JP5525247B2 - 高強度で曲げ加工性に優れた銅合金 - Google Patents

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Description

本発明は、高強度で曲げ加工性に優れた銅合金に関し、自動車用コネクタ等に好適な電気・電子部品用の高強度銅合金に関する。
電子機器の小型化及び軽量化の要請に伴い、コネクタ、端子、スイッチ、リレー、リードフレームなどの電気・電子部品の小型化及び軽量化が進んでいる。
この電気・電子部品の小型化及び軽量化のために、これらに使用される銅合金材料も板厚及び幅が小さくなり、ICにおいては、板厚が0.1〜0.15mmと薄い銅合金板も使用されるようになってきている。その結果、これらの電気・電子部品に使用される銅合金材料には、より一層高い引張強度が求められるようになっている。例えば、自動車用コネクタなどでは、耐力650MPa以上の高強度銅合金板が求められるようになっている。
また、これらコネクタ、端子、スイッチ、リレー、リードフレームなどに用いられる銅合金板は、前記高強度および高導電率はもちろんのこと、180°(度)の密着曲げなど厳しい曲げ加工性が要求されることが多くなってきている。
更に、電気・電子部品の前記薄板化及び幅狭化の傾向は、銅合金材料の導電性部分の断面積を減少させる。この断面積の減少による導電性の低下を補うためには、銅合金材料自体に、導電率が30%IACS以上の良好な導電率が求められるようになっている。
このため、前記種々の特性に優れ、且つ安価なコルソン合金(Cu−Ni−Si系銅合金)が電気・電子部品用に使用されるようになった。このコルソン合金はケイ化ニッケル化合物(Ni2Si) の銅に対する固溶限が温度によって著しく変化する合金で、焼入・焼戻によって硬化する析出硬化型合金の1種であり、耐熱性や高温強度も良好で、これまでも、導電用各種バネや高抗張力用電線などに広く使用されている。
コルソン合金の高強度化の手段として、Ni、Siなどの溶質元素の多量添加や焼鈍−圧延の繰り返し、時効処理後の仕上げ圧延(調質処理)率の増大などの一般的手法が知られている。しかし、Ni、Siなどの溶質元素の多量添加はNi−Si系介在物量が増大し、曲げ加工性が低下しやすく、特に180°の密着曲げの際には介在物が存在すると、曲げ加工性を著しく劣化させる。一方仕上げ圧延(調質処理)率の増大は加工硬化が大きくなるために曲げ加工性の悪化を伴う。そのため、強度レベルと導電性レベルが高くても電気・電子部品に加工できなくなる場合がある。
一方で、従来から、銅合金の不純物量を制御することにより、曲げ加工性を向上させる方法が開示されている。例えば、特許文献1によれば、Ni、Siに加えてMgを含有し、同時にSの含有量を制限して好適な強度、導電性、曲げ加工性、応力緩和特性、メッキ密着性を向上させている。特許文献2によれば、Fe量を0.1%以下に制限し、強度、導電率、曲げ加工性を向上させている。
また、銅合金組織の介在物、析出物のサイズや量を制御することにより、曲げ加工性を向上させる方法も開示されている。例えば、特許文献3によれば、介在物の大きさが10μm以下であり、かつ、5〜10μmの大きさの介在物個数を制限し、強度、導電率、曲げ加工性、エッチング性、メッキ性を向上させている。特許文献4によれば、溶体化後に冷延を行わずに時効を施すことで、介在物サイズを2μm以下であり、かつ、0.1μm以上2μm以下の介在物の総量が全容積の0.5%以下と制御する方法が開示されている。
また、銅合金組織の結晶粒径のサイズや形状を制御することにより、曲げ加工性を向上させる方法も開示されている。例えば、特許文献5によれば、溶体化焼鈍前に時効−圧延を行うことで、第二相粒子を高密度に分散させ、結晶粒径を微細化する方法が開示されている。特許文献6によれば、Tiを添加することにより、第二相粒子を高密度に分散させ、平均結晶粒径を20μm以下と制御することで、曲げ加工性を向上させている。特許文献7によれば、平均結晶粒径を10μm以下かつ結晶粒径のアスペクト比を0.5〜2.0と制御することで、曲げ加工性を向上させている。
更に、コルソン合金の曲げ加工性を向上させる有効な方法として、結晶粒の集合組織を制御する技術が開示されている。例えば、特許文献8によれば、Niを2.0〜6.0質量%、SiをNi/Siの質量比で4〜5の範囲で各々含むコルソン合金の、平均結晶粒径を10μm以下とするとともに、SEM−EBSP法による測定結果で、Cube方位{001}<100>の割合が50%以上である集合組織を有し、かつ、300倍の光学顕微鏡による組織観察によって観察しうる層状境界を有さない銅合金板が開示されている。
この特許文献8によれば、Cu−Ni−Si系銅合金からなる銅合金圧延板を仕上げ冷間圧延するに際し、最終溶体化処理前に95%以上の加工率で冷間圧延し、前記最終溶体化処理後に20%以下の加工率で冷間圧延した後、時効処理を施して、前記した組織に制御し、導電率が20〜45%IACS程度で、700〜1050MPa程度の引張強度を有する、高強度で、曲げ加工性に優れたコルソン合金を得ている。
また、特許文献12によれば、Cu−Ni−Si系銅合金の{420}面、{220}面の回折強度をI{420}/I0{420}>1.0、I{220}/I0{220}≦3.0と制御することで曲げ加工性を向上させている。
この他、コルソン合金では無いけれど、銅合金の曲げ加工性を向上させる有効な方法として、結晶粒の集合組織を制御する技術が開示されている。例えば、特許文献9によれば、コルソン合金のNiの一部をCoに置換した銅合金を、最終溶体化焼鈍前に、再結晶焼鈍−圧延を施すことにより、Cube方位のX線強度の割合を0.3以上とし、曲げ加工性を向上させる方法が開示されている。
特許文献10によれば、Fe含有Cu合金において、{200}面、{220}面のX線回折強度Iの比を0.5〜10と制御することにより、曲げ加工性を向上させる方法が開示されている。
特許文献11によれば、Cu−Fe−P系合金において、{200}面、{311}面、{220}面のX線回折強度Iの比、[I{200}面+I{311}面、{220}面]/{220}面を0.4以上と制御することにより、曲げ加工性を向上させる方法が開示されている。
特開2002−180161号公報 特開2001−207229号公報 特開2001−49369号公報 特開2006−249516号公報 特開2008−266787号公報 特許第4006468号公報 特開2007−270171号公報 特開2006−152392号公報 特開2009−7666号公報 特開2002−339028号公報 特開2000−328157号公報 特開2008−223136号公報
前記した特許文献8、12などのコルソン合金の曲げ加工性向上は、前記小型化及び軽量化した電気・電子部品用として、ノッチング後の90°曲げなどの厳しい曲げ加工性に対応したものである。
ただ、これら改良されたコルソン合金においても、例えば、0.2%耐力が650MPa以上の強度レベルで、180°の密着曲げなど、前記した従来の曲げ加工以上に厳しい条件の曲げ加工を加えると、割れが生じるなどの問題があり、更なる曲げ加工性の向上が課題である。
また、前記した従来技術から分かる通り、銅合金の曲げ加工性向上のための、粗大第二相粒子、結晶粒径、集合組織の各制御は、各々個別に行われており、これらを組み合わせて、統合して制御された例はあまり無かった。これは、これらの制御を組み合わせて、統合して制御することが困難であったためである。
例えば、前記特許文献4、5に示すように、粗大第二相粒子抑制と結晶粒微細化を制御する方法としては、溶体化焼鈍前の焼鈍−圧延の実施が上げられる。一方で、結晶粒微細化と集合組織制御には、特許文献8に示すように、溶体化前に95%以上の強圧下が必要である。ここで、溶体化前に焼鈍−圧延を施してしまうと、溶体化前に95%以上の強圧下を施すことが難しい。このため、実際の銅合金の製造方法(製造過程)において、従来は、前者の粗大第二相粒子と結晶粒微細化制御と、後者の集合組織制御とを同時に満たす制御は困難であった。
本発明はかかる問題に鑑み、銅合金の曲げ加工性向上のための、前記粗大第二相粒子、結晶粒径、集合組織の各制御を組み合わせて行うことを可能とし、もって、180°の密着曲げ加工でも割れが生じない、強度−曲げ加工性バランスに優れた銅合金を提供することを目的とする。
この目的を達成するための、本発明の高強度で曲げ加工性に優れた銅合金の要旨は、質量%で、Ni:1.0〜3.6%、Si:0.2〜1.0%、Sn:0.05〜3.0%、Zn:0.1〜3.0%を各々含有し、残部銅および不可避的不純物からなる銅合金であって、この銅合金の組織において、平均結晶粒径が15μm以下で、かつ、直径が0.1μm以上の第二相粒子の平均数密度が5個/μm2 以下であるとともに、SEM−EBSP法による測定結果で、Cube方位{001}<100>の平均面積率が20〜50%(ただし、50%を含まず)であり、かつ、Brass方位{011}<211>、S方位{123}<634>、Copper方位{112}<111>の3つの方位の平均合計面積率が20〜40%である集合組織を有することとする。
ここで、前記銅合金の集合組織において、全ての方位の結晶粒の数に対する前記Cube方位の結晶粒の数の割合(Cube方位の結晶粒の数/全ての方位の結晶粒の数)としての、前記Cube方位の結晶粒の平均数密度が8%以上であることが好ましい。また、前記銅合金が、更に、質量%で、Fe、Mn、Mg、Co、Ti、Cr、Zrのうち一種または二種以上を合計で0.01〜3.0%を含有することが好ましい。また、前記銅合金の0.2%耐力が650MPa以上で、かつ導電率が30%IACS以上であることが好ましい。
本発明者らは、コルソン合金の製造工程を見直し、前記した180°の密着曲げのような、より厳しい加工条件でも割れが生じない、曲げ加工性向上のための条件を種々検討した。言い換えると、前記粗大第二相粒子、結晶粒径、集合組織の各制御を組み合わせて行うことを可能とする製造工程や条件を種々検討した。
この結果、溶体化処理の温度及び昇温速度を、常法とは異なり、段階的に詳細に制御することにより、前記粗大第二相粒子の抑制と結晶粒径の微細化の制御と、集合組織制御とを組み合わせて行えることを知見した。
この新規な溶体化処理の温度と昇温速度との段階的な制御により、粗大第二相粒子の抑制と結晶粒径の微細化が図れ、そして合わせて集合組織の制御が可能となり、強度−曲げ加工性のバランスに優れたコルソン合金の製造や特性の向上が可能となる。
ここで、本発明の集合組織制御では、結晶面だけでなく、結晶面方位も制御する。即ち、本発明では、X線回折で検出される{200}面の中でも、{001}<100>で定義されるCube方位の面積率を高くし、X線回折で検出される{220}面の中でも、{011}<211>で定義されるBrass方位、また{123}<634>で定義されるS方位、{112}<111>で定義されるCopper方位の各面積率を低下させる。
即ち、本発明のように、集合組織制御を、前記した粗大第二相粒子の抑制と結晶粒径の微細化との組み合わせで行う場合、前記180°の密着曲げ加工に対しては、前記Cube方位の平均面積率と、前記Brass方位、S方位、Copperの3つの方位の平均合計面積率とをバランスさせる必要がある。
この点、前記した特許文献8でも、平均結晶粒径を10μm以下とするとともに、SEM−EBSP法による測定結果で、Cube方位{001}<100>の割合を50%以上と多くしている。そして、前記Cube方位の割合を高めるために、通常の方法によって製造したコルソン合金板に必然的に生じる、Cube方位以外の、S方位{123}<634>や、B方位{011}<211>などの、曲げ加工を低下させる方位の存在を、副方位として許容している。具体的に、その表2の実施例ベースでは、S方位とB方位との合計割合で16〜33%程度に制限(許容)している。
このように、前記特許文献8はコルソン合金の集合組織を制御できているものの、その製法は、強圧延後に800℃以上の高い温度で熱処理をしている。このため、組織中に粗大な第二相粒子が分散して、この粗大な第二相粒子を起点に亀裂が生じやすく、180°の密着曲げ性が、後述する実施例における比較例25〜27のように低下する。
これに対して、本発明では、前記した通り、新規な溶体化処理の温度と昇温速度との段階的な制御により、前記粗大な第二相粒子を抑制し、かつ結晶粒径を微細化させている。そして合わせて、前記集合組織の制御を行い、強度−曲げ加工性のバランスに優れたコルソン合金の製造や特性の向上を可能としている。
これによって、本発明では、後述する実施例によって裏付ける通り、0.2%耐力が650MPa以上の高強度レベルであっても、180°の密着曲げで割れが生じない、強度−曲げ加工性バランスに優れたコルソン合金が得られる。
以下に、本発明の実施の形態につき、各要件ごとに具体的に説明するが、先ず、本発明銅合金の組織の要件について順に説明する。なお、以下において、平均結晶粒径、第二相粒子の平均数密度、集合組織における平均面積率を記載する場合は、頭に「平均」を付けずに、単に結晶粒径、数密度、面積率と言う場合もある。
(粗大第二相粒子)
コルソン合金(以下、Cu−Ni−Si系銅合金とも言う)では、鋳造〜均熱〜熱間圧延工程および溶体化焼鈍工程において100nm以上の比較的粗大な第二相粒子が析出することが知られている。また一般的にも、粗大第二相粒子は曲げ加工時にボイドや亀裂の発生源となるため、粗大第二相粒子は数密度が少ないことが求められる。この点、本発明のような、更に、銅板の板厚が薄い、高強度化、厳しい曲げ加工などの条件下では、このような従来のレベル以上に、粗大第二相粒子を抑制する制御が必要となる。
本発明では、円相当径である、直径が0.1μm以上(100nm以上)の、比較的粗大な第二相粒子の平均数密度を5個/μm2 以下と低減することにより、前記厳しい条件下での曲げ加工における、粗大第二相粒子を起点とした割れを低減させる。100nm以上の比較的粗大な第二相粒子の平均数密度が5個を超えて多くなった場合、前記厳しい条件下での曲げ加工におけるボイドや亀裂の発生源となる第二相粒子が増して、この曲げ加工が向上できない。
(粗大第二相粒子測定方法)
粗大第二相粒子は、TEM(透過電子顕微鏡)を用いて10000倍の倍率にて観察を行い、10μm×10μmの範囲を任意に3箇所観察し、円相当径である、直径が0.1μm以上(100nm以上)の粗大な第二相粒子を観察する。そして、これら観察された第二相粒子の個数を測定し、計算により1μm2あたりの第二相粒子の数密度を計算した
。そして、この測定を試料の任意の3箇所について行い、その平均をとって平均数密度とした。
なお、本発明で言う粗大な第二相粒子とは、本発明の合金組成からして、Ni2 SiなどのNiとSiとの化合物(晶析出物)が主体であるが、本発明では第二相粒子の大きさ(サイズ)にはこだわるものの、第二相粒子の組成については特にこだわらない。したがって、定性分析を行わなくても、前記TEMで観察される、直径が0.1μm以上の粗大な粒子を、全て前記した(規定した)第二相粒子として測定する。
ここで、測定される数密度は、試料の膜厚の影響が大きいため、TEM観察時の試料膜厚は100nmで一定とし、膜厚の誤差は±20nmを許容範囲とした。このため、前記第二相粒子の数密度の規定は、TEM観察であるにも関わらず、単位体積(立方μm)ではなく、前記単位面積(平方μm)当たりとした。
(平均結晶粒径)
銅合金において、平均結晶粒径が小さいほど、強度‐曲げ加工性バランスが向上することが知られている。本発明者らは、前記厳しい条件下での曲げ加工では、結晶粒径が粗大となると結晶粒界に沿って亀裂が進展することを知見し、平均結晶粒径を15μm以下では、亀裂が結晶粒内を進展することを知見した。従って、高強度でかつ曲げ加工性を向上させるには、平均結晶粒径を15μm以下とすることが好ましく、10μm以下がより好ましい。
(集合組織)
本発明者らは、曲げ加工時の亀裂が変形帯やせん断帯に沿って進むことに着目し、集合組織(方位粒)によって、180°の密着曲げ加工の際の変形帯やせん断帯の生成挙動が異なることを知見した。
Cube方位:
このうち、Cube方位{001}<100>は、より多くのすべり系が活動できる方位である。このCube方位を面積率にて20%以上集積させることにより、局所的な変形の発達を抑制し、180°の密着曲げ加工性を向上させることが可能となる。このCube方位粒の集積率が低すぎると、前記局所的な変形の発達を抑制することができず、180°の密着曲げ加工性が低下する。したがって、本発明では、先ず、Cube方位{001}<100>の平均面積率を20%以上、好ましくは30%以上と規定する。一方、このCube方位粒の集積率が高すぎると、後述のBrass方位{011}<211>、S方位{123}<634>、Copper方位{112}<111>の3つの方位の平均合計面積率が低下して、強度が低下してしまう。したがって、高強度でかつ曲げ加工性を向上させるには、前記Cube方位の平均面積率を50%以下として、20〜50%の範囲とすることが好ましい。更に、30〜50%の範囲とすることがより好ましい。
また、同じ面積率にて比較する場合、Cube方位の結晶粒(Cube方位粒とも言う)の数密度が高い方が、強度−曲げ性バランスが向上することを知見した。これはCube方位粒の数密度が高いほど、Cube方位粒は板幅方向、板厚方向に均一に分散するため、局所的なひずみが発生しにくいためである。従来技術では、Cube方位につき、面積率やX線のピーク強度比で制御しており、このような数密度に関する知見はなかった。本発明では、後述するSEM−EBSPにて各粒の方位を詳細に調査することにより、面積率に加えて数密度も制御した方が好ましいことを明らかにした。このため、前記銅合金の集合組織において、全ての方位の結晶粒の数に対するCube方位の結晶粒の数の割合(Cube方位の結晶粒の数/全ての方位の結晶粒の数)としての、Cube方位の結晶粒の平均数密度が8%以上であることが好ましい。より好ましくは、Cube方位の結晶粒の平均数密度は10%以上とする。このように、Cube方位粒の数密度は大きいほど好ましいが、前記した通り、Cube方位粒の成長速度は、他の方位粒の成長速度よりも大きく、その数密度を大きくすることには当然ながら限界がある。この点、後述する製造方法において、効率的な製造条件で得られるCube方位粒の平均数密度の上限は40%までである。
Brass方位、S方位、Copperの3つの方位:
本発明のように、集合組織制御を、前記した粗大第二相粒子の抑制や結晶粒径の微細化の組織制御と組み合わせで行う場合、180°の密着曲げ加工に対しては、前記した通り、前記Cube方位の平均面積率だけでなく、さらに、前記Brass方位{011}<211>、S方位{123}<634>、Copper方位{112}<111>の3つの方位の平均合計面積率とを、よりバランス良く存在させる必要がある。
これらBrass方位、S方位、Copperの3つの方位は、活動できるすべり系が限定的である。このため、これらの方位の集積率が高すぎると、局所的な変形が生じてしまい、180°の密着曲げ加工性が低下する。したがって、曲げ加工性を向上させるには、これらBrass方位、S方位、Copperの3つの方位の各面積率の合計は平均で40%以下とし、好ましくは35%以下とする。
しかし、一方で、これら3つの方位粒は圧延時に生成する方位粒であり、一定量集積させることによって強度を向上させる。このため、これらの方位粒の各面積率の合計(合計面積率)が低すぎると、圧延による加工硬化が不足して、強度が低下してしまう。このため、強度を向上させるためには、これら3つの方位の平均合計面積率の下限を好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上とする。
これらの結果、本発明が課題とする、高強度でかつ180°の密着曲げ加工性を両立させるためには、Brass方位{011}<211>、S方位{123}<634>、Copper方位{112}<111>の3つの方位の平均合計面積率を40%以下、好ましくは20〜40%の範囲、より好ましくは25〜35%の範囲とする。
(平均結晶粒径、集合組織測定方法、およびCube方位の結晶粒の平均数密度)
電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope:FESEM)に、後方散乱電子回折像[EBSP: ElectronBack Scattering (Scattered) Pattern]システムを搭載した結晶方位解析法を用いて、本発明では、製品銅合金の板厚方向の表面部の集合組織を測定し、平均結晶粒径の測定を行なう。
EBSP法は、FESEMの鏡筒内にセットした試料に電子線を照射してスクリーン上にEBSPを投影する。これを高感度カメラで撮影して、コンピュータに画像として取り込む。コンピュータでは、この画像を解析して、既知の結晶系を用いたシミュレーションによるパターンとの比較によって、結晶の方位が決定される。算出された結晶の方位は3次元オイラー角として、位置座標(x、y)などとともに記録される。このプロセスが全測定点に対して自動的に行なわれるので、測定終了時には数万〜数十万点の結晶方位データが得られる。
ここで、通常の銅合金板の場合、主に、以下に示す如きCube方位、Goss方位、Brass方位、Copper方位、S方位等と呼ばれる多くの方位因子からなる集合組織を形成し、それらに応じた結晶面が存在する。これらの事実は、例えば、長島晋一編著、「集合組織」(丸善株式会社刊)や軽金属学会「軽金属」解説Vol.43、1993、P285-293などの記載されている。これらの集合組織の形成は同じ結晶系の場合でも加工、熱処理方法によって異なる。圧延による板材の集合組織の場合は、圧延面と圧延方向で表されており、圧延面は{ABC}で表現され、圧延方向は<DEF>で表現される(ABCDEFは整数を示す)。かかる表現に基づき、各方位は下記の如く表現される。
Cube方位{001}<100>
Goss方位{011}<100>
Rotated−Goss方位{011}<011>
Brass方位{011}<211>
Copper方位{112}<111>
(若しくはD方位{4411}<11118>
S方位{123}<634>
B/G方位{011}<511>
B/S方位{168}<211>
P方位{011}<111>
本発明においては、基本的に、これらの結晶面から±15°以内の方位のずれのものは同一の結晶面(方位因子)に属するものとする。また、隣り合う結晶粒の方位差が5°以上の結晶粒の境界を結晶粒界と定義する。
その上で、本発明においては、測定エリア300×300μmに対して0.5μmのピッチで電子線を照射し、上記結晶方位解析法により測定した結晶粒の数をn、それぞれの測定した結晶粒径をxとした時、上記平均結晶粒径を(Σx)/nで算出する。また、Cube方位の結晶粒の平均数密度は、上記結晶方位解析法により測定した、全ての方位の結晶粒の数Nに対するCube方位の結晶粒の数nCubeの割合、(nCube/N)×100(%)として算出する。
また本発明においては、測定エリア300×300μmに対して0.5μmのピッチで電子線を照射し、上記結晶方位解析法により測定した結晶方位の面積をそれぞれ測定し、測定エリアに対する、各方位の面積率(平均)を求めた。
ここで、結晶方位分布は板厚方向に分布がある可能性がある。板厚方向に何点か任意にとって平均をとることによって求める方が好ましい。
銅合金の化学成分組成:
次に、本発明銅合金の化学成分組成について説明する。
本発明銅合金の化学成分組成は、0.2%耐力が650MPa以上の高強度レベルで、180°の密着曲げで割れが生じない、強度−曲げ加工性バランスに優れたコルソン合金を得るための前提となる。これに基づく本発明銅合金の化学成分組成は 質量%で、Ni:1.0〜3.6%、Si:0.2〜1.0%、Sn:0.05〜3.0%、Zn:0.005〜3.0%を各々含有し、更に、必要により、Fe、Mn、Mg、Co、Ti、Cr、Zrのうち一種または二種以上を合計で0.01〜3.0%を含有し、残部銅および不可避的不純物からなる銅合金とする。ここで本明細書にて記載の含有量%は全て質量%である。
以下に、本発明における各元素の限定理由を順に説明する。
Ni:1.0〜3.6%
Niは、Siとの化合物を晶出または析出させることにより、銅合金の強度および導電率を確保する作用がある。Niの含有量が1.0%未満と少な過ぎると、析出物の生成量が不十分であるため、所望の強度が得られないばかりか、銅合金組織の結晶粒が粗大化する。一方、Niの含有量が3.6%を越えて多過ぎると、導電率が低下するのに加えて、粗大な析出物の数が多くなりすぎ、曲げ加工性が低下する。したがって、Ni量は1.0〜3.6%の範囲とする。
Si:0.20〜1.0%
Siは、Niとの前記化合物を晶・析出させて銅合金の強度および導電率を向上させる。Siの含有量が0.20%未満と少な過ぎる場合は、析出物の生成が不十分であるため、所望の強度が得られないばかりか、結晶粒が粗大化する。一方、Siの含有量が1.0%を越えて多過ぎると、粗大な析出物の数が多くなりすぎ、曲げ加工性が低下する。したがって、Si含有量は0.20〜1.0%の範囲とする。
Zn:0.005〜3.0%
Znは、電子部品の接合に用いるSnめっきやはんだの耐熱剥離性を改善し、熱剥離を抑制するのに有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるために0.005%以上含有させる。しかし、過剰に含有すると、却って溶融Snやはんだの濡れ広がり性を劣化させ、また、含有量が多くなると、導電率も大きく低下させる。また、過剰に添加すると、Cube方位面積率が低下し、Brass方位、S方位、Copper方位の面積率が増加して、前記した両者の面積率のバランスが崩れる。したがって、Znは、耐熱剥離性向上効果と導電率低下作用とを考慮した上で、0.005〜3.0%の範囲、好ましくは0.005〜1.5%の範囲から、含有量を決定する。
Sn:0.05〜3.0%
Snは、銅合金中に固溶して強度向上に寄与し、この効果を有効に発揮させるために、0.05%以上含有させる。しかし、過剰に含有すると、その効果が飽和し、また、含有量が多くなると導電率を大きく低下させる。また過剰に添加するとCube方位面積率が低下し、Brass方位、S方位、Copper方位の面積率が増加する。したがって、Snは、強度向上効果と導電率低下作用とを考慮した上で、0.05〜3.0%の範囲、好ましくは0.1〜1.0%の範囲の範囲から、含有量を決定する。
Fe、Mn、Mg、Co、Ti、Cr、Zrのうち一種または二種以上を合計で0.01〜3.0%
これらの元素は、結晶粒微細化に効果がある。またSiとの間に化合物を形成させることで、強度、導電率が向上する。これらの効果を発揮させる場合には、選択的に、Fe、Mn、Mg、Co、Ti、Cr、Zrのうち一種または二種以上を合計で0.01%以上含有させる。しかし、これらの元素の合計含有量(総量)が3.0%を超えると、化合物が粗大になり、曲げ加工性を損なう。したがって、選択的に含有させる場合のこれら元素の含有量は、合計で(総量で)0.01〜3.0%の範囲とする。
(製造条件)
次に、銅合金の組織を前記本発明規定の組織とするための、好ましい製造条件について以下に説明する。本発明銅合金は、基本的には、圧延された銅合金板であり、これを幅方向にスリットした条や、これら板、条をコイル化したものも本発明銅合金の範囲に含まれる。
本発明でも、一般的な製造工程と同様に、前記特定成分組成に調整した銅合金溶湯の鋳造、鋳塊の面削、均熱、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理(再結晶焼鈍)、冷間圧延、時効硬化処理などを含む工程により最終(製品)板が得られる。ただし、常法や前記従来技術の製法によって製造した場合、コルソン系高強度銅合金板の集合組織は、本発明規定の組織とはならず、前記Cube方位の面積率(割合)が過小や過多となったり、前記Brass方位、S方位、Copper方位の3つの方位の合計面積率が過小や過多となる。このため、本発明の集合組織を得るためには、以下に示す、特に2段階での溶体化処理が必要となる。
(熱間圧延)
熱間圧延の終了温度は550〜850℃とすることが好ましい。この温度が550℃より低い温度域で熱間圧延を行うと、再結晶が不完全なため不均一組織となり、曲げ加工性が劣化する。熱間圧延の終了温度が850℃より高いと、結晶粒が粗大化し、曲げ加工性が劣化する。この熱間圧延後は水冷することが好ましい。
(冷間圧延)
この熱延板に対して、中延べと言われる冷間圧延を行う。この中延べ後の銅合金板は、溶体化処理と仕上げ冷間圧延が施され、更に時効処理されて、製品板厚の銅合金板とされる。
(仕上げ冷間圧延)
通常、前記仕上げ冷間圧延は、最終の溶体化処理を挟んで(溶体化処理の前後で)、前半と後半の2段に分けて行なわれる。通常法でも、仕上げ冷間圧延の加工率は、銅合金板の高強度化や、NiとSiとの析出物の析出量や微細析出確保のためにできるだけ高くする。しかし、この通常法では、最終の溶体化処理後の後半の仕上げ冷間圧延の加工率を高めるため、コルソン系高強度銅合金板の集合組織は、Cube方位{001}<100>以外の、S方位{123}<634>や、B方位{011}<211>が主体となりやすい。
これに対して、最終の溶体化処理前の仕上げ冷間圧延における冷延率を高めて90%以上とすることが好ましい。この冷延率が90%より低いと、最終のCube方位の面積率が小さくなり、所望の集合組織を得ることが出来ない。また、溶体化処理前の圧下率が高いほど、前記Cube方位の平均数密度を大きくできることを見出した。Cube方位の結晶粒の平均数密度を前記8%以上とするためには、溶体化処理前の圧下率は93%以上とすることがより好ましい。このように、溶体化処理前の圧下率が90%以上であれば、必要に応じて、熱間圧延後の焼鈍工程を繰り返し行っても良い。
(最終溶体化処理)
最終溶体化処理は、所望の第二相粒子の析出状態、結晶粒径、集合組織を得るために重要な工程である。発明者らは、最終溶体化処理(溶体化焼鈍)の各温度域での組織を詳細に調査することにより、平衡状態に達しておらず、第二相の核生成が進行している低温域では、昇温速度が遅いほど、第二相粒子が微細化し、平衡状態に達することを見出した。また、第二相の粗大化が進行している高温域では、昇温速度が速いほど第二相粒子が微細化することを見出した。
また再結晶するまでの昇温速度が遅いほど、Cube方位の面積率が大きくなることを見出した。このため、所望の本発明組織を得るためには、昇温速度および降温速度の異なる、二段階の最終溶体化処理を実施する必要がある。
前記した通り、銅合金の曲げ加工性向上のための、粗大第二相粒子、結晶粒径の制御と、集合組織の制御とは、各々個別に行われており、これらを組み合わせて、統合して制御することは困難である。前記した通り、粗大第二相粒子抑制と結晶粒微細化を制御する方法としては、最終溶体化処理前の焼鈍−圧延の実施がある。一方で、結晶粒微細化と集合組織制御には、最終溶体化処理前に95%以上の強圧下が必要である。しかし、最終溶体化処理前に焼鈍−圧延を実施してしまうと、最終溶体化処理前に溶体化前に95%以上の強圧下を施すことが難しい。
このため、本発明では、結晶粒微細化と集合組織制御のために、最終溶体化処理前の95%以上の強圧下を優先して施し、粗大第二相粒子抑制と結晶粒微細化を制御する方法としては、常法による1段階の最終溶体化処理ではなく、二段階の最終溶体化処理を実施す。これによって、粗大第二相粒子と結晶粒微細化制御と、後者の集合組織制御とを同時に満たす制御を可能とする。
すなわち、最終溶体化処理において、0 .1℃/s以下の昇温速度で加熱するとともに600℃〜800℃の温度で一段目の溶体化処理を行い、引き続いて、50℃/s以上の昇温速度で加熱するとともに800℃〜900℃の温度で二段目の溶体化処理を行い、この二段目の溶体化処理後に100℃/s以上の降温速度で急冷を行う。
一段目の溶体化処理温度が600℃以下では、一段目の溶体化処理で再結晶が進行せず、所望の集合組織を得ることができない。一方、溶体化焼鈍温度が800℃以上では、第二相粒子が粗大化してしまい、また二段目の溶体化時に結晶粒が粗大化してしまう。一段目の溶体化焼鈍での昇温速度が0.1℃/sよりも速いと、第二相粒子が粗大化し、またCube方位の面積率が低下してしまう。このため、一段目の溶体化焼鈍温度は600℃〜800℃以上とし、昇温速度は0.1℃/s以下とする。
二段目の溶体化焼鈍温度が800℃以下では、熱間圧延や一段目および二段目の溶体化焼鈍中に生成した0.1μm以上の粗大な第二相粒子が数多く残存し、所望の組織を得る
ことができない。一方、二段目の溶体化焼鈍温度が900℃以上では、結晶粒径が15μm以上と粗大となってしまう。また二段目の溶体化の昇温速度が50℃/sよりも遅いと、昇温中に第二相粒子が成長し、粗大化してしまう。二段目の溶体化の降温(冷却)速度が100℃/sよりも遅いと冷却中に第二相粒子が成長し、粗大化してしまう。このため、二段目の溶体化焼鈍温度は800℃〜900℃以上とし、昇温速度は50℃/s以上、降温速度は100℃/s以上とする。
(溶体化処理後の処理)
この溶体化処理後に、冷間圧延を20%で行う。この冷間圧延後に、強度を確保するための時効処理を施す。この時効処理は、高強度化、高曲げ加工化、高導電率化に寄与する微細なNiとSiなどの析出物を析出させる役割を果たす。
以上説明した、これらの製造条件を適切に組み合わせて実施することで、本発明の前記要件を満たす高強度・高導電率及び曲げ加工性に優れた銅合金を得ることが可能となる。かくして得られる本発明の銅合金は高強度・高導電率及び曲げ加工性が優れているので、家電、半導体部品、産業用機器並びに、自動車用電機電子部品に幅広く有効に活用できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下に本発明の実施例を説明する。表1に示す種々の化学成分組成のCu−Ni−Si−Zn−Sn系銅合金の銅合金薄板を、表2に示す種々の条件で製造し、平均結晶粒径や集合組織などの板組織、強度や導電率、曲げ性などの板特性を各々調査して評価した。これらの結果を表3に示す。
具体的な銅合金板の製造方法としては、クリプトル炉において大気中、木炭被覆下で溶解し、鋳鉄製ブックモールドに鋳造し、表1に記載する化学組成を有する厚さ50mmの鋳塊を得た。そして、鋳塊の表面を面削した後、950℃の温度で厚さが5〜1.25mmになるまで熱間圧延し、750℃以上の温度から水中に急冷した。次に、酸化スケールを除去した後、冷間圧延を行い、厚さが0.25mmの板を得た。
続いて、昇温速度が0.03〜0.1℃のバッチ炉および昇温速度が50〜80℃の塩浴炉を使用し、表2に記載する種々の条件で、共通して2hr加熱する一段目の溶体化処理(焼鈍)を行い、その後室温まで水冷または空冷の急冷処理を行った。
次いで、昇温速度が0.03〜0.1℃のバッチ炉および昇温速度が50〜80℃の塩浴炉を使用し、表2に記載する種々の条件で、共通して2hr加熱する二段目の溶体化処理を行ない、その後水冷または空冷を行った。
これら二段階の溶体化処理(焼鈍)後、後半の仕上げ冷間圧延により、厚さが0.20mmの冷延板にした。この冷延板を450℃×4hの人工時効硬化処理を施して最終の銅合金板を得た。
(組織)
第二相粒子の数密度:
前記得られた各最終の銅合金板から組織観察片を採取し、以下の要領で第二相粒子の平均直径を求めた。TEM(透過電子顕微鏡)を用いて10000倍の倍率にて観察を行い、10μm×10μmの範囲を任意に3箇所観察し、観察される第二相粒子の個数を測定し、計算により1μm2 あたりの第二相粒子の平均数密度を計算した。また数密度は膜厚の影響が大きいため、TEM観察時の膜厚は100nmで一定とし、膜厚の誤差は±20nmを許容範囲とした。
平均結晶粒径および各方位の平均面積率:
得られた各試料の銅合金薄板から組織観察片を採取し、上述の要領で平均結晶粒径および各方位の平均面積率を、前記した電界放出型走査電子顕微鏡に後方散乱電子回折像システムを搭載した結晶方位解析法により測定した。具体的には、製品銅合金の圧延面表面を機械研磨し、更に、バフ研磨に次いで電解研磨して、表面を調整した試料を用意した。その後、日本電子社製FESEM(JEOL JSM 5410)を用いて、EBSPによる結晶方位測定並びに結晶粒径測定を行った。測定領域は300μm×300μmの領域であり、測定ステップ間隔0.5μmとした。
EBSP測定・解析システムは、EBSP:TSL 社製 (OIM)を用いた。平均結晶粒径 (μm)は、結晶粒の数をn、それぞれの測定した結晶粒径をxとした時に、(Σx)/nで定義した。また各方位の面積率は、各方位の面積をEBSPにより測定し、測定エリアにおける面積率から計算により求めた。また従来技術と比較するため、Cube方位の面積率/(Cube方位面積率+Brass方位面積率+S方位面積率+Copper方位面積率)で示されるCube方位の割合を参考値として表3に示した。
引張試験:
引張試験は、試験片の長手方向を圧延方向としたJIS13号B試験片を用いて、5882型インストロン社製万能試験機により、室温、試験速度10.0mm/min、GL=50mmの条件で、0.2%耐力(MPa) を測定した。同一条件の試験片を3本試験し、それらの平均値を採用した。
導電率:
導電率は、試験片の長手方向を圧延方向として、ミーリングにより、幅10mm×長さ300mm の短冊状の試験片を加工し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定して、平均断面積法により算出した。同一条件の試験片を3本試験し、それらの平均値を採用した。
曲げ加工性:
銅合金板試料の曲げ試験は、以下の方法にて行った。板材を幅10mm、長さ30mmに切出し、1000kgfの荷重をかけて曲げ半径0.15mmでGood Way(曲げ軸が圧延方向に直角)に90°曲げを行った。その後、1000kgfの荷重をかけて180°密着曲げを実施し、曲げ部における割れの有無を50倍の光学顕微鏡で目視観察した。この際に、割れの評価は日本伸銅協会技術標準JBMA−T307に記載のA〜Eにて評価した。
表2より、発明例(実施例)1〜12は、化学組成および製造条件が発明範囲内あるいは好ましい条件範囲内で適正であるので、第二相粒子の平均数密度、平均結晶粒径、集合組織の各平均面積率が、各々規定の範囲内に制御されている。その結果、発明例は、耐力が650MPa超、導電率30%IACS以上の高強度−高導電性を達成しつつ、優れた曲げ加工性を兼備している。
ただ、この発明例の内でも、Cube方位粒の結晶粒径が比較的大きい発明例5、6(溶体化温度が比較的高い)は、結晶粒径を10μm以下と、好ましい微細な範囲に制御している他の発明例の曲げ加工性Bと比較して、曲げ加工性がCと低い。
また、Cube方位面積率が比較的低いか、または、Brass方位{011}<211>、S方位{123}<634>、Copper方位{112}<111>の3つの方位の平均合計面積率が比較的高い、発明例4、8、11(Snが比較的多い、あるいはMnを添加している)は、これら集合組織のバランスをより好ましい範囲に制御している他の発明例の曲げ加工性Bと比較して、曲げ加工性がCと低い。
また、Cube方位粒の数密度が比較的低い発明例3、14(冷間圧延の圧下率が90%と比較的低い)は、数密度を10%以上と、Cube方位粒の数密度を高く、好ましい範囲に制御している他の発明例の曲げ加工性Bと比較して、曲げ加工性がCと比較的低い。
更に、発明例7、9は成分範囲および製造条件は適正範囲であるものの、発明例7の一段目の溶体化処理の昇温速度が上限の0 .1℃/sであり、発明例9の一段目の溶体化処理の温度が下限の600℃であるなど、規定範囲の境界(上下限)付近にあるため、他の発明例に比して、耐力がやや低下している。
一方、比較例15、17、19〜21は本発明適正な製造条件で製造しているにもかかわらず、各主要元素の含有量が本発明の上限範囲を超えて多い。このため、曲げ加工性の評価がEと著しく低い。また、その逆に、比較例16、18は、Ni、Siなど各主要元素の含有量が本発明の下限範囲を超えて少ない。このため、耐力が650MPa以下と低くなっている。比較例15は銅合金のNiが過剰である。比較例17は銅合金のSiが過剰である。比較例19は銅合金のZnが過剰である。比較例20は銅合金のSnが過剰である。比較例21は銅合金のFeが過剰である。比較例16は銅合金のNiが過少である。比較例18は銅合金のSiが過少である。
また、比較例22〜33は、本発明の成分範囲ではあるが、溶体化処理条件などの製造条件が、好ましい範囲外であるため、所望の組織を得られず、強度、導電率、曲げ加工性などが発明例に比して劣る。
比較例22は最終溶体化処理前の冷間圧延の加工率が小さすぎる。したがって、最終のCube方位の面積率が小さくなりすぎ、Brass方位、S方位、Copperの3つの方位の各面積率の合計も大きくなりすぎている。このため、180°の密着曲げ性が劣っている。
比較例23は最終溶体化処理における一段目の溶体化処理温度が低すぎる。したがって、最終のCube方位の面積率が小さくなりすぎている。このため、180°の密着曲げ性が劣っている。
比較例24は最終溶体化処理における一段目の溶体化処理温度が高すぎる。したがって、第二相粒子が粗大化して0.1μm以上の第二相粒子が数多く残存し、また結晶粒も粗
大化している。このため、180°の密着曲げ性が劣っている。
比較例25、26は最終溶体化処理における一段目の溶体化処理の昇温速度が大きすぎる。したがって、前記第二相粒子が粗大化して0.1μm以上の第二相粒子が数多く残存
するか、結晶粒が粗大化している。またCube方位の面積率も小さくなる。このため、180°の密着曲げ性が劣っている。
比較例27、28、29は最終溶体化処理を従来の1段のみで行っている。したがって、前記特許文献8のように集合組織を制御できているものの、第二相粒子が粗大化してしまうか、結晶粒が粗大化しており、前記集合組織の制御との両立ができていない。このため、180°の密着曲げ性が劣っている。
比較例30は最終溶体化処理における二段目の溶体化処理温度が低すぎる。比較例31は二段目の溶体化の昇温速度が小さすぎる。比較例32、33は最終溶体化処理における二段目の溶体化処理の冷却速度が小さすぎる。したがって、これらは、0.1μm以上の粗大な第二相粒子が数多く残存し、所望の組織を得ることができない。このため、強度が低くなるものもあり、共通して180°の密着曲げ性が劣っている。
以上の結果から、180°の密着曲げ加工でも割れが生じない強度−曲げ加工性バランスを得るための、本発明銅合金の前記粗大第二相粒子、結晶粒径、集合組織の各制御を組み合わせて行うことの臨界的な意義が裏付けられる。また、これらの各制御を組み合わせて行うことを可能とした本発明製造条件の臨界的な意義が裏付けられる。
Figure 0005525247
Figure 0005525247
以上説明したように、本発明によれば、180°の密着曲げ加工でも割れが生じない、強度−曲げ加工性バランスに優れた銅合金を提供することができる。この結果、小型化及び軽量化した電子機器の、コネクタ、端子、スイッチ、リレー、リードフレームなど、強度と良好な曲げ加工性が要求される用途であって、かつ、高い導電率が要求される用途に適用することができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、Ni:1.0〜3.6%、Si:0.2〜1.0%、Sn:0.05〜3.0%、Zn:0.1〜3.0%を各々含有し、残部銅および不可避的不純物からなる銅合金であって、この銅合金の組織において、平均結晶粒径が15μm以下で、かつ、直径が0.1μm以上の第二相粒子の平均数密度が5個/μm2 以下であるとともに、SEM−EBSP法による測定結果で、Cube方位{001}<100>の平均面積率が20〜50%(ただし、50%を含まず)であり、かつ、Brass方位{011}<211>、S方位{123}<634>、Copper方位{112}<111>の3つの方位の平均合計面積率が20〜40%である集合組織を有することを特徴とする高強度で曲げ加工性に優れた銅合金。
  2. 前記銅合金の集合組織において、全ての方位の結晶粒の数に対する前記Cube方位の結晶粒の数の割合(Cube方位の結晶粒の数/全ての方位の結晶粒の数)としての、前記Cube方位の結晶粒の平均数密度が8%以上である請求項に記載の高強度で曲げ加工性に優れた銅合金。
  3. 前記銅合金が、更に、質量%で、Fe、Mn、Mg、Co、Ti、Cr、Zrのうち一種または二種以上を合計で0.01〜3.0%を含有する請求項1または2に記載の高強度で曲げ加工性に優れた銅合金。
  4. 前記銅合金の0.2%耐力が650MPa以上で、かつ導電率が30%IACS以上である請求項1乃至のいずれか1項に記載の高強度で曲げ加工性に優れた銅合金。
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