図1に示されるように、この発明に係る弾性ローラの一実施例としての弾性ローラ1Aは、軸体2と、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3とを備え、例えば、図8に示される画像形成装置用定着装置35等に配設される。
前記軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。
前記発泡弾性層3は、後述する発泡ゴム組成物によって、軸体2の外周面に形成されている。この発泡弾性層3は、その内部及び/又は外表面にセルを有する発泡弾性層とされる(図1において発泡弾性層3の外周面及び端面に開口したセルは図示しない。)。発泡弾性層3がセルを有していると、発泡弾性層3の硬度が低下して、弾性ローラ1の機能が向上するから、高品質の画像を形成することに貢献することができる。ここで、発泡弾性層3に有するセルは、発泡ゴム組成物に含有される発泡剤の発泡又は分解等によって生じる中空領域をいう。発泡弾性層3に有する複数のセルは、他のセルに接することのない若しくは連通することのない状態(独立セル状態と称する。)、他のセルに接し若しくは連通している状態(連通セル状態と称する。)、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態の何れの状態にあってもよい。発泡弾性層3は、画像形成装置用定着装置等に用いられる各種ローラに応じて、セルの大きさ、存在率等が決定される。
弾性ローラ1Aは、発泡弾性層3において、両端部と中央部とのアスカーC硬度が異なるように、形成されている。具体的には、発泡弾性層3における両端部のアスカーC硬度が、その中央部のアスカーC硬度よりも大きく調整されている。このように、発泡弾性層3の硬度が調整されていると、発泡弾性層3の両端部が、画像形成装置用定着装置等に弾性ローラ1Aが装着されたときに作用する繰り返し圧縮に対する高い耐久性を発揮して、軸体2から剥離しにくくなると共に、発泡弾性層3の両端部で記録体の端部が適正な位置に固定された状態を維持することができ、記録体がその幅方向(弾性ローラ1Aの軸線方向)に変位することがなく、その結果、定着ローラと加圧ローラとの当接部を通過してくる記録体にシワが発生することを長期間にわたって防止することができる。
この発明において、発泡弾性層3の中央部3Aは、発泡弾性層3の軸線方向における中央部、例えば、図2に示されるように、中央部(図示しない。)を中心とする例えば10mm程度の幅を有する領域の内部であればいずれの位置であってもよく、同様に、発泡弾性層3の両端部3B及び3Cは、発泡弾性層3の軸線方向における各端部、例えば、図2に示されるように、各端部から中央部に向かって例えば30mm程度の幅を有する領域の内部であればいずれの位置であってもよい。なお、この発明において、前記両端部3B及び3Cは前記領域の内部にあればよいが、前記両端部3B及び3Cはその少なくとも一部が、弾性ローラ1Aが画像形成装置用定着装置等に装着されたときに、記録体が通過する通紙領域内にあることが重要である。前記両端部3B及び3Cの少なくとも一部が通紙領域内にないと、この発明の目的を十分に達成することができない。
発泡弾性層3において、その端部3B及び3Cが軸体2から剥離すること、及び、記録体にシワが生じることを長期間にわたって防止することができる点で、発泡弾性層3の両端部3B及び3Cと中央部3AとのアスカーC硬度差それぞれは、3〜15であるのが好ましく、3〜10であるのが特に好ましい。
発泡弾性層3の両端部3B及び3Cそれぞれは、そのアスカーC硬度が中央部3AのアスカーC硬度よりも大きければよく、例えば、23〜53であるのが好ましく、28〜45であるのが特に好ましい。両端部3B及び3CのアスカーC硬度が前記範囲内にあると、高品質の画像を形成する能力が長期間にわたって維持される。この発明において、一方の端部3BのアスカーC硬度と他方の端部3CのアスカーC硬度とは同じ値であるのが好ましいが、両端部3B及び3CのアスカーC硬度は中央部3AのアスカーC硬度よりも大きければそれぞれ異なる値であってもよい。この場合には、一方の端部3BのアスカーC硬度と他方の端部3CのアスカーC硬度との差は、例えば、2以下の範囲内にあるのがよい。一方、発泡弾性層3の中央部3Aは、そのアスカーC硬度が両端部3B及び3CのアスカーC硬度よりも小さければよく、例えば、20〜50であるのが好ましく、27〜35であるのが特に好ましい。中央部3AのアスカーC硬度が前記範囲内にあると、弾性ローラ1Aを例えば定着ローラとして画像形成装置用定着装置等に装着した場合に、加圧ローラとの所望の当接幅を無理のないトルクで確保することができる。
発泡弾性層3は、その軸線方向の中央における中央外周線から両端部に向けて等距離にある仮想外周線それぞれと前記軸線に平行な仮想直線との交点(図1及び図2において図示しない。)におけるアスカーC硬度の差(以下、「軸線方向の硬度差」と称することがある。)が2以下となっているのが好ましい。すなわち、発泡弾性層3は、その外周面上において、前記中央外周線を中心線として線対称な位置におけるアスカーC硬度差が2以下となっているのが好ましい。発泡弾性層3は、両端部3B及び3CのアスカーC硬度がその中央部3AのアスカーC硬度よりも大きくなっていればよいが、このように軸線方向の硬度差が2以下となっていると、発泡弾性層3は中央外周線を中心線にして両端方向のアスカーC硬度がほぼ対称となり、軸線方向の硬度差による軸線方向の当接幅がばらつくことを効果的に防止して、軸線方向の当接幅を均一にすることができる。その結果、弾性ローラ1Aを例えば定着ローラとして画像形成装置用定着装置等に装着すると、軸線方向に所望のように均一に現像剤を記録体に定着させることができる。前記各仮想外周線は、中央外周線でなければよく、例えば、前記中央部3Aと前記端部3B及び3Cとの間の領域内に仮想されてもよいが、この発明の目的をよく達成することができる点で、各仮想外周線は、例えば、前記両端部3B及び3C内に仮想されるのがよい。前記軸線方向の硬度差は、発泡弾性層3の外周面上において、前記各仮想外周線それぞれと軸線に平行な仮想直線との交点を測定点として各測定点のアスカーC硬度を測定することによって、求めることができる。なお、この発明において、前記「仮想外周線」及び前記「軸線に平行な仮想直線」は1本又は2本以上を想定することができ、この発明の目的をよく達成することができる点で、2本以上例えば4本を想定するのがよい。前記「仮想外周線」及び前記「軸線に平行な仮想直線」を2本以上想定する場合には、各「仮想外周線」及び各「軸線に平行な仮想直線」における前記アスカーC硬度のバラツキが2以下になっているのが好ましいが、この発明においては、少なくとも1本の前記「仮想外周線」と少なくとも1本の前記「軸線に平行な仮想直線」との各交点におけるアスカーC硬度のバラツキが2以下になっていればよい。
さらに、発泡弾性層3は、その外周線における周方向のアスカーC硬度の差(以下、「周方向の硬度差」と称することがある。)が2以下となっているのが好ましい。発泡弾性層3の外周線における周方向の硬度差が2以下となっていると、発泡弾性層3におけるこの外周線上のアスカーC硬度がほぼ均一な値となり、周方向の硬度差によって生じる「発泡弾性層3のニップ圧力のばらつきによる現像剤の定着不均」を効果的に防止することができる。前記外周線は、発泡弾性層3の前記中央部3Aの領域内部に仮想される中央外周線、端部3B及び3Cの領域内部に仮想される仮想外周線、及び、中央部3A及び端部3B又は3Cの間の領域内部に仮想される仮想外周線のいずれの外周線であってもよい。周方向の硬度差は、少なくとも1つの外周線を仮想し、この外周線を4等分する点を測定点として各測定点のアスカーC硬度を測定し、各測定値のうち最大の測定値と最小の測定値との差を算出することによって、求めることができる。この発明において、周方向の硬度差は、前記中央外周線、又は、端部3B及び3Cの領域内部に仮想される仮想外周線で評価されるのが好ましい。
この発明において、アスカーC硬度は、JIS K6253に準拠して測定することができる。発泡弾性層3のアスカーC硬度は、例えば、発泡弾性層3を形成する発泡ゴム組成物に含有されるゴム及び/若しくは添加剤の種類を選択し、並びに/又は、それらの配合量等を変更することにより、また、発泡弾性層3の成形条件、後述する端部押さえ部材9等における間隙s(換言すると、端部押さえ部材9等における底部9Aの径)等により、調整することができる。特に、発泡弾性層3の両端部3B及び3Cと中央部3AとのアスカーC硬度を異なるようにするには、例えば、後述する端部押さえ部材9等における間隙s(換言すると、端部押さえ部材9等における底部9Aの径)、発泡弾性層3を形成する発泡ゴム組成物の加熱条件又は加熱方法等を異ならしめればよい。
発泡弾性層3は、前記の硬度特性を有していればよいが、例えば、発泡弾性層3に形成されるセル、発泡弾性層3の発泡倍率等が調整されているのが、この発明の効果をより一層高めることができる点で、好ましい。
例えば、発泡弾性層3は、両端部3B及び3Cと中央部3Aとの発泡倍率が異なるように、形成されるのが好ましく、発泡弾性層3における両端部3B及び3Cの発泡倍率が、その中央部3Aの発泡倍率よりも小さく調整されるのが好ましい。このように、発泡弾性層3の発泡倍率が調整されていると、発泡弾性層3の両端部3B及び3Cが軸体2から剥離すること、及び、記録体にシワが生じることをより一層長期間にわたって防止することができる。
具体的には、発泡弾性層3の両端部3B及び3Cそれぞれは、その発泡倍率が、160〜225%であるのが好ましく、165〜200%であるのが特に好ましい。両端部3B及び3Cの発泡倍率が前記範囲内にあると、高品質の画像を形成する能力が長期間にわたって維持される。この発明において、端部3Bの発泡倍率と端部3Cの発泡倍率とは同じ値であるのが好ましいが、両端部3B及び3Cの発泡倍率は前記範囲内にあればそれぞれ異なる値であってもよい。この場合には、端部3Bの発泡倍率と端部3Cの発泡倍率との差は、例えば、10%以下の範囲内にあるのがよい。一方、発泡弾性層3の中央部3Aは、その発泡倍率が、102〜235%であるのが好ましく、160〜205%であるのが特に好ましい。中央部3Aの発泡倍率が前記範囲内にあると、形成される発泡弾性層3の硬度特性を前記硬度特性に容易に調整することができ、弾性ローラ1Aを例えば定着ローラとして画像形成装置用定着装置等に装着した場合に、加圧ローラとの所望の当接幅を確保することができる。そして、両端部3B及び3Cの発泡倍率と、中央部3Aの発泡倍率との差それぞれは4.0〜67.0%であるのが好ましく、12.0〜45.0%であるのが特に好ましい。発泡弾性層3における発泡倍率の差それぞれを前記範囲内に調整すると、発泡弾性層3のアスカーC硬度差を前記範囲内に容易に調整することができる。その結果、発泡弾性層3の両端部3B及び3Cが軸体2の外周面に強固に密着して耐久性が向上すると共に、記録体にシワが発生することをより一層長期間にわたって防止することができる。
また、例えば、発泡弾性層3は、両端部3B及び3Cと中央部3Aとに形成されたセルの平均セル径が異なるように、形成されるのが好ましく、発泡弾性層3における両端部3B及び3Cの平均セル径が、その中央部3Aの平均セル径よりも小さく調整されるのが好ましい。このように、発泡弾性層3に形成されたセルの平均セル径が調整されていると、発泡弾性層3の両端部3B及び3Cが軸体2から剥離すること、及び、記録体にシワが生じることをより一層長期間にわたって防止することができる。
具体的には、発泡弾性層3に形成されたセルの平均セル径は、例えば、60〜800μmであるのが好ましく、100〜400μmであるのが特に好ましい。セルの平均セル径が前記範囲であると、現像剤がセルの大きさに影響を受けず、適切に定着されるという効果を奏する。特に、発泡弾性層3の両端部3B及び3Cにおける平均セル径は、100〜300μmであるのが好ましく、100〜200μmであるのが特に好ましく、発泡弾性層3の中央部3Aにおける平均セル径は、100〜400μmであるのが好ましく、100〜300μmであるのが特に好ましい。発泡弾性層3の両端部3B及び3C及び中央部3Aにおける平均セル径が前記範囲であると、弾性ローラ1Aを定着ローラとして画像形成装置用定着装置等に装着したときに、発泡弾性層3のニップ圧力が均一になり現像剤の定着性が向上するという効果を奏する。さらに、発泡弾性層3の両端部3B及び3Cにおける平均セル径と発泡弾性層3の中央部3Aにおける平均セル径との差は100μm以下であるのが好ましく、50μm以下であるのが特に好ましい。
発泡弾性層3において、その発泡倍率及び平均セル径は、発泡弾性層3を形成する後述する発泡ゴム組成物に含有される発泡剤又は中空充填剤の配合量、後述する端部押さえ部材9等における間隙s(換言すると、端部押さえ部材9等における底部9Aの径)、発泡ゴム組成物の硬化条件等により、調整することができる。
発泡弾性層3の発泡倍率は、発泡弾性層3の体積及び質量を常法によって測定し、これらから算出することができる。また、セルの平均セル径は、発泡弾性層3の表面又は任意の面で切断したときの切断面において、約20mm2の領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セルにおける開口部の最大長さを測定して、測定された最大長さを算術平均して得られた平均長さとして、求めることができる。
発泡弾性層3は、前記の硬度特性を有していればよく、例えば、その形態は特に限定されない。例えば、発泡弾性層3は、その軸線方向にわたって均一な外径に調整された、所謂ストレート形状でもよく、また、中央部における外径がその両端部における外径よりも大きくなるように調整された所謂クラウン形状であってもよく、さらに、中央部における外径がその両端部における外径よりも小さくなるように調整された所謂逆クラウン形状であってもよい。前記硬度特性を効果的に機能させて、前記目的を十分に達成することができる点で、発泡弾性層3は前記ストレート形状であるのが好ましい。
発泡弾性層3の厚さは特に限定されないが、通常、2〜20mmに調整されるのが好ましく、3〜12mmに調整されるのが特に好ましい。なお、発泡弾性層3の外径は、前記厚さ、弾性ローラの用途等を考慮して、適宜調整される。弾性ローラ1Aにおいて、発泡弾性層3は、前記厚さの範囲内において、前記弾性ローラ1Aの外径に対する発泡弾性層3の厚さの割合が20〜50%であるのが好ましく、25〜35%であるのが特に好ましい。前記軸体2の弾性ローラ1Aに対する発泡弾性層3の厚さの割合を前記範囲内に調整すると、弾性ローラ1Aを画像形成装置用定着装置等に装着した場合に、この弾性ローラ1Aと対向配置される他のローラ例えば定着ローラとの接触面積が大きくなり、十分な当接幅を確保することができる。なお、発泡弾性層3の軸線方向長さは適宜調整される。
この発明に係る弾性ローラの別の一実施例としての弾性ローラ1Bは、図3に示されるように、軸体2と、その外周面に形成された発泡弾性層3と、発泡弾性層3の外周面上に形成されたチューブ層4とを備え、例えば、図8に示される画像形成装置用定着装置35に配設される。
弾性ローラ1Bにおける軸体2及び発泡弾性層3は、弾性ローラ1Aにおける軸体2及び発泡弾性層3と基本的に同様である。
チューブ層4は、後述する材料によって、発泡弾性層3の外周面に形成されている。発泡弾性層3の外表面にチューブ層4が形成されていると、現像剤の離型性を向上させることができる。チューブ層4は、一層構造とされても、二層以上が積層された積層構造とされてもよい。チューブ層4は、例えば、1〜100μmの厚さに形成される。
チューブ層4を形成する材料は、特に制限されるものではないが、弾性ローラ1Bは被当接体に当接又は圧接されるから、永久変形しにくい材料であるのが好ましく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、チューブ層4は、金属製スリーブであってもよく、スリーブを形成する金属としては、例えば、鉄、ステンレス鋼、ニッケル等の高い熱伝導を有する金属材料が挙げられる。
この弾性ローラ1Bは、チューブ層4が薄層であるから、チューブ層4が発泡弾性層3の外周面に形成されても、弾性ローラ1Bは、発泡弾性層3の特性特に硬度特性を、チューブ層4を介して、発揮することができる。したがって、この弾性ローラ1Bにおいても、前記弾性ローラ1Aと同様の効果を十分に奏することができる。
この発明に係る弾性ローラの発泡弾性層3を形成する発泡ゴム組成物は、ゴムと、発泡剤と、所望により各種添加剤等とを含有する組成物であればよく、例えば、発泡シリコーンゴム系組成物及び発泡ウレタンゴム系組成物等が好ましく挙げられる。発泡シリコーンゴム系組成物は、耐熱性、耐久性及び耐残留歪み特性等に優れ、画像形成装置の高速運転にも耐えられる好適な発泡ゴム組成物である。このような発泡シリコーンゴム系組成物として、付加反応型発泡シリコーン発泡ゴム組成物が特に好ましい。
付加反応型発泡シリコーン発泡ゴム組成物は、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤とを含有し、所望により、さらに、有機過酸化物架橋剤と耐熱性向上剤と各種添加剤とを含有してもよい。
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後工程で、発泡剤及び付加反応架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記シリカ系充填材は、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)3で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であるのがよい。シリカ系充填材は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記発泡剤としては、従来、発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよく、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連続気泡を形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立気泡を形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。この発明においては、前記発泡弾性層3を容易に形成することができる点で、発泡剤は、有機系発泡剤であるのがよく、具体的には、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の配合量は、発泡剤の種類によって相違するが、発泡弾性層3のアスカーC硬度が20〜60となるように調整するのがよい。具体的には、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜10質量部であるのがよい。発泡剤の配合量が、0.1質量部未満であると、形成される発泡弾性層3に十分な気泡を形成することができないことがあり、一方、10質量部を超えると、発泡シリコーンゴムとしての形態を維持することができなくなり、発泡弾性層3の機械的強度が低下することがある。発泡剤として、ジメチル−1,1’−アゾ−ビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)を選択する場合には、その配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部であるのが特によい。発泡剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記付加反応架橋剤は、例えば、一分子中に2個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、環又は分枝状のいずれであってもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.01〜20質量部であるのがよい。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記付加反応触媒は、例えば、周期律表第9属又は第10属の金属単体及びその化合物が挙げられ、より具体的には、シリカ、アルミナ又はシリカゲル等の担体上に吸着された微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸六水塩とオレフィン又はジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体、塩化白金酸六水塩のアルコール溶液等の白金系触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。これら付加反応触媒の配合量は、触媒量で十分であり、通常、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーン発泡ゴム組成物全体に対して、1〜1,000ppmであるのがよく、10〜500ppmであるのが特によい。付加反応触媒の配合量が、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、1ppmより少ないと、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応が十分に進行せず、ビニル基含有シリコーン生ゴムの硬化が不十分となることがあり、一方、1,000ppmを超えると、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応を促進する能力が向上せず、かえって、経済性が低下することがある。付加反応触媒は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記反応制御剤は、公知の反応制御剤を制限されることなく使用することができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。反応制御剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記有機過酸化物架橋剤は、単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
耐熱性向上剤は、発泡弾性層3の耐熱性を向上させる化合物であればよく、例えば、カーボンブラック、酸化鉄(ベンガラとも称する。)、酸化セリウム及び水酸化セリウム等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記カーボンブラックは、通常、その製造方法によって、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等に類別され得るが、硫黄、アミン等の含有量が多いと、付加反応型発泡シリコーン発泡ゴム組成物の付加反応を阻害することがあるので、硫黄、アミン等の含有量が少ないカーボンブラック、例えば、アセチレンブラックが好適に使用される。前記酸化鉄は、黒色ベンガラ(Fe3O4)及び赤色ベンガラ(Fe2O3)が好ましく挙げられる。前記酸化セリウム及び前記水酸化セリウムは、単独で使用されてもよいが、前記カーボンブラック及び/又は前記酸化鉄と共に使用されるのが、発泡弾性層3の硬度変化を抑えることができる点で、好ましい。
前記耐熱性向上剤の総配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜35質量部であるのがよく、1〜10質量部であるのが特によい。耐熱性向上剤の総配合量が前記範囲であれば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化セリウム及び水酸化セリウムの配合量は、特に限定されない。例えば、カーボンブラックの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0〜15質量部であるのがよく、0.2〜15質量部であるのがさらによく、2〜10質量部であるのが特によい。ベンガラの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0〜30質量部であるのがよく、0.2〜30質量部であるのがさらによく、2〜20質量部であるのが特によい。酸化セリウム及び水酸化セリウムの配合量はそれぞれ、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのがよく、0.2〜2質量部であるのが特によい。
前記各種添加剤は、例えば、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、難燃性向上剤、熱伝導性向上剤等の添加剤、離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール基封鎖低分子シロキサン等の分散剤、及び、得られるゴムの硬度を調整することのできる粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ等が挙げられる。これらの各種添加剤は、所望の配合量で配合される。
前記ビニル基含有シリコーン生ゴム、前記シリカ系充填材及び前記各種添加剤を含有するシリコーン発泡ゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。
発泡ゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって、常温又は加熱下で混練して、得られる。
この発明に係る弾性ローラの製造方法は、軸体の外周面に配置した発泡ゴム組成物を、その発泡ゴム組成物における両端部の圧縮率[(A−B)/A×100]が1.0〜21.0%の範囲内となるように、発泡させる工程を含むことを特徴とする。ここで、前記Aは発泡ゴム組成物における中央部の最大発泡径、前記Bは発泡ゴム組成物における両端部の発泡径をそれぞれ示す。この発明に係る弾性ローラの製造方法の具体的例を、前記弾性ローラ1A及び1B(以下、弾性ローラ1と称することがある。)を例にして、以下に説明する。この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、まず、軸体2を準備する。
軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック若しくは金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。軸体2に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体2を形成することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。
軸体2は、所望により、その外周面にプライマー層が塗布されてもよい。プライマー層を形成するプライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体2の外周面に塗布され、硬化される。プライマーとしては、特に制限はないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。所望により、前記樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤を用いることができ、このような架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、次いで、このようにして作製した軸体2の外周面に、発泡ゴム組成物、好ましくは有機系発泡剤を含有する発泡ゴム組成物を、押出成形による連続加熱成形、プレス、インジェクションによる型成形等によって、加熱成形する。発泡ゴム組成物の加熱成形においては、まず、所望により接着層又はプライマー層が形成された軸体2の外周面に発泡弾性層3を形成する発泡ゴム組成物を配置する。軸体2の外周面に発泡ゴム組成物を配置する方法としては、例えば、押出機等により軸体2と発泡ゴム組成物とを一体に分出して、軸体2の外周面に発泡ゴム組成物を配置する方法、また、軸体2を収納する金型に発泡ゴム組成物を注入して、軸体2の外周面に発泡ゴム組成物を配置する方法等が挙げられる。これらの中でも、押出機等により軸体2と発泡ゴム組成物とを一体に分出しする方法が、作業が容易で連続して行うことができる点で、好ましい。
ここで、軸体2の外周面に配置された発泡ゴム組成物は、その振れ精度が0.5mm以下となっているのが、好ましい。軸体2の外周面に配置された発泡ゴム組成物が前記範囲の振れ精度を有していると、発泡ゴム組成物を均一に加熱することができ、結果として発泡ゴム組成物の発泡硬化も均一になって、前記硬度特性と高い振れ精度とを有する発泡弾性層3を成形することができる。発泡ゴム組成物の振れは、発泡ゴム組成物の円周方向における厚さの均一性、すなわち、厚さの振れ(以下、単に、振れと称することがある。)を示す精度である。図4を参照して説明すると、発泡ゴム組成物8の振れは、発泡ゴム組成物8の中心点8Dと軸体2の中心点2Cとの距離に影響される。例えば、発泡ゴム組成物8が、軸線方向においてその軸線と軸体2の軸線2Dとがずれて軸体2の外周面に配置された状態(図4(a)参照。)におけるA−A線における断面が図4(b)に示されている。この場合において、発泡ゴム組成物8の振れは、発泡ゴム組成物8の最大厚さ(tmax)と最小厚さ(tmin)との差(tmax−tmin)、換言すると、軸体2の中心点2Cから発泡ゴム組成物8の外周面までの最長距離L2と最短距離L1との差(L2−L1)として、算出される。すなわち、発泡ゴム組成物8の振れは、少なくとも、発泡ゴム組成物8における軸線方向の中央部と両端部との3点における、発泡ゴム組成物8の最大厚さ(tmax)と最小厚さ(tmin)との差(tmax−tmin)を示した値であり、より具体的には、各測定点において、式(tmax−tmin)(mm)で算出される。又は、少なくとも、発泡ゴム組成物8における中央部と両端部との3点における、軸体2の中心点2Cから発泡ゴム組成物8の外周面までの最長距離L2と最短距離L1との差(L2−L1)を示した値であり、より具体的には、各測定点において、式(L2−L1)(mm)で算出される。ここで、発泡ゴム組成物8の振れは、軸体2の軸線2Dを回転軸線として回転させながら、レーザー測長機により、各測定点における、発泡ゴム組成物8の厚さ、又は、軸体2の軸線2Dから発泡ゴム組成物8の外周面までの距離を測定し、測定された最大厚さと最小厚さとから、又は、測定された最長距離と最短距離とから、前記式により算出することができる。
前記範囲内の振れ精度で発泡ゴム組成物8を軸体2の外周面に配置する方法としては、例えば、押出成形時におけるインダイとアウトダイの各中心を合わせる方法、加硫前に円筒研削盤により外径を整える方法等が挙げられる。
この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、このようにして、好ましくは前記範囲内の振れ精度で、軸体2の外周面に発泡ゴム組成物8を配置した後、図5に示されるように、軸体2の外周面に配置された発泡ゴム組成物8の両端部8B及び8C(発泡弾性層3の両端部3B及び3Cに対応する。)それぞれに、有底円筒型の端部押さえ部材9が装着される。端部押さえ部材9は、後述する加熱発泡工程において、発泡ゴム組成物8に含有される発泡剤の過度の発泡による両端部8B及び8Cの拡径を抑えて、硬度を高める。図5に示されるように、この端部押さえ部材9は、軸体2が貫通する貫通孔を有する底部9Aと、発泡ゴム組成物8の外径よりもわずかに大きな内径を有し、底部9Aからほぼ垂直に延びる周側面9Bとを備えて成る有底円筒形を成している。図5に示されるように、端部押さえ部材9の周側面9Bは、端部押さえ部材9が発泡ゴム組成物8の両端部8B及び8Cに装着されたときに、両端部8B及び8Cと周側面9Bの内周面との間にある程度の間隙sが画成されるように、その内径が調整されている。この発明において、間隙sは、発泡弾性層3の両端部3B及び3Cに要求される硬度等に応じて、適宜調整され、例えば、2.5〜17.5mmに調整される。周側面9Bの軸線方向長さは、発泡弾性層3の端部3B及び3Cの軸線方向長さ以上であればよく、例えば、5〜30mmに調整される。両端部8B及び8Cへの端部押さえ部材9の装着は自動でも手動でもよい。
端部押さえ部材9の前記間隙sは、以下の条件を満たすように、前記範囲内で調整されるのが好ましい。前記間隙sが以下の条件を満たすように調整されていると、形成される発泡弾性層3の硬度特性を前記硬度特性に容易に調整することができる。前記間隙sが満たす条件は、発泡ゴム組成物の発泡硬化後(研磨処理前の発泡弾性層)において、発泡硬化した発泡ゴム組成物における中央部の最大発泡径をA、その端部の発泡径をBとしたときに、発泡硬化した発泡ゴム組成物における端部の圧縮率[(A−B)/A×100]が1.0〜21.0%である。この圧縮率(%)は4.0〜13.0%であるのがさらに好ましい。前記条件において、中央部の最大発泡径Aは、例えば、発泡ゴム組成物に含有される発泡剤等の種類及び含有量、発泡硬化条件等によって、後述する押さえ部材12を用いる場合には、押さえ部材12における最大内径によって、適宜調整することができる。両端部の発泡径Bは、端部押さえ部材9の周側面9Bの内径、端部押さえ部材11及び押さえ部材12の各底部11A及び12Aの径によって、適宜調整することができる。
この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、このようにして、発泡ゴム組成物8の両端部8B及び8Cそれぞれに端部押さえ部材9を装着した状態を維持しつつ、軸体2及び端部押さえ部材9と共に発泡ゴム組成物8を加熱する。発泡ゴム組成物8の加熱は、発泡ゴム組成物8に含まれるゴム、例えば、ビニル基含有シリコーン生ゴムが架橋し、かつ、発泡剤が分解又は発泡するのに十分な条件で行われればよい。例えば、発泡ゴム組成物8は、通常、赤外線加熱炉又は熱風炉等の加熱炉、乾燥機等の加熱機等により、170〜500℃程度、特に200〜400℃に加熱され、数分以上1時間以下、特に5〜30分間、加熱される。
前記状態を維持しつつ発泡ゴム組成物8が加熱されると、発泡ゴム組成物8の両端部8B及び8Cは、端部押さえ部材9によって、発泡剤の発泡に基づく拡径が抑えられ、図6に示されるように、端部押さえ部材9が装着された両端部8B及び8Cは、端部押さえ部材9における周側面9Bの内径までしか拡径しない。一方、両端部8B及び8C以外の発泡ゴム組成物8、換言すると、端部押さえ部材9が装着されていない発泡ゴム組成物8は、発泡剤の発泡に基づいて、何ら規制されることなく自由に拡径する。したがって、軸体2の外周面に配置された発泡ゴム組成物8を加熱してなるゴム硬化体10は、図6に示されるように、その両端部10B及び10Cの外径が、それ以外の部分の外径よりも小さくなり、その結果、ゴム硬化体10の両端部10B及び10Cは、それ以外の部分の硬度よりも大きな硬度になる。このように、発泡ゴム組成物8を前記条件を満たすように発泡さ硬化させると、発泡弾性層3としたときに、両端部のアスカーC硬度がその中央部のアスカーC硬度よりも大きくなり、また、前記硬度特性、両端部3B及び3Cの発泡倍率と中央部3Aの発泡倍率との差、平均セル径等を前記所定の範囲内に容易に調整することができる。
なお、前記端部押さえ部材9における間隙sの大きさを適宜調整することによって、硬化体10の両端部10B及び10C(すなわち、発泡弾性層3の両端部3B及び3C)の硬度を前記範囲に調整することができる。
この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、ゴム硬化体10は、所望により、さらに、二次加熱が行われてもよい。二次加熱は、前記条件で加熱されたゴム硬化体10をより確実に硬化させる工程であり、二次加熱によって、発泡ゴム組成物8が硬化して成るゴム硬化体10の物性が安定するという効果が得られる。二次加熱は、例えば、前記の条件で加熱されたゴム硬化体10を、さらに、端部押さえ部材9が装着されたままで、又は、端部押さえ部材9が取り外された状態で、例えば、180〜250℃、好ましくは190〜230℃で、1〜24時間、好ましくは3〜10時間にわたって、又は、金型を用いて、例えば、130〜200℃、好ましくは150〜180℃で、5分以上24時間以下、好ましくは10分以上10時間以下にわたって、再度加熱されることによって、行われる。
この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、このようにして成形されたゴム硬化体10は、発泡弾性層3に要求される形状に応じて、研削工程、研磨工程及び/又は切削工程等が施され、発泡弾性層3とされる。例えば、発泡弾性層3がストレート形状に形成される場合には、発泡弾性層3の一方の端部3Bから他方の端部3Cにわたる外径が均一になるように、研削工程等が施される。研削工程、研磨工程及び/又は切削工程は、従来利用されている研削盤、円筒研削盤、やすり等により、定法に従って行うことができる。また、研削工程、研磨工程及び/又は切削工程後に、研削カス、研磨カス、異物等を除去するため、所望により、これらの工程が施されてなる発泡弾性層3を洗浄してもよい。洗浄は、例えば、水等を用いた湿式洗浄及び/又はウエス等を用いたふき取り洗浄、送風洗浄等が挙げられる。
この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、所望により、このようにして形成された発泡弾性層3の外周にチューブ層4を形成する。具体的には、チューブ層4は、前記材料を発泡弾性層3の外径とほぼ同じ内径を有する円筒状に予め形成した管体に、発泡弾性層3を挿入して、発泡弾性層3の外表面に形成されるのが、発泡弾性層3の表面に存在する凹凸形状に大きく影響されず、平滑な表面を有するチューブ層4を形成することができる点で、好ましい。もちろん、チューブ層4は、前記材料を、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、発泡弾性層3の外周面に塗布した後、硬化及び/又は架橋して、形成されてもよい。
このようにして、両端部3B及び3Cと中央部3Aとの硬度が異なる発泡弾性層3、所望により前記特性を満足する発泡弾性層3を軸体2の外周面に備えた弾性ローラ1A及び1Bを製造することができる。
前記製造方法では、2つの端部押さえ部材9を用いているが、この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、2つの端部押さえ部材9に代えて2つの端部押さえ部材11又は2つの押さえ部材12を用いることもできる。
端部押さえ部材11は、図7(a)に示されるように、軸体2が貫通する貫通孔を有し、軸体2の外周面に配置された発泡ゴム組成物8の外径よりもわずかに大きな径を有する底部11Aと、この底部11Aから内径が次第に大きくなるように延びる周側面11Bとを備えて成り、一方が開口した中空の円錐台形状に形成されている。すなわち、この端部押さえ部材11は、周側面11Bの内径が底部11Aから前端方向に向かって次第に大きくなっていること以外は、前記端部押さえ部材9と基本的に同様に形成されている。そして、この端部押さえ部材11においては、底部11Aは、軸体2の外周面に配置された発泡ゴム組成物8の両端部8B及び8Cにおける外径とある程度の間隙sが画成されるように、その径が調整されている。この間隙sは端部押さえ部材9で説明した通りである。
押さえ部材12は、図7(b)に示されるように、軸体2が貫通する貫通孔を有し、軸体2の外周面に配置された発泡ゴム組成物8の外径よりもわずかに大きな径を有する底部12Aと、この底部12Aから内径が次第に大きくなり、かつ、前記発泡ゴム組成物8の略中央まで覆うように延びる周側面12Bとを備えて成り、一方が開口した中空の円錐台形状に形成されている。すなわち、押さえ部材12は、周側面12Bが端部押さえ部材11の周側面11Bよりも長く、2つの押さえ部材12で軸体2の外周面に配置された発泡ゴム組成物8を完全に被覆可能な長さに調整されていること以外は、前記端部押さえ部材11と基本的に同様に形成されている。したがって、押さえ部材12の底部12Aは、端部押さえ部材11の底部11Bと基本的に同様に形成され、前記間隙sを有する径に調整されている。
弾性ローラ1A及び1Bにおける発泡弾性層3は、前記したように、発泡弾性層3の両端部3B及び3CのアスカーC硬度がその中央部3AのアスカーC硬度よりも大きいから、発泡弾性層3の端部3B及び3Cが軸体2から剥離すること、及び、記録体にシワが生じることを防止して高品質の画像を長期間にわたって形成することに貢献することができる。
この発明における弾性ローラは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、発泡弾性層3は、単層構造とされているが、この発明においては、二層以上の複層構造とされてもよい。
また、弾性ローラ1は、用途に応じて、軸体2内、発泡弾性層3内及び/又は軸体2と発泡弾性層3との間に、加熱体、例えば、電熱器、発熱コイル等を備えていてもよい。例えば、弾性ローラ1が熱ローラ定着器の定着ローラとして使用される場合には、軸体2内に加熱体を備えている。
次に、この発明に係る弾性ローラ1を備えた画像形成装置用定着装置(以下、この発明に係る定着装置と称することがある。)及び画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図8を参照して、説明する。
図8に示されるように、この発明に係る画像形成装置30は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体31例えば感光体と、前記像担持体31の周囲に配置された、帯電手段32例えば帯電ローラ、露光手段33、現像手段40、転写手段34例えば転写ローラ及びクリーニング手段37と、記録体の搬送方向下流側に定着手段35例えば画像形成装置用定着装置とを備えている。この現像手段40は、従来の現像手段と基本的に同様に形成され、具体的には、図8に示されるように、現像剤収納部41と、像担持体31に現像剤42を供給する現像剤担持体44と、現像剤担持体44に現像剤42を供給する現像剤供給手段43と、現像剤42を帯電させる現像剤規制部材45とを備えている。現像剤42は、一成分系の現像剤であれば、乾式現像剤であっても湿式現像剤であってもよく、また、非磁性現像剤であっても磁性現像剤であってもよい。
前記定着手段35は、記録体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができればよく、例えば、発熱可能な定着ローラを備えた熱ローラ定着装置、オーブン定着器等の加熱定着装置、加圧可能な定着ローラを備えた圧力定着装置等を用いることができる。これらの定着装置は無端ベルトを備えた定着装置であってもよい。図8において、無端ベルトを備えた定着手段35はこの発明に係る画像形成装置用定着装置とされている。この定着装置35は、図8にその断面が示されるように、記録体36を通過させる開口52を有する筐体50内に、定着ローラ53と、定着ローラ53の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ54と、定着ローラ53及び無端ベルト支持ローラ54に巻き掛けられた無端ベルト55と、定着ローラ53と対向配置された加圧ローラ56とを備え、無端ベルト55を介して定着ローラ53と加圧ローラ56とが、互いに当接又は圧接するように、回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。無端ベルト支持ローラ54は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。無端ベルト55は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂により、無端状に形成されたベルトであればよく、その厚さ等も適宜定着手段35に適合するように調整することができる。定着ローラ53、無端ベルト支持ローラ54及び加圧ローラ56はそれぞれ、加熱体(図示しない。)が内蔵され、加圧ローラ56はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、無端ベルト55を介して定着ローラ53に圧接している。無端ベルト55と加圧ローラ56との圧接された間を記録体36が通過することにより、加圧と同時に加熱され、記録体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができる。
この発明に係る画像形成装置30は、帯電手段32の帯電ローラ、現像手段40の現像ローラ、転写手段34の転写ローラ、定着手段35の定着ローラ、加圧ローラ又は無端ベルト支持ローラ、クリーニング手段のクリーニングローラ、紙送り搬送ローラ等の各種ローラを備え、これら各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラが使用される。好ましくは、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ及び加圧ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラが使用され、特に好ましくは、定着ローラ及び加圧ローラとしてこの発明に係る弾性ローラが使用される。
この発明に係る画像形成装置30は、次のように作用する。まず、画像形成装置30において、帯電手段32により像担持体31が一様に帯電され、露光手段33により像担持体31の表面に静電潜像が形成される。次いで、現像手段40から現像剤42が像担持体31に供給され、静電潜像が現像される。次いで、現像剤像は像担持体31と転写手段34との間に搬送される記録体36上に転写される。この記録体36は定着手段35に搬送され、現像剤像が永久画像として記録体36に定着される。このようにして、記録体36に画像を形成することができる。
この発明に係る画像形成装置用定着装置及びこの発明に係る画像形成装置は、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、無端ベルト支持ローラ、クリーニングローラ、紙送り搬送ローラ等の各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラが使用されているから、この発明に係る画像形成装置用定着装置は長期間にわたって高品質の画像を形成することに貢献することができ、また、この発明に係る画像形成装置は長期間にわたって高品質の画像を形成することができる。
画像形成装置30は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置30は、現像手段40に単色の現像剤42のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置30は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
また、画像形成装置30において、現像剤42は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(直径15mm×長さ370mm、SUM22)をトルエンで洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製:商品名)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギアーオーブンを用いて、180℃の温度にて30分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、プライマー層を形成した。
次いで、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材とを含むシリコーンゴムコンパウンド「KE−904FU」(信越化学工業株式会社製:商品名)100質量部と、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部と、有機系発泡剤アゾビス−イソブチロニトリル「KEP−13」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.5質量部と、付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤「R−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)0.5質量部と、有機過酸化物架橋剤「C−3」(信越化学工業株式会社製:商品名)適量と、耐熱性向上剤「KEP−12」(信越化学工業株式会社製:商品名)1.0質量部とを、二本ロールで十分に混練して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを調整した。
一方、ステンレス鋼(SUS304)を用いて、直径15mmの貫通孔を有する、厚さ2.5mm、外径43.5mmの底部9Aと、内径38.5mm、厚さ2.5mm、軸線方向の長さ25mmの周側面9Bとからなる、有底円筒型の端部押さえ部材9を準備した。
次いで、プライマー層を形成した軸体2と、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aとを、押出成形機にて一体分出し、軸体の両端から25mm部分の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aをカットし、除去した。次いで、一体分出しされた付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを円筒研削盤によりストレート形状に研削してその外径を、29mmに調整し、前記端部押さえ部材9との間隙sを4.75mmとした。このようにして外径が整えられた付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aの前記測定方法による振れ精度は0.13mmであった。図5に示されるように、軸体2の外周面に配置された付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aの両端部それぞれに、軸体2の中心と端部押さえ部材9における貫通孔の中心とが一致した状態となるように、端部押さえ部材9を装着した。次いで、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて、端部押さえ部材9を装着した状態で、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを250℃で15分間加熱して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを発泡架橋させた。その後、さらに、ギアーオーブンを用いて、200℃で7時間にわたって、発泡架橋後の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aを二次加熱し、常温にて1時間放置した。このようにして形成されたゴム硬化体10は、図6に示されるように、その両端部10B及び10Cが外径38.3mm(端部押さえ部材9による圧縮率は両端部10B及び10C共に8.81%であった。)に、それ以外の部分が外径42.0mmに拡径していた。
このゴム硬化体10を、その軸線方向全域にわたって、円筒研削盤を用いて、外径を32mmに調整し、ストレート形状の発泡弾性層3が軸体の外周面に形成された弾性ローラを製造した。
このようにして製造した弾性ローラにおいて、発泡弾性層3の両端部3B及び3C(端部から20mmの位置)それぞれのアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径を前記方法に従って測定し、前記端部から20mmの位置における軸線方向の硬度差を算出した結果を、第1表に示した。また、発泡弾性層3の中央部3AのアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径を前記方法に従って測定し、中央部3Aにおける周方向の硬度差を算出した結果を第1表に示した。さらに、測定された結果から、中央部3Aと端部3B及び3Cそれぞれの発泡倍率差並びに両端部3Bと3Cとの発泡倍率差を算出し、その結果を第1表に示した。なお、前記軸線方向の硬度差は、前記端部から20mmの位置に仮想した1本の仮想外周線と発泡弾性層3の軸線に平行であって任意に仮想した1本の仮想直線との交点を測定点とした。
(実施例2)
端部押さえ部材9の内径を40mm(前記間隙sは5.5mmとなる。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの、ゴム硬化体10における両端部10B及び10Cの外径、圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第1表に示した。
(実施例3)
端部押さえ部材9の内径を35mm(前記間隙sは3.0mmとなる。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの、ゴム硬化体10における両端部10B及び10Cの外径、圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第1表に示した。
(実施例4)
端部押さえ部材9の内径を34mm(前記間隙sは2.5mmとなる。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの、ゴム硬化体10における両端部10B及び10Cの外径、圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第1表に示した。
(実施例5)
内径40mm(前記間隙sは5.5mmとなる。)の端部押さえ部材と内径38mm(前記間隙sは4.5mmとなる。)の端部押さえ部材とを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの、ゴム硬化体10における両端部10B及び10Cの外径、圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第1表に示した。
(実施例6)
内径39mm(前記間隙sは5.0mmとなる。)の端部押さえ部材と内径38mm(前記間隙sは4.5mmとなる。)の端部押さえ部材とを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの、ゴム硬化体10における両端部10B及び10Cの外径、圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第1表に示した。
(実施例7)
端部押さえ部材9の内径を41.8mm(前記間隙sは6.4mmとなる。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの、ゴム硬化体10における両端部10B及び10Cの外径、圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第1表に示した。
(実施例8)
内径33mm(前記間隙sは2.0mmとなる。)の端部押さえ部材と内径34mm(前記間隙sは2.5mmとなる。)の端部押さえ部材とを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの、ゴム硬化体10における両端部10B及び10Cの外径、圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第2表に示した。
(実施例9)
端部押さえ部材9の内径を37mm(前記間隙sは4.0mmとなる。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの、ゴム硬化体10における両端部10B及び10Cの外径、圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第2表に示した。
(実施例10)
端部押さえ部材9の内径を36mm(前記間隙sは3.5mmとなる。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの、ゴム硬化体10における両端部10B及び10Cの外径、圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第2表に示した。
(実施例11)
端部押さえ部材9の内径を39.5mm(前記間隙sは5.25mmとなる。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの、ゴム硬化体10における両端部10B及び10Cの外径、圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第2表に示した。この弾性ローラにおいて、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aは、実施例1における「円筒研削盤による研削方法」に代えて、一体分出し時におけるインダイとアウトダイの各中心を調整する方法を採用して、軸体2の外周面に配置した。
(実施例12)
端部押さえ部材9の内径を39.5mm(前記間隙sは5.25mmとなる。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの、ゴム硬化体10における両端部10B及び10Cの外径、圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第2表に示した。この弾性ローラにおいて、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物Aは、実施例1における「円筒研削盤による研削方法」に代えて、一体分出し時におけるインダイとアウトダイの各中心を調整する方法(実施例11よりも各中心のズレを大きくした)を採用して、軸体2の外周面に配置した。
(比較例1)
端部押さえ部材9を用いることなく、軸体2の外周面に配置された発泡ゴム組成物を加熱した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第2表に示した。
(比較例2)
端部押さえ部材9の内径を42mm(前記間隙sは6.5mmとなる。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラを製造した。このときの、ゴム硬化体10における両端部10B及び10Cの外径、圧縮率及び振れ精度、並びに、弾性ローラにおけるアスカーC硬度、発泡倍率及び平均セル径等を実施例1と同様にして測定した結果を第2表に示した。
(耐久試験)
このようにして製造した弾性ローラの耐久性を、以下の方法で、図9に示される耐久試験装置70を用いて、試験した。この耐久試験装置70は、筐体内部の下面に固定され、内部ヒータ72を備えた加熱ローラ71と、この加熱ローラ71の軸方向に沿って、その両側に設けられた外部ヒータ73と、加熱ローラ71と対向するように、筐体内部の上面に上下動可能に設けられた試験ローラ装着部74と、試験ローラ装着部74を上下に移動可能な押圧力調整手段75、例えば、押圧調整用マイクロメータとを備えている。なお、加熱ローラ71として、直径20mmの金属(ステンレス鋼、SUS304)製ローラを用いた。
前記実施例及び比較例で製造した弾性ローラそれぞれを試験ローラ装着部74のベアリングに装着し、図9に示されるように、押圧力調整手段75を操作して、装着した前記弾性ローラ76を加熱ローラ71に圧接し、加熱ローラ71と弾性ローラ76との圧接部において、弾性ローラ76における発泡弾性層が内部に3mm凹陥するように、弾性ローラ76を固定した(すなわち、弾性ローラ76の外径と加熱ローラ71との外径の和よりも3mm短くなるように、弾性ローラ76の中心軸と加熱ローラ71の中心軸との距離dを調節した。)。
次いで、外部ヒータ73及び内部ヒータ72を起動し、加熱ローラ71の表面温度を180℃に調節した。その後、試験ローラ装着部74に装備された駆動手段(図示しない。)により、回転速度130rpmで8時間連続稼動し、弾性ローラ76における弾性層の凹陥状態を解除後、弾性ローラ76を常温で16時間放置した。この8時間連続稼動及び16時間連続放置を1サイクルとして連続して40サイクル実施した。
耐久試験の評価は、前記試験後に、弾性ローラにおける発泡弾性層の両端部及び中央部に亀裂等が確認できず、かつ、両端部が軸体2から剥離していなかった場合を「◎」、発泡弾性層の両端部及び中央部に亀裂等が確認できず、かつ、発泡弾性層の両端部が軸体2から剥離していたが実用上問題のない程度であった場合を「○」、発泡弾性層の両端部及び中央部に亀裂等が確認できた場合又は発泡弾性層の両端部が実用上問題のある程度にまで軸体2から剥離していた場合を「×」とした。その結果を第1表及び第2表に示す。
(紙シワ発生試験)
前記耐久試験装置70に、前記耐久試験と同様にして、製造した各弾性ローラを加圧ローラ76として装着した。次いで、外部ヒータ73及び内部ヒータ72を起動することなく、試験ローラ装着部74に装備された駆動手段(図示しない。)により回転速度を50rpmに設定した。回転速度50rpmで8時間連続稼動し、弾性ローラ76における弾性層の凹陥状態を解除後、弾性ローラ76を常温で16時間放置した。この8時間連続稼動及び16時間連続放置を1サイクルとして連続して40サイクル実施した。この後に、日本工業規格A4用紙1枚を、その長手方向が弾性ローラの軸線方向と一致するように、加圧ローラ76として装着した各弾性ローラと加熱ローラ71との圧接部を通過させて、この圧接部を通過した用紙にシワが発生しているか否かを確認した。
紙シワ発生試験の評価は、40回の前記連続稼動及び連続放置した後に前記耐久試験装置70における圧接部を通過させた用紙にシワが発生していなかった場合を「◎」、前記圧接部を通過させた用紙に微少なシワがわずかに発生していたが実用上問題のない程度であった場合を「○」、前記圧接部を通過させた用紙に実用上問題がある程度にまでシワが発生していた場合を「×」とした。その結果を第1表及び第2表に示す。