この発明に係る弾性ローラは、軸体と、平均セル径が200〜400μmであり、セル径の標準偏差が150〜250μmであるセルを有する発泡弾性層とを備えて成る。このように、弾性ローラは、前記範囲の平均セル径及び前記範囲の標準偏差を有するセルが形成された発泡弾性層を備えているから、低硬度化されているにもかかわらず、セルの破泡及び破壊が防止され、長期間にわたってセルの初期形成状態を維持することができる。すなわち、この発明に係る弾性ローラは、低硬度化され耐久性に優れた発泡弾性層を備えている。
この発明に係る弾性ローラにおいて、前記平均セル径が200μm未満である場合に、画像形成装置用定着装置に装着したときに一定のニップ幅を確保しようとすると、発泡弾性層を過度に変形させる必要があり、その結果、発泡弾性層に形成されたセルが破泡及び破壊しやすくなることがある。一方、セルの平均セル径が400μmを超えると、セル内に現像剤が入り込んで残存し易く、セルが破泡及び破壊しやすくなることがある。発泡弾性層の耐久性をより一層向上させることができる点で、平均セル径は230〜380μmであるのが好ましく、250〜350μmであるのが特に好ましい。
この発明に係る弾性ローラにおいて、前記標準偏差が150μm未満である場合、又は、250μmを超える場合には、発泡弾性層が軸体に強固に接着されず、発泡弾性層における軸体の外周近傍に形成されたセルが破泡及び破壊されやすくなることがある。発泡弾性層の低硬度化と耐久性向上とをより一層高い水準で両立することができる点で、セル径の標準偏差σは170〜230μmであるのが好ましく、180〜210μmであるのが特に好ましい。
セルの平均セル径は、発泡弾性層の表面、又は、発泡弾性層を任意の面で切断したときの切断面において、約20mm2の領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セルにおける開口部の最大長さを測定して、測定された最大長さ(セル径と称する。)を算術平均して得られた平均長さとして、求めることができる。セル径の標準偏差σは、前記のようにして測定されたセル径の標準偏差σを定法により求めることができる。セルにおける平均セル径及び標準偏差σは、後述する発泡シリコーンゴム組成物に含有される発泡剤の配合量、発泡シリコーンゴム組成物の硬化条件等により、調整することができる。例えば、発泡シリコーンゴム組成物が急激に硬化する硬化条件を選択すると、通常、平均セル径及び標準偏差σは小さくなり、発泡シリコーンゴム組成物が徐々に硬化する硬化条件を選択すると、通常、平均セル径及び標準偏差σは大きくなる。
例えば、この発明に係る弾性ローラは、20〜60のアスカーC硬度を有している。アスカーC硬度が前記範囲であると、低硬度化が達成され、被当接体に対する所望の当接状態又は圧接状態を保持することができるから、高品質の画像を形成することに貢献することができる。アスカーC硬度は、JIS K6253に準拠して、弾性ローラ表面の複数箇所を測定し、測定値を算術平均した値とすることができる。発泡弾性層のアスカーC硬度は、例えば、後述する発泡シリコーンゴム組成物に含有される発泡剤の配合量、発泡シリコーンゴム組成物の硬化条件等により、調整することができる。例えば、発泡剤の配合量を多くすると、又は、硬化条件を厳しくすると、通常、アスカーC硬度は小さくなる。
また、この発明に係る弾性ローラは、例えば、下記耐久性試験前後のアスカーC硬度の変化率(以下、硬度変化率と称することがある。)が90%以上、好ましくは95%以上となる高い耐久性を有している。下記硬度変化率が前記範囲内にあると、定着装置又は画像形成装置に長期間にわたって装着されても、発泡弾性層が高い耐久性を発揮して、高品質の画像を形成することに貢献することができる。
下記耐久性試験を実施する前に、この発明に係る弾性ローラにおける軸線方向の中央部分、両端部分におけるアスカーC硬度を、予め、前記方法に準拠して、測定する。アスカーC硬度を測定したこの発明に係る弾性ローラを図4に示される耐久性試験機に装着して、前記硬度変化率を算出することができる。図4に示される耐久性試験装置70は、筐体内部の下面に固定され、内部ヒータ72を備えた加熱ローラ71と、この加熱ローラ71の軸方向に沿って、その両側に設けられた保温材73と、加熱ローラ71と対向するように、筐体内部の上面に上下動可能に設けられた試験ローラ装着部74と、試験ローラ装着部74を上下に移動可能な押圧力調整手段75、例えば、押圧調整用マイクロメータとを備えている。なお、加熱ローラ71として、直径20mmの金属(ステンレス鋼(SUS304))製ローラが装着されている。
この発明に係る弾性ローラを弾性ローラ76としてそれぞれ、試験ローラ装着部74のベアリングに装着し、図4に示されるように、押圧力調整手段75を操作して、装着した弾性ローラ76を加熱ローラ71に圧接し、加熱ローラ71と弾性ローラ76との圧接部において、弾性ローラ76における弾性層が内部に4mm凹陥するように、弾性ローラ76を固定する(すなわち、弾性ローラ76の半径と加熱ローラ71との半径の和よりも4mm短くなるように、弾性ローラ76の中心軸と加熱ローラ71の中心軸との距離dを調節する。)。
次いで、保温材73及び内部ヒータ72を起動し、加熱ローラ71の表面温度を180℃に調節する。その後、試験ローラ装着部74に装備された駆動手段(図示しない。)により、回転速度130rpmで100時間連続稼動し、弾性ローラ76における弾性層の凹陥状態を解除後、弾性ローラ76を常温で24時間放置して、耐久性試験を終了する。
耐久性試験が終了した後のこの発明に係る弾性ローラにおける軸線方向の中央部分、両端部分におけるアスカーC硬度を前記方法に準拠して測定する。次いで、この発明に係る弾性ローラの同一部分における耐久性試験前後のアスカーC硬度測定結果から、式:(耐久試験後のアスカーC硬度/耐久試験前のアスカーC硬度)×100(%)に従って、各測定位置における部分硬度変化率を求め、そのうちの最大の部分硬度変化率を、この発明に係る弾性ローラの硬度変化率とする。
この発明に係る弾性ローラの一実施例としての弾性ローラ1Aは、例えば、図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3とを備えてなる。
この弾性ローラ1は、200〜400μmの平均セル径及び150〜250μmのセル径の標準偏差を有するセルが形成された発泡弾性層3を備えているから、前記したように、高い耐久性を発揮する。このセルは、前記したように、好ましくは230〜380μm、特に好ましくは250〜350μmの平均セル径を有し、好ましくは170〜230μm、特に好ましくは180〜210μmのセル径の標準偏差σを有している。
軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体2は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック若しくは金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。軸体2の外径は弾性ローラ1Aの用途等に応じて適宜の外径に調整される。
発泡弾性層3は、後述する発泡シリコーンゴム組成物によって、軸体2の外周面に形成されている。発泡弾性層3は、その内部及び/又は外表面にセルを有する発泡弾性層とされる(図1において発泡弾性層3の外表面に開口したセルは図示しない。)。発泡弾性層3がセルを有していると、発泡弾性層3を低硬度化することができる。ここで、発泡弾性層3に形成されるセルは、発泡シリコーンゴム組成物に含有される発泡剤の発泡又は分解等によって生じる中空領域をいう。発泡弾性層3に形成される複数のセルは、他のセルに接することのない状態若しくは連通することのない状態(独立セル状態と称する。)、他のセルに接している状態若しくは連通している状態(連通セル状態と称する。)、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態の何れの状態にあってもよい。なお、セルの形状は特に限定されず、独立セル状態にあるセルの形状は略球状、楕円球体状、不定形であってもよく、連通セル状態にあるセルの形状は複数のセルが連通して管状となっていてもよい。
発泡弾性層3に形成されたセルは、周囲に存在する他のセルとの距離(以下、セル間距離と称することがある。)が、200〜400μmであるのが好ましく、300〜400μmであるのが特に好ましい。セル間距離が前記範囲内にあると、発泡弾性層3にセルをより一層均一に形成して発泡弾性層3の硬度を低下させることができるうえ、形成されたセルの破泡及び破壊を効果的に防止することができる。
前記セル間距離は、前記平均セル径と同様にして電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する複数のセルにおいて、ある特定のセルと、その周囲に存在する複数のセルとの中心間距離を測定し、測定された中心間距離を算術平均して得られた値として、求めることができる。なお、セルの中心は、セル輪郭を基準とした四半円点によって判断することができる。セルにおけるセル間距離は、後述する発泡シリコーンゴム組成物に含有される発泡剤の配合量、発泡シリコーンゴム組成物の硬化条件等により、調整することができる。例えば、発泡シリコーンゴム組成物が急激に硬化する硬化条件を選択すると、通常セル間距離は小さくなり、発泡シリコーンゴム組成物が徐々に硬化する硬化条件を選択すると、通常セル間距離は大きくなる。
発泡弾性層3は、前記したように、高品質の画像を形成することに貢献することができる点で、20〜60のアスカーC硬度を有しているのが好ましい。例えば、弾性ローラ1Aを定着ローラ又は加圧ローラとして画像形成装置用定着装置に装着する場合には、加圧ローラ又は定着ローラとの所望の圧接状態を保持して、加圧ローラと定着ローラとで形成されるニップ幅を大きくすることができるから、記録体に転写された現像剤像を所望のように定着させることができ、その結果、高品質の画像を形成することに貢献することができる。
発泡弾性層3の厚さは特に限定されないが、通常、2〜20mmに調整されるのが好ましく、3〜12mmに調整されるのが特に好ましい。
この発明に係る弾性ローラの別の一実施例としての弾性ローラ1Bは、図2に示されるように、軸体2と、その外周面に形成された発泡弾性層3と、発泡弾性層3の外周面に形成されたチューブ層4とを備えてなる。
弾性ローラ1Bの軸体2は、弾性ローラ1Aの軸体2と基本的に同様である。また、弾性ローラ1Bの発泡弾性層3は、弾性ローラ1Aの発泡弾性層3と基本的に同様に形成されている。すなわち、弾性ローラ1Bの発泡弾性層3は、平均セル径が200〜400μmであり、セル径の標準偏差が150〜250であるセルを有し、好ましくは、セル間距離が200〜400μmであり、アスカーC硬度が20〜60である。
チューブ層4は、後述する材料によって、発泡弾性層3の外周面に形成されている。発泡弾性層3の外表面にチューブ層4が形成されていると、現像剤の離型性を向上させることができる。チューブ層4は、例えば、1〜100μmの厚さに形成される。
この発明に係る弾性ローラの製造方法を前記弾性ローラ1A及び1B(以下、弾性ローラ1と称することがある。)を例に挙げて説明する。この弾性ローラ1は、例えば、発泡弾性層3を形成する発泡シリコーンゴム組成物を軸体2の外周面に配置し、この発泡シリコーンゴム組成物を発泡硬化させることによって、製造することができる。前記範囲の平均セル径及びその標準偏差σを有するセルを発泡弾性層3に形成するには、前記手段の他に、例えば、前記発泡シリコーンゴム組成物に含有される成分のうち、シリコーンゴム成分及び充填材を加熱処理及び減圧処理して、これらに含有される水の含有量(以下、含水量と称することがある。)を調整する方法が効果的である。すなわち、弾性ローラ1は、シリコーンゴム成分及び充填材を加熱及び/又は減圧して、シリコーンゴム成分及び充填材に含まれる水分の含有率がシリコーンゴム成分と充填材との合計質量に対して0.05質量%以下の範囲にあるゴム組成物を調製し、このゴム組成物に発泡剤等を添加して発泡シリコーンゴム組成物を調製し、次いで、この発泡シリコーンゴム組成物を軸体2の外周面に配置し、発泡シリコーンゴム組成物を発泡硬化することによって、製造されることができる。
この製造方法(以下、この発明に係る製造方法と称することがある。)について具体的に説明する。この発明に係る製造方法においては、まず、軸体2を準備する。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。軸体2に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体2を形成することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、快削鋼、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。
軸体2は、所望により、その外周面にプライマー層が塗布されてもよい。プライマーとしては、特に制限はないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
次いで、発泡弾性層3を形成する発泡シリコーンゴム組成物を準備する。この発泡シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴム成分と充填材と0.05質量%以下の水とからなるゴム組成物を含有している。
前記ゴム組成物に含有されるシリコーンゴム成分としては、シリコーンゴム又はシリコーン変性ゴムであれば特に限定されないが、分子内にビニル基を含有しているシリコーンゴム(ビニル基含有シリコーン生ゴムと称することがある。)であるのが好ましい。
前記ゴム組成物に含有される充填材としては、シリカ系充填材等が好適に挙げられる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)3で示されるシランカップリング剤で表面処理された表面処理シリカ系充填材が好適に挙げられる。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記R’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等が挙げられる。シリカ系充填材の配合量は、例えば、前記シリコーンゴム成分100質量部に対して5〜100質量部である。シリカ系充填材は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記ゴム組成物に含有される水は、通常、前記シリコーンゴム成分及び/又は充填材に含有又は吸着している水であり、その含有率が、前記シリコーンゴム成分と前記充填材との合計質量に対して0.050質量%以下の範囲内に調整される。したがって、前記シリコーンゴム成分と前記充填材とに前記含有率となるように水を添加することもできる。このゴム組成物において、シリコーンゴム成分及び充填材に含まれる水分の含有率が前記範囲内にあると、このゴム組成物を含有する発泡シリコーンゴム組成物の硬化時に形成されるセルのセル径を均一にすることができるうえ、200〜400μmの平均セル径と、150〜250μmのセル径の標準偏差σとを有するセルを容易に形成することができる。セル径をより一層高度に均一にすることができる点で、前記水の含有率は0.040質量%以下であるのが好ましく、0.025質量%以下であるのが特に好ましい。この発明において、前記水は前記ゴム組成物に含有されていなくてもよく、すなわち、前記水の含有率の下限値は0質量%であってもよいが、一般に水の含有率が0質量%になることはない。したがって、前記水の含有率は、通常、0質量%超であり、水含有量を調整するときの作業性等を考慮すると、現実的には、例えば、0.005質量%以上であるのが好ましい。なお、この発明に係る製造方法において、シリコーンゴム成分及び充填材に含まれる水の含有率を前記範囲内に調整するが、準備した発泡シリコーンゴムの含水量が前記範囲内にある場合には、あえて、含水量を調整しなくてもよい。ゴム組成物における水の含有率は、カールフィシャ滴定法によって、測定することができる。
シリコーンゴム成分及び充填材の含水量は、加熱処理及び減圧処理の少なくとも一方の処理を行うことによって、効果的に前記範囲内に調整することができる。前記ゴム組成物には、例えば付加反応架橋剤、付加反応触媒及び反応制御剤等の架橋剤が含有されていないから、加熱処理及び減圧処理が施されてもシリコーンゴム成分が架橋することもなく、加熱条件及び減圧条件が制約されることはない。
加熱処理における条件は、例えば、常圧下で、加熱温度100℃以上、加熱時間1時間以上の条件が挙げられるが、この条件に限定されない。すなわち、加熱処理は、シリコーンゴム成分及び充填材に含まれる水の含有率が前記範囲内となる条件であればよく、例えば、加熱処理中にサンプリングして水の含有率をモニターしながら加熱処理を実施することもできる。
減圧処理における条件は、例えば、室温で、圧力10hPa以下、減圧時間2時間以上の条件が挙げられるが、この条件に限定されない。すなわち、減圧処理は、シリコーンゴム成分及び充填材に含まれる水の含有率が前記範囲内となる条件であればよく、例えば、減圧処理中にサンプリングして水の含有率をモニターしながら減圧処理を実施することもできる。
この製造方法において、加熱処理及び減圧処理は、シリコーンゴム成分及び充填材に含まれる水の含有率を前記範囲内に調整することができれば、それらのうちのいずれか一方が実施されればよく、両方が実施されてもよい。また、加熱処理と減圧処理を同時に、例えば、10hPa以下の圧力で、実施されてもよい。
このようにして水の含有量が前記範囲内にあるゴム組成物を調製することができる。
前記ゴム組成物は、シリコーンゴム成分及び充填材を混合した後、水の含有量を前記範囲内に調製して作製することもできる。シリコーンゴム成分としてのビニル基含有シリコーンゴムと充填材と架橋剤以外の添加剤とを含有するゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。
発泡弾性層3を形成する発泡シリコーンゴム組成物は、前記ゴム組成物に加えて、発泡剤と、架橋剤と、所望により各種添加剤等とを含有している。
発泡剤としては、従来、発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよく、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連通セルを形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立セルを形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。弾性ローラ1においては、発泡剤は、独立セル状態のセルを形成することができる点で、有機系発泡剤であるのがよく、具体的には、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の配合量は、発泡弾性層3に形成されるセルの平均セル径及びその標準偏差σに応じて適宜調整される。発泡剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記架橋剤としては、前記シリコーンゴム成分を架橋させるものであればよく、例えば、付加反応架橋剤、付加反応触媒及び反応制御剤等が挙げられる。各種添加剤としては、例えば、着色剤、難燃性向上剤、熱伝導性向上剤、離型剤、分散剤、粉砕石英及び非補強性シリカ等が挙げられる。これらの各種添加剤は所望の配合量で配合される。
このような発泡シリコーンゴム組成物として、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が特に好ましい。付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、水と、前記発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤とを含有し、所望により、さらに、有機過酸化物架橋剤と耐熱性向上剤と各種添加剤とを含有してもよい。この付加反応型発泡シリコーンゴム組成物において、ビニル基含有シリコーン生ゴム及びシリカ系充填材は前記ゴム組成物におけるシリコーンゴム成分及び充填材である。すなわち、発泡シリコーンゴム組成物は、前記ゴム組成物と、前記発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤とを含有し、所望により、さらに、有機過酸化物架橋剤と耐熱性向上剤と各種添加剤とを含有している。
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムは、分子内にビニル基を含有しているシリコーン生ゴムであればよく、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が好適に挙げられる。ビニル基含有シリコーン生ゴムは一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物に含有される前記シリカ系充填材は、前記ゴム組成物に含有される充填材として例示した前記シリカ系充填材と基本的に同様であり、その含有量も基本的に同様である。
前記付加反応架橋剤は、例えば、一分子中に二個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に挙げられる。付加反応架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.01〜20質量部であるのがよい。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記付加反応触媒は、シリコーン生ゴムの付加反応に通常用いられる触媒であればよく、例えば、周期律表第9属又は第10属の金属単体及びその化合物が挙げられる。付加反応触媒の配合量は、触媒量で十分であり、通常、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物全体に対して1〜1,000ppmであるのがよい。付加反応触媒は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記反応制御剤は、公知の反応制御剤を特に制限されることなく用いることができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。発泡弾性層3に前記範囲の平均セル径及びその標準偏差σを有するセルを形成するには、反応制御剤は、前記発泡シリコーンゴム組成物100質量部に対して、0.25〜0.8質量部であるのが好ましく、0.3〜0.7質量部であるのが特に好ましい。反応制御剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記導電性付与剤は、前記導電性付与剤を特に制限されることなく用いることができる。導電性付与剤の配合量は、発泡弾性層3の導電性を所望の範囲に調整可能な量であればよく、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して2〜80質量部であるのがよい。導電性付与剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記有機過酸化物架橋剤は、単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムと前記シリカ系充填材と前記架橋剤以外の前記各種添加剤とを含有するシリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。
発泡シリコーンゴム組成物は、前記ゴム組成物と、発泡剤と、架橋剤と、所望により各種添加剤等とを混合して調製される。例えば、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、前記ゴム組成物と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤と、所望により有機過酸化物架橋剤及び/又は耐熱性向上剤と、所望により各種添加剤とを混合して調製される。なお、前記ゴム組成物以外の成分は通常水分含有量が小さく、ほとんど無視することができる。
このようにして調製された発泡シリコーンゴム組成物を、軸体2の外周面に配置して、発泡硬化し、発泡弾性層3を形成する。例えば、発泡弾性層3は、公知の成形方法によって、成形と加熱硬化とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。発泡シリコーンゴム組成物の成形方法は、軸体2の外周面に発泡シリコーンゴム組成物を配置することができる方法であればよく、例えば、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、発泡シリコーンゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、成形方法として押出成形等を選択することができる。
発泡シリコーンゴム組成物の硬化条件は、軸体2の外周面に配置された発泡シリコーンゴム組成物が硬化し、発泡剤を含有する場合には、発泡剤が分解又は発泡するのに十分な硬化条件であればよく、発泡シリコーンゴム組成物の組成、発泡剤の種類等に応じて適宜調整される。例えば、発泡シリコーンゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、硬化条件は、通常、100〜400℃、特に200〜400℃の加熱温度、数分以上1時間以下、特に5分以上30分以下の加熱時間であるのが、前記範囲の平均セル径及び標準偏差を有する独立セルを形成することができる点で、好ましい。
発泡シリコーンゴム組成物は、必要に応じて、二次加熱されることもできる。二次加熱は、例えば、前記の条件で架橋された発泡シリコーンゴム組成物を、さらに、押出成形された状態のままで、例えば、180〜250℃、好ましくは190〜230℃で、1〜24時間、好ましくは3〜10時間にわたって、又は、金型を用いて、例えば、130〜200℃、好ましくは150〜180℃で、5分以上24時間以下、好ましくは10分以上10時間以下にわたって、再度加熱されることによって、行われる。
このようにして発泡弾性層3を形成するときに、150〜480%の発泡率に調整されるのが好ましく、200〜450%の発泡率に調整されるのが特に好ましい。発泡率が前記範囲になるように発泡硬化されると、発泡弾性層3の硬度を所望の硬度まで低下させることができると共に、長期間にわたってセルの初期形成状態を維持することもできる。発泡弾性層3の発泡率は、発泡弾性層3の体積及び質量を常法によって測定し、これらから算出することができる。発泡弾性層3の発泡率は、発泡シリコーンゴム組成物に含有される発泡剤の配合量、発泡シリコーンゴム組成物の硬化条件等により、調整することができる。例えば、発泡剤の配合量を多くすると、又は、硬化条件を厳しくすると、通常、発泡率は大きくなる。
発泡弾性層3は、所望により、所望の大きさ及び形状等に調整する研削工程、研磨工程及び/又は切削工程等が施される。研削工程、研磨工程及び/又は切削工程は、従来から利用されている研削盤、円筒研削盤、やすり等により、定法に従って行うことができる。
この発明に係る製造方法においては、所望により、このようにして形成された発泡弾性層3の外周面にチューブ層4が形成される。チューブ層4は、後述する材料を発泡弾性層3の外径とほぼ同じ内径を有する円筒状に予め形成した管体に、発泡弾性層3を挿入して、発泡弾性層3の外表面に形成されるのが、発泡弾性層3の表面に存在する凹凸形状に大きく影響されず、平滑な表面を有するチューブ層4を形成することができる点で、好ましい。もちろん、チューブ層4は、後述する材料を、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、発泡弾性層3の外周面に塗布した後、硬化及び/又は架橋して、形成されてもよい。
チューブ層4を形成する材料は、特に制限されるものではないが、弾性ローラ1Bは被当接体に当接又は圧接されるから、永久変形しにくい材料であるのが好ましく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
このようにして、軸体2の外周面に発泡弾性層3が形成された弾性ローラ1を製造することができる。この製造方法によれば、200〜400μmの範囲において平均セル径の大小にかかわらず、均一なセル径を有するセル、具体的にはセル径の標準偏差が150〜250μmの範囲内にあるセルを形成することができる。したがって、この製造方法によれば、耐久性に優れた発泡弾性層を備えた弾性ローラを製造することのできる弾性ローラの製造方法を提供するという目的を達成することができる。
弾性ローラ1における発泡弾性層3は、200〜400μmの平均セル径及び150〜250μmの平均セル径の標準偏差を有するセルが形成されているから、定着装置又は画像形成装置に長期間にわたって装着しても硬度変化率が小さい。したがって、この発明によれば、硬度変化が小さく耐久性に優れた発泡弾性層を備えた弾性ローラを提供するという目的を達成することができる。
弾性ローラ1は低硬度化と高い耐久性向上とを両立しているから、画像形成装置に装着される弾性ローラ、例えば、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ、現像剤供給ローラ等として好適に用いられ、特に、定着ローラ、加熱ローラ、現像剤供給ローラとして好適に用いられる。そして、弾性ローラ1が画像形成装置の弾性ローラとして装着されると、高品質の画像を長期間にわたって形成することに貢献することができる。
弾性ローラ1は、高度に均一なセル径を有する発泡弾性層3を備えている。したがって、印刷速度が高速化された画像形成装置、画像が高精細化された画像形成装置、及び/又は小型化された画像形成装置等に装着される弾性ローラのように、発泡弾性層3におけるセルの高い均一性が要求される弾性ローラとして特に好適に用いられる。
この発明に係る弾性ローラは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、発泡弾性層3は単層構造とされているが、この発明において、発泡弾性層は複数層を積層した発泡弾性層としてもよい。
また、弾性ローラ1は、用途に応じて、軸体2内、発泡弾性層3内及び/又は軸体2と発泡弾性層3との間に、加熱体、例えば、電熱器、発熱コイル等を備えていてもよい。例えば、弾性ローラ1が熱ローラ定着器の定着ローラとして使用される場合には、軸体2内に加熱体を備えている。
さらに、弾性ローラ1は、軸体2の外周面に発泡弾性層3が形成されているが、この発明において、発泡弾性層は、プライマー層又は接着剤層を介して、軸体の外周面に形成されてもよい。プライマー層を形成するプライマーとしては、特に限定されず、例えば、シランカップリング系プライマー等が挙げられる。また、接着剤層を形成する接着剤としては、特に制限されないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、アミノ基及び/又は水酸基を有する接着剤が好適である。また、これらの樹脂を硬化させるための架橋剤として、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が用いられる。
また、弾性ローラ1Aは発泡弾性層3が最外層となり、弾性ローラ1Bはチューブ層4が最外層となっているが、この発明において、弾性ローラは、発泡弾性層又はチューブ層の外周面に、他の層、例えば、弾性層、離型層、コート層、表面層及び/又は保護層等が形成されてもよい。
この発明に係る弾性ローラ1Aを備えた画像形成装置用定着装置(以下、この発明に係る定着装置と称することがある。)及び画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図3を参照して、説明する。
図3に示されるように、この発明に係る画像形成装置30は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体31例えば感光体と、前記像担持体31の周囲に配置された、帯電手段32例えば帯電ローラ、露光手段33、現像手段40、転写手段34例えば転写ローラ及びクリーニング手段37と、記録体の搬送方向下流側に定着手段35例えば画像形成装置用定着装置とを備えている。この現像手段40は、従来の現像手段と基本的に同様に形成され、具体的には、図3に示されるように、現像剤収納部41と、像担持体31に現像剤42を供給する現像剤担持体44と、現像剤担持体44に現像剤42を供給する現像剤供給手段43と、現像剤42を帯電させる現像剤規制部材45とを備えている。現像剤42は、一成分系の現像剤であれば、乾式現像剤であっても湿式現像剤であってもよく、また、非磁性現像剤であっても磁性現像剤であってもよい。
前記定着手段35は、記録体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができればよく、例えば、発熱可能な定着ローラを備えた熱ローラ定着装置、オーブン定着器等の加熱定着装置、加圧可能な定着ローラを備えた圧力定着装置等を用いることができる。これらの定着装置は無端ベルトを備えた定着装置であってもよい。図3において、無端ベルトを備えた定着手段35はこの発明に係る画像形成装置用定着装置とされている。この定着装置35は、図3にその断面が示されるように、記録体36を通過させる開口52を有する筐体50内に、定着ローラ53と、定着ローラ53の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ54と、定着ローラ53及び無端ベルト支持ローラ54に巻き掛けられた無端ベルト55と、定着ローラ53と対向配置された加圧ローラ56とを備え、無端ベルト55を介して定着ローラ53と加圧ローラ56とが、互いに当接又は圧接するように、回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。無端ベルト支持ローラ54は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。無端ベルト55は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂により、無端状に形成されたベルトであればよく、その厚さ等も適宜定着手段35に適合するように調整することができる。定着ローラ53、無端ベルト支持ローラ54及び加圧ローラ56はそれぞれ、加熱体(図示しない。)が内蔵され、加圧ローラ56はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、無端ベルト55を介して定着ローラ53に圧接している。無端ベルト55と加圧ローラ56との圧接された間を記録体36が通過することにより、加圧と同時に加熱され、記録体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができる。
この発明に係る画像形成装置30は、帯電手段32の帯電ローラ、現像手段40の現像ローラ、転写手段34の転写ローラ、定着手段35の定着ローラ、加圧ローラ又は無端ベルト支持ローラ、クリーニング手段のクリーニングローラ、紙送り搬送ローラ等の各種ローラを備え、これら各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラが使用される。好ましくは、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ及び加圧ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラが使用され、特に好ましくは、定着ローラ及び加圧ローラとしてこの発明に係る弾性ローラが使用される。
この発明に係る画像形成装置30は、次のように作用する。まず、画像形成装置30において、帯電手段32により像担持体31が一様に帯電され、露光手段33により像担持体31の表面に静電潜像が形成される。次いで、現像手段40から現像剤42が像担持体31に供給され、静電潜像が現像される。次いで、現像剤像は像担持体31と転写手段34との間に搬送される記録体36上に転写される。この記録体36は定着手段35に搬送され、現像剤像が永久画像として記録体36に定着される。このようにして、記録体36に画像を形成することができる。
この発明に係る画像形成装置30は、帯電ローラ、現像ローラ、現像剤供給ローラ、転写ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、無端ベルト支持ローラ、クリーニングローラ、紙送り搬送ローラ等の各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラが使用されているから、画像形成装置用定着装置35及び画像形成装置30は高い耐久性を発揮することができる。
画像形成装置30は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置30は、現像手段40に単色の現像剤42のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置30は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
また、画像形成装置30において、現像剤42は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。
(実施例1)
まず、無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(直径12mm×長さ350mm、SUM22)をトルエンで洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製:商品名)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギアーオーブンを用いて、180℃の温度にて30分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、プライマー層を形成した。
次いで、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材とを含むゴム組成物A「KE−904FU」(商品名、信越化学工業株式会社製、含水量0.07質量%)を、加熱温度150℃、加熱時間2時間の条件で加熱処理した。加熱処理後のゴム組成物Aの含水率をカールフィシャ滴定法によって測定したところ0.009質量%であった。
このようにして含水量が調整されたゴム組成物A100質量部と、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部と、有機系発泡剤アゾビス−イソブチロニトリル「KEP−13」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.5質量部と、付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤「R−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)0.5質量部と、有機過酸化物架橋剤「C−3」(信越化学工業株式会社製:商品名)適量と、耐熱性向上剤「KEP−12」(信越化学工業株式会社製:商品名)1.0質量部とを、湿度約50%の環境下で、二本ロールで十分に混練して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを調整した。
次いで、プライマー層を形成した軸体2と、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aとを、押出成形機にて一体分出し、次いで、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを250℃で10分間加熱して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを発泡架橋させた。その後、さらに、ギアーオーブンを用いて、200℃で7時間にわたって、発泡架橋後の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを二次加熱し、常温にて1時間放置した。次いで、形成されたゴム硬化体を円筒研削盤にて外径を29mmに調整し、弾性ローラを製造した。
(実施例2)
前記ゴム組成物Aの加熱時間を1時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(実施例3)
前記ゴム組成物Aの加熱時間を0.16時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(実施例4)
前記反応制御剤を0.7質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(実施例5)
前記反応制御剤を0.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(実施例6)
前記ゴム組成物Aの加熱時間を3時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(実施例7)
前記ゴム組成物Aの加熱時間を0.1時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(実施例8)
前記ゴム組成物Aの加熱処理に代えて、前記ゴム組成物「KE−904FU」を、圧力10hPa、減圧時間4時間の条件で減圧処理して、このゴム組成物Bの含水率(カールフィシャ滴定法による測定値)を0.029質量%に調整した。このようにして含水量が調整されたゴム組成物B100質量部を用いて、実施例1と同様にして、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Bを調整し、弾性ローラを製造した。
(実施例9)
実施例1における前記ゴム組成物Aの加熱処理の後に、実施例8の減圧処理を行って、ゴム組成物Cの含水率(カールフィシャ滴定法による測定値)を0.005質量%に調整した。このようにして含水量が調整されたゴム組成物C100質量部を用いて、実施例1と同様にして、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Cを調整し、弾性ローラを製造した。
(比較例1)
前記反応制御剤を0.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(比較例2)
前記反応制御剤を0.9質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(比較例3)
前記反応制御剤を0.1質量部に変更し、IR炉過熱を300℃で5分間に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(比較例4)
前記ゴム組成物の減圧時間を0.16時間に変更した以外は、実施例8と同様にして、弾性ローラを製造した。
(比較例5)
前記反応制御剤を0.1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(比較例6)
前記加熱処理を温度30℃、湿度80%雰囲気中の高湿槽で2時間の処理に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(比較例7)
前記ゴム組成物「KE−904FU」の加熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(比較例8)
前記ゴム組成物「KE−904FU」の減圧処理を行わなかったこと以外は、実施例8と同様にして、弾性ローラを製造した。
(比較例9)
前記加熱処理を温度30℃、湿度80%雰囲気中の高湿槽で24時間の処理に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
(比較例10)
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aに代えて、導電性シリコーンゴム(東芝シリコーン株式会社製、商品名「XE23−A4707」)100質量部と、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部と、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン1.0質量部と、アゾジカルボンアミド系発泡剤(三協化成株式会社製、商品名「セルマイクCAP−500」3質量部とを含有する発泡ゴム組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。
前記実施例2〜9及び比較例1〜10における各ゴム組成物の含水率をカールフィシャ滴定法によって測定し、その結果を第1表に示した。なお、実施例1〜8並びに比較例1〜3、5及び6における各付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は加熱処理後の前記ゴム組成物とほぼ同じ含水量であり、実施例9の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Cは加熱処理及び減圧処理後の前記ゴム組成物Cとほぼ同じ含水量であり、比較例4の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は減圧処理後の前記ゴム組成物とほぼ同じ含水量であった。また、比較例7及び8の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は前記ゴム組成物と同じ含水量であった。
このようにして製造した弾性ローラの発泡弾性層における略中央部分を軸線方向に垂直な平面で切断した切断面に開口しているセルの平均セル径、その標準偏差σ及びセル間距離を前記方法に従って測定し、また、発泡弾性層の発泡率を算出した。その結果を第1表に示す。
このようにして製造した各弾性ローラを図4に示される耐久性試験機に装着して、前記条件及び方法に従って、耐久性試験を行った。
各弾性ローラの耐久性は、各弾性ローラにおける発泡弾性層3を目視及びカメラで観察し、発泡弾性層3のセルの損傷、亀裂及び破壊等をまったく確認することができなかった場合を「◎」、発泡弾性層3のセルの損傷、亀裂及び破壊等をわずかに確認することができたが実用上まったく問題がない場合を「○」、発泡弾性層3のセルが実用上問題のある程度にまで損傷、亀裂及び破壊等していた場合を「×」、及び、前記条件で連続稼動できなかった場合を「××」として、4段階で評価した。その結果を第1表に示す。
また、各弾性ローラの硬度変化率を前記方法に従って算出した硬度変化率が95%以上であった場合を「◎」、90%以上95%未満であった場合を「○」、90%未満であった場合を「×」として、3段階で評価した。その結果を第1表に示す。
前記耐久性及び硬度変化率の評価が「◎」及び「○」である場合には、弾性ローラを画像形成装置の定着装置に定着ローラ及び/又は現像剤供給ローラとして装着した場合に高品質の画像をかなりの長期間にわたって形成することができることが推測される。一方、前記耐久性の評価が「×」である場合には、弾性ローラを画像形成装置の定着装置に定着ローラ及び/又は現像剤供給ローラとして装着した場合に高品質の画像を長期間にわたって形成することができないことが推測され、「××」である場合には、弾性ローラを画像形成装置の定着装置に定着ローラ及び/又は現像剤供給ローラとして装着した場合には高品質の画像を形成することができないことが推測される。