JP5518416B2 - ポリラジカル化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明のポリラジカル化合物の製造方法は、ラジカル部位を有するとともに、マイケル付加反応に対して活性な水素原子を有する化合物(A)(以下、化合物(A)と略記する)、活性不飽和基を有する化合物(B)(以下、化合物(B)と略記する)及びマイケル付加反応を促進する触媒(C)(以下、触媒(C)と略記する)を必須成分として反応させることを特徴とする。
化合物(A)の好ましいものとして、具体的には、2つの電子吸引性基が結合したメチレン基又はメチン基を有する化合物、及びアミノ基を有する化合物が例示できる。
前記電子吸引基としては、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基等が例示できる。
化合物(A)のより好ましいものとして、具体的には、ラジカル部位と、アセトアセテート基、マロネート基、β−ジケトン基、β−シアノアセテート基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基とを有する化合物が例示できる。
なお、ポリラジカル化合物として多分岐用構造体を形成する観点から、化合物(A)は活性な水素原子を2個有することが好ましい。
そして、化合物(A)としては、以下に例示するような2つの電子吸引性基が結合したメチレン基、又はアミノ基を有する化合物に、ラジカル部位を有する化合物を結合させて得られた化合物が好ましい。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が例示できる。
前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基が例示できる。
R1及びR2としては、前記アルコキシ基が好ましい。
例えば、ラジカル部位を有する化合物として、さらに水酸基を有する化合物と、活性な水素原子を有する化合物として、カルボン酸エステルに該当する化合物とを反応させて、エステル交換反応を行うことで、容易に化合物(A)を製造できる。
化合物(B)の好ましいものとして、具体的には、不飽和炭化水素基を構成する炭素原子にカルボニル基が結合した構造を有する化合物が例示できる。
化合物(B)は、活性不飽和基として不飽和炭化水素基を1分子あたり2個以上有する化合物が好ましい。
なお、前記化合物(B)において、一分子中に(メタ)アクリロイル基を二つ以上有する化合物においては、これら(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基とメタクリロイル基とが混在していても良いし、アクリロイル基又はメタクリロイル基のみでも良い。
また、2官能の(メタ)アクリロイル基を有する化合物として、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートも好ましい。
前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることが特に好ましい。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が例示できる。
前記環状のアルキル基は、単環構造及び多環構造のいずれでも良いが、炭素数が5〜10であることが好ましく、5〜7であることがより好ましい。より具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデカニル基等が例示できる。
前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
前記強塩基の触媒(C)は、二つの前記アルキル基又はアリール基が環構造を形成した単環構造でも良いし、三つの前記アルキル基又はアリール基が環構造を形成した多環構造でも良い。
また、水素原子を置換している前記アルキル基又はアリール基の総数は、3であることが好ましい。
前記トリアルキルホスフィンにおける三つのアルキル基は、すべて同一でも良いし、すべて異なっていても良く、二つが同一でも良い。
前記トリアルキルホスフィンの触媒(C)としては、好ましいものとして、トリシクロペンチルホスフィン、トリス(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−n−ヘキシルホスフィン、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリ−n−デシルホスフィン、トリ−n−ドデシルホスフィン、トリステアリルホスフィン等が例示できる。これらの中でも、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリ−n−ドデシルホスフィンが特に好ましい。
なお、本明細書においては、触媒(C)の存在下、化合物(A)及び化合物(B)を反応させてなる硬化物である化合物を「ポリラジカル化合物」と称し、化合物(A)、化合物(B)及び触媒(C)等を混合した、マイケル付加反応し得る組成物、すなわち反応(硬化)前の組成物を「硬化性組成物」と称する。
好ましい反応方法としては、室温で所定時間反応させ、次いで加熱下でさらに所定時間反応させる方法が例示できる。なかでも、室温での反応は、15〜30℃で0.5〜6時間行うことが好ましく、18〜25℃で1〜4時間行うことがより好ましい。そして、加熱下での反応は、60〜100℃で0.5〜6時間行うことが好ましく、70〜90℃で1〜4時間行うことがより好ましい。
反応は、溶媒共存下で行うことが好ましい。この時の溶媒は、化合物(A)、化合物(B)等の反応に必要な各成分と反応しないものから適宜選択すれば良い。好ましい反応溶媒として具体的には、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の脂肪族又は芳香族系炭化水素;クロロホルム等のハロゲン系炭化水素;酢酸エチル等のエステル類;エタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類等が例示できる。
また、後述するように、ポリラジカル化合物を塗膜として直接製造する場合には、活性メチレン基又はアクリロイル基を有する反応性希釈剤を用いることが好ましい。これは、このような反応性希釈剤自体が、マイケル付加反応により硬化物を構成する成分であり、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチルマロネート、エチルアセトアセテート等が例示できる。
加熱下での硬化は、60〜100℃で0.5〜18時間行うことが好ましく、70〜90℃で1〜16時間行うことがより好ましい。反応させる成分によっては、このように加熱硬化させた後、さらに、昇温して硬化を行っても良く、この場合、100〜140℃で0.5〜6時間行うことが好ましく、110〜130℃で1〜4時間行うことがより好ましい。また、加熱下での硬化の前に、あらかじめ室温で硬化を行っても良く、この場合、15〜30℃で12〜36時間行うことが好ましく、18〜25℃で18〜30時間行うことがより好ましい。
前記金属酸化物としては、LiMnO2、LixMn2O4(0<x<2)等のマンガン酸リチウム又はスピネル構造を有するマンガン酸リチウム;MnO2;LiCoO2;LiNiO2;LiyV2O5(0<y<2);オリビン系材料であるLiFePO4;スピネル構造中のMnの一部を他の遷移金属で置換した材料であるLiNi0.5Mn1.5O4、LiCr0.5Mn1.5O4、LiCo0.5Mn1.5O4、LiCoMnO4、LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.33Mn0,33Co0.33O2、LiNi0.8Co0.2O2、LiN0.5Mn1.5−zTizO4(0<z<1.5)等が例示できる。
併用する他の電極活物質は、一種でも良いし、二種以上でも良い。
前記他の電極活物質の形状は特に限定されず、例えば、金属リチウムでれば薄膜状、バルク状、粉末を固めたもの、繊維状、フレーク状等が例示できる。
前記他の電極活物質としては、金属リチウム又はグラファイトが好ましい。
併用する他の電極活物質は、一種でも良いし、二種以上でも良い。
前記導電付与剤としては、活性炭、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維等の炭素材料;ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子が例示できる。これらのなかでも、炭素繊維が好ましい。さらに炭素繊維としては、50nmから300nmの平均繊維径を有するものが好ましい。
前記結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、各種ポリウレタン等の樹脂バインダが例示できる。
結着剤は、単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
電極中の結着剤の含有量は、5〜30質量%であることが好ましい。
前記触媒としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子;ピリジン誘導体、ピロリドン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、アクリジン誘導体等の塩基性化合物;金属イオン錯体等が例示できる。
触媒は、単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
電極中の触媒の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。
また、集電体に触媒効果を付与したり、電極活物質と集電体とを化学結合させたりしても良い。
前記電解質としては、例えば、電解質塩を溶剤に溶解した電解液を利用できる。
前記電解質塩としては、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、Li(C2F5SO2)3C等が例示できる。これら電解質塩は、単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
固体電解質として使用する高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体;アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチル(メタ)アクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチル(メタ)アクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチル(メタ)アクリレート共重合体、アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリロニトリル系重合体;ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、これらの(メタ)アクリレート体やメタクリレート体の重合体等が例示できる。
これらの固体電解質は、電解液を含有させ、ゲル状にして使用しても良いし、前記電解質塩を併用しても良い。
前記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ヒドロキシエチル、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ソーダ等が例示できる。
増粘剤は、単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
電極中の増粘剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましい。
(原料の製造)
下記式(10)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテートを、以下のように合成した。
1H−NMR (500MHz、CDCl3、ヒドロキシルアミン体);δ(ppm): 5.18 (m, 1H, COOCH), 3.45 (s, 2H, COCH2CO), 2.29 (s, 3H, COCH3), 1.97 (d, 2H, CH2), 1.58 (d, 2H, CH2), 1.26 (d, 12H, CH3)。13C−NMR (500MHz、CDCl3、ヒドロキシルアミン体) δ(ppm);207.0 (COCH3), 166.6 (CH2CO), 70.0 (OCHCH2), 67.5 (COCH2CO), 60.4 (NC(CH3)2), 43.3 (OCHCH2),31.0 (C(CH3)2), 30.3 (COCH3), 20.5 (C(CH3)2)。
質量分析(m/z): [M+1] : 256; 計算値 256.15
元素分析値(Found): C, 60.9; H 8.6 N, 5.5%, 理論値(Calcd): C, 60.9; H 8.6 N, 5.5%
ESRシグナルg=2.0062積分値よりラジカルの定量的な保持を確認した。
(ポリラジカル化合物の製造(1))
ポリラジカル化合物を、以下の手順で熱硬化により製造した。
元素分析値(Found): C, 60.9; H 7.9 N; 2.3%, 理論値(Calcd): C, 60.7; H 7.8 N; 2.5%
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(1))
ポリラジカル化合物の薄膜を、以下の手順により集電体基板上に形成した。
製造例1で製造した2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート500mg、トリメチロールプロパントリアクリレート385mg及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン9mgを混合した硬化性組成物を、バーコーター(番手#3)でグラッシーカーボン電極基板(ニラコ社製 GC−20S)上に塗布した。そして、24時間静置し、80℃で2時間加熱して硬化させ、前記反応式(III)で表わされる反応の生成物であるポリラジカル化合物の薄膜を製造した(質量2.8mg、塗布面積2cm2)。
元素分析値は下記の通りであり、理論値とほぼ一致した。
元素分析値(Found): C, 60.9; H 7.9 N; 2.3%, 理論値(Calcd): C, 60.7; H 7.8 N; 2.5%
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
(ポリラジカル化合物の製造(2))
トリメチロールプロパントリアクリレート385mgの代わりに、ペンタエリスリトールテトラアクリレート458mgを用いたこと以外は、実施例1と同様に反応及び処理を行い、下記反応式(IV)で表わされる反応の生成物であるポリラジカル化合物を製造した(収量928g、収量96%)。
元素分析値は下記の通りであり、理論値とほぼ一致した。
元素分析値(Found): C, 59.5; H 7.5 N; 3.1%, 理論値(Calcd): C, 59.7; H 7.5 N; 3.2%
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(2))
製造例1で得られた2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート200mg、トリメチロールプロパントリアクリレート77mg、ブタンジオールジアクリレート77mg及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン 3.5mgを混合した硬化性組成物を、実施例2と同様の方法でグラッシーカーボン電極基板(ニラコ社製、GC−20S)上に塗布して硬化させ、下記反応式(V)で表わされる反応の生成物であるポリラジカル化合物の薄膜を製造した。
元素分析値は下記の通りであり、理論値とほぼ一致した。
元素分析値(Found): C, 60.2; H 7.9 N; 3.1%, 理論値(Calcd): C, 60.8; H 7.9 N; 3.0%.
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
(ポリラジカル化合物の製造(3))
4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル171mg、ペンタエリスリトールテトラアクリレート198mg及び塩化マグネシウム3.5mgを混合した硬化性組成物を、実施例4と同様の方法で、80℃で12時間加熱し、次いで120℃で2時間加熱して硬化させ、下記反応式(VI)で表わされる反応の生成物であるポリラジカル化合物を製造した。
元素分析値は下記の通りであり、理論値とほぼ一致した。
元素分析値(Found): C, 61.5; H 8.9 N; 7.1%, 理論値(Calcd): C, 61.9; H 8.8 N; 7.6%.
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(3))
製造例1で得られた2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート500mg、トリメチロールプロパントリアクリレート385mg及び1,8−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン9mgを混合した硬化性組成物から、実施例4と同様の方法で薄膜電極を製造した。
実施例2と同様の方法で測定セルを作製し、薄膜電極の電気化学応答をサイクリックボルタンメトリーにより測定した。測定セルのサイクリックボルタモグラムの積分値から算出した酸化還元容量は48mAh/gであった。すべてのラジカルが充放電に関与した場合の充放電容量密度は59mAh/gであるため、充放電に関与したラジカルの割合は81%であった。
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(4))
製造例1で得られた2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート500mg、トリメチロールプロパントリアクリレート385mg及びテトラメチルグアニジン9mgを混合した硬化性組成物から、実施例4と同様の方法で薄膜電極を製造した。
実施例2と同様の方法で測定セルを作製し、薄膜電極の電気化学応答をサイクリックボルタンメトリーにより測定した。測定セルのサイクリックボルタモグラムの積分値から算出した酸化還元容量は51mAh/gであった。すべてのラジカルが充放電に関与した場合の充放電容量密度は59mAh/gであるため、充放電に関与したラジカルの割合は86%であった。
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(5))
4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)ベンジル アセトアセテート200mgとトリメチロールプロパントリアクリレート94mgを混合し、50℃で撹拌して溶解させ、室温に戻し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン6mgを混合した硬化性組成物から、実施例4と同様の方法で、下記反応式(VII)で表わされる反応の生成物であるポリラジカル化合物の薄膜を製造した。
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(6))
製造例1で得られた2、2、6、6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート500mg、トリメチロールプロパントリアクリレート385mg、トルエン0.85mL及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン9mgを混合した硬化性組成物に、炭素フェルト電極(日本カーボン社製、GF−20、10×10×2mm)を10秒間浸漬して引き上げた。24時間静置し、80℃で2時間加熱して硬化させた(薄膜質量23.2mg/フェルト質量23.5mg)。
得られた薄膜の電気化学応答を、サイクリックボルタンメトリーにより測定した。より具体的には、過塩素酸テトラブチルアンモニウムを支持電解質としてアセトニトリル溶液中において、薄膜を作製した炭素フェルト電極を作用極、炭素フェルト電極を対極、Ag/AgClを参照極として、得られた薄膜について、0〜1.5V vs.Ag/AgClの範囲を1mV/sの掃引速度で測定した。その結果、アノード側0.75Vに酸化還元波が現れ、繰り返し掃引してもピーク電流値は減少せず、極めて安定であった。サイクリックボルタモグラムの積分値から算出した酸化還元容量は49mAh/gであった。すべてのラジカルが充放電に関与した場合の充放電容量密度は59mAh/gであるため、充放電に関与したラジカルの割合は83%であった。
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(7))
製造例1で得られた2、2、6、6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート256mg、ペンタエリスリトールテトラアクリレート176mg及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン5mgを混合した硬化性組成物を、実施例2と同様の方法で硬化し、薄膜電極を形成した。
得られたポリラジカル化合物の薄膜のFT−IRスペクトルを図6に示す。
実施例2と同様の方法で測定セルを作製し、薄膜電極の電気化学応答をサイクリックボルタンメトリーにより測定した。測定セルのサイクリックボルタモグラムの積分値から算出した酸化還元容量は53mAh/gであった。すべてのラジカルが充放電に関与した場合の充放電容量密度は62mAh/gであるため、充放電に関与したラジカルの割合は85%であった。
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
下記式(18)で示される4−メタクロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル 240mg(1.00mmol)を、エタノ−ル中、アゾビスイソブチロニトリル8.2mg(0.05mmol)を開始剤として、70℃で二時間攪拌し、ラジカル重合を試みた。しかし、重合体は全く得られなかった。
Claims (12)
- ラジカル部位を有するとともに、マイケル付加反応に対して活性な水素原子を有する化合物(A)、活性不飽和基を有する化合物(B)及びマイケル付加反応を促進する触媒(C)を必須成分として反応させることを特徴とするポリラジカル化合物の製造方法。
- 前記化合物(A)が、2つの電子吸引性基が結合したメチレン基又はアミノ基を有する請求項1に記載のポリラジカル化合物の製造方法。
- 前記2つの電子吸引性基が結合したメチレン基が、アセトアセテート基、マロネート基、β−ジケトン基及びβ−シアノアセテート基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基である請求項2に記載のポリラジカル化合物の製造方法。
- 前記ラジカル部位が、ニトロキシド基、アミニウム基、フェノキシル基及びガルビノキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリラジカル化合物の製造方法。
- 前記化合物(B)が、(メタ)アクリロイル基を少なくとも2個以上有する化合物である請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリラジカル化合物の製造方法。
- 前記化合物(B)が、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及び1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物である請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリラジカル化合物の製造方法。
- 前記触媒(C)が、一つ以上の水素原子がアルキル基又はアリール基で置換されたアンモニア(前記アルキル基又はアリール基は、一つ以上の炭素原子が窒素原子で置換されていても良く、前記アルキル基又はアリール基が相互に結合して環構造を形成していても良い)、及びトリアルキルホスフィンからなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物である請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリラジカル化合物の製造方法。
- 前記触媒(C)が、第三級アミン、イミダゾール化合物及びジアザビシクロ化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物である請求項9に記載のポリラジカル化合物の製造方法。
- 前記触媒(C)が、炭素数5〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有するトリアルキルホスフィンである請求項9に記載のポリラジカル化合物の製造方法。
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