しかしながら、この特許文献1に記載された発生気体分析装置では、二重スキマーの外側が大気圧であり、かつ試料を加熱して高温であるため、二重スキマーを介して導入された試料ガスに二重スキマーの外部の壁面などから脱離した不要成分が混入することがあり、測定を繰り返して行う場合などには、ベースが安定しないなど、試料ガスを正確に分析することができない場合があった。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、加熱して発生したガスの分析精度をより高めることができる発生気体分析装置を提供することを主目的とする。
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
即ち、本発明の発生気体分析装置は、
第1のオリフィスが設けられ該第1オリフィスと異なる位置にガスを供給する供給管が配設され、試料を配置する試料室と、
前記試料室を加熱し前記試料から試料ガスを発生させる温度に加熱可能な加熱部と、
前記試料から生成した試料ガスを導入する第2のオリフィスと内部空間を減圧する測定室用減圧機と該導入された試料ガスを検出する検出器とが配設された測定室と、
前記試料室を内包して配設し該内包した空間を減圧する内包空間減圧機が配設されている減圧室と、
を備えたものである。
この発生気体分析装置では、試料を配置した試料室へガスを供給可能であり、この試料室を内包した減圧室の内包空間を内包空間減圧機によって減圧可能である。そして、試料室を加熱し試料から生成した試料ガスを、第1オリフィス、内包空間及び第2オリフィスを介して検出器が配設された測定室へ導入してこれを測定する。このように、試料室が内包されている内包空間が減圧されているから、減圧室内にガス成分が残留するのを抑制可能であり、試料室を加熱した際に減圧室で残留成分のガスが発生しにくい。したがって、ガスの分析精度をより高めることができる。
本発明の発生気体分析装置において、前記試料室は、前記減圧室に設けられた貫通孔に外部から挿入され、取り外し可能に前記減圧室に配設される筒状体の試料セルであるものとしてもよい。こうすれば、試料室を交換しやすく、試料室を交換することにより試料室に付着した成分による測定誤差を抑制可能であり、ガスの分析精度を高めやすい。また、例えば、測定の繰り返しにより第1オリフィスが閉塞してしまったときにおいても、試料室を交換しやすく好ましい。このとき、前記試料室は、前記第1オリフィスが設けられ前記減圧室の貫通孔から挿入された供給管が装着・脱着可能に配設されガスが供給可能なクヌッセンセルであるものとしてもよい。このとき、前記加熱部は、前記クヌッセンセルの外周に一体化して設けられているものとしてもよい。こうすれば、コンパクト化を図ることができる。
本発明の発生気体分析装置において、前記減圧室は、前記減圧室内を冷却して物質をトラップする冷却トラップが配設されているものとしてもよい。こうすれば、冷却トラップにより減圧室内の壁面から脱離する成分を除去することができるので、より高い検出精度でガス分析を実行することができる。ここで、冷却トラップとしては、冷媒を有しているものとすればよく、例えば、液体窒素トラップとしてもよいし、水冷トラップとしてもよい。
本発明の発生気体分析装置は、前記第1オリフィスと前記第2オリフィスと前記検出器とが直線上に配列されるように調整する位置調整機構、を備えたものとしてもよい。こうすれば、各オリフィスを通過した試料ガスが検出器に到達するのをより容易に行うことができる。このとき、前記減圧室は、前記第1オリフィスと前記第2オリフィスと前記検出器とが直線上に配置されるよう前記測定室と前記試料室とが配設されているものとしてもよい。こうすれば、試料室から導入された試料ガスが検出器に到達しやすいため、ガスの分析精度を一層高めることができる。この点について、例えば、高温領域(例えば1000℃以上など)で発生する金属等の凝縮性ガスを試料室から検出器へ導入する際に有効である。
本発明の発生気体分析装置は、前記試料室と前記測定室との間に配設され第3のオリフィスが設けられ、内部空間を減圧する中間減圧機が配設された中間室、を備えたものとしてもよい。こうすれば、中間室で更に余剰の試料ガスを除去することができるため、より高い検出精度でガス分析を実行することができる。このとき、前記位置調整機構は、前記第1オリフィスと前記第2オリフィスと前記第3オリフィスと前記検出器とが直線上に配列されるように調整するものとしてもよい。また、前記第1オリフィスと前記第2オリフィスと前記第3オリフィスと前記検出器とが直線上に配置されるよう前記測定室と前記試料室と前記減圧室とが配設されているものとしてもよい。
本発明の発生気体分析装置において、前記試料室及び前記供給管のうち少なくとも該試料室への接続部分は、石英、アルミナ、白金族、高融点金属類及びカーボンのうち少なくとも1以上の部材により形成されているものとしてもよい。こうすれば、温度耐久性が高いため、より高温でガス分析測定を行うことができる。ここで、白金族としては、例えばPt,Pd,Rh,Ruなどが挙げられ、高融点金属類としては、例えば1500℃以上の融点を持つ金属としてもよく、W,Moなどが挙げられる。
本発明の発生気体分析装置において、前記測定室用減圧機は、前記第2オリフィスから流入するガス流量よりも高い減圧能力を有しているものとしてもよい。こうすれば、測定室で試料ガスを測定しやすい。ここで、測定室用減圧機や内包空間減圧機、中間減圧機などの減圧機としては、例えば、ターボ分子ポンプや拡散ポンプ、ロータリーポンプ、クライオポンプなどから選ばれる1以上を任意に組み合わせて用いるものとしてもよい。
本発明の発生気体分析装置において、前記測定室用減圧機は、前記試料室内の圧力が760Torr以下の範囲で前記試料ガスを発生したときに、前記測定室の圧力を1×10-3Torr以下に保持する減圧能力を有しているものとしてもよい。こうすれば、より微少な成分を含む試料ガスを精度よく測定することができる。
本発明の発生気体分析装置において、前記内包空間減圧機は、前記試料室内の圧力が760Torr以下の範囲で前記試料ガスを発生したときに、前記減圧室の圧力を10-1Torr以下に保持する減圧能力を有しているものとしてもよい。こうすれば、試料室から測定室へ試料ガスを導入しやすい。
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である発生気体分析装置10の構成の概略を示す構成図であり、図2は、調整機構90の説明図である。本実施形態の発生気体分析装置10は、図1に示すように、試料を配置する試料室としての試料セル20と、試料セル20を固定するロードロック部12と、ロードロック部12に接続され試料セル20を内包しこの内包した空間を減圧可能な減圧室30と、減圧室30に接続され試料から生成した試料ガスを導入する第2オリフィス52と導入した試料ガスを検出する検出器としての四重極質量分析器62が配設された測定室50と、測定室50と試料セル20との間に配設され第3オリフィス72が形成された中間室70と、試料セル20を加熱可能な加熱部としての管状抵抗炉40と、試料セル20の先端の方向を調整可能な調整機構90と、を備えている。この発生気体分析装置10は、高温領域(例えば室温〜1500℃など)での試料から発生する試料ガスを分析可能な、高温発生気体分析装置として構成されている。
試料セル20は、図2に示すように、先端に貫通孔である第1オリフィス22が設けられ円筒状に形成された試料室としてのクヌッセンセル型のセル本体21と、セル本体21の後端側へ装着・脱着可能に接続されたガス供給管26とを有している。試料セル20は、図2の下段に示すように、ガス供給管26の筒部26aの先端に配設されネジ加工された接続部26bを、ガスケット20aを挟み込んだ状態で、セル本体21の後端に形成されたネジ穴に接続された構造となっており、セル本体21とガス供給管26とが分離可能となっている。この試料セル20は、図1、2に示すように、発生気体分析装置10の本体外部から挿入され、取り外し可能となるように本体に固定されることにより減圧室30に配設されている。試料セル20は、減圧室30の壁体31に設けられた貫通孔32に挿入され、調整機構90に支持されると共に、貫通孔32に挿入されたOリング95により密閉性を有した状態で固定されている。また、この貫通孔32の外側には、ガス供給管26が挿入可能な穴部が設けられている挿入蓋96が挿入されて貫通孔32をカバーしている。貫通孔32では、このような構造とすることにより、1×10-8Torr以下の高真空に耐えうるシール性を有している。この試料セル20は、後端側に接続されたガス供給管26からキャリアガス(例えば大気や窒素ガス、ヘリウムガスなど)が供給され、試料から発生した試料ガスがこのキャリアガスにより第1オリフィス22から流出するように構成されている。セル本体21及びガス供給管26は、耐熱性の部材によって形成されている。耐熱性の部材としては、例えば、石英、アルミナ、白金族、高融点金属類及びカーボンのうち少なくとも1以上の部材により形成されているものとしてもよい。こうすれば、温度耐久性が高いため、より高温でガス分析測定を行うことができる。ここで、白金族としては、例えばPt,Pd,Rh,Ruなどが挙げられ、高融点金属類としては、例えば1500℃以上の融点を持つ金属としてもよく、W,Moなどが挙げられる。ここでは、セル本体21及びガス供給管26は、Ptにより形成されており、1500℃程度までの耐熱性を有しているものとした。なお、ガス供給管26は全体が耐熱性の部材で形成されてもよいが、少なくともセル本体21への接続部分が耐熱性の部材で形成されているものとしてもよい。このセル本体21の内部空間には、測定試料を載置する試料載置部23が形成されている。この試料載置部23には、温度を測定する熱電対28がガス供給管26を介して挿入されている。第1オリフィス22は、測定室50の壁部51に設けられた第2オリフィス52や中間室70の壁部71に設けられた第3オリフィス72のサイズ以下のサイズとするのが好ましく、5μm以上5mm以下のサイズとするのが好ましく、10μm以上1mm以下のサイズとするのがより好ましい。ここでは、第1オリフィス22は、100μmのサイズで形成されているものとした。
ロードロック部12は、試料セル20を固定すると共に、試料セル20の内部空間を減圧する内部空間を有するものであり、測定室50を一端側とすると他端側に配設されている。このロードロック部12は、試料セル20の取り替え時などに減圧室30側の真空を保つ際に用いるゲートバルブ14を介して減圧室30に接続されている。また、ロードロック部12の下方には、ターボ分子ポンプ76が配設され、このターボ分子ポンプ76が中間室70側のロータリポンプ74に接続されている。また、ロードロック部12の内部空間には、試料セル20の先端方向の位置決めを行う調整機構90が減圧室30の壁体31に固定されて配設されている。
減圧室30は、試料セル20の第1オリフィス22を内包する空間(内包空間とも称する)を有しており、試料セル20などを配設する壁体31が形成されている。この減圧室30は、その内包空間の下方にこの内包空間を減圧する拡散ポンプ33及びロータリポンプ34が配設されている。この拡散ポンプ33及びロータリポンプ34は、試料セル20をも減圧した状態(以下ベース状態ともいう)としたときに、減圧室30の内部の圧力を10-3Torr以下に保持する減圧能力を有していることが好ましい。また、拡散ポンプ33及びロータリポンプ34は、試料セル20内の圧力が760Torr以下の範囲で試料ガスを発生したときに、減圧室30の内部の圧力を10-1Torr以下に保持する減圧能力を有していることが好ましい。また、減圧室30の内包空間には、管状抵抗炉40から離れた位置のガス供給管26の外周に冷媒による冷却トラップ80が設けられている。こうすれば、より真空度を高めることができる。冷媒としては、冷却水や液体窒素などを用いることができ、液体窒素がより好ましい。また、減圧室30は、試料セル20を配設した状態で1×10-8Torr以下の高真空に耐えうるシール性を有している。なお、ここでは、減圧室30を減圧するポンプを拡散ポンプとロータリポンプとしたが、特にこれに限定されず、目的とする圧力範囲とすることができるものを、ターボ分子ポンプや拡散ポンプ、ロータリーポンプ、クライオポンプなどから選ばれる1以上を適宜組み合わせて用いるものとすればよい。以下に説明する減圧用のポンプ類でも同様である。また、減圧室30には、その内包空間の圧力を測定する真空計35が設けられている。この真空計35は、目的とする圧力を測定可能なもの、例えば、圧力計、ピラニゲージ、クリスタルゲージ、クリスタルイオンゲージ、ヌードイオンゲージなどから選ばれるいずれかを用いことができる。ここでは、真空計35は、クリスタルイオンゲージとした。
管状抵抗炉40は、試料セル20を加熱し試料から試料ガスを発生させる温度に加熱するものであり、試料セル20の試料載置部23を加熱するように、減圧室30の外周に設けられている。この管状抵抗炉40は、電力の供給により試料載置部23を1500℃まで加熱可能な白金ヒータとして構成されている。この管状抵抗炉40は、1〜30℃/分で、1500℃まで昇降温可能に構成されている。
測定室50は、その内部空間を減圧する測定室用減圧機としての3台のターボ分子ポンプ63,63,63及び2台のロータリポンプ64,64と、試料ガスを検出する四重極質量分析器62と、圧力ゲージである真空計65とが配設された検出部61と、壁部51に設けられた第2オリフィス52と、を有している。なお、第2オリフィス52側には1台のターボ分子ポンプ63及びロータリポンプ64が接続され、四重極質量分析器62側には、2台のターボ分子ポンプ63、63及びロータリポンプ64が直列に接続されている。また、真空計65は、ヌードイオンゲージとした。第2オリフィス52は、第1オリフィス22のサイズ以上の大きさとすることが好ましく、5μm以上5mm以下のサイズとするのが好ましく、10μm以上1mm以下のサイズとするのがより好ましい。ここでは、第2オリフィス52は、250μmのサイズで形成しているものとした。第2オリフィス52と検出部61との間には、第2オリフィス52側の内部空間と検出部61の内部空間との開放・閉塞を行うゲートバルブ54が設けられている。四重極質量分析器62は、イオン化したガスの分子量を測定する質量分析計として構成されており、その先端に検出器イオン化領域62aが形成されるものである。この四重極質量分析器62は、検出部61の内部空間の略中央に横置きし、検出器イオン化領域62aがゲートバルブ54側となるように固定機構62bにより固定されている。なお、四重極質量分析器62は、試料セル20からの直線上に検出器イオン化領域62aが位置するようにすれば、検出部61の内部空間に縦置きしてもよい。検出部61の下方に配設されたターボ分子ポンプ63,63、ロータリポンプ64は、減圧室30側の拡散ポンプ33及びロータリポンプ34よりも高い減圧能力を有していることが好ましい。この検出部61に配設されたポンプは、試料セル20をも減圧したベース状態としたときに、検出部61の内部の圧力を10-9Torr以下に保持する減圧能力を有していることが好ましい。また、測定室50に配設されたポンプは、第2オリフィス52から流入するガス流量よりも高い減圧能力を有していることが好ましく、試料セル20内の圧力が760Torr以下の範囲で試料ガスを発生したときに、減圧室30の内部の圧力を10-3Torr以下に保持する減圧能力を有していることがより好ましい。こうすれば、より微少な成分(例えば数十ppmなど)を含む試料ガスを精度よく測定することができる。この測定室50は、ベース状態で1×10-9Torr以下の高真空に耐えうるシール性を有している。また、測定室50の内部空間の、四重極質量分析器62の近傍には冷媒による冷却トラップ82が設けられ、第2オリフィス52とゲートバルブ54との間(管状抵抗炉40から離れた位置)には冷媒による冷却トラップ84が設けられている。こうすれば、より真空度を高めることができる。冷媒としては、冷却水や液体窒素などを用いることができ、液体窒素がより好ましい。発生気体分析装置10において、減圧室30は、第1オリフィス22と第2オリフィス52と第3オリフィス72と四重極質量分析器62の検出器イオン化領域62aとが直線上に配置されるよう測定室50と試料セル20とが配設されているものとするのが好ましい。
中間室70は、測定室50と減圧室30との間に配設され第3オリフィス72を有する壁部71により形成される空間である。この中間室70には、その内部空間を減圧する中間減圧機としてのターボ分子ポンプ73及びロータリポンプ74がその下方に配設されている。また、中間室70には、圧力を測定する図示しない真空計が配設されている。この第3オリフィス72は、5μm以上5mm以下のサイズとするのが好ましく、10μm以上1mm以下のサイズとするのがより好ましい。ここでは、第3オリフィス72は、200μmのサイズで形成されているものとした。
調整機構90は、図2に示すように、壁体31から測定室50側へ向かって立設されて固定された四角柱状の固定壁91の先端側に設けられ、試料セル20の挿入方向をZ軸方向とするとそれに直交する面のX軸方向及びY軸方向に試料セル20の位置を調整可能な、いわゆるX−Yステージ型の位置調整機構として構成されている。この調整機構90は、固定壁91の先端に設けられた調整ネジ92と、調整ネジ92の締め込み位置によりガス供給管26の軸に直交する方向に移動する固定棒93と、固定棒93が当接しガス供給管26が挿入されてこれを支持するスリーブ94と、を備えている。この調整機構90では、ガス供給管26の軸方向に直交する方向の四方に調整ネジ92、固定棒93とが設けられている。このように構成された調整機構90では、4つのいずれかの調整ネジ92の締め込み位置の調整により、ガス供給管26の軸方向に直交する面内でスリーブ94の位置が調整され、これにより、Oリング95を支点として第1オリフィス22の方向を調整可能となっている。
この発生気体分析装置10は、四重極質量分析器62と電気的に接続されたパソコン(PC)11を備えている。このPC11は、四重極質量分析器62からの検出信号などが入力されている。このPC11は、四重極質量分析器62で検出した検出信号を入力し、入力した信号を解析してディスプレイに表示する機能を有している。
このように構成された発生気体分析装置10では、大気、O2、N2、希ガスなどをキャリアガスや反応ガスとして用いることが可能であり、減圧室30内は1×10-3〜大気圧の領域で使用可能である。また、発生気体分析装置10は、使用温度が室温〜1500℃の範囲であり、検出可能イオン種が、イオン質量/電荷比を表すm/z=1〜400、検出下限がH2O,CO,N2,CO2では1ppm、その他のガスでは100ppbであり、金属などの凝縮性ガスでは1〜10ppmレベルの感度で検出することができる。
次に、この発生気体分析装置10の使用について、まず、試料セル20などの位置調整方法について説明する。図3は、検出器イオン化領域62a、第2オリフィス52及び第3オリフィス72の位置調整の説明図であり、図4は、第1オリフィス22の位置調整の説明図である。まず、図3に示すように、測定者は、発生気体分析装置10に配設されたポンプ類をすべて停止させ、発生気体分析装置10の内部空間及び内包空間を大気圧とする。次に、測定者は、試料セル20を貫通孔32側へ移動し、減圧室30の上部に設けられた開口部を開けて発光器18を挿入する。続いて、測定室50側に設けられた開口部にスコープ19を配置し、四重極質量分析器62、第2オリフィス52、第3オリフィス72を介して発光器18から照射される光をこのスコープ19により観察する。発光器18からの光が十分得られないときには、軸がずれているものとし、四重極質量分析器62の固定機構62bなどを調整してこれらの軸を調整する。ここで、四重極質量分析器62、第2オリフィス52及び第3オリフィス72の位置(軸)は、一度調整を行えば、その後のずれは生じにくい。なお、壁部71の第3オリフィス72と壁部51の第2オリフィス52とは、取り付け前に予め軸合わせを行っているものとする。次に、第1オリフィス22側での位置調整について説明する。測定者は、試料載置部23上へ試料を載置しセル本体21の内部にセットし、ガスケット20aを挟みセル本体21の後端へガス供給管26の接続部26bをねじ込んで固定する。次に、発生気体分析装置10の内部空間及び内包空間を大気圧としたまま、このように用意した試料セル20を貫通孔32から挿入して測定位置に配置し、Oリング95を貫通孔32へ挿入すると共に、挿入蓋96を装着する。次に、測定者は、図4に示すように、ガス供給管26の後端へ発光器18を配置すると共に、測定室50側に設けられた開口部にスコープ19を配置する。続いて、第1オリフィス22、第3オリフィス72、第2オリフィス52及び四重極質量分析器62を介して発光器18から照射される光をこのスコープ19により観察する。このとき、スコープ19で検出される光が所定の明るさになるように、ロードロック部12の上部から調整機構90の調整ネジ92を調整する。なお、第1オリフィス22の位置調整は、試料セル20を交換した場合は必ず測定の実行前に行うものとする。このように、調整機構90を用いて、第1オリフィス22と第3オリフィス72、第2オリフィス52、四重極質量分析器62とをより簡単に同軸上に配列することが可能であり、より精度の高い測定を実行することができる。
次に、この発生気体分析装置10での試料の測定方法について説明する。まず、測定者は、第1オリフィス22の位置を調整後、熱電対28の先端が試料載置部23に位置するようにガス供給管26へ熱電対28を挿入し、ガス供給管26の端部に配管を接続し、キャリアガスを供給可能とする。次に、測定者は、昇温速度や到達温度を管状抵抗炉40に接続された図示しない温度調節器に入力する。続いて、測定者は、測定室50、減圧室30及び試料セル20の内部が所定圧まで減圧するまで各ポンプ類を駆動させ、所定圧まで減圧すると、図示しないバルブを開けてキャリアガスを試料セル20へ導入し、その後、入力した内容で管状抵抗炉40を制御させ測定を開始する。ここでは、例えば、試料セル20の内部を大気圧、減圧室30の内部の圧力を10-1Torr以下、測定室50の内部の圧力を10-3Torr以下の条件として室温から1500℃まで昇温するなどの制御を行う。PC11は、昇温中の四重極質量分析器62からの出力値を記憶し、測定終了後に、測定結果を画面上に表示する処理を行う。
以上詳述した本実施形態の発生気体分析装置10によれば、試料を配置した試料セル20へガス供給管26を介してガスを供給可能であり、この試料セル20を内包した減圧室30の内包空間を拡散ポンプ33及びロータリポンプ34によって減圧可能である。そして、試料セル20を加熱し試料から生成した試料ガスを、第1オリフィス22、内包空間、第3オリフィス72及び第2オリフィス52を介して測定室50へ導入してこれを測定する。このように、試料セル20の内包されている内包空間が減圧されているから、減圧室30内に測定成分が残留するのを抑制可能であり、試料セル20を加熱した際に減圧室30で残留成分のガスが発生しにくい。したがって、ガスの分析精度をより高めることができる。また、試料セル20は、減圧室30に設けられた貫通孔32に外部から挿入され、取り外し可能に減圧室30に配設される筒状体のクヌッセン型のセルであるため、セルを交換することによりこれに付着した成分による測定誤差を抑制可能であり、ガスの分析精度を高めやすい。更に、冷却トラップ80,82,84により減圧室30や測定室50の壁面から脱離する成分を除去することができるので、より高い検出精度でガス分析を実行することができる。更にまた、第1オリフィス22と第2オリフィス52と第3オリフィス72と四重極質量分析器62とが直線上に配列されるように調整する調整機構90を備えているため、各オリフィスを通過した試料ガスが四重極質量分析器62に到達するようより容易に調整することができ、これにより、試料セル20から導入された試料ガスが四重極質量分析器62に到達しやすく、ガスの分析精度を一層高めることができる。この点について、例えば、高温領域(例えば1000℃以上など)で発生する金属等の凝縮性ガスを試料セル20から四重極質量分析器62へ導入する際に有効である。そしてまた、試料セル20やガス供給管26は、アルミナなどにより形成されており、温度耐久性が高いため、より高温でガス分析測定を行うことができる。そして更に、測定室用減圧機(ターボ分子ポンプ63やロータリポンプ64)は、第2オリフィス52から流入するガス流量よりも高い減圧能力を有しているため、測定室50で試料ガスを測定しやすい。また、測定室用減圧機は、試料セル20の圧力が760Torr以下の範囲で試料ガスを発生したときに、測定室50の圧力を1×10-3Torr以下に保持する減圧能力を有しているため、より微少な成分を含む試料ガスを精度よく測定することができる。また、内包空間減圧機(拡散ポンプ33及びロータリポンプ34)は、試料セル20内の圧力が760Torr以下の範囲で前記試料ガスを発生したときに、減圧室30の圧力を10-1Torr以下に保持する減圧能力を有しているため、試料セル20から測定室50へ試料ガスを導入しやすい。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、冷却トラップ80,82,84を備えるものとしたが、これを省略するものとしてもよい。上述した真空度の範囲となるように、適宜、真空ポンプの種類を選択するものとしてもよい。
また、別の態様の発生気体分析装置について説明する。図5は、別の態様の発生気体分析装置10Bの構成の概略を示す構成図であり、図6は、別の態様の発生気体分析装置10Cの構成の概略を示す構成図であり、図7は、別の態様の発生気体分析装置10Dの構成の概略を示す構成図である。説明の便宜のため、上述した実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略して以下説明する。図5に示す発生気体分析装置10Bは、第1オリフィス22Bが先端に形成された試料室としてのクヌッセンセル型の試料セル20Bと、第3オリフィス72が設けられた壁部71により形成された中間室70と、中間室70を減圧する中間減圧機としてのターボ分子ポンプ73及びロータリポンプ74と、試料セル20Bとを内包しこの内包空間を拡散ポンプ33、ロータリポンプ34などにより減圧する減圧室30Bと、試料セル20Bの外周側且つ減圧室30Bの内部に配設された冷媒による冷却トラップ80と、四重極質量分析器62近傍に設けられた冷媒による冷却トラップ82と、四重極質量分析器62が配設された測定室50と、試料セル20Bを固定する調整機構90とを備えている。試料セル20Bの外周には、試料セル20Bを加熱する加熱部40Bが一体化して配設されており、コンパクト化を図っている。この発生気体分析装置10Bにおいても、試料セル20Bの第1オリフィス22Bと、第2オリフィス52及び第3オリフィス72とが直線上に減圧室30Bに配設されている。また、試料セル20Bは、熱電対28が接続されると共に、第1オリフィス22Bの他端側にガス供給管26が接続され、セル内をキャリアガスが第1オリフィス22Bに向かって流通可能となっている。また、ガス供給管26の挿入側には、キャリアガスの供給・停止を行うゲートバルブ14と、ロードロック部12とが設けられている。ロードロック部12にはターボ分子ポンプ76が配設され、このターボ分子ポンプ76が中間室70側のロータリポンプ74に接続されている。また、中間室70には、圧力を測定する真空計75が配設されている。測定室50では、2台のターボ分子ポンプ63とロータリポンプ64とを直列に接続すると共に、第2オリフィス52側にもターボ分子ポンプ63及びロータリポンプ64を設けており、測定室50内部を減圧する減圧能力を高めている。また、発生気体分析装置10Bでは、上述した真空計35、真空計65なども配設されている。このように構成した発生気体分析装置10Bでも、減圧室30Bを減圧することにより、試料セル20Bから第3オリフィス72、第2オリフィス52を介して四重極質量分析器62へ試料ガスを分子流により導入可能であるため、ガスの分析精度をより高めることができる。
上述した実施形態では、中間室70、壁部71、第3オリフィス72及びターボ分子ポンプ73を備える発生気体分析装置10としたが、図6に示すように、これを省略した発生気体分析装置10Cとしてもよい。こうしても、試料セル20を加熱した際に減圧室30で残留成分のガスが発生しにくく、ガスの分析精度をより高めることができる。
上述した実施形態では、管状抵抗炉40の形成領域よりも小さい試料セル20のセル本体21とする発生気体分析装置10としたが、図7に示すように、管状抵抗炉40の形成領域よりも大きい試料セル20Dのセル本体21Dとする発生気体分析装置10Dとしてもよい。こうしても、試料セル20を加熱した際に減圧室30で残留成分のガスが発生しにくく、ガスの分析精度をより高めることができる。
以下には、図1に示した発生気体分析装置10を作製して測定を行った結果について、図を用いて説明する。ここでは、第1オリフィス22、第2オリフィス52、第3オリフィス72及び四重極質量分析器62の軸調整の有無による測定結果への影響をも検討した。
図8は、発生気体分析装置10の第1オリフィス22の軸調整によるヘリウム気流中の酸素の測定スペクトルであり、図9は、発生気体分析装置10の第1オリフィス22の軸調整による20%O2/He気流中でのPbOの昇温脱離スペクトルである。ここで、各測定では、冷却トラップ80、82,84を作動させると共に、各真空ポンプ(拡散ポンプ33、ロータリポンプ34、ターボ分子ポンプ63,73、ロータリポンプ64,74)を駆動させ、減圧室30の内圧を高真空(10-1Torr以下)、測定室50を超高真空(10-3Torr以下)として行った。また、ここでは、上述した実施形態で説明した第1オリフィス22、検出器イオン化領域62a、第2オリフィス52及び第3オリフィス72の位置調整を行わずに組んだ発生気体分析装置10で測定したあと、これらの位置を調整して再度測定した。図8では、Heをキャリアガスとし、O2ガスを20%含むガスにより試料セル20の内圧を760Torrとする測定条件で行った。図9では、PbO試料を35mg、m/z=222〜225、キャリアガスを20%O2/He、昇温速度を10℃/分、到達温度を1450℃とし、試料セル20の内圧を760Torrとする測定条件で行った。図8,図9より、軸調整を行うことにより効果的に検出感度を高めることがわかった。また、図9より、1000℃を超え、1400℃程度の高温でも、高い測定精度で測定することができることがわかった。
以上の実験結果より、発生気体分析装置10では以下の効果が得られた。発生気体分析装置10では、試料セル20内を大気圧、減圧室30を高真空(10-1Torr以下)、測定室50を超高真空(10-3Torr以下)とし、試料セル20の第1オリフィス22から流出したガスが減圧室30の内壁などに残留してしまうのを抑制可能である。このため、試料セル20を加熱した際に減圧室30で残留成分のガスが発生しにくい。そして、試料載置部23と第1オリフィス22と第3オリフィス72と第2オリフィス52と検出器イオン化領域62aとが直線上に配設されているから、検出器イオン化領域62aへ導入される試料ガスは、他の壁面などに衝突することなく試料載置部23から生じたガスだけに限定される。この結果、発生気体分析装置10では、試料セル20の壁面や減圧室30の壁面などから発生した他の成分の流入を抑制し、高感度な分析を実現することができた。