JP5004096B2 - キセノン核磁気共鳴法による多孔質材料のポア解析装置 - Google Patents

キセノン核磁気共鳴法による多孔質材料のポア解析装置 Download PDF

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Description

本発明は、多孔質シリカ、モレキュラーシーブに吸着したXeの超偏極129XeNMRによるポア評価方法およびポア評価装置に関する。
最近、ナノ粒子、選択透過膜、低誘電率メソポーラスシリカ膜などのナノ構造をもつ先進材料など、通常の組成を持つ材料に、新たな機能を付加することが、興味を持たれている。超偏極(HP)129Xe NMR法は、細孔のサイズとトラップされた分子種と細孔内壁の相互作用を測定する、一つの手段として期待されている。129Xe NMR 法は、メソポーラスシリカのポロシティの測定に応用されており、化学シフトがポアサイズと相関があることが知られている。
Xe のファン・デル・ワールス半径は、0.216 nm であり、直径は、0.396 nm であるので、Xe は直径 0.4 nm より大きなポアには吸着されることが可能で、この相関が適用可能な平均ポア直径は、0.4 〜 300 nm 程度である。HP 129Xe ガスは、129Xe NMR スペクトルの感度を10,000倍程度増強するのに利用できる。HP 129Xe NMRのメソポーラス材料への応用も数多く報告されている(非特許文献1−5参照)。
Pietrass,T.;Gaede,H.C.Advanced Materials 1995, 7, 826. Moudrakovski, I. L.; Terskikh, V. V.; Ratcliffe, C. I.; Ripmeester, J. A.; Wang, L.−Q.; Shin, Y.; Exarhos, G. J. J. Phys. Chem. B 2002, 106, 5938. F. Guenneau, M. Nader, P. Salame, F. Launay, V. Semmer−Herledan and A. Gedeon Catalysis Today 2006, 113, 126. (a)Nossov, A.; Haddad, E.; Guenneau, F.; Mignon, C.;Gedeon, A.; Grosso, D.; Babonneau, F.; Bonhomme, C.;Sanchez, C. Chem. Commun. 2002, 21, 2476. (b) Nossov, A.; Haddad, E.; Guenneau, F.; Gedeon, A. Phys. Chem. Chem. Phys. 2003, 5, 4473. Nossov, A.; Guenneau, Springuel−Huet, M.−A.; Haddad, E.; Montouillout, V.; Knott, B.; Engelke, F.; Fernandez, C.; C.;Gedeon, A. Phys. Chem. Chem. Phys. 2003, 5, 4479. 大竹紀夫、村山守男、平賀隆、服部峰之、本間一弘:特許 第3998243号 核スピン偏極キセノンガスの製造方法及び製造装置 Hata, N;. Negoro, C; Yamada, K.; Kikkawa, T, Jpn. J. Appl. Phys. 2004, 43, 1323.
核磁気共鳴(NMR)分光法は、従来は、熱平衡磁化を扱っているため、原理的に感度が低いことが、本法の限界を規定してきた。一般的にはナノテクノロジー研究のためには感度が足りないと考えられている。しかし、最近、光ポンピング法によるHe, 129Xeを代表して、この熱平衡磁化を超越した(hyperpolarized)状態が実現され始めた。希ガス(He, 129Xe)を、円偏光により電子スピン系を励起したルビジウムと共存すると、10,000倍強い磁気共鳴信号を得られる。超偏極技術を利用すると、空間分解能の向上、リアルタイム計測が可能になるなどのメリットが得られる。計測例としては、Heを導入した肺のMRI、Xeを取り込んだ脳内血流量の計測、カラム中のガスの流量、多孔性高分子のポア径分布、蛋白質の溶液にXeを溶かしたときの蛋白質へのXeの会合・変性などの検出などがあげられる。NMRの検出感度を飛躍的に向上させる超偏極技術は、対象原子核周りの、物理化学的なスペクトル情報の実時間取得(いわゆる、Real−time NMR)と時間軸情報解析の新次元開拓の基礎となる技術である。
本発明の目的は、NMRの検出感度を向上し、物理化学的なスペクトル情報の実時間取得と時間軸情報解析を行えるようにした技術を用いて、多孔質材料のポア解析を行えるようにした、キセノン核磁気共鳴法による多孔質材料のポア解析方法およびポア解析装置を提供することにある。
0.5,1,約2nmの3種類のポア直径の多孔質シリカ、それぞれ、5A,13X合成多孔質シリカ(Lowk1)について計測した。これらの試料は、超高真空装置により水分等の吸着物を除き、Xeの沸点直上の168Kに事前に冷却したところへ、光ポンピング法により超偏極状態にしたXeガスを大気圧状態で導入した。129XeNMRスペクトルの温度依存性を上昇させながら取得し、129Xe化学シフト、線幅、面積強度を解析した。
吸着物を除いた直径2nm以下のポアを持つLow−k膜用多孔質シリカ材料にトラップされた天然同位対比Xeの熱平衡状態129XeNMRスペクトルを168〜373Kの温度範囲で取得した。
この結果、Xeの超偏極は、5A,13Xでは、導入後約10秒以内で消衰し熱平衡状態に達した。Lowk1では、消衰は数十秒かかった。129Xe化学シフト、線幅のプロット示す。化学シフトは、ポア径が大きくなるにつれて小さな値を取り、線幅は、Lowklの200−250Kにおいて広幅化が観測された。
結論として、Xeの振る舞いに関する知見を反映した、導入後平衡状態に達した129Xeスペクトルの解析により、微小ポア構造に関する情報を得ることができる。
具体的には、上記目的を達成するために以下の手段を採用する。
(1)多孔質材料のポア解析方法は、
各種多孔質シリカを作業腕により密閉型反応室内へ搬入する手順a、
密閉型反応室内を真空引きし、水分等の吸着物を除く手順b、
密閉型反応室内を少なくともXeの沸点直上の168Kに冷却する手順c、
Xeガスを超偏極状態にする手順d、
超偏極状態にしたXeガスを密閉型反応室内へ大気圧状態で導入する手順e、
導入後にその温度で129XeNMRスペクトルを時間をおいて複数個測定し、時間依存性を計測するリアルタイム計測手順f、
平衡に達した後に、測定温度を上昇しながら129XeNMRスペクトルを測定し、温度依存性を計測する手順g、
計測した温度依存性に基づいて129Xe化学シフト、線幅、面積強度を計測する手順h、
を順に実行する。
(2)ポア解析装置は、
各種多孔質シリカを密閉型反応室内へ搬入する作業腕と、
密閉型反応室内を真空引きし、水分等の吸着物を除く真空引き手段と、
密閉型反応室内を少なくともXeの沸点直上の168Kに冷却する冷却手段と、
Xeガスを光ポンピング法により超偏極状態にするXeガス偏極手段と、
Xeガス偏極手段で超偏極状態にしたXeガスを密閉型反応室内へ大気圧状態で導入するXeガス供給手段と、
導入後にその温度で129XeNMRスペクトルを時間をおいて複数個測定し、時間依存性を計測するリアルタイム計測手段と、
平衡に達した後に、測定温度を上昇しながら129XeNMRスペクトルを測定し、温度依存性を計測する温度依存性計測手段と、
計測手段により計測した温度依存性に基づいて129Xe化学シフト、線幅、面積強度を計測する計測手段と、
上記作業腕、上記真空引き手段、上記冷却手段、上記Xeガス偏極手段、上記Xeガス供給手段、上記リアルタイム計測手段、上記温度依存性計測手段および上記計測手段を制御する制御手段を備える。
本発明は、メソポーラスシリカ材料の大気圧での129XeNMR測定を行えるので、サンプルの超高真空での前処理と超偏極キセノンを利用して、Xeの振る舞いに関する知見を反映した化学シフトと線幅の解析からポアのサイズと分布に関する情報が得られる。
本方法は、ナノ粒子、選択透過膜、低誘電率メソポーラスシリカ膜などの、全試料の細孔の構造に加えて、細孔の局所的な構造を知ることができる。
本発明のポア解析方法およびポア解析装置によれば、Xeの超偏極は、5A,13Xでは、導入後約10秒以内で消衰し熱平衡状態に達することが観測できる。
化学シフトは、ポア径が大きくなるにつれて小さな値を取り、線幅は、Lowklの200−250Kにおいて広幅化する特性を観測することができる。
導入後平衡状態に達した129Xeスペクトルの解析により、微小ポア構造に関する情報を得ることができる。
本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の測定に用いる実験装置の要部構成図で、自動化された超偏極キセノンガス生成装置の配管系統図である。
本発明では、東横化学(株)と産総研で開発した、レーザー誘起の偏極率2−3%の超偏極Xeガスをバッチ式で連続供給することを可能とした超偏極キセノンガス生成装置を使用した。超偏極キセノンガスは核磁気共鳴現象を利用したNMR(核磁気共鳴:NuclearMagneticResonance)やMRI(磁気共鳴映像法:MagneticResonanceImaging)の感度を1万倍上げることができるガスである。
この装置は、図1に超偏極キセノンガス生成装置の配管系統図を示すように、原料となるXe(キセノン)/N(窒素)混合ガス及びパージ用Nガスのシリンダー収納部、圧力制御部、偏極用セル部、及び、システム制御部(図示省略)により構成される。Rb(ルビジウム)が封入されたパイレックス(登録商標)セルに、Xe/Nの高純度混合ガスを供給し、永久磁石アッセンブルにより生成した約10mT(テスラ)の均一磁場(±1%)中において794.7nmの半導体レーザー光を照射することにより、1回に約300mlの超偏極Xeガスを貯留して生成させた。
超偏極Xeガスは、約10分以上の間隔を開けて、60ミリリットルのシリンジに連続的に取り出され、専用に開発したオンライン式導入管を接続した試料管中の試料へ導入し接触させた。
ここでは、標準的な試料として、将来の超大規模集積回路(ULSI)におけるインターコネクトに用いる低誘電率材料の候補として知られる、自己組織化メソポーラスシリカの評価へ応用した。
金属原子の不純物の混入を防ぐため、エレクトロニクス用グレードのシリカ前駆体を使用して、自己組織化ポーラスシリカ試料の粉末を合成した。
実験に用いた試料は、Si,O,Hを含み、単分散のメソポアーを持っている。これらのメソポーラス材料は、通常大量の吸着水を持つので、この試料は、吸着した水分を完全に取り除くために、超偏極キセノンガスを導入する直前に、超高真空下で温度を上げて長時間処理する必要がある。
試料粉末(約 0.25g)を超高真空(10−6 Pa)下で引いたあと、HP129XeNMRスペクトルを、温度を変化させて測定を開始した。細孔のサイズは、小さくて、直径は約2nmなので、市販されている小さな細孔を持つモレキュラーシーブス5A(0.5nm)と13X(1nm)との比較に焦点をあてる。
129XeNMR線形は、それぞれの測定温度でのXeガス相と吸着相のメソポアーへの滞在時間と数密度による平均を観測する。これらは、温度と圧力により変化し、129Xe NMR化学シフトに影響を与える。NMR試料管について封入したものを用いると、温度の変化は内部圧力の変化をもたらす。一定圧力下での129XeNMR温度変化を実際に要求される。幸いにも、low−k膜に使用される、うまく作られた不純物の少ないメソポーラスシリカについて、また、よく知られている、多孔性のモレキュラーシーブ5Aと13Xと併せて、大気圧下での129XeNMRスペクトルを取得することができた。同様に完全乾燥したモレキュラーシーブ4Aの129XeNMRスペクトルでは、ガス信号の近辺に弱い信号を与えるのみで、これは、細孔径が小さすぎて、Xe吸着が不可能であることを示している。
[実験操作]
(試料):
自己組織化ポーラス試料は、酸性のシリカゾルと陽イオン性テンプレート(cetyltrimethylammonium chloride)の混合液より調整した(非特許文献7参照)。サンプルの金属イオン系の不純物は、エレクトロニクス級シリカゾルを使用することにより最小限にした。試料は、細かい粉末状で、Lowk1 と呼ぶ。完全にガスをのぞいた試料の重さは、約0.27gである。モレキュラーシーブ5Aと13Xは、ペレット状のものをナカライテスクより入手し、完全にガスをのぞいた試料の重さは、それぞれ、5Aが0.39g、13Xが0.30gであった。
(脱ガス操作):
完全に吸着物を除いた試料は、以下のように合成した。試料は、10mm外径のNMR試料管に入れ、真空ラインにつなぎ、徐々に真空引きし、温度は200Cまで上昇させた。超高真空(UHV)システムVarianV70ターボ分子ポンプを利用して、5x10−6Pa以下の圧力になるまで、一週間以上保持した。
(超偏極Xeガスの生成):
我々のグループは、実用的なNMR/MRI実験を行うのに十分な偏極率で連続的に供給できる、バッチ法に基づいた、実用的な超偏極Xeガスの生成装置を開発している(特許文献6参照)。
ここでは、HPXeガスは、東横化学製 HPXE2101S−1/2を用いて生成した。光ポンピングセルは、140Cまで加温し、約12mTの磁場中におき、27W狭帯域半導体レーザー(PD−LD:LuxxMasterTM、LML−794.7B−05)と四分の波長板(CVI:QWPO−795−08−4−R10)を使って生成した、794.75±0.13nm の回転偏光で照射した。約30分後には、Xe(98%) とN(2%)の混合ガスから、偏極率2から3%程度のHPXeガスが生成した。HP Xe ガスは、60ミリリットル容量のプラスチックシリンジへと導入させた。
(Xe ガスの導入):
試料の温度は、HPXeガスの導入の前に、真空下で、168Kに設定した。室温のHP Xeガスを図1に示した自作の装置(治具)を用いて、60ミリリットルのプラスチックシリンジから導入した。シリンジにXeガスを残すことによって、試料管から治具までの内圧を大気圧になるように制御した。168Kで導入した、HPXeガスは、短い時間で超偏極の性質を失うけれども、天然同位体比の129Xeを細孔に中に大量に吸着しており、強いNMR信号が検出できた。その後、Xeガスをさらに追加することなく、温度を徐々に上昇させた。
129Xe NMR測定):
129XeNMRスペクトルは、ワイドボア6.3T超伝導磁石を組み合わせたTecmag Apollo 分光計を使用して、RF周波数74.7MHzで測定した。90度パルスは、30μsとした。
(ポア解析装置)
図9は本発明のポア解析装置の1実施例の構成図である。
本発明のポア解析装置1は、
(a)多孔質シリカを搬入及び搬出できる作業腕6を供えた密閉型反応室5と、
(b)この密閉型反応室5に連結されると共にこの密閉型反応室5内を超高真空状態に真空引する真空引き手段7と、
(c)この密閉型反応室5に連結されると共にこの密閉型反応室5内を少なくともXeの沸点直上の168Kに冷却する冷却手段8と、
(d)この密閉型反応室5に連結されると共にこの密閉型反応室5内に超偏極状態にしたXeガスを大気圧状態で導入するXeガス供給手段9と、
(e)Xeガスを光ポンピング法により超偏極状態に励起するXeガス偏極手段10と、
(f)導入後にその温度で129XeNMRスペクトルを時間をおいて複数個測定し、時間依存性を計測するリアルタイム計測手段11と、
平衡に達した後に、測定温度を変えながら129XeNMRスペクトルを測定し、温度依存性を計測する温度依存性計測手段12と、
(g)129Xe化学シフト、線幅、面積強度を計測する計測手段13と、
(h)メモリ3を備え、上記各種手段を制御するCPU(中央演算手段)2からなる制御手段4を備える。
(測定フロー)
ポア解析装置1は、制御装置4により その制御装置4のプログラムを実行して以下の手順を実行する。

START
(1)各種(5A、13X、Lowk1)多孔質シリカを作業腕により密閉型反応室5内へ搬入する。
(2)密閉型反応室5内を真空引き手段7により真空引きし、水分等の吸着物を除く。
(3)密閉型反応室5内を冷却手段8により少なくともXeの沸点直上の168Kに冷却する。
(4)Xeガス偏極手段10において、Xeガスを光ポンピング法により超偏極状態にする。
(5)Xeガス供給手段9により、Xeガス偏極手段10で超偏極状態にしたXeガスを密閉型反応室5内へ大気圧状態で導入する。
(6)リアルタイム計測手段11により導入後にその温度で129XeNMRスペクトルを時間をおいて複数個測定し、時間依存性を計測する。
平衡に達した後に、温度依存性計測手段12により、測定温度を上昇しながら129XeNMRスペクトルを測定し、温度依存性を計測する。
(7)計測手段13により計測した温度依存性に基づいて129Xe化学シフト、線幅、面積強度を計測する。
STOP
129XeNMRスペクトルの温度変化を、168Kから373Kまで測定した。5Aと13Xでは、スピン−格子緩和時間Tが短いことが分かったので、図2に示したように、定量的なパラメータとして、各温度での129XeTを測定した。
図2はスピン−格子緩和時間Tの温度依存性特性を示す。縦軸はT、横軸は1000/T(T:温度)である。図2中、座標(横軸値、縦軸値)が(4.92247、7.3)〜(5.77534、3.2)の上向き黒三角はLowk1特性、その他の上向き黒三角は5A特性、下向き黒三角は13X特性を意味する。
図2の各特性の値を下記表1に示す。
Figure 0005004096
各スペクトルは90度パルス2s繰り返し時間で64回積算して測定した。5Aと13Xでの、最長の129XeTは、約0.35sだったので、磁化は各スキャンごとに十分回復した。
観測した温度のレンジが広いため、プローブの同調は、各々の温度で調整した。各々温度での測定の前に、試料は少なくとも30分保持した。低温領域でのLowk1のT測定は、金属を含まないサンプルなので、大きな信号を与え、可能であり、図2に示したように、長いTが観測された。温度が高い領域での、幅広の信号のずっと長いTについては、定量的な観測はしなかった。
[結果]
(導入後にその温度で129XeNMRスペクトルを時間をおいて複数個測定し、時間依存性を計測するリアルタイム計測結果):
超偏極Xeガスを室温で試料へ導入したとき、129XeNMR信号は、いつも少し低磁場側へ移動し、平衡状態に達した。HPXeの寿命は、Lowk1に比べると5Aと13Xは短かった。
168Kに事前に冷却した試料に、HPXeガスを導入し、129XeNMR信号を吸収モードにあわせた。最初は広幅だった信号は、線幅が狭くなりながら低磁場側へ移動し平衡状態へと近づいた、同時に、信号強度は徐々に減少し、また、HP129Xe信号は消滅した。しばらくすると、同じ位置(平衡状態)に熱平衡の129Xe信号が徐々に現れ、逆位相で信号が増大していき、平衡強度まで近づいていった。
(173Kから373Kの129Xeスペクトルパターン):
熱平衡状態の129XeNMRスペクトルを吸収モードで測定を173Kから開始し、温度の上昇に伴って、Xe原子数は減少していった。高温にしたときには、試料セルと治具の不完全なシール部分からガスが漏洩したと思われる。
5A,13XとLowk1の129XeNMRスペクトルをそれぞれ図3,図4,図5に示す。
図3は、本発明の5Aの129XeNMRスペクトル特性図で,大気下で測定された5Aに閉じ込められた温度依存性129XeNMR(核磁気共鳴)スペクトル特性を示す。横軸は129XeNMRの化学シフト(ppm)、縦軸は温度(℃)である。
HPキセノンガスは168Kに閉じ込められている。超偏極の持続時間は短いので、磁化は短時間で消滅した。通常の129XeNMRは、注射器にキセノンガスが少量残っている条件下で温度を上昇させながら測定された。大気圧は一日中ほとんど変わらない。
測定条件は、90度パルス、繰り返し時間1.1秒、64積算である。
図4は、本発明の13Xの129XeNMRスペクトル特性図で、13Xの温度依存性129XeNMRスペクトル特性を示す。横軸は129XeNMRの化学シフト(ppm)、縦軸は温度(K)である。測定手順は5Aと同様である。測定条件は、90度パルス、繰り返し時間2s、64積算である。
図5は、本発明のLowk1の129XeNMRスペクトル特性図である。横軸は129XeNMRの化学シフト(ppm)、縦軸は温度(K)である。
図5(a)273Kから213Kの範囲で測定された1スキャンでのlowk1の129XeNMRスペクトル特性である。窓関数の線幅の広がりは、273Kから203Kまでのスペクトルでは100Hzであったが、213Kのスペクトルでは300Hzであった。信号強度はより高い温度では減少するので、1スキャンスペクトルは観測されない。
図5(b)は、lowk1の積算された129XeNMRスペクトルである。
は5Aおよび13Xと比べてより長いので、測定条件は以下のような妥当なS/Nを得るために変えられる;
・173Kで,45°パルス、繰り返し時間10秒、40積算、
・213Kで、45°パルス、繰り返し時間12秒、40積算、
・273Kで、60°パルス、繰り返し時間20秒、80積算、
・333Kで、60パルス、繰り返し時間120秒、320積算。
図6は、129Xeシフトの温度特性図であり、通常のキセノンによる5A(黒四角),13X(黒丸)およびLowk1(黒三角)の129XeNMRの温度依存性を示す図である。
図6中、黒四角は5A、黒丸は13X、黒三角はLowk1、白逆三角は「Lowk1 by HP Xe」を意味する。
図6の各特性の値を下記表2に示す。
Figure 0005004096
Lowk1サンプルに関し、各温度でのHP129Xeの導入により計測された、129Xeシフトを追加した(白三角)。より低い温度領域では、少し大きな値に示されている、HP129Xeシフトは、平衡状態まで待つのが不十分だったと考えられる。図6の縦軸は、129Xe shift(シフト)(ppm)、横軸はTemperature(温度)(K)である。
図7は、129XeNMR吸収線幅の温度特性図であり、半分の高さでの129Xe全線幅の温度依存性を示す図である。図7中、黒四角は5A、黒丸は13X、黒三角はLowk1を意味する。
図7の各特性の値を下記表3に示す。
Figure 0005004096
線幅および強度から信号領域が計算される。その温度依存性は図8に示されている。面積強度を線幅とピーク強度から計算し、図8で温度に対してプロットした面積は、173Kにおける観測信号を基準にして規格化した。
図8は面積強度の温度特性図である。
図8中、白四角は5A、白丸は13X、白三角はLowk1を意味する。LowK1については、1スキャンスペクトルから決定できる領域のみ示されている。モレキュラーシーブ5Aについては、シミュレーションにより計算した指数関数的減衰特性を波線で示している。
図8の各特性の値を下記表4に示す。
Figure 0005004096
図3に示すように、5Aのスペクトルは、温度の上昇につれて、連続的に変化していく、すなわち、信号強度は減少し、線幅は狭くなり、化学シフトは高磁場側へ動く。
一方で、図4に示すように、13Xの129XeNMRスペクトルは、全く異なった様子で変化する。信号強度と位置に関しては、223Kまでは、5Aと類似の変化を示したが、233と263Kの間では、信号線幅が狭くなり、323K以上では、信号強度が小さくなる。
図5(a)に示すように、Lowk1の129XeNMRスペクトルは、173Kでは、強い信号を与え、213Kまでは、単一スキャン(積算無し)で観測でき、定量的なピーク面積が得られる。温度が上昇するに伴い、信号は広幅化して、十分なS/N比を得るには、積算操作が必要となる。
図5(b)に示すように、Lowk1において333Kまでは、スペクトルの積算操作が必要となる。
129Xe 化学シフト、線幅、面積積分):
図3〜5に示すように、129XeNMRピーク位置は、温度の上昇に伴い高磁場側へ移動する。
ガス信号を基準とした、129Xeシフトの温度依存性を図6に示した。
HP Xeガスの寿命は、Lowk1の中では比較的長いので、129Xe化学シフトの観測は、NMRセルにセットした温度に、室温のHPXeガスを導入して行った。
10分ほど待った後の平衡での129Xe化学シフトは、図6のように測定された。
温度が低い領域では、Xeが平衡に達する前に示すHP129Xe化学シフトは、常に少し高磁場側に現れる。
129Xe化学シフトの温度依存性は、中間の温度領域では、小さかったので、熱平衡とHP129XeNMRの一致はより向上する。
高温領域でのあまりに小さくて観測できなかった、熱平衡での129XeNMR信号にかわり、HP129Xeを使用して測定した、129Xe化学シフトデータを追加してプロットした。
図7に線幅の変化を温度に対してプロットした。一般的には、5Aは、Ca,Na,Al,O,Hから構成されており、13Xは、Na,Al,Si,O,Hから構成されているとされるが、常磁性(金属)不純物についての記載はない。
173Kでの、5Aと13Xの広い線幅は、常磁性不純物による影響と考えられ、図2における短いT値と一致する。
Lowk1の合成では、エレクトロニクスグレードの原料を使用しているため、図5と図7に示したように、173Kと193Kの間の信号は、極端に先鋭化しており、図2におけるより長いTの値は、より狭い線幅とも矛盾しない。
結論として、メソポーラスシリカ材料の大気圧での129XeNMR測定を行った。
サンプルの超高真空での前処理と超偏極キセノンを利用して、Xeの振る舞いに関する知見を反映した化学シフトと線幅の解析からポアのサイズと分布に関する情報が得られる。
本方法は、ナノ粒子、選択透過膜、低誘電率メソポーラスシリカ膜などの、全試料の細孔の構造に加えて、細孔の局所的な構造を知ることができ、有望な方法であるといえる。
本発明の測定に用いる実験装置の要部構成図である。 スピン−格子緩和時間Tの温度依存性特性を示す。 本発明の5Aの129XeNMRスペクトル特性図である。 本発明の13Xの129XeNMRスペクトル特性図である。 本発明のLowk1の129XeNMRスペクトル特性図である。 129Xe化学シフトの温度特性図である。 129XeNMR吸収線幅の温度特性図である。 面積強度の温度特性図である。 本発明のポア解析装置の1実施例の構成図である。
符号の説明
1 ポア解析装置
2 CPU
3 メモリ
4 制御装置
5 密閉型反応室
6 作業腕
7 真空引き手段
8 冷却手段
9 Xeガス供給手段
10 Xeガス偏極手段
11 リアルタイム計測手段
12 温度依存性計測手段
13 計測手段

Claims (1)

  1. 各種多孔質シリカを密閉型反応室内へ搬入する作業腕と、
    密閉型反応室内を真空引きし、水分等の吸着物を除く真空引き手段と、
    密閉型反応室内を少なくともXeの沸点直上の168Kに冷却する冷却手段と、
    Xeガスを光ポンピング法により超偏極状態にするXeガス偏極手段と、
    Xeガス偏極手段で超偏極状態にしたXeガスを密閉型反応室内へ大気圧状態で導入するXeガス供給手段と、
    導入後にその温度で129XeNMRスペクトルを時間をおいて複数個測定し、時間依存性を計測するリアルタイム計測手段と、
    平衡に達した後に、測定温度を上昇しながら129XeNMRスペクトルを測定し、温度依存性を計測する温度依存性計測手段と、
    計測手段により計測した温度依存性に基づいて129Xe化学シフト、線幅、面積強度を計測する計測手段と、
    上記作業腕、上記真空引き手段、上記冷却手段、上記Xeガス偏極手段、上記Xeガス供給手段、上記リアルタイム計測手段、上記温度依存性計測手段および上記計測手段を制御する制御手段を備えたポア解析装置であって
    前記制御手段は
    各種多孔質シリカを作業腕により密閉型反応室内へ搬入し、密閉型反応室内を真空引きし、水分等の吸着物を除き、密閉型反応室内を少なくともXeの沸点直上の168Kに冷却し、超偏極状態にしたXeガスを密閉型反応室内へ大気圧状態で導入し
    導入後に168Kでの 129 XeNMRスペクトルを時間をおいて複数個測定し、時間依存性の計測を行うとともに、平衡に達した後も、 129 XeNMRスペクトルを時間をおいて複数個測定し、その後、測定温度を173Kから373Kまで順番に上昇させていき、各測定温度毎に平衡に達した後の 129 XeNMRスペクトルを測定し、当該測定した各測定温度毎の 129 XeNMRスペクトルのパターンから、 129 Xe化学シフト、線幅、面積強度の温度依存性の計測を行うように制御することを特徴とするポア解析装置。
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