JP5013907B2 - 偏極希ガスの製造方法 - Google Patents

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本発明は、NMR(核磁気共鳴)装置や、MRI(磁気共鳴イメージング)装置等に好適に用いられる偏極希ガスの製造方法に関する。
核磁気共鳴測定に用いられる偏極希ガスとしては、測定感度を向上させるため、高い偏極率が求められている。このような偏極希ガスを製造する方法として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。
特許文献1に開示された偏極希ガスの製造方法は、キセノン等の希ガス及び窒素ガス等のクエンチガスを、高圧状態から常圧付近まで減圧してフローセルに導入し、ルビジウム等の光ポンピング触媒と混合させる。そして、フローセル内に励起光を照射し、かつ磁場を印加することにより、偏極希ガスを連続的に生成する。
特開2003−245263号公報
上記特許文献1に開示された偏極希ガスの製造方法は、希ガス及び光ポンピング触媒の混合ガスが通過するフローセルとして、一対の平板間を混合ガスが通過する平板型のものを使用することにより、偏極率の向上を図っている。ところが、フローセル内においては、励起光の照射による希ガスの偏極と同時に減偏極も生じるため、従来においては、フローセルから排出される希ガスの偏極率向上が困難であるという問題があった。
そこで、本発明は、減偏極を抑制することで、偏極率の高い希ガスを容易に製造することができる偏極希ガスの製造方法の提供を目的とする。
本発明の前記目的は、希ガス及びクエンチガスを含む原料ガスを偏極セルに連続的に供給しながらアルカリ金属蒸気と混合させ、磁場内で前記偏極セル内に励起光を照射することにより偏極希ガスを製造して連続的に供給する方法であって、励起光の照射時における前記偏極セル内の圧力を、0.05気圧以上0.6気圧以下に維持し、前記偏極セル内に支持された光透過性材料からなるカバー部材によりアルカリ金属蒸気を前記偏極セルの一方に滞留させて原料ガスと混合させるとともに、生成された偏極希ガスを前記偏極セルの他方から排出させることを特徴とする偏極希ガスの製造方法により達成される。
本発明の偏極希ガスの製造方法によれば、偏極率の高い希ガスを容易に製造することができる。
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る偏極希ガスの製造方法を実施するための偏極希ガス製造装置の概略構成図である。
図1に示すように、ガスボンベなどからなる供給源1a,1bから供給された希ガス及びクエンチガスは、それぞれマスフローコントローラ2a,2bを通過することにより流量制御され、設定された組成比となるように混合される。供給源1aから供給される希ガスは、スピン偏極状態を生成するために通常用いられるものをここでも使用可能であり、本実施形態ではキセノン同位体(129Xe)としているが、ヘリウム同位体(He)等であってもよい。129Xeは、天然のものが使用可能であり(天然存在比26.4%)、或いは、存在比を例えば90%近くまで濃縮したものも使用可能である。
供給源1bから供給されるクエンチガスは、光励起された電子スピンが電磁波を放射しつつ基底状態に戻るプロセスを抑制するガスであり、放射した電磁波の再吸収による再励起を防ぐ効果を有する。本実施形態では、クエンチガスとして窒素ガスを使用しているが、水素ガス、エチレンガス、アセチレンガスなどを使用することができ、その他の不飽和結合を有する有機ガスや無機ガスを使用することもできる。
希ガス及びクエンチガスの混合により生成された原料ガスは、乾燥ユニット3に供給される。乾燥ユニット3の上流側には、分岐管を介してシリンジ4が設けられており、希ガス及びクエンチガスをシリンジ4内で混合した後に、プランジャ4aによって乾燥ユニット3へ押し出すことも可能である。
乾燥ユニット3は、金属カリウム(K)と金属ナトリウム(Na)の合金からなる液体乾燥剤をガラス容器に収容して複数段に配置した構成や、吸着剤が充填されたガス精製器(例えば、(株)リキッドガス製「ミニファインピュアラー」)を複数連結した構成などを例示することができる。K−Na合金を使用する場合、ガラス容器内でスターラ等により撹拌することが好ましく、これによって乾燥効果を向上可能であると共に、合金の劣化状況を常時監視して、乾燥剤の劣化に伴う弊害(後述する偏極セル6内のアルカリ金属原子の劣化)を未然に防止することができる。なお、希ガス及びクエンチガスの純度が高い場合には、乾燥ユニット3を設けない構成にすることも可能である。
乾燥ユニット3を通過した原料ガスは、フローメータ5を介して偏極セル6に導入される。偏極セル6は、本実施形態においては、パイレックス(登録商標)などの耐熱ガラスからなる円筒状容器であり、専用の磁場発生装置(図示せず)が生成する磁場、或いは、NMRまたはMRI装置の漏れ磁場の中から選択した均一な磁場に設置される。磁場の大きさは、例えば、10mT程度である。
偏極セル6は、真空ポンプ61が接続されており、真空ポンプ61の作動により偏極セル6内を減圧することができる。偏極セル6と真空ポンプ61との間には圧力調整バルブ62a,62bが介在されており、圧力計63を見ながら圧力調整バルブ62a,62bの開度調整を行うことにより、偏極セル6の内部を大気圧より低い所望の圧力に維持することができる。偏極セル6内の圧力調整は、手動で行うことも可能であるが、真空一定装置(例えば、岡野製作所のVCG型)のような電子制御装置を利用して自動的に行うこともできる。すなわち、圧力計63の検出値をモニタリングしながら圧力調整バルブ62bの開度を電磁弁で自動制御することが可能であり、偏極セル6内を0.05気圧以下の低圧に維持する場合に特に有効である。偏極セル6の周囲はケーシング65により覆われており、ケーシング65内には温風送風機66から高温ガス(例えば110℃)を導入することができる。導入された高温ガスは、ケーシング65の上部に形成された光導入口などから排出される。
偏極セル6の内部には、アルカリ金属が収容されており、偏極セル6内を減圧してアルカリ金属を加熱蒸発させながら、偏極セル6内の低圧状態を維持した状態で、原料ガスを導入する。これにより、偏極セル6内で原料ガスがアルカリ金属蒸気と混合される。アルカリ金属として、本実施形態においてはルビジウム(Rb)を使用しているが、セシウム(Cs)やナトリウム(Na)などを使用することも可能である。
ついで、偏極セル6の上方に配置されたレーザ光源等からなる励起用光源7からの出力光を、ガラスファイバー71及びλ/4板72を介して円偏光に変換し、偏極セル6内に照射する。これにより、偏極セル6内で偏極希ガスが生成される。偏極希ガスは、真空ポンプ61による吸引によって、偏極セル6に隣接配置されたNMR装置8に供給される。偏極セル6からNMR装置8への偏極希ガスの供給は、真空ポンプ61の吸引に加えて、別途設けた供給管64を介して行うことも可能である。こうして、偏極セル6で生成された偏極希ガスを、NMR装置8に連続的に供給することができる。真空ポンプ61としては、ダイアフラムポンプのようにモータ部等に磁石や磁性材料を使用しないものが好ましく、これによって、通過する偏極希ガスの脱偏極を防止して、高い偏極率を維持することができる。
本実施形態においては、偏極セル6内における偏極希ガスの生成を、大気圧よりも低圧で行うようにしているため、生成された偏極希ガスのスピン同士の衝突を軽減することができ、この衝突に起因する減偏極を抑制することができる。したがって、NMR装置8等に対して、高い偏極率を有する希ガスを連続供給することができる。
偏極セル6の内部を低圧にすることで、キセノンが偏極セル6内を通過する平均時間が従来に比べて短くなることから、偏極される時間を十分確保して偏極率のばらつきを低減するためには、偏極セル6の長さを長くすることが好ましい。但し、長い偏極セル6の場合、セル全体にわたって均一な外部磁場を与えることは困難であることから、偏極率が低下する傾向にある。このため、図2に示すように、偏極セル6内に収容されたアルカリ金属Mの上方を覆うように、光透過性材料(例えば、パイレックス(登録商標))からなるカバー部材67を支持手段(図示せず)によって支持すると共に、原料ガスがアルカリ金属Mに向けて吹き付けられるように導入管68を配置し、生成された偏極希ガスが偏極セル6の上部から排出管69を介して排出されるように構成することが好ましい。これによって、偏極セル6の長さを過大にすることなく、カバー部材67の下方に金属蒸気を滞留させて偏極時間を確保することができるので、偏極率のばらつきを抑制しつつ偏極率の低下を防止することができる。カバー部材67は、上方に凸となる椀状に形成することで、カバー部材67の下方に金属蒸気を滞留させ易くすることができると共に、照射されたレーザ光による表面反射光を散乱させて安全性を高めることができる。
後述する実施例から明らかなように、偏極セル6内の圧力は、大気圧より低ければ偏極率向上の効果が認められるが、特に0.6気圧以下に設定することで、偏極率向上の顕著な効果を得ることができる。但し、偏極セル6内の圧力が低圧になり過ぎると、偏極希ガス同士の衝突抑制の効果よりもクエンチガスの分圧低下によりクエンチ効果が低減する弊害が大きくなり、偏極率は低下する傾向にあると共に、気密性の維持も困難になる。したがって、偏極セル6内の圧力は、後述する実施例から明らかなように、0.05気圧以上で0.6気圧以下であることが好ましく、0.05気圧以上で0.2気圧以下であることがより好ましい。
また、従来は、励起されたスピンが容器の内壁に衝突して脱偏極することを防止するため、希ガス及びクエンチガスに加えて、通常のHe(He)ガスなどのバッファーガスを混合する場合があったが、後述する実施例に示すように、偏極セル6内を低圧にすることで、バッファーガスを用いることなく偏極率の向上を図ることが可能であり、偏極ガス生成後にバッファーガスを分離する煩雑さも解消される。
以下、実施例に基づき、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1:バッチ式測定)
アルカリ金属としてルビジウムを収容した直径60mm、長さ30cmの円筒状の偏極セルを110℃の高温槽内に置き、原料ガスを偏極セル内に導入して、波長795nmで90Wのレーザー光を円偏光に変換した後、偏極セル内の圧力が1気圧及び0.15気圧のそれぞれの場合について、偏極セルに20分照射した。セル内のガスを20ml/分程度の速度でNMR測定用試料管に流しつつNMR信号を測定しSN比(信号ノイズ比(S/N)p)を測定した。SN比測定用の標準サンプルでも同様に(S/N)eの測定を行い、両者の比から129Xeの偏極率PXeを下式より求めた。
Figure 0005013907
ここで、Xe%は試料ガス中のXeの含有率、NEXは信号積算回数、Peは標準試料の129Xeの偏極率でボルツマン則から計算される値である。なお下ツキの文字は、pは偏極ガスをeは標準サンプルの熱平衡ガスを意味する。
低圧の達成はダイアフラムポンプN86KV.18(KNF社製)により行い、圧力の設定は、高精度バルブmeteringvalve SS6MM(Swagelok社製)により流量を微調整することにより行った。圧力はHANDY MANOMETER MODEL PG-100 102RP(COPAL ELECTRONICS社製)により測定した。ガス流量は、予め較正したフローメータFT-1100(草野科学製)で測定した。
原料ガスは、キセノンガス及び窒素ガスの混合ガスであり、原料ガス中のキセノンガスの濃度(容量濃度)をパラメータとして偏極率を求めた結果を表1に示す。キセノンガスの濃度がいずれの場合においても、偏極セル内の圧力を1気圧から0.15気圧に低下することで偏極率が増大しており、具体的には、1.7±0.3倍(表1中の増大比の平均値)の偏極率の増大が確認できる。
Figure 0005013907
(実施例2:Heガスによる希釈効果の検証、バッチ式測定)
一般に超偏極実験では、不活性ガスの混合効果は2種類の因子で説明されており、クエンチ効果とバッファー効果が知られる(J. Fukutomi, E. Suzuki, T. Shimizu, A. Kimura, and H. Fujiwara, J. Magn. Reson., 160, 26-32 (2003))。クエンチ効果は光励起された電子スピンが電磁波を放射しつつ基底状態に戻るプロセスを抑えるもので、放射した電磁波の再吸収による再励起を防ぐ効果がある。窒素ガスが有力なクエンチガスとして知られる。バッファー効果は励起されたスピンが容器の壁に衝突して脱偏極することを防ぐものであり、4He(通常のHeガス、以下特に断らない限りこれを指す)のような原子量の軽いガスが効果的である。
偏極セル内の圧力を0.15気圧として、クエンチガス及びバッファーガスにそれぞれ窒素ガス及びHeガスを使用し、Xeの各濃度(容量濃度)に対し、混合する窒素とHeの濃度(容量濃度)をパラメータとして、Heガスの添加が偏極率に与える影響を調べた。この結果を表2に示す。キセノンガスの濃度に拘わらず、100%窒素で希釈した方が、Heと窒素の混合ガスで希釈するよりも高い偏極率が実現できた。このことから、0.15気圧の低圧では、Heガスの添加は不要であることが分かる。
Figure 0005013907
(実施例3:フロー式測定)
実施例1及び2はバッチ式の測定であったが、本実施例では、図1に示す偏極希ガス製造装置を用いてフロー式の測定を行った。アルカリ金属はルビジウムを使用し、原料ガスとして、70%のキセノンガス及び30%の窒素ガス(容量比)の混合ガスを使用した。原料ガスは、20 ml/minの流量で連続的に供給した。偏極セル内の圧力と偏極率との関係を図3に示す。偏極セルの形状、大きさは、実施例1と同様とした。
図3から明らかなように、大気圧から圧力を低下させることにより偏極率は上昇する傾向にあり、偏極率は0.15気圧で最大値11.6%を示し、1気圧での同条件での偏極率より1.8倍上昇した。偏極セル内の圧力が0.15気圧よりも小さくなると、偏極率は低下する傾向にあった。図3には示していないが、ダイアフラムポンプN820.3AT.18(KNF社製)を用いて0.05気圧での測定を行ったところ、偏極率は0.1気圧よりさらに減少することが認められた。
ここでは、偏極した混合ガスからXeを分離することなくそのままで使用することを念頭に置き、信号強度が129Xeの偏極率とXeの容量%の積に比例することから、表2でこの積が最大となるガス組成としてXe70%(N230%)を選んでフロー条件化の実験を行った。Xeの割合を70%より低下させるとN2の割合が増加しクエンチ効果が増大する。従って、Xe%を70%より下げれば、より低圧で偏極効果が上ると予想でき、好ましい圧力は0.15気圧より下がるはずである。70%Xeでは0.15気圧で11.6%の偏極率が得られているが、N2=90%(Xe=10%)とすると、全圧が0.05気圧でN2の分圧が同じとなるので、同程度のクエンチ効果が期待できる。そこでは、Xe%は1/7となるが、偏極率が7倍の81%以上にできれば、0.05気圧での偏極実験も有効となる。Xeの偏極率の理論的最大値は100%なので、この0.05気圧付近が今回提案する偏極実験の圧力の下限と考えられる。
以上より、偏極セル内の圧力は、0.05気圧以上で0.6気圧以下であることが好ましく、0.05気圧以上で0.2気圧以下であることがより好ましい。更に好ましくは、キセノンガス濃度が70%程度の場合に、0.1気圧以上で0.2気圧以下であり、キセノンガス濃度が1−10%程度の場合に、0.05気圧以上で0.15気圧以下である。
次に、偏極率の流速依存性を調べるため、上記測定において原料ガスの流量と偏極率との関係を求めた。また、これと比較するため、同流量に対して偏極セル内を1気圧に設定した場合についても、偏極率を求めた。この結果を図4に示す。
図4に示すように、いずれの流量においても、1気圧の場合に比べて0.15気圧の場合には偏極率が増大しているが、流量が多いほど偏極率の増大割合が低下する傾向が認められた。これは、流量の増大によりキセノンガスが偏極セルを通過する平均時間が短くなることが原因と考えられるため、偏極セルを長くすることが有効であると推測される。
また、0.15気圧及び1気圧のそれぞれの場合について、時刻0でレーザ照射を開始したときの各流量に対する偏極率の立ち上がり特性を調べた結果を図5に示す。この試験においては、偏極セルのセル長さを20cmとした。
いずれの流量においても、1気圧の場合に比べて0.15気圧の場合には偏極率の立ち上がり速度が増大しており、約2.6倍速くなっている。レーザ照射の開始から500秒後には、いずれの条件においても偏極率は安定しており、圧力の違いによる相違は認められなかった。
次に、長さ70cm(直径は6cm)の偏極セルにて1気圧で20分偏極後、ポンプで吸引することにより流速25ml/minでフロー(ガス組成は70%Xe+30%N2)を開始し定常状態で0.15気圧とした。この結果を図6に示す(図の○印)。セルの吸引に伴い偏極率は急激に上昇し、1分ほどで定常値に達した。1気圧のままで同じ流速でフローさせた結果(図の●印)と比較すると、偏極率の増大は2倍程度であった。また、ダイアフラムポンプを偏極ガスが通過することによる偏極率の低下を測定した。1気圧偏極ガスの通過実験の結果、ダイアフラムポンプの通過による偏極率の低下は10%程度であり、十分小さいと確認できた。
次に、偏極セル長さをパラメータとして、S/N比の時間依存性を調べた。S/N比は偏極率に比例するので、セルの安定性を見ていることになる。セルの直径は6cmで長さは30cmから1mまで変化させている。偏極セル内を0.15気圧として密閉状態で30分偏極後、25ml/minの流量でフロー開始して測定した結果を図7に示す。
図7に示すように、S/N比は3分ほどで定常値となったが、長いセルの方が定常状態での信号変動が小さい。これはセル内の流れの乱れからくるセル通過時間のばらつきによると考えられ、長いセルでは偏極される時間が十分あるので、流れの乱れによる偏極率のばらつきは顕著でなくなる。ただし、長いセルでは、セル全体にわたっての外部磁場の分布に均一性の低下は避けられないので、偏極率(信号強度)の低下は避けられない。
次に、偏極セルの加熱温度をパラメータとして、偏極率がどのように変化するかを調べた。セル温度の測定は、セル外側でセルの高さの中央付近で恒温槽内の空気温度を測定することにより行った。偏極セルのセル長さは30cmとして、原料ガスの流速は30ml/minとした。20分偏極後にフローを開始して数分後の定常値を測定した。この結果を図8に示す。ガス組成は、5%Xe+95%N2(○)および10%Xe+90%N2(△)とし、5%Xe+95%N2については1気圧の場合も測定した(●)。図8に示すように、ガス組成がいずれの場合も110℃近辺が最適値となった。
これは、Rb蒸気密度とレーザー出力の兼ね合いで決まり、その他、Rb金属表面の腐食の程度にも依存する。一般にレーザ出力を上げた時はRb蒸気密度は高い方が適当であり、セル温度は高くなる傾向にある。図8では、0.15気圧では1気圧と比べて、約2倍の偏極率の改善が見られる。図8ではXe5%の方が、Xe10%より偏極率が約2倍高いが、これは表2のバッチ式実験の結果と対応する。
(実施例4:同位体濃縮129Xeガスの使用例、フロー式測定)
129Xeの磁気共鳴信号の高感度化のため、同位体濃縮したXeガスの使用が効果的である。ただし、経済的に高価であるので、高濃度の同位体濃縮Xeガスの利用は困難なことが多い。特にフロー系ではガスの使用量も多くなることから、希釈したXeガスの使用が歓迎されよう。また、動物に適用する場合は60%以上の高濃度Xeは麻酔作用を及ぼすので注意が必要であり、これより十分低濃度とすることが推奨される。低濃度Xeでは、低濃度による感度の低下に対し、希釈効果(クエンチとバッファー効果からなる)による感度向上があるので、用いる濃度は最適値に設定することが肝要となる。
同位体濃縮Xeガスでも天然のXeガスと基本的に同じ結果が得られることは表3から分かる。即ち、同じXe濃度で比較すれば、同位体濃度に比例した感度向上が実現する。表3の測定において、偏極セルは長さ10cmのものを使用した。
Figure 0005013907
偏極した混合ガスをそのまま測定に供する場合の磁気共鳴感度は、偏極率×129Xe同位体濃度に比例する。Xeを凍結して分離する場合は、偏極率の高いXeの生産能力を比較するには偏極率×129Xe同位体濃度×129Xe流量が妥当と言える。表3の結果では、5%Xeと70%Xeを比べると、濃度×偏極率で比較して70%Xeの方が約2倍感度が高い。ただし、麻酔の副作用や同位体濃縮ガスの価格を考えると、70%Xeは歓迎されない。10%以下のXe濃度では、図8に示すように、濃度×偏極率は5%Xeと殆んど同じである。5%以下のXe濃度を比較したのが、表4である。偏極率×濃度で比較して、5%:3%:1%=170:132:63で5%Xeガスが最も有効となる。1%ガスでは価格は1/5であるが偏極率×濃度が1/3となるので、あまり好ましくないが、信号強度が十分ある場合には、価格を優先して1%も使用が考えられる。以上より、Xe濃度としては、1−10%が妥当な範囲であり、3-10%がより好ましく、5%程度が推奨される。
同様な比較を1気圧の偏極実験に適用すると、偏極率×濃度で比較して、5%:3%:1%=125:87:41であり、やはり5%Xeガスが信号強度として一番強い結果となった。従って、混合ガスを偏極した後、そのままでNMRやMRI測定に供する場合は、5%Xeガスの使用が最適であることが分かった。
Figure 0005013907
本発明の一実施形態に係る偏極希ガスの製造方法を実施するための偏極希ガス製造装置の概略構成図である。 図1に示す偏極セルの変形例を示す概略断面図である。 偏極セル内の圧力と偏極率との関係の一例を示す図である。 原料ガスの流量と偏極率との関係の一例を示す図である。 偏極率の立ち上がり特性の一例を示す図である。 S/N比の経時変化の一例を示す図である。 S/N比の経時変化の他の例を示す図である。 偏極セルの加熱温度と偏極率との関係の一例を示す図である。
符号の説明
1a,1b 供給源
6 偏極セル
61 真空ポンプ
67 カバー部材
7 励起用光源

Claims (5)

  1. 希ガス及びクエンチガスを含む原料ガスを偏極セルに連続的に供給しながらアルカリ金属蒸気と混合させ、磁場内で前記偏極セル内に励起光を照射することにより偏極希ガスを製造して連続的に供給する方法であって、
    励起光の照射時における前記偏極セル内の圧力を、0.05気圧以上0.6気圧以下に維持し、
    前記偏極セル内に支持された光透過性材料からなるカバー部材によりアルカリ金属蒸気を前記偏極セルの一方に滞留させて原料ガスと混合させるとともに、生成された偏極希ガスを前記偏極セルの他方から排出させることを特徴とする偏極希ガスの製造方法。
  2. 前記原料ガスは、質量数4のヘリウム(4He)ガスを含まない請求項1に記載の偏極希ガスの製造方法。
  3. 希ガスがキセノンガスである請求項1又は2に記載の偏極希ガスの製造方法。
  4. 原料ガス中に含まれるキセノンガスの濃度が1〜10%である請求項3に記載の偏極希ガスの製造方法。
  5. 前記カバー部材は、前記偏極セル内に収容されたアルカリ金属の上方を覆うように設けられ、前記カバー部材に覆われたアルカリ金属に対して原料ガスを吹き付けるように構成されている請求項1から4のいずれかに記載の偏極希ガスの製造方法。
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