JP5503375B2 - セルロース誘導体の可塑剤 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロース誘導体を可塑化するのに有用な可塑剤(フルオレン化合物を含む可塑剤、特に、セルロース誘導体を溶融混練により可塑化可能な可塑剤)、セルロース誘導体の可塑化方法、及びセルロース誘導体とフルオレン化合物とを含むセルロース系樹脂組成物(特に、溶融混練可能な樹脂組成物)に関する。
化石資源の枯渇や地球温暖化問題などの資源・環境問題は、21世紀における最も重大な問題である。これらの問題を解決するためには、環境にやさしくかつ豊富で永続可能な代替資源技術の確立が必要である。
一方、セルロースなどのバイオマスは、近年、有機資源として注目されている。中でも、セルロースは、地球上に大量かつ広域に存在する天然高分子材料であり、機械的特性に優れ、しかも再生可能であるとともに、生分解性も高いため、資源及び環境問題を解決するための非常に有効な材料として、大きな期待が寄せられている。
しかし、セルロースは、融解又は軟化性が極めて低く、しかも溶剤に対する溶解性も低いため、合成高分子(熱可塑性高分子など)と同様の方法又は装置などにより、成形又は加工などの処理を行うことが困難である。そのため、セルロース自体の利用方法は極めて限られている。
そこで、セルロースに熱溶融性、溶剤溶解性を付与し、セルロースの成形又は加工性を改善したり、セルロースに種々の機能を付与して、合成高分子と同様に工業用材料として利用可能にするために、セルロースをセルロース誘導体に変換する種々の誘導体化技術が研究又は開発されている。現在では、数多くのセルロース誘導体が工業的に製造されているが、中でも、セルロースアセテートなどのセルロースエステルは、合成高分子と同様、プラスチック材料として汎用されている。例えば、液晶テレビ、ノートパソコン、携帯電話などに使用される液晶ディスプレイなどに不可欠な偏光板の保護フィルムなどに活用されている。特に、近年では、液晶ディスプレイの利用範囲が拡大している上、様々な分野で液晶化技術が採用されつつある。また、合成高分子の代替材料としての利用も拡大しつつある。そのため、プラスチック材料、特に、高機能性材料の分野などにおいても、セルロース誘導体は大きな可能性を秘めている。
しかし、セルロース誘導体は、上記のようにセルロースに比較すると、溶融又は溶解性が改善されているものの、合成高分子材料などと比較すると、溶融加工性、耐溶剤性、耐水性などの特性は、未だ不十分である。そのため、必然的に、利用できる分野又は用途も制限されてしまう。特に、高機能性材料には、種々の特性が要求されるため、コンパウンド性、成形性、加工性などが不十分であれば、要求される特性をセルロース誘導体に付与するのが難しくなる。特に、電子材料、光学材料などの分野で、セルロース誘導体を利用するには、より一層、性能を向上させたり、機能を付与する必要がある。
セルロース誘導体を成形又は加工処理するためには、溶剤溶解性、融解性、流動性(熱流動性)などを改善する必要がある。そのため、このような特性を改善する方法として、可塑剤によりセルロース誘導体を可塑化する方法が利用されている。
可塑化の方法としては、可塑剤をセルロース誘導体に添加する方法(外部可塑化)が工業的にも応用されているが、セルロース誘導体の溶融加工性を改善するには、低分子量の可塑剤を多量に添加する必要がある。しかし、多量の低分子量可塑剤を添加すると、セルロース誘導体の耐熱性及び機械特性の低下が生じたり、可塑剤がブリードアウトするなどの問題がある。
一方、グラフト化などにより、より大きな又は嵩高い分子を用いて、セルロース誘導体を修飾し(置換基としてセルロース誘導体に導入し)、セルロース誘導体の熱流動性を向上させる方法(内部の可塑化)も開発されている。例えば、特開2001−240794号公報(特許文献1)には、脂肪族又は脂環族のジエポキシ化合物と、セルロースアセテートとの混合に伴って、セルロースアセテートの遊離ヒドロキシル基の割合を調整することにより、両者を相溶化させ、溶剤を用いることなく、均一に混合できることが開示されている。特許文献1では、上記ジエポキシ化合物を70〜95重量%と多量に用いているものの、外部可塑化とは異なり、ブリードアウトは改善可能である。しかし、多量のジエポキシ化合物で修飾することにより、セルロース誘導体が本来有する優れた物性、例えば、機械特性などの性能も大きく低下するとともに、ジエポキシ化合物とセルロース誘導体とを反応させる必要があるため、単に可塑剤を添加する外部可塑化に比較して、経済的に不利であるため、工業的利用に適しているとは言えない。
また、溶剤溶解性を改善する方法として、例えば、特開2002−194228号公報(特許文献2)には、セルロースエステルなどの有機ポリマーに加水分解縮合可能な反応性金属を、溶剤中で混合し、ゾルゲル法を利用して加水分解縮合を行い、有機ポリマーに無機高分子をハイブリッドする方法が開示されている。このように、無機高分子を利用して溶剤溶解性を改善すると、成形又は加工性はある程度向上する。しかし、溶液状の樹脂組成物を用いると、成形又は加工方法が限定され、その結果、用途や利用分野などが大きく制限される。
特開2001−240794号公報(特許請求の範囲及び段落番号[0007]) 特開2002−194228号公報(特許請求の範囲、並びに段落番号[0026]及び[0027])
従って、本発明の目的は、融解性又は溶剤溶解性に劣るセルロース誘導体であっても、効果的に可塑化可能で、コンパウンド性(コンパウンド化の容易性)、成形性及び/又は加工性を改善可能な可塑剤、及びセルロース誘導体の可塑化方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどの熱分解温度と融点又は軟化点との差が小さなセルロース誘導体又は溶剤溶解性に劣るセルロース誘導体であっても可塑化可能な可塑剤、及びセルロース誘導体の可塑化方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、融解性に劣るセルロース誘導体であっても、溶融混練可能に可塑化できる可塑剤、及びセルロース誘導体の可塑化方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、溶融混練などの簡便な方法により、コンパウンド化、成形又は加工可能なセルロース系樹脂組成物を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、成形性に加え、透明性、耐熱性、耐溶剤性、耐水性、表面硬度などの特性に優れたセルロース系樹脂組成物、このような組成物を得るためのセルロース誘導体の可塑剤、及びセルロース誘導体の可塑化方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、溶融混練しても着色の少ないセルロース系樹脂組成物(又は成形体)及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定のフルオレン化合物が、セルロース誘導体を効果的に可塑化できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の可塑剤は、セルロース誘導体の可塑剤(セルロース誘導体を可塑化するための可塑剤)であって、下記式(1)で表されるフルオレン化合物を含有する。
Figure 0005503375
(式中、Aは少なくともベンゼン環骨格を有する芳香族炭化水素環を示し、Xはヘテロ原子含有官能基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又はN,N−二置換アミノ基を示し、Rは、炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基又は置換アミノ基を示し、kは0又は1以上の整数を示し、mは1〜3の整数を示し、n及びpは、同一又は異なって、0〜4の整数を示す)。
前記フルオレン化合物の式(1)において、Aはベンゼン環又はナフタレン環、Xは、ヒドロキシル基、エポキシ含有基、アミノ基、又はN−一置換アミノ基、RはC2−4アルキレン基、Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基、Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基又はN−一置換アミノ基、kは0〜3の整数、mは1又は2、n及びpは、同一又は異なって、0〜3の整数であってもよい。また、Aはベンゼン環又はナフタレン環、Xはヒドロキシル基、RはC2−4アルキレン基、Rは、C1−6アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子又はシアノ基、RはC1−6アルキル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基又はN−モノC1−6アルキルアミノ基、kは0〜2の整数、mは1であり、n及びpは、同一又は異なって、0〜2の整数であってもよい。このようなフルオレン化合物としては、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−C1−3アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−C1−3アルキル−4−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジC1−3アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、又は9,9−ビス(3,5−ジC1−3アルキル−4−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなどが例示できる。
前記可塑剤は、セルロース誘導体を溶融混練系で可塑化できる。また、上記可塑剤は、例えば、セルロースエステル、特に、セルローストリアセテートの可塑剤などであってもよい。
本発明のセルロース系樹脂組成物は、セルロース誘導体と、上記フルオレン化合物とを含有する。セルロース誘導体は、セルロースエステルやセルロースエーテルなどであってもよく、例えば、セルロースアシレート(セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースアセテートブチレートなど)であってもよい。フルオレン化合物とセルロース誘導体との割合(重量比)は、フルオレン化合物/セルロース誘導体=1/99〜60/40であってもよい。上記樹脂組成物は、溶融混練可能であってもよい。上記樹脂組成物は、さらにフェノール系化合物、アミン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物及びエポキシ系化合物から選択された少なくとも一種の安定化剤(特に、分岐アルキルフェニル基を有するフェノール系化合物と、分岐アルキルフェニル基を有するリン系化合物との組み合わせ)を含有していてもよい。前記安定化剤の割合はセルロース誘導体(特にセルローストリアセテート)及び可塑剤の合計100重量部に対して0.001〜10重量部程度であってもよい。
本発明には、セルロース誘導体に前記フルオレン化合物を混合し、前記セルロース誘導体を可塑化する方法も含まれる。このような方法では、特に、溶融混練により、セルロース誘導体にフルオレン化合物を混合することができる。
本発明には、不活性ガス雰囲気下、前記樹脂組成物を溶融混合して成形体を製造する方法も含まれる。さらに、本発明には、この製造方法で得られ、かつ波長500nmの光線透過率が30%以上である成形体も含まれる。
本発明には、前記樹脂組成物を溶媒に溶解した溶液を用いて、溶液キャスト法で成形体を製造する方法も含まれる。
本発明では、セルロース誘導体の可塑剤として、特定のフルオレン化合物を用いるので、融解性又は溶剤溶解性に劣るセルロース誘導体であっても、効果的に可塑化することができる。また、可塑化により、コンパウンド性、成形性及び/又は加工性などを改善することができる。特に、セルロース誘導体が熱分解温度と融点又は軟化点との差が近接し、また、溶剤溶解性に劣るようなセルロース誘導体、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロース誘導体であっても、上記フルオレン化合物又はこのフルオレン化合物を含む可塑剤を用いることにより、可塑化することが可能である。上記可塑剤は、特に、融解性に劣るセルロース誘導体(熱分解温度と融点又は軟化点との差が近接する場合も含む)であっても、溶融混練により可塑化することができる。また、本発明のセルロース系樹脂組成物は、流動性や溶剤溶解性に劣るセルロース誘導体を用いても、簡便な方法(溶融混練など)により、コンパウンド化、成形又は加工可能である。さらに、本発明では、セルロース誘導体と特定のフルオレン化合物とを組み合わせるので、成形性に加え、透明性、耐熱性、耐溶剤性、耐水性、表面硬度などの特性に優れたセルロース系樹脂組成物を得ることができる。また、このような樹脂組成物を得るためのセルロース誘導体の可塑剤、及びセルロース誘導体の可塑化方法を提供することができる。さらに、本発明では、溶融混練しても着色の少ないセルロース系樹脂組成物(又は成形体)を得ることができる。
図1は、実施例1〜3及び比較例2〜4で得られたシートの光線透過率(波長200〜800nmの光線に対する透過率)を示すグラフである。 図2は、実施例5及び比較例6で得られたシートの光線透過率(波長200〜800nmの光線に対する透過率)を示すグラフである。 図3は、実施例7〜9及び参考例1で得られたシートの光線透過率(波長300〜800nmの光線に対する透過率)を示すグラフである。
[フルオレン化合物]
本発明で用いるフルオレン化合物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物(低分子化合物)である。このようなフルオレン化合物は、カルド構造を取るため、従来、溶剤溶解性及び/又は融解(又は溶融)性が低く、コンパウンド化、成形又は加工が困難であったセルロース誘導体に対して、高い可塑化作用を有しており、セルロース誘導体の可塑剤として使用できる。このような可塑剤は、上記フルオレン化合物を含有する。
上記フルオレン化合物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物であればよく、例えば、下記式(1)で表されるフルオレン化合物であってもよい。なお、本発明で使用するフルオレン化合物には、9,9−ビスアリールフルオレン骨格が分子中に導入されたポリマーなどの比較的高分子量の化合物は含まないものとする。
Figure 0005503375
(式中、Aは少なくともベンゼン環骨格を有する芳香族炭化水素環を示し、Xはヘテロ原子含有官能基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは、炭化水素基、エーテル基(置換ヒドロキシル基)、チオエーテル基(置換チオール基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又はN,N−二置換アミノ基を示し、Rは、炭化水素基、ヒドロキシル基、エーテル基(置換ヒドロキシル基)、メルカプト基、チオエーテル基(置換チオール基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基又は置換アミノ基を示し、kは0又は1以上の整数を示し、mは1〜3の整数を示し、n及びpは、同一又は異なって、0〜4の整数を示す。)
上記式(1)において、環Aで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環の他、少なくともベンゼン環骨格を有する縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(インデン環、ナフタレン環などのC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環など)、縮合三環式炭化水素環(アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式炭化水素環など]などが挙げられる。
なお、フルオレンの9位に置換する2つの環Aは、異なっていてもよく、同一であってもよいが、通常、同一の環である場合が多い。
環Aのうち、ベンゼン環、ナフタレン環(特にベンゼン環)などが好ましい。なお、フルオレンの9位に置換する環Aの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Aがナフタレン環の場合、フルオレンの9位に置換する環Aに対応する基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよい。
前記式(1)において、Xで表されるヘテロ原子含有官能基としては、ヘテロ原子として、酸素、イオウ及び窒素原子から選択された少なくとも一種を有する官能基などが例示できる。このような官能基に含まれるヘテロ原子の数は、特に制限されないが、通常、1〜3個、好ましくは1又は2個であってもよい。前記官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、エポキシ含有基(エポキシ基、グリシジル基など)などの酸素原子含有官能基;メルカプト基などのイオウ原子含有官能基;アミノ基又はN−一置換アミノ基[例えば、メチルアミノ、エチルアミノ基などのN−モノアルキルアミノ基(N−モノC1−4アルキルアミノ基など)、ヒドロキシエチルアミノ基などのN−モノヒドロキシアルキルアミノ基(N−モノヒドロキシC1−4アルキルアミノ基など)などの窒素原子含有官能基などが例示できる。Xのうち、ヒドロキシル基、エポキシ含有基(グリシジル基など)、アミノ基又はN−一置換アミノ基などが好ましく、特に、ヒドロキシル基が好ましい。
前記式(1)において、基Rで表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(又は1,2−プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基が挙げられる。これらのアルキレン基のうち、特に、エチレン基が好ましい。なお、kが2以上の整数である場合、各オキシアルキレンユニットにおけるアルキレン基は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。また、2つの環Aにおいて、基Rは同一であっても、異なっていてもよく、同一である場合が多い。
オキシアルキレン基(OR)の繰り返し数(付加モル数)を示すkは、0〜15(例えば、0〜10)程度の範囲から選択でき、例えば0〜6、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2、特に、0又は1であってもよい。2つの環Aに結合するオキシアルキレン基は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。
前記式(1)において、環Aに置換した基−(OR−Xの個数を示すmは、好ましくは、1〜3の整数であり、さらに好ましくは1又は2であり、特に、1であってもよい。なお、基−(OR−Xの環Aにおける置換位置は特に制限されず、例えば、環Aがベンゼン環である場合には、フルオレン骨格の9位との結合位置(1位)に対して、2位、3位及び/又は4位のいずれであってもよい。例えば、mが2である場合、上記置換位置は、2位及び3位、2位及び4位、3位及び5位などであってもよいが、3位及び4位である場合が多い。また、環Aがナフタレン環の場合には、環Aとは直接結合していないベンゼン環の適当な置換位置(3級炭素原子)に置換してもよいが、環Aに結合したベンゼン環の適当な置換位置(3級炭素原子)に置換するのが好ましい。
前記式(1)において、R及びRで表される炭化水素基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基、さらに好ましくはC1−3アルキル基、特にメチル基又はエチル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基、好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(モノ又はジメチルフェニル基(トリル基、2−メチルフェニル基、キシリル基など)、ナフチル基などのC6−10アリール基、好ましくはフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などが例示できる。
また、R及びRで表されるエーテル基としては、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが例示できる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1−6アルコキシ基(好ましくはC1−4アルコキシ基、さらに好ましくはC1−3アルコキシ基など)が例示でき、シクロアルコキシ基としては、シクロへキシルオキシ基などのC5−8シクロアルキルオキシ基(C5−6シクロアルキルオキシ基など)が例示できる。さらに、アリールオキシ基としては、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基などが例示でき、アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基などが例示できる。
また、R及びRで表されるチオエーテル基(置換チオール基又は置換メルカプト基)としては、上記エーテル基に対応するチオエーテル基(アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基など)などが例示できる。
及びRで表されるアシル基としては、アセチル基などのC2−7アシル基(C2−5アシル基など)などが例示でき、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基などが例示できる。
及びRで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが例示できる。
で表されるN,N−二置換アミノ基としては、N,N−ジアルキルアミノ基(N,N−ジメチルアミノ基などのジC1−6アルキルアミノ基、好ましくはジC1−4アルキルアミノ基など)などが挙げられる。また、Rで表される置換アミノ基としては、N−一置換アミノ基[例えば、メチルアミノ、エチルアミノ基などのN−モノアルキルアミノ基(N−モノC1−6アルキルアミノ基、好ましくはN−モノC1−4アルキルアミノ基など)、ヒドロキシエチルアミノ基などのN−モノヒドロキシアルキルアミノ基(N−モノヒドロキシC1−6アルキルアミノ基、好ましくはN−モノヒドロキシC1−4アルキルアミノ基など)など]、N,N−二置換アミノ基[N,N−ジアルキルアミノ基(N,N−ジメチルアミノ基などのジC1−6アルキルアミノ基、好ましくはジC1−4アルキルアミノ基など)など]が例示できる。
なお、基Rは、フルオレン骨格の9位に置換した2つの環Aにおいて、それぞれ異なっていてもよく、同一であってもよい。また、環Aが複数の基Rを有する場合、Rの種類は一部又は全部が同一であってもよく、全てが異なっていてもよい。基Rは、フルオレン骨格の2つのベンゼン環において、それぞれ異なっていてもよく、同一であってもよい。また、ベンゼン環が、複数の基Rを有する場合、Rの種類は、一部又は全部が同一であってもよく、全てが異なっていてもよい。
基Rの個数(置換数)を示すn、及び基Rの個数を示すpは、それぞれ、好ましくは0〜3、さらに好ましくは0〜2の整数であってもよい。nとpとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、nは、フルオレン骨格の9位に置換した2つの環Aにおいて、それぞれ異なっていてもよいが、同一である場合が多い。pも、フルオレン骨格の2つのベンゼン環について、それぞれ異なっていてもよく、同一であってもよい。
前記式(1)において、例えば、下記の化合物(a)〜(e)などが好ましい。
(a)環Aがベンゼン環又はナフタレン環であり、Xが、ヒドロキシル基、エポキシ含有基、アミノ基、又はN−一置換アミノ基であり、RがC2−4アルキレン基であり、Rが、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、Rが、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基又はN−一置換アミノ基であり、kが0〜3の整数であり、mが1又は2であり、n及びpが、同一又は異なって、0〜3の整数である化合物;
(b)環Aがベンゼン環又はナフタレン環であり、Xがヒドロキシル基であり、RがC2−4アルキレン基であり、Rが、C1−6アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、RがC1−6アルキル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基又はN−モノC1−6アルキルアミノ基であり、kが0〜2の整数であり、mが1であり、n及びpが、同一又は異なって、0〜2の整数である化合物;
(c)環Aがベンゼン環であり、Xがヒドロキシル基であり、RがC2−3アルキレン基であり、Rが、C1−4アルキル基又はフェニル基であり、RがC1−4アルキル基、ヒドロキシル基であり、kが0又は1であり、mが1であり、n及びpが、同一又は異なって、0又は1である化合物;
(d)環Aがベンゼン環であり、Xがヒドロキシル基であり、RがC2−3アルキレン基であり、kが0又は1であり、mが1であり、n及びpが0である化合物;及び
(e)環Aがベンゼン環であり、Xがヒドロキシル基であり、Rがエチレン基であり、RがC1−3アルキル基であり、RがC1−3アルキル基であり、kが0又は1であり、mが1であり、n及びpが、同一又は異なって、0又は1である化合物など。
なお、好ましいフルオレン化合物には、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−C1−3アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−C1−3アルキル−4−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジC1−3アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(3,5−ジC1−3アルキル−4−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなども含まれる。
これらの化合物のうち、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)、9,9−ビス(3−C1−2アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス[3−C1−2アルキル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジC1−2アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス[3,5−ジC1−2アルキル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどが好ましく、特に、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−C1−2アルキル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、及び9,9−ビス[3,5−ジC1−2アルキル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンが好ましい。
これらのフルオレン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
なお、上記フルオレン化合物としては、市販品を用いてもよく、公知又は慣用の合成方法又はこれらの方法に準じた方法などにより得られる化合物を用いてもよい。フルオレン化合物は、例えば、(i)塩化水素ガス及びメルカプトカルボン酸の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させる方法(文献[J. Appl. Polym. Sci., 27(9), 3289, 1982]、特開平6−145087号公報、特開平8−217713号公報)、(ii)酸触媒(及びアルキルメルカプタン)の存在下、9−フルオレノンとアルキルフェノール類とを反応させる方法(特開2000−26349号公報)、(iii)塩酸及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させる方法(特開2002−47227号公報)、(iv)硫酸及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させ、炭化水素類と極性溶媒とで構成された晶析溶媒で晶析させてビスフェノールフルオレンを製造する方法(特開2003−221352号公報)などを利用することにより合成してもよい。
[セルロース誘導体]
前記フルオレン化合物が可塑化可能なセルロース誘導体又はフルオレン化合物とともにセルロース系樹脂組成物を構成するセルロース誘導体としては、特に制限されず、種々のセルロース誘導体、例えば、セルロースエステル、セルロースカーバメート(例えば、セルロースフェニルカーバメートなど)、セルロースエーテルなどが使用できる。
前記セルロースエステルとしては、セルロースアシレート、例えば、セルロースジアセテート(DAC)、セルローストリアセテート(TAC)などのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどのセルロースC3−5アシレート;セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)などのセルロースアセテート−C3−5アシレートなどのセルロースアシレートが挙げられる。また、前記セルロースエーテルとしては、アルキルセルロース(メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−6アルキル−セルロースなど)、ヒドロキシアルキルセルロース[ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などのヒドロキシC1−6アルキル−セルロースなど]、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシC2−6アルキルC1−6アルキルセルロースなど)、カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース(CMC)など)、アルキル−カルボキシアルキルセルロース(メチルカルボキシメチルセルロースなど)など]及びこれらの誘導体[カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのCMC塩(アルカリ金属塩など)など]などが例示できる。
上記セルロース誘導体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。セルロース誘導体のうち、セルロースエステル、セルロースエーテルなどが好ましく、セルロースアシレート、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートC3−4アシレートなどが特に好ましい。具体的には、セルロース誘導体として、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステルを用いてもよい。
このようなセルロース誘導体(セルロースエステルなど)は、熱分解温度と、融点又は軟化点とが近く、加熱により流動化することが困難である。そのため、通常、熱可塑性樹脂に利用される樹脂の溶融状態又は流動性を利用したコンパウンド化、成形又は加工方法などを、セルロース誘導体に適用できない場合が多い。中でもセルロースアセテート(特に、セルロースジアセテート及びセルローストリアセテート)は、溶剤に対する溶解性が低い上、加熱により流動化させるのが極めて困難である。また、従来の可塑剤により、セルロースエステルなどのセルロース誘導体を可塑化する場合には、多量の可塑剤を用いる必要があり、得られる樹脂組成物では、セルロース誘導体の特性を維持できない。しかし、上記フルオレン化合物とセルロース誘導体とを組み合わせると、セルロース誘導体の特性を維持しながらも、フルオレン化合物の使用により、結晶化度を低減でき、ガラス転移温度、融点、又は軟化点などを低下することができ、加熱により融解(溶融)又は軟化できるため、流動性を大きく改善できる。そのため、セルロースエステル(セルロースアセテートなど)などのセルロース誘導体を使用するにも拘わらず、溶融混練系でセルロース誘導体を可塑化することができる。そのため、セルロース誘導体と、前記フルオレン化合物を含むセルロース系樹脂組成物(セルロース誘導体組成物)を溶融混練系で、コンパウンド、成形又は加工することが可能である。すなわち、本発明の樹脂組成物は、セルロース系樹脂組成物でありながら、熱可塑性樹脂組成物であると言うことができる。
また、セルロース誘導体の結晶化度を低減(すなわち、非結晶部分の割合を大きく)できるため、ガラス転移温度及び/又は融点を低下させることができる。特に、セルロースジアセテートを用いると、融点の観測が困難になるほど、非結晶化することができる。また、従来、可塑化が極めて困難であったセルローストリアセテートを用いても、上記フルオレン化合物の作用により、ガラス転移温度及び融点を低下させることができ、高い可塑化効果が得られる。そのため、本発明のセルロース系樹脂組成物は、溶融混練することが可能である。
前記フルオレン化合物を含む可塑剤は、上記セルロース誘導体、特に、セルロースジアセテート及び/又はセルローストリアセテートなどのセルロースアセテートの可塑化に有効である。また、従来全く知られていなかったセルローストリアセテートの外部可塑化、特に、溶融混練系での可塑化は、前記フルオレン化合物により初めて達成されたものである。
本発明のセルロース系樹脂組成物では、セルロース誘導体の本来の軟化点(軟化温度Ts)、溶融開始温度Tfbなどを低下させることができる。例えば、セルロース誘導体のTsに比較して、樹脂組成物のTsを、5〜40℃、好ましくは10〜35℃、さらに好ましくは12〜30℃(例えば、15〜25℃)程度も低下することができる。また、Tfbについても、セルロース誘導体に比較して、樹脂組成物のTfbを、例えば、1〜50℃、好ましくは2〜40℃、さらに好ましくは3〜35℃程度も低下することができる。そのため、樹脂組成物では、高い溶融流動性が得られる。
また、樹脂組成物のガラス転移温度は、セルロース誘導体及びフルオレン化合物の種類や割合などに応じて、例えば、130〜200℃、好ましくは140〜190℃、さらに好ましくは150〜185℃程度であってもよい。
なお、前記フルオレン化合物は、セルロース誘導体との間の化学的相互作用のためか、分子レベル又は分子レベルに近い状態でセルロース誘導体に相溶可能である。そのため、フルオレン化合物をセルロース誘導体と、加熱下で混合するという簡便な方法により、セルロース誘導体を十分に可塑化することができる。また、フルオレン化合物の割合が多くても、ブリードアウトを防止又は抑制することができるとともに、比較的少量でも、セルロース誘導体を効果的に可塑化可能である。
そのため、本発明では、セルロース誘導体の優れた特性(透明性、機械特性など)を維持しつつも、フルオレン化合物の使用により、セルロース誘導体に、流動性(溶融流動性)、耐溶剤性(又は耐溶媒性)、耐水性、表面硬度などの諸特性を付与することができる。
なお、使用するフルオレン化合物の割合は、フルオレン化合物及び/又はセルロース誘導体の種類などに応じて、適宜選択でき、例えば、フルオレン化合物とセルロース誘導体との割合(フルオレン化合物/セルロース誘導体)は、重量比で、1/99〜60/40、好ましくは2/98〜50/50、さらに好ましくは3/97〜40/60(例えば、4/96〜30/70)程度であってもよい。
なお、セルロース誘導体と前記フルオレン化合物とを含有するセルロース系樹脂組成物は、使用される用途などに応じて、本発明の効果を損なわない範囲で必要により、慣用の添加剤、例えば、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、難燃剤、難燃助剤、他の可塑剤、耐衝撃改良剤、充填剤(又は補強剤)、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤、滑剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
本発明では、これらの添加剤のうち、成形体の着色を抑制できる点から、安定化剤を配合するのが好ましい。特に、本発明者らは、可塑化されたセルロース系樹脂組成物の溶融混練による着色について、セルロース誘導体としてセルローストリアセテートを用いると、溶融混練により激しく茶褐色に着色する現象を確認したが、安定化剤を配合することにより、着色を劇的に抑制できることを見出した。安定化剤には、フェノール系化合物、アミン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、エポキシ系化合物などが含まれる。
フェノール系化合物としては、複数の分岐アルキルフェニル基(分岐アルキル基が置換したフェニル基又は分岐アルキル基を有するフェニル基)を有するフェノール系(ヒンダードフェノール系)化合物{1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンなどのトリス(2−アルキル−4−ヒドロキシ−5−分岐C3−8アルキルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどトリス(3,5−ジ−分岐C3−8アルキル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどの1,3,5−トリアルキル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−分岐C3−8アルキル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのテトラキス[アルキレン−3−(3,5−ジ−分岐C3−8アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]C1−4アルカン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−分岐C3−8アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]など};ヒドラジン化合物{N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなど};ヒンダードフェノール系化合物[n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネートなど]などが挙げられる。フェノール系化合物は、例えば、チバ・ジャパン(株)製、商品名「Irganox1010」、「Irganox1076」、「Irganox1330」などとして入手できる。
アミン系化合物としては、例えば、テトラカルボン酸トリ又はテトラピペリジルエステル[例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステルなどのテトラカルボン酸テトラキス(テトラメチルピペリジル)エステル;ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]]などのヒンダードアミン系化合物(HALS);ナフチルアミン系化合物(フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、アンドール−α−ナフチルアミンなど);ジフェニルアミン系化合物[p−イソプロポキシジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、ビス(フェニルイソプロピリデン)−4,4’−ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニルプロピレンジアミンなど];p−フェニレンジアミン系化合物[N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルへプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミンなど]などが挙げられる。アミン系化合物は、例えば、チバ・ジャパン(株)製、商品名「Chimassorb944LD」、「Chimassorb2020FDL」、「Tinuvin622LD」などとして入手できる。
リン系化合物としては、例えば、分岐アルキルフェニル基を有するリン系化合物{トリス(2,4−分岐C3−8アルキル−ブチルフェニル)ホスファイト[トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなど]、テトラキス(2,4−ジ−分岐C3−8アルキルフェニル)−4,4’−C2−4アルキレンホスファイト[テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイト]などの複数のアルキルフェニル基を有するリン系化合物など};トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト;トリ−2,4−ジメチルフェニルホスフィン、トリ−2,4,6−トリメチルフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o−アニシルホスフィン、トリ−p−アニシルホスフィンなどのホスフィン化合物などが挙げられる。リン系化合物は、例えば、チバ・ジャパン(株)製、商品名「Irgafos168」などとして入手できる。
イオウ系化合物としては、例えば、ジ−ラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル(DLTDP)、ジ−ステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル(DSTDP)、ジ−ミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル(DMTDP)などのチオジC2−4カルボン酸ジC10−20アルキルエステルなどが挙げられる。
エポキシ系化合物としては、例えば、エポキシ化油脂(エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化アマニ油など)、エポキシ化脂肪酸アルキル(エポキシ化ステアリン酸メチル、エポキシ化ステアリン酸ブチル、エポキシ化ステアリン酸オクチルなどのエポキシ化C8−24脂肪酸C1−12アルキルなど)、エポキシ化ポリブタジエン、長鎖α−オレフィンオキシドなどが挙げられる。
これらの安定化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの安定化剤のうち、分岐アルキルフェニル基を有するフェノール系化合物(ヒンダードフェノール系化合物)、ヒンダードアミン系化合物、分岐アルキルフェニル基を有するリン系化合物が好ましく、ヒンダードフェノール系化合物と、分岐アルキルフェニル基を有するリン系化合物との組み合わせ[特に、複数の分岐C3−8アルキル(t−ブチルなど)フェニル基を有するヒンダードフェノール系化合物と、複数の分岐C3−8アルキル(t−ブチルなど)フェニル基を有するリン系化合物との組み合わせ]が好ましい。ヒンダードフェノール系化合物と、分岐アルキルフェニル基を有するリン系化合物との割合(重量比)は、前者/後者=99/1〜1/99程度の範囲から選択でき、例えば、20/80〜95/5、好ましくは30/70〜90/10、さらに好ましくは40/60〜85/15(特に50/50〜80/20)程度であってもよい。ヒンダードフェノール系化合物と、分岐アルキルフェニル基を有するリン系化合物とを組み合わせた安定化剤としては、例えば、チバ・ジャパン(株)製、商品名「Irganox B215」が入手できる。
安定化剤の割合は、着色性を向上させる点から、セルロース誘導体及び可塑剤の合計100重量部に対して、例えば、0.001〜10重量部(例えば、0.01〜8重量部)、好ましくは0.1〜7重量部(例えば、0.5〜6重量部)、さらに好ましくは1〜5重量部(特に2〜4重量部)程度である。
[セルロース誘導体の可塑化方法]
本発明の可塑化方法では、上記セルロース誘導体に、上記のフルオレン化合物を混合することにより、前記セルロース誘導体を可塑化する。
混合には、必要により、セルロース誘導体のドープを調製するのに使用される溶媒(溶剤)などを用いてもよいが、通常、溶媒を添加しなくても、効率よく、両者を混合し、セルロース誘導体を可塑化することができる。特に、本発明では、フルオレン化合物の作用により、セルロース誘導体とフルオレン化合物とを溶融混練することが可能である。そのため、混合には、慣用の熱可塑性樹脂組成物の調製法と同様の方法、例えば、押出機(一軸又は二軸押出機など)により溶融混練する方法などが利用できる。セルロース誘導体とフルオレン化合物とを押出機に供給し、押出機内で溶融混練した後、ペレット状の樹脂組成物を得てもよい。
溶融混練温度は、樹脂組成物の分解開始温度及び溶融開始温度などに応じて、適宜選択でき、通常、分解開始温度よりも低く、溶融開始温度よりも高い温度が選択され、分解開始温度よりも80〜150℃、好ましくは90〜140℃、さらに好ましくは95〜135℃程度低い温度である場合が多い。
本発明のセルロース系樹脂組成物は、溶融混練可能であるため、熱可塑性樹脂組成物に適用される慣用の成形法(例えば、押出成形、圧縮成形など)により、成形することもできる。
前述のように、安定化剤を配合することにより、溶融混練による樹脂組成物(特にセルローストリアセテートを含む樹脂組成物)の着色を抑制できるが、さらに不活性ガス(ヘリウム、窒素、アルゴンなど)の雰囲気下又は流通下で溶融混練することにより、樹脂組成物の着色を効果的に抑制できる。
さらに、セルロース系樹脂組成物は、溶剤に溶解して、慣用のコーティング又は流延などの方法(溶液キャスト法)により成形体を成形することもできる。セルロース系樹脂組成物を可溶な溶剤としては、例えば、環状エーテル類やハロゲン化炭化水素などを使用できる。
環状エーテル類としては、例えば、環状モノエーテル類(フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロフルフリルアルコール、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピランなど)、環状ジエーテル(1,2−ジオキソラン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサンなど)、環状トリエーテル類(トリオキサンなど)などが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロアルカン、クロロベンゼンなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。特に、環状エーテル類とハロゲン化炭化水素とを混合してもよく、例えば、1,4−ジオキサンなどの環状ジエーテルと、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素とを、前者/後者=99/1〜50/50、好ましくは97/3〜60/40、さらに好ましくは95/5〜80/20の割合(体積比)で混合してもよい。
これらのうち、THFなどの環状モノエーテル、1,4−ジオキサンなどの環状ジエーテール、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、環状ジエーテルとハロゲン化炭化水素との混合溶媒などが好ましい。特に、セルロース誘導体がセルロースジアセテートである場合、THFなどの環状モノエーテルであってもよく、セルローストリアセテートである場合、1,4−ジオキサンなどの環状ジエーテルとジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素との混合溶媒であってもよい。
前記溶媒中にセルロース系樹脂組成物を含有させた溶液の濃度は、例えば、1〜50重量%、好ましくは2〜30重量%、さらに好ましくは3〜20重量%(特に5〜10重量%)程度である。
本発明の成形体は、セルローストリアセテートで構成されていても、波長500nmの光線透過率が30%以上、好ましくは35%以上(例えば、35〜50%)程度であり、不活性ガス雰囲気下で安定化剤を含有させて製造した場合には、波長500nmの光線透過率が40%以上(例えば、40〜90%)、好ましくは50〜80%、さらに好ましくは55〜70%程度である。
セルロース系樹脂組成物の成形により得られる成形体は、高い透明性を保持しつつも、優れた耐溶剤性、耐水性(又は撥水性)及び表面硬度を有している。また、本発明のセルロース系樹脂組成物では、屈折率を改善することもでき、光学用途にも利用可能である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜5及び比較例1〜6
表に示す成分を表に示す割合で使用し、二軸押出機(テクノベル社製 KZW15/30 MG)を用いて表に示す温度にて溶融混錬し、ペレット状のセルロース系樹脂組成物を得た。得られたペレット状の樹脂組成物を、プレス成形機でホットプレスし、厚さ0.5mmのシートを作製した。
なお、比較例1及び5では、溶融混練することなく、セルロース誘導体をホットプレスし、シートを作製した。
また、実施例及び比較例で使用したフルオレン化合物、セルロース誘導体は、下記の通りである。
(a-1)BPEF:9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
(b-1)DAC:セルロースジアセテート(ダイセル化学工業(株)製、DAC L20)
(b-2)TAC1:セルローストリアセテート(ダイセル化学工業(株)製、TAC LT55)
(b-3)CAB:セルロースアセテートブチレート(アルドリッチ社製)
(b-4)TAC2:セルローストリアセテート(ダイセル化学工業(株)製、TAC LT35)
(c-1)DEP:ジエチルフタレート(ナカライテスク(株)製)
(d-1)THF:テトラヒドロフラン
(d-2)ジクロロメタン/ジオキサン:ジクロロメタンと1,4−ジオキサンとを、前者/後者=90/10の割合で(体積比)混合した混合溶媒。
また、実施例及び比較例で得られたペレット状樹脂組成物又はシートについて、下記の評価を行った。
(1)流動性
実施例及び比較例で得られたペレット、又はセルロース誘導体について、流動性試験機(島津製作所(株)製、フローテスター、CFT−50)を用いて樹脂組成物の軟化温度Ts(℃)及び溶融開始温度Tfb(℃)を測定し、流動性の指標とした。
(2)熱物性
実施例及び比較例で得られたペレット、又はセルロース誘導体について、示差走査型熱量計((株)リガク(RIGAKU)製、DSC 8230)を用い、ガラス転移温度Tg(℃)、結晶化温度Tc(℃)、結晶化エネルギーΔHc(J/g)、融点Tm(℃)、溶融エネルギーΔHm(J/g)を測定した。
(3)熱分解特性
実施例及び比較例で得られたペレットについて、熱重量分析装置((株)リガク(RIGAKU)製、TG−DTA、TGA 8120)を用い、加熱前のペレット状樹脂組成物と比較して重量が5重量%減少した温度(℃)、熱分解が開始した温度及び熱分解が終了した温度(℃)を測定した。
また、加熱前の樹脂組成物の重量(W)及び熱分解終了後の重量(W)値に基づいて、熱分解を含む加熱による重量の減少率[(W−W)/W)×100](%)を算出した。
(4)光線透過率
実施例及び比較例で得られたシートについて、分光光度計((株)島津製作所製、UV3600)を用い、波長200〜800nmの範囲の光線に対する透過率(光線透過率(%))を測定した。
実施例1〜3及び比較例2〜4で得られたシートについて、波長200〜800nmの光線に対する透過率のグラフを図1に示す。また、実施例5及び比較例6で得られたシートについて、波長200〜800nmの光線に対する透過率のグラフを図2に示す。
(5)屈折率
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物又はセルロース誘導体について、界面液として1−ブロモナフタレンを用い、アッベ屈折計((株)アタゴ製、DR−M2)により、温度20℃の条件で、F線での屈折率nF(波長486nmの干渉フィルター使用)を測定した。
なお、屈折率測定用のサンプルとしては、樹脂組成物又はセルロース誘導体を、プレス成形してフィルムを作製し、このフィルムをさらに約8×20mmの短冊状に切り出したフィルム片を用いた。
(6)耐水性
実施例及び比較例で得られたシートについて、接触角測定装置(協和界面科学(株)製、DROP MASTER 500)を用いて、シート表面に対する水の接触角を測定し、耐水性の指標とした。その結果、実施例のシートでは、従来の可塑剤であるDEPを用いた場合と同程度の接触角が得られ、十分な耐水性(撥水性)を有していることが明らかとなった。
結果を表1〜表3に示す。
Figure 0005503375
Figure 0005503375
Figure 0005503375
表から明らかなように、実施例1〜3では、BPEFをDACに混練することにより、樹脂組成物の軟化温度Ts及び溶融開始温度Tfbは、ともに、DAC自体(比較例1)の軟化温度及び溶融開始温度よりも低下した。また、実施例1、2及び3と、BPEFの割合が大きくなるほど、樹脂組成物の軟化温度及び溶融開始温度は低下した。このような結果から、BPEFは、DACに対する可塑化作用を有していることが明らかとなった。また、BPEFの割合が大きくなるほど、樹脂組成物の軟化点及び溶融開始温度が低下し、しかも組成物が単一のTgを示すことから、BPEFとDACとは、結合又は化学的に相互作用し、DAC中にBPEFが分子レベルで分散又は相溶していることがわかる。また、DACの融点Tmは、231.3℃であるのに対し、BPEFを混練した実施例1〜3の樹脂組成物では、融点が観測されなかった(表中、「無」と表記した)ことからも明らかなように、BPEFはDACの結晶化度を大幅に低下させた。
得られた樹脂組成物は、非晶性材料であった。なお、BPEFの混練により、ガラス転移温度Tgは、DAC自体のTgと比較して低下し、さらにBPEFの割合が増加するにつれて低下するものの、実施例の樹脂組成物では、実用上十分高いTgが得られた。
さらに、実施例1〜3に対応し、BPEFに代えてDEPを用いた比較例2〜4の樹脂組成物は、DAC自体の軟化温度よりも低温で軟化し、DEPの割合が大きくなるほど、樹脂組成物の軟化温度は低下した。すなわち、DEPはDACに対する可塑化作用を有していると言える。しかし、比較例2〜4の樹脂組成物では、溶融開始温度は、DAC自体の溶融開始温度よりも低下するものの、実施例1〜3の場合とは異なり、DEPの割合が大きくなるほど低下する現象は観察されなかった。また、Tgを検出することができなかった。このような結果から、DEPは、BPEFの場合とは異なり、単にDACにブレンド状態で分散されることにより、可塑化されることが明らかとなった。
また、実施例1〜3の樹脂組成物では、5重量%の重量減少が確認された温度(表中、5%重量減少温度で示す)が、非常に高く、高い耐熱分解性を有することが明らかとなった。
これに対して、BPEFに代えてDEPを用いた比較例2〜4の組成物では、実施例1〜3とは相違して融点が観測され、DACの結晶性が維持されていた。また、比較例2〜4の組成物の融点は、DACの融点よりも低下したものの、DEPの割合と、融点の低下との関係は特に見いだせなかった。さらに、比較例2〜4の樹脂組成物では、5%重量減少温度が、実施例1〜3の組成物と比較して、30℃以上も低い温度であり、耐熱分解性が不十分であった。
また、表から明らかなように、実施例4の組成物では、融点が観測されるものの、TAC1(比較例5)の融点に比べて、15℃も低くなっている。このことから、TAC1の結晶化度は大きく低減され、BPEFは明らかにTAC1を可塑化しており、得られる組成物は、非結晶性材料と同様に成形又は加工することが可能であることが明らかになった。なお、TAC1自体は、溶融状態での成形又は加工(押出加工、圧縮成形など)が困難であることが知られている。これに対し、実施例4の樹脂組成物は、TAC1を含有するにも拘わらず、溶融混練することができるとともに、圧縮成形(プレス成形)が可能であった。
実施例1〜3及び比較例2〜4で得られたシートについて、波長200〜800nmの光線に対する透過率(光線透過率)(%)を測定した結果を図1に示す。図1及び表から明らかなように、実施例のシートでは、波長400nm付近から、光線透過率が急激に上昇し、波長800nmでは、75〜80%を超える光線透過率が得られているのに対し、比較例のシートでは、光線透過率はほとんど変化せず、実質的に波長200〜800nmの光線を透過しないと言える。
また、BPEF及びCABを用いた実施例5及びCABのみを用いた比較例6で得られたシートについての波長200〜800nmの光線に対する透過率(%)を図2に示す。この図2及び上記表の結果から明らかなように、比較例6では、波長が320nm未満である光線に対する透過率は実施例5よりも高いものの、320nm以上の波長の光線に対する透過率は高い。また、この高い光線透過率は、波長320nm以上では、光線の波長には影響されないことがわかる。すなわち、実施例5のシートは、可視光領域及び近赤外領域の波長の光線に対して、高い透過率を示した。
また、屈折率についても、実施例5のシートは、比較例6のシートに比較して、顕著に高くなっているのがわかる。
なお、上記のように、実施例のシートは、従来の可塑剤を用いた比較例のシートと同程度の実用上十分な耐水性(撥水性)を有しているので、このようなシートは、耐水性と他の特性とをバランスよく兼ね備えていると言える。
実施例7〜9及び参考例1
表4に示す成分を表4に示す割合で使用し、二軸押出機(テクノベル社製 KZW15/30 MG)を用いて以下に示す温度にて溶融混錬し、ペレット状のセルロース系樹脂組成物を得た。得られたペレット状の樹脂組成物を、プレス成形機でホットプレスし、厚さ0.5mmのシートを作製した。なお、混練条件は、いずれの実施例及び比較例も以下の通りであるが、実施例7〜8及び参考例1では空気中で混練を行ったのに対して、実施例9では窒素ガスを100ml/分で送り込み、窒素ガス流通下で混練を行った。実施例及び比較例で使用したフルオレン化合物、セルロース誘導体は、前記と同様であり、安定化剤として、チバ・ジャパン(株)製、商品名「Irganox B215」を使用した。
(溶融混練条件)
温度:シリンダー温度(C1:199℃、C2:263℃、C3:285℃、C4:273℃)、ダイ温度(270℃)、樹脂温度(270℃)
混練速度(90rpm)、供給速度(1700rpm)、電流値(6.5A)
Figure 0005503375
実施例7で得られたシートは、やや褐色を有していたが、透明であった。実施例8で得られたシートは、淡い褐色を帯びていたが、透明であり、b*値は12.5であった。実施例9で得られたシートは、淡い黄色を有していたが、b*値は21.0であり、高い透明性を保持していた。これらに対して、参考例1で得られたシートは、茶褐色に変色していた。
なお、色目(着色度合い)を示すb*値は、測色色差計(日本電色工業(株)製「SQ2000」)を用いて、JIS K7105に準拠して透過モードにて測定した。
実施例7〜9及び参考例1で得られたシートについて、波長300〜800nmの光線に対する透過率(光線透過率)(%)を測定した結果を図3に示す。図3から明らかなように、実施例のシートでは、波長400nm付近から、光線透過率が急激に上昇し、波長800nmでは、60%を超える光線透過率が得られているのに対し、比較例のシートでは、光線透過率は緩やかに上昇するに過ぎず、波長800nmでも50%未満であった。特に、実施例9のシートでは、波長400nmにおいて40%近い透過率を示し、波長500nmにおいて60%程度の透過率を示した。
実施例10〜15及び比較例7〜8
表5に示す酢酸セルロース(又は酢酸セルロース及びBPEF)を、表5に示す溶媒に分散させて、透明で均一な溶液になるまで攪拌した。得られた溶液を溶液キャスト法で、支持体の上に流延してフィルムを作製した。得られたフィルムについて、ガラス転移温度、線膨張係数、全光線透過率を測定した結果を表6に示す。なお、ガラス転移温度及び線膨張係数を測定したフィルムの厚み、全光線透過率を測定したフィルムの厚みを、それぞれ表7に示す。
Figure 0005503375
Figure 0005503375
Figure 0005503375
表6の結果から、BPEFの割合が増加するにつれて、ガラス転移温度が低下し、線膨張係数が増加する傾向がみてとれる。すなわち、酢酸セルロースに対して、BPEFによる可塑剤としての効果が発現している。逆に、いずれのフィルムも透明性が高く、全光線透過率のBPEF量に対する依存性が低いため、BPEFと酢酸セルロースとの相溶性は高いと推測できる。
なお、実施例10〜15及び比較例7〜8で得られたフィルムについて、線膨張係数は、熱機械分析装置((株)リガク(RIGAKU)製、Thermo plus TMA8310)を用いて、5℃/分の加熱速度、空気雰囲気でTMA分析を行った。15mm(長さ)×5mm(幅)サイズのテストサンプルに対して、サンプル内部の応力を除去するため、まず室温〜ガラス転移温度での温度範囲内でファーストランを行った。その後、室温まで急冷し、セカンドランで測定した結果を採用した。
全光線透過率は、ヘイズメーターを用いて測定した。
本発明の可塑剤は、特定のフルオレン化合物を含有するため、従来、溶融混練が困難であったセルロース誘導体であっても、有効に可塑化することができ、前記フルオレン化合物とセルロース誘導体と含む樹脂組成物では、高いコンパウンド性、成形性又は加工性が得られる。そのため、用途に応じて、溶液キャストなどにより成形される分野に加えて、押出成形又は圧縮成形などにより得られる成形体が必要とされる分野、例えば、液晶ディスプレイなどの光学用途などに利用できる。また、セルロース系樹脂組成物は、高い屈折率を示すため、新たな光学材料として有用である。

Claims (14)

  1. セルロースエステルと、下記式(1)で表されるフルオレン化合物とを含有するセルロース系樹脂組成物
    Figure 0005503375
    (式中、Aは少なくともベンゼン環骨格を有する芳香族炭化水素環を示し、Xはヘテロ原子含有官能基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又はN,N−二置換アミノ基を示し、Rは、炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基又は置換アミノ基を示し、kは0又は1以上の整数を示し、mは1〜3の整数を示し、n及びpは、同一又は異なって、0〜4の整数を示す。)
  2. フルオレン化合物が、式(1)において、Aがベンゼン環又はナフタレン環であり、Xが、ヒドロキシル基、エポキシ含有基、アミノ基、又はN−一置換アミノ基であり、RがC2−4アルキレン基であり、Rが、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、Rが、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基又はN−一置換アミノ基であり、kは0〜3の整数であり、mが1又は2であり、n及びpが、同一又は異なって、0〜3の整数である化合物である請求項1記載の樹脂組成物
  3. フルオレン化合物が、式(1)において、Aがベンゼン環又はナフタレン環であり、Xがヒドロキシル基であり、RがC2−4アルキレン基であり、Rが、C1−6アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子又はシアノ基であり、RがC1−6アルキル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基又はN−モノC1−6アルキルアミノ基であり、kが0〜2の整数であり、mが1であり、n及びpが、同一又は異なって、0〜2の整数である化合物である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
  4. フルオレン化合物が、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−C1−3アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−C1−3アルキル−4−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジC1−3アルキル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、又は9,9−ビス(3,5−ジC1−3アルキル−4−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンである請求項1〜のいずれかの項に記載の樹脂組成物
  5. セルロースエステルが、セルローストリアセテートである請求項1〜のいずれかの項に記載の樹脂組成物
  6. フルオレン化合物とセルロースエステルとを、フルオレン化合物/セルロースエステル=1/99〜60/40の割合(重量比)で含有する請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 溶融混練可能な請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
  8. さらにフェノール系化合物、アミン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物及びエポキシ系化合物から選択された少なくとも一種の安定化剤を含有する請求項のいずれかに記載の樹脂組成物。
  9. 定化剤が分岐アルキルフェニル基を有するフェノール系化合物と、分岐アルキルフェニル基を有するリン系化合物との組み合わせであり、かつ安定化剤の割合がセルロースエステル及びフルオレン化合物の合計100重量部に対して0.001〜10重量部である請求項記載の樹脂組成物。
  10. セルロースエステルに請求項1〜4のいずれかに記載のフルオレン化合物を混合し、前記セルロースエステルを可塑化する方法。
  11. セルロースエステルにフルオレン化合物を溶融混練により混合する請求項10記載の可塑化方法。
  12. 不活性ガス雰囲気下、請求項又は記載の樹脂組成物を溶融混合して成形体を製造する方法。
  13. 請求項12記載の製造方法で得られ、かつ波長500nmの光線透過率が30%以上である成形体。
  14. 請求項記載の樹脂組成物を溶媒に溶解した溶液を用いて、溶液キャスト法で成形体を製造する方法。
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