JP5191543B2 - 偏極キセノンガスの濃縮方法、偏極キセノンガスの製造供給装置及びmriシステム - Google Patents

偏極キセノンガスの濃縮方法、偏極キセノンガスの製造供給装置及びmriシステム Download PDF

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Description

本発明は、偏極キセノンガスの濃縮方法、偏極キセノンガスの製造供給装置及びMRIシステムに関する。
偏極キセノンガスは、例えば、ルビジウムなどのアルカリ金属を用いた光ポンピング法により製造することが可能であり、NMR(核磁気共鳴)装置や、MRI(磁気共鳴イメージング)装置等に好適に用いられる。偏極率の高いキセノンガスを得るためには、製造段階において、窒素やヘリウム等の不活性ガスからなる希釈ガスをキセノンガスに混合することが通常行われており、生成された偏極キセノンガスを希釈ガスから分離濃縮することにより、高濃度の偏極キセノンガスを得ることができる。
希釈ガスの分離による偏極キセノンガスの濃縮方法として、偏極キセノンガスを液体窒素で固化することが従来から検討されているが、キセノンの固化及び揮発の過程で偏極率が減少することが問題となっていた。また、この方法では、一旦キセノンガスを固化して取り出す必要があり、連続的に偏極キセノンガスを製造し供給することは不可能となり、NMRやMRI実験はバッチ式に限定される欠点がある。より詳細には、希釈ガスの混合による偏極率の向上は、キセノンガス濃度が10%以下の低濃度で顕著となるため(非特許文献1)、高希釈条件下で高い偏極率を得た場合は、キセノンの10倍以上の多量の希釈ガスの分離が必要となり、そのための有効な方法は、キセノンの固化以外に見つからず、NMRやMRIの計測はバッチ式とならざるを得ない問題があった。
これに対して、連続的な高偏極率の濃縮キセノンガスの供給は、NMRやMRIでのオンライン計測には欠かせない。そこで、特許文献1には、希釈ガスのみを透過させて偏極キセノンガスは透過させない選択透過膜を使用して、膜不透過の偏極キセノンガスを吸引して取り出す装置が開示されている。ところが、特許文献1に開示された装置によれば、希釈ガスのみを透過させることで偏極ガスの高濃度化は図られているものの、濃縮度は2倍程度で偏極率は1/2に低下となり、やはり偏極率の低下が生じる結果、感度(偏極率×濃度)の改善効果が得られていないのが実情である。
また、特許文献2では、偏極キセノンを固化することを避け、偏極する初期段階から80〜100%の高濃度キセノンガス(残りは窒素ガス)を用いることにより、高濃度キセノンガスが得られるとしているが、偏極率は低く1-2%程度(非特許文献2のデータからの推定値)である。
特開2005−21829号公報 特開2004−262668号公報
J. Fukutomi, E. Suzuki, T. Shimizu, A. Kimura, and H. Fujiwara, J. Magn. Reson., 160, 26 (2003)
そこで、本発明は、高い偏極率のキセノンガスを高濃度で濃縮することができる偏極キセノンガスの濃縮方法の提供を目的とする。
また、本発明は、高偏極率で高濃度のキセノンガスを連続的に製造供給することができる偏極キセノンガスの製造供給装置の提供を目的とする。
更に、本発明は、高感度で連続的にMRI測定を行うことができるMRIシステムの提供を目的とする。
本発明の前記目的は、キセノンガスとクエンチ効果及びバッファー効果の少なくとも一方を奏する希釈ガスとの混合ガスをアルカリ金属蒸気と接触させながら光照射することによりキセノンガスを偏極処理し、前記偏極処理で得られた偏極キセノンガスを含む混合ガスから希釈ガスを分離することにより、偏極キセノンガスを濃縮する方法であって、希釈ガスは、キセノンガスよりも沸点が高く、クエンチ効果又はバッファー効果を奏する高沸点ガスを主成分としており、キセノンガスと高沸点ガスとの沸点差を利用して高沸点ガスを凝縮分離することを特徴とする偏極キセノンガスの濃縮方法により達成される。
また、本発明の前記目的は、キセノンガスと、クエンチ効果及びバッファー効果の少なくとも一方を奏する希釈ガスを混合した混合ガスをアルカリ金属蒸気と接触させながら光照射することによりキセノンガスを偏極処理して偏極キセノンガスを生成する偏極セルであって、希釈ガスがキセノンガスよりも沸点が高く、クエンチ効果又はバッファー効果を奏する高沸点ガスを主成分とする偏極セルと、前記偏極セルから排出された混合ガスを冷却し、キセノンガスと高沸点ガスとの沸点差を利用して高沸点ガスを凝縮分離する凝縮器と、を備え、前記凝縮器で生成された高沸点ガスの凝縮液を再び気化させて、前記偏極セルに導入するように構成した偏極キセノンガスの製造供給装置により達成される。
また、本発明の前記目的は、上記の偏極キセノンガスの製造供給装置を備え、製造された偏極キセノンガスによりMRI測定を行うMRIシステムにより達成される。
本発明の偏極キセノンガスの濃縮方法によれば、高い偏極率のキセノンガスを高濃度で濃縮することができる。
また、本発明の偏極キセノンガスの製造供給装置によれば、高偏極率で高濃度のキセノンガスを連続的に製造供給することができる。
また、本発明のMRIシステムによれば、高感度で連続的にMRI測定を行うことができる。
本発明の一実施形態に係る偏極キセノンガス製造供給装置を示す概略構成図である。 実施例Aの測定結果を示すグラフである。 実施例Aの測定結果を示すグラフである。 実施例Bの測定結果を示すグラフである。 実施例Cの測定結果を示すグラフである。 実施例Dの測定結果を示すグラフである。 実施例Eの測定結果を示すグラフである。 実施例Fの測定結果を示すグラフである。 実施例Fの測定結果を示すグラフである。 図1に示す偏極キセノンガス製造供給装置の要部の変形例を示す概略構成図である。
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る偏極キセノンガスの製造供給装置を示す概略構成図である。偏極キセノンガス製造供給装置1は、偏極キセノンガス及び希釈ガスの混合ガスを偏極処理して偏極キセノンガスを生成する偏極セル6と、生成された偏極キセノン混合ガスから希釈ガスを分離する凝縮器9とを備えている。
偏極セル6は、ガスボンベなどからなる供給源1a,1bに接続されており、供給源1a,1bには、キセノンガス及び希釈ガスがそれぞれ貯留されている。供給源1aのキセノンガスは、質量数129のキセノン同位体(129Xe)を含んでおり、天然のもの(天然存在比26.4%)や、同位体存在比を例えば90%近くまで上げた高濃度129Xeガスなどを使用可能である。
また、供給源1bの希釈ガスは、偏極セル6での偏極処理により光励起された電子スピンが、電磁波を放射しつつ基底状態に戻るプロセスを抑制するクエンチ効果を奏するガスであり、偏極したスピンがセルの器壁と衝突する頻度を下げることにより脱偏極を減らすバッファー効果を奏することが好ましい。この希釈ガスは、キセノンガスよりも高沸点のガスを含むことが要求され、偏極キセノンガスとの分離効果を高めるために、沸点の差が大きいものが好ましい。また、偏極処理においてルビジウムなどのアルカリ金属と接触するため、反応性の低いガスであることが好ましい。
希釈ガスとしては、キセノンガスよりも沸点が高い高沸点ガスであって、上記のクエンチ効果を奏するものが好ましく、不飽和炭化水素や多重結合を含むエーテル系化合物を有効に利用できる。本発明者らが種々の材料についてテストした結果、このような性質を有する希釈ガスとして、イソブテン(CH3C(CH3)=CH2,常圧での沸点:−6.9 ℃)が有効であることを見出した。すなわち、イソブテンガスは、キセノンガス(常圧での沸点:−108 ℃)との沸点差が大きいため分離が容易であり、本発明者らの実験によれば、一般的な希釈ガスである窒素ガスと同程度のクエンチ効果を奏する。更に、後述する実施例に示すように、高沸点ガスとしては、イソブテンの他に、プロペン、2−メチル−2−ブテン、およびフランを特に好ましく挙げることができる。
また、窒素やイソブテン等のクエンチ効果を有するクエンチガスが一定量含まれていれば、高沸点ガスとしてブタン(C4H10、沸点-0.5 ℃、融点-138℃)、2-Methylpropane(C4H10、沸点-12 ℃、融点-160 ℃)、Propane(C3H8、沸点-42.1 ℃、融点-188 ℃)、Pentane(C5H12、沸点35〜36 ℃、融点-130 ℃)、 2-Methylbutane(C5H12、沸点30 ℃、融点-160 ℃)等、沸点がXeより高い化合物を混合して使用することも可能であり、高沸点ガスの候補を拡げることができる。これら飽和炭化水素化合物の高沸点ガスは、クエンチ効果を示さないが、バッファー効果を有する。この場合、高沸点ガスは、常温で気体または液体であり、液体の場合は、常温での蒸気圧が0.3気圧程度以上あってマスフローコントローラ等ガス供給ユニットの動作差圧(通常は0.2気圧程度)を差引いても偏極セルの動作圧以上を供給できることが好ましい。常温での蒸気圧が0.3気圧程度に達しない化合物では、マスフローコントローラ等のガス供給ユニットの出口に吸引ポンプ等を接続することにより、必要蒸気圧を偏極ガス中の分圧程度までに下げることができる。
高沸点ガスは、エーテル化合物(Dimethylether, C2H6O、沸点24.8 ℃、融点-141 ℃、および Diethylether, C4H10O、沸点35〜36 ℃、融点-116 ℃、など)、あるいはハロゲン置換体(1,1-Difluoroethane, C2H4F2, 沸点-25 ℃、融点-117 ℃、など)などの飽和炭化水素の誘導体であってもよい。この場合も、常温で気体または液体であり、液体の場合は、常温での蒸気圧が0.3気圧程度以上あってマスフローコントローラ等ガス供給ユニットの動作差圧(通常は0.2〜0.3気圧程度)を差引いても偏極セルの動作圧以上を供給できることが好ましい。
クエンチ効果を有するガスは、一定量以上あればクエンチ効果が十分働くので、一定分圧のクエンチガスの他に使用状況(凝縮温度や圧力など)に応じ扱い易い特性を有する不活性ガスを混合することができる。この際、例えばButane-d10のように、水素を重水素に置換したガスを使用することは、原料ガスは高価となるが、磁気的な双極子の影響を小さくできるので偏極ガスのSNR向上に有効である。Butaneガスのような飽和炭化水素化合物を加える場合は、偏極時のガス圧(偏極セル動作圧)は飽和炭化水素の添加分だけ増加してもよいが、トラップ後は飽和炭化水素を添加する前の圧力となるように偏極セルとトラップの間に設置した圧力調整バルブで設定するのがよい。
このように、高沸点ガスは希釈ガスの主成分(50体積%以上)であれば良く、クエンチ効果やバッファー効果を良好に維持するために、他の成分を含んでもよい。
希釈ガスがプロトンを含む時は、プロトンがXeの脱偏極に作用するので、重水素に置換することが望ましいが、重水素置換は必須ではない。また、アセチレンのように昇華性のものは、冷却により固化するので、冷却分離後の回収に工夫が必要となる。不飽和炭化水素の中で、エチレン(CH2=CH2,常圧での沸点:−103.7 ℃)は窒素と同程度のクエンチ効果を有するが、沸点がXeとわずかの差しか無いので、後述する凝縮器9の厳密な温度管理が必要である。
供給源1bのガスは1種類とは限らず、複数ガスをその場で混合したり、あるいは前もって混合したガスを用いることができる。
供給源1a,1bから供給されたキセノンガス及び希釈ガスは、それぞれマスフローコントローラ2a,2bを通過することにより流量制御され、設定された組成比となるように混合された後、この混合ガスが乾燥ユニット3に供給される。
乾燥ユニット3は、金属カリウム(K)と金属ナトリウム(Na)の合金からなる液体乾燥剤をガラス容器に収容して複数段に配置した構成や、吸着剤が充填されたガス精製器(例えば、(株)リキッドガス製「ミニファインピュアラー」)を複数連結した構成などを例示することができる。K−Na合金を使用する場合、ガラス容器内でスターラ等により撹拌することが好ましく、これによって乾燥効果を向上可能であると共に、合金の劣化状況を常時監視して、乾燥剤の劣化に伴う弊害(後述する偏極セル6内のアルカリ金属原子の劣化)を未然に防止することができる。なお、これら複数の乾燥装置はキセノンガス及び希釈ガスの純度が特に悪くなければ一段のみでも可能であり、これらの純度が高い場合には、乾燥ユニット3を設けない構成にすることも可能である。
乾燥ユニット3を通過した混合ガスは、フローメータ5を介して偏極セル6に導入される。偏極セル6は、本実施形態においては、パイレックス(登録商標)などの耐熱ガラスからなる円筒状容器であり、専用の磁場発生装置(図示せず)が生成する磁場、或いは、NMRまたはMRI装置の漏れ磁場の中から選択した均一な磁場に設置される。磁場の大きさは、例えば、10mT程度である。
偏極セル6の内部には、アルカリ金属を収容することができ、アルカリ金属を加熱蒸発させながら混合ガスを導入することにより、混合ガスをアルカリ金属蒸気に接触させることができる。アルカリ金属として、本実施形態においてはルビジウム(Rb)を使用しているが、セシウム(Cs)やナトリウム(Na)などを使用することも可能である。
偏極セル6の上方には、レーザ光源等からなる励起用光源7が配置されており、励起用光源7からの出力光を、ガラスファイバー71及びλ/4板72を介して円偏光に変換し、偏極セル6内に照射することにより、偏極キセノンガスを生成する。
偏極セル6の下流側には凝縮器9が配置されており、凝縮器9に接続された偏極ガス輸送ポンプ61の作動によって、偏極セル6及び凝縮器9の内部を同時に減圧することができる。偏極セル6の上流側及び下流側の各流路には、圧力調整バルブ62a,62bがそれぞれ介在されており、圧力計63を見ながら圧力調整バルブ62a,62bの開度調整を行うことにより、偏極セル6の内部を大気圧より低い所望の圧力に維持することができる。偏極セル6内の圧力調整は、手動で行うことも可能であるが、真空一定装置(例えば、岡野製作所のVCG型)のような電子制御装置を利用して自動的に行うこともできる。すなわち、圧力計63の検出値をモニタリングしながら圧力調整バルブ62bの開度を電磁弁で自動制御することが可能であり、偏極セル6内を0.05気圧以下の低圧に維持する場合に特に有効である。偏極セル6の周囲はケーシング65により覆われており、ケーシング65内には温風送風機66から高温ガス(例えば110℃)を導入することができる。導入された高温ガスは、ケーシング65の上部に形成された光導入口などから排出される。
凝縮器9は、容器内部に冷却液Lを貯留可能な冷却トラップ装置から構成されており、冷却液Lに埋没する密閉型の回収タンク91を備えている。偏極セル6で生成された偏極キセノンガスは、偏極ガス輸送ポンプ61による吸引により希釈ガスと混合された状態で凝縮器9に導入され、らせん状の熱交換器92における冷却液Lとの熱交換により冷却されて、回収タンク91に導入される。こうして、希釈ガスが凝縮されて回収タンク91に収容される一方、偏極キセノンガスは、偏極ガス輸送ポンプ61を経てNMR装置8に供給される。NMR装置8は、MRI装置など偏極キセノンガスを使用する他の装置であってもよい。凝縮器9は、偏極キセノンガスの偏極率の低下を防止するため、磁場の下に置くのが好ましく、加える磁場の方向は偏極されたガスのスピンの向きに沿うのが好ましい。加える磁場はNMRやMRI装置の漏洩磁場を利用することもできるが、磁場発生装置(図示せず)を利用して0.2T以上で好ましくは1Tから2T程度の強磁場内に設置するのがより好ましい。
偏極セル6からNMR装置8への偏極キセノンガスの供給は、偏極ガス輸送ポンプ61の吸引に加えて、別途設けた供給管64を介して行うことも可能である。偏極ガス輸送ポンプ61としては、ダイアフラムポンプのように耐食性に優れ油など不純物の混入が無いものがよく、モータ部やガス流路等に磁石や磁性材料を使用しないものがより好ましく、これによって、通過する偏極キセノンガスの脱偏極を防止して、高い偏極率を維持することができる。
回収タンク91に収容された希釈ガスの凝縮液は、希釈ガス輸送ポンプ93の吸引により、凝縮器9の外部でらせん状の熱交換器94を通過する過程で常温空気により加熱され、再びガス状となって希釈ガス輸送ポンプ93を通過した後、供給源1bから偏極セル6に供給される希釈ガスと合流する。回収タンク91に液体が貯留し定常的に吸引されている状態では、供給源1bからの希釈ガスの供給は不要となり、希釈ガスは偏極セルから回収タンクを通って循環しキセノンガスは供給源1aから供給され輸送ポンプ61を通って定常的に送り出される。希釈ガス輸送ポンプ93は、耐食性のあるダイアフラムポンプが好ましく、例えば、KNF社製の「N820.3FT.18」を使用することができる。また、熱交換器94においては、常温空気との熱交換ではなく、希釈ガスの凝縮液を積極的に加熱するようにしてもよい。沸点が室温以上のガスを希釈ガスとして使用することもできる。この場合は、供給源1bは加温器付の液体容器であり、マスフローコントローラー2b自身とそれまでの経路に液体が凝縮しないよう加温する必要がある。沸点で60℃ぐらいの液体まで使用可能であるが、正確には、使用できる液体は、マスフローコントローラーの使用可能温度範囲と作動圧力差、および希釈ガスの使用分圧と希釈ガスの蒸気圧-温度曲線の性質による。沸点の高い希釈ガスの場合は、凝縮液体の再循環には、液体ポンプを用いて液体のままで供給源1bの容器に戻すことができる。
熱交換器94と希釈ガス輸送ポンプ93との間には、逆流防止弁95を設けることが好ましく、これによって、希釈ガス輸送ポンプ93が正常に作動しない場合に、供給源1bから回収タンク91へ希釈ガスが逆流するのを確実に防止することができる。
上記の構成を備える偏極キセノンガス製造供給装置1によれば、偏極キセノンガスの偏極率を高めるために混合する希釈ガスとして、キセノンガスよりも沸点が高い高沸点ガスを使用しているので、キセノンガスと高沸点ガスとの沸点差を利用して、偏極キセノンガスの偏極率の低下を抑制しつつ、高沸点ガスを凝縮器9で凝縮分離することができる。この結果、混合ガスから希釈ガスを連続的に除去することができ、高濃度で偏極率が高い偏極キセノンガスを、NMR装置8などに連続的に製造供給することができる。本実施形態では、希釈ガスとしてイソブテンガスを使用することにより、生成される偏極キセノンガスを、従来と同程度の偏極率を維持しつつ濃度を高めることができ、NMR装置8などの高感度化を図ることができる。
凝縮器9における冷却液Lの温度は、偏極キセノンガスが凝縮せずに、高沸点ガスのみが凝縮するように設定すればよく、例えば、高沸点ガスがイソブテンガス(沸点:−6.9 ℃)である場合、−50℃以下に低温であることが好ましくドライアイスの温度(−78℃)程度に低温であることがより好ましい。
凝縮器9での凝縮分離は、通常は高沸点ガスを液化することにより行うが、高沸点ガスを融点以下で回収することにより固体を析出させる凝縮固化により行ってもよい。特に、液化した高沸点ガスにキセノンガスが溶解し易い場合には、偏極キセノンガスのスピン緩和を抑制するために、固化分離は有効である。また、高沸点ガスが昇華性を有する場合には、昇華による固化を凝縮分離とみなして、偏極キセノンガスを濃縮することができる。
希釈ガスを固化して回収する場合は、図1に示す凝縮器9に代えて、例えば図10に示す固化分離装置10を使用することができる。固化分離装置10は、2つの分離セル101,102を備えており、偏極キセノンガスと希釈ガスとの混合ガスは、分岐された混合ガス流路D2,D3を介して、いずれかの分離セル101,102に供給される。また、各分離セル101,102には、希釈ガスが通過する希釈ガス流路D5,D6と、希釈ガスを分離した後のキセノンガスが通過するキセノンガス流路D1,D4とが接続されている。各流路D1〜D6には、流路を開閉するストップコックC1〜C6がそれぞれ設けられている。また、固化分離装置10は、各分離セル101,102に対応して、低温の冷却液Lを貯留した冷却液貯留槽(低温槽)103,104を備えている。冷却液貯留槽103,104は、不図示の昇降手段により上下動自在に構成されており、冷却液貯留槽103,104を上昇させると、分離セル101,102が冷却液Lに浸漬されて冷却される。
この固化分離装置10は、図10に示すように、一方の分離セル101に対して冷却液貯留槽103を徐々に上昇させながら、混合ガスがこの分離セル101に供給されるようにストップコックC1,C2を開放すると、混合ガスに含まれる希釈ガスが、分離セル101内の主として冷却液Lの液面付近から下方にかけて、固化する。こうして、冷却液貯留槽103の上昇と共に、希釈ガスが分離セル101内の下部から上部に向けて固体Sの状態で堆積され、希釈ガスの固化分離が行われる。分離セル101内が希釈ガスの固体Sで満たされると、ストップコックC1,C2を閉じると共に、ストップコックC3,C4を開放して、冷却液貯留槽104を徐々に上昇させる。こうして、他方の分離セル102内で希釈ガスの固化分離を継続することができる。一方の分離セル101については、冷却液貯留槽103を降下させてセル内の温度を上昇させると共に、ストップコックC5を開放して分離セル101内の希釈ガスをポンプ等で吸引することにより、希釈ガスを回収することができる。分離セル101は、希釈ガスが全て除去されると、他方の分離セル102から再び希釈ガスの固化分離を引き継ぐことができる。
また、本実施形態においては、偏極ガス輸送ポンプ61の作動により、高沸点ガスの凝縮も減圧下で行っているが、これは凝縮液への偏極キセノンガスの溶解を低減して、偏極キセノンガスの供給量低下を防止するためである。希釈ガスの割合が90%程度と高濃度の場合、あるいは凝縮温度がドライアイス温度程度に低温の場合は、特に、このような工夫が有効である。凝縮器9における回収タンク91内の圧力は、低すぎると高沸点ガスも吸引されるので、キセノンガスに高沸点ガスが混入し、分離効率が低下するおそれがあることから、凝縮温度における高沸点ガスの蒸気圧よりは高く、Xeの同温度における蒸気圧よりは十分低く設定することが好ましい。高沸点ガスがイソブテン(蒸気圧: 12.5 Torr(−79.1 ℃);2017 Torr(22.1 ℃))の場合は、Xeの蒸気圧が、1 気圧(−108 ℃);3.44 気圧(−83 ℃);5.15 気圧(−73 ℃)であることを考慮して、およそ0.05気圧から1気圧の範囲に設定することが好ましい。
また、偏極ガス輸送ポンプ61の作動により、凝縮器9の内部と共に、偏極セル6の内部が減圧されるため、生成された偏極キセノンガスのスピン同士の衝突を軽減することができ、この衝突に起因する減偏極を抑制することができる。したがって、偏極率が高い偏極キセノンガスを生成することができる。
偏極セル6内の圧力は、大気圧より低ければ偏極率向上の効果が認められるが、特に0.6気圧以下に設定することで、偏極率向上の顕著な効果を得ることができる。但し、偏極セル6内の圧力が低圧になり過ぎると、偏極キセノンガス同士の衝突抑制の効果よりも、希釈ガスの分圧低下によりクエンチ効果が低減する弊害が大きくなり、偏極率は低下する傾向にあると共に、気密性の維持も困難になる。したがって、偏極セル6内の圧力は、0.05気圧以上で0.6気圧以下であることが好ましく、0.05気圧以上で0.2気圧以下であることがより好ましい。
偏極セル6及び凝縮器9の減圧は、本発明の効果を奏する上で必須の条件ではなく、いずれも常圧下で行うことも可能であり、常圧の希釈ガス再循環型偏極希ガス製造供給装置としても用い得る。
また、キセノンガスに混合する希釈ガスは、クエンチ効果を奏する高沸点ガス以外に、偏極キセノンガスの著しい濃度低下を生じさせない限り、他の成分ガスを少量含んでいてもよい。例えば、He(He)ガスなどのバッファーガスを混合し、偏極セル6内で励起されたスピンが容器の内壁に衝突して脱偏極することを防止するようにしてもよい。但し、偏極セル6内を低圧にすることで、バッファーガスを用いることなく偏極率の向上を図ることができるので、偏極セル6内の減圧は、偏極キセノンガスの偏極率を良好に維持しつつ、凝縮器9での濃度低下を抑制するためにも有効である。
凝縮器9で分離された希釈ガスの凝縮液は、回収タンク91に一定量貯留されてからバッチ式で取り出すことも可能であるが、希釈ガス輸送ポンプ93を常時作動させることにより、供給源1bから供給される希釈ガスと混合させながら偏極セル6に循環させることで、偏極キセノンガスの製造コストを低減することができる。この循環型装置は希釈ガスとして窒素以外のガス、例えばイソブテンのような有機ガスなど、を用いる場合は、特に、製造コストを下げ、希釈ガスの回収・貯蔵・精製の操作が省略できる点で非常に有利となる。キセノンガスの偏極率を上げるために高度に希釈した場合は希釈ガスの使用量が多量となるため、従来はその処理が煩雑であったが、本発明によれば、上記のように希釈ガスの再循環を図ることができ、経済性・効率性を向上させることができる。具体的には、純(100%)キセノンガスの偏極率10%以上を実現することができ、従来に比べて1桁の偏極率向上が可能である。したがって、例えばMRIシステムが、本発明の偏極キセノンガス製造供給装置を備えることにより、臓器などを高感度で連続的にMRI(磁気共鳴イメージング)測定することができる。
以下、実施例に基づき、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例A:希釈ガスとしてイソブテンを使用
<希釈ガスと感度との関係>
アルカリ金属としてルビジウムを収容した直径60mm、長さ30cmの円筒状の偏極セルを110℃の高温槽内に置き、キセノンガスと希釈ガスとの混合ガスを偏極セル内に導入して、波長795nmで90Wのレーザー光を円偏光に変換した後、偏極セル内の圧力を0.15気圧に設定し、偏極セルに20分照射した。そして、セル内のガスをNMR測定用試料管に流しつつNMR信号を測定し、信号ノイズ比(SNR)を測定した。SNR測定用の標準サンプルでも同様の測定を行い、両者の比から129Xeの偏極率PXeを下式より求めた。
Figure 0005191543
希釈ガスは、イソブテンガス及び窒素ガスを使用し、偏極キセノンガスを生成後、希釈ガスをトラップせずにNMR測定用試料管を導入した場合を、それぞれ比較例1及び2とした。一方、希釈ガスとしてイソブテンガスを使用し、希釈ガスをトラップした後にNMR測定用試料管を導入した場合を、実施例1とした。この結果を表1に示す。なお、低圧の達成はダイアフラムポンプN86KV.18(KNF社製)により行い、圧力の設定は、高精度バルブmeteringvalve SS6MM(Swagelok社製)により流量を微調整することにより行った。圧力はHANDY MANOMETER MODEL PG-100 102RP(COPAL ELECTRONICS社製)により測定した。ガス流量は、予め較正したフローメータFT-1100(草野科学製)で測定した。
希釈ガスのトラップには、ガラス製の蛇管(内径8mm程度)を低温恒温槽内に置いたが、この蛇管の下部には液溜用のアンプル(約50ml)を付加した。希釈ガスの再還流実験では、このアンプルの底部から内径4mm程度のガラス管で吸引することによりマスフローコントローラに希釈ガスを供給できるので、希釈ガスの原料ボンベからはコックを閉じてガス供給を遮断した。吸引用ポンプには、減圧用のポンプよりも吸引力の強いダイアフラムポンプ(N820.3 FT.18型)を使用し、希釈ガスの吸引速度は、ポンプ手前のコックで調節した。
Figure 0005191543
表1は、左から順に、キセノンガス流量、窒素ガス流量、イソブテンガス流量、総流量、キセノンガス濃度(容量濃度)、偏極セル内圧力、信号ノイズ比(SNR)、偏極率(P)を示している。
比較例1及び比較例2の信号ノイズ比(SNR)及び偏極率をグラフ化したものを、それぞれ図2(a)及び(b)に示す。図2(a)及び(b)において、黒丸は比較例1(希釈ガスがイソブテンガス)、四角は比較例2(希釈ガスが窒素ガス)を表している。信号ノイズ比及び偏極率のいずれにおいても、キセノンガスの流量に拘らず両者はほぼ一致しており、希釈ガスとして新規なイソブテンガスを使用した場合においても、従来と同程度のクエンチ効果が得られていることがわかる。
また、図2(c)は、実施例1及び比較例1の信号ノイズ比をグラフ化したものであり、白丸は実施例1(希釈ガスのトラップあり、トラップ温度は−77℃)、黒丸は比較例1(希釈ガスのトラップなし)を表している。実施例1においては、キセノンガスの流量が10〜20cc/分の場合に信号ノイズ比が約4倍となっており、顕著な感度向上が認められた。これらの流量条件下では希釈ガスの割合は、それぞれ、20および30%であり、100%キセノンガスに比べて3.5〜5倍の信号ノイズ比が窒素を希釈ガスとした場合に得られる(非特許文献1参照)ことから、ここでの、流量が10〜20cc/分の場合の信号ノイズ比の約4倍の増加は、100%キセノンに対しては14〜20倍の増加を意味する。即ち、100%キセノンの偏極と比較して14〜20倍の信号増強が実現できたことが分かる。
<偏極セル内圧力と感度との関係>
偏極セル内の圧力を0.15気圧および1気圧に設定した場合について、生成された偏極キセノンガスを、希釈ガスのトラップを行わずにNMR測定用試料管に導入し、上記と同様の測定を行った。この結果を図3(a)及び(b)に示す。
図3(a)及び(b)は、ガス全体の総流量に対する信号ノイズ比及び偏極率をそれぞれ示しており、白丸及び白三角が低圧(設定圧力0.15気圧)、黒丸及び黒三角が常圧(設定圧力1気圧)である。総流量が約100cc/分以下の場合には、偏極セル内の減圧により、信号ノイズ比及び偏極率がいずれも顕著に向上していることがわかる。
<凝縮器内磁場と感度との関係>
凝縮器に加える磁場の効果を調べた結果を表2に示す。希釈ガスはイソブテンを使用した。超伝導NMR装置の漏れ磁場を利用し、凝縮器の置く位置を、磁石本体の表面に最も近づけた場合(0.045 T)と表面から70cm程度離した場合(0.002 T)を比較した。より高い磁場の下に置いた方がSNRが増大した(No.1と2)。Xeの偏極率が、凝縮器温度が室温のままで希釈ガスを凝縮除去しない場合(No.3)とくらべて少し低下しているが、これは、凝縮器に加える磁場強度をさらに上げることにより回避できると考えられる。
Figure 0005191543
実施例B:希釈ガスとしてプロペンを使用
上記実施例1において、希釈ガスとして窒素の代わりにPropene (C3H6、H3CCH=CH2、沸点-47.7 ℃、融点-185 ℃)を用いた結果を、表3に実施例2として示す。偏極セルは直径60mm長さ20cmであり、用いた励起用レーザーの出力は90W、Propeneの凝縮に用いた低温槽の温度は−114℃である以外は、上記実施例1と同じである。セルの大きさやレーザー出力が異なるので、上記比較例1及び2についても改めて実施例2と同じ条件下で測定し、これらの結果を比較例3及び4とした。
また、表3の信号ノイズ比(SNR)をグラフ化したものを、図4に示す。図4において、白丸は実施例2、黒丸は比較例3、四角は比較例4をそれぞれ表している。Xe含量が11〜30%でXe流速が8.5〜30 cc/minでSNRが改善されており、特にXe含量が20〜30%でXe流速が17〜30 cc/minでSNRが約1.5倍に増加していることが分かる。
Figure 0005191543
実施例C:希釈ガスとして2−メチル−2−ブテンを使用
希釈ガスとして窒素の代わりに2-Methyl-2-butene(C5H10、(CH3)2C=CH(CH3)、沸点38℃、融点-134℃)を用いた結果を、表4に実施例3として示す。偏極セルは直径60mm長さ10cmであり、用いた励起用レーザーの出力は60W、2-Methyl-2-buteneの凝縮に用いた低温槽の温度は−65℃である以外は、上記実施例1と同じである。セルの大きさやレーザー出力が異なるので、上記比較例1を改めて実施例3と同じ条件下で測定し、この結果を比較例5とした。なお、2-Methyl-2-buteneは常温で液体であるが、沸点が室温に近いため室温の実験条件で0.15気圧の蒸気圧は十分供給できる。ただし、輸送ポンプを経て常圧(1気圧)になると、2-Methyl-2-buteneの大半は自動的に凝縮するため、上記比較例2に相当する2-Methyl-2-buteneの凝縮無し(NoTrap)のデータ収集は困難である。このため、本実施例Cでは、実施例3に対する比較例を、比較例5のみとしている。
また、表4の信号ノイズ比(SNR)をグラフ化したものを、図5に示す。図5において、白丸は実施例3、四角は比較例5をそれぞれ表している。Xe含量が11〜30%でXe流速が8.5〜30 cc/minでSNRが2倍に増加していることが分かる。
Figure 0005191543
実施例D:希釈ガスとしてフランを使用
希釈ガスとして窒素の代わりにFuran(C4H4O、沸点31℃、融点-85.68℃)を用いた結果を、表5に実施例4として示す。偏極セルは直径60mm長さ10cmであり、用いた励起用レーザーの出力は60W、Furanの凝縮に用いた低温槽の温度は−65℃である以外は、上記実施例1と同じである。セルの大きさやレーザー出力が異なるので、上記比較例1を改めて実施例4と同じ条件下で測定し、この結果を比較例6とした。なお、Furanは常温で液体であるため、凝縮無し(NoTrap)のデータは収集していない(すなわち、上記比較例2に対応する比較例を記載していない)点については、上記実施例Cの場合と同じである。
また、表5の信号ノイズ比(SNR)をグラフ化したものを、図6に示す。図6において、白丸は実施例4、四角は比較例6をそれぞれ表している。Xe含量が20〜30%でXe流速が17〜30 cc/minでSNRが20-30%増加した。実施例4においてもSNRの増加がみられるが、この増加割合は、上記実施例1〜3におけるSNRの増加割合に比べて少ない。この理由としては、Xeの液体Furanへの溶解度が高く、凝縮したFuranにXeが溶解し、短い緩和時間で速く減偏極したためと考えられる。また、Furanのクエンチ効果が窒素と比べて弱いことも原因として考えられる。
Figure 0005191543
実施例E:希釈ガスとしてのフランを固化分離
実施例Dと同様に希釈ガスとしてFuranを使用し、Furanを融点より低温で固化して分離した結果を、表6に実施例5として示す。偏極セルは直径60mm長さ20cmであり、用いた励起用レーザーの出力は90W、Furanの凝縮に用いた低温槽の温度は−105℃である。セルの大きさやレーザー出力が異なるので、上記比較例1も改めて実施例5と同じ条件下で測定し、この結果を比較例7とした。
また、表6の信号ノイズ比(SNR)をグラフ化したものを、図7に示す。図7において、白丸は実施例5、四角は比較例7をそれぞれ表している。
Xe含量が20〜30%でXe流速が17〜30 cc/minでSNRが約40-60%増加しており、実施例4と比較して高い増加割合が得られている。Furanを固化することにより、偏極したXeが実質的に溶解しなくなり、液体で分離した場合のような気液平衡状態での液体中での比較的短い緩和時間による減偏極が防止できたためと考えられる。
Figure 0005191543
実施例F:希釈ガスとしてブタン混合ガスを使用
希釈ガスとして窒素の代わりに窒素ガスとブタンガスとの混合ガスを用いた結果を、表7に実施例6として示す。偏極セルは直径60mm長さ30cmであり、用いた励起用レーザーの出力は90W、混合ガスの凝縮に用いた低温槽の温度は−74℃である以外は、上記実施例1と同じである。また、希釈ガスとして、イソブテンガスとブタンガスとの混合ガスを用いて実施例6と同じ条件で測定した結果を、同じく表7に実施例7として示す。
また、実施例6及び7の信号ノイズ比(SNR)をグラフ化したものを、それぞれ図8及び図9に示す。図8において、白丸は実施例6を示し、黒丸は希釈ガスをトラップしない場合を表している。また、図9において、白丸は実施例7を示し、黒丸は希釈ガスをトラップしない場合を表している。
図8と図9とを比較すると、希釈ガスをトラップしない場合のSNRは、図8に示す希釈ガス(窒素及びブタンの混合ガス)の方が若干良いが、圧力が下がるほど両者の差は小さくなる。一方、希釈ガスの凝縮実験で用いたトラップの温度は-100℃であり、この温度ではButaneとIsobuteneは凝縮し分離されるから、希釈ガスをトラップすることによるSNRの向上の割合は、Isobuteneを含む希釈ガスを用いた場合の方が良い。図9に示すように、特に低圧になるほど、この向上割合はより顕著となる。
Figure 0005191543
凝縮によるSNRの向上は、凝縮して取り除かれるガスの割合から計算した予測値よりは低かった。例えば、流速がXe=17, Isobutene=8.6, Butane=20 cc/minの場合は2.68倍の感度増加が予想できるが、実験では2.18倍となった。この低下の原因としては、凝縮した液体中に溶け込んだXeスピンの緩和による減偏極が考えられる。この影響を抑えるには、トラップでの冷却方法が重要であり、理想的には希釈ガスが固化してXeが溶解しにくくするのが良い。希釈ガスの固化が難しく液体として凝縮させる場合は、ガスとして流れるXeと、希釈ガスの液体表面との接触面積を極力抑えるように、凝縮器の幾何学形状などを工夫することは有効と考えられる。
1 偏極キセノンガス製造供給装置
1a,1b 供給源
6 偏極セル
61 偏極ガス輸送ポンプ
7 励起用光源
9 凝縮器
91 回収タンク
92 熱交換器
93 希釈ガス輸送ポンプ
94 熱交換器
10 固化分離装置

Claims (10)

  1. キセノンガスとクエンチ効果及びバッファー効果の少なくとも一方を奏する希釈ガスとの混合ガスをアルカリ金属蒸気と接触させながら光照射することによりキセノンガスを偏極処理し、前記偏極処理で得られた偏極キセノンガスを含む混合ガスから希釈ガスを分離することにより、偏極キセノンガスを濃縮する方法であって、
    希釈ガスは、キセノンガスよりも沸点が高く、クエンチ効果又はバッファー効果を奏する高沸点ガスを主成分としており、
    キセノンガスと高沸点ガスとの沸点差を利用して高沸点ガスを凝縮分離することを特徴とする偏極キセノンガスの濃縮方法。
  2. 高沸点ガスの凝縮を減圧下で行う請求項1に記載の偏極キセノンガスの濃縮方法。
  3. 高沸点ガスの凝縮を磁場内で行う請求項1に記載の偏極キセノンガスの濃縮方法。
  4. 高沸点ガスは不飽和炭化水素や多重結合を含むエーテル系化合物である請求項1に記載の偏極キセノンガスの濃縮方法。
  5. 高沸点ガスはイソブテンガスである請求項1に記載の偏極キセノンガスの濃縮方法。
  6. 高沸点ガスはプロペン、2−メチル−2−ブテンまたはフランのいずれかを含む請求項1に記載の偏極キセノンガスの濃縮方法。
  7. 高沸点ガスを凝縮固化により分離する請求項1に記載の偏極キセノンガスの濃縮方法。
  8. キセノンガスと、クエンチ効果及びバッファー効果の少なくとも一方を奏する希釈ガスを混合した混合ガスをアルカリ金属蒸気と接触させながら光照射することによりキセノンガスを偏極処理して偏極キセノンガスを生成する偏極セルであって、希釈ガスがキセノンガスよりも沸点が高く、クエンチ効果又はバッファー効果を奏する高沸点ガスを主成分とする偏極セルと、
    前記偏極セルから排出された混合ガスを冷却し、キセノンガスと高沸点ガスとの沸点差を利用して高沸点ガスを凝縮分離する凝縮器と、を備え、
    前記凝縮器で生成された高沸点ガスの凝縮液を再び気化させて、前記偏極セルに導入するように構成した偏極キセノンガスの製造供給装置。
  9. 前記凝縮器には、偏極キセノンガスを吸引する真空ポンプが接続されており、
    前記真空ポンプの作動により、前記偏極セル及び前記凝縮器の内部を同時に減圧できるように構成した請求項8に記載の偏極キセノンガスの製造供給装置。
  10. 請求項8に記載の偏極キセノンガスの製造供給装置を備え、製造された偏極キセノンガスによりMRI測定を行うMRIシステム。
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