JP5508358B2 - 圧延銅箔及びその製造方法並びに該圧延銅箔を用いたリチウムイオン二次電池負極 - Google Patents

圧延銅箔及びその製造方法並びに該圧延銅箔を用いたリチウムイオン二次電池負極 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の集電体に好適で、優れた樹脂密着性と強度、耐熱性及び導電率を有する圧延銅箔及びその製造方法並びに該圧延銅箔を用いたリチウムイオン二次電池負極に関するものである。
リチウムイオン二次電池は高い電圧が得られ、エネルギー密度も高いことからモバイルパソコン、携帯端末等の電子機器のバッテリーとして利用されており、さらには自動車の駆動用電池としても多くの機関で研究開発が活発に行われている。
リチウムイオン二次電池は、電解質中のリチウムイオンがセパレーターによって絶縁された正極板と負極板の間を移動することによって充放電を繰り返す仕組みを基本とし、この仕組みを高いサイクル特性で実現できる電解質、セパレーター、正極板及び負極板の材料を見出すことが重要である。
リチウムイオン二次電池に使用する負極板は、銅箔を材料とする負極集電体とその上に形成される負極活性物質層によって構成されるのが一般的である。
負極集電体を構成する銅箔には、鋳造で製造した肉厚の素条に圧延加工を施して製造する圧延銅箔や、銅イオンを含む電解液から金属銅を電析させて製造する電解銅箔が使用されている。この中で、圧延銅箔は、圧延加工と加熱処理を組み合わせることによって、銅箔及び銅合金箔の銅結晶組織を制御できるという特徴を有する。
また、リチウムイオン二次電池の負極集電体を構成する銅箔は、基本的特性として、高い強度、高導電率及び良好な加工性等を有することが求められており、これらの特性の向上は、従来の電気・電子材料用銅合金に求められているものと共通する。高い強度、高い導電性及び良好な曲げ加工性を有する電気・電子材料用銅合金としてはCu−Cr合金が知られており、特許文献1〜4には、Zr、Sn、Ti、Fe、Si,Sn、Mg、Mn、Ag等の添加元素を含有したCu−Cr合金が開示されている。これらの添加元素は、導電率の低下を抑制しながら、電気・電子材料用として必要な機械的強度と加工性等の特性を向上させるためにCu−Cr合金に含有されるものである。
しかしながら、リチウムイオン二次電池に使用する集電用銅箔としては、強度、導電性及び加工性だけではなく、銅箔上に形成される負極活物質層との密着性を向上させることが不可欠である。銅箔の表面に形成される負極活物質層は、主に100μm程度の膜厚を有し、人工黒鉛や天然黒鉛、あるいはコークス等のカーボン粒をポリ弗化ビニリデン(PVdF)等のバインダ及び導電助剤と一緒にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤に混合しスラリー状にした後、これを銅箔の表面に塗布し、乾燥固化させることによって得られる。
リチウムイオン二次電池では、充放電を繰り返すと、リチウムの吸蔵・放出に伴うカーボン粒の膨張・収縮によってカーボンが銅箔から剥離しやすく、電極間の短絡、電池容量の低下とサイクル特性の劣化等を招く恐れがある。そのため、負極集電体用銅箔として、負極活物質層を構成するカーボンとの高い密着性が要求されている。カーボンとの密着性はスラリー中のバインダの割合を多くすればある程度向上できるが、逆に電極の導電性が低下してしまうため有効な手段ではない。
そこで、この問題を解決するため、予め粗化と呼ばれる銅箔表面に凹凸を形成する表面処理を施すことが行われている。粗化処理の方法としては、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、機械研磨、電解研磨、化学研磨及び電着粒のめっき等の方法が知られているが、これらの中でも特に電着粒のめっきは多用されている。 特許文献5〜7には、これらの方法で表面粗化処理することによって、負極活物質層との密着性の向上や充放電時負極集電体に集中する応力緩和を図ったリチウムイオン二次電池用銅箔が提案されている。それらの中で、前記の特許文献5では、不均一で粗度が高い粗化粒子は逆に投錨効果が弱くなり、負極集電体と負極活物質との高い密着性が得られなくなるという問題を解決するために、低粗化度性の粗化粒子で銅箔表面上に複雑な構造を持たせるように、複数回のめっき処理やリフロー処理を施す方法が取られている。
また、特許文献8には、リチウムイオン電池の集電体とケース樹脂との接合強度を高くするため、銅合金集電体をエッチング処理する方法が開示されており、銅集電体と樹脂との密着性を向上させる方法としては表面粗化処理が一般的に行われている。
特開2008−81762号公報 特開平7−258806号公報 特開2009−132965号公報 特開2008−81817号公報 特開2009−87561号公報 特開2009−272086号公報 特開2006−216518号公報 特開2010−205507号公報
しかしながら、前記特許文献1〜4には、強度、導電率及び加工性等を向上させる銅合金の組成は提案されているものの、リチウムイオン二次電池負極集電体用銅合金としての用途は具体的に記載や示唆がされていない。そのため、負極活物質層との密着性を向上できる銅合金組成については、その技術課題及び解決方法が開示されていない。
また、前記の特許文献5〜8に記載されている方法では、粗化処理が必須の工程であるためにコストが高くなり、リチウムイオン二次電池の高価格化につながる。また、銅箔の量産を行う際に、上記の表面粗化処理方法を適用するには処理条件の精密な制御が必要であり、処理速度を速くして多量の処理を行う場合に、均一な品質を安定して得ることが困難である。そのため、上記の表面粗化処理方法を採用することは、コストだけではなく品質の点からも、電気自動車等のリチウムイオン二次電池を用いた機器の一般普及に大きな妨げとなっている。
このように、従来技術では、銅合金又は銅箔をリチウムイオン二次電池負極集電体用として適用する際に、負極活物質層密着性との密着性を向上させる方法としては表面粗化処理方法を採用するしか手段がなかった。
本発明の目的は、上記のような従来技術における問題点を解決しようとするものであり、高強度、高耐熱性、高導電率及び良好な加工性を有するだけではなく、銅箔表面に電着粒のめっき等による粗化処理を施さずに負極活物質層に含まれる樹脂との密着性の高い圧延銅箔及びその製造方法、並びに該圧延銅箔を用いたリチウムイオン二次電池負極を提供することにある。
本発明は、上記の目的を達成するために種々の検討を行った結果、圧延銅箔における添加元素の原子半径及び添加量と銅箔の樹脂密着性との間にある特定の相間関係を利用して、添加元素の組成を最適化することによって到達したものであり、次の構成を有する。
(1)本発明は、Crを含有し、さらに、強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有する元素(ただしCrは除く)の1種又は2種以上を、各構成元素の(原子半径)×(原子%)の総和を全構成元素の平均原子半径としたときに、該平均原子半径がCuの原子半径より小さくなる割合で含有し、残部がCu及び不可避な不純物からなることを特徴とするリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔を提供する。
(2)本発明は、Crを0.20〜0.40重量%含有し、さらに、前記の強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有する元素は、Ag、Sn、In、Ti、Zrからなる元素群の中から選ばれる元素の1種又は2種以上であることを特徴とする特徴とする前記(1)に記載のリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔を提供する。
(3)本発明は、前記の強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有する元素(ただしCrは除く)の1種又は2種以上の総量が0.02重量%以上であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔を提供する。
(4)本発明は、前記平均原子半径がCuの原子半径より0.005ピコメーター(pm)以上小さくなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔を提供する。
(5)本発明は、80%IACS以上の導電率を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔を提供する。
(6)本発明は、20μm以下の厚さを有する前記(1)〜(5)の何れかに記載のリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔を提供する。
(7)本発明は、銅と、銅に添加される元素としてCrと、さらに強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有する元素(ただしCrは除く)の1種又は2種以上とを、各構成元素の(原子半径)×(原子%)の総和を全構成元素の平均原子半径としたときに、該平均原子半径がCuの原子半径より小さくなる割合で含有する銅合金組成を溶解して銅合金素材を鋳造する溶製工程と、前記銅合金素材に熱間圧延を施して板材を形成する熱間圧延工程と、前記板材に冷間圧延を施して生地を形成する冷間圧延工程と、前記生地に溶体化処理を施す生地溶体化工程と、前記溶体化処理を施された前記生地に冷間圧延を施して銅箔素材を形成する生地冷間圧延工程と、前記銅箔素材に400〜500℃の時効処理を施す時効工程と、前記時効処理を施された銅箔素材に生地からの加工度が95〜99%となる冷間圧延を施す最終冷間圧延工程と、を備えるリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔の製造方法を提供する。
(8)本発明は、前記(1)〜(6)の何れかに記載のリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔を用いて、該リチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔の表面祖化処理を行わないで、前記圧延銅箔の表面上にバインダ樹脂を含む負極活物質層を形成したことを特徴とするリチウムイオン二次電池負極を提供する。
本発明の圧延銅箔は、Cuを主成分とし、Cr、好ましくはCrを0.20〜0.40重%含有し、さらに強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有する元素(ただしCrは除く)、好ましくはAg、Sn、In、Ti、Zrを1種又は2種以上添加する際に、その添加量を最適化することによって、高強度、高耐熱性及び高導電率を維持しながら、表面粗化処理を施さずに負極活物質層に含まれる樹脂との密着性を向上できるため、リチウムイオン電池の長寿命化と安全性の向上に寄与し得る。特に、Cr以外の添加元素の1種又は2種以上を添加する際に、その総量が0.02重量%以上とすることによって、添加元素による強度及び耐熱性の向上を大幅に図ることができ、リチウムイオン二次電池集電体用銅箔として、一層の長寿命化が可能となる。また、Cr及び添加元素の1種又は2種以上を添加する際に、前記圧延銅箔の全構成元素の平均原子半径がCuの原子半径より0.005pm以上小さくなるように添加元素の含有量を最適化することによって、負極活物質層に含まれる樹脂との密着性の大幅な向上を図ることができる。
本発明の圧延銅箔は、Crを含むすべての添加元素の総含有量を導電率が80%IACS以上となるように最適化することによって、リチウムイオン二次電池の容量の大幅な向上を図ることができる。さらに、本発明の圧延銅箔は、厚み20μm以下において、リチウムイオン二次電池用負極に占める圧延銅箔の体積率が小さくなることから負極活物質を十分に充填できるようになり、電池の体積エネルギー密度を高くすることができる。
本発明の圧延銅箔の製造方法によれば、高強度、高耐熱性及び高導電率を有するとともに、負極活物質層に含まれる樹脂との密着性に優れる銅箔を、表面粗化処理を施さずに低コストで量産化できる。
加えて、本発明の圧延銅箔の表面上にバインダ樹脂を含む負極活物質層を形成したリチウムイオン二次電池負極は、従来コスト高の要因となっていた表面粗化処理工程を省略できるため、高性能、高信頼性及び高寿命のリチウムイオン電池を低コストで得ることができ、産業上極めて有効である。
Cuより原子半径が小さな元素を添加したときに圧延面で起こる原子配列の変化を示す図である。 Cuより原子半径が大きな元素を添加したときに圧延面で起こる原子配列の変化を示す図である。 本発明に係る圧延銅箔の製造工程の一例を示すフロー図である。 本発明の実施例におけるCu合金材の合金組成、平均原子半径、圧延銅箔の製造条件、碁盤目試験の判定結果及び導電率と強度の測定結果を示す図である。 本発明の参考例及び比較例におけるCu合金材の合金組成、平均原子半径、圧延銅箔の製造条件、碁盤目試験の判定結果及び導電率と強度の測定結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
〈添加元素Cr〉
Crは時効処理により単独で母相中に析出して強度と耐熱性の向上、及び導電率の低下を抑える作用を発揮する。Crの含有量は、機械的特性である強度と加工性、耐熱性及び導電率の所望の特性に応じて決めることができるが、通常、0.05〜0.5重量%の範囲でこれらの特性の向上を図ることができる。さらに、Crの含有量は0.20重量%〜0.40重量%の範囲が好ましい。0.05重量%未満では強度や耐熱性の向上に対して効果を示さず、0.05重量%を超えてからCrの母相中の析出が見られるようになり、このCrの析出は0.20重量%以上において十分となり、所望の効果が期待できる。一方、0、40重量%を超えると溶体化処理時の未固溶Crが粗粒第2相析出物を形成するようになり、銅合金の強度をそれ以上増加させることができないばかりでなく、加工性の低下を招く。さらに、Crの含有量が0.5重量%を超えると、加工性や導電率の低下が顕著になるため、リチウムイオン二次電池として所望の特性を得ることが困難になる。
〈Cr以外の添加元素〉
本発明は、上記のCrを含有する銅合金から作製される銅箔が有する強度、耐熱性及び加工性の一層の向上を図るために、強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有する元素(ただしCrは除く)の1種又は2種以上を、Crとともに添加した銅箔である。強度を向上させる機能を有する元素としては、例えば、Zr、Sn、Ti、Fe、Si,Sn、Mg、Mn、Ag、Ni、In、Zn及びP等が挙げられる。これらの元素は含有量が0.005重量%以上であることが好ましく、0.010重量%を超えることがより好ましく、さらに0.020重量%以上が特に好ましい。含有量が0.005重量%未満であると、強度を向上させる効果は得られず、0.005重量%以上で強度向上の効果が生まれるようになる。さらに、含有量が0.010重量%を超えてからその効果が大きくなり、特に0.020重量%以上で顕著な効果を得ることができる。
本発明では、母相中に固溶して耐熱性を向上させる作用を有する元素が銅箔の強度を一層向上させる効果を発揮するため、上記の元素の中でもAg、Sn、In、Ti、Zrが好ましい。本発明は、後述するように、導電率の低下を抑えて十分な導電率を確保するために、Cr析出のために400〜500°での時効処理が必要であり、その時効処理において母相の軟化を防ぐことができるような耐熱性を得るために、上記のAg、Sn、In、Ti、Zrからなる元素群の中から選ばれる元素の1種又は2種以上を添加する。これらの元素は含有量が0.005重量%以上であるときに耐熱性を向上させる効果が生まれ、強度を向上させることができる。さらに、耐熱性付与による強度向上を十分に図るために、含有量は0.02重量%以上が好ましい。一方、その含有量の上限値は、加工性及び導電率の顕著な低下を伴わない程度の値に設定できるが、本発明において、その含有量は、総合的な特性の観点からみて1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がさらに好ましい。
〈平均原子半径の導入と樹脂密着性のメカニズム〉
本発明において、圧延銅箔における添加元素の原子半径及び添加量と銅箔の樹脂密着性との間にある特定の相間関係は、原子%で規定した全構成元素の含有量に基づいて次のようにして得られる。まず、各元素の原子%は、全構成元素の重量%と原子量から機械的に計算でき、圧延銅箔の合金成分から一意的に決定される。例えば、Cu、Cr及び上記のAg、Sn、In、Ti、Zrの各元素の原子半径は、Cu:128ピコメーター(pm)、Cr:125pm、Ag:144pm、Sn:158pm、In:163pm、Ti:147pm、Zr:162pmであり、元素iの原子%をXとすると、平均原子半径Raveは下記の式(1)で計算することができる。
ave=128XCu+125XCr+144XAg+158XSn
163XIn+147XTi+162XZr (1)
本発明は、上記の平均原子半径Raveに着目して、RaveがCuの原子半径RCu(128pm)より小さくなるときに負極活物質にバインダとして含まれる樹脂との密着性が向上できることを見出して、到達したものである。さらに、RaveがRCuより0.002pm以上小さくなければ樹脂との密着性を向上させる効果があまり得られないため、本発明はRaveがRCuより0.002pm以上小さくなるように設定する。本発明において樹脂と密着性を大幅に向上させるためには、RaveはRCuより0.005pm以上小さくなることが好ましい。
aveは、添加元素の原子半径と圧延銅箔中の割合(原子%)によって任意に調整することができる。RaveをRCuより小さくする場合に、原子半径の非常に小さな添加元素を用いたり、その添加元素の割合(原子%)を増やしたりすることによって、両者の差を大きくすることができる。しかし、逆に、Raveの値がRCuと比べて小さすぎると、圧銅箔の導電率の低下が顕著になったり、結晶格子の歪みが大きくなって内部応力が増大する場合がある。RaveとRCuとの差は、これらの特性に応じて任意に決められるが、本発明では導電率の低下や結晶内の内部応力の増大が顕著となることを防ぐため、RaveはRCuより0.04pmを超えて小さくならないように設定される。また、RaveがRCuより小さくなる範囲が0.02pm以上では樹脂との密着性の向上効果が飽和する傾向にある。そのため、本発明において、RaveがRCuより小さくなる範囲は0.002〜0.04pmが好ましく、さらに0.005〜0.02pmがより好ましい。
本発明において、樹脂との密着性が向上できるメカニズムについて詳細は不明であるが、次のように考えられる。
本発明の圧延銅箔は、添加元素との原子半径との差によって、結晶格子内に歪みが生じ、その歪みの均一化が起こることで銅箔表面の原子間距離が変化する。例えば、図1に示すように、Cuよりも原子半径が小さな元素を添加すると、銅箔表面の結晶格子において元素間の原子間距離が小さくなるように作用する。それによって、銅箔表面の原子間距離は純銅の場合より小さくなる。一方、Cuよりも原子半径が大きな元素を添加する場合には、図2に示すように、銅箔表面の原子間距離は純銅の場合より大きくなる。さらに、原子間距離の変化量は、圧延銅箔における添加元素の原子半径と添加量に応じて結晶格子内に生じる歪み量が変化するため、両者をパラメータとして用いることによって調整することが可能となる。
銅箔表面に塗布された樹脂は、銅箔表面の原子と樹脂を構成する原子との間の原子間力、及び樹脂層同士の分子間力によって決定される安定状態で銅箔表面上に固定されると考えられる。そこで、有機化合物である樹脂が有しているある特定の周期的な分子構造と銅箔表面の原子間距離とのマッチングを良くすることで、銅箔表面上に固化される樹脂の安定状態の安定性をさらに向上することができ、銅箔の樹脂密着性を向上させることにつながると考えられる。一般に、樹脂に見られる周期的な分子構造は原子間距離より小さいため、添加元素を含めた銅箔の平均原子半径を銅の原子半径よりも小さくすることで、銅箔の樹脂密着性を向上させることができると推察される。
本発明においてCrはCuより小さな原子半径を有することから、Cr以外の添加元素として、Cuより原子半径が大きな元素を、平均原子半径がCuの原子半径より小さくなる割合で添加できる。上記のAg、Sn、In、Ti及びZrの各元素は、強度と耐熱性の向上に大きな寄与をする元素であるが、どれも原子半径がCuより大きい。しかし、Crと併用する際に、平均原子半径がCuの原子半径よりも小さくなる割合になるように添加量を最適化することによって、強度、耐熱性、導電率及び加工性を大幅に向上できるだけではなく、樹脂との高い密着性を維持した圧延銅箔を得ることができる。本発明は、この点に大きな特徴を有する。
また、上記に挙げたFe、Si、Mg、Mn、Ni、Zn及びPの各元素は、母相中に固溶して耐熱性を向上させる作用が小さくCrの析出効果があまり期待できないために、銅箔の強度を向上する効果が上記のAg、Sn、In、Ti及びZrの各元素と比べてやや小さいが、その中で、Fe、Si、Mn、Ni及びPは、原子半径がそれぞれ126pm、117pm、112pm、125pm及び110pmであり、Cuより小さな原子半径を有する。そのため、Crとの併用によって、強度向上の効果だけではなく、樹脂の密着性を向上できる効果を同時に得ることができる。以上の点から、本発明では、Crと、Ag、Sn、In、Ti及びZrからなる元素群から選ばれる元素の1種又は2種とからなる銅合金組成に、さらにFe、Si、Mn、Ni及びPからなる元素群から選ばれる元素の1種又は2種を加えることによって、リチウムイオン二次電池集電用圧延銅箔として適用できる銅合金組成の選択の幅を広げることができる。一方、原子半径がCuより大きな元素であるMg(原子半径:160pm)又はZn(原子半径:137pm)を併用する場合は、平均原子半径がCuの原子半径より小さくなるように添加量を調整する必要がある。
〈銅箔の導電率〉
リチウムイオン二次電池の使用用途は、電動バイクや電気自動車のモータ用電源等、高出入力・高容量化の方向へ移行している。高出入力の充放電の際には、リチウムイオン二次電池内に流れる電流が大きいため、電池集電体の直流抵抗が大きいと、リチウムイオン二次電池内に流れる電流とリチウムイオン二次電池の直流抵抗の積で表される初期電圧降下が大きくなり、十分なリチウムイオン二次電池の容量が得られにくくなる。そこで、リチウムイオン二次電池の直流抵抗を小さくすることによって初期電圧降下を抑制し、十分なリチウムイオン二次電池の容量を確保することができる。
本発明は、リチウムイオン二次電池の直流抵抗を小さくし、十分なリチウイオン二次電池の容量を確保するために、銅箔の導電率は75%IACS以上が必要であり、好ましくは80%IACS以上である。ここで、IACSは、 International Annealed Copper Standard(国際焼きなまし銅線標準)という名の "標準焼きなまし銅線" を 100% とした場合の導線が何%の導電性をもつかという比較値で表されるものである。
本発明において、銅箔の導電率を75%IACS以上、好ましくは80%IACS以上にするには、Cr又は強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有する元素(Cr以外の元素)の各添加量は、銅箔を構成する銅合金組成の総量を100重量部としたときにそれぞれ1重量%以下に設定する必要があり、好ましくはそれぞれ0.5重量%以下である。より好ましくは、CrとCr以外の元素とを合わせたときの総添加量が、0.5重量%以下である。Cr及びCr以外の添加元素の添加量がそれぞれ1重量%を超えると、銅箔の導電率が顕著に低下するため、リチウムイオン二次電池集電体用銅箔として使用したときに、リチウムイオン電池の容量を十分に確保することができない。仮に、Cr又はCr以外の添加元素の添加量がそれぞれ1重量%を超える場合でも、導電率の低下を抑制しようとすると、銅合金組成の詳細な検討、銅箔の製造方法及び条件等の変更、又は新たな製造工程の追加等を行う必要があり、本発明の効果である低コストの圧延銅箔を得ることが困難になる。Cr又はCr以外の添加元素の添加量がそれぞれ1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくはCrとCr以外の添加元素の総添加量が0.5重量%以下であれば、銅合金組成を単純化することができ、製造方法も大きな変更を伴わないで、80%IACS以上の高導電率を有する圧延銅箔を得ることができる。
〈圧延銅箔の厚さ〉
本発明において、圧延銅箔の厚みは、リチウムイオン電池の特性に応じて決めることができるが、20μm以下であることが好ましい。厚みが20μmよりも厚い圧延銅箔では、これを用いて製造されたリチウムイオン二次電池において圧延銅箔の占める体積率が大きくなり負極活物質を十分に充填することができなくなり、体積エネルギー密度の低下を招く恐れがある。
〈圧延銅箔の製造方法〉
図3は、本発明に係る圧延銅箔の製造方法の一例を示すフロー図である。
はじめに、原材料となる銅合金のインゴット(鋳塊)を用意する(工程1)。ここで、銅合金としては、Cuを主成分として、Crを、好ましくはCrを0.20〜0.40重量%含有し、さらに、強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有するCr以外の元素、好ましくはAg、Sn、In、Ti及びZrから選ばれる元素の1種又は2種以上からなる添加元素を、全構成元素の(原子半径)×(原子%)の総和を平均原子半径としたときに、該平均原子径がCuの原子半径より小さくなる割合で含有する銅合金を用いる。
上記のようにして得られたインゴットに対して、熱間圧延を行う熱間圧延工程(工程2)を行う。熱間圧延工程の後、冷間圧延を行う冷間圧延工程(工程3)を行うことにより、「生地」と呼ばれる銅条が製造される。
次に、生地溶体化工程(工程4)が行われる。生地溶体化においては、添加元素を母相中に十分固溶させることが望ましい。
その後、溶体化した生地に対して冷間圧延を行う生地冷間圧延工程(工程5)とCr析出のための時効を施す時効工程(工程6)、さらに最終冷間圧延工程(工程7、「仕上圧延工程」を称される場合もある)を施して、所定厚さの圧延銅箔が製造される(工程8)。
このようにして製造される圧延銅箔は、生地からの加工度が95〜99%であることが望ましい。生地からの加工度を95%以上にすることで圧延銅箔の高い強度が得られるが、99%の加工度を超えると製造設備への負荷が大きく、製造性の低下を招く恐れがある。ここで、加工度は下記の式(2)で定義される。
加工度(%)={1−(最終冷間圧延工程後の板厚/生地の板厚)}×100 (2)
また、時効工程では400〜500℃の温度で時効を行うことが望ましい。400℃未満の低い温度では十分な量のCrが析出せず、導電率の上昇が見込めない。また、500℃を超える温度では、軟化が起こり圧延銅箔の高い強度が得られない。
最終冷間圧延工程後の圧延銅箔は、負極板製造工程(工程9)に供給される。工程9の負極板製造工程の最中(例えば、負極活物質塗布後の乾燥工程)やリチウムイオン二次電池組み込み後の乾燥工程において100〜200℃での熱処理が行われるのが一般的である。
このような特徴を有する製造方法によって作製された本発明の圧延銅箔は、高強度、耐熱性、高導電率及び良好な加工性等を有するとともに、高い樹脂密着性と低コスト化を両立することができる。
〈リチウムイオン二次電池負極の製造方法〉
図3に示す負極板製造工程(工程9)を説明する。図3に示す工程1〜8を経て製造された圧延銅箔は、高い樹脂密着性を有するため表面粗化処理を行わないで、その上に直接、負極活物質層を形成する。負極活物質層は、ハードカーボンやソフトカーボン等の炭素系、人工黒鉛や天然黒鉛等の黒鉛系、チタン酸リチウム等の酸化物系又はSnやSi複合材等の合金系を含む粒子を樹脂バインダに均一に混合した混合物が使用される。このとき、塗布前の樹脂バインダは、均一な混合又は圧延銅箔上の塗布性を考慮して、粘度を下げるためにn−メチルピロリドン(NMP)等の溶剤を含む溶剤系バインダが一般的に使用される。また、溶剤使用によるハンドリング性の低下や環境負荷を考慮して、水系バインダを使用しても良い。樹脂バインダの均一混合と塗布が可能であれば、溶剤又は水を含まない樹脂バインダを使用することもできる。溶剤や水を含む場合には、樹脂バインダを塗布後、上記に述べたように100〜200℃で乾燥することによって、集電体を製造する。樹脂バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリレート又はスチレンーブタジエンゴム(SBR)等の耐熱性、機械的強度及び化学的安定性を有する樹脂であれば様々なものが使用できる。
本発明において好適なリチウムイオン二次電池負極の構成は、表面粗化処理がされていない圧延銅箔の上に直接、導電性を有する炭素系又は黒鉛系からなる粒子と樹脂系バインダとからなる混合物を負極活物質層として形成した構成である。このようにして得られるリチウムイオン二次電池負極は、本発明の圧延銅箔を使用することによって、高強度、耐熱性、高導電率及び良好な加工性等を有し、かつ表面粗化処理を行わないでも高い樹脂密着性を有することから、高性能、高信頼性及び高寿命のリチウムイオン二次電池負極を低コストで得ることができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜21、参考例1〜3、比較例1〜6]
無酸素銅を母材にして、図4及び図5に示す合金組成の銅合金を溶製し、インゴットに鋳造した。インゴットに熱間圧延を施した板材に対して、冷間圧延、生地焼鈍の順に施した後、図4及び図5に示す加工度、時効温度の条件で、生地冷間圧延、時効、最終冷間圧延の順に施して厚さ10μmとして、実施例1〜21、参考例1〜3及び比較例1〜6の圧延銅箔を得た。
〈評価方法〉
それぞれの評価内容は以下の通りである。
(1)碁盤目試験
樹脂との密着性の評価方法として、次のような碁盤目試験を行った。実施例1〜21、参考例1〜3及び比較例1〜6で得られた圧延銅箔の上に、バインダ樹脂として代表的なポリフッ化ビニリデン(PVdF)をn−メチルピロリドン(NMP)溶媒に均一溶解した溶剤系バインダ樹脂を塗布した後、100〜200℃で乾燥させ、銅箔表面上にバンイダを乾燥固化させたもの(以下、バインダ塗布銅箔と称する)を作製した。
JIS H 8602に準拠して、前記バインダ塗布銅箔のバインダ膜にカッターで25個(1mm角)のマス目(以下、碁盤目試験片と称する)を作る。
前記碁盤目試験片にセロハンテープを貼り、セロハンテープを引き剥がしたときに、銅箔からバインダ膜が1マスも剥がれなかったものをOK品、1マスでも剥がれたものをNG品と判定する。
実施例1〜21、参考例1〜3及び比較例1〜6の圧延銅箔を用いて作製した碁盤目試験片100個に対して前記の判定を行い、NG品0個の例を○、NG品1〜5個の例を△、NG品6個以上の例を×として評価した結果を図4及び図5に示す。
(2)圧延銅箔の導電率
実施例1〜21、参考例1〜3及び比較例1〜6で得られた圧延銅箔を、幅15mm、長さ200mmの試験片に切り出した後、該試験片の電気抵抗を四端子測定法により測定し、導電率を算出した結果を図4及び図5に示す。
(3)圧延銅箔の強度
実施例1〜21、参考例1〜3及び比較例1〜6で得られた圧延銅箔を、幅15mm、長さ200mmの試験片に切り出した後、該試験片に対して引張試験を行い、ASTM E−345に準拠して圧延平行方向の強度を測定した結果を図4及び図5に示す。
図4に示す実施例1〜9の圧延銅箔は、Cuを主成分とし、Cr、さらに、強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有する元素の1種又は2種以上を、平均原子半径がCuの原子半径(128pm)より小さくなる割合で含有するため、高導電率と高強度を有し、かつ樹脂との密着性に優れる。図5には、参考例1及び2として、Crだけからなる添加元素を含有する銅箔の諸特性を示しているが、本発明の圧延銅箔における強度向上は、Crに加えて、強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有する添加元素を含有したためであることが分かる。それに対して、図5に示す比較例1〜6は、碁盤目試験の結果に示されるように、上記の添加元素を、平均原子半径がCuの原子半径よりも大きくなる割合で含有するために、樹脂との密着性が劣っている。
圧延銅箔と樹脂との密着性は、添加元素を平均原子半径がCuの原子半径より小さくなる割合で添加することによって向上するが、さらに両者の半径の差が0.005pm以上になるような割合の時に大幅な向上がみられる(実施例1〜4、6〜7、9〜14、17〜18、20と実施例5、8、15〜16、19、21との対比)。そのため、本発明は、平均原子半径がCuの原子半径より0.005pm以上小さくなるように、添加元素の種類と含有量を調整することが好ましい。
一方、Crの含有量は、図5の比較例1に示すように、0.15重量%から強度の向上が見られるようになる。一方で、比較例2に示すように、Crの含有量を0.50重量%まで増やしても、強度の向上させる効果はそれほど得られない。その理由は、上記で述べたように、溶体化処理時の未固溶Crが粗粒第2相析出物を形成するようになるためであると考えられる。したがって、本発明では、Crの含有量を図4に示す実施例に記載されている範囲、すなわち0.20〜0.40重量%の範囲にすることが好ましい。
また、本発明は、強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有する元素として、Ag、Sn、In、Ti、Zrからなる元素群から選ばれたものを添加することによって、強度を向上させる効果が大きくなる(実施例1〜9と実施例10〜11との対比)。実施例10〜11の圧延銅箔はSi、Fe、P、Znの添加元素を含有するものであるが、比較例1〜2の圧延銅箔と比べて、強度はあまり向上していない。加えて、図5に示す比較例6の銅箔(添加元素としてMg、Mn及びPを含有する銅箔)は、樹脂との密着性が劣るだけではなく、参考例1〜2の圧延銅箔が有する強度と比べても、強度の向上効果は小さいことが分かる。このように、本発明では、圧延銅箔の強度向上に対して大きな効果を奏する元素として、Ag、Sn、In、Ti、Zrからなる元素群から選ばれたものを添加することが好ましい。これらの元素は、上記で述べたように、母相中に固溶して耐熱性を向上させる作用が大きいため、強度の向上に大きな寄与をするCrの析出効果を十分に発揮できるためであると考えられる。
Ag、Sn、In、Ti、Zrからなる元素群から選ばれる元素の含有量は、0.0003重量%では強度がほとんど向上しない(図5に示す参考例3)。この含有量が0.005重量%以上になって、強度を向上させる効果が現れてくる(図4に示す実施例12)。しかし、0.01重量%でも元素の添加量がまだ十分ではないために、時効での軟化が起こり、強度が不足している(図4に示す実施例13〜14)。実施例1〜9に示すように、0.02重量%以上で十分な強度を有する圧延銅箔を得ることができる。したがって、本発明は、Ag、Sn、In、Ti、Zrからなる元素群から選ばれる元素の1種又は2種以上の総量を0.005重量%以上にすることが好ましく、さらに0.02重量%以上にすることがより好ましい。
図4に示す実施例は、圧延銅箔の導電率が75%以上、さらに80%IACS以上であるために、直流抵抗を抑えることができ、十分なリチウムイオン二次電池の容量が得ることが期待できる。所望の導電率を得るために、本発明においては、Cr及びCr以外の添加元素の含有量は、実施例に記載されている範囲、具体的には1.0重量%以下にすることが好ましく、さらに0.5重量%以下にすることがより好ましい。
次に、圧延銅箔の製造工程中の製造条件の違いによる本発明の効果を検証する。
図4に示す実施例15〜17は、生地からの加工度が95%未満であるため、圧延銅箔の強度が不足している。
また、実施例18及び19は、時効温度が400℃未満と低いため、時効でのCr析出が十分に起こらず、そのために導電率がやや不足している。一方、実施例20及び21は、時効温度が500℃を超えるため、時効での軟化が起こり、圧延銅箔の強度が不足している。
したがって、本発明は、時効工程において時効温度は400〜500℃の範囲に調整し、また、最終冷間圧延工程において、時効処理を施された銅箔素材に生地からの加工度が95〜99%の範囲になる冷間圧延を施すことが好ましい。
図4に示す実施例1〜21は、樹脂バインダとして具体的にポリフッ化ビニリデン(PVdF)を使用した時の評価結果であるが、本発明ではそれ以外の樹脂バインダ、例えば、スチレンーブタジエンゴム(SBR)の水系バインダを使用した場合でも、実施例1〜21と同じ評価結果が得られることを確認している。ここで、スチレンーブタジエンゴム(SBR)の水系バインダは、圧延銅箔の上に塗布した後、100〜200℃で乾燥させ、銅箔表面上にバンイダを乾燥固化させたものを評価用の試料として作製した。
本発明によれば、Crと、さらに、強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有する元素(ただしCrは除く)の1種又は2種以上を、圧延銅箔の平均原子半径がCuの原子半径より小さくなる割合で含有するとともに、圧延銅箔の製造方法と条件を最適化することによって、高強度、高い熱的安定性、高導電率及び良好な加工性を有するだけではなく、表面粗化処理を施さずに負極活物質層に含まれる樹脂との密着性の高い圧延銅箔及び該圧延銅箔を用いたリチウムイオン二次電池負極を得ることができる。さらに、本発明の銅箔は、リチウムイオン二次電池だけではなく、同じ様な特性が要求される他の二次電池集電体用銅箔としても適用が可能であり、有用性が極めて高い。

Claims (7)

  1. 銅箔表面の原子間距離よりも小さい分子構造を有するバインダ樹脂を含む負極活物質層が表面に塗布されるリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔であって、
    Crを0.20〜0.40重量%含有し、さらに、強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有するAg、Sn、In、Ti、Zrからなる元素群の中から選ばれる元素の1種又は2種以上を、各構成元素の(原子半径)×(原子%)の総和を全構成元素の平均原子半径としたときに、該平均原子半径がCuの原子半径より小さくなる割合で含有し、残部がCu及び不可避な不純物からなることを特徴とするリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔。
  2. 前記Ag、Sn、In、Ti、Zrからなる元素群の中から選ばれる元素の1種又は2種以上の総量が0.02重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔。
  3. 前記平均原子半径がCuの原子半径より0.005ピコメーター(pm)以上小さく、
    0.04pmを超えて小さくならないことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔。
  4. 80%IACS以上の導電率を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔。
  5. 20μm以下の厚さを有する請求項1〜4の何れかに記載のリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔。
  6. 銅箔表面の原子間距離よりも小さい分子構造を有するバインダ樹脂を含む負極活物質層が表面に塗布されるリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔の製造方法であって、
    銅と、銅に添加される元素として0.20〜0.40重量%のCrと、さらに強度及び/又は耐熱性を向上させる機能を有するAg、Sn、In、Ti、Zrからなる元素群の中から選ばれる元素の1種又は2種以上とを、各構成元素の(原子半径)×(原子%)の総和を全構成元素の平均原子半径としたときに、該平均原子半径がCuの原子半径より小さくなる割合で含有する銅合金組成を溶解して銅合金素材を鋳造する溶製工程と、
    前記銅合金素材に熱間圧延を施して板材を形成する熱間圧延工程と、
    前記板材に冷間圧延を施して生地を形成する冷間圧延工程と、
    前記生地に溶体化処理を施す生地溶体化工程と、
    前記溶体化処理を施された前記生地に冷間圧延を施して銅箔素材を形成する生地冷間圧延工程と、
    前記銅箔素材に400〜500℃の時効処理を施す時効工程と、
    前記時効処理を施された銅箔素材に生地からの加工度が95〜99%となる冷間圧延を施す最終冷間圧延工程と、
    を備えるリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔の製造方法。
  7. 請求項1〜5の何れかに記載のリチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔を用いて、該リチウムイオン二次電池集電体用圧延銅箔の表面粗化処理を行わないで、前記圧延銅箔の表面上に前記バインダ樹脂を含む前記負極活物質層を形成したことを特徴とするリチウムイオン二次電池負極。
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