JP5522904B2 - 難燃性ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性ポリアミド樹脂組成物に関するものである。詳しくは、電気部品・電子部品の電気的安全性の一つである、耐トラッキング性、グローワイヤー性に優れ、かつ、耐金属腐食性にも優れた、金属接点・金属端子を有する電気・電子部品に好適な、難燃性ポリアミド樹脂組成物に関するものである。
従来、ポリアミド樹脂は、機械的強度、耐熱性等に優れることから、自動車部品、機械部品、電気・電子部品等の分野で使用されている。特に近年、金属端子を有するコネクター、プラグ等、さらには、金属接点を有するスイッチ、ブレーカー等の電気・電子部品用途において、難燃性に対する要求レベルがますます高くなり、本来ポリアミド樹脂の有する自己消火性よりもさらに高度な難燃性が要求されている。このため、難燃レベルの高度化検討、具体的には、アンダーライターズ・ラボラトリーのUL94規格のV−0レベルに適合する材料の検討が数多くなされてきており、その方法として、ハロゲン系難燃剤やトリアジン系難燃剤を添加する方法が一般に使用されてきた。
しかし、ハロゲン系難燃剤は燃焼時に腐食性のハロゲン化水素を発生したり、有毒な物質を排出する疑いがもたれ、環境に対する問題から、ハロゲン系難燃剤が配合されたプラスチック製品の使用を規制する動きがある。このことから、ハロゲン系難燃剤にかわり、ハロゲンフリーのトリアジン系難燃剤が注目され、トリアジン系難燃剤、なかでも、シアヌル酸メラミンを配合した材料の検討が数多くなされている。
また、一方では、これら電気・電子部品用途においては、欧州IEC規格に代表されるグローワイヤー性や耐トラッキング性に対する要求もますます高くなっている。特に、コネクター部品に関しては、近年、IEC60695−2−13規格におけるグローワイヤー着火温度(以下、「GWIT」と記載することがある)の要求レベルが、725℃以上から775℃以上に改訂された。このため、シアヌル酸メラミンを配合したポリアミド樹脂組成物ではこれらの条件を満足することが困難になり、さらに別種の非ハロゲン系難燃剤の探索が必要となった。
特許文献1には、(a)ポリアミド樹脂、(b)重量減少温度が400℃以上のトリアジン環を有する化合物および(c)無機質強化材からなる難燃性強化ポリアミド樹脂組成物であって、組成物中の成分(a)、(b)および(c)の重量百分率を各々A、BおよびC重量%とするとき、1≦B/A≦2、5≦C≦50、A+B+C=100の各式を満足する配合比を有することを特徴とする難燃性強化ポリアミド樹脂組成物が示されており、(b)成分の一例として硫酸メラミンが例示されている。しかし、該樹脂組成物は(b)成分の配合量が多いため、引張強度等の機械的強度が低下し、強度が要求される電気・電子部品用途には不向きである。また、グローワイヤー性や耐トラッキング性に関する記述はない。
特許文献2、3は、熱可塑性樹脂にメラミン系難燃剤とその他成分を配合した樹脂組成物に関するものであるが、当該文献では、実施例においてポリアミド樹脂に硫酸メラミンを配合した樹脂組成物は例示されていない。特許文献2に記載のような、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、ポリメタリン酸メラミン、ポリリン酸アミド等の難燃剤を使用した場合は、グローワイヤー性が低いといった問題がある。さらに、特許文献3の実施例に記載のような熱可塑性樹脂組成物では、グローワイヤー性や引張強度が低い場合がある。
さらに、また、本発明者等の検討によれば、硫酸メラミンのような硫黄成分を含むメラミン系難燃剤を配合した樹脂組成物を用いて電気・電子部品を製造した場合、通電時等の熱により、硫酸イオン、酸化硫黄、硫化水素等の金属腐食性ガスが発生し、金属接点や端子が腐食し、導通不良等の問題が発生することがわかった。
特開2000−119512号公報 特開2003−226818号公報 WO2003−046084号公報
すなわち、本発明は、難燃性、グローワイヤー性、耐トラッキング性および機械的強度の全てに優れ、かつ、耐金属腐食性にも優れた、難燃性ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供しようとするものである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ポリアミド樹脂に特定のアミノトリアジン化合物と、硫酸、ピロ硫酸および有機スルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とからなる塩と、金属腐食抑制効果を有する特定の化合物を特定量配合することによって、目的の難燃性、グローワイヤー性、耐トラッキング性および機械的強度を同時に満足でき、かつ、耐金属腐食性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の第1の要旨は、
ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、アミノトリアジン化合物と、硫酸、ピロ硫酸および有機スルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とからなる塩(B)(以下、(B)成分を「アミノトリアジン系難燃剤」と記載する場合がある)10〜60重量部、ヒンダードフェノール系化合物、ハイドロタルサイトおよびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(C)を含み、(C)成分と(B)成分の配合比(重量比)(C)/(B)が、0.0005〜0.2であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物に存する。
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、難燃性、グローワイヤー性、耐トラッキング性および機械的強度に総合的に優れ、かつ、耐金属腐食性にも優れるため、コネクター、プラグ、ブレーカー、スイッチ、電磁開閉器等の金属接点や金属端子を有する電気部品・電子部品用途に好適である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。本明細書において、アルキル基等の「基」は、特に述べない限り、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。さらに、炭素数が限定されている基の場合、該炭素数は、置換基が有する炭素数を含めない数を意味している。
ポリアミド樹脂(A)
本発明におけるポリアミド樹脂(A)とは、重合可能なω−アミノ酸、ラクタム、好ましくは3員環以上のラクタム、ジカルボン酸およびジアミン等を原料とし、これらの重縮合によって得られるポリアミド樹脂、またはこれらのポリアミド共重合体やブレンド物である。
ω−アミノ酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、2−クロロ−パラアミノメチル安息香酸、2−メチル−パラアミノメチル安息香酸、4−アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノ酸等が挙げられる。
ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、例えば、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、ヘキサデセンジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジオン酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸等が挙げられる。尚、該脂肪族ジカルボン酸は、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸も含むものとする。
芳香族ジカルボン酸とは、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香環を分子中に少なくとも1個有するジカルボン酸であり、その具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、キシリレンジカルボン酸等が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンの具体例としては、例えば、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。尚、ビス−(4,4'−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン等の脂環族ジアミンも脂肪族ジアミンに含むものとする。
芳香族ジアミンとは、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香環を分子中に少なくとも1個有するジアミンであり、その具体例としては、例えば、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、テレフタルジアミン等が挙げられる。
上述のようなポリアミド樹脂の原料としては、炭素数が5〜10の化合物が好ましい。炭素数を5以上とすることにより、機械的強度、靭性をより優れたものとすることができ、炭素数を10以下とすることにより難燃性をより優れたものとすることができ好ましい。より具体的には、ラクタムとしてはε−カプロラクタム、脂肪族ジカルボン酸としてはアジピン酸、芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸やイソフタル酸、脂肪族ジアミンとしてはペンタメチレンジアミンやヘキサメチレンジアミン、芳香族ジアミンとしてはキシリレンジアミンが入手容易であり、価格的にも有利であるのでより好ましい。
ジアミンとジカルボン酸からなる塩は、加圧、高温度下、水溶液中で中和することにより得られる。このようにして得られた塩や、上記記載のω−アミノ酸やラクタムを、加圧、高温度下で縮合させることによりオリゴマー化反応を進行させ、その後減圧することにより適切な溶融粘度まで重合を進行させて、本発明で使用するポリアミド樹脂を製造することができる。
本発明におけるポリアミド樹脂(A)としては、好ましくは、次に示すような、脂肪族ポリアミド樹脂および半芳香族ポリアミド樹脂が挙げられる。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、例えばε−カプロラクタムまたは6−アミノカプロン酸を主原料とするポリアミド6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の塩を主原料とするポリアミド66、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の塩とε−カプロラクタムまたは6−アミノカプロン酸とを主原料としたポリアミド6/66共重合体等が挙げられ、より好ましくはポリアミド6、ポリアミド66である。
脂肪族ポリアミド樹脂は、ISO307規格に準拠して、温度25℃、96重量%硫酸中、ポリアミド樹脂濃度0.5重量%で測定した粘度数が70〜200ml/gのものが好ましい。粘度数を70ml/g以上とすることにより機械的強度および成形品外観を優れたものとすることができ、200ml/g以下とすることにより、コンパウンド性、成形加工性が容易となり、良好なグローワイヤー性および成形品外観とすることができるため好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂とは、脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸からなる塩、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸からなる塩より選ばれる少なくとも1種のポリアミド構成単位(a)からなるポリアミド樹脂、または、これらのポリアミド構成単位(a)と、ラクタムまたは脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸からなる塩より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリアミド構成単位(b)とからなるポリアミド共重合体であり、好ましくは、単位(a)および(b)の重量比が、(a)/(b)=100/0〜5/95のものである。より好ましい重量比は、(a)/(b)=100/0〜7.5/92.5であり、結晶化速度や剛性等の機械的特性の点から、(a)/(b)=100/0〜30/70の範囲がさらに好ましい。また、単位(a)および(b)のそれぞれの構成単位が、均一に存在していることが好ましい。このようなポリアミド構成単位とすることにより、グローワイヤー性および難燃性をより向上させることができる。
このような好ましい半芳香族ポリアミド樹脂の具体例としては、例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸の塩を主原料とするポリアミドMXD6、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとアジピン酸を主原料とするポリアミドMP6、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の塩を主原料とするポリアミド6I、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との塩/ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との塩の共重合体(ポリアミド66/6I)、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との塩/ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との塩の共重合体(ポリアミド6I/6T)等が挙げられ、さらに好ましくは、ポリアミドMXD6、ポリアミドMP6およびポリアミド6I/6Tである。
半芳香族ポリアミド樹脂は、特定の溶融粘度を有するものが好ましい。好ましい溶融粘度は、キャピラリーレオメーター(東洋精機社製キャピログラフ1C)を使用し、温度250℃、せん断速度100sec-1にて測定した値が750〜8000ポイズであり、より好ましくは800〜7000ポイズ、さらに好ましくは850〜6000ポイズである。溶融粘度を750ポイズ以上とすることにより、グローワイヤー性および機械的強度が優れる傾向にあり、8000ポイズ以下とすることにより、難燃性を良好に保ち、流動性および成形性の低下を防ぐことができるため好ましい。
また、後述のアミノトリアジン系難燃剤は、樹脂組成物溶融時の温度が290℃以上になると分解が始まるので、成形不良の発生を抑え、グローワイヤー性および難燃性を確保するためには、樹脂温度が290℃以下の条件で、樹脂組成物の製造や成形をすることが好ましい。しかし、290℃以下の低い温度では、樹脂組成物製造時のアミノトリアジン系難燃剤の分散性が低下したり、樹脂組成物成形時の流動性が低下し薄肉成形が困難となる場合があるため、本発明のポリアミド樹脂としては、融点が290℃よりできるだけ低く、かつ、グローワイヤー性および難燃性を確保できるポリアミド樹脂を用いるのが好ましい。
本発明におけるポリアミド樹脂(A)の末端は、カルボン酸またはアミンで封止されていてもよく、末端を封止する場合は、炭素数6〜22のカルボン酸またはアミンで封止することが好ましい。具体的に、封止に用いるカルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第一級アミンが挙げられる。封止に使用するカルボン酸またはアミンの量は、樹脂組成物成形時の溶融粘度の観点から30μeq/g程度が好ましい。
アミノトリアジン系難燃剤(B)
本発明においては、アミノトリアジン化合物と、硫酸、ピロ硫酸および有機スルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とからなる塩を、難燃剤として使用する。
本発明におけるアミノトリアジン化合物は、1,3,5−トリアジン骨格を有するアミノトリアジン化合物が好ましく、下記一般式(1)で表される化合物がより好ましい。
Figure 0005522904
一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、アミノ基、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。
炭素数1〜4のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリール基は、フェニル基であることが好ましい。アミノ基は最大3個まで置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、炭化水素基が挙げられ、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基が好ましい。
アミノトリアジン化合物を具体的に例示すれば、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン等が挙げられ、2種以上を併用することもできる。また、アミノトリアジン化合物は、これらの二量体または縮合体(メラム、メレム、メロン等)であってもよい。
これらアミノトリアジン化合物の粒径は特に制限はないが、機械的強度および成形品外観の点から、平均粒径(メディアン径)0.1〜50μmのものが好ましく、0.1〜30μmのものがより好ましい。
アミノトリアジン化合物と硫酸とからなる塩としては、例えば、硫酸メラミン類(硫酸メラミン、硫酸ジメラミン、硫酸グアニルメラミン等)、硫酸メラミンに対応する亜硫酸メラミン等の非縮合硫酸メラミン類、前記非縮合硫酸メラミン塩に対応するメレム塩、メラム塩、メロン塩、グアナミン塩等が挙げられる。硫酸は一般に入手可能なものであれば特に制限なく使用できる。硫酸の濃度は特に制限されず、濃硫酸および希硫酸のいずれをも用いることができるが、取扱の点から希硫酸を使用することが好ましい。
アミノトリアジン化合物とピロ硫酸とからなる塩としては、ピロ硫酸メラミン類(ピロ硫酸メラミン、ピロ硫酸ジメラミン、ピロ硫酸ジメラム等)、ピロ硫酸メラミン塩に対応するメレム塩、メラム塩、メロン塩、グアナミン塩等が挙げられる。例えば、ピロ硫酸ジメラムは、特開平10−306082号公報に記載の方法等により製造することができる。
アミノトリアジン化合物と有機スルホン酸とからなる塩の製造に用いられる有機スルホン酸としては、例えば、炭素数1〜10のアルカンスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸等)、炭素数6〜20のアリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等)等が挙げられる。
アミノトリアジン化合物と有機スルホン酸とからなる塩としては、有機スルホン酸メラミン類(メタンスルホン酸メラミン、メタンスルホン酸メラム、メタンスルホン酸メレム、メタンスルホン酸メラミン・メラム・メレム複塩、メタンスルホン酸グアナミン等)等が挙げられる。
これらのアミノトリアジン系難燃剤中の硫黄原子の割合は3〜20重量%のものが、成形加工時に成形金型に汚染性物質が付着する現象が少なく好ましい。なお、該硫黄原子量は、アミノトリアジン化合物と塩を形成しているものと形成していないフリーのものとの合計量とする。
また、これらのアミノトリアジン系難燃剤は、難燃剤とポリアミド樹脂との密着性を向上させ、機械的強度の低下を防ぐために、アミノシラン系またはエポキシシラン系化合物、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等で被覆処理してもよい。
上記のアミノトリアジン化合物系難燃剤のなかでも、入手のしやすさの点で、硫酸メラミンが特に好ましい。硫酸メラミンは、例えば、特開平8−231517号公報に記載の方法等により製造することができる。
アミノトリアジン系難燃剤(B)の配合量は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して10〜60重量部であり、より好ましく15〜55重量部、さらに好ましくは20〜50重量部である。配合量を10重量部以上とすることによりグローワイヤー性を効果的に改善することができ、60重量部以下とすることにより、機械的強度を良好に保つことができる。
化合物(C)
本発明においては、通電時等の熱により樹脂組成物から発生する腐食性ガスによって、電気部品・電子部品の内部に組み込まれている金属接点や金属端子部分が腐食するのを抑制するため、特定の化合物(C)を配合する。本発明における化合物(C)とは、ヒンダードフェノール系化合物(C−1)、ハイドロタルサイト(C−2)およびアルカリ土類金属の水酸化物(C−3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、金属腐食抑制効果を有するものである。本発明の(C)成分は、他の安定剤に比べ、腐食性ガスの捕集効果や、腐食性ガスの原因となる硫酸メラミン中の残存硫酸成分を中和する効果が高いと考えられるため、金属腐食の低減効果が極めて大きい。
ヒンダードフェノール系化合物とは、一般的に酸化防止剤、加工安定剤として使用される、分子中に2,6−または2,4−アルキル置換フェノール構造を少なくとも1つ有する化合物である。
ヒンダードフェノール系化合物(C−1)としては、具体的には、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォネート−ジエチルエステル、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。これらの中でも、次の一般式(2)で表される、N,N'−アルキレンビス(3,5−ジ−アルキル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)が、ポリアミド樹脂との相溶性が良好であり、高濃度で配合しても機械的強度の低下やガス発生等の成形トラブルの発生が少なくより好ましい。
Figure 0005522904
一般式(2)中、nは1〜10の整数であり、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基である。nは、好ましくは2〜10の整数、R3、R4、R5およびR6は、好ましくは、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基である。
一般式(2)の具体例としては、nが6で、R3、R4、R5およびR6がtert−ブチル基である化合物が挙げられ、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社より、商品名「イルガノックス1098」の名称で販売されている。
ハイドロタルサイト(C−2)としては、特開昭60−1241号公報および特開平9−59475号公報等に記載されているハイドロタルサイト類、例えば、下記一般式(3)で表されるハイドロタルサイト化合物等が使用できる。
[M2+ 1-x3+ x(OH)2x+[An- x/n・mH2O]x- (3)
式中、M2+はMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+等の2価の金属イオンを示し、M3+はAl3+、Fe3+、Cr3+等の3価の金属イオンを示す。An-はCO3 2-、OH-、HPO4 2-、SO4 2-等のn価(特に1価または2価)のアニオンを示す。xは0<x<0.5、好ましくは0.2≦x≦0.4であり、mは0≦m<1、より好ましくは0≦m≦0.6である。
ハイドロタルサイト(C−2)は、ポリアミド樹脂組成物中での分散性を向上させ、凝集による靭性や機械的強度の低下を抑制するために、表面処理剤で表面処理して用いてもよい。表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル化合物、アミノシラン系またはエポキシシラン系化合物、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
ハイドロタルサイトとしては、商品名「DHT−4A」、「DHT−4A−2」、「アルカマイザー」等として、協和化学工業(株)から入手可能である。
アルカリ土類金属の水酸化物(C−3)としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が好ましい例として挙げられる。
化合物(C)は、(C)成分と(B)成分の配合比(C)/(B)が0.0005〜0.2、好ましくは0.002〜0.15、より好ましくは0.003〜0.12、さらに好ましくは0.003〜0.1となるように配合する。この(C)/(B)比を0.0005以上とすることにより、金属腐食を効果的に抑制することができ、0.2以下とすることにより、機械的強度を良好に保つことができる。(C)成分は2種以上併用してもよい。
重合体(D)
本発明においては、主に樹脂組成物の耐トラッキング性および耐衝撃性を向上させる目的で、変性オレフィン系重合体(D−1)、オレフィン−ビニル系共重合体(D−2)およびビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物(D−3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体(D)を配合することができる。これらの重合体(D)は、従来から知られている製造方法によって製造することができる。該重合体(D)は、ガラス転移温度が0℃以下であるものが好ましく、−5℃以下がより好ましい。重合体(D)のガラス転移温度を0℃以下とすることにより、低温時の耐衝撃性を良好とすることができる。
変性オレフィン系重合体(D−1)
本発明の(D)成分として用いられる変性オレフィン系重合体(D−1)は、オレフィン系単量体を重合して得られる単独重合体または2種以上のオレフィン系単量体を共重合して得られる共重合体等のオレフィン系重合体を、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、またはその誘導体等の変性剤で変性されてなる重合体であり、好ましくは不飽和カルボン酸無水物で変性されてなる重合体である。
オレフィン系単量体としては、炭素数2〜20のものが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。これらの中でもより好ましくは2〜10の直鎖状のオレフィン系単量体であり、さらに好ましいのはエチレン、プロピレン、1−ブテンであり、特に好ましくはプロピレンである。
単独重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどが挙げられる。2種以上のα−オレフィンを重合させて得られる共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体などが挙げられる。これらの中でもプロピレン系重合体が好ましい。プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、プロピレンと炭素数2〜10のプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。より具体的には、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体などが挙げられる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセンが好ましい。
本発明においては、これらの単独重合体、共重合体のメルトボリュームレート(MVR)が0.1〜400cm 3 /10分であることが好ましく、中でも0.2〜200cm 3 /10分であることが好ましい。なお、本発明におけるMVRは、JIS K7210規格に準拠し、温度180℃、荷重21.17Nで測定した値である。
変性剤として用いられる不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物またはその誘導体としては、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、クロロ(無水)マレイン酸、(無水)シトラコン酸、ブテニル(無水)コハク酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、ならびに、これらの酸ハライド、アミド、イミド、炭素数1〜20のアルキルまたはグリコールのエステルが挙げられ、具体的には、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等があげられる。ここで「(無水)」とは、無水不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸であることを示す。これらの中で好ましくは不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物であり、(無水)マレイン酸または(無水)イタコン酸がより好ましい。これらの不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物またはその誘導体は、2種以上併用してもよい。
オレフィン系重合体に付加させる変性剤の付加量は、オレフィン系重合体100重量部に対し、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部である。変性剤の付加量を0.05重量部以上とすることにより、成形品の表面に難燃剤などのブリードアウトが起こりにくく、グローワイヤー性の低下を防ぎ、電気安全性の確保がしやすくなる。付加量を5重量部以下とすることにより、成形時の流動性が向上し、コネクターなどの薄肉成形品の成形が容易になる傾向にある。オレフィン系重合体に対する変性剤の付加量は、変性オレフィン系重合体製造時のオレフィン系重合体に対する変性剤の仕込み量を変えることによって調整することができる。
また、ラジカル発生剤を上記の変性剤と同時に配合してもよい。ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、例えば、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、2,2−ビス−tert−ブチルパーオキシブタン、2,2−ビス−tert−ブチルパーオキシオクタン、1,1−ビス−tert−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ビス−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル類、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類が挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)等が挙げられる。
これらのラジカル発生剤の中でも特に好ましいのは、寸法安定性や耐衝撃性の点で、10時間での半減期温度が好ましくは190℃以下、より好ましくは120℃以上のラジカル発生剤である。上に例示した中では、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3が特に好ましい。
ラジカル発生剤の使用量は、オレフィン系重合体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲が好ましく、0.01〜1.0重量部がより好ましい。使用量を0.01重量部以上とすることにより、オレフィン系重合体により十分な変性量が得られ、10重量部以下とすることにより、ポリオレフィン系重合体の分子量が小さくなりすぎず、製造が容易になる傾向にある。上記ラジカル発生剤は、有機溶剤などに溶解して混合することもできる。また、炭酸カルシウム、タルク、シリカなどの無機充填材を配合したものであってもよい。
変性オレフィン系重合体(D−1)は、オレフィン系重合体を反応性に変える方法として従来から知られている方法によって調製できる。例えば、オレフィン系重合体の重合反応中に、エポキシ化合物、変性剤を共重合成分として導入する方法、オレフィン系重合体に、変性剤とラジカル発生剤を混合し、溶融混練してグラフト共重合させる方法などが挙げられる。特にオレフィン系重合体がポリプロピレン樹脂の場合には、変性剤をグラフト共重合させる方法が、容易であり好ましい。
変性オレフィン系重合体(D−1)としては、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体および無水マレイン酸変性ポリプロピレンが、グローワイヤー性、機械的強度、靭性をバランスよく満足することができるため好ましい。
本発明においては、グローワイヤー性の低下が少ない点で、変性オレフィン系重合体(D−1)のMVRが100〜500cm 3 /10分のものが好ましい。MVRを、100cm 3 /10分とすることにより、変性オレフィン系重合体を樹脂組成物中により均一に分散させることができ、耐トラッキング性、グローワイヤー性が向上する傾向にある。また、500cm 3 /10分以下とすることにより、成形時のガスの発生を抑制できる傾向にあり、機械的強度を良好に保つことができる。より好ましいMVRは100〜450cm 3 /10分であり、さらに好ましくは120〜400cm 3 /10分である。
本発明の変性オレフィン系重合体(D−1)として特に好ましいのは、変性剤をポリプロピレン重合体100重量部に対し0.05〜5重量部付加させてなる変性プロピレン重合体である。より好ましい変性剤の付加量はポリプロピレン重合体100重量部に対し0.1〜3重量部である。また、MVRの好ましい範囲は100〜500cm 3 /10分、より好ましくは100〜450cm 3 /10分、さらに好ましくは120〜400cm 3 /10分である。変性剤としては、不飽和カルボン酸無水物を用いることが好ましい。
ポリアミド樹脂に変性オレフィン系重合体を配合した場合、ポリアミド樹脂の末端と変性オレフィン系重合体のオレフィン系重合体に付加した変性剤の官能基とが反応することにより、ポリアミド樹脂の末端が変性オレフィン系重合体で封止されると考えられる。末端封止されたこのようなポリアミド樹脂は、外部から与えられる熱による末端からの分子の分解が抑制されるため、樹脂組成物のグローワイヤー性を良好に維持することができる。特に、上記のような変性量の高い、さらにMVRの高い変性オレフィン系重合体を使用した場合は、ポリアミド樹脂末端との反応性がより高いため、その効果が顕著に現れる。
(D−1)成分として好ましく用いられる変性プロピレン系重合体は、通常、ポリプロピレン樹脂、変性剤、ラジカル発生剤などを所定量秤量し、均一に混合した後、溶融混練する方法によって製造することができる。混合装置としては、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられ、溶融混練装置としては、ミキシングロール、ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ、一軸または二軸押出機などが挙げられる。溶融混練温度は、ラジカル発生剤の半減期温度によるが、通常120〜300℃の範囲、好ましくは150〜280℃の範囲で選ばれる。混練時間は、混練温度、ラジカル発生剤の種類、添加量などによるが、通常0.1〜30分、好ましくは0.5〜10分である。
オレフィン−ビニル系共重合体(D−2)
本発明の(D)成分として用いられるオレフィン−ビニル系共重合体(D−2)とは、オレフィン単量体とビニル系単量体を重合してなる共重合体である。
オレフィン系単量体としては、例えば、上記変性オレフィン系重合体(D−1)で使用されるものと同様の単量体を使用することができる。
ビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル等の不飽和グリシジル基含有化合物、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸およびその金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜20のアルキルエステル等の不飽和カルボン酸エステル化合物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリアルキル酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のビニル芳香族化合物等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、不飽和グリシジル基含有化合物、不飽和カルボン酸である。上記のオレフィン系単量体およびビニル系単量体は、2種以上を併用してもよい。
オレフィン−ビニル系共重合体(D−2)の具体例としては、例えば、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−プロピレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸グリシジル共重合体、プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−g−ポリメタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−g−ポリスチレン共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−g−ポリアクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−g−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−g−ポリメタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−g−ポリスチレン共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−g−ポリアクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−g−ポリメタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる(なお、「−g−」はグラフト共重合であることを示し、以下同様である)。中でも、靭性の点から、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体が好ましい。これらのオレフィン−ビニル系共重合体(D−2)は、2種以上併用することもできる。
また、本発明においては、オレフィン−ビニル系重合体(D−2)が、変性剤で変性されていてもよく、さらにラジカル発生剤を変性剤と同時に配合してもよい。上記変性剤、ラジカル発生剤としては、例えば、上記変性オレフィン系重合体(D−1)を製造する際に用いられる化合物を使用することができる。
ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物(D−3)(以下、「ブロック共重合体の水素添加物」と略記することがある)
本発明の(D)成分として用いられるブロック共重合体の水素添加物(D−3)とは、ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体であって、水素添加によりブロックbの脂肪族不飽和基が減少したブロック共重合体を意味する。ブロックaおよびブロックbの配列構造は、線状構造、分岐構造等いずれの構造であってもよい。また、これらの構造のうちで、一部にビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物とのランダム共重合部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。これら構造の中では、線状構造のものが好ましく、a−b−a型のトリブロック構造のものがより好ましい。上記a−b−a型のブロック共重合体中には、a−b型のジブロック構造のものを含んでいてもよい。これらのブロック共重合体の水素添加物は2種以上併用してもよい。
ビニル芳香族化合物重合体ブロックaを構成するビニル芳香族化合物としては、好ましくは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられ、より好ましくは、スチレンである。共役ジエン系化合物ブロックbを構成する共役ジエン系化合物としては、好ましくは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが挙げられる。
ブロック共重合体の水素添加物におけるビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、10〜70mol%の範囲が好ましく、10〜40mol%の範囲がより好ましく、15〜25mol%の範囲がさらに好ましい。10mol%以上とすることにより、熱安定性が向上する傾向にあり、樹脂組成物製造および成形時に酸化劣化を受けにくくなる。70mol%以下とすることにより、耐衝撃性が向上する傾向にある。また、ブロック共重合体における脂肪族鎖部分のうち、共役ジエン系化合物に由来し、水素添加されずに残存している不飽和結合の割合は、分子中の全結合中の20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。ビニル芳香族化合物に由来する芳香族性不飽和結合は、水素添加されていてもよいが、水素添加された芳香族性不飽和結合の割合は、分子中の全結合中の25%以下であることが好ましい。このようなブロック共重合体の水素添加物としては、共役ジエン系化合物重合体ブロックbを構成する単量体である共役ジエン系化合物が、1,3−ブタジエンであるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)や、共役ジエン系化合物が2−メチル−1,3−ブタジエンであるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)等の種々のa−b−a型トリブロック構造のものが市販されており、容易に入手可能である。
これらブロック共重合体の水素添加物(D−3)の数平均分子量は、好ましくは50,000〜180,000の範囲である。数平均分子量を50,000以上とすることにより、最終的に得られる樹脂組成物の耐衝撃性と寸法安定性が優れ、さらに、該樹脂組成物から得られる成形品の外観の良好とすることができる。また、数平均分子量を180,000以下とすることにより、最終的に得られる樹脂組成物の流動性が向上し成形加工が容易になるので好ましい。数平均分子量のより好ましい範囲は55,000〜160,000であり、中でも特に好ましいのは60,000〜140,000である。
また、本発明においては、ブロック共重合体の水素添加物(D−3)が、変性剤で変性されていてもよく、さらにラジカル発生剤を変性剤と同時に配合してもよい。上記変性剤、ラジカル発生剤としては、例えば、上記変性オレフィン系重合体(D−1)を製造する際に用いられる化合物を使用することができる。
重合体(D)の配合量は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは3〜35重量部、さらに好ましくは3〜30重量部である。配合量を1重量部以上とすることにより、耐トラッキング性および耐衝撃性をより優れたものとすることができ、射出成形時の生産性を高められ、配合量を50重量部以下とすることにより、難燃性、グローワイヤー性の低下を抑制することができるため好ましい。
分散剤(E)
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物には、アミノトリアジン系難燃剤の凝集を防ぎ分散性をより向上させ、該難燃剤の凝集による靭性や機械的強度の低下を抑制するために、分散剤(E)を配合することが好ましい。しかし、分散剤は、樹脂組成物の難燃性やグローワイヤー性を低下させる場合があるので、その種類および配合量を慎重に選択する必要がある。本発明においては、カルボン酸アミド系ワックス、高級脂肪酸金属塩および高級脂肪酸エステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を好適に用いることができる。なかでも、カルボン酸アミド系ワックスは、樹脂組成物の難燃性、グローワイヤーの着火温度を低下させることなく、コネクター等の電気・電子機器部品を射出成形する際の離型性の向上効果が大きく、成形性を高めることができるため特に好ましい。上記3種の分散剤は、アミノトリアジン系難燃剤の分散性を向上させる効果とともに、成形時の離型性を改善する効果をも有する。
カルボン酸アミド系ワックスとしては、例えば、高級脂肪族モノカルボン酸および/または多塩基酸とジアミンとの脱水反応によって得られる化合物が挙げられる。
高級脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数16以上の飽和脂肪族モノカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸が好ましく、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
多塩基酸としては、二塩基酸以上のカルボン酸で、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ピメリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、および、フタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類、および、シクロヘキシルジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸等の脂環族ジカルボン酸類が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
カルボン酸アミド系ワックスとしては、ステアリン酸とセバシン酸とエチレンジアミンを重縮合してなる化合物が好ましく、ステアリン酸2モルとセバシン酸1モルとエチレンジアミン2モルを反応させ、重縮合させた化合物がより好ましい。
高級脂肪酸金属塩とは、例えば、上述の高級脂肪族モノカルボン酸の金属塩が挙げられ、具体的には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸カルシウム等が好ましい。
高級脂肪酸エステル化合物としては、例えば、上述の高級脂肪族モノカルボン酸とアルコールとのエステル化合物が挙げられ、具体的には、ステアリルステアレート、グリセリンステアレート、ペンタエリストールステアレート等が好ましい。
分散剤(E)の配合量は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し0.01〜3重量部が好ましく、0.05〜1重量部がより好ましい。配合量を0.01重量部以上とすることにより、アミノトリアジン系難燃剤をより分散させ機械的強度の低下を防ぐことができ、成形時の離型性も良好にすることができる。また、配合量を3重量部以下とすることにより、機械的強度や難燃性の低下を防ぎ、プレートアウトやブルーミング等の不具合を生じ難くすることができ好ましい。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、他の各種樹脂添加剤を配合することができる。各種樹脂添加剤としては、例えば、(B)成分以外の難燃剤、ドリップ防止剤、銅系、リン系または硫黄系の熱安定剤、紫外線吸収剤、耐侯性改良剤、発泡剤、(D)成分以外の耐衝撃改良剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、流動性改良剤、染料、顔料、有機充填材、タルクやワラストナイト、(導電性)カーボンブラック等の無機充填材、造核剤等が挙げられる。
本発明に係るポリアミド樹脂組成物が、より優れた特性を発揮するためには、溶融混練法によって製造することが好ましい。溶融混練の代表的な方法としては、熱可塑性樹脂について一般に実用化されている溶融混練機を使用する方法が挙げられる。例えば、(1)各成分を所定の割合で秤量後ブレンダー等で混合して得られたドライブレンド物を、一軸または多軸押出機、ロール、バンバリーミキサー等の溶融混練機を用いて溶融混練し、ペレット化する方法、(2)(B)成分と(C)成分をブレンダー等で予め混合し、(B)成分の粉末表面に(C)成分を付着させた後、(A)成分とともに溶融混練機のホッパーより投入して溶融混練し、ペレット化する方法、(3)(A)成分と(C)成分をブレンダー等で予め混合した後、溶融混練機ホッパーより投入し、溶融混練機シリンダー中流部から(B)成分をフィードしながら溶融混練し、ペレット化する方法、(4)あらかじめ所定量より多い(B)成分および/または(C)成分をポリアミド樹脂に練り込んだマスターペレットを調製し、これらを残りの配合成分とドライブレンドする方法等が挙げられる。これらの中でも、生産性の点からは(1)の方法が好ましく、(B)成分および(C)成分の分散性の点から(2)または(4)の方法が好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物を用いて、電気部品・電子部品等の成形品を製造する方法としては特に限定されるものではなく、各成分を所定の割合で秤量後ブレンダー等で混合して得られたドライブレンド物や、上記(1)〜(4)のペレット形態のポリアミド樹脂組成物を用い、従来から知られている成形法、例えば、射出成形法、押出成形法、中空成形法、熱成形法、プレス成形法等を使用することができる。中でも、生産性、製品性能の観点から、射出成形法を使用することが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、これら実施例により本発明は何ら制限されるものではない。なお、以下の記載の実施例において使用した各成分の詳細は次のとおりである。また、これら成分より構成されるポリアミド樹脂組成物についての評価は、以下に記載の方法で行った。尚、実施例1〜9および13〜21は参考例である。
[実施例に使用した成分]
ポリアミド樹脂(A)
(A−1)ポリアミド6:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、「商品名:ノバミッド(登録商標)1010J」、粘度数118ml/g(ISO307規格に準拠して、温度25℃、96重量%硫酸中、ポリアミド樹脂濃度0.5重量%で測定した値)、融点224℃。
(A−2)ポリアミド6/66共重合体:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、「ノバミッド(登録商標)2010J」、粘度数118ml/g(上記(A−1)と同様の方法で測定)、融点198℃。
(A−3)ポリアミド6I/6T共重合体:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、「商品名:ノバミッド(登録商標)X21」、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との塩/ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との塩の共重合体。溶融粘度1400ポイズ(キャピラリーレオメーター(東洋精機社製キャピログラフ1C)を使用し、温度250℃、せん断速度100sec-1にて測定した値)
難燃剤(B)
(B−1)硫酸メラミン:三和ケミカル社製「商品名:アピノン901」、硫酸メラミン中の硫黄成分9重量%、平均粒径(カタログ値)17±2.0μm
(B−2)シアヌル酸メラミン:三菱化学(株)製「商品名:MX44」を粉砕したもの。平均粒径(メディアン径)2μm
(B−3)臭素系難燃剤:アルベマール日本社製、「商品名:Saytex8010」
(B−4)三酸化アンチモン:森六社製、「商品名:MIC−3」
化合物(C)
(C−1)ヒンダードフェノール系化合物:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「商品名:イルガノックス1098」、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)
(C−2)ヒンダードフェノール系化合物:チバ・スペシャルリティ・ケミカルズ社製、「商品名:イルガノックス1010」、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(C−3)ハイドロタルサイト:協和化学工業社製、「商品名:DHT−4A」
(C−4)アルカリ土類金属の水酸化物:水酸化カルシウム、和光純薬工業社製
(C−5)リン系化合物:旭電化工業社製、「商品名:アデカスタブPEP36」、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
(C−6)リン系化合物:次亜燐酸ナトリウム、和光純薬工業社製
(C−7)硫黄系化合物:エーピーアイコーポレーション社製、「ヨシトミDSTP」、ジステアリルチオジプロピオネート
重合体(D)
(D−1)無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体: 三井石油化学工業社製、「商品名:タフマーA−4085」
(D−2)プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体:以下に記載の方法によって製造した。
ポリプロピレン100重量部、メタクリル酸グリシジル1重量部およびラジカル発生剤1重量部を秤量し、これらをヘンシェルミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=42)を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数300rpmにて溶融反応させ、ペレット化してオレフィン−ビニル系共重合体を製造した。なお、ポリプロピレンとしては日本ポリプロ社製、「商品名:ノバテックPP MA3」、メタクリル酸グリシジルとしては三菱ガス化学(株)製を使用し、ラジカル発生剤としては、1,3−ビス(2−tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ社製、「商品名:パーカドックス14」、10時間での半減期温度121℃)を使用した。このようにして得られたオレフィン−ビニル系重合体を加熱減圧乾燥した後、ナトリウムメチラートによる滴定でメタクリル酸グリシジルの付加量を求めたところ、付加量は0.5重量%であった。
(D−3)エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体:住友化学社製、「商品名:ボンドファースト2C」
(D−4)無水マレイン酸変性スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体:旭化成社製、「商品名:タフテックM1943」、スチレン含有量20重量%
(D−5)無水マレイン酸変性ポリプロピレン−1:下記記載の方法で製造した無水マレイン酸変性ポリプロピレン、MVR 200cm 3 /10分、無水マレイン酸単位の付加量1.0重量部
<参考例1>
ポリプロピレン(三菱化学(株)製、MVR 1cm 3 /10分)100重量部、無水マレイン酸(三菱化学(株)製)2重量部、ベンゾイルパーオキシド(日本油脂社製、「商品名:ナイパーBMT−K−40」)3.5重量部をそれぞれ秤量し、これらをスーパーミキサーによって1分間混合し、混合物を得た。次いで、得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼所社製、「型式:TEX30HCT」、シリンダー内径30mm、L/D=42)を使用し、シリンダー設定温度230℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/時間の条件で溶融混練し、これをダイよりストランド状に押出し、カッターで切断して、変性プロピレン重合体−1のペレットを得た。
(D−6)無水マレイン酸変性ポリプロピレン−2:下記記載の方法で製造した無水マレイン酸変性ポリプロピレン。MVR 300cm 3 /10分、無水マレイン酸単位の付加量1.5重量部
<参考例2>
ポリプロピレン(三菱化学(株)製、MVR=1cm 3 /10分)100重量部、無水マレイン酸(参考例1に同じ)3重量部、ベンゾイルパーオキシド(参考例1に同じ)4重量部をそれぞれ秤量し、参考例1と同様の方法で溶融混練し、ペレット化し、変性プロピレン重合体−2のペレットを得た。
(D−7)無水マレイン酸変性ポリプロピレン−3:下記記載の方法で製造した無水マレイン酸変性ポリプロピレン。MVR 400cm 3 /10分、無水マレイン酸単位の付加量2.0重量部
<参考例3>
ポリプロピレン(三菱化学(株)製、MVR=1cm 3 /10分)100重量部、無水マレイン酸(参考例1に同じ)4重量部、ベンゾイルパーオキシド(参考例1に同じ)5重量部をそれぞれ秤量し、参考例1と同様の方法で溶融混練し、ペレット化し、変性プロピレン重合体−3のペレットを得た。
(D−8)無水マレイン酸変性ポリプロピレン−4:下記記載の方法で製造した無水マレイン酸変性ポリプロピレン。MVR 20cm 3 /10分、無水マレイン酸単位の付加量0.2重量部
<参考例4>
ポリプロピレン(三菱化学(株)製、MVR 1cm 3 /10分)100重量部、無水マレイン酸(参考例1に同じ)1.5重量部、ベンゾイルパーオキシド(参考例1に同じ)1.5重量部をそれぞれ秤量し、参考例1と同様の方法で溶融混練し、ペレット化し、変性プロピレン重合体−4のペレットを得た。
(D−9)無水マレイン酸変性ポリプロピレン−5:下記記載の方法で製造した無水マレイン酸変性ポリプロピレン。MVR 600cm 3 /10分、無水マレイン酸単位の付加量2.5重量部
<参考例5>
ポリプロピレン(三菱化学(株)製、MVR=cm 3 /10分)100重量部、無水マレイン酸(参考例1に同じ)5重量部、ベンゾイルパーオキシド(参考例1に同じ)6重量部をそれぞれ秤量し、参考例1と同様の方法で溶融混練し、ペレット化し、変性プロピレン重合体−5のペレットを得た。
分散剤
(E−1)カルボン酸アミド系ワックス:共栄社化学社製、「商品名:WH255」、ステアリン酸、セバシン酸およびエチレンジアミンの重縮合物
(E−2)ステアリン酸カルシウム:堺化学工業社製、「商品名:SC−100」
[変性プロピレン重合体の評価方法]
(1)無水マレイン酸の付加量:上記記載の(D−5)〜(D−9)の無水マレイン酸変性ポリプロピレンのペレット用い、熱プレス法によって厚さ約100μmのフィルムを作製した。このフィルムから、アセトン溶媒で1時間、ソックスレー法により未反応の無水マレイン酸を抽出し、その後、真空乾燥機で3時間、減圧乾燥した。乾燥後のフィルムについて、赤外線吸収スペクトル法によって、無水マレイン酸に由来する波長(1780cm-1)のピークより無水マレイン酸単位付加量を測定した。
(2)MVR:上記記載の(D−5)〜(D−9)の無水マレイン酸変性ポリプロピレンのペレットについて、JIS K7210規格に準拠して、温度180℃、荷重21.17Nの条件下で測定した。数値が大きいほど、流動性が良好であることを示す。
[樹脂組成物の評価方法]
(1)難燃性:下記記載の方法で作製した大きさが127mm×12.7mmで、厚がみ0.8mmの試験片について、UL94規格に準拠して測定を行った。V−0はV−2より難燃性に優れるが、V−2レベル以上であれば自消性が優れていると判断でき、実成形品として問題ないレベルである。
(2)耐トラッキング:下記記載の方法で作製した大きさが100mm×100mmで、厚みが3mmの試験片について、IEC60112規格に準拠してCTIを測定した。なお、印加電圧は50V単位で行った。
(3)グローワイヤー性(GWIT):下記記載の方法で作製した大きさが80mm×80mmで、厚みが1mm、2mmおよび3mmの試験片について、IEC60695−2−13規格に準拠し測定を行った。25℃の間隔でテストを行い着火を起こさない最高温度で評価した。
この温度が高いほど、グローワイヤー性に優れていると判断できる。
(4)引張強度:下記記載の方法で作製した引張試験用ISO試験片について、ISO527規格に従って引張強度を測定した。
(5)耐金属腐食性:上記(1)難燃性評価用試験片の上に1cm角の銀板(ニラコ社製)を置き、120℃の熱風オーブン中に静置した。340時間後に試験片と銀板を取り出し、銀板の腐食状態を目視観察した。腐食がないものを○、腐食があり変色や光沢変化等があれば×と表記した。なお、熱処理後の試験片表面には、ブルーミングによる染み出し物は発生していなかった。
[実施例1〜21、比較例1〜10]
ポリアミド樹脂組成物の調製および試験片の作製方法
ポリアミド樹脂と各種添加剤を表1、2に示す配合量で秤量し、タンブラーミキサーで30分混合し、混合物を得た。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼所社製、型式:TEX30HCT、スクリュー径30mm)によって、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hの条件下で溶融混練してポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
得られたポリアミド樹脂組成物を120℃で8時間真空乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製、型式:J75ED)を用いて樹脂温度265℃、金型温度80℃にて射出成形を行い、上記評価(1)〜(5)用の各々の試験片を作成した。得られた試験片を用い、上記難燃性、耐トラッキング性、グローワイヤー性、引張強度および耐金属腐食性の評価を行った。評価結果を、表1、2に示す。なお、射出成形時にモールドデポジットの発生状況を観察したが、いずれの実施例、比較例においてもモールドデポジットは観察されなかった。
Figure 0005522904
Figure 0005522904
表1、2より、次のことが明らかとなった。
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、難燃性、耐トラッキング性およびグローワイヤー性および機械的強度の全てに優れ、かつ、耐金属腐食性に優れた、バランスのとれた樹脂組成物であることが分かる(実施例1〜21)。また、硫酸メラミン以外の本発明のアミノトリアジン系難燃剤に関しても、同様の効果が発揮される。本発明の(C)成分を配合しない場合(比較例3〜7、9、10)は金属腐食性の問題があり、本発明の範囲外の安定剤を配合した場合(比較例4、5、7、10)も、金属腐食性が改善されなかった。(C)/(B)が本発明の範囲下限未満の場合も、金属腐食性が改善されなかった(比較例8)。
難燃剤がシアヌル酸メラミンである場合は、金属腐食の問題は発生しなかったものの、厚み3mmにおけるグローワイヤー性が本発明の目的を達成できず(比較例1)、難燃剤が臭素系難燃剤の場合は、耐トラッキング性が本発明の目的を達成できなかった(比較例2)。
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、難燃性、グローワイヤー性、耐トラッキング性および機械的強度の全てに優れ、かつ、耐金属腐食性に優れるため、特に、家電機器、通信機器、OA機器、コンピューター、カーエレクトロニクス機器等の部品として広く使用されるコネクター、プラグ、ブレーカー、スイッチ、電磁開閉器等の金属接点・端子を有する電気・電子部品の用途に好適である。

Claims (7)

  1. ポリアミド樹脂(A)100重量部に対し、アミノトリアジン化合物と、硫酸、ピロ硫酸および有機スルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とからなる塩(B)10〜60重量部、ヒンダードフェノール系化合物、ハイドロタルサイトおよびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(C)ならびに変性オレフィン系重合体(D−1)1〜50重量部を含み、(C)成分と(B)成分の配合比(重量比)(C)/(B)が、0.0005〜0.2であり、かつ、JIS K7210規格に準拠し、温度180℃、荷重21.17Nで測定した変性オレフィン系重合体(D−1)のメルトボリュームレート(MVR)が100〜500cm3/10分であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  2. (B)成分が硫酸メラミンである、請求項1に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  3. 変性オレフィン系重合体(D−1)の変性剤の付加量が、オレフィン系重合体100重量部に対し0.05〜5重量部である、請求項1または2に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  4. 変性オレフィン系重合体(D−1)が、オレフィン系重合体に不飽和カルボン酸無水物をグラフト重合させてなる変性オレフィン系重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  5. 変性オレフィン系重合体(D−1)が変性プロピレン系重合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  6. さらに、カルボン酸アミド系ワックス、高級脂肪酸金属塩、および高級脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の分散剤(E)を、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して0.1〜3重量部配合してなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  7. 金属接点および/または金属端子を有する電気部品または電子部品に使用される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
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