この発明に係る弾性ローラの製造方法(以下、この発明に係る製造方法と称することがある。)によって製造される弾性ローラの一実施例としての弾性ローラ1は、例えば、図1及び図2に示されるように、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3と、発泡弾性層3の外周面に形成された接着剤層5を介して設けられたスリーブ4とを備えてなる。
前記軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、所謂「芯金」とも称される。
発泡弾性層3は、後述するゴム組成物によって、軸体2の外周面に形成されている。この発泡弾性層3は、その内部及び/又は外表面にセルを有する発泡弾性層とされる(図1において弾性層3の外周面に開口したセル、及び、図2において弾性層3の断面に開口したセルは、いずれも図示しない。)。発泡弾性層3がセルを有すると、発泡弾性層3の硬度が低下して、弾性ローラ1の機能が向上するから、高品質の画像を形成することに貢献することができる。ここで、発泡弾性層3に有するセルは、ゴム組成物に含有される発泡剤の発泡又は分解等によって生じる中空領域、及び、ゴム組成物に含有される中空充填材等に由来する中空領域をいう。発泡弾性層3に有する複数のセルは、他のセルに接することのない若しくは連通することのない状態(独立セル状態と称する。)、他のセルに接し若しくは連通している状態(連通セル状態と称する。)、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態の何れの状態にあってもよい。発泡弾性層3は、画像形成装置に用いられる各種ローラに応じて、セルの大きさ、存在率等が決定される。
発泡弾性層3におけるセルの平均セル径は、例えば、60〜800μmであるのが好ましく、100〜400μmであるのが特に好ましい。セルの平均セル径が前記範囲であると、後述する接着剤を発泡弾性層3の外周面に塗布したときに接着剤がセル内に速やかに浸入し、接着剤層5が発泡弾性層3の外周面に強固に形成される。発泡弾性層3におけるセルは、そのセル壁の平均幅が0.01〜0.5mmであるのが好ましく、0.05〜0.4mmであるのが特に好ましい。セル壁の平均幅が前記範囲であると、接着剤層5が発泡弾性層3の外周面に強固に形成されると共に、後述する圧力環境下におかれても、発泡弾性層3における発泡構造が損傷、亀裂及び破壊することを効果的に防止することができる。また、発泡弾性層3における発泡率は150〜480%であるのが好ましく200〜450%であるのが特に好ましい。発泡率が前記範囲であると、接着剤層5が発泡弾性層3の外周面に強固に形成されると共に、後述する圧力環境下におかれても、発泡弾性層3における発泡構造が損傷、亀裂及び破壊することを効果的に防止することができる。セルにおける、平均セル径、セル壁の平均幅及び発泡率は、発泡弾性層3を形成する後述するゴム組成物に含有される発泡剤又は中空充填剤の配合量、中空充填剤の大きさ、ゴム組成物の硬化条件等により、調整することができる。
セルの平均セル径は、発泡弾性層3の表面又は任意の面で切断したときの切断面において、約2mm2の領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セルにおける開口部の最大長さを測定して、測定された最大長さを算術平均して得られた平均長さとして、求めることができる。セルにおけるセル壁の平均幅は、前記平均セル径と同様に、弾性層3の表面又は弾性層3を任意の面で切断したときの切断面において、約2mm2の領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在するセルとセルとの間隔、すなわち、セルとセルとの間にある壁の幅を測定し、測定された値を算術平均することによって、求めることができる。発泡弾性層3の発泡率は、発泡弾性層3の体積及び質量を常法によって測定し、これらから算出することができる。
発泡弾性層3は、20〜60のアスカーC硬度を有するのが好ましい。アスカーC硬度が前記範囲であると、被当接体に対する所望の当接状態又は圧接状態を保持することができるから、高品質の画像を形成することに貢献することができる。例えば、弾性ローラ1を定着ローラとして画像形成装置に装着する場合には、加圧ローラに対して所望の圧接状態を保持して、加圧ローラと定着ローラとで形成されるニップ幅を大きくすることができるから、記録体に転写された現像剤像を所望のように定着させることができ、その結果、高品質の画像を形成することに貢献することができる。アスカーC硬度は、JIS K6253に準拠して、発泡弾性層3の複数箇所を測定し、測定値を算術平均した値とすることができる。発泡弾性層3のアスカーC硬度は、例えば、発泡弾性層3を形成するゴム組成物に含有されるゴム及び/若しくは添加剤の種類を選択し、並びに/又は、それらの配合量等を変更することにより、また、発泡弾性層3の成形条件等により、調整することができる。
発泡弾性層3の厚さは特に限定されないが、通常、2〜20mmに調整されるのが好ましく、3〜12mmに調整されるのが特に好ましい。
前記接着剤層5は、発泡弾性層3とスリーブ4とを接着することができる接着剤であれば特に限定されず、例えば、シリコーン系接着剤(商品名「KE−44」、「KE−45」及び「KE1831」、いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。この発明において、接着剤は室温(25℃)で流動性を有している流動性接着剤であるのが好ましい。発泡弾性層3とスリーブ4とを接着する接着剤が流動性を有していると、発泡弾性層3の外周面に塗布したとき等に、流動性接着剤の塗布層内に気泡等が発生し、また、気泡等が混入すること等を防止して、発泡弾性層3とスリーブ4とを強固に接着することができる。流動性接着剤における流動性は、25℃における粘度が15〜150Pa・sであるのが好ましく、30〜120Pa・sであるのがより好ましく、50〜100Pa・sであるのが特に好ましい。流動性接着剤における粘度が前記範囲内にあると、接着剤の塗布層内に気泡等が発生し、また、気泡等が混入すること等を効果的に防止することができ、発泡弾性層3とスリーブ4とをより一層強固に接着することができる。なお、流動性接着剤における粘度は、JIS K 6249に準じて(BH型粘度計を使用)によって測定する。
前記流動性接着剤は、例えば、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。より具体的には、シリコーン系接着剤として、付加型シリコーンRTV(例えば、商品名「KE1880」(粘度(25℃)84Pa・s、信越化学工業株式会社製)、商品名「KE1830」(粘度(25℃)110Pa・s、信越化学工業株式会社製)、商品名「KE1833」(粘度(25℃)150Pa・s、信越化学工業株式会社製))、縮合型シリコーンRTV(例えば、商品名「KE441」(粘度(25℃)15Pa・s、信越化学工業株式会社製))等が挙げられる。アクリル系接着剤として、アクリル変性シリコーン樹脂(例えば、商品名「スーパーX 8008」(粘度(25℃)90Pa・s、セメダイン株式会社製)、商品名「スーパーX 8008 LLブラック」(粘度(25℃)14Pa・s、セメダイン株式会社製)、商品名「スーパーX 8008クリア」(粘度(25℃)65Pa・s、セメダイン株式会社製))等が挙げられる。なお、流動性接着剤は、一液性でも二液性でもよく、また、熱硬化性でも湿気硬化性でもよい。さらに、流動性接着剤は、例えば、トルエン、キシレン等の希釈剤を用いて、その粘度が前記範囲内になるように、調整されてもよい。
また、弾性ローラ1は加熱下において使用されることがあるため、接着剤は耐熱性を有しているのが好ましく、具体的には、150〜250℃程度の耐熱性を有しているのが好ましい。耐熱性は、JIS K 6833に規定された軟化温度測定法によって測定される。
接着剤に要求される他の特性として、接着剤の硬化物における引張せん断接着強さ等が挙げられ、この発明においては、接着剤の硬化物における引張せん断接着強さは0.5〜4MPaであるのが好ましい。接着剤の硬化物における引張せん断接着強さが前記範囲にあると、スリーブ4と発泡弾性層3とが十分な接着力で強固に接着される。引張せん断接着強さは、接着剤を硬化してなる硬化体を試験体として、JIS K 6249に準じて、測定される。
接着剤層5の厚さは特に限定されないが、通常、10〜300μmに調整されるのが好ましく、10〜100μmに調整されるのが特に好ましい。
前記スリーブ4は、接着剤層5の外周面に設けられている。スリーブ4は、例えば、鉄、ステンレス鋼、ニッケル等の高い熱伝導を有する金属材料で形成され、一層構造とされても、二層以上が積層された積層構造とされてもよい。スリーブ4は、一層構造であっても積層構造であっても、通常、薄層に形成され、例えば、その全体の厚さは、20〜150μmであるのが好ましく、30〜100μmであるのが特に好ましい。このスリーブ4は、800〜1300MPa程度の引張強度を有しているのが、発泡弾性層3の内周面からの圧接により変形しにくくなる点で、好ましい。前記引張強度の測定方法は、JIS Z 2241に準拠する。
この発明に係る弾性ローラの製造方法の一例(以下、この発明に係る製造方法と称することがある。)を以下に説明する。この発明に係る製造方法は、軸体2の外周面に発泡弾性層3を備えたローラ原体7を加圧環境下又は減圧環境下に置いて発泡弾性層3の外径をスリーブ4の内径に対して80〜99.8%に調整し、発泡弾性層3の外径を前記範囲に調整したローラ原体7をスリーブ4内に挿入することを特徴とする。
この発明に係る製造方法においては、まず、図3に示されるように、軸体2の外周面に発泡弾性層3を備えたローラ原体7を準備する。
軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。軸体2に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体2を形成することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、快削鋼、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。
軸体2は、所望により、その外周面にプライマー層が塗布されてもよい。プライマー層を形成するプライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体2の外周面に塗布され、硬化される。プライマーとしては、特に制限はないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。所望により、前記樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤を用いることができ、このような架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
次いで、この発明に係るローラの製造方法においては、このようにして形成された軸体2の外周面に配置された後述するゴム組成物を硬化して、発泡弾性層3を形成する。例えば、発泡弾性層3は、公知の成形方法によって、成形と加熱硬化とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。ゴム組成物の成形方法は、軸体2の外周面にゴム組成物を配置することができる方法であればよく、例えば、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、ゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、成形方法として押出成形等を選択することができる。発泡弾性層3を形成するゴム組成物は後述する。
ゴム組成物の硬化条件は、軸体2の外周面に配置されたゴム組成物が硬化し、発泡剤を含有する場合には、発泡剤が分解又は発泡するのに十分な硬化条件であればよく、ゴム組成物の組成、発泡剤の種類等に応じて適宜調整される。例えば、ゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、硬化条件は、通常、100〜400℃、特に200〜400℃の加熱温度、数分以上1時間以下、特に5分以上30分以下の加熱時間であるのが、前記範囲の平均セル径を有する独立セルを有し、前記範囲の発泡率を有する発泡弾性層3とすることができる点で、好ましい。
この発明に係る製造方法において、このようにして硬化された発泡弾性層3は、必要に応じて、二次硬化されることもできる。二次硬化条件は、特に限定されないが、例えば、ゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、二次硬化条件は、前記硬化させた状態のままで、180〜250℃、特に190〜230℃の加熱温度、及び、1〜24時間、特に3〜10時間の加熱時間であるのがよい。
この発明に係る製造方法において、このようにして形成された発泡弾性層3は、必要に応じて、弾性層調整加工が施されることもできる。弾性層調整加工は、研磨加工装置、研削加工装置及び切削加工装置等の機械加工装置又は器具等を用いて、発泡弾性層3を所望の寸法に調整し、及び/又は、発泡弾性層3の表面状態を所望の状態等に調整する加工である。弾性層調整加工は、例えば、研磨加工、研削加工及び切削加工等が挙げられる。
このようにして形成された発泡弾性層3は、後述するスリーブ4の内径よりも大きな外径を有しており、例えば、スリーブ4の内径に対して、100〜105%の外径を有しているのがよく、100〜102%の外径を有しているのが特によい。発泡弾性層3の外径が前記範囲に調整されていると、後述する圧力環境下において発泡弾性層3が速やかに縮径すると共に、この圧力環境を解除すると発泡弾性層3が速やかに復元する。
このようにして、軸体2の外周面に発泡弾性層3が形成された、図3に示されるローラ原体7を製造することができる。
一方、この発明に係る製造方法においては、スリーブ4を準備する。スリーブ4は前記金属材料で両端開口部を有する筒状体に形成される。スリーブ4は、例えば、20〜150μmの厚さに調整され、また、その内径は、前記発泡弾性層3の外径よりも小さく、例えば、発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径に対して前記範囲となるように、調整される。スリーブ4は、例えば、スピニング加工方法、しごき加工方法によって、筒状体に形成される。このスリーブ4は、少なくとも外周面が平滑に調整されているのが好ましい。
この発明に係る製造方法においては、所望により、ローラ原体7における発泡弾性層3の外周面に接着剤を塗布する。この接着剤は、発泡弾性層3の外周面に、好ましくは発泡弾性層3の外周面に均一に、塗布される。発泡弾性層3の外周面に接着剤を塗布する方法は、特に限定されず、スプレー法、浸漬法、リングコーター法、ロールコーター法等が挙げられる。接着剤を発泡弾性層3の外周面に塗布する際に、接着剤を希釈剤等で適宜希釈することができる。流動性接着剤は、発泡弾性層3の外周面に均一に容易に塗布されることができるうえ、接着剤が塗布された塗布層内に気泡等が発生し、又は、気泡等が混入すること等を効果的に防止することができる。その結果、発泡弾性層3とスリーブ4とを強固に接着することができる。接着剤の塗布量は、接着剤層5の厚さが前記範囲内となるように、調整されればよく、例えば、シリコーン系組成物の場合には、0.01〜0.1g/cm2程度に調整される。
この発明に係る製造方法においては、次いで、所望により接着剤が塗布されたローラ原体7を、加圧環境下又は減圧環境下で常温下又は加熱下において、スリーブ4内に挿入する。
ローラ原体7を加圧環境下でスリーブ4内に挿入する方法(以下、加圧法と称する。)について説明する。加圧法において使用される装置としては、ローラ原体7の発泡弾性層3を縮径させると共に、発泡弾性層3を縮径させた状態でローラ原体7をスリーブ4内に挿入することができる装置であればよく、例えば、図4に示される加圧装置10が挙げられる。図4に示される加圧装置10は、ローラ原体7及びスリーブ4をそれらの軸線方向に直列に収納する筒状の筐体11と、筐体11における一方の開口部近傍の内部に設置され、スリーブ4を載置する載置部材15と、筐体11の両端開口部を閉塞する閉塞端部12及び13と、筐体11内に収納されたローラ原体7をスリーブ4に挿入する挿入装置20と、筐体11内を加圧する加圧機14とを備えている。
図4に示されるように、前記筐体11は、ローラ原体7及びスリーブ4をそれらの軸線方向に直列に収納することができればよく、加圧装置10においては、中空の筒状体に形成されている。前記載置部材15は、スリーブ4を所定の位置に支持することができればよく、加圧装置10においては、筐体11の内周面から中心に向かって突出し、スリーブ4を支持する平滑な載置面16を有するリング状突出部とされている。この載置部材15は、筐体11における一方の開口部近傍、すなわち、閉塞端部13が筐体11に装着されたときに、閉塞部材13との間に後述する挟持部材24が配置されるのに十分な空間が画成される位置に形成されている。載置部材15の載置面16により、スリーブ4は、後述する挿入装置20に支持されたローラ原体7が挿入される位置に、好ましくは、ローラ原体7と同軸となる位置に、支持される。前記閉塞端部12及び13は、後述する挿入装置20を例えばその軸線方向に移動可能とする貫通孔を有し、筐体11の両端開口部を閉塞することができればよく、加圧装置10においては、封止部材17を前記貫通孔内に備えた筒状体に形成されている。この封止部材17は、挿入装置20と閉塞端部12及び13とを気密に封止する。前記加圧機14は、閉塞端部12及び13によって閉塞された筐体11内を、例えば、0.48MPa程度まで、加圧することができればよく、例えば、コンプレッサー等が採用される。
図4に示されるように、前記挿入装置20は、ローラ原体7を支持すると共に、筐体11、載置部材15、載置部材15に支持されたスリーブ4、並びに、閉塞端部12及び13を、好ましくは同軸に、貫通する、軸線方向に前後進可能な1組の支持軸21及び22と、各支持軸21及び22における対向する端部に、ローラ原体7における軸体2の端部を固定して、ローラ原体7を支持する挟持部材23及び24とを有している。挟持部材23及び24は、軸体2の端部を固定することができればよく、例えば、軸体2の外周面を把持して固定するように構成されてもよく、また、軸体2の外周面を挟持して固定するように構成されていてもよい。
図4に示されるように、この加圧装置10を用いた加圧法においては、筐体11、並びに、閉塞端部12及び13を組み立て、前記のようにして作製したスリーブ4を載置部材15における載置面16上に載置して、スリーブ4を所定の位置に配置する。次いで、所望により接着剤が外周面に塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7における軸体2の両端部を挟持部材23及び24に固定して、1組の支持軸21及び22でローラ原体7を挟持し、支持軸22を、筐体11、載置部材15、載置部材15に支持されたスリーブ4及び閉塞端部13に貫通させて、ローラ原体7を、スリーブ4の上流方向に直列になるように配置し、閉塞端部12で筐体11を閉塞して、加圧装置10を組み立てる。
次いで、加圧機14を起動して、加圧装置10内を所定の圧力に加圧し、ローラ原体7の発泡弾性層3を所定の圧力環境下において、発泡弾性層3を加圧する。そうすると、発泡弾性層3は、セル内の気体等が加圧されてセル自体が縮小すると共に、発泡弾性層3も縮小するから、その外径は次第に小さくなり、スリーブ4の内径よりも小さくなる。このとき、発泡弾性層3は、縮小後(縮径後)の外径がスリーブ4の内径に対して80〜99.8%になるように、縮小(縮径)される。発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径に対して80%未満に縮径されると、発泡弾性層3が縮小しすぎて、発泡弾性層3の発泡構造が損傷、亀裂及び破壊等されて、弾性ローラとしたときに、所望の弾性を実現することができないことがあると共に、前記圧力環境の解除によって縮小しすぎた発泡弾性層3が急激に復元してスリーブ4が変形、損傷及び破損等させることをある。一方、発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径に対して99.8%まで縮径されないと、スリーブ4内に速やかに挿入することができず、スリーブ4に損傷、亀裂及び破壊等が生じることがある。発泡弾性層3における発泡構造を損傷等とスリーブ4の変形等とを効果的に防止し、スリーブ4内への挿入が容易である点で、発泡弾性層3の外径は、スリーブ4の内径に対して80〜99%に調整されるのが好ましい。発泡弾性層3が縮小(縮径)されたときの外径は次のようにして決定する。まず、所定の内径を有する複数のマスターリングゲージを内径が大きい順に直列に配列された複数のマスターリングそれぞれに、ローラ原体7を挿入して、ローラ原体7における発泡弾性層3の外周面に直列に配列された複数のマスターリングゲージを保持させた試験体を準備する。次いで、この試験体を加圧装置10内において、加圧装置10内の圧力を変化させて、試験体の発泡弾性層3を収縮させ、発泡弾性層3の収縮度に対応する内径を有するマスターリングゲージを順に落下させる。最後に落下したマスターリングゲージの内径を、発泡弾性層3が縮小(縮径)されたときの外径とする。
この発明に係る製造方法においては、前記圧力環境下において発泡弾性層3における半径方向の収縮率が、例えば、常圧における発泡弾性層3の厚さ(初期厚さ)に対して、65〜99.5%程度の厚さとなる割合であるのが好ましく、80〜99%であるのが特に好ましい。発泡弾性層3の前記収縮率を前記範囲内に調整すると、発泡弾性層3の発泡構造に損傷等をより一層防止することができる。発泡弾性層3の前記収縮率は、縮小(縮径)される前の発泡弾性層3の厚さt0(mm)と、前記のようにして決定した発泡弾性層3が縮小(縮径)されたときの外径から求められる厚さt1(mm)とから、式(t1/t0)×100(%)により、算出することができる。
この発明に係る製造方法において、加圧装置10内の圧力及びローラ原体7が前記圧力環境下に置かれる時間は、発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径に対して前記範囲になる圧力及び時間であればよく、発泡弾性層3に応じて、及び、圧力と時間との関係に応じて、適宜選択される。例えば、加圧装置10内の圧力は、0.15〜0.48MPaに調整されるのが好ましく、0.17〜0.48MPaに調整されるのが特に好ましい。ローラ原体7が前記圧力環境下に置かれる時間は、例えば、数秒以上5分以下であるのが好ましく、数秒以上3分以下であるのが特に好ましい。
このようにして、発泡弾性層3の外径を前記範囲内に縮径した状態で、挿入装置20における1組の支持軸21及び22を手動又は自動により、スリーブ4側(図4において下流側)に、前進させ、図5に示されるように、挿入装置20に支持されたローラ原体7をスリーブ4内に挿入する。このとき、挿入装置20の挟持部材24は、発泡弾性層3の外径よりも小さな外径を有し、載置部材15は前記した位置に設置されているから、スリーブ4の内部を経由し、載置部材15と閉塞端部13との間に画成される空間内に到達する。このようにして、所望により接着剤が外周面に塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7をスリーブ4内に挿入することができる。そして、発泡弾性層3はスリーブ4を変形、損傷及び破損等させることなく、容易に挿入されることができる。
次に、ローラ原体7を減圧環境下でスリーブ4内に挿入する方法(以下、減圧法と称する。)について説明する。減圧法において使用される装置としては、ローラ原体7の発泡弾性層3を縮径させると共に、発泡弾性層3を縮径させた状態でローラ原体7をスリーブ4内に挿入することができる装置であればよく、例えば、図6に示される減圧装置30が挙げられる。図6に示される減圧装置30は、加圧機14に代えて減圧機31を備えている以外は、図4に示される加圧装置10と基本的に同様である。すなわち、減圧装置30は、ローラ原体7及びスリーブ4をそれらの軸線方向に直列に収納する筒状の筐体11と、筐体11における一方の開口部近傍の内部に配置され、スリーブ4を載置する載置部材15と、筐体11の両端開口部を閉塞する閉塞端部12及び13と、筐体11内に収納されたローラ原体7をスリーブ4に挿入する挿入装置20と、筐体11内を減圧する減圧機31とを備えている。
図6及び図4に示されるように、減圧装置30における筐体11、閉塞端部12及び13、載置部材15、封止部材17、並びに、挿入装置20はそれぞれ、加圧装置10における筐体11、閉塞端部12及び13、載置部材15、封止部材17、並びに、挿入装置20と基本的に同様に構成されている。前記減圧機31は、閉塞端部12及び13によって閉塞された筐体11内を、例えば、3hPa程度まで、減圧することができればよく、例えば、真空ポンプ等が採用される。
図6に示されるように、この減圧装置30を用いた減圧法においては、筐体11、並びに、閉塞端部12及び13を組み立て、前記のようにして作製したスリーブ4を載置部材15における載置面16上に載置して、スリーブ4を所定の位置に配置する。次いで、所望により接着剤が外周面に塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7における軸体2の両端部を挟持部材23及び24に固定して、1組の支持軸21及び22でローラ原体7を挟持し、支持軸22を、筐体11、載置部材15、載置部材15に支持されたスリーブ4及び閉塞端部13に貫通させて、ローラ原体7を、スリーブ4の上流方向に直列になるように配置し、閉塞端部12で筐体11を閉塞して、減圧装置30を組み立てる。
次いで、減圧機31を起動して、減圧装置30内を所定の圧力に減圧し、ローラ原体7の発泡弾性層3を所定の圧力環境下において、発泡弾性層3を減圧する。そうすると、発泡弾性層3は、初期においてはセル内の圧力が減圧環境下よりも大きいものの、所定の減圧環境下にしばらく置かれると、セル内の気体等が徐々に発泡弾性層3から放出されるから、その外径は一旦拡径した後、次第に小さくなり、スリーブ4の内径よりも小さくなる。このとき、発泡弾性層3は、縮小後(縮径後)の外径がスリーブ4の内径に対して93〜99.8%になるように、縮小(縮径)される。その理由は、前記加圧法における理由と同様である。発泡弾性層3における発泡構造を損傷等とスリーブ4の変形等とを効果的に防止し、スリーブ4内への挿入が容易である点で、発泡弾性層3の外径は、スリーブ4の内径に対して93〜99%に調整されるのが好ましい。発泡弾性層3が縮小(縮径)されたときの外径は前記と同様にして決定される。
この発明に係る製造方法においては、前記圧力環境下において発泡弾性層3における半径方向の収縮率が、例えば、常圧における発泡弾性層3の厚さ(初期厚さ)に対して、90〜99%程度の厚さとなる割合であるのが好ましく、95〜99%であるのが特に好ましい。発泡弾性層3の前記収縮率を前記範囲内に調整すると、発泡弾性層3の発泡構造に損傷等をより一層防止することができる。発泡弾性層3の前記収縮率は前記と同様にして決定される。
この発明に係る製造方法において、減圧装置30内の圧力及びローラ原体7が前記圧力環境下に置かれる時間は、発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径に対して前記範囲になる圧力及び時間であればよく、発泡弾性層3に応じて、及び、圧力と時間との関係に応じて、適宜選択される。例えば、減圧装置30内の圧力は、3〜100hPaに調整されるのが好ましく、5〜80hPaに調整されるのが特に好ましい。ローラ原体7が前記圧力環境下に置かれる時間は、例えば、数秒以上2時間以下であるのが好ましく、数秒以上1時間以下であるのが特に好ましい
このようにして、発泡弾性層3の外径を前記範囲内に縮径した状態で、挿入装置20における1組の支持軸21及び22を手動又は自動により、スリーブ4側(図4において下流側)に、前進させ、図7に示されるように、挿入装置20に支持されたローラ原体7をスリーブ4内に挿入する。このとき、挿入装置20の挟持部材24は、発泡弾性層3の外径よりも小さな外径を有し、載置部材15は前記した位置に設置されているから、スリーブ4の内部を経由し、載置部材15と閉塞端部13との間に画成される空間内に到達する。このようにして、所望により接着剤が外周面に塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7をスリーブ4内に挿入することができる。そして、発泡弾性層3はスリーブ4を変形、損傷及び破損等させることなく、容易に挿入されることができる。
この発明に係る製造方法においては、加圧法であっても減圧法であっても、常温下又は加熱下において、ローラ原体7をスリーブ4内に挿入する。発泡弾性層3の外周面に接着剤が塗布されている場合には、当然に、接着剤の硬化温度未満に加熱される。操作性等を考慮すると、常温下において、ローラ原体7をスリーブ4内に挿入するのがよい。
この発明に係る製造方法においては、次いで、発泡弾性層3が収縮したローラ原体7をスリーブ4内に挿入した状態を保持したまま、前記圧力環境下における加圧状態又は減圧状態を解除し、所望により、スリーブ4に挿入されたローラ原体7を、加圧装置10又は減圧装置30から取り出し、大気圧下に静置する。そうすると、前記範囲内に縮径された発泡弾性層3は徐々に拡張又は拡径し、その外周面がスリーブ4の内周面に(接着剤を介して)当接し、最終的には圧接する。このとき、発泡弾性層3は前記範囲内に縮径されているから、加圧状態又は減圧状態の解除と共に、発泡弾性層3が速やかに又は急激に復元しても、スリーブ4に圧接する圧接力は小さくかつ均一となるから、スリーブを変形、損傷及び破損等させることを避けることができる。なお、スリーブ4に挿入されたローラ原体7を静置する時間は、圧力環境下における圧力及び圧力環境下に置かれた時間等により、適宜選択されるが、通常、10秒以上1時間以下程度である。
この発明に係る製造方法においては、所望により、発泡弾性層3とスリーブ4との間に存在する接着剤を硬化させる。接着剤を硬化させる条件は、塗布した接着剤の硬化条件に応じて選択され、例えば、接着剤がシリコーン系接着剤である場合には、加熱温度100〜200℃、加熱時間5分以上2時間以下の硬化条件を選択することができる。このようにして接着剤を硬化すると、発泡弾性層3とスリーブ4との間に接着剤が均一に介在し、かつ、発泡弾性層3における表面及び表面近傍に存在するセル内にも接着剤が浸入して、発泡弾性層3とスリーブ4とを強固に接着することができる。接着剤を硬化させる装置は、前記硬化条件を実現可能な装置であればよく、例えば、オーブン、送風乾燥機、赤外線加熱器等の各種加熱器及び各種乾燥機等が挙げられる。
このようにして、発泡弾性層3とスリーブ4とを備えた弾性ローラ1を製造することができる。そして、この発明に係る弾性ローラ1の製造方法によれば、発泡弾性層3が縮小(縮径)したときに発泡弾性層3の発泡構造が損傷、亀裂及び破壊等することを防止することができると共に、発泡弾性層3が速やかに又は急激に復元してもスリーブ4が変形、損傷及び破損等することを防止することができる。その結果、例えば加圧装置10又は減圧装置30における圧力環境、縮小(縮径)された発泡弾性層3の外径等が多少異なっていても、発泡弾性層3の発泡構造が保持され、スリーブ4の変形等を防止することができる。したがって、この発明に係る弾性ローラ1の製造方法によれば、均一な形状のスリーブ4を備え、所望の弾性を発揮する弾性ローラ1を安定して、換言すると、再現性よく製造することができる。
また、この発明に係る製造方法によって製造された弾性ローラ1は、外周面に形成されたスリーブ4を剥離して露出した発泡弾性層3におけるアスカーC硬度と、前記ローラ原体7における発泡弾性層3(すなわち、加圧又は減圧により縮径される前の発泡弾性層3)におけるアスカーC硬度との差が±3以内の範囲となる発泡弾性層3を有している。この発明に係る製造方法においては、スリーブ4を設ける際に、発泡弾性層3が加圧環境下で加圧圧縮又は減圧環境下で減圧圧縮されても、発泡弾性層3における発泡構造が損傷、亀裂及び破壊されることが効果的に防止され、発泡弾性層3が初期硬度を維持することができるから、弾性ローラ1の発泡弾性層3は前記範囲内のアスカーC硬度差を有する。その結果、この発明に係る製造方法によって製造された弾性ローラ1を画像形成装置の定着装置に定着ローラとして装着すると、高品質の画像を安定して形成することができる。前記アスカーC硬度の差は、±2以内の範囲であるのが好ましい。
発泡弾性層3を形成するゴム組成物は、ゴムと、発泡剤又は中空充填材と、所望により各種添加剤等とを含有する組成物であればよく、例えば、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物及び発泡ウレタンゴム系組成物等が好ましく挙げられる。特に、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物は、耐熱性、耐久性及び耐残留歪み特性等に優れ、画像形成装置の高速運転にも耐えられる好適なゴム組成物である。このような発泡シリコーンゴム系組成物として、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が特に好ましい。中空充填材としては、例えば、ゴム組成物を硬化した後に、セルを形成することのできる充填材であればよく、例えば、ポリオルガノシロキサン系球状粉末が挙げられる。ポリオルガノシロキサン系球状粉末は、ポリオルガノシロキサンからなる球状の粉末であればよく、例えば、シリコーンパウダ等が挙げられる。より具体的には、直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造を持つシリコーンゴムの粉末、シロキサン結合が(CH3SiO3/2)nで表される三次元網目状に架橋した構造を持つ、いわゆるポリメチルシルセスキオキサン等のシリコーンレジンの粉末、及び、前記シリコーンゴムの表面をシリコーンレジン等で被覆した被覆シリコーンゴムの粉末等が挙げられる。
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤とを含有し、所望により、さらに、有機過酸化物架橋剤と耐熱性向上剤と各種添加剤とを含有してもよい。
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後工程で、発泡剤及び付加反応架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記シリカ系充填材は、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)3で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であるのがよい。シリカ系充填材は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記発泡剤としては、従来、発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよく、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連続セルを形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立セルを形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。弾性ローラ1においては、発泡剤は、独立セル状態のセルを形成することができる点で、有機系発泡剤であるのがよく、具体的には、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の配合量は、発泡剤の種類によって相違するが、発泡弾性層3のアスカーC硬度が20〜60となるように調整するのがよい。具体的には、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜10質量部であるのがよい。発泡剤の配合量が、0.1質量部未満であると、形成される発泡弾性層3に十分なセルを形成することができないことがあり、一方、10質量部を超えると、発泡シリコーンゴムとしての形態を維持することができなくなり、発泡弾性層3の機械的強度が低下することがある。発泡剤として、ジメチル−1,1’−アゾ−ビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)を選択する場合には、その配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部であるのが特によい。発泡剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記付加反応架橋剤は、例えば、一分子中に2個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、環又は分枝状のいずれであってもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.01〜20質量部であるのがよい。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記付加反応触媒は、例えば、周期律表第9属又は第10属の金属単体及びその化合物が挙げられ、より具体的には、シリカ、アルミナ又はシリカゲル等の担体上に吸着された微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸六水塩とオレフィン又はジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体、塩化白金酸六水塩のアルコール溶液等の白金系触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。これら付加反応触媒の配合量は、触媒量で十分であり、通常、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物全体に対して、1〜1,000ppmであるのがよく、10〜500ppmであるのが特によい。付加反応触媒の配合量が、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、1ppmより少ないと、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応が十分に進行せず、ビニル基含有シリコーン生ゴムの硬化が不十分となることがあり、一方、1,000ppmを超えると、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応を促進する能力が向上せず、かえって、経済性が低下することがある。付加反応触媒は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記反応制御剤は、公知の反応制御剤を制限されることなく使用することができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。反応制御剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記有機過酸化物架橋剤は、単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
耐熱性向上剤は、発泡弾性層3の耐熱性を向上させる化合物であればよく、例えば、カーボンブラック、酸化鉄(ベンガラとも称する。)、酸化セリウム及び水酸化セリウム等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記カーボンブラックは、通常、その製造方法によって、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等に類別され得るが、硫黄、アミン等の含有量が多いと、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物の付加反応を阻害することがあるので、硫黄、アミン等の含有量が少ないカーボンブラック、例えば、アセチレンブラックが好適に使用される。前記酸化鉄は、黒色ベンガラ(Fe3O4)及び赤色ベンガラ(Fe2O3)が好ましく挙げられる。前記酸化セリウム及び前記水酸化セリウムは、単独で使用されてもよいが、前記カーボンブラック及び/又は前記酸化鉄と共に使用されるのが、発泡弾性層3の硬度変化を抑えることができる点で、好ましい。
前記耐熱性向上剤の総配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜35質量部であるのがよく、1〜10質量部であるのが特によい。耐熱性向上剤の総配合量が前記範囲であれば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化セリウム及び水酸化セリウムの配合量は、特に限定されない。例えば、カーボンブラックの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0〜15質量部であるのがよく、0.2〜15質量部であるのがさらによく、2〜10質量部であるのが特によい。ベンガラの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0〜30質量部であるのがよく、0.2〜30質量部であるのがさらによく、2〜20質量部であるのが特によい。酸化セリウム及び水酸化セリウムの配合量はそれぞれ、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのがよく、0.2〜2質量部であるのが特によい。
前記各種添加剤は、例えば、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、難燃性向上剤、熱伝導性向上剤等の添加剤、離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール基封鎖低分子シロキサン等の分散剤、及び、得られるゴムの硬度を調整することのできる粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ等が挙げられる。これらの各種添加剤は、所望の配合量で配合される。
前記ビニル基含有シリコーン生ゴム、前記シリカ系充填材及び前記各種添加剤を含有するシリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。
ゴム組成物は、その比重は特に限定されないが、ゴム組成物の比重は発泡弾性層3の密度にもある程度影響を与えるから、画像形成装置に配設される各種ローラに応じて、所定の比重に調整される。ゴム組成物の比重は、通常、1.00〜2.00であるのが好ましく、1.05〜1.50であるのがさらに好ましい。
ゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって、常温又は加熱下で混練して、得られる。
この発明に係る製造方法は、前記した製造方法に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、弾性ローラ1は、スリーブ4が最外層とされているが、この発明においては、スリーブは最外層である必要はなく、スリーブは外部加熱手段によって加熱される位置に形成されればよい。
また、この発明において、弾性ローラは、用途に応じて、軸体内、弾性層内、又は軸体と弾性層との間に、加熱体、例えば、電熱器、発熱コイル等を備えていてもよい。
さらに、この発明においては、スリーブ4の外周面に、所望により、他の層、例えば、弾性層、離型層、コート層、表面層及び/又は保護層等が形成されてもよい。弾性層は弾性を確保するための層であり、各種のゴム等で形成されればよく、ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。弾性層の厚さは20〜500μmであるのが好ましく、100〜400μmであるのが特に好ましい。また、離型層は現像剤の離型性を確保するための層であり、各種の樹脂、カップリング剤等で形成されればよく、樹脂としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、カップリング剤としては、シランカップリング剤等が挙げられる。離型層の厚さは15〜200μmであるのが好ましく、20〜50μmであるのが特に好ましい。コート層、表面層及び保護層は、スリーブ4の外周面に定法に従って、通常、1〜100μmの厚さに、形成される。コート層、表面層及び保護層を形成する材料は、特に制限されるものではないが、弾性ローラ1は被当接体に当接又は圧接されるから、永久変形しにくい材料であるのが好ましく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。なお、この発明において、スリーブ4は、前記金属材料で形成された一層構造の筒状体、又は、前記金属材料で形成された一層構造の筒状体の外周面に、シリコーンゴムで形成された弾性層とフッ素樹脂で形成された離型層とがこの順で積層された積層体であるのが好ましい。
この発明に係る製造方法は、前記した製造方法に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る製造方法においては、ローラ原体7における発泡弾性層3の外周面に接着剤を塗布した後に、ローラ原体7を所定の圧力環境下においているが、この発明においては、ローラ原体を所定の圧力環境下に置いた後に、ローラ原体における発泡弾性層の外周面に接着剤を塗布してもよい。
また、この発明に係る製造方法においては、発泡弾性層3の外周面に接着剤を塗布しているが、この発明においては、発泡弾性層の外周面に加えて、スリーブの内周面に接着剤を塗布してもよい。
この発明に係る製造方法に用いられる加圧装置10及び減圧装置30はいずれも、1本のローラ原体7と1本のスリーブ4とをそれらの軸線方向に直列に収納するように、構成されているが、この発明において用いられる加圧装置及び減圧装置は、複数本のローラ原体と複数本のスリーブとをそれぞれ、それらの軸線方向に直列に収納して、スリーブに挿入されたローラ原体を、一度に又は連続して、複数形成することができるように、構成されていてもよい。
この弾性ローラ1は、例えば、図8に示される画像形成装置40、より具体的には、この画像形成装置40の定着装置60に内蔵される定着ローラ61として、配設される。
図8に示されるように、この発明に係る画像形成装置40は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体41例えば感光体と、像担持体41に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体41を帯電させる帯電手段42例えば帯電ローラと、像担持体41の上方に設けられ、像担持体41に静電潜像を形成する露光手段43と、像担持体41に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体41に一定の層厚で現像剤52を供給し、静電潜像を現像する現像手段50と、像担持体41の下方に圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体41から記録体46に転写する転写手段44例えば転写ローラと、記録体46の搬送方向の下流に設けられ、記録体46に転写された現像剤52(静電潜像)を定着させる定着装置60と、記録体46に転写されず像担持体41に残留した現像剤52及び/又は像担持体41に付着したゴミ等を除去するクリーニング手段45とを備えて成る。
図8に示されるように、現像手段50は、像担持体41に対向する位置に開口部を有し、現像剤52を収納する現像剤収納部51と、現像剤収納部51内に設けられ、現像剤52を均一に攪拌する攪拌機53と、現像剤収納部51の開口部に、像担持体41に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体41に現像剤52を一定の層厚で供給する回転可能な現像剤担持体54例えば現像ローラと、現像剤担持体54の上方に設けられ、現像剤担持体54に当接して現像剤52の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤52を帯電させる現像剤規制部材55例えば弾性ブレードとを備えて成る。
図8に示されるように、定着装置60は、記録体46を通過させる開口65を有する筐体64内に、定着ローラ61と、定着ローラ61と対向配置された加圧ローラ62と、定着ローラ61を外部から加熱する外部加熱手段63とを備え、定着ローラ61と加圧ローラ62とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る。加圧ローラ62はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、定着ローラ61に当接又は圧接している。この定着装置60は、外部加熱手段63として加熱用コイルが装備され、誘導加熱方法が採用されている。外部加熱手段63としての加熱用コイルは、定着ローラ61における軸線方向の長さとほぼ同じ長さを有する部材であり、定着ローラ61の表面より一定の間隔を隔てて定着ローラ61に略並行に配置されている。この加熱用コイルは、図示しないが、通常、フェライト等の強磁性体で、スイッチング電源用として用いられている代表的な形状であるI型、E型及びU型等に形成され、導線が巻かれて成る。加熱用コイル63の導線に高周波の交流が通電されると、スリーブ4内に渦電流が発生し、そのジュール熱によって、スリーブ4が誘導加熱され、その結果、定着ローラ61が加熱される。
この定着装置60において、外部加熱手段は、誘導加熱方法の他に、ハロゲンヒーター及び反射板等を用いた輻射加熱方法、加熱器等を直接接触させて加熱する直接接触加熱方法等を採用することができ、外部加熱手段が配置される位置も特に限定されない。なお、この定着装置60は、外部加熱手段に代えて、又は、外部加熱手段に加えて、内部加熱手段を採用することもできる。
画像形成装置40は、次にように作用する。まず、図8の矢印に示されるように、像担持体41が時計方向に回転しつつ、クリーニング手段45によってその表面の現像剤52及び/又はゴミ等が除去された後、帯電手段42によって一様に帯電され、次いで、露光手段43によって画像が露光され、像担持体41の表面に静電潜像が形成される。
一方、現像手段50において、現像剤担持体54が図8に示される矢印方向に回転することによって、現像剤52が現像剤担持体54に供給され、供給された現像剤52が現像剤担持体54と現像剤規制部材55との間を通過して、所望の層厚に規制されると共に所望のように帯電される。
次いで、所望の層厚及び帯電量を有する現像剤52が現像剤担持体54を介して像担持体41に供給され、像担持体41に形成された静電潜像が現像剤52によって現像されて、この静電潜像が現像剤像として可視化される。次いで、像担持体41上に現像された現像剤像は、像担持体41と転写手段44との間に搬送される記録体46上に転写手段44によって転写される。現像剤像が転写された記録体46は、定着装置60に搬送され、加圧ローラ62と加熱用コイル63によって加熱された定着ローラ61との当接部又は圧接部を通過する際に、加熱及び/又は加圧されて、転写された現像剤像(静電潜像)が永久画像として記録体46に定着される。このようにして、記録体46に画像を形成することができる。
そして、この画像形成装置40は、定着ローラ61として弾性ローラ1を備えているから、弾性ローラ1の製造において、発泡弾性層の発泡構造における損傷、亀裂及び破壊等を防止することができ、その結果、高品質の画像を長期間にわたって形成することができる。
画像形成装置40は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置は、現像手段に単色の現像剤のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
(実施例1)
まず、無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体2(直径12mm×長さ350mm、SUM22)をトルエンで洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製:商品名)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギアーオーブンを用いて、180℃の温度にて30分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、プライマー層を形成した。
一方、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材とを含むシリコーンゴム組成物「KE−904FU」(信越化学工業株式会社製:商品名)100質量部と、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部と、発泡剤アゾビス−イソブチロニトリル「KEP−13」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.5質量部と、付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤「R−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)0.5質量部と、有機過酸化物架橋剤「C−3」(信越化学工業株式会社製:商品名)適量と、耐熱性向上剤「KEP−12」(信越化学工業株式会社製:商品名)1.0質量部とを、二本ロールで十分に混練して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を調整した。
次いで、プライマー層を形成した軸体2と、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物とを、押出成形機にて一体分出し、次いで、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を250℃で10分間加熱して発泡架橋させ、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を発泡架橋させた。その後、さらに、ギアーオーブンを用いて、200℃で7時間にわたって、発泡架橋後の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を二次加熱し、常温にて1時間放置した。次いで、形成された発泡弾性層3を、円筒研削盤にて弾性層の外径を29.1mmに調整した。このようにして、発泡弾性層3を備えたローラ原体7を作製した。発泡弾性層3の軸線方向の長さは330mmであり、発泡弾性層3に存在するセルにおける平均セル径は400μm、セル壁の平均幅は0.15mmであり、発泡弾性層3の発泡率は310%であった。また、発泡弾性層3のアスカーC硬度は40であった。
一方、図6に示される減圧装置30を準備した。筐体11、閉塞端部12及び13、載置部材15、支持軸21及び22、並びに、挟持部材23及び24をそれぞれS45Cで形成し、封止部材17をニトリルゴムで形成した。筐体11は外径55mm、内径50mm、長さ2200mmであり、閉塞端部12は外径55mm、内径50mm、長さ1.5mmであり、閉塞端部13は外径55mm、内径10mm、長さ30mmであった。さらに、スリーブ(ステンレス鋼(SUS304)製、厚さ40μm、内径29.0mm、長さ330mm、引張強度950MPa)を準備した。
次いで、作製したローラ原体7における発泡弾性層3の外周面の全面に、流動性接着剤(商品名「KE1880」、粘度(25℃)84Pa・s、信越化学工業株式会社製)を、溶剤で希釈せずに、ロールコーターで、塗布量0.025g/cm2(硬化後の接着剤層の厚さが10μm)となるように、均一に塗布した。このとき、塗布された流動性接着剤の塗布層内に気泡等が発生することも混入することもなく、この塗布層内に気泡等の存在を目視にて確認できなかった。この流動性接着剤の耐熱性は180℃であり、流動性接着剤の硬化物における引張せん断接着強さは2.2MPaであった。
次いで、図6に示されるように、減圧装置30を組み立て、載置部材15における載置面16上にスリーブ4を載置した。さらに、流動性接着剤を塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7における軸体2の両端部を挟持部材23及び24に固定して、1組の支持軸21及び22でローラ原体7を挟持し、ローラ原体7がスリーブ4の上流方向に直列になるように筐体11内に配置し、閉塞端部12で筐体11を閉塞して、減圧装置30を気密状態に組み立てた。次いで、減圧機31を起動して、減圧装置30内を減圧し、減圧装置30内の圧力を50hPaに到達させた。この圧力を30分間にわたって維持し、発泡弾性層3を減圧した。このときの発泡弾性層3の外径は、スリーブ4の内径に対して99.5%であり、発泡弾性層3の収縮率は約98.5%であった。発泡弾性層3がこのように圧縮された状態で、挿入装置20の1組の支持軸21及び22を手動により、スリーブ4側に前進させ、図7に示されるように、挿入装置20に支持されたローラ原体7をスリーブ4内に挿入した。
次いで、減圧装置30内の圧力を解除して、減圧装置30内からスリーブ4内に挿入されたローラ原体7を取り出し、このスリーブ4内に挿入されたローラ原体7を、乾燥機(商品名「HIGH TEMPRATURE CHAMBER」、楠本化成株式会社製)を用いて、150℃に0.5時間加熱して、流動性接着剤を硬化させた。このようにして、30本の弾性ローラ1Aを製造した。
(実施例2)
前記圧力下の減圧装置30内に20分間にわたって前記ローラ原体7をおいて、発泡弾性層3の外径をスリーブ4の内径に対して99.8%(発泡弾性層3の収縮率は約99%)に調整した以外は、実施例1と同様にして、30本の弾性ローラ1Bを製造した。
(実施例3)
前記圧力下の減圧装置30内に2時間にわたって前記ローラ原体7をおいて、発泡弾性層3の外径をスリーブ4の内径に対して93%(発泡弾性層3の収縮率は約88%)に調整した以外は、実施例1と同様にして、30本の弾性ローラ1Cを製造した。
(実施例4)
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物に含有される発泡剤の配合量を4質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を調製した。この付加反応型発泡シリコーンゴム組成物、及び、減圧装置30に代えて図4に示される加圧装置10を用いて、加圧装置10内の圧力を0.3MPaに調整し、この圧力を1分間にわたって維持して、発泡弾性層3の外径をスリーブ4の内径に対して81%(発泡弾性層3の収縮率は約67%)に調整した以外は、実施例1と同様にして、30本の弾性ローラ1Dを製造した。なお、この発泡弾性層3に存在するセルにおける平均セル径は600μm、セル壁の平均幅は0.11mmであり、発泡弾性層3の発泡率は460%であった。また、発泡弾性層3のアスカーC硬度は20であった。
(実施例5)
減圧装置30に代えて図4に示される加圧装置10を用いて、加圧装置10内の圧力を0.18MPaに調整し、この圧力を1分間にわたって維持して、発泡弾性層3を、その外径がスリーブ4の内径に対して99.8%(発泡弾性層3の収縮率は約99%)になるように、収縮(縮径)させた以外は、実施例1と同様にして、30本の弾性ローラ1Fを製造した。
(実施例6)
流動性接着剤(商品名「KE1880」、粘度(25℃)84Pa・s、信越化学工業株式会社製)を非流動性接着剤(商品名「KE1831」、硬化温度120℃、粘度(25℃)200Pa・s、信越化学工業株式会社製、耐熱性180℃、引張せん断接着強さ1.0MPa)に代えた以外は、実施例1と同様にして、30本の弾性ローラ1Gを製造した。
(比較例1)
加圧装置10内の圧力を0.14MPaに調整し、この加圧装置10内に5分間にわたって前記ローラ原体7をおいて、発泡弾性層3の外径をスリーブ4の内径に対して100%(発泡弾性層3の収縮率は約99.7%)とした以外は、実施例5と同様にして、30本の弾性ローラ1Hを製造した。このとき、前記範囲に縮小させた発泡弾性層3を備えたローラ原体7をスリーブ4内に挿入することができず、スリーブが変形することがあった。また、弾性ローラ1Hの製造において、前記範囲に縮小させた発泡弾性層3を備えたローラ原体7をスリーブ4内に速やかに挿入することができない場合があり、製造効率が悪かった。
(比較例2)
加圧装置10内の圧力を0.5MPaに調整して、発泡弾性層3の外径をスリーブ4の内径に対して75%(発泡弾性層3の収縮率は約57%)に調整した以外は、実施例4と同様にして、30本の弾性ローラ1Iを製造した。なお、弾性ローラ1Iの製造において、前記範囲に縮小させた発泡弾性層3を備えたローラ原体7をスリーブ4内に挿入しても、発泡弾性層3の復元率が低く、発泡弾性層3の外周面とスリーブ4の内面との隙間が約0.1mm程度と大きかったが、この隙間は接着剤層5によって満たされていた。
(発泡弾性層3の硬度変化)
このようにして製造した各弾性ローラ1A〜1I(弾性ローラ1Hは、ローラ原体7をスリーブ4内に速やかに挿入することができたローラを用いた。)において、各弾性ローラにおける発泡弾性層3のアスカーC硬度の差を前記方法により算出した。具体的には、各弾性ローラのスリーブ4及び接着剤層5を剥離して発泡弾性層3を露出させた後、前記方法に従って露出させた発泡弾性層3のアスカーC硬度を測定し、測定されたアスカーC硬度と、減圧環境下又は加圧環境下におかれる前の発泡弾性層3におけるアスカーC硬度との差を算出した。その結果、実施例1〜6及び比較例1の弾性ローラ1A〜1G及びIHにおける発泡弾性層3のアスカーC硬度の差は、±3の範囲(+3及び−3を含む)にあり、アスカーC硬度の変化量がきわめて小さかったことから、発泡弾性層3の発泡構造に破損等の欠陥はないと予想された。これに対して、比較例1の弾性ローラ1Iにおける発泡弾性層3のアスカーC硬度の差は、−6〜−3及び+3〜+6の範囲(+3及び−3を含まない)にあり、アスカーC硬度の変化量が大きかったことから、発泡弾性層3の発泡構造に破損等の欠陥が生じたと予想された。
このようにして製造した各弾性ローラ1A〜1Iを図9に示される耐久性試験機に装着して、各弾性ローラ1A〜1Hの耐久性を評価した。この耐久性試験装置70は、筐体内部の下面に固定され、内部ヒータ72を備えた加熱ローラ71と、この加熱ローラ71の軸方向に沿って、その両側に設けられた外部ヒータ73と、加熱ローラ71と対向するように、筐体内部の上面に上下動可能に設けられた試験ローラ装着部74と、試験ローラ装着部74を上下に移動可能な押圧力調整手段75、例えば、押圧調整用マイクロメータとを備えている。なお、加熱ローラ71として、直径20mmの金属(ステンレス鋼(SUS304))製ローラを用いた。
弾性ローラ1A〜1Iを弾性ローラ76としてそれぞれ、試験ローラ装着部74のベアリングに装着し、図9に示されるように、押圧力調整手段75を操作して、装着した弾性ローラ76を加熱ローラ71に圧接し、加熱ローラ71と弾性ローラ76との圧接部において、弾性ローラ76における発泡弾性層3が内部に3mm凹陥するように、弾性ローラ76を固定した(すなわち、弾性ローラ76の外径と加熱ローラ71との外径の和よりも3mm短くなるように、弾性ローラ76の中心軸と加熱ローラ71の中心軸との距離dを調節した。)。
次いで、外部ヒータ73及び内部ヒータ72を起動し、加熱ローラ71の表面温度を180℃に調節した。その後、試験ローラ装着部74に装備された駆動手段(図示しない。)により、回転速度130rpmで100時間連続稼動し、弾性ローラ76における発泡弾性層3の凹陥状態を解除後、弾性ローラ76を常温で24時間放置した。
その結果、実施例1〜6及び比較例1の弾性ローラ1A〜1G及びIH(弾性ローラ1Hは、ローラ原体7をスリーブ4内に速やかに挿入することができたローラを用いた。)はいずれも、試験後に、スリーブ4の軸線方向における変形ムラを確認できなかったことから、発泡弾性層3が縮小したときにおける発泡構造の損傷、亀裂及び破壊等に起因して、スリーブ4が変形していないこと、及び、これらの弾性ローラ1A〜1Gを画像形成装置の定着装置に定着ローラとして装着した場合に高品質の画像を長期間にわたって形成することができることが、予想された。一方、比較例2の弾性ローラ1Iは、試験後に、スリーブ4の軸線方向における変形ムラが確認されたことから、発泡弾性層3が縮小したときにおける発泡構造の損傷、亀裂及び破壊等に起因して、スリーブ4が変形したこと、及び、この弾性ローラ1Iを画像形成装置の定着装置に定着ローラとして装着した場合に高品質の画像を形成することができないことが、予想された。