方向DR3に対して傾いている。そのため、インシュレータ160を側面174に沿わせて径方向DR3に移動させ、インシュレータ160をステータティース171のヨーク部176へ接近させるにつれて、第一部材160aと第二部材160bとは、周方向DR1に分かれた非接触の状態になる。
そのため、インシュレータ160を径方向DR3へ移動させている途中の張出部164a,164b間の間隔を寸法B2とすると、不等式B1<B2≦Bが成立する。コイル180とインシュレータ160とは、インシュレータ160のヨーク対向部168a,168bがステータティース171のヨーク部176の内周面198に接触するまで移動し、最終的に図7の断面図に示すような組み付け状態となる。組み付け状態において、ステータティース171のヨーク部176近傍の側面174aと、インシュレータ160の側面対向部161a,161bとの間には、微小な隙間が形成されている。径方向DR3に対する側面174aの傾きと側面174の傾きとが異なり、側面174aの傾きの角度がより小さいために、図9に示すステータティース171とインシュレータ160との間に微小空間が形成される。
以上説明した本実施の形態のインシュレータ160によると、インシュレータ160は樹脂成形品であって、ステータティース171の周方向DR1一方側の側面174を覆う第一部材160aと、ステータティース171の周方向DR1他方側の側面174を覆う第二部材160bと、を備える。このようにすれば、一つの部材でインシュレータを形成した従来の構成と比較して、成形時に樹脂が流れる金型内部の容積を低減(典型的には半減)することができる。
樹脂成形品のインシュレータ160の作製に際し、樹脂材料の持つ流動性(物性値)によって、成形し易さが異なり、従って品質安定度も異なる。また、インシュレータ160の形状によっても成形し易さおよび品質安定度が異なる。すなわち、インシュレータ160の厚みが小さく薄肉であるほど成形し易さが低下し、一方、樹脂が注入される金型内部における樹脂が流れる経路の長さを小さくするほど成形し易さが向上する。
従来、インシュレータ160の設計に際し、インシュレータ160の耐熱性および強度などの設計要件に関して、流動性の小さい樹脂材料を使用することがより好ましい場合がある。しかし、樹脂材料の流動性が小さいと金型全体への樹脂材料の充填が困難となることから、樹脂材料を使用できる条件が制限される。たとえば、ステータティース171の周囲を取り囲む従来形状のインシュレータ160は、金型内部の樹脂の流通経路の長さが大きいため、流動性の小さい樹脂材料を使用すると成形が困難である。
流動性の小さい樹脂材料を使用して成形できるインシュレータ160の形状に限りがあるため、設計の自由度が低下する問題がある。すなわち、流動性の小さい樹脂材料を使用すると、所定の形状にインシュレータ160を成形できず、流動性の大きい樹脂材料を使用すると、他の設計要件を実現できない問題がある。たとえば、特定の形状のインシュレータ160を設計する場合に、流動性の低いPPSを使用すると当該特定の形状にインシュレータ160を成形できないので、成形可能とするために流動性の高いLCPを使用してインシュレータ160を設計しなければならない場合がある。この場合、インシュレータ160の熱伝導率、寸法安定性、耐熱性およびコストなどの設計要件が実現できない可能性がある。
これに対し、本実施の形態のように、インシュレータ160を周方向DR1に二分割して第一部材160aと第二部材160bとを備える構成にすることで、第一部材160aおよび第二部材160bを成形するための金型の容積を低減できるので、第一部材160aと第二部材160bとの成形し易さを向上することができる。そのため、流動性の低い材料を使用してもインシュレータ160を容易に樹脂成形することが可能となり、樹脂成形品のインシュレータ160の設計の自由度を向上することができる。
コイル180からステータコア141への放熱性を向上させるためにインシュレータ160の厚みを小さく設計し、また、トルクを増大させるためにインシュレータ160の軸方向DR2の寸法を大きく設計する場合、インシュレータ160の成形し易さは低下する。しかし、本実施の形態のように、インシュレータ160を複数の部材に分割することにより、インシュレータ160の成形し易さを向上することができる。したがって、流動性の低い樹脂材料を使用しても、薄肉で軸方向DR2寸法の大きいインシュレータ160を容易に成形することができる。
さらに、インシュレータ160を周方向DR1に分割することにより、第一部材160aと第二部材160bとの周方向DR1の間隔を自在に変更することができる。そのため、ステータ140の組み付け時におけるコイル180をインシュレータ160に装着する際に、第一部材160aと第二部材160bとを周方向DR1に接近させ、インシュレータ160の周方向DR1の寸法を一時的に小さくすることができる。
これにより、コイル180をインシュレータ160に装着する際に、インシュレータ160を変形させる量を小さくすることができる。典型的には、インシュレータ160を全く変形させることなく、コイル180をインシュレータ160に装着できる。したがって、インシュレータ160に発生する応力を低減することができるので、インシュレータ160の撓みによりインシュレータ160に割れや変形が発生することを抑制することができる。
コイル180の装着時にインシュレータ160の撓みを必要としないため、コイル180からステータコア141への放熱の効率を向上させるためにインシュレータ160を薄肉に成形しても、インシュレータ160の割れや変形を抑制できる。特に、集中巻きのコイル180を予め巻回してリング形状にした後にコイル180をインシュレータ160に装着する場合に、インシュレータ160の破損を抑制できる効果が著しい。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。