JP5529392B2 - 弾性不織布及びこれを用いた繊維製品 - Google Patents
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Description
特許文献2には、不織布を構成するプロピレンポリマーをフリーラジカル開始剤で処理することが開示されている。このような処理によってプロピレンポリマーの流動性は向上するが、プロピレンポリマーの熱安定性は低下する。
さらに、特許文献4には、[mmmm]が60%未満のオレフィンホモポリマーを含む繊維が開示されているが、高規則性ポリプロピレンの配合量の規定はなく、弾性と成形性のバランスに課題がある。
特許文献5には、(mmmm)が0.2〜0.6であり、[rrrr/(1−mmmm)]≦0.1であるプロピレンポリマーとオレフィンポリマーを含む樹脂組成物が開示されているが、低結晶性ポリプロピレンの配合量が十分ではないため、繊維を形成し、これを引っ張った場合に伸長はするものの、伸長したままである。このため、伸長したままではなく縮むもの、すなわち弾性回復性を有する繊維を与える樹脂組成物が要求されている。
すなわち本発明は、以下の弾性不織布及びこれを用いた繊維製品を提供するものである。
1. 低結晶性ポリプロピレン及び高結晶性ポリプロピレンを含有する結晶性樹脂組成物からなる弾性不織布であって、該低結晶性ポリプロピレンが、以下の(a)及び(b)を満たし、かつ示差走査型熱量計(DSC)で測定した上記結晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)が20〜100℃であることを特徴とする弾性不織布。
(a)示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
(b)立体規則性指数([mm])が50〜90モル%である。
2. 結晶性樹脂組成物が、低結晶性ポリプロピレン80〜99質量%と高結晶性ポリプロピレン20〜1質量%との組み合わせを含有する上記1に記載の弾性不織布。
3. 低結晶性ポリプロピレンが、以下の(c)〜(h)を満たす上記1又は2に記載の弾性不織布。
(c)[mmmm]=20〜60モル%
(d)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(e)[rmrm]>2.5モル%
(f)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0
(g)質量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
(h)分子量分布(Mw/Mn)<4
4. 上記1〜3のいずれかに記載の弾性不織布を用いた繊維製品。
本発明の弾性不織布を形成する結晶性樹脂組成物において、低結晶性ポリプロピレンと高結晶性ポリプロピレンは、低結晶性ポリプロピレン80〜99質量%と高結晶性ポリプロピレン20〜1質量%の組み合わせであることが好ましく、より好ましくは低結晶性ポリプロピレン95〜99質量%と高結晶性ポリプロピレン5〜1質量%の組み合わせである。
なお、上記Tcは、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下、220℃で5分間保持した後、20℃/分で−30℃まで降温させることにより得られた発熱カーブのピークのピークトップとして求めることができる。
(a)示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
低結晶性ポリプロピレンの融点(Tm−D)が0℃以上であると、紡糸により得られた繊維におけるべたつきの発生が抑制され、120℃以下であると、十分な弾性回復性が得られる。このような観点から、融点(Tm−D)は、好ましくは0〜100℃である。
なお、上記融点(Tm−D)は、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして求めることができる。
立体規則性指数([mm])が50モル%以上であると、べたつきの発生が抑制され、90モル%以下であると、不織布の製造工程における操作性が向上する。このような観点から、この立体規則性指数([mm])は、好ましくは60〜90モル%、より好ましくは60〜80モル%である。
立体規則性指数([mm])は、後述の日本電子(株)製JNM−EX400型装置を用い、13C−NMRスペクトルを後述する条件と同様にして測定し、プロピレン連鎖のメソトリアッド分率[mm]を測定して求めた値である。立体規則性指数([mm])の値が大きいほど、立体規則性が高い。
(c)[mmmm]=20〜60モル%
上記低結晶性ポリプロピレンのメソペンタッド分率[mmmm]が20モル%以上であると、べたつきの発生が抑制され、60モル%以下であると、結晶化度が高くなりすぎることがないので、弾性回復性が良好となる。このメソペンタッド分率[mmmm]は、好ましくは30〜50モル%、より好ましくは40〜50モル%である。
上記メソペンタッド分率[mmmm]、後述するラセミペンタッド分率[rrrr]及びラセミメソラセミメソペンダッド分率[rmrm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、13C−NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率、ラセミ分率、及びラセミメソラセミメソ分率である。メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。また、後述するトリアッド分率[mm]、[rr]及び[mr]も上記方法により算出した。
なお、13C−NMRスペクトルの測定は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案されたピークの帰属に従い、下記の装置及び条件にて行うことができる。
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/ml
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
M=m/S×100
R=γ/S×100
S=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8〜22.5ppm
Pαβ:18.0〜17.5ppm
Pαγ:17.5〜17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7〜20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖:21.7〜22.5ppm
[rrrr]/[1−mmmm]の値は、上記のペンタッド単位の分率から求められ、上記低結晶性ポリプロピレンの規則性分布の均一さを示す指標である。この値が大きくなると、既存触媒系を用いて製造される従来のポリプロピレンのように高規則性ポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物となり、べたつきの原因となる。
上記低結晶性ポリプロピレンにおいて、[rrrr]/(1−[mmmm])が0.1以下であると、紡糸により得られた繊維におけるべたつきが抑制される、このような観点から、[rrrr]/(1−[mmmm])は、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.04以下である。
上記低結晶性ポリプロピレンのラセミメソラセミメソ分率[rmrm]が2.5モル%を超える値であると、該低結晶性ポリプロピレンのランダム性が増加し、紡糸により得られた繊維における弾性回復性がさらに向上する。[rmrm]は、好ましくは2.6モル%以上、より好ましくは2.7モル%以上である。
(f)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0
[mm]×[rr]/[mr]2は、上記低結晶性ポリプロピレンのランダム性の指標を示し、この値が2.0以下であると、紡糸により得られた繊維において十分な弾性回復性が得られ、かつべたつきも抑制される。[mm]×[rr]/[mr]2は、0.25に近いほどランダム性が高くなる。上記十分な弾性回復性を得る観点から、[mm]×[rr]/[mr]2は、好ましくは0.25を超え1.8以下、より好ましくは0.5〜1.5である。
上記低結晶性ポリプロピレンにおいて質量平均分子量が10,000以上であると、該低結晶性ポリプロピレンの粘度が低すぎず適度のものとなるため、紡糸の際の糸切れが抑制される。また、質量平均分子量が200,000以下であると、上記低結晶性ポリプロピレンの粘度が高すぎず、紡糸性が向上する。この質量平均分子量は、好ましくは30,000〜150,000であり、より好ましくは50,000〜150,000である。この質量平均分子量の測定法については後述する。
上記低結晶性ポリプロピレンにおいて、分子量分布(Mw/Mn)が4未満であると、紡糸により得られた繊維におけるべたつきの発生が抑制される。この分子量分布は、好ましくは3以下である。
上記質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算の質量平均分子量であり、上記分子量分布(Mw/Mn)は、同様にして測定した数平均分子量(Mn)及び上記質量平均分子量(Mw)より算出した値である。
カラム :TOSO GMHHR−H(S)HT
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
<測定条件>
溶媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0ml/分
試料濃度 :2.2mg/ml
注入量 :160μl
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
連続フィラメントの編み糸は通常、40デニール〜2,000デニールの範囲である(デニール=グラム/9000ヤードの数値)。フィラメントは1〜20デニール/フィラメント(dpf)であってもよい。紡績速度は通常、800m/分〜1500m/分である。その典型的な方法を以下に示す。フィラメントを延伸比3:1またはそれ以上で延伸し(1段または2段延伸)、パッケージ上に巻き付ける。2段延伸によれば高延伸比が可能となる。巻取り速度は、通常2,000m/分〜3,500m/分程度である。900m/分を超える巻取り速度では、良好な紡糸性を維持しつつより細いフィラメントを得るために、分子量分布の狭い結晶性樹脂組成物を用いることが好ましい。具体的には、5g/10分以上のMFRを有し、狭い分子量分布を有し、2.8以下の多分散性指数(PI)を有する結晶性樹脂組成物を用いることが好ましい。
部分延伸糸(POY)は、上述の連続フィラメントのような固体状態の延伸を行わない、紡糸から直接生成した繊維である。繊維中の分子の延伸は、結晶性樹脂組成物がノズルを出た直後に、溶融状態で行われる。繊維が固まると、繊維延伸は行われず、繊維はパッケージに巻き取られる。POY糸は高延伸及び低引張り強さを有する傾向にあり、固体状態での延伸を行い、高引張強度及び低延伸を有する十分に配向された糸(FOY)とは対照的である。
塊状連続フィラメント加工工程としては、一段工程及び二段工程の2つの基本的な工程が挙げられる。例えば、二段工程では、非延伸糸は1,000m/分未満、通常は750m/分未満で紡糸され、パッケージ上に配置される。糸は通常二段で延伸され、テクスチャライザーと呼ばれる機械上で“塊状”になる。巻取り及び延伸速度はバルキングまたはテクスチャライザー装置により2,500m/分以下に制限される。二段連続フィラメント工程と同様に、二次的な結晶化は素早い延伸織りを必要とする。今日において最も一般的な工程は一段紡糸/延伸/織り(SDT)工程である。この工程は二段工程と比較して、経済性、効率及び品質において優れ、バルキング装置が直列である以外は一段連続フィラメント工程に類似する。バルクまたは織り方は糸の外観を変化させ、糸を分離して、十分な緩やかな曲げ及びしわを加えるので、糸がより太く(かさ張って)見える。
短繊維紡績工程としては、従来型紡績方法及びコンパクトスピニングが挙げられる。従来型紡績方法は通常、以下の2つの工程を含む:1)製造、仕上げ工程及び巻取り、続いて、2)延伸、第二仕上げ工程、圧接(クリンピング)、及び短繊維への切断である。フィラメントとしては、例えば、用途に応じて1.5dpfから70dpfのものが用いられる。短繊維の長さは用途に適するように、7mm程度の短いものや、または200mmの長いものまである。多くの用途において、繊維はクリンプ付与される。クリンピングは、一対のニップロールを用いて、蒸気加熱した箱にトウを過剰供給することにより達成される。過剰供給により、トウが箱内で折り畳まれ、フィラメントの曲げまたはクリンプを生じる。これらの曲げは箱内に吹き込まれる蒸気によりヒートセットされる。樹脂の分子量、分子量分布及びアイソタクチック含量は全てクリンプ安定性、振幅及びクリンピングのし易さに影響を及ぼす。
メルトブロー法としては、従来公知の方法を採用することができる。たとえば溶融混練した結晶性樹脂組成物をノズルより押し出した後に高速の加熱気体流と接触させて微細繊維とし、この微細繊維を多孔質支持体に捕集して不織布化し、必要に応じて熱融着処理することによって、弾性不織布を製造することができる。このメルトブローン不織布を形成する繊維の平均繊維径は、0.1〜20μm程度であり、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜10μmである。メルトブロー法によって製造した不織布は、該不織布を構成する繊維の平均径が小さいため、優れたバリア特性を有し、良好な風合を有する。
メルトブローの具体的な工程としては、例えば、押出機で融解された結晶性樹脂組成物を定量溶融ポンプに移送し、溶融結晶性樹脂組成物は溶融ポンプによって安定した産出速度で特別な溶融吹き込み金型に送る。金型を出た溶融結晶性樹脂組成物を、高温・高速風に接触させる。この高温・高速風はフィラメントを延伸し、さらに、冷却空気と共にフィラメントを凝固させる。上述の全ての繊維形成工程は通常、金型から数インチ内で行われる。金型の設計は効果的に良質品を生成するために重要である。布地はフィラメントを細孔形成ベルト上に直接吹き付けることにより形成され、ノズルと多孔質形成ベルトとの距離は、通常200〜400mmである。また、可能な限り細い繊維を得るためには、200g/10分以上の非常に高いMFRを有する結晶性樹脂組成物を用いることが要求されるが、より高い加工温度においては、20g/10分程度の低MFRの結晶性樹脂組成物を用いることもできる。
スパンボンド法では、溶融混練した結晶性樹脂組成物を紡糸し、延伸、開繊することによって連続長繊維を形成し、引き続き連続した工程で連続長繊維を移動捕集面上に堆積させ、絡合することによって弾性不織布を製造する。スパンボンド法では、弾性不織布を連続的に製造することができ、スパンボンド法によって製造した弾性不織布は、該不織布を構成する繊維が延伸された連続の長繊維であるため、強度が大きい。
スパンボンド法としても、従来公知の方法を採用することができ、例えば、数千の孔を有する大ノズルや、或いは例えば40程度の孔を有する小ノズル群から、溶融ポリマーの押出しにより繊維を製造することができる。ノズルを出た後、溶融繊維はクロスフロー冷気システムにより冷却され、次にノズルから引き離され、高速空気により延伸される。通常、2種類の空気減衰方法があり、その両方ともベンチュリー効果を用いる。第1の方法は、吸引スロットを用いてフィラメントを延伸し(スロット延伸)、ノズルの幅または機械の幅で行う。第2の方法は、ノズルまたは吸引銃を通してフィラメントを延伸する。この方法で形成されるフィラメントはスクリーン(ワイヤー)上または細孔形成ベルト上で収集されウェブを形成する。次に、ウェブは圧縮ロールを通過し、続いて加熱カレンダーロール間を通り、1つのロール上の盛り上がり部分がウェブの10%〜40%の面積を含む部分で結合して、不織布を形成する。
スパンボンド法で得られるスパンボンド不織布(S)は結晶性樹脂組成物から得られるメルトブローン不織布(M)と積層されていてもよい。少なくとも一組のスパンボンド不織布からなるS層であるスパンボンド不織布層/メルトブローン不織布層のSM構造からなる不織布積層体は優れた柔軟性を示す。SM構造が繰り返されていてもいい。また、少なくとも一つの結晶性樹脂組成物から得られるメルトブローン不織布(M)の層の両側に、スパンボンド不織布(S)の層が存在する構造を有する積層体であってもいい。すなわちスパンポンド不織布層/メルトブローン不織布層/スパンボンド不織布層のSMS構造の不織布積層体であってもよいし、その構造が繰り返されていてもよい。積層体の強度と柔軟性のバランスの点からは、SMSの不織布積層体が好ましい。SMSの目付量は通常7〜100g/m2、好ましくは10〜70g/m2である。さらに好ましくは、10〜50g/m2である。
延伸性及び弾性に優れた本発明の弾性不織布は、上述の方法に加えて、さらにアニーリング工程を行って製造することができる。
アニーリングは連続フィラメントにおいて繊維形成後、または繊維から不織布を製造した後に行うことができる。アニーリングは延伸繊維の内部応力を部分的に軽減し、繊維における結晶性樹脂組成物の弾性回復特性を回復させる。アニーリングは内部の結晶構造、並びにアモルファス及び半結晶相の相対順序を著しく変化させ、弾性特性を回復させる。例えば、40℃以上、かつ、結晶性樹脂組成物の結晶融点よりも少し低い温度での繊維のアニーリングは、繊維の弾性特性の回復に適している。
また、本発明の弾性不織布を用いた繊維製品としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の繊維製品を挙げることができる。すなわち、紙オムツのサイドバンド、ギャザー等の使い捨ておむつ用部材、おむつカバー用伸縮性部材、生理用品用伸縮性部材、衛生製品用伸縮性部材、伸縮性テープ、絆創膏、衣料用伸縮性部材、衣料用絶縁材、衣料用保温材、防護服、帽子、マスク、手袋、サポーター、伸縮性包帯、湿布剤の基布等、伸縮性、通気性、人体の動きへの追随性などが要求される部材や、スベリ止め基布、振動吸収材、指サック、クリーンルーム用エアフィルター、エレクトレット加工を施したエレクトレットフィルター、セパレーター、断熱材、コーヒーバッグ、食品包装材料、自動車用天井表皮材、防音材、クッション材、スピーカー防塵材、エアクリーナー材、インシュレーター表皮、バッキング材、接着不織布シート、ドアトリム等の各種自動車用部材、複写機のクリーニング材等の各種クリーニング材、カーペットの表材や裏材、農業捲布、木材ドレーン、スポーツシューズ表皮等の靴用部材、かばん用部材、工業用シール材、ワイピング材、合成皮革用の基材、シーツ、袋物、家具、インテリア、カーシート、衣服、引伸ばし可能な保護カバー、包装材、パップ材、伸縮テープ、サポーター、手袋、上着、下着などを挙げることができる。
実施例1
(1)低結晶性ポリプロピレンの製造
攪拌機付きの内容積20Lのステンレス製反応器に、n−ヘプタンを20L/h、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/h、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートと(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドとトリイソブチルアルミニウムとプロピレンとを質量比1:2:20で、事前に接触させて得られた触媒成分を、ジルコニウム換算で6μmol/hで連続供給した。
重合温度を70℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が8モル%、反応器内の全圧が0.7MPa・Gに保たれるように、プロピレンと水素を連続供給し、重合反応を行った。
得られた重合溶液に、安定剤としてイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)をその含有割合が500質量ppmになるように添加し、次いで溶媒であるn−ヘプタンを除去することにより、低結晶性ポリプロピレンを得た。
得られた低結晶性ポリプロピレンについて、上述した方法により、融点(Tm−D)、立体規則性指数([mm])、メソペンタッド分率[mmmm]、ラセミメソラセミメソ分率[rmrm]、[rrrr]/(1−[mmmm])、[mm]×[rr]/[mr]2、質量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。結果を表1に示す。
上記(1)で得られた低結晶性ポリプロピレン85質量%、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が1500g/10分の高結晶性ポリプロピレン(BASEL社製、HF461Y)15質量%の配合比で混合し、結晶性樹脂組成物を調製した。この結晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)を上述した方法により測定した。結果を表1に示す。
次に、スクリュー径65mmのギヤポンプを有する単軸押出機、ダイ(孔径0.36mm、孔数720ホール)、高温圧縮空気発生装置、ネットコンベアー及び巻取り装置を備えた装置に、上記結晶性樹脂組成物を供給し、成形して弾性不織布を得た。すなわち、樹脂温度220℃で上記結晶性樹脂組成物を溶融し、ダイから単孔当たり0.3g/分の速度で溶融状態の結晶性樹脂組成物を糸状物として吐出させ、この糸状物を、0.13MPa、226℃の圧縮空気を用いて、ライン速度2.5m/分のネットコンベアー上に吹き付けることによって、弾性不織布を得た。ネットコンベアーで搬送された弾性不織布を巻取り機にてロール状に巻き取った。
得られた弾性不織布について、下記の測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
得られた弾性不織布から、長さ200mm×幅25mmの試験片を、機械方向(MD)と機械方向に対して垂直方向(TD)についてサンプリングした。引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフAG−I)を用いて、初期長L0を100mmに設定し、引張速度300mm/分で100%伸長した後、直ちに300mm/分で戻し、応力が0となったときの長さL(mm)を測定した。下記式により弾性回復率(%)を算出した。
弾性回復率(%)=(2−L/L0)×100
(2)弾性不織布のべたつきの評価
パネラー10名により手触りの評価を行った。べたつきが無いと感じる場合を2点、少しべたつきを感じる場合を1点、べたつきを感じる場合を0点として採点し、パネラー10名の合計点が14点以上を評価A、10〜13点を評価B、9点以下を評価Cと判定した。
(3)紡糸性
実施例1、2及び参考例4については、1時間の紡糸中に、ダイスのノズル168本から得られる糸のうち破断した糸の本数で評価し、参考例1〜3については、1時間の紡糸中に、全てのノズルから得られる糸のうち破断した糸の本数で評価した。なお、実施例1、2及び参考例4において、全てのノズルから得られる糸で評価した結果もノズル168本から得られる糸で評価した結果と同じであった。
◎:破断がない。
○:破断が1〜2本である。
×:破断が3本以上である。
(4)ローピング
ノズルとエジェクターとの間で、隣接する糸が付着した束になる現象(ローピング)の発生の有無を目視で確認した。
◎:発生しない。
○:発生が少ない。
×:発生が多い。
(5)熱融着性
ウェブをエンボスロールにより熱融着して不織布化するときのエンボス温度で評価した。温度が高すぎるとウェブはロールに付着して巻き付き、温度が低すぎると十分な接着強度が得られず、毛羽立ちやほつれが発生する。このようなロール付着、毛羽立ちが発生しない温度をエンボス温度と定義した。また、評価条件は下記のとおりである。
エンボス圧力(線圧):39.2kN/m
速度:5m/分
ウェブ幅:0.5m
実施例1において、低結晶性ポリプロピレン92.5質量%、高結晶性ポリプロピレン7.5質量%の配合比とした以外は、実施例1と同様にして弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
実施例1の重合反応において、重合温度を67℃に設定し、反応器の気相部の水素濃度が0.8モル%、反応器内の全圧が0.75MPa・Gに保たれるように、プロピレンと水素を連続供給した以外は実施例1と同様にして低結晶性ポリプロピレンを得た。
得られた低結晶性ポリプロピレンについて実施例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
この低結晶性ポリプロピレン樹脂を95質量%、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFRが60g/10minの高結晶性ポリプロピレン(プライムポリマー社製、Y6005GM)を5質量%の配合比で混合し、結晶性樹脂組成物を調製した。この結晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)を上述した方法により測定した。結果を表1に示す。
次に、スクリュー径65mmのギヤポンプを有する単軸押出機を用いて樹脂温度220℃で上記結晶性樹脂組成物を溶融押出し、ノズル径0.5mmのノズル(孔数501ホール)より、単孔当たり0.5g/minの速度で溶融樹脂を吐出させて紡糸した。紡糸により得られた繊維を温度15℃、風速0.8m/secの空気で冷却しながら、ノズル下1400mmに設置したエジェクターでエジェクター圧力0.22MPaで吸引して、ノズル下255mmで5m/minのライン速度で移動しているネット面に繊維を積層した。ネット面に積層された繊維束を40℃に加熱したエンボスロールで線圧39.2kN/mでエンボス加工し、引取りロールに巻き取った。
得られた弾性不織布について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
参考例1において、高結晶性ポリプロピレン(プライムポリマー社製、Y6005GM、過酸化物による分解品)を、高結晶性ポリプロピレン(プライムポリマー社製、Y2000GP、非分解品)に変え、弾性不織布の成形に用いるノズル径を0.3mm、孔数を841ホール、エジェクター圧力を0.40MPa、ライン速度を11m/minに変えた以外は、参考例1と同様にして弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
参考例2において低結晶性ポリプロピレン98質量%、高結晶性ポリプロピレン2質量%とした以外は、参考例2と同様にして弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
実施例1において、低結晶性ポリプロピレン40質量%、高結晶性ポリプロピレン60質量%の配合比とした以外は、実施例1と同様にして弾性不織布を成形し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1及び2に示す。
Claims (4)
- 低結晶性ポリプロピレン80〜92.5質量%及び高結晶性ポリプロピレン20〜7.5質量%を含有する結晶性樹脂組成物からなる弾性不織布であって、該低結晶性ポリプロピレンが、以下の(a)及び(b)を満たし、かつ示差走査型熱量計(DSC)で測定した上記結晶性樹脂組成物の結晶化温度(Tc)が20〜100℃であることを特徴とする弾性不織布。
(a)示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下−10℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm−D)が0〜120℃である。
(b)立体規則性指数([mm])が50〜90モル%である。 - 低結晶性ポリプロピレンが、以下の(c)〜(h)を満たす請求項1に記載の弾性不織布。
(c)[mmmm]=20〜60モル%
(d)[rrrr]/(1−[mmmm])≦0.1
(e)[rmrm]>2.5モル%
(f)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0
(g)質量平均分子量(Mw)=10,000〜200,000
(h)分子量分布(Mw/Mn)<4 - メルトブロー法によって製造された請求項1又は2に記載の弾性不織布。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の弾性不織布を用いた繊維製品。
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