JP5530776B2 - 歯ブラシ - Google Patents
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Description
本発明は、毛束が植毛穴から抜けにくく、口腔内操作性に優れ、しかも充分な強度を有する歯ブラシを提供することを目的とする。
[耐折強度]
歯ブラシの刷毛の植毛穴から出ている部分を切断し、ヘッド部の植毛面側を平滑にする。その後、アイゾット衝撃試験機に固定し、植毛面側からハンマーにより衝撃を与え、ヘッド部が破断したときの衝撃エネルギーを測定する。その衝撃エネルギーを耐折強度とする。
[2]ヘッド部が、ポリブチレンテレフタレート樹脂で構成されている[1]に記載の歯ブラシ。
図1,2に、本実施形態の歯ブラシを示す。本実施形態の歯ブラシ1は、ヘッド部10を備えるハンドル体1aと、ヘッド部10の植毛穴11に植設された毛束1bとを有する。
本実施形態におけるハンドル体1aは、ヘッド部10と把持部20とネック部30とが同一樹脂によって構成されている。
ハンドル体1aを構成する樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの一部をイソフタル酸で置換した樹脂(PCTA)などを使用することができる。
また、ハンドル体1aを構成する樹脂は、適度な剛性と靭性を兼ね備えたものが好ましく、曲げ弾性率が1900MPa以上かつ引張破壊ひずみが80%以上のものが好ましい。ここで、曲げ弾性率は、ISO 178に準拠して測定した値であり、引張破壊ひずみは、ISO 527−1,2に準拠して測定した値である。
曲げ弾性率が1900MPa以上、引張破壊ひずみが80%以上であれば、ハンドル体1aの靭性が充分に高くなり、ヘッド部10を薄くしても衝撃に対して割れにくくなり、破断面が鋭角になるのを防止できる。
曲げ弾性率および引張破壊ひずみの上限には特に制限はないが、通常使用される樹脂であれば、曲げ弾性率は5000MPa以下、引張破壊ひずみは500%以下である。
上記の曲げ弾性率および引張破壊ひずみを容易に満たすことができる点では、ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、耐薬品性、耐熱性に優れる。そのため、ポリブチレンテレフタレート樹脂をハンドル体1aに用いた歯ブラシ1は、長期間使用しても劣化が少なく、平線によって強めに毛束1bを固定しても割れにくいため、より高品質となる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルエステルと1,4ブタンジオールを原料として重縮合反応により製造される熱可塑性ポリエステルであり、例えば、ポリプラスチックス社製のジュラネックス、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のノバデュラン、東レ社製のトレコンなどが挙げられる。
ヘッド部10の、ヘッド部10の幅方向(長手方向に対して垂直な方向)の最外側の植毛穴11aと端縁との最短距離W(以下、この距離Wのことを「縁幅W」という。)は0.4〜0.9mmであり、0.6〜0.8mmであることが好ましい。ヘッド部10の縁幅Wが0.4mm未満であると、ヘッド部耐折強度が不足し、また、植毛によって生じる応力のためにヘッド部10の縁部が変形することがある。縁幅Wが0.9mmを超えると、ヘッド部10の厚さTに対して縁幅Wが広くなり、最後臼歯などを磨くときに歯肉や頬粘膜にヘッド部10が接触して操作性が低下し、また、磨き心地の良くないものとなる。
把持部20においては、把持性を向上させるため、軟質樹脂が部分的又は全体的に被覆されてもよい。
軟質樹脂としては、硬さ(JISK6253硬さ試験、試験条件JIS A)が5〜100のものが好ましく、20〜60のものがより好ましい。硬さが5以上であれば、充分な軟質性を有して把持性がより向上する。
軟質樹脂の具体例としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、トランス−ポリイソプレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
ハンドル体1aを構成する樹脂としてポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、相溶性の点から、軟質樹脂としてポリエステル系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、東レ・デュポン株式会社製のハイトレルや三菱化学株式会社製のプリマロイなどが挙げられる。
刷毛の材質としては、例えば、ポリアミド(例:ナイロン6−12、ナイロン6−10、12ナイロンなど)、ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリプロピレン、エラストマ−、天然材質等が挙げられる。また、これらの材質が組み合わされても構わない。
刷毛の横断面形状は特に限定されず、例えば、円形状、三角形状、四角形状、六角形状、花びら状、円弧状などが挙げられる。また、これら形状を組み合わせてもよい。
また、刷毛は予めウエーブ状、ツイスト状、ジグザグ状等に加工されていても構わない。
また、各刷毛は、刷毛の先端に通常形成される毛先丸め部を除いて、略同一径の通常毛であってもよいし、先端に向かうにつれて外径が漸次細くなるテーパー毛であってもよい。これら通常毛とテーパー毛とを混毛してもよいし、植毛穴11毎に変えてもよい。テーパー毛では、狭い隙間への毛先の進入性が良く、ソフトなあたり心地を実現でき、歯頚部の刷掃やマッサージにより好適である。
テーパー毛としては、例えば、特開平6−141923号公報に記載されているような両端がテーパー加工されたもの、特開昭57−50220号公報に記載されているような片端のみテーパー加工されたもの、特開2002−58838号公報に記載されているような1本の毛に多数の先鋭部が形成されたもの、特開平9−322821号公報に記載されているような海島構造を有するもの、特開2001−178542号公報に記載されているような芯鞘構造のものなどが挙げられる。
全毛束1bの先端によって形成される刷掃面は、例えば、植毛面10aに対して平行な平面、植毛面10aに対して傾斜した平面、長手方向に沿って植毛面10aに対して漸次離間または漸次近接する曲面、凸面、凹面、波状の凹凸面とすることができる。刷掃のしやすさの点からは、先端から後端に向かうにつれて植毛面10aに漸次近接するように傾斜した平面または曲面が好ましい。
平線の高さは特に限定されないが、充分な打ち込み強度を確保しつつ、植毛適性を確保するためには0.9〜2.0mmの範囲であることが好ましい。また、同様の理由から平線の厚みは0.20〜0.25mmであることが好ましい。
また、平線の打ち込み角度は適宜選択され、ワレ・白化の発生を避けるためには、ハンドル体1aの長手方向に対して5〜80°の範囲が好ましく、15〜30°の範囲がより好ましい。平線の打ち込み角度は全ての平線で同一であってもよいし、異なってもよい。
平線の材質としては、金属、プラスチックなどを使用できるが、強度、生産性、コストの点から、金属が好ましく、真鍮またはアルミニウムがより好ましい。
平線の表面には、植毛穴11から抜けにくくするために、溝や細かい凹凸が形成されていてもよい。
植毛穴11の深さ方向の形状については、深さ方向に対して形状が変化しない円柱形状でもよいし、下方に向かうにつれて穴径が小さくなるようなテーパー状であってもよいし、穴の途中に段差が形成された形状であってもよい。また、段差とテーパーとが各々形成された形状であってもよい。また、植毛穴11の底部に0.3mm程度の面取り加工が施されていてもよい。
植毛穴11の開口部の穴径は1.0〜2.0mm(面積0.75〜3.1mm2)であることが好ましい。このような穴径に毛束1bを植毛すると、歯茎部への当り心地が良くなり、歯間部など細かい隙間への毛先の挿入実感が高い歯ブラシとすることができる。
また、歯ブラシ1では、毛束1bが平線によって植毛穴11に固定しているため、抜けにくくなっている。
ヘッド部10と把持部20とネック部30とは同一の樹脂で構成されていなくても構わない。
また、ヘッド部10は、上記実施形態のように、全体的に同一の厚さで前記範囲内にあることが好ましいが、ネック部30側の一部、好ましくはヘッド部10の長さの1/3以下が厚くなっていてもよい。ヘッド部10のネック部30側を厚くすることにより、ネック部30との接続を滑らかにすることができる。
また、本発明の歯ブラシにおいては、ネック部30が省略されていてもよい。すなわち、ハンドル体がヘッド部10と把持部20とから構成されていてもよい。
また、ヘッド部10は、植毛面10aが略矩形状でなくてもよく、例えば、円形状、楕円形状などであってもよい。
植毛穴11の配置パターンは千鳥状であってもよいし、ヘッド部10の幅方向の両端側の端部に、ヘッド部10の中央側に湾曲した円弧状の植毛穴群を形成するパターンであってもよい。
上記のような円弧状の植毛穴群を有する場合には、毛束1bが歯頚部に密着しやすく、歯面の刷掃実感を高める点で、円弧状の植毛穴群に植毛された毛束1bが前記植毛穴群以外の植毛穴に植毛された毛束1bよりも長いことが好ましい。その場合、平均刷毛長の差が0.3〜2.0mmであることが好ましく、0.5〜1.5mmであることがより好ましい。
本発明では、毛束1b自体を円弧状にすることもできるが、その場合にも、ヘッド部10の幅方向の両端側の端部に設け、円弧状の毛束1bをそれ以外の毛束1bよりも長くすることが好ましい。
ポリブチレンテレフタレート(PBT):三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバデュラン5010
ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの一部をイソフタル酸で置換した樹脂(PCTA):イーストマン・ケミカル社製BR203
ポリプロピレン(PP):プライムポリマー社製J700GP
ポリアセタール(POM):旭化成ケミカルズ社製HC490
また、使用した樹脂の曲げ弾性率を、ISO 178に準拠して測定した。引張破壊ひずみを、ISO 527−1,2に準拠して測定した。それらの結果を表1に示す。
表1に示す樹脂を用いて射出成形して、植毛穴の穴径が1.55mm、植毛穴間の距離が0.725mmで、表1に示す厚さW、幅L、縁幅Wのヘッド部と把持部とネック部とを備えるハンドル体を作製した。
次いで、ナイロンからなる刷毛(用毛:8mil、長さ:9.0mm、平切り)の毛束を二つ折りにし、その折り返し部分に平線(幅:1.3mm、長さ:2.1mm、厚さ:0.25mm)を挟み、ヘッド部に形成した植毛穴に挿入して、毛束を植設した。これにより、歯ブラシを得た。
得られた各歯ブラシの口腔内操作性、ヘッド部耐折強度、外観を評価した。評価結果を表1に示す。
各実施例よび各比較例の歯ブラシを10人の被験者が実際に使用し、口腔内での歯ブラシの操作性について以下の基準で点数を付けた。そして、10人の平均値により口腔内操作性を評価した。点数が高い程、口腔内操作性に優れる。
[点数基準]
7点:非常に良い。
6点:かなり良い。
5点:やや良い。
4点:どちらともいえない。
3点:やや良くない。
2点:かなり良くない。
1点:非常に良くない。
[評価基準]
◎:平均値5.5点以上
○:平均値5.0点以上5.5点未満
△:平均値4.0点以上5.0点未満
×:平均値4.0点未満
歯ブラシの刷毛の植毛穴から出ている部分を切断し、ヘッド部の植毛面側を平滑にした。その後、アイゾット衝撃試験機に固定し、植毛面側からハンマーにより衝撃を与え、ヘッド部が破断したときの衝撃エネルギーを測定(測定数10)し、平均値を求めた。そして、以下の基準で評価した。
[評価基準]
○:平均値0.3J以上
△:平均値0.15J以上0.3J未満
×:平均値0.15J未満
1穴中の全刷毛を専用器具によって把持し、島津製作所製オートグラフを用いて植毛穴から毛束が抜けるまでの最大引張応力(N)を測定(引張速度20mm/分)(n=20)し、以下の基準で評価した。毛束保持強度が高い程、毛束が抜けにくい。
[評価基準]
○:平均値20N以上
△:平均値10N以上20N未満
×:平均値10N未満
各実施例よび各比較例の歯ブラシを10本ずつ作製し、ヘッド部の縁部の変形、クラックおよび白化、ソリの発生を目視により下記評価基準をもとに評価した。
[評価基準]
○:変形・ワレ・白化・ソリの発生率:0%
△:変形・ワレ・白化・ソリの発生率:20%未満
×:変形・ワレ・白化・ソリの発生率:20%以上
これに対し、ヘッド部の線幅Wが0.4mm未満であった比較例1の歯ブラシは、ヘッド部耐折強度が低く、外観不良も見られた。
ヘッド部の厚さTが5.0mmを超えていた比較例2の歯ブラシは、ヘッド部の線幅Wが0.9を超えていた比較例3の歯ブラシは、口腔内操作性が低かった。
1a ハンドル体
1b 毛束
10 ヘッド部
10a 植毛面
11,11a,11b 植毛穴
12,13 端縁
20 把持部
30 ネック部
Claims (2)
- 植毛面に複数の植毛穴が設けられた略板状のヘッド部を備え、刷毛の毛束を二つ折りにし、その間に挟み込まれた平線を前記植毛穴に打ち込むことによって、前記毛束が前記植毛穴に植設されてなる歯ブラシであって、
ヘッド部は、曲げ弾性率が1900MPa以上かつ引張破壊ひずみが80%以上の樹脂により構成され、下記測定方法により測定される耐折強度が0.15J以上であり、厚さが2.0〜4.0mmであり、ヘッド部の幅方向の最外側の植毛穴と端縁との最短距離が0.4〜0.9mmであることを特徴とする歯ブラシ。
[耐折強度]
歯ブラシの刷毛の植毛穴から出ている部分を切断し、ヘッド部の植毛面側を平滑にする。その後、アイゾット衝撃試験機に固定し、植毛面側からハンマーにより衝撃を与え、ヘッド部が破断したときの衝撃エネルギーを測定する。その衝撃エネルギーを耐折強度とする。 - ヘッド部が、ポリブチレンテレフタレート樹脂で構成されている請求項1に記載の歯ブラシ。
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