JP2005021829A - 緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを連続的に濃縮するための装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを濃縮するための簡便な装置であって、過分極キセノンガスの分極率の低下を抑制し得る装置を提供する。
【解決手段】緩衝用ガスは透過させるが過分極キセノンガスを透過させない選択透過膜(12)を用い、その膜不透過物側に膜不透過ガス流路(15)を設け、膜透過物側に膜透過ガス流路(16)を設ける。吸引手段(17)により膜不透過ガス流路(15)から選択透過膜(12)を介して膜透過ガス流路(15)に流入するガス流を生じさせる。膜不透過ガス流路(15)の出口において過分極キセノンガスが富化されたガス混合物を得るとともに、膜透過ガス流路(16)の出口において緩衝用ガスから実質的になる膜透過ガスを得る。
【選択図】 図1
【解決手段】緩衝用ガスは透過させるが過分極キセノンガスを透過させない選択透過膜(12)を用い、その膜不透過物側に膜不透過ガス流路(15)を設け、膜透過物側に膜透過ガス流路(16)を設ける。吸引手段(17)により膜不透過ガス流路(15)から選択透過膜(12)を介して膜透過ガス流路(15)に流入するガス流を生じさせる。膜不透過ガス流路(15)の出口において過分極キセノンガスが富化されたガス混合物を得るとともに、膜透過ガス流路(16)の出口において緩衝用ガスから実質的になる膜透過ガスを得る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを連続的に濃縮するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
キセノン129(129Xe)は、アルカリ金属蒸気の光ポンピング法により熱平衡状態の分極(スピン偏極ともいう)の10万倍以上の分極の増強が可能である。このように増強された過分極(超偏極)キセノンガスを用いて、物質の細密構造の分析や生体診断への応用研究・技術開発が盛んに行われている。特に、ヒトのMRIを用いた脳画像には多くの期待が寄せられている。これは、キセノンが脂質成分を多く含む脳組織に容易に蓄積されること、キセノン原子は、物質中でのケミカルシフト(周辺分子からの化学的な影響を受け、核磁気共鳴周波数がシフトする現象)効果を強く持ち、脳組織内でのプローブとしての機能が期待できるため、脳組織内の酸素濃度等従来のプロトンMRIでは計測が困難とされている情報が得られるからである。また、キセノンは血液中に容易に溶解するため、肺を経由するという、すなわち吸入という操作の容易な手法により人体へ導入することができることもその理由の1つである。
【0003】
しかしながら、現状では、世界のどの研究機関でも満足できる脳画像が得られていない。これは、原理的な限界を意味するものではなく、キセノンガスの分極率、MR装置の信号検出感度や画像化処理の問題であると考えられる。特に、キセノンガスの分極率は、信号の根源であり、第一に注目すべき要因である。実際、MRIによるヒト脳画像の撮影においては、分極率15%程度のキセノンガスが用いられているが、肺から脳へ運ばれる血液中で分極率が低下するために、吸入時のキセノンガスはより高い分極率を持つことが望まれている。
【0004】
ここで、過分極キセノンガスの量ではなく、キセノンガスの分極率のみに着目すると、キセノンガスに少量の窒素ガスと多量のヘリウムガスを添加したガス混合物を分極処理に供することにより、高い分極率を有するキセノンガスを生成させることができる。実際、ヘリウムガスを98体積%、キセノンガスを0.6体積%、窒素ガス残部からなるガス混合物を分極処理に供することによって65%の分極率を有するキセノンガスが得られたとの報告もある。これは、分極したキセノン原子は互いの散乱により分極を破壊してしまうが、多量に添加したヘリウムガスがこの散乱の機会を大幅に減少させたためであると考えられる。すなわち、ヘリウムガスは緩衝用ガスとして作用する。
【0005】
しかしながら、キセノンガスとともに多量のヘリウムガスを含有するガス混合物から得られる過分極キセノンガスは、その濃度が極めて低いので、その供給量を確保するために、これを濃縮しなければならない。
【0006】
従来、過分極キセノンガスを濃縮するために、液体窒素(沸点:77K)を用いて過分極キセノンガスをトラップすることが行われている(例えば、特許文献1および2参照)。この方法は、過分極キセノンガス(融点:166K)をヘリウム(融点:4K)等の緩衝用ガスとともに含有するガス混合物を液体窒素トラップに通じて過分極キセノンガスのみを固化させることにより捕捉するものである。液体窒素トラップに十分量の過分極キセノンが捕捉されたところで、液体窒素トラップを取り除き、固化した過分極キセノンを加熱してガス化させる。
【0007】
【特許文献1】
特表2000−507688
【0008】
【特許文献2】
特表2002−500337
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、液体窒素トラップを用いて過分極キセノンガスを濃縮する方法では、トラップと蒸発を必要とするので操作が複雑であるばかりでなく、キセノンの融点近傍では、キセノン原子間の距離が急激に縮まる結果、分極率の低下(緩和)が進行してしまう。また、ガス化後に得られる過分極キセノンガスは、その濃度がほぼ100%となるため、分極率低下の速度が速くなる。
【0010】
したがって、本発明は、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを濃縮するための簡便な装置であって、過分極キセノンガスの分極率の低下を抑制し得る装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく過分極(超偏極)キセノンガスの濃縮については、膜分離が有効であると考え、さらに研究した。その結果、分離膜として、過分極キセノンガスを選択的に透過させてこれを濃縮する膜ではなく、逆に過分極キセノンガスを透過させず、緩衝用ガスを選択的に透過させる膜を用いることにより、過分極キセノンガスの分極率を低下させる過程をできる限り排除し、分極率の有意の低下を抑制することができること、さらに処理中のガス混合物における過分極キセノンガスの分極率を低下させないために、ガス混合物に静磁場を付与することが有効であることを見いだした。本発明は、これらの知見に基づく。
【0012】
すなわち、本発明によれば、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを連続的に濃縮するための装置であって、(A)(a)緩衝用ガスを透過させるが過分極キセノンガスを透過させない選択透過膜、(b)前記選択透過膜の膜不透過物側に設けられ、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物を導入するガス混合物導入口と膜不透過ガスを導出する膜不透過ガス導出口とを有する膜不透過ガス流路、(c)前記選択透過膜の膜透過物側に設けられ、膜透過ガスを導出する膜透過ガス導出口を有する膜透過ガス流路、および(d)前記膜不透過ガス流路から前記選択透過膜を介して前記膜透過ガス流路に流入するガス流を生じさせるように前記膜透過ガス流路内を減圧し、濃縮された過分極キセノンガスを含む膜不透過ガスを前記膜不透過ガス導出口から導出させるとともに、前記緩衝用ガスから実質的になる膜透過ガスを前記膜透過ガス導出口から導出させるためのガス吸引手段を備える過分極キセノンガス連続濃縮機構と、(B)前記過分極キセノンガス連続濃縮機構の回りに設けられ、前記膜不透過ガス流路に導入される前記ガス混合物中の過分極キセノンの分極率の低下を抑制するように前記ガス混合物を静磁場の環境下に置くための磁界発生機構を備えることを特徴とする装置が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳しく説明する。なお、本発明において、上流および下流は、ガス混合物の流れ方向を基準とするものである。
【0014】
本発明の過分極キセノンガスの連続濃縮装置は、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを連続的に濃縮するための装置である。現在、過分極キセノンガスは、通常、緩衝用ガスとしてのヘリウムガスおよび窒素ガスとキセノンガスを含有するガス混合物(例えば、ヘリウム90体積%以上、キセノンガス0.5〜5体積%、残部窒素ガス)をアルカリ金属蒸気の存在下にレーザー照射して得られている。得られた過分極キセノンガスの分極率は、例えば30%〜65%である。本発明の装置は、このような過分極キセノンガスと緩衝用ガスを含有するガス混合物を処理して過分極キセノンガスを濃縮して取り出すために好適であるが、これらガス混合物に限定されるものではない。
【0015】
本発明の過分極キセノンガスの連続濃縮装置は、(A)過分極キセノンガス連続濃縮機構と、(B)過分極キセノンガス連続濃縮機構の回りに設けられ、ガス混合物を静磁場の環境下に置くための磁界発生機構を備える。
【0016】
過分極キセノンガス連続濃縮機構(A)は、(a)緩衝用ガスを透過させるが過分極キセノンガスを透過させない選択透過膜、(b)選択透過膜の膜不透過物側に設けられた膜不透過ガス流路、(c)選択透過膜の膜透過物側に設けられた膜透過ガス流路、および(d)膜不透過ガス流路から選択透過膜を介して膜透過ガス流路に流入するガス流を生じさせるように膜透過ガス流路内を減圧するためのガス吸引手段を有する。
【0017】
選択透過膜(a)は、ヘリウム等の緩衝用ガスを透過させるが過分極キセノンガスを透過させないものであれば特に制限はない。拡散係数の差により緩衝用ガス過分極キセノンガスを透過させるが過分極キセノンガスを透過させないいわゆる均質膜、および微細孔の孔径と対象原子の直径との差により緩衝用ガス(ヘリウムの原子直径:0.3nm)を透過させるが過分極キセノンガス(キセノンの原子直径:0.44nm)を透過させないいわゆる多孔質膜(分子ふるい膜)のいずれをも用いることができる。ヘリウムガス選択透過性均質膜としては、ポリジメチルシロキサンフィルム、酢酸セルロースフィルム、シリコーンフィルム、ポリイミドフィルム等の有機膜を例示することができる。また、ヘリウムガス選択透過性多孔質膜としては、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の有機膜、バイコールガラス膜、アルミナ膜、ジルコニア膜、炭素膜等の無機膜を例示することができる。本発明において、過分極キセノンガスの分極率の低下を抑制するという観点から、使用する選択透過膜は、多孔質膜であることが最も好ましい。特に、選択透過膜は、単位面積(cm2)、単位時間(秒(s))当たり標準温度、圧力(0℃、1気圧)(STP)でのヘリウムガス透過量が1.0×10−4cm3(STP)/cm2・s・cmHg)以上であることが好ましく、またヘリウムのキセノンに対する透過係数比(He/Xe透過係数比)が2.0以上であることが好ましい。選択透過膜がかかる透過特性を有することにより、過分極キセノンガスの選択透過膜との接触による分極率の低下がより一層抑制される。
【0018】
選択透過膜は、平膜であっても、筒状に形成されたものであってもよいが、濃縮効率の観点から、筒状に構成することが最も好ましい。また、選択透過膜は、自己支持性を持たない場合には、多孔性支持体上に支持させることができる。そのような多孔性支持体は、緩衝用ガスを自由に通過させるに十分に大きな気孔を有するものであり、例えば、アルミナ、ジルコニア等のセラミックの焼結体により形成することができる。
【0019】
なお、濃縮処理されるガス混合物が、緩衝用ガスとして窒素とヘリウムを含有する場合であって選択透過膜としてヘリウム選択透過膜を用いるとき、窒素ガスはそのヘリウム選択透過膜を透過し得ないので、過分極キセノンガスと同様に膜不透過ガス中に濃縮されるが、何ら問題はない。
【0020】
膜不透過ガス流路(b)は、選択透過膜の不透過物側(すなわち、ガス混合物の供給側)に設けられ、処理すべきガス混合物を導入するガス混合物導入口と膜不透過ガスを導出する不透過ガス導出口とを有する。ガス混合物導入口は、選択透過膜の上流端近傍に設けることが好ましく、不透過ガス導出口は、選択透過膜の下流端近傍に設けることが好ましい。
【0021】
膜透過ガス流路(c)は、選択透過膜の膜透過物側(すなわち、選択透過膜に対し、膜不透過物側とは反対側)に設けられ、膜透過ガスを導出する膜透過ガス導出口を有する。
【0022】
なお、選択透過膜(a)が筒状に形成されている場合、膜透過ガス流路(c)は、筒状選択透過膜の外側に規定され、膜不透過ガス流路(b)は、筒状選択透過膜の外側に規定されることが好ましい。
【0023】
ガス吸引手段(d)は、膜不透過ガス流路(b)から選択透過膜(a)を介して膜透過ガス流路(c)に流入するガス流を生じさせるものであり、それにより、濃縮された過分極キセノンガスを含む膜不透過ガスを膜不透過ガス導出口から導出させるとともに、緩衝用ガスから実質的になる膜透過ガスを膜透過ガス導出口から導出させる。ガス吸引手段(d)は、通常の減圧ポンプにより構成することができる。ガス吸引手段(d)は、例えばマスフローコントローラ等のガス吸引流量制御手段を含むことができる。ガス吸引流量制御手段は、ガス吸引流量を所望の値に設定し、それにより、膜不透過ガス流路(b)から選択透過膜(a)を介して膜透過ガス流路(c)に流入するガス流の流量を所望の値に設定するものであり、その流量調整により、膜不透過ガス流路(b)の導出口において得られる過分極キセノンガス富化膜不透過ガスにおける過分極キセノンガスの濃度を所望の値に設定することができる。例えば、ヒトの脳画像の撮影に際しては、過分極キセノンガスを約30体積%、酸素を約20体積%、緩衝用ガス(窒素またはヘリウムガス)を約50体積%含有する吸引ガスを吸引させることが行われているが、かかる組成の吸引ガスを酸素を添加することにより得られるように過分極キセノンガス富化膜不透過ガス中の過分極キセノンガス濃度を調節することができる。
【0024】
磁界発生機構(B)は、過分極キセノンガス連続濃縮機構(A)の回りに設けられ、膜不透過ガス流路に導入される前記ガス混合物中の過分極キセノンの分極率の低下を抑制するようにガス混合物を静磁場の環境下に置くためのものである。磁場の強度は、地磁気を含め環境磁場の影響を抑えるために、2ガウス以上、好ましくは1000ガウス以上、より好ましくは1ステラ(1万ガウス)以上とする。このような磁界発生機構は、磁石(永久磁石、電磁石)により構成することができる。かかる磁場の作用により、膜不透過ガス流路に導入される前記ガス混合物中の過分極キセノンガスの分極率の低下、特に選択透過膜表面上における分力率の低下が抑制され得る。
【0025】
なお、キセノンガスの分極装置のガス出口にガス混合物導入口131を接続することにより、分極装置から得られた過分極キセノンガス含有ガス混合物を連続して濃縮することができる。
【0026】
また、本発明の過分極キセノンガス連続濃縮装置は、脳組織画像の撮影に使用される過分極キセノンガスの濃縮ばかりでなく、多孔性物質の評価をはじめ化学分析にも使用される過分極キセノンガスの濃縮にも使用することができる。
【0027】
図1は、本発明の一実施の形態に係る過分極キセノンガス連続濃縮装置を示す概略断面図である。
【0028】
図1に示される過分極キセノンガス連続濃縮装置10は、筒状、好ましくは円筒状に形成された選択透過膜11を有する。この選択透過膜11は、円筒状の多孔性支持体12上に支持することができる。
【0029】
選択透過膜11を囲んで、これと同心円状に、例えばSUS製の円筒状外囲器13が設けられている。外囲器13の上流側端面および下流側端面は、それぞれ、封止部材14aおよび14bにより気密に封止されている。
【0030】
円筒状選択透過膜11の内側、図1の装置においてはより正確には円筒状支持体12の内側は、膜不透過ガス流路15を規定し、円筒状選択透過膜12の外側は、外囲器13との間に円環状の膜透過ガス流路16を規定する。
【0031】
外囲器13の下流端近傍には、膜透過ガス流路16と連通する膜透過ガス導出口131が設けられている。膜透過ガス導出口131は、減圧ポンプ17が接続されたラインL1に接続され、ラインL1には、減圧ポンプ17の上流側に、マスフローコントローラのような流量制御器18が設けられている。
【0032】
多孔性支持体12は、上流側および下流側において、外囲器13よりも外側に延出し、それぞれ、濃縮処理すべきガス混合物の導入口121および膜透過ガスの導出口122を構成している。
【0033】
膜不透過ガス流路15は、その導出口122においてラインL3を介して、過分極キセノンガスが富化されたガス混合物からなる膜不透過ガスを貯蔵するための容器19に接続されている。なお、導出口122には、容器19の代わりに、MRI装置のガス導入口を接続させることができる。
【0034】
以上のように構成される過分極キセノンガス連続濃縮機構の回りには、例えば磁石により構成される磁場発生機構20が設けられている。
【0035】
さて、操作に際しては、磁場発生機構20を駆動させて、静磁場を発生させ、ガス混合物導入口121から膜不透過ガス流路15内に緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物を連続的に導入するとともに、減圧ポンプ17を駆動させて、導入されたガス混合物を選択透過膜11(および支持体12)を介して吸引する。これにより、膜不透過ガス流路15から選択透過膜11を介して膜透過ガス流路16に流入するガス流が生じる。同時に、膜不透過物ガスは、膜不透過ガス流路15を上流側から下流側に向かって流れるとともに、膜透過ガスは、膜透過ガス流路16を上流側から下流側に向かって流れる。
【0036】
選択透過膜11は、ヘリウムのような緩衝用ガスを透過させるが過分極キセノンガスを透過させないものであるので、膜不透過ガス流路15を流れるガス混合物は選択透過膜11を通過する緩衝用ガスが貧化され、その結果過分極キセノンガスが富化・濃縮されて導出口122から順次取り出される。取り出された過分極キセノンガス富化ガス混合物は、後の使用まで、貯蔵容器19に貯蔵することができるし、またはMRI装置のガス導入口に連続して供給することもできる。
【0037】
他方、選択透過膜11を透過した膜不透過ガス(実質的に緩衝用ガスからなる)は、膜透過ガス導出口131から順次導出され、減圧ポンプ17の後流側に設けられた排出ラインL2から順次排出される。
【0038】
膜不透過ガスとして取り出される過分極キセノンガス富化ガス混合物の過分極キセノンガスの濃度は、ポンプ減圧ポンプ17によるガスの吸引流量により制御することができる。このガス吸引流量は、ガス流量調節器18によって制御することができる。
【0039】
以上のように、この過分極キセノンガスの濃縮プロセスにおいては、過分極キセノンガスの選択透過膜との接触機会が抑制されているため(特に、過分極キセノンガスが選択透過膜を透過しないため)、分極率の緩和が有効に抑制される。
【0040】
さらに、上記操作において、膜不透過ガス流路15中のガス混合物は、磁気発生機構により提供される静磁場中に常に置かれているので、ガス混合物中の過分極キセノンガスの分極率の低下が一層抑制される。
【0041】
加えて、本発明の装置から膜不透過ガスとして得られる過分極キセノンガス富化ガス混合物は、液体窒素トラップ法により得られるような過分極キセノンガスほぼ100%からなるものではなく、過分極キセノンガス濃度が例えば20体積%〜40体積%であるので、過分極キセノンガス富化ガス混合物中における過分極キセノン原子の衝突機会も減少し、それだけ分極率の低下も抑制される。
【0042】
以上、本発明をその実施の形態に沿って説明したが、本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0043】
【実施例】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0044】
図1に示す構成の装置を用いて、ヘリウムガス60体積%、窒素ガス20体積%および過分極キセノンガス20体積%(分極率2%)からなるガス混合物を過分極キセノンガスの濃縮に供した。用いた選択透過膜は、平均孔径4nmの多孔質ガラスを材質とする厚さ1.4mmの円筒状透過膜(内径4.8mm、外径7.6mm、長さ11cm)であった。SUS製外囲器の厚さは2mmであり、外径は45mmであった。また、ポンプによるガス吸引流量は、48mL/分であった。静磁場の強度は2〜4キロガウスの範囲であった。これら条件の下で、ヘリウムガス36体積%、窒素ガス32体積%および過分極キセノンガス32体積%からなるガス混合物を膜不透過ガス導出口から取り出すことができた。得られたガス混合物における過分極キセノンガスの分極率は1%であった。
【0045】
本実施例においては、使用した分極装置の能力が低いため、出発ガス混合物中の過分極キセノンガスの分極率が2%と低かったが、例えば60%以上の分極率を達成し得る分極装置から得られる過分極キセノンガス含有ガス混合物を用いれば、30%以上の分極率を有するキセノンガスが濃縮されたガス混合物を得ることができるものであり、このガス混合物は、実用上十分なものであるといえる。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを濃縮するための簡便な装置であって、過分極キセノンガスの分極率の低下を抑制し得る装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る過分極キセノンガス連続濃縮装置を示す概略断面図。
【符号の説明】
11…選択透過膜、12…支持体、13…外囲器、15…膜不透過ガス流路、16…膜透過ガス流路、17…減圧ポンプ、18…ガス吸引流量調節器、20…磁界発生機構
【発明の属する技術分野】
本発明は、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを連続的に濃縮するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
キセノン129(129Xe)は、アルカリ金属蒸気の光ポンピング法により熱平衡状態の分極(スピン偏極ともいう)の10万倍以上の分極の増強が可能である。このように増強された過分極(超偏極)キセノンガスを用いて、物質の細密構造の分析や生体診断への応用研究・技術開発が盛んに行われている。特に、ヒトのMRIを用いた脳画像には多くの期待が寄せられている。これは、キセノンが脂質成分を多く含む脳組織に容易に蓄積されること、キセノン原子は、物質中でのケミカルシフト(周辺分子からの化学的な影響を受け、核磁気共鳴周波数がシフトする現象)効果を強く持ち、脳組織内でのプローブとしての機能が期待できるため、脳組織内の酸素濃度等従来のプロトンMRIでは計測が困難とされている情報が得られるからである。また、キセノンは血液中に容易に溶解するため、肺を経由するという、すなわち吸入という操作の容易な手法により人体へ導入することができることもその理由の1つである。
【0003】
しかしながら、現状では、世界のどの研究機関でも満足できる脳画像が得られていない。これは、原理的な限界を意味するものではなく、キセノンガスの分極率、MR装置の信号検出感度や画像化処理の問題であると考えられる。特に、キセノンガスの分極率は、信号の根源であり、第一に注目すべき要因である。実際、MRIによるヒト脳画像の撮影においては、分極率15%程度のキセノンガスが用いられているが、肺から脳へ運ばれる血液中で分極率が低下するために、吸入時のキセノンガスはより高い分極率を持つことが望まれている。
【0004】
ここで、過分極キセノンガスの量ではなく、キセノンガスの分極率のみに着目すると、キセノンガスに少量の窒素ガスと多量のヘリウムガスを添加したガス混合物を分極処理に供することにより、高い分極率を有するキセノンガスを生成させることができる。実際、ヘリウムガスを98体積%、キセノンガスを0.6体積%、窒素ガス残部からなるガス混合物を分極処理に供することによって65%の分極率を有するキセノンガスが得られたとの報告もある。これは、分極したキセノン原子は互いの散乱により分極を破壊してしまうが、多量に添加したヘリウムガスがこの散乱の機会を大幅に減少させたためであると考えられる。すなわち、ヘリウムガスは緩衝用ガスとして作用する。
【0005】
しかしながら、キセノンガスとともに多量のヘリウムガスを含有するガス混合物から得られる過分極キセノンガスは、その濃度が極めて低いので、その供給量を確保するために、これを濃縮しなければならない。
【0006】
従来、過分極キセノンガスを濃縮するために、液体窒素(沸点:77K)を用いて過分極キセノンガスをトラップすることが行われている(例えば、特許文献1および2参照)。この方法は、過分極キセノンガス(融点:166K)をヘリウム(融点:4K)等の緩衝用ガスとともに含有するガス混合物を液体窒素トラップに通じて過分極キセノンガスのみを固化させることにより捕捉するものである。液体窒素トラップに十分量の過分極キセノンが捕捉されたところで、液体窒素トラップを取り除き、固化した過分極キセノンを加熱してガス化させる。
【0007】
【特許文献1】
特表2000−507688
【0008】
【特許文献2】
特表2002−500337
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、液体窒素トラップを用いて過分極キセノンガスを濃縮する方法では、トラップと蒸発を必要とするので操作が複雑であるばかりでなく、キセノンの融点近傍では、キセノン原子間の距離が急激に縮まる結果、分極率の低下(緩和)が進行してしまう。また、ガス化後に得られる過分極キセノンガスは、その濃度がほぼ100%となるため、分極率低下の速度が速くなる。
【0010】
したがって、本発明は、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを濃縮するための簡便な装置であって、過分極キセノンガスの分極率の低下を抑制し得る装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく過分極(超偏極)キセノンガスの濃縮については、膜分離が有効であると考え、さらに研究した。その結果、分離膜として、過分極キセノンガスを選択的に透過させてこれを濃縮する膜ではなく、逆に過分極キセノンガスを透過させず、緩衝用ガスを選択的に透過させる膜を用いることにより、過分極キセノンガスの分極率を低下させる過程をできる限り排除し、分極率の有意の低下を抑制することができること、さらに処理中のガス混合物における過分極キセノンガスの分極率を低下させないために、ガス混合物に静磁場を付与することが有効であることを見いだした。本発明は、これらの知見に基づく。
【0012】
すなわち、本発明によれば、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを連続的に濃縮するための装置であって、(A)(a)緩衝用ガスを透過させるが過分極キセノンガスを透過させない選択透過膜、(b)前記選択透過膜の膜不透過物側に設けられ、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物を導入するガス混合物導入口と膜不透過ガスを導出する膜不透過ガス導出口とを有する膜不透過ガス流路、(c)前記選択透過膜の膜透過物側に設けられ、膜透過ガスを導出する膜透過ガス導出口を有する膜透過ガス流路、および(d)前記膜不透過ガス流路から前記選択透過膜を介して前記膜透過ガス流路に流入するガス流を生じさせるように前記膜透過ガス流路内を減圧し、濃縮された過分極キセノンガスを含む膜不透過ガスを前記膜不透過ガス導出口から導出させるとともに、前記緩衝用ガスから実質的になる膜透過ガスを前記膜透過ガス導出口から導出させるためのガス吸引手段を備える過分極キセノンガス連続濃縮機構と、(B)前記過分極キセノンガス連続濃縮機構の回りに設けられ、前記膜不透過ガス流路に導入される前記ガス混合物中の過分極キセノンの分極率の低下を抑制するように前記ガス混合物を静磁場の環境下に置くための磁界発生機構を備えることを特徴とする装置が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳しく説明する。なお、本発明において、上流および下流は、ガス混合物の流れ方向を基準とするものである。
【0014】
本発明の過分極キセノンガスの連続濃縮装置は、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを連続的に濃縮するための装置である。現在、過分極キセノンガスは、通常、緩衝用ガスとしてのヘリウムガスおよび窒素ガスとキセノンガスを含有するガス混合物(例えば、ヘリウム90体積%以上、キセノンガス0.5〜5体積%、残部窒素ガス)をアルカリ金属蒸気の存在下にレーザー照射して得られている。得られた過分極キセノンガスの分極率は、例えば30%〜65%である。本発明の装置は、このような過分極キセノンガスと緩衝用ガスを含有するガス混合物を処理して過分極キセノンガスを濃縮して取り出すために好適であるが、これらガス混合物に限定されるものではない。
【0015】
本発明の過分極キセノンガスの連続濃縮装置は、(A)過分極キセノンガス連続濃縮機構と、(B)過分極キセノンガス連続濃縮機構の回りに設けられ、ガス混合物を静磁場の環境下に置くための磁界発生機構を備える。
【0016】
過分極キセノンガス連続濃縮機構(A)は、(a)緩衝用ガスを透過させるが過分極キセノンガスを透過させない選択透過膜、(b)選択透過膜の膜不透過物側に設けられた膜不透過ガス流路、(c)選択透過膜の膜透過物側に設けられた膜透過ガス流路、および(d)膜不透過ガス流路から選択透過膜を介して膜透過ガス流路に流入するガス流を生じさせるように膜透過ガス流路内を減圧するためのガス吸引手段を有する。
【0017】
選択透過膜(a)は、ヘリウム等の緩衝用ガスを透過させるが過分極キセノンガスを透過させないものであれば特に制限はない。拡散係数の差により緩衝用ガス過分極キセノンガスを透過させるが過分極キセノンガスを透過させないいわゆる均質膜、および微細孔の孔径と対象原子の直径との差により緩衝用ガス(ヘリウムの原子直径:0.3nm)を透過させるが過分極キセノンガス(キセノンの原子直径:0.44nm)を透過させないいわゆる多孔質膜(分子ふるい膜)のいずれをも用いることができる。ヘリウムガス選択透過性均質膜としては、ポリジメチルシロキサンフィルム、酢酸セルロースフィルム、シリコーンフィルム、ポリイミドフィルム等の有機膜を例示することができる。また、ヘリウムガス選択透過性多孔質膜としては、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の有機膜、バイコールガラス膜、アルミナ膜、ジルコニア膜、炭素膜等の無機膜を例示することができる。本発明において、過分極キセノンガスの分極率の低下を抑制するという観点から、使用する選択透過膜は、多孔質膜であることが最も好ましい。特に、選択透過膜は、単位面積(cm2)、単位時間(秒(s))当たり標準温度、圧力(0℃、1気圧)(STP)でのヘリウムガス透過量が1.0×10−4cm3(STP)/cm2・s・cmHg)以上であることが好ましく、またヘリウムのキセノンに対する透過係数比(He/Xe透過係数比)が2.0以上であることが好ましい。選択透過膜がかかる透過特性を有することにより、過分極キセノンガスの選択透過膜との接触による分極率の低下がより一層抑制される。
【0018】
選択透過膜は、平膜であっても、筒状に形成されたものであってもよいが、濃縮効率の観点から、筒状に構成することが最も好ましい。また、選択透過膜は、自己支持性を持たない場合には、多孔性支持体上に支持させることができる。そのような多孔性支持体は、緩衝用ガスを自由に通過させるに十分に大きな気孔を有するものであり、例えば、アルミナ、ジルコニア等のセラミックの焼結体により形成することができる。
【0019】
なお、濃縮処理されるガス混合物が、緩衝用ガスとして窒素とヘリウムを含有する場合であって選択透過膜としてヘリウム選択透過膜を用いるとき、窒素ガスはそのヘリウム選択透過膜を透過し得ないので、過分極キセノンガスと同様に膜不透過ガス中に濃縮されるが、何ら問題はない。
【0020】
膜不透過ガス流路(b)は、選択透過膜の不透過物側(すなわち、ガス混合物の供給側)に設けられ、処理すべきガス混合物を導入するガス混合物導入口と膜不透過ガスを導出する不透過ガス導出口とを有する。ガス混合物導入口は、選択透過膜の上流端近傍に設けることが好ましく、不透過ガス導出口は、選択透過膜の下流端近傍に設けることが好ましい。
【0021】
膜透過ガス流路(c)は、選択透過膜の膜透過物側(すなわち、選択透過膜に対し、膜不透過物側とは反対側)に設けられ、膜透過ガスを導出する膜透過ガス導出口を有する。
【0022】
なお、選択透過膜(a)が筒状に形成されている場合、膜透過ガス流路(c)は、筒状選択透過膜の外側に規定され、膜不透過ガス流路(b)は、筒状選択透過膜の外側に規定されることが好ましい。
【0023】
ガス吸引手段(d)は、膜不透過ガス流路(b)から選択透過膜(a)を介して膜透過ガス流路(c)に流入するガス流を生じさせるものであり、それにより、濃縮された過分極キセノンガスを含む膜不透過ガスを膜不透過ガス導出口から導出させるとともに、緩衝用ガスから実質的になる膜透過ガスを膜透過ガス導出口から導出させる。ガス吸引手段(d)は、通常の減圧ポンプにより構成することができる。ガス吸引手段(d)は、例えばマスフローコントローラ等のガス吸引流量制御手段を含むことができる。ガス吸引流量制御手段は、ガス吸引流量を所望の値に設定し、それにより、膜不透過ガス流路(b)から選択透過膜(a)を介して膜透過ガス流路(c)に流入するガス流の流量を所望の値に設定するものであり、その流量調整により、膜不透過ガス流路(b)の導出口において得られる過分極キセノンガス富化膜不透過ガスにおける過分極キセノンガスの濃度を所望の値に設定することができる。例えば、ヒトの脳画像の撮影に際しては、過分極キセノンガスを約30体積%、酸素を約20体積%、緩衝用ガス(窒素またはヘリウムガス)を約50体積%含有する吸引ガスを吸引させることが行われているが、かかる組成の吸引ガスを酸素を添加することにより得られるように過分極キセノンガス富化膜不透過ガス中の過分極キセノンガス濃度を調節することができる。
【0024】
磁界発生機構(B)は、過分極キセノンガス連続濃縮機構(A)の回りに設けられ、膜不透過ガス流路に導入される前記ガス混合物中の過分極キセノンの分極率の低下を抑制するようにガス混合物を静磁場の環境下に置くためのものである。磁場の強度は、地磁気を含め環境磁場の影響を抑えるために、2ガウス以上、好ましくは1000ガウス以上、より好ましくは1ステラ(1万ガウス)以上とする。このような磁界発生機構は、磁石(永久磁石、電磁石)により構成することができる。かかる磁場の作用により、膜不透過ガス流路に導入される前記ガス混合物中の過分極キセノンガスの分極率の低下、特に選択透過膜表面上における分力率の低下が抑制され得る。
【0025】
なお、キセノンガスの分極装置のガス出口にガス混合物導入口131を接続することにより、分極装置から得られた過分極キセノンガス含有ガス混合物を連続して濃縮することができる。
【0026】
また、本発明の過分極キセノンガス連続濃縮装置は、脳組織画像の撮影に使用される過分極キセノンガスの濃縮ばかりでなく、多孔性物質の評価をはじめ化学分析にも使用される過分極キセノンガスの濃縮にも使用することができる。
【0027】
図1は、本発明の一実施の形態に係る過分極キセノンガス連続濃縮装置を示す概略断面図である。
【0028】
図1に示される過分極キセノンガス連続濃縮装置10は、筒状、好ましくは円筒状に形成された選択透過膜11を有する。この選択透過膜11は、円筒状の多孔性支持体12上に支持することができる。
【0029】
選択透過膜11を囲んで、これと同心円状に、例えばSUS製の円筒状外囲器13が設けられている。外囲器13の上流側端面および下流側端面は、それぞれ、封止部材14aおよび14bにより気密に封止されている。
【0030】
円筒状選択透過膜11の内側、図1の装置においてはより正確には円筒状支持体12の内側は、膜不透過ガス流路15を規定し、円筒状選択透過膜12の外側は、外囲器13との間に円環状の膜透過ガス流路16を規定する。
【0031】
外囲器13の下流端近傍には、膜透過ガス流路16と連通する膜透過ガス導出口131が設けられている。膜透過ガス導出口131は、減圧ポンプ17が接続されたラインL1に接続され、ラインL1には、減圧ポンプ17の上流側に、マスフローコントローラのような流量制御器18が設けられている。
【0032】
多孔性支持体12は、上流側および下流側において、外囲器13よりも外側に延出し、それぞれ、濃縮処理すべきガス混合物の導入口121および膜透過ガスの導出口122を構成している。
【0033】
膜不透過ガス流路15は、その導出口122においてラインL3を介して、過分極キセノンガスが富化されたガス混合物からなる膜不透過ガスを貯蔵するための容器19に接続されている。なお、導出口122には、容器19の代わりに、MRI装置のガス導入口を接続させることができる。
【0034】
以上のように構成される過分極キセノンガス連続濃縮機構の回りには、例えば磁石により構成される磁場発生機構20が設けられている。
【0035】
さて、操作に際しては、磁場発生機構20を駆動させて、静磁場を発生させ、ガス混合物導入口121から膜不透過ガス流路15内に緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物を連続的に導入するとともに、減圧ポンプ17を駆動させて、導入されたガス混合物を選択透過膜11(および支持体12)を介して吸引する。これにより、膜不透過ガス流路15から選択透過膜11を介して膜透過ガス流路16に流入するガス流が生じる。同時に、膜不透過物ガスは、膜不透過ガス流路15を上流側から下流側に向かって流れるとともに、膜透過ガスは、膜透過ガス流路16を上流側から下流側に向かって流れる。
【0036】
選択透過膜11は、ヘリウムのような緩衝用ガスを透過させるが過分極キセノンガスを透過させないものであるので、膜不透過ガス流路15を流れるガス混合物は選択透過膜11を通過する緩衝用ガスが貧化され、その結果過分極キセノンガスが富化・濃縮されて導出口122から順次取り出される。取り出された過分極キセノンガス富化ガス混合物は、後の使用まで、貯蔵容器19に貯蔵することができるし、またはMRI装置のガス導入口に連続して供給することもできる。
【0037】
他方、選択透過膜11を透過した膜不透過ガス(実質的に緩衝用ガスからなる)は、膜透過ガス導出口131から順次導出され、減圧ポンプ17の後流側に設けられた排出ラインL2から順次排出される。
【0038】
膜不透過ガスとして取り出される過分極キセノンガス富化ガス混合物の過分極キセノンガスの濃度は、ポンプ減圧ポンプ17によるガスの吸引流量により制御することができる。このガス吸引流量は、ガス流量調節器18によって制御することができる。
【0039】
以上のように、この過分極キセノンガスの濃縮プロセスにおいては、過分極キセノンガスの選択透過膜との接触機会が抑制されているため(特に、過分極キセノンガスが選択透過膜を透過しないため)、分極率の緩和が有効に抑制される。
【0040】
さらに、上記操作において、膜不透過ガス流路15中のガス混合物は、磁気発生機構により提供される静磁場中に常に置かれているので、ガス混合物中の過分極キセノンガスの分極率の低下が一層抑制される。
【0041】
加えて、本発明の装置から膜不透過ガスとして得られる過分極キセノンガス富化ガス混合物は、液体窒素トラップ法により得られるような過分極キセノンガスほぼ100%からなるものではなく、過分極キセノンガス濃度が例えば20体積%〜40体積%であるので、過分極キセノンガス富化ガス混合物中における過分極キセノン原子の衝突機会も減少し、それだけ分極率の低下も抑制される。
【0042】
以上、本発明をその実施の形態に沿って説明したが、本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0043】
【実施例】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0044】
図1に示す構成の装置を用いて、ヘリウムガス60体積%、窒素ガス20体積%および過分極キセノンガス20体積%(分極率2%)からなるガス混合物を過分極キセノンガスの濃縮に供した。用いた選択透過膜は、平均孔径4nmの多孔質ガラスを材質とする厚さ1.4mmの円筒状透過膜(内径4.8mm、外径7.6mm、長さ11cm)であった。SUS製外囲器の厚さは2mmであり、外径は45mmであった。また、ポンプによるガス吸引流量は、48mL/分であった。静磁場の強度は2〜4キロガウスの範囲であった。これら条件の下で、ヘリウムガス36体積%、窒素ガス32体積%および過分極キセノンガス32体積%からなるガス混合物を膜不透過ガス導出口から取り出すことができた。得られたガス混合物における過分極キセノンガスの分極率は1%であった。
【0045】
本実施例においては、使用した分極装置の能力が低いため、出発ガス混合物中の過分極キセノンガスの分極率が2%と低かったが、例えば60%以上の分極率を達成し得る分極装置から得られる過分極キセノンガス含有ガス混合物を用いれば、30%以上の分極率を有するキセノンガスが濃縮されたガス混合物を得ることができるものであり、このガス混合物は、実用上十分なものであるといえる。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを濃縮するための簡便な装置であって、過分極キセノンガスの分極率の低下を抑制し得る装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る過分極キセノンガス連続濃縮装置を示す概略断面図。
【符号の説明】
11…選択透過膜、12…支持体、13…外囲器、15…膜不透過ガス流路、16…膜透過ガス流路、17…減圧ポンプ、18…ガス吸引流量調節器、20…磁界発生機構
Claims (6)
- 緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物から過分極キセノンガスを連続的に濃縮するための装置であって、
(A)(a)緩衝用ガスを透過させるが過分極キセノンガスを透過させない選択透過膜、(b)前記選択透過膜の膜不透過物側に設けられ、緩衝用ガスと過分極キセノンガスを含むガス混合物を導入するガス混合物導入口と膜不透過ガスを導出する膜不透過ガス導出口とを有する膜不透過ガス流路、(c)前記選択透過膜の膜透過物側に設けられ、膜透過ガスを導出する膜透過ガス導出口を有する膜透過ガス流路、および(d)前記膜不透過ガス流路から前記選択透過膜を介して前記膜透過ガス流路に流入するガス流を生じさせるように前記膜透過ガス流路内を減圧し、濃縮された過分極キセノンガスを含む膜不透過ガスを前記膜不透過ガス導出口から導出させるとともに、前記緩衝用ガスから実質的になる膜透過ガスを前記膜透過ガス導出口から導出させるためのガス吸引手段を備える過分極キセノンガス連続濃縮機構と、
(B)前記過分極キセノンガス連続濃縮機構の回りに設けられ、前記膜不透過ガス流路に導入される前記ガス混合物中の過分極キセノンの分極率の低下を抑制するように前記ガス混合物を静磁場の環境下に置くための磁界発生機構を備えることを特徴とする装置。 - 前記選択透過膜が、筒状に形成され、その内側に前記膜不透過ガス流路を規定し、その外側に前記膜透過ガス流路を規定することを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 前記ガス吸引手段が、ガス吸引流量制御手段を含み、該ガス吸引流量制御手段の制御により、前記膜不透過ガス中の過分極キセノンガスの濃度を調節することを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
- 前記選択透過膜が、多孔質分離膜であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の装置。
- 前記ガス混合物が、過分極キセノンガス、ヘリウムガスおよび窒素ガスを含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装置。
- 前記静磁場の強度が、2ガウス以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装置。
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