この発明に係る弾性ローラの一実施例としての弾性ローラ1は、図1に示されるように、軸体2と発泡弾性層3とスリーブ4とを備えて成り、常温における圧縮荷重値が180℃に15分加熱した後の圧縮荷重値よりも大きいことを特徴の一つとする。弾性ローラ1がこのような特徴を有していると、たとえ外部加熱手段を備えた定着装置に装着されて所定の温度に加熱されても、定着装置内での加圧ローラとの圧接部におけるニップ幅をほぼ一定に保つことができるから、この定着装置に搬送されてきた記録体をその搬送状態を維持したまま前記圧接部で均一に加圧することができる。記録体を均一に加熱することができると、定着装置の圧接部を通過した記録体にしわが発生すること、特に、定着装置における圧接部の長手方向の中央部近傍を通過する記録体(すなわち、記録体の幅方向の中央部近傍)にしわが発生することを防止することができる。したがって、この弾性ローラ1は、記録体にしわが発生しやすい外部加熱手段を備えた定着装置に好適に採用されることができる。なお、弾性ローラ1に前記特徴を発現させる方法は後述する。
弾性ローラ1の常温における圧縮荷重値C1は、弾性ローラ1を180℃に15分加熱した後の圧縮荷重値C2よりも大きければよい。圧縮荷重値C1は、弾性ローラ1が定着装置に装着されたときの所定のニップ幅を駆動直後においても確保して、記録体にしわが発生することを効果的に防止することができる点で、15〜40Nの範囲にあるのが好ましく、17〜37Nの範囲にあるのが特に好ましい。
弾性ローラ1を180℃に15分加熱したときの圧縮荷重値C2は、前記圧縮荷重値C1よりも小さければよい。圧縮荷重値C2は、弾性ローラ1が定着装置に装着されたときの所定のニップ幅を長期間の駆動後すなわち周辺環境が高温になった後においても確保して、記録体にしわが発生することを効果的に防止することができる点で、12〜35Nの範囲内であって前記圧縮荷重値C1よりも小さいのが好ましく、13〜34Nの範囲内であって前記圧縮荷重値C1よりも小さいのが特に好ましい。なお、この発明において、圧縮荷重値C2を測定するときの加熱条件「180℃に15分」は、前記圧縮荷重値C1との差が顕著になる複数の加熱条件から選択した加熱条件である。
弾性ローラ1の周方向における圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2は略一定の値でも異なる値でもよく、また、弾性ローラ1の軸線方向における圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2は略一定の値でも異なる値でもよい。例えば、弾性ローラ1の圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2が一方の端部から他方の端部にわたって略一定の値であってもよく、軸線方向における両端部の圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2が小さく、軸線方向における中央部の圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2が大きくてもよく、また、軸線方向における両端部の圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2が大きく、軸線方向における中央部の圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2が小さくてもよい。定着装置における圧接部の長手方向の中央部近傍を通過する記録体にしわが発生することを長期間にわたってより一層効果的に防止することを目的とするのであれば、弾性ローラ1の圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2は、弾性ローラ1の両端部の圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2を小さく、その軸線方向における中央部の圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2を大きくするのが好ましい。また、弾性ローラ1の周方向における圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2は略一定の値であるのが好ましい。
この発明においては、弾性ローラ1のある測定点(例えば弾性ローラ1における軸線方向の略中央部又は端部)における圧縮荷重値C1が圧縮荷重値C2よりも大きくなっていればよいが、この発明の目的をよく達成することができる点で、弾性ローラ1における軸線方向の略中央部及び両端部(端縁から中央部に向かって30mmまでの領域)それぞれにおいて、圧縮荷重値C1が圧縮荷重値C2よりも大きいのが好ましい。
この発明において、記録体にしわが発生することをより一層効果的に防止することを目的とするのであれば、弾性ローラ1における圧縮荷重値C1と圧縮荷重値C2との差(C1−C2)が0.05〜5Nの範囲にあるのが好ましく、0.1〜3Nの範囲にあるのが特に好ましい。なお、弾性ローラ1の周方向及び軸線方向における圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2が異なる場合には、すべての差(C1−C2)が前記範囲内にあることが特に好ましいが、この発明の目的を達成することができる限り、すべての差(C1−C2)が前記範囲内にある必要はなく、ある特定の測定点における差(C1−C2)が前記範囲内にあればよい。
圧縮荷重値C1は次のようにして測定される。すなわち、発泡弾性層3の外周面にスリーブ4を形成して成る弾性ローラ1を荷重測定機(商品名「スイッチシリコーンラバーフィーリング荷重測定器MODEL−1305VR」、アイコーエンジニアリング株式会社製)にセットし、周辺温度を常温(23℃)に調節する。次いで、下記の測定条件で、弾性ローラ1に接触子を押圧し、そのときの荷重を読み取る。この操作を複数回繰り返し、算術平均値を弾性ローラ1の圧縮荷重値C1とする。
測定条件は、荷重速度:5mm/min、荷重方向:発泡弾性層3の半径方向(弾性ローラ1の表面に対して垂直)、接触子の先端部形状及び材質:直径25mm、長さ(厚さ)5mmの円盤状、材質S45C、接触子の押込み量:2mm、である。
圧縮荷重値C2は、周辺環境を180℃に調節して弾性ローラ1を180℃に15分加熱した後、前記荷重測定機を用いて、速やか(具体的には1分以内)に、前記圧縮荷重値C1と基本的に同様にして測定される。
弾性ローラ1は圧縮荷重値C1及び圧縮荷重値C2に関する前記特徴を有していればよいが、定着装置に装着されたときに所定のニップ幅を確保して、記録体に転写された現像剤を記録体により一層均一に定着させることができる点で、20〜60のアスカーC硬度を有しているのが好ましく、25〜45のアスカーC硬度を有しているのが特に好ましい。アスカーC硬度は、JIS K6253に準拠して、複数箇所を測定し、測定値を算術平均した値とする。
弾性ローラ1の硬度は、前記圧縮荷重値C1及び前記圧縮荷重値C2と同様に、その周方向に略一定であるのが好ましく、その軸線方向に略一定であってもよく、異なっていてもよい。定着装置における圧接部の長手方向の中央部近傍を通過する記録体にしわが発生することを長期間にわたってより一層効果的に防止することを目的とするのであれば、弾性ローラ1の硬度は、弾性ローラ1の両端部を大きく、その軸線方向における中央部を小さくするのが好ましい。
弾性ローラ1は、振れ精度が0.01〜0.4mmの範囲にあるのが好ましく、0.015〜0.3mmの範囲にあるのが特に好ましい。弾性ローラ1の振れ精度が前記範囲内にあると、外部加熱手段の有無、内部加熱手段の有無等の如何なる種類の定着装置に装着されても、定着装置の圧接部におけるニップ幅及び圧接圧が均一になり、記録体を均一に加熱及び加圧することができるから、この圧接部を通過する記録体にしわが発生することをより一層効果的に防止することができると共に、この圧接部を通過する記録体に転写された現像剤を所望のように記録体に定着させることができる。
弾性ローラ1の振れは、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層及びスリーブを含む積層体(弾性ローラ1においては、発泡弾性層3及びスリーブ4)の、弾性ローラ1の円周方向における厚さの均一性、すなわち、厚さの振れ(以下、単に、振れと称することがある。)を示す精度である。図9(理解を容易にするため、発泡弾性層3及びスリーブ4を一体に図示してある。発泡弾性層3とスリーブ4とを併せて積層体8と称する。)を参照して説明すると、弾性ローラの振れは、積層体8の中心点8Dと軸体2の中心点2Cとの距離に影響される。例えば、積層体8が、軸線方向においてその軸線と軸体2の軸線2Dとがずれて軸体2の外周面に配置された状態(図9(a)参照。)におけるA−A線での断面が図9(b)に示されている。この場合において、弾性ローラの振れは、積層体8の最大厚さ(tmax)と最小厚さ(tmin)との差(tmax−tmin)、換言すると、軸体2の中心点2Cから積層体8の外周面(弾性ローラ1においては、スリーブ4の外周面)までの最長距離L2と最短距離L1との差(L2−L1)として、算出される。すなわち、弾性ローラの振れは、少なくとも、その軸線方向の中央部と両端部との3点における、積層体8の最大厚さ(tmax)と最小厚さ(tmin)との差(tmax−tmin)を示した値であり、より具体的には、各測定点において、式(tmax−tmin)(mm)で算出される。又は、少なくとも、弾性ローラにおける中央部と両端部との3点における、軸体2の中心点2Cから積層体8の外周面までの最長距離L2と最短距離L1との差(L2−L1)を示した値であり、より具体的には、各測定点において、式(L2−L1)(mm)で算出される。ここで、弾性ローラの振れは、軸体2の軸線2Dを回転軸線として回転させながら、レーザー測長機により、各測定点における、積層体8の厚さ、又は、軸体2の軸線2Dから積層体8の外周面までの距離を測定し、測定された最大厚さと最小厚さとから、又は、測定された最長距離と最短距離とから、前記式により算出することができる。
前記特徴を有する弾性ローラ1は、図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3と、発泡弾性層3の外周面に形成されたスリーブ4とを備えている。
軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体である。また、軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。
発泡弾性層3は、軸体2の外周面に形成され、その内部及び/又は外表面にセル(図1において図示しない。)を有している。発泡弾性層3がセルを有していると、発泡弾性層3の硬度が低下して、弾性ローラ1の機能を向上させることができる。ここで、発泡弾性層3が有するセルは、発泡弾性層3を形成する後述のゴム組成物に含有される発泡剤若しくは気体の発泡又は分解等によって生じる中空領域、及び、発泡ゴム組成物に含有される中空充填材等に由来する中空領域等をいう。
発泡弾性層3は、近傍に存在する他のセルに接し又は連通しているセル(連続セルと称する。)を有している。この連続セルは、後述する独立セルの壁が破損して、近傍に存在する他のセルに破壁を介して連通してなるセルともいうことができる。発泡弾性層3は、前記連続セルに加えて、この発明の目的を阻害しない範囲で、近傍に存在する他のセルに接することのない又は連通することのないセル(独立セルと称する。)を有していてもよい。なお、セルの形状は、特に限定されず、例えば、略球状であってもよく、また、楕円体形、不定形であってもよく、また、複数のセルが連通した管状であってもよい。
この連続セルは、複数のセルが破壁を介してその近傍に存在する他のセルに連通し、発泡弾性層3内で3次元的な連通路を形成しているのがよい。このように連続セルが3次元的な連通路を形成していると、発泡弾性層3の外周面にスリーブ4を設けても、セル内に存在する気体を、連通路を経由して発泡弾性層3の両端部から効率よく排出することができると共に、弾性ローラ1の外部に存在する気体を、この連通路を経由して発泡弾性層3のセル内に取り込むことができる。その結果、弾性ローラ1の温度が高温に達しても、発泡弾性層3内の空気を効率よく発泡弾性層3内から排出することができるから、発泡弾性層3のセル内に存在する気体が閉じ込められた状態で膨張することがなく、発泡弾性層3特にその中央部の圧力及び硬度が高くなることを効果的に防止することができる。一方、弾性ローラ1の温度が高温から低温に低下しても、発泡弾性層3の外部から気体をセル内に取り込むことができるから、発泡弾性層3特にその中央部の圧力及び硬度が低くなることを効果的に防止することができる。そして、この連続セルは、発泡弾性層3の表面近傍に存在するだけでなく、その内部例えば軸体2の外周面近傍まで存在し、3次元的な連通路を形成しているのが、弾性ローラ1としたときに前記特徴をよく発現することができる点で、好ましい。連続セルが発泡弾性層3の内部に存在するか否かは、発泡弾性層3を切断した切断面を目視で観察することによって、確認することができる。
連続セルが形成される割合は、特に限定されないが、連続セルの3次元的な連通路があまりにも発達しすぎると、弾性ローラ1を製造する際に、発泡弾性層3の外径を所望のように縮径及び拡径することができなくなることがあり、生産性が低下すると共に発泡弾性層3とスリーブ4との密着度が低下して耐久性に劣ることがある。したがって、この発明において、弾性ローラ1の生産性及び耐久性を考慮すると、発泡弾性層3の連泡率は、50%以下であるのが好ましく、40%以下であるのが特に好ましい。一方、連続セルの3次元的な連通路があまり発達していないと、弾性ローラ1としたときに前記特徴を満足することができないことがある。したがって、この発明において、前記特徴を有する弾性ローラ1を高い確実性で生産することを目的とするのであれば、発泡弾性層3の連泡率は、10%以上であるのが好ましく、15%以上であるのが特に好ましい。
発泡弾性層3の連泡率は次のようにして算出することができる。まず、発泡弾性層3の全部又は一部を切り出して試験片を準備する。この試験片の質量W(g)及び密度D(g/cm3)を常法に従って測定し、試験片の体積V(cm3)をW/Dにより算出する。次いで、減圧チャンバ内に配置された容器に満たされた水に試験片を浸漬して、試験片から気泡が出現しなくなるまで、減圧チャンバ内を減圧し、試験片から気泡が出現しなくなったら、減圧を解除して、常圧で24時間静置する。次いで、試験片を水中から取り出し、試験片に付着した水を拭き取って、浸漬後の試験片の質量Wi(g)を測定し、試験片が吸収した水の質量Ww(g)をWi−Wにより算出する。なお、試験片が吸収した水の体積Vw(cm3)は、水の密度を1(g/cm3)とすると、Wwと等しくなる。一方、発泡弾性層3を形成するゴム組成物の密度Dc(g/cm3)を予め常法に従って測定して、このゴム組成物で形成される発泡弾性層3の理論上の体積Vc(cm3)をW/Dcにより算出し、さらに、発泡弾性層3に形成された連続気泡の全体積Vb(cm3)をV−Vcにより算出する。そして、発泡弾性層3の連泡率(%)は、このようにして算出した、試験片が吸収した水の体積Vwと連続気泡の全体積Vbとから、計算式(Vw/Vb)×100(%)、すなわち、(Ww/Vb)×100(%)によって、算出される。
なお、発泡弾性層3に形成される連続セル及び独立セルの平均セル径等は、特に限定されず、画像形成装置又は画像形成装置用定着装置(以下、画像形成装置等と称する。)に装着される各種ローラに応じて、適宜調整される。一例を挙げると、例えば、発泡弾性層3の平均セル径は、60〜800μmであるのが好ましく、100〜600μmであるのが特に好ましい。平均セル径が前記範囲内にあると、弾性ローラ1の硬度を所望の範囲に調整することができ、また、連泡率を前記範囲に容易に調整することができる。平均セル径は、発泡弾性層3の表面又は任意の面で切断したときの切断面において、約20mm2の領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セルにおける開口部の最大長さを測定して、測定された最大長さを算術平均して得られた平均長さとして、求める。
発泡弾性層3は、弾性ローラ1のアスカーC硬度が前記範囲内となるように、その外周面に設けられるスリーブ4の厚さ及び材質等を考慮して、適宜の硬度に調整される。スリーブ4は通常薄層であるから、発泡弾性層3のアスカーC硬度は、一般的には、弾性ローラ1のアスカーC硬度と同様の範囲に調整される。
発泡弾性層3は、用途に応じて任意の長さ及び厚さに調整され、例えば、2〜20mmの厚さを有しているのがよく、3〜12mmの厚さを有しているのが特によい。発泡弾性層3が前記範囲の厚さを有していると、弾性ローラ1の硬度を前記範囲に容易に調整することができる。
発泡弾性層3を形成するゴム組成物は、ゴムと、発泡剤又は中空充填材と、所望により導電性付与剤と、各種添加剤等とを含有するゴム組成物であればよく、例えば、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物及び発泡ウレタンゴム系組成物等が好ましく挙げられる。特に、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物は、前記特徴を有する弾性ローラ1を容易に製造することができるうえ、前記連泡率を所望の範囲に容易に調整することができると共に、耐熱性、耐久性及び耐残留歪み特性等に優れ、画像形成装置の高速運転にも耐えられる好適なゴム組成物である。このような発泡シリコーンゴム系組成物として、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が特に好ましい。
前記発泡剤としては、従来、発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよく、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連続セルを形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立セルを形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。弾性ローラ1においては、発泡剤は、独立セル状態のセルを形成することができる点で、有機系発泡剤であるのがよく、具体的には、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の配合量は、発泡剤の種類によって相違するが、発泡弾性層3のアスカーC硬度が27〜45となるように調整するのがよい。具体的には、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜10質量部であるのがよい。発泡剤の配合量が、0.1質量部未満であると、形成される発泡弾性層3に十分なセルを形成することができないことがあり、一方、10質量部を超えると、発泡シリコーンゴムとしての形態を維持することができなくなり、発泡弾性層3の機械的強度が低下することがある。発泡剤として、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)を選択する場合には、その配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部であるのが特によい。発泡剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記中空充填材としては、例えば、ゴム組成物を硬化した後に、セルを形成することのできる充填材であればよく、例えば、ポリオルガノシロキサン系球状粉末が挙げられる。ポリオルガノシロキサン系球状粉末は、ポリオルガノシロキサンからなる球状の粉末であればよく、例えば、シリコーンパウダ等が挙げられる。より具体的には、直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造を持つシリコーンゴムの粉末、シロキサン結合が(CH3SiO3/2)nで表される三次元網目状に架橋した構造を持つ、いわゆるポリメチルシルセスキオキサン等のシリコーンレジンの粉末、及び、前記シリコーンゴムの表面をシリコーンレジン等で被覆した被覆シリコーンゴムの粉末等が挙げられる。
前記導電性付与剤としては、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性粉末、イオン導電性物質等が挙げられる。導電性粉末としては、より具体的には、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、さらには、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられ、イオン導電性物質としては、より具体的には、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等が挙げられる。導電性付与剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。導電性付与剤の含有量は、前記ゴム100質量部に対して、2〜80質量部とすることができる。
前記各種添加剤は、例えば、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、難燃性向上剤、熱伝導性向上剤等の添加剤、離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール基封鎖低分子シロキサン等の分散剤、及び、得られるゴムの硬度を調整することのできる粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ等が挙げられる。また、各種添加剤として、酸化鉄(ベンガラとも称する。)、酸化セリウム及び水酸化セリウム等の耐熱性向上剤も挙げられる。これらの各種添加剤は、所望の配合量で配合される。
前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤とを含有し、所望により、さらに、有機過酸化物架橋剤と各種添加剤とを含有してもよい。
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後工程で、発泡剤及び付加反応架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記シリカ系充填材は、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)3で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であるのがよい。シリカ系充填材は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物に含有される前記発泡剤としては、前記ゴム組成物に含有される前記発泡剤と基本的に同様である。
前記付加反応架橋剤は、例えば、一分子中に2個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、環又は分枝状のいずれであってもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.01〜20質量部であるのがよい。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記付加反応触媒は、例えば、周期律表第9属又は第10属の金属単体及びその化合物が挙げられ、より具体的には、シリカ、アルミナ又はシリカゲル等の担体上に吸着された微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸六水塩とオレフィン又はジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体、塩化白金酸六水塩のアルコール溶液等の白金系触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。これら付加反応触媒の配合量は、触媒量で十分であり、通常、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物全体に対して、1〜1,000ppmであるのがよく、10〜500ppmであるのが特によい。付加反応触媒の配合量が、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、1ppmより少ないと、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応が十分に進行せず、ビニル基含有シリコーン生ゴムの硬化が不十分となることがあり、一方、1,000ppmを超えると、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応を促進する能力が向上せず、かえって、経済性が低下することがある。付加反応触媒は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記反応制御剤は、公知の反応制御剤を制限されることなく使用することができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。反応制御剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記有機過酸化物架橋剤は、単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物に含有される前記各種添加剤としては、前記ゴム組成物に含有される前記各種添加剤と基本的に同様である。
前記ビニル基含有シリコーン生ゴム、前記シリカ系充填材及び前記各種添加剤を含有するシリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。
ゴム組成物は、その比重は特に限定されないが、ゴム組成物の比重は発泡弾性層3の密度にもある程度影響を与えるから、画像形成装置に配設される各種ローラに応じて、所定の比重に調整される。ゴム組成物の比重は、通常、1.00〜2.00であるのが好ましく、1.05〜1.50であるのがさらに好ましい。
ゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって、常温又は加熱下で混練して、得られる。
なお、発泡弾性層3を形成するゴム組成物に連続セルを形成可能な発泡剤等を含有させ、発泡弾性層3の形成と同時に連続セルを形成すると、通常、連泡率が高くなりすぎて、前記のように、弾性ローラ1を製造しにくくなる。
スリーブ4は、発泡弾性層3の外周面に設けられる。スリーブ4は、例えば、鉄、ステンレス鋼、ニッケル等の高い熱伝導を有する金属材料で、両端開口部を有する筒状体に形成される所謂金属製スリーブである。スリーブ4は、通常、薄層に形成され、例えば、その厚さは、20〜150μmであるのが好ましく、30〜100μmであるのが特に好ましい。このスリーブ4は、その内径が前記発泡弾性層3の外径よりも小さく調整されている。スリーブ4は、800〜1300MPa程度の引張強度を有しているのが、発泡弾性層3の内周面からの圧接により変形しにくくなる点で、好ましい。前記引張強度の測定方法は、JIS Z 2241に準拠する。
この発明において、スリーブ4は、前記特許文献2のように貫通孔等が形成されることなく、平坦な表面を有している。このようにスリーブ4が平坦な表面を有していると、如何なる種類の定着装置に装着されても、定着装置の圧接部におけるニップ幅及び圧接圧が均一になり、記録体を均一に加熱及び加圧することができるから、この圧接部を通過する記録体にしわが発生することをより一層効果的に防止することができると共に、この圧接部を通過する記録体に転写された現像剤を所望のように記録体に定着させることができる。
この発明に係る弾性ローラを製造する製造方法の一例(以下、この発明に係る製造方法と称することがある。)を以下に説明する。この発明に係る製造方法は、連続セルを有する発泡弾性層3を軸体2の外周面に形成してローラ原体7を作製し、このローラ原体7を加圧環境下又は減圧環境下に置いて、発泡弾性層3の外径をスリーブ4の内径よりも小さく縮径させて、この状態でローラ原体7の発泡弾性層3をスリーブ4内に挿入し、ローラ原体7を常圧下において、発泡弾性層3の外径を拡径させる方法である。
この発明に係る製造方法においては、まず、図2に示されるように、軸体2の外周面に発泡弾性層3(セルは図2において図示しない。)を備えたローラ原体7を準備する。
軸体2は、前記材料を用いて公知の方法により所望の形状に作製される。軸体2は、所望により、その外周面にプライマー層が塗布されてもよい。
この発明に係るローラの製造方法においては、このようにして形成された軸体2の外周面に配置された前記ゴム組成物を硬化して、軸体2を備えたゴム硬化体5を形成する。例えば、ゴム硬化体5は、公知の成形方法によって、成形と加熱硬化とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。ゴム組成物の成形方法は、軸体2の外周面にゴム組成物を配置することができる方法であればよく、例えば、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、ゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、成形方法として押出成形等を選択することができる。
ゴム組成物の硬化条件は、軸体2の外周面に配置されたゴム組成物が硬化し、発泡剤を含有する場合には、発泡剤が分解又は発泡するのに十分な硬化条件であればよく、ゴム組成物の組成、発泡剤の種類等に応じて適宜調整される。例えば、ゴム組成物が前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、硬化条件は、通常、100〜400℃、特に200〜400℃の加熱温度、数分以上1時間以下、特に5分以上30分以下の加熱時間であるのが、所望のゴム硬化体5を形成することができる点で、好ましい。
この発明に係る製造方法において、このようにして硬化されたゴム硬化体5は、必要に応じて、二次硬化されることもできる。二次硬化条件は、特に限定されないが、例えば、ゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、二次硬化条件は、前記硬化させた状態のままで、180〜250℃、特に190〜230℃の加熱温度、及び、1〜24時間、特に3〜10時間の加熱時間であるのがよい。
この発明に係る製造方法において、このようにして形成されたゴム硬化体5は、必要に応じて、例えば、研磨加工、研削加工及び切削加工等が施される。このようにして形成されたゴム硬化体5は、後述するスリーブ4の内径よりも大きな外径を有しており、例えば、スリーブ4の内径に対して、100〜105%の外径を有しているのがよく、100〜102%の外径を有しているのが特によい。
このようにして、有機系発泡剤を含有するゴム組成物を硬化して成るゴム硬化体5は、通常、その内部に独立セルを有している。この発明において、複数の独立セルを連通させて連続セルを形成することによって、ゴム硬化体5を発泡弾性層3にする方法として、ゴム硬化体5の表面を所定の条件で圧接すなわち押圧する方法、ゴム硬化体5を針で刺す方法等を好適に採用することができる。これらの方法は、ゴム硬化体5の外周面を均一に処理することができれば、手作業で実施してもよく、また、装置を用いてもよい。この発明においては、下記の方法から選択される少なくとも一種の処理をゴム硬化体5に施すのが好ましい。なお、この発明においては、これらの方法のうち複数を適宜組み合わせてもよい。
<押圧方法1:トラバース押圧ローラによる押圧処理>
押圧方法1には、図3に示される押圧処理装置80が用いられる。図3に示されるように、この押圧処理装置80は、ゴム硬化体5を軸体2の中心軸を中心にして固定する固定手段82、例えば、軸体2を両端から挟持して固定する1組の挟持部材と、固定手段82に連結され、固定手段82を介してゴム硬化体5を軸体2の中心軸を中心にして回転させる回転手段83、例えば、モータと、ゴム硬化体5を押圧するトラバース押圧ローラ84と、トラバース押圧ローラ84をゴム硬化体5の軸線方向に相対的に移動させると共に、トラバース押圧ローラ84をゴム硬化体5の中心方向に移動させ、ゴム硬化体5に対する押圧量dを調整する移動調整手段85と、トラバース押圧ローラ84を回転可能に支持し、移動調整手段85上を移動可能に装着された押圧ローラ支持治具86とを備えている。ここで、トラバース押圧ローラ84は、軸体とその外周面に形成された円筒体とを備えている。
このトラバース押圧ローラ84における軸体の寸法及び材料等は特に限定されず、例えば、図3に示されるトラバース押圧ローラ84における軸体は、その外径が8〜15mmに調整され、例えば、弾性ローラ1の軸体2と同様の材料で形成されている。また、トラバース押圧ローラ84における円筒体の寸法及び材料等は特に限定されず、例えば、図3に示されるトラバース押圧ローラ84における円筒体は、その外径が15〜100mm、軸線方向の長さが10〜200mmに調整されている。この円筒体は、各種樹脂、各種金属等で形成されている。トラバース押圧ローラ84における円筒体は、所望の発泡弾性層3を形成するには、特定の硬度を有することが重要であり、この押圧処理装置80におけるトラバース押圧ローラ84において、円筒体の硬度は、ゴム硬化体5よりも大きな硬度に調整されていればよく、例えば、HRC硬度で33〜43であるのが好ましい。
この押圧処理装置80を用いてゴム硬化体5を押圧処理するには、まず、前記のようにして作製したゴム硬化体5を軸体2の両端から挟持して1組の固定手段82に固定する。次いで、図3に示されるように、移動調整手段85を操作して、トラバース押圧ローラ84をゴム硬化体5の一方の端部近傍において、トラバース押圧ローラ84をゴム硬化体5の中心方向に移動させ、ゴム硬化体5に対する押圧量d、すなわち、ゴム硬化体5がトラバース押圧ローラ84によって押し込まれた量が所定の値d、例えば、1.0〜20mmになるように、好ましくは2〜15mmになるように、トラバース押圧ローラ84の位置を、適宜調整する。
次いで、回転手段83を起動して固定手段82に固定されたゴム硬化体5を軸体2の中心軸を中心にして回転させる。このときのゴム硬化体5の回転数は、所望の発泡弾性層3を形成することができる点で、好ましくは5〜1500rpm/min、特に好ましくは10〜1000rpm/minに調整される。ゴム硬化体5を回転させると、ゴム硬化体5を押圧しているトラバース押圧ローラ84はゴム硬化体5と共に回転する。この状態を維持しつつ、移動調整手段85を起動して、トラバース押圧ローラ84をゴム硬化体5の一方の端部から他方の端部にかけて一方向(図3に示された矢印の方向)に移動させる。このとき、押圧ローラ13の移動速度は、所望の発泡弾性層3を形成することができる点で、好ましくは20〜1200mm/min、特に好ましくは50〜900mm/minに調整される。この押圧方法では、トラバース押圧ローラ84の前記一方向への移動に加えて、トラバース押圧ローラ84を前記他方の端部から前記一方の端部へと逆方向に移動させてもよく、また、トラバース押圧ローラ84の前記一方向への移動と前記逆方向への移動とを1サイクルとして、トラバース押圧ローラ84の移動を複数サイクル行ってもよい。このようにして、ゴム硬化体5におけるトラバース押圧ローラ84によって押圧された領域に連続セルが形成される。この押圧処理装置80を用いた方法では、前記した、ゴム硬化体5の回転速度、トラバース押圧ローラ84の移動回数及び押圧量dによって、連続セルの連泡率を適宜調整することができる。なお、この押圧処理装置80は1本のトラバース押圧ローラ84を装備しているが、押圧処理装置80は、例えば、固定手段82に固定されたゴム硬化体5に対向してゴム硬化体5の外周方向に等間隔に複数(例えば、2本、3本又は4本以上)のトラバース押圧ローラ84を装備していてもよい。
<押圧方法2:プランジ押圧ローラによる押圧処理>
押圧方法2には、図4に示される押圧処理装置81が用いられる。図4に示される押圧処理装置81は、前記トラバース押圧ローラ84、移動調整手段85及び押圧ローラ支持治具86に代えてプランジ押圧ローラ87及び押圧ローラ支持治具88を備えていること以外は、前記押圧処理装置81と基本的に同様に構成されている。このプランジ押圧ローラ87は、軸体とその外周面に形成された円筒体とを備え、好ましくはその軸線方向の長さがゴム硬化体5の軸線方向の長さよりも長く設定されていること以外は、トラバース押圧ローラ84と基本的に同様に構成されている。プランジ押圧ローラ87における円筒体は、好ましくは軸線方向の長さが200〜350mmに調整されている。この押圧処理装置81を用いた処理は、プランジ押圧ローラ87で押圧量dとなるようにゴム硬化体5の軸線方向にわたって押圧した状態を維持しつつプランジ押圧ローラ87を移動させることなくゴム硬化体5を所定時間回転させること以外は、前記押圧処理装置80を用いた処理と基本的に同様にして、実施される。そして、この押圧処理装置81を用いた方法では、前記した、ゴム硬化体5の回転速度及び回転時間並びにプランジ押圧ローラ87の押圧量dによって、連続セルの連泡率を適宜調整することができる。なお、この押圧処理装置81は1本のプランジ押圧ローラ87を装備しているが、押圧処理装置81は、例えば、固定手段82に固定されたゴム硬化体5に対向してゴム硬化体5の外周方向に等間隔に複数(例えば、2本、3本又は4本以上)のプランジ押圧ローラ87を装備していてもよい。
この押圧処理装置81において、ゴム硬化体5における軸線方向の長さの一部を押圧する場合には、プランジ押圧ローラ87は、その軸線方向の長さがゴム硬化体5の軸線方向の長さよりも短く設定される。このように、軸線方向の長さがゴム硬化体5の軸線方向の長さよりも短いプランジ押圧ローラを用いると、例えば、ゴム硬化体5の圧縮荷重値をその軸線方向において異なる値に調整することができる。
前記押圧処理に加えて又は代えて、例えば、トラバース押圧ローラ84による局部押圧処理、ピッチングマシーン方式による押圧処理、針刺し方式による処理等を採用することができる。
このような押圧処理によってゴム硬化体5から発泡弾性層3を調製すると、発泡弾性層3中に独立セルがランダムに存在しているから、独立セルは発泡弾性層3の厚さ方向以外にも連通することができる。したがって、このような押圧処理で独立セルを押圧処理してなる連続セルは、発泡弾性層3の厚さ方向だけでなく、種々の方向に向けて3次元的な連通路が形成される。その結果、発泡弾性層3の外周面に表面が平坦なスリーブ4が設けられても、発泡弾性層3の両端部から気体が排出又は吸入されることができる。
このようにして、軸体2の外周面に発泡弾性層3が形成された、図2に示されるローラ原体7を製造することができる。
一方、この発明に係る製造方法においては、スリーブ4を準備する。スリーブ4は前記金属材料で両端開口部を有する筒状体に形成される。スリーブ4は、例えば、20〜150μmの厚さに調整され、また、その内径は、前記発泡弾性層3の外径よりも小さくなるように、調整される。スリーブ4は、例えば、スピニング加工方法、しごき加工方法によって、筒状体に形成される。このスリーブ4は、少なくとも外周面が平滑に調整されているのが好ましい。
この発明に係る製造方法においては、所望により、ローラ原体7における発泡弾性層3の外周面に接着剤を塗布する。この接着剤は、発泡弾性層3の外周面に、好ましくは発泡弾性層3の外周面に均一に、塗布される。なお、接着剤は、発泡弾性層3に代えて、又は、加えて、スリーブ4の内周面に塗布してもよい。発泡弾性層3の外周面等に接着剤を塗布する方法は、特に限定されず、スプレー法、浸漬法、リングコーター法、ロールコーター法等が挙げられる。接着剤を発泡弾性層3の外周面等に塗布する際に、接着剤を希釈剤等で適宜希釈することができる。流動性接着剤は、発泡弾性層3の外周面等に均一に容易に塗布されることができるうえ、接着剤が塗布された塗布層内に気泡等が発生し、又は、気泡等が混入すること等を効果的に防止することができる。その結果、発泡弾性層3とスリーブ4とを強固に接着することができる。接着剤の塗布量は、接着剤層5の厚さが前記範囲内となるように、調整されればよく、例えば、シリコーン系組成物の場合には、0.01〜0.1g/cm2程度に調整される。
次いで、例えば図5に示される製造装置10を用いて、所望により接着剤が塗布されたローラ原体7を、加圧環境下又は減圧環境下で、常温又は加熱下において、スリーブ4内に挿入する。
ローラ原体7をスリーブ4内に挿入するには、まず、図5に示されるように、筐体11、並びに、閉塞端部12及び13を組み立て、前記のようにして作製したスリーブ4を載置部材15における載置面16上に載置して、スリーブ4を所定の位置に配置する。次いで、所望により接着剤が外周面に塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7における軸体2の一方の端部を30に挿入して、第1の装着部材23に固定し、また、軸体2の他方の端部を31に挿入して、第2の装着部材24に固定する。このようにして、支持軸21及び22でローラ原体7を挟持し、支持軸22を、筐体11、載置部材15、載置部材15の載置面16に載置されたスリーブ4及び閉塞端部13に貫通させて、ローラ原体7を、スリーブ4に対して支持部材20の軸線方向上流側(スリーブ4の上流側)に所定の間隔をあけて直列になるように配置し、閉塞端部12で筐体11を閉塞して、製造装置10を組み立てる。このようにローラ原体7を配置すると、図5に示されるように、ローラ原体7(発泡弾性層3)とスリーブ4との間に、スリーブ4に向かって外径が次第に小さくなるテーパ部を有する固定具35が位置する。
次いで、圧力調整装置14を起動し、製造装置10内を加圧又は減圧する。製造装置10内を加圧する場合には、例えば、筐体11内を0.15〜0.48MPaに調整する。製造装置10内の圧力が前記圧力範囲内に到達した後、この圧力範囲をある程度の時間、好ましくは5分間以内にわたって保持し、特に好ましくは数秒以上3分以下にわたって保持する。そうすると、発泡弾性層3は、セル内の気体等が加圧されてセル自体が縮小すると共に発泡弾性層3も縮小するから、その外径は、次第に小さくなり、例えば図6に示されるようにスリーブ4の内径よりも小さくなる。発泡弾性層3を縮小する割合は、スリーブ4の内径よりも小さければ特に限定されない。
製造装置10内を減圧する場合には、例えば、3〜100hPaに調整する。製造装置10内の圧力が前記圧力範囲内に到達した後、この圧力範囲をある程度の時間、好ましくは数秒以上2時間以下にわたって保持し、特に好ましくは数秒以上1時間にわたって保持する。そうすると、発泡弾性層3は、初期においてはセル内の圧力が減圧環境下よりも大きいものの、所定の減圧環境下にしばらく置かれると、セル内の気体等が徐々に発泡弾性層3から放出されるから、その外径は、一旦拡径した後、次第に小さくなり、例えば図6に示されるようにスリーブ4の内径よりも小さくなる。発泡弾性層3を縮小にする割合は、スリーブ4の内径よりも小さければ特に限定されない。
このようにして、発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径よりも小さくなった状態で、支持部材20における第1の支持軸21及び第2の支持軸22を手動又は自動により、スリーブ4側(支持部材20の軸線方向の下流側、具体的には図6において下側)に、前進させ、図6に示されるように、支持部材20に支持されたローラ原体7をスリーブ4内に挿入する。このとき、支持部材20は、筐体11内を貫通すると共に、支持部材20における軸線方向の2箇所が封止部材17で固定されているから、支持部材20の軸線方向における前後進によって、支持部材20の軸線がぶれることなく、1つの直線(図6において一点鎖線で示されている。)を軸線として、前後進する。そして、支持部材20が前進すると、図6に示されるように、固定具35すなわちテーパ部が、まず、スリーブ4内に進入し、スリーブ4内を移動しつつ、スリーブ4に軸線のずれ及び/又は形状の変形が生じている場合には、このずれ及び形状の変形を修正する。このように、テーパ部は、スリーブ4内をその軸線方向に移動しつつ、テーパ部の背後に位置するローラ原体7(発泡弾性層3)のスリーブ4への挿入を案内する。すなわち、ローラ原体7(発泡弾性層3)のスリーブ4への挿入に先立って、テーパ部がスリーブ4内に進入し、スリーブ4のずれ及び形状の変形を修正して、ローラ原体7(発泡弾性層3)とスリーブ4との軸線を一致させつつ、ローラ原体7(発泡弾性層3)をスリーブ4の内部に案内する。
このようにして、ローラ原体7(発泡弾性層3)とスリーブ4との軸線が一致するように、ローラ原体7(発泡弾性層3)をスリーブ4内に容易に挿入することができる。ローラ原体7(発泡弾性層3)のスリーブ4内への挿入が完了すると、支持部材20の装着部材24は、スリーブ4の内径よりも小さな外径を有し、載置部材15は筐体11の前記した位置に設置されているから、スリーブ4の内部及び載置部材15を経由し、載置部材15と閉塞端部13との間に画成される空間内に到達する(図6参照。)。
ローラ原体7(発泡弾性層3)のスリーブ4内への挿入は、加圧環境下であっても減圧環境下であっても、常温下又は加熱下において、実施する。なお、発泡弾性層3の外周面に接着剤が塗布されている場合には、当然に、流動性接着剤の硬化温度未満に加熱される。操作性等を考慮すると、常温下において、ローラ原体7をスリーブ4内に挿入するのがよい。
次いで、発泡弾性層3が収縮したローラ原体7をスリーブ4内に挿入した状態を保持したまま、前記圧力環境下における加圧状態又は減圧状態を解除し、所望により、スリーブ4に挿入されたローラ原体7を製造装置10から取り出し、大気圧下に静置する。そうすると、スリーブ4の内径よりも小さく縮径した発泡弾性層3は徐々に拡張又は拡径し、その外周面がスリーブ4の内周面に(接着剤層を介して)当接し、最終的には圧接する。なお、スリーブ4に挿入されたローラ原体7を静置する時間は、圧力環境下における圧力及び圧力環境下に置かれた時間等により、適宜選択されるが、通常、10秒以上1時間以下である。
なお、発泡弾性層3の外周面及び/又はスリーブ4の内周面に接着剤を塗布した場合には、発泡弾性層3とスリーブ4との間に存在する接着剤を硬化させる。接着剤を硬化させる条件は、塗布した接着剤に応じて、選択される。このようにして接着剤を硬化すると、発泡弾性層3とスリーブ4とを強固に接着することができる。接着剤を硬化させる装置は、前記硬化条件を実現可能な装置であればよく、例えば、オーブン、送風乾燥機、赤外線加熱器等の各種加熱器及び各種乾燥機等が挙げられる。
このようにして製造される弾性ローラ1は、発泡弾性層3とスリーブ4とを備えてなり、180℃に15分加熱したときに、加熱前の常温における圧縮荷重値が加熱後の圧縮荷重値よりも大きいから、たとえ外部加熱手段を備えた定着装置等に装着されて所定の温度に加熱されても、定着装置内での加圧ローラとの圧接部におけるニップ幅をほぼ一定に保つことができ、その結果、この定着装置に搬送されてきた記録体をその搬送状態を維持したまま前記圧接部で均一に加圧してしわの発生を防止することができる。
このような特性を有する、この発明に係る弾性ローラ1は、前記したように、如何なる種類の定着装置に用いられても、記録体にしわが発生することを防止することができる。特に、この発明に係る弾性ローラ1は、外部加熱手段を備えた定着装置に用いられても、記録体にしわが発生することを防止することができる。したがって、この発明に係る弾性ローラは、画像形成装置用の定着装置、特に、外部加熱手段を備えた定着装置に好適に用いられる。具体的には、この発明に係る弾性ローラ1は、例えば、図7に示される画像形成装置40、より具体的には、この画像形成装置40の定着装置60に内蔵される定着ローラ61として、配設されることができる。
図7に示されるように、画像形成装置40は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体41例えば感光体と、像担持体41に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体41を帯電させる帯電手段42例えば帯電ローラと、像担持体41の上方に設けられ、像担持体41に静電潜像を形成する露光手段43と、像担持体41に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体41に一定の層厚で現像剤52を供給し、静電潜像を現像する現像手段50と、像担持体41の下方に圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体41から記録体46に転写する転写手段44例えば転写ローラと、記録体46の搬送方向の下流に設けられ、記録体46に転写された現像剤52(静電潜像)を定着させる定着装置60と、記録体46に転写されず像担持体41に残留した現像剤52及び/又は像担持体41に付着したゴミ等を除去するクリーニング手段45とを備えて成る。
図7に示されるように、現像手段50は、像担持体41に対向する位置に開口部を有し、現像剤52を収納する現像剤収納部51と、現像剤収納部51内に設けられ、現像剤52を均一に攪拌する攪拌機53と、現像剤収納部51の開口部に、像担持体41に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体41に現像剤52を一定の層厚で供給する回転可能な現像剤担持体54例えば現像ローラと、現像剤担持体54の上方に設けられ、現像剤担持体54に当接して現像剤52の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤52を帯電させる現像剤規制部材55例えば弾性ブレードとを備えて成る。
図7に示されるように、定着装置60は、記録体46を通過させる開口65を有する筐体64内に、定着ローラ61と、定着ローラ61と対向配置された加圧ローラ62と、定着ローラ61を外部から加熱する外部加熱手段63とを備え、定着ローラ61と加圧ローラ62とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る。加圧ローラ62はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、定着ローラ61に当接又は圧接している。この定着装置60は、外部加熱手段63として加熱用コイルが装備され、誘導加熱方法が採用されている。外部加熱手段63としての加熱用コイルは、定着ローラ61における軸線方向の長さとほぼ同じ長さを有する部材であり、定着ローラ61の表面より一定の間隔を隔てて定着ローラ61に略並行に配置されている。この加熱用コイルは、図示しないが、通常、フェライト等の強磁性体で、スイッチング電源用として用いられている代表的な形状であるI型、E型及びU型等に形成され、導線が巻かれて成る。加熱用コイル63の導線に高周波の交流が通電されると、スリーブ4内に渦電流が発生し、そのジュール熱によって、スリーブ4が誘導加熱され、その結果、定着ローラ61が加熱される。
この定着装置60において、外部加熱手段は、誘導加熱方法の他に、ハロゲンヒーター及び反射板等を用いた輻射加熱方法、加熱器等を直接接触させて加熱する直接接触加熱方法等を採用することができ、外部加熱手段が配置される位置も特に限定されない。なお、この定着装置60は、外部加熱手段に代えて、又は、外部加熱手段に加えて、内部加熱手段を採用することもできる。
画像形成装置40は、次にように作用する。まず、図7の矢印に示されるように、像担持体41が時計方向に回転しつつ、クリーニング手段45によってその表面の現像剤52及び/又はゴミ等が除去された後、帯電手段42によって一様に帯電され、次いで、露光手段43によって画像が露光され、像担持体41の表面に静電潜像が形成される。
一方、現像手段50において、現像剤担持体54が図9に示される矢印方向に回転することによって、現像剤52が現像剤担持体54に供給され、供給された現像剤52が現像剤担持体54と現像剤規制部材55との間を通過して、所望の層厚に規制されると共に所望のように帯電される。
次いで、所望の層厚及び帯電量を有する現像剤52が現像剤担持体54を介して像担持体41に供給され、像担持体41に形成された静電潜像が現像剤52によって現像されて、この静電潜像が現像剤像として可視化される。次いで、像担持体41上に現像された現像剤像は、像担持体41と転写手段44との間に搬送される記録体46上に転写手段44によって転写される。現像剤像が転写された記録体46は、定着装置60に搬送され、加圧ローラ62と加熱用コイル63によって加熱された定着ローラ61との当接部又は圧接部を通過する際に、加熱及び/又は加圧されて、転写された現像剤像(静電潜像)が永久画像として記録体46に定着される。このようにして、記録体46に画像を形成することができる。
そして、この画像形成装置40は、定着ローラ61として、180℃に15分加熱した後の圧縮荷重値よりも大きい加熱前の常温における圧縮荷重値を有する弾性ローラ1を備えているから、高品質の画像を長期間にわたって形成することができる。
画像形成装置40は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、弾性ローラ1が配設される画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置40は、現像手段に単色の現像剤のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、弾性ローラ1が配設される画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置40は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
この発明における弾性ローラは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、弾性ローラ1は、スリーブ4が最外層とされているが、この発明において、スリーブは最外層である必要はなく、スリーブは外部加熱手段によって加熱される位置に形成されていればよい。また、弾性ローラは、用途に応じて、軸体内、発泡弾性層内、又は軸体と発泡弾性層との間に、加熱体、例えば、電熱器、発熱コイル等を備えていてもよい。
また、この発明においては、スリーブ4の外周面に、所望により、他の層、例えば、発泡弾性層、離型層、コート層、表面層及び/又は保護層等が形成されてもよい。弾性層は弾性を確保するための層であり、各種のゴム等で形成されればよく、ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。弾性層の厚さは20〜500μmであるのが好ましく、100〜400μmであるのが特に好ましい。また、離型層は現像剤の離型性を確保するための層であり、各種の樹脂、カップリング剤等で形成されればよく、樹脂としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、カップリング剤としては、シランカップリング剤等が挙げられる。離型層の厚さは15〜200μmであるのが好ましく、20〜50μmであるのが特に好ましい。コート層、表面層及び保護層は、スリーブ4の外周面に定法に従って、通常、1〜100μmの厚さに、形成される。コート層、表面層及び保護層を形成する材料は、特に制限されるものではないが、弾性ローラ1は被当接体に当接又は圧接されるから、永久変形しにくい材料であるのが好ましく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。なお、この発明において、スリーブ4は、前記金属材料で形成された一層構造の筒状体、又は、前記金属材料で形成された一層構造の筒状体の外周面に、シリコーンゴムで形成された弾性層とフッ素樹脂で形成された離型層とがこの順で積層された積層体であるのが好ましい。
さらに、弾性ローラ1は、一層構造のスリーブ4を備えているが、この発明において、スリーブは、一層構造とされても二層以上が積層された積層構造とされてもよい。
また、弾性ローラ1は、発泡弾性層3の外周面にスリーブ4が直接形成されているが、この発明において、スリーブは、接着剤層等を介して発泡弾性層3の外周面に形成されてもよい。接着剤層の厚さは10〜300μmに調整されるのが好ましい。接着剤層を構成する接着剤は、例えば、シリコーン系接着剤(商品名「KE−44」及び「KE−45」、いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。接着剤は、室温(25℃)で流動性、具体的には、25℃における粘度が15〜150Pa・sである流動性接着剤であるのが、接着剤の塗布層内に気泡等が発生し、混入すること等を防止することができ、発泡弾性層3とスリーブ4とを強固に接着することができる点で、好ましい。流動性接着剤における粘度は、JIS K 6249に準じて(BH型粘度計を使用)によって測定する。前記流動性接着剤は、例えば、シリコーン系接着剤として、付加型シリコーンRTV(例えば、商品名「KE1880」(粘度(25℃)84Pa・s)、商品名「KE1830」(粘度(25℃)110Pa・s)、商品名「KE1833」(粘度(25℃)150Pa・s)、縮合型シリコーンRTV(例えば、商品名「KE441」(粘度(25℃)15Pa・s)(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。アクリル系接着剤として、アクリル変性シリコーン樹脂(例えば、商品名「スーパーX 8008」(粘度(25℃)90Pa・s)、商品名「スーパーX 8008 LLブラック」(粘度(25℃)14Pa・s)、商品名「スーパーX 8008クリア」(粘度(25℃)65Pa・s)(いずれもセメダイン株式会社製)等が挙げられる。接着剤は耐熱性を有しているのが好ましく、具体的には、150〜250℃程度の耐熱性を有しているのが好ましい。耐熱性は、JIS K 6833に規定された軟化温度測定法によって測定される。
(実施例1)
まず、無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(直径12mm×長さ350mm、SUM22)をトルエンで洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製:商品名)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギアーオーブンを用いて、180℃の温度にて30分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、プライマー層を形成した。
次いで、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材とを含むシリコーンゴム組成物「KE−904FU」(信越化学工業株式会社製:商品名)100質量部と、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部と、有機系発泡剤:アゾビス−イソブチロニトリル「KEP−13」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.5質量部と、付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤「R−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)0.5質量部と、有機過酸化物架橋剤「C−3」(信越化学工業株式会社製:商品名)適量と、耐熱性向上剤「KEP−12」(信越化学工業株式会社製:商品名)1.0質量部とを、二本ロールで十分に混練して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を調整した。
次いで、プライマー層を形成した軸体2と、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物とを、押出成形機にて一体分出し、次いで、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を250℃で10分間加熱して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を発泡架橋させた。その後、さらに、ギアーオーブンを用いて、200℃で7時間にわたって、発泡架橋後の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を二次加熱し、常温にて1時間放置した。二次加熱してなる付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を、円筒研削盤にて、29.1mmの外径に調整して、軸体2の外周面にゴム硬化体5を成形した。このゴム硬化体5は、軸線方向の長さが330mmであり、その軸線方向における略中央部のアスカーC硬度は31であった。
次いで、図3に示す押圧処理装置80を用いて下記条件にて前記押圧方法1「トラバース押圧ローラによる押圧処理」をゴム硬化体5に施し、発泡弾性層3を備えたローラ原体7を作製した。この押圧処理装置80におけるトラバース押圧ローラ84は、外径15mmの金属製軸体の外周面に、外径50mm、軸線方向の長さ50mmの鉄(S45C)製円筒体を備えていた。この円筒体の硬度は前記ゴム硬化体5よりも大きな値を有していた(具体的には、HRC硬度で33〜43の範囲内であった。)。このトラバース押圧ローラ84のゴム硬化体5に対する押圧量dを5.0mmに調整した後、ゴム硬化体5を回転数200rpm/minで回転させた状態で、トラバース押圧ローラ84をゴム硬化体5における一方の端部から他方の端部へと一方向(図3に示された矢印の方向)に、移動速度150mm/minで、移動させた。次いで、同条件で、ゴム硬化体5における前記他方の端部から前記一方の端部へとトラバース押圧ローラ84を逆方向に移動させた。このようにして、発泡弾性層3を備えたローラ原体7を作製した。このローラ原体7における前記測定方法による平均セル径及び連泡率を第1表に示した。
次いで、図5に示される製造装置10を準備した。筐体11、閉塞端部12及び13、載置部材15、支持軸21及び22、並びに、挟持部材23及び24をそれぞれS45Cで形成し、封止部材17をニトリルゴムで形成した。筐体11は外径55mm、内径50mm、長さ2200mmであり、閉塞端部12は外径55mm、内径50mm、長さ1.5mmであり、閉塞端部13は外径55mm、内径10mm、長さ30mmであった。さらに、スリーブ4(ステンレス鋼(SUS304)製、厚さ40μm、内径29.0mm、長さ330mm、引張強度950MPa)を準備した。
次いで、作製したローラ原体7における発泡弾性層3の外周面の全面に、流動性接着剤(商品名「KE1880」、粘度(25℃)84Pa・s、信越化学工業株式会社製)を、溶剤で希釈せずに、ロールコーターで、塗布量0.025g/cm2(硬化後の接着剤層の厚さが10μm)となるように、均一に塗布した。この流動性接着剤の耐熱性は180℃であり、流動性接着剤の硬化物における引張せん断接着強さは2.2MPaであった。
次いで、図5に示されるように、製造装置10を組み立て、載置部材15における載置面16上にスリーブ4を載置した。さらに、流動性接着剤が塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7における軸体2の両端部を挟持部材23及び24に固定して、1組の支持軸21及び22でローラ原体7を挟持し、ローラ原体7がスリーブ4の上流方向に直列になるように筐体11内に配置し、閉塞端部12で筐体11を閉塞して、製造装置10を気密状態に組み立てた。次いで、圧力調整装置14を起動して、製造装置10を加圧し、製造装置10内の圧力を0.3MPaに到達させた。この圧力を1分にわたって維持し、発泡弾性層3を加圧して、スリーブ4の内径よりも小さくなるまで圧縮した。発泡弾性層3が圧縮された状態で、挿入装置20の1組の支持軸21及び22を手動により、スリーブ4側に前進させ、図6に示されるように、挿入装置20に支持されたローラ原体7をスリーブ4内に挿入した。
次いで、製造装置10内の圧力を解除して、製造装置10内からスリーブ4内に挿入されたローラ原体7を取り出し、このスリーブ4内に挿入されたローラ原体7を、乾燥機(商品名「HIGH TEMPRATURE CHAMBER」、楠本化成株式会社製)を用いて、150℃に0.5時間加熱して、流動性接着剤を硬化させた。このようにして、実施例1の弾性ローラを製造した。
(実施例2)
前記押圧方法1を下記条件による前記押圧方法2「プランジ押圧ローラによる押圧処理」に変更した以外は、実施例1と基本的に同様にして、実施例2の弾性ローラを製造した。
押圧方法2は、図4に示す押圧処理装置81を用いて実施した。この押圧処理装置81におけるプランジ押圧ローラ87は、外径15mmの金属製軸体の外周面に、外径40mm、軸線方向の長さ340mmの鉄(S45C)製円筒体を備えていた。この円筒体のアスカーC硬度は前記ゴム硬化体5よりも大きな値を有していた(具体的には、HRC硬度で33〜43の範囲内であった。)。このプランジ押圧ローラ87のゴム硬化体5に対する押圧量dを4.0mmに調整した後、ゴム硬化体5を回転数30rpm/minで10分間にわたって回転させた。このようにして、発泡弾性層3を備えたローラ原体7を作製した。このローラ原体7すなわち実施例1の弾性ローラにおける発泡弾性層3に存在するセルの平均セル径及び連泡率を第1表に示した。
(実施例3及び5)
前記押圧方法1「トラバース押圧ローラによる押圧処理」における条件「押圧量d」を第1表に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3及び5の弾性ローラをそれぞれ製造した。これらの弾性ローラにおける発泡弾性層3の平均セル径及び連泡率を第1表に示した。
(実施例4)
前記押圧方法1「トラバース押圧ローラによる押圧処理」において、移動速度150mm/minで、トラバース押圧ローラ84を、ゴム硬化体5における一方の端部から他方の端部へと一方向に移動させた後、前記他方の端部から前記一方の端部へと逆方向に移動させ、次いで、前記移動速度で、前記一方の端部から他方の端部に向かって100mmまで一方向に移動させた後、前記他方の端部から前記一方の端部に向かって100mmまで逆方向に移動させた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の弾性ローラを製造した。この弾性ローラにおける発泡弾性層3の平均セル径及び連泡率を第1表に示した。
(実施例6)
前記押圧方法1「トラバース押圧ローラによる押圧処理」において、移動速度150mm/minで、トラバース押圧ローラ84を、ゴム硬化体5における一方の端部から他方の端部へと一方向に移動させ、次いで、前記他方の端部から前記一方の端部へと逆方向に移動させる工程を1サイクルとして2サイクル繰り返して行った以外は、実施例1と同様にして、実施例6の弾性ローラを製造した。この弾性ローラにおける発泡弾性層3の平均セル径及び連泡率を第1表に示した。
(実施例7及び8)
前記ローラ原体7におけるゴム硬化体5の硬度をそれぞれ22及び51に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7及び8の弾性ローラを製造した。これらの弾性ローラにおける発泡弾性層3の平均セル径及び連泡率を第1表に示した。なお、ゴム硬化体5の硬度は、実施例7において有機系発泡剤の配合量を3.5質量部とすることによって、実施例8において有機系発泡剤の配合量を1.5質量部とすることによって、それぞれ調整した。
(実施例9)
プランジ押圧ローラ87の軸線方向の長さを150mmに変更した以外は、実施例2と同様にして、実施例9の弾性ローラを製造した。この弾性ローラにおける発泡弾性層3の平均セル径及び連泡率を第1表に示した。
(比較例1)
前記押圧方法1を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の弾性ローラを製造した。この弾性ローラにおける発泡弾性層3の平均セル径を第1表に示した。
(比較例2)
前記押圧方法1の条件を第1表に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の弾性ローラを製造した。この弾性ローラにおける発泡弾性層3の平均セル径及び連泡率を測定した。
(比較例3)
前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aにおける有機過酸化物架橋剤に代えて水を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ローラ原体を作製した。しかし、前記製造装置10において所定の圧力に加圧しても、発泡弾性層3が縮径せず、スリーブ4に挿入することができなかった。なお、作製したローラ原体の発泡弾性層における平均セル径及び連泡率を第1表に示した。
(比較例4)
実施例1と同様のスリーブ4を準備し、このスリーブ4の外周面に、配列間隔10mmで縦横方向に、直径1mmの貫通孔を穿孔した。このようにして作製した多孔スリーブを用いて、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(弾性ローラの硬度の測定)
このようにして製造した各弾性ローラの硬度を、弾性ローラの軸線方向における両端部近傍(端部から30mmの外表面円周上)及び中央部のアスカーC硬度を前記方法に従って測定した。測定値を算術平均した値を「弾性ローラのアスカーC硬度」として第1表に示す。
(圧縮荷重値の測定)
このようにして製造した各弾性ローラにおいて、スリーブ4の上から、弾性ローラの軸線方向の略中央部及び両端部(端縁から30mmの位置)を測定点(周方向については、均等な間隔で2箇所)として、常温における圧縮荷重値C1を前記方法に従って測定した。次いで、これらの弾性ローラを180℃に15分加熱した。加熱後速やかに(約1分以内)、同様にして、圧縮荷重値C2を測定した。また、各弾性ローラの圧縮荷重値C1−圧縮荷重値C2を算出した。これらの結果を第1表に示す。
(振れの測定)
製造した各弾性ローラにおける振れを前記測定方法に従って測定した。その結果を第1表に示す。
(しわ発生試験)
次いで、図8に記載された耐久性試験装置70を用いて、記録体にしわが発生するか否かを評価した。具体的には、この耐久性試験装置70は、筐体内部の下面に固定され、内部ヒータ72を備えた加熱ローラ71と、この加熱ローラ71の軸方向に沿って、その両側に設けられた保温材73と、加熱ローラ71と対向するように、筐体内部の上面に上下動可能に設けられた試験ローラ装着部74と、試験ローラ装着部74を上下に移動可能な押圧力調整手段75、例えば、押圧調整用マイクロメータとを備えている。なお、加熱ローラ71として、直径20mmの金属(ステンレス鋼、SUS304)製ローラを用いた。
製造した各弾性ローラを、試験ローラ装着部74のベアリングに装着し、図8に示されるように、押圧力調整手段75を操作して、装着した弾性ローラ(図8において、「弾性ローラ76」)を加熱ローラ71に圧接し、加熱ローラ71と弾性ローラ76との圧接部において、弾性ローラ76における発泡弾性層が内部に3mm凹陥するように、弾性ローラ76を固定した(すなわち、弾性ローラ76の外径と加熱ローラ71との外径の和よりも3mm短くなるように、弾性ローラ76の中心軸と加熱ローラ71の中心軸との距離dを調節した。)。次いで、内部ヒータ72を起動し、加熱ローラ71の表面温度を180℃に調節した。その後、試験ローラ装着部74に装備された駆動手段(図示しない。)により、回転速度180rpmで回転駆動させた。この状態で、前記加熱ローラ71と弾性ローラ76との圧接部に記録体を通紙した。
その結果、耐久性試験装置70の前記圧接部を通過してきた記録体にしわを目視で確認できなかった場合を「◎」、耐久性試験装置70の前記圧接部を通過してきた記録体に目視で何とか確認できる程度の微少なしわが発生していた場合を「○」、耐久性試験装置70の前記圧接部を通過してきた記録体に目視で十分確認できる程度の比較的大きな又は長いしわが発生していた場合を「×」、耐久性試験装置70の前記圧接部を通過してきた記録体を変形させる程大きな又は長いしわが発生していた場合を「××」とした。
このしわ発生試験において、図8に記載された耐久性試験装置70における加熱ローラ71と弾性ローラ76との前記圧接部は、例えば図7に記載された画像形成装置40の定着装置60よりも、圧接力が大きくなるように、設定されているから、この耐久性試験装置70の前記圧接部を通過してくる記録体にしわが発生していなければ、実施例及び比較例で製造した弾性ローラが装着された前記定着装置60等を通過してくる記録体にもしわが発生することがなく、一方、耐久性試験装置70の前記圧接部を通過してくる記録体にしわが発生していれば、実施例及び比較例で製造した弾性ローラが装着された前記定着装置60等を通過してくる記録体にもしわが発生する可能性が高い。したがって、このしわ発生試験における評価が「○」以上であれば、定着装置、例えば図7に示される定着装置60等に装着されても、記録体にしわが発生することがない。
なお、比較例4の弾性ローラは、第1表に示されるように、「弾性ローラの振れ」が例えば定着ローラとしての使用に耐え得る限界を超えていたので、前記「しわ発生試験」を行わなかった(第1表において「−」で示した。)。