以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるアバランシェフォトダイオードの構成を示す構成図である。図1では、断面を模式的に示している。
このアバランシェフォトダイオードは、例えば、鉄をドープすることで高抵抗とされた半絶縁性のInPからなる基板101と、アンチモン(Sb)を含むp型のIII−V族化合物半導体から構成されて基板101の上に形成されたp型コンタクト層102と、Sbを含むIII−V族化合物半導体から構成されてp型コンタクト層102の上に形成された光吸収層103とを備える。
また、実施の形態1におけるアバランシェフォトダイオードは、p型のIII−V族化合物半導体から構成されて光吸収層103の上に形成された電界制御層104と、アンドープのIII−V族化合物半導体から構成されて電界制御層104の上に形成された増倍層105と、n型のIII−V族化合物半導体から構成されて増倍層105の上に形成されたn型コンタクト層106とを備える。また、n型コンタクト層106には、n電極107が形成され、p型コンタクト層102には、p電極108が形成されている。
また、実施の形態1におけるアバランシェフォトダイオードにおいて、光吸収層103は、対象とする光の波長に対応するバンドギャップエネルギーを有し、n型コンタクト層106,増倍層105,および電界制御層104は、光吸収層103より大きなバンドギャップエネルギーを有するものとされている。加えて、p型コンタクト層102は、炭素(C)を不純物として導入することでp型とされている。なお、光吸収層103は、p型コンタクト層102よりも不純物濃度が低い状態とされている。光吸収層103は、例えば、アンドープとされていればよい。
例えば、p型コンタクト層102は、不純物として炭素が導入されたp型のGaAs0.5Sb0.5から構成されていればよい。また、光吸収層103は、アンドープのGaAs0.5Sb0.5より構成されていればよい。このように、p型コンタクト層102を光吸収層と同じ化合物半導体から構成することで、後述するように高感度でありながら走行帯域を広帯域化することが可能になるが、必須の構成ではない。また、電界制御層104は、p型としたInAlAsから構成されていればよい。また、増倍層105は、アンドープのInAlAsから構成されていればよい。また、n型コンタクト層106は、n型のInGaAsPから構成されていればよい。
なお、光吸収層103,電界制御層104,増倍層105,およびn型コンタクト層106は、所望とする形状にパターニングされ、例えば、よく知られたメサ構造とされている。
ここで、実施の形態1におけるアバランシェフォトダイオードの製造方法について簡単に説明する。まず、半絶縁性のInPからなる基板101上に、炭素を不純物としてドーピングしたp型のGaAs0.5Sb0.5(p型コンタクト層102)、アンドープのGaAs0.5Sb0.5(光吸収層103)、Znを不純物としてドーピングしたp型のInAlAs(電界制御層104)、アンドープのInAlAs(増倍層105)、およびSiを不純物としてドーピングしたn型のInGaAsP(n型コンタクト層106)をエピタキシャル成長により順次堆積する。これらは、よく知られた有機金属気相成長(MOVPE)法により形成すればよい。
次に、n型のInGaAsPの層の上に、n電極107を形成する。例えば、n電極107となる領域に開口部を備えるレジストマスクパターンを形成し、この上に、電子ビーム蒸着法により、チタン層/白金層/金層の3層積層膜を形成する。この後、レジストマスクパターンを除去すれば、n型のInGaAsPの層(n型コンタクト層106)にオーミック接続するn電極107が形成できる。これは、いわゆるリフトオフ法と呼ばれる製造方法である。
次に、公知のリソグラフィー技術およびエッチング技術(ウエットエッチング)により、上述したアンドープのGaAs0.5Sb0.5,p型のInAlAs,アンドープのInAlAs,およびn型のInGaAsPの層をパターニングし、所望の形状(メサ形状)とした光吸収層103,電界制御層104,増倍層105,n型コンタクト層106を形成する。この後、上記パターニングにより露出したp型コンタクト層102の上に、p電極108を形成する。p電極108は、チタン層/白金層/金層の3層構造とする。n電極107と同様に、電子ビーム蒸着法とリフトオフ法とによりp電極108を形成すればよい。
上述した実施の形態1におけるアバランシェフォトダイオードは、まず、炭素をドーパントしたSbを含むp型のIII−V族化合物半導体(例えばGaAs0.5Sb0.5)からp型コンタクト層102を構成しているので、他のIII−V族化合物半導体と比較して、より高濃度にp型ドーピングが行える。一般的なIII−V族化合物半導体に対し、p型の高濃度のドーピングは困難であるが、V族元素としてSbを用いた化合物半導体に対してドーパントとして炭素を用いた場合、高濃度のpドーピングが可能であることが知られている(非特許文献5参照)。このため、p型コンタクト層102の抵抗を低減することができ、素子全体の抵抗が低減でき、CR帯域を拡大することができる。
また、光吸収層103を、Sbを含むIII−V族化合物半導体(例えば、GaAs0.5Sb0.5)から構成したので、まず、バンドギャップはInGaAsなどと同じであるが、伝導帯および価電子帯のエネルギー位置をより高い状態とすることができる。このため、光吸収層103の上に形成されるよりバンドギャップの大きい電界制御層104に対し、伝導帯のオフセットは小さくなり、価電子帯のオフセットは大きくなる。
この構造では、まず、光吸収層103の伝導帯端と電界制御層104の伝導帯端との差が小さくなるので、光吸収層103から増倍層105に移動する電子にとっては、バリアが小さくなったことになり、通過しやすい状態となる。また、電界制御層104の価電子帯端から見て光吸収層103の価電子帯端がより高いエネルギー状態になるので、増倍層105から光吸収層103に移動する正孔にとっては、光吸収層103と電界制御層104とのヘテロ界面で加速されることになる。
また、一般的なアバランシェフォトダイオードにおいては、電圧印加に伴って増倍層の電界強度が高くなると共に、光吸収層の電界強度も高くなる。従来より光吸収層として用いられてきたInGaAsは、電子の有効質量が小さいため、アバランシェフォトダイオードが高増倍率で動作するに従って、InGaAsの電界強度も強くなり、トンネル電流が生じやすい状態であった。これを避けるために、InGaAsから光吸収層を構成しているアバランシェフォトダイオードは、オン電圧を高電圧に設定することによって、増倍層の電界強度が高い状態にあっても、InGaAsの電界強度は小さくなるように設計されてきた。
これに対し、GaAsSbは、InGaAsと比較して電子有効質量が大きく、トンネル電流が生じづらい。言い換えると、Sbを含むIII−V族化合物半導体は、アンドープとする光吸収層としてよりブレークダウンしづらい材料であるため、オン電圧をより低電圧側に設定することができる。同時に、p型としている電界制御層104のドーピング濃度に一定の揺らぎがあっても、アンドープとしている光吸収層103がブレークダウンしづらい。この結果、ウエハ上に多数の素子を同時に形成している中でドーピング濃度に一定のバラツキが生じても、これら素子を不良とすることなく用いることができるので、ウエハレベルでの歩留まりを向上させることができる。
これらの結果、実施の形態1におけるアバランシェフォトダイオードによれば、素子全体の抵抗が低減でき、CR帯域を拡大することができる上に、より高速に動作する状態が容易に得られるようになる。このように、本実施の形態によれば、基板の側をp型とする反転型のアバランシェフォトダイオードにおいて、p型コンタクト層の抵抗を低減し、より広帯域な特性が実現できるようになる。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図2は、本発明の実施の形態2におけるアバランシェフォトダイオードの構成を示す構成図である。図2では、断面を模式的に示している。
このアバランシェフォトダイオードは、例えば、鉄をドープすることで高抵抗とされた半絶縁性のInPからなる基板201と、Sbを含むp型のIII−V族化合物半導体から構成されて基板201の上に形成されたp型コンタクト層202と、Sbを含むIII−V族化合物半導体から構成されてp型コンタクト層202の上に形成された光吸収層203とを備える。
また、実施の形態2におけるアバランシェフォトダイオードは、p型のIII−V族化合物半導体から構成されて光吸収層203の上に形成された第1電界制御層204と、アンドープのIII−V族化合物半導体から構成されて第1電界制御層204の上に形成された増倍層205と、n型のIII−V族化合物半導体から構成されて増倍層205の上に形成された第2電界制御層206と、アンドープのIII−V族化合物半導体から構成されて第2電界制御層206の上に形成された電子走行層207とを備える。
また、n型のIII−V族化合物半導体から構成されて電子走行層207より小さい面積で電子走行層207の上に形成されたn型コンタクト層208を備える。また、n型コンタクト層208には、n電極209が形成され、p型コンタクト層202には、p電極210が形成されている。
また、実施の形態2におけるアバランシェフォトダイオードにおいて、光吸収層203は、対象とする光の波長に対応するバンドギャップエネルギーを有し、n型コンタクト層208,第1電界制御層204,増倍層205,第2電界制御層206,および電子走行層207は、光吸収層203より大きなバンドギャップエネルギーを有するものとされている。また、p型コンタクト層202は、炭素を不純物として導入することでp型とされている。また、光吸収層203は、アンドープとされている。
例えば、p型コンタクト層202は、不純物として炭素が1.0×1020cm-3程度導入されたp型のGaAs0.5Sb0.5から構成されていればよい。また、光吸収層203は、アンドープのGa0.5As0.5Sbより構成されていればよい。また、第1電界制御層204は、p型としたIn0.52Al0.48Asから構成されていればよい。また、増倍層205は、アンドープのIn0.52Al0.48Asから構成されていればよい。第2電界制御層206は、n型としたInPから構成されていればよい。また、電子走行層207は、アンドープのInPから構成されていればよい。また、n型コンタクト層208は、n型のInGaAsPから構成されていればよい。
なお、光吸収層203,第1電界制御層204,増倍層205,第2電界制御層206および電子走行層207は、所望とする形状にパターニングされ、メサ構造とされている。加えて、n型コンタクト層208は、電子走行層207より小さい面積のメサ構造とされている。
ここで、実施の形態2におけるアバランシェフォトダイオードの製造方法について簡単に説明する。まず、半絶縁性のInPからなる基板201上に、炭素を不純物としてドーピングしたp型のGa0.5As0.5Sb(p型コンタクト層202)、アンドープのGa0.5As0.5Sb(光吸収層203)、Znを不純物としてドーピングしたp型のIn0.52Al0.48As(第1電界制御層204)、アンドープのIn0.52Al0.48As(増倍層205)、Siを不純物としてドーピングしたn型のInP(第2電界制御層206)、アンドープのInP(電子走行層207),およびSiを不純物としてドーピングしたn型のInGaAsP(n型コンタクト層208)をエピタキシャル成長により順次堆積する。これらは、よく知られたMOVPE法により形成すればよい。
次に、n型のInGaAsPの層の上に、n電極209を形成する。例えば、n電極209となる領域に開口部を備えるレジストマスクパターンを形成し、この上に、電子ビーム蒸着法により、チタン層/白金層/金層の3層積層膜を形成する。この後、レジストマスクパターンを除去(リフトオフ)すれば、n型のInGaAsPの層(n型コンタクト層208)にオーミック接続するn電極209が形成できる。
次に、公知のリソグラフィー技術およびエッチング技術(ウエットエッチング)により、上述したn型のInGaAsPをパターニングして所望の形状(メサ形状)としたn型コンタクト層208を形成する。次に、アンドープのGa0.5As0.5Sb、p型のIn0.52Al0.48As、アンドープのIn0.52Al0.48As、n型のInP、およびアンドープのInP、の層をパターニングし、n型コンタクト層208より大きいメサ形状とし、光吸収層203,第1電界制御層204,増倍層205,第2電界制御層206,および電子走行層207を形成する。この後、上記パターニングにより露出したp型コンタクト層202の上に、p電極210を形成する。p電極210は、チタン層/白金層/金層の3層構造とする。n電極209と同様に、電子ビーム蒸着法とリフトオフ法とによりp電極210を形成すればよい。
上述した実施の形態2におけるアバランシェフォトダイオードによれば、まず、前述した実施の形態1と同様に、p型コンタクト層202が、1.0×1020cm-3程度の高濃度に炭素がドーピングされているところに特徴がある。
また、p型コンタクト層202は、光吸収層203と同じ材料から構成し、通信に用いる1.55μmまたは1.3μmの入射光に対して感度を有するものとしている。ここで、このように構成したp型コンタクト層202内において、入射光により生じた電子/正孔対の輸送特性は、少数キャリアである電子の拡散速度によって支配されている。一方、同じ材料でアンドープとした光吸収層203においては、入射光により生じた電子/正孔対の輸送特性は、正孔のドリフト速度により支配されている。
このように、実施の形態2では、p型コンタクト層202と光吸収層203との2種類の吸収層でのキャリアの輸送機構は、各々の層で独立であり、互いに影響しない。このため、実施の形態2における2層構造とした吸収層の構造によって、吸収層厚を大きくした上でキャリアの走行時間が低減でき、結果として高感度でありながら走行帯域を広帯域化することが可能になる。これは、MIC構造として知られている(非特許文献4参照)。
また、実施の形態2においても、InGaAsなどと比較して電子有効質量が小さく、トンネル電流が生じ難い、言い換えると、アンドープとする光吸収層としてよりブレークダウンしづらい材料であるGaAs0.5Sb0.5を用いているため、オン電圧をより低電圧側に設定することができる。また、実施の形態1と同様に、ウエハ上に多数の素子を同時に形成している中でドーピング濃度に一定のバラツキが生じても、ウエハレベルでの歩留まりを向上させることができる。
さらに、図3のバンド図に示すように、GaAs0.5Sb0.5は、伝導帯および価電子帯のエネルギー位置がともに高く、光吸収層203と第1電界制御層204とのヘテロ界面では、伝導帯では約0.16eV、価電子帯では約0.54eVのバンドオフセットが生じる。これは、アバランシェフォトダイオードとして、一般的なInGaAsより吸収層を構成した場合のバンドオフセットと比較して、伝導帯においては、光吸収層203から増倍層205へと電子(黒丸)が移動する際にバリアが小さくなる。また、正孔(白丸)は、増倍層205から光吸収層203へ移動する際には、光吸収層203に向かって正孔が加速されることになる。なお、図3では、2点鎖線で一般的なInGaAsより吸収層を構成した場合のバンドオフセットを示している。
従って、増倍層205をInAlAsとした、電子注入型のアバランシェフォトダイオードにおいては、InGaAsよりもGaAsSbから吸収層を構成した方が都合がよく、InGaAsより吸収層を構成した場合と比較して、1V程度、オン電圧が低減できる。
このように、実施の形態2においては、p型電極層を基板側に配置する、反転型アバランシェフォトダイオードにおいて、p型コンタクト層202の材料をGaAs0.5Sb0.5とし、ドーパントを炭素とすることで、一般的なIII−V族化合物半導体材料を用いた場合と比較して高濃度のp型ドーピングを行い、p型コンタクト層の抵抗を低減することで素子全体の抵抗を低減し、CR帯域を拡大している。
また、p型コンタクト層202をp型光吸収層とし兼用し、さらにp型コンタクト層202の上にアンドープGaAs0.5Sb0.5の光吸収層203を設ける、いわゆるMIC構造とすることで、高感度化し、同時に走行帯域を拡大している。また、p型の光吸収層(p型コンタクト層202)およびアンドープの光吸収層203をGaAs0.5Sb0.5から構成しているので、上述したように、光吸収層203から増倍層205に移動する電子にとってはバリアを通過しやすく、増倍層205から光吸収層203に移動する正孔にとってはヘテロ界面で加速されることになり、電子注入型のアバランシェフォトダイオードとしては都合がよい。
この例として、以下の表1に、p型コンタクト層として一般的なInGaAsP、光吸収層としてMIC構造のInGaAsを用いた場合と、各々GaAsSbを用いた場合の、受光径20μmのアバランシェフォトダイオードのCR帯域および走行帯域の計算値の比較を示す。また、図4に、これらのアバランシェフォトダイオードの利得帯域特性の計算結果を示す。図4において、(a)の実線がp型コンタクト層および光吸収層をGaAsSbから構成した場合を示し、(b)の2点鎖線がp型コンタクト層をInGaAsPから構成し、光吸収層をInGaAsから構成した場合を示している。なお、図4では、GB積(Gain Band width product:GBP)=150GHzを想定している。
表1および図4から分かるように、吸収層が1000nm程度のアバランシェフォトダイオードにおいては、走行帯域よりもCR帯域によって制限がかかるため、実施の形態2の構成により素子の抵抗を低減し、高速なアバランシェフォトダイオードが作製できるようになる。
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図5は、本発明の実施の形態3におけるアバランシェフォトダイオードの構成を示す構成図である。図5では、断面を模式的に示している。
このアバランシェフォトダイオードは、例えば、鉄をドープすることで高抵抗とされた半絶縁性のInPからなる基板201と、Sbを含むp型のIII−V族化合物半導体から構成されて基板201の上に形成されたp型コンタクト層502と、Sbを含むIII−V族化合物半導体から構成されてp型コンタクト層502の上に形成された光吸収層203とを備える。
また、実施の形態3におけるアバランシェフォトダイオードは、p型のIII−V族化合物半導体から構成されて光吸収層203の上に形成された第1電界制御層204と、アンドープのIII−V族化合物半導体から構成されて第1電界制御層204の上に形成された増倍層205と、n型のIII−V族化合物半導体から構成されて増倍層205の上に形成された第2電界制御層206と、アンドープのIII−V族化合物半導体から構成されて第2電界制御層206の上に形成された電子走行層207とを備える。
また、n型のIII−V族化合物半導体から構成されて電子走行層207より小さい面積で電子走行層207の上に形成されたn型コンタクト層208を備える。また、n型コンタクト層208には、n電極209が形成され、p型コンタクト層502には、p電極210が形成されている。
また、実施の形態3におけるアバランシェフォトダイオードにおいて、光吸収層203は、対象とする光の波長に対応するバンドギャップエネルギーを有し、n型コンタクト層208,第1電界制御層204,増倍層205,第2電界制御層206,および電子走行層207は、光吸収層203より大きなバンドギャップエネルギーを有するものとされている。
上述した構成は、前述した実施の形態2と同様である。実施の形態3では、p型コンタクト層502は、炭素を不純物として導入することでp型とし、加えて、基板201から離れて光吸収層203に近づくほど不純物濃度が低い状態に形成されているようにした。
例えば、p型コンタクト層502は、基板201の側の不純物(炭素)の濃度は、1.0×1020cm-3程度とし、光吸収層203との界面に向かって1.0×1020cm-3よりも低くなるように、いわゆる傾斜ドーピング構造とすればよい。
上述した実施の形態3においても、前述した実施の形態2と同様に、p型コンタクト層502は、通信に用いる1.55μmまたは1.3μmの入射光に対して感度を有し、入射光により生じた電子/正孔対の輸送特性は、少数キャリアである電子の拡散速度によって支配され、同じ材料でアンドープとした光吸収層203においては、入射光により生じた電子/正孔対の輸送特性は、正孔のドリフト速度により支配されている。
ここで、実施の形態3では、p型コンタクト層502を上述したように傾斜ドーピング構造としているので、層内のキャリア濃度差に起因するビルトインポテンシャルにより、p型コンタクト層502内における電子移動は、若干のドリフト成分が含まれるようになる。この結果、p型コンタクト層502における電子の輸送速度が向上する。
実施の形態3における、p型コンタクト層502の傾斜ドーピングによる、光吸収層203との界面側でのドーピング濃度と走行帯域との関係の計算結果を図6に示す。図6において、横軸の「界面のドーピング濃度」は、p型コンタクト層502の光吸収層203側の界面の濃度を示している。 図6に示すように、基板201の側から光吸収層203との界面側へ、p型コンタクト層502のドーピングプロファイルをドーピング濃度が薄くなるように傾斜させることで、走行帯域をさらに拡大し、結果としてより広帯域なアバランシェフォトダイオードが作製できる。
また、p型コンタクト層502の界面側のドーピング濃度が十分低い場合には、コンタクト抵抗の高抵抗化が予想される。この場合には、p型コンタクト層502の層厚方向上側(光吸収層側)のドーピング濃度の低い部分を除去し、層厚方向下側のドーピング濃度より高い部分を露出させ、ここにp電極210を形成すればよい。
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図7は、本発明の実施の形態4におけるアバランシェフォトダイオードの構成を示す構成図である。図7では、断面を模式的に示している。
このアバランシェフォトダイオードは、例えば、鉄をドープすることで高抵抗とされた半絶縁性のInPからなる基板701と、Sbを含むp型のIII−V族化合物半導体から構成されて基板701の上に形成されたp型コンタクト層702と、アンチモンを含むアンドープのIII−V族化合物半導体から構成されてp型コンタクト層702の上に形成された光吸収層703とを備える。なお、図7における符号711の層については、後述する。
また、実施の形態4におけるアバランシェフォトダイオードは、p型のIII−V族化合物半導体から構成されて光吸収層703の上に形成された第1電界制御層704と、アンドープのIII−V族化合物半導体から構成されて第1電界制御層704の上に形成された増倍層705と、n型のIII−V族化合物半導体から構成されて増倍層705の上に形成された第2電界制御層706と、アンドープのIII−V族化合物半導体から構成されて第2電界制御層706の上に形成された電子走行層707とを備える。
また、n型のIII−V族化合物半導体から構成されて電子走行層707より小さい面積で電子走行層707の上に形成されたn型コンタクト層708を備える。また、n型コンタクト層708には、n電極709が形成され、p型コンタクト層702には、p電極210が形成されている。
また、実施の形態4におけるアバランシェフォトダイオードにおいて、光吸収層703は、対象とする光の波長に対応するバンドギャップエネルギーを有し、n型コンタクト層708,第1電界制御層704,増倍層705,第2電界制御層706,および電子走行層707は、光吸収層703より大きなバンドギャップエネルギーを有するものとされている。また、p型コンタクト層702は、炭素を不純物として導入することでp型とされ、光吸収層703は、ノンドープとされている。
例えば、光吸収層703は、アンドープのGa0.5As0.5Sbより構成されていればよい。また、第1電界制御層704は、p型としたIn0.52Al0.48Asから構成されていればよい。また、増倍層705は、アンドープのIn0.52Al0.48Asから構成されていればよい。第2電界制御層706は、n型としたInPから構成されていればよい。また、電子走行層707は、アンドープのInPから構成されていればよい。また、n型コンタクト層708は、n型のInGaAsPから構成されていればよい。
なお、光吸収層703,第1電界制御層704,増倍層705,第2電界制御層706および電子走行層707は、所望とする形状にパターニングされ、例えば、よく知られたメサ構造とされている。加えて、n型コンタクト層708は、電子走行層707より小さい面積のメサ構造とされている。
上述した構成は、前述した実施の形態2と同様である。実施の形態4では、新たに、光吸収層703とp型コンタクト層702との間に、アンチモンを含むp型のIII−V族化合物半導体から構成されたp型光吸収層711を備える。例えば、p型光吸収層711は、p型のGa0.5As0.5Sbより構成されていればよい。また、実施の形態4では、p型コンタクト層702は、不純物として炭素が1.0×1020cm-3程度導入されたp型のAlGaAsSbから構成する。このように構成したp型コンタクト層702は、光吸収層で吸収する波長帯(1.5μm,1.3μm帯)の光に対して感度を持たない。言い換えると、実施の形態2における光吸収層の機能を兼ねたp型コンタクト層202を、実施の形態4では、p型コンタクト層702およびp型光吸収層711に分離している。
実施の形態4におけるアバランシェフォトダイオードのバンドラインナップを図8に示す。図8に示すように、光吸収層203よりバンドギャップエネルギーの大きいAlGaAsSbからp型コンタクト層702を構成することで、p型コンタクト層702とp型光吸収層711との界面に、伝導帯端のバンド不連続が生じる。このバンド不連続により、p型光吸収層711における電子が、基板701方向へ拡散することを阻止でき、当該電子をn型コンタクト層708の方向のみに拡散させることができる。
このように、実施の形態4によれば、p型光吸収層711における実効キャリアにあたる電子を、選択的にn型コンタクト層708の方向に拡散させることができるので、キャリアの取り出し効率が向上し、結果としてより高感度なアバランシェフォトダイオードが実現できる。
以上に説明したように、本発明によれば、いわゆる反転型アバランシェフォトダイオードにおいて、p型コンタクト層を、アンチモンを含み、炭素をドーパントとすることでp型としたIII−V族化合物半導体から構成したので、基板側のp型コンタクト層の抵抗が低減する。この結果、素子のCR時定数による帯域制限の影響を低減させ、広帯域なアバランシェフォトダイオードが得られるようになる。また、光吸収層を、アンチモンを含むIII−V族化合物半導体から構成したので、この材料の伝導帯および価電子帯の高いエネルギー位置により、光吸収層から増倍層への電子注入にも都合がよく、動作電圧を低減することができる。またさらに、p型コンタクト層の構成材料として、Sbに加えてAlを加えるようにすれば、p型光吸収層の光電子を選択的にn型電極側に拡散させることができ、より高感度化が実現できる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、増倍層をInAlAsから構成する場合について説明したが、これに限るものではなく、InGaAsP,InGaAs,InAlGaAs,Si,SiGeなどの他の半導体材料から構成してもよい。また、増倍層は、InGaAs/InAlAsなどの超格子構造から構成してもよい。
また、さらに素子の高感度化を実現するため、基板の裏面を研磨し、また、素子上部に金属や誘電体多層膜によるミラーを設けることで入射光を反射させて光路長を増大させても、本発明の一般性を失わないことは明らかである。また、作製方法として有機金属気相成長法を例に説明したが、これに限るものではなく、分子線エピタキシー法などの他の結晶成長方法を用いてもよい。