JP6708436B2 - 電子写真用部材、電子写真用部材の製造方法、および画像形成装置 - Google Patents

電子写真用部材、電子写真用部材の製造方法、および画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真画像形成装置(以下、単に「画像形成装置」とも称す)の定着装置に用いられる電子写真用部材およびその製造方法に関する。また、該電子写真用部材を用い画像形成装置に関する。
複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真画像形成装置の定着装置に用いられる電子写真用部材として、ベルト形状やローラ形状を有する回転体がある。これらの回転体としては、耐熱樹脂製または金属製の基材上に、シリコーンゴムを含む弾性層が形成され、さらに弾性層上にフッ素樹脂を含む表面層が形成された構成のものが知られている。
これらの電子写真用部材は、定着装置内で2つが対向して圧接するように配置され、圧接部位、すなわち定着ニップを形成する。そして、形成された定着ニップに、未定着状態のトナーによって形成される画像(以下、「トナー像」と称す)を保持した記録媒体(紙など)が導入されると、弾性層が弾性変形して未定着状態のトナーを包み込み、トナーに熱を伝える。この熱によってトナーが溶融し、記録媒体上に画像が定着する。
上記画像形成プロセスが繰り返し行われると、電子写真用部材は長期にわたって高温環境下にさらされることになる。そのため、表面層と弾性層と接着強度が低下し、電子写真用部材を使用しているうちに表面層がはく離してしまうことがある。
このような課題を解決する手段として、特許文献1には、リン酸基を含有するフッ素樹脂の水性ディスパージョンをシリコーンゴム上に塗布して乾燥した後、フッ素樹脂チューブを被覆する方法が記載されている。
特開2005−212318号公報
近年、市場においては省資源化の観点から製品の長寿命化が求められている。そのため、弾性層と表面層との間の高い接着強度を従前以上に長期にわたって維持する必要がある。
本発明者らの検討によれば、上記特許文献1に係る接着方法を用いて作製した電子写真用部材は、使用していくうちに弾性層と表面層との接着強度が徐々に低下し、十分な接着耐久性が得られない場合があることが判明した。
本発明の目的は、弾性層と表面層との接着耐久性に優れる電子写真用部材およびその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、高品位な画像を安定して提供することが可能な画像形成装置を提供することにある。
本発明によれば、基材と、シリコーンゴムを含む弾性層と、フッ素樹脂を含む表面層と、該弾性層と該表面層との間の接着層とを有する電子写真用部材であって、
該弾性層は、付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物であり、かつ、不飽和脂肪族基を有し、
該接着層は分子内にビニル基を有するポリイミドシリコーンの硬化物であり
該電子写真用部材を260℃の環境下に10時間放置した後における、該表面層の該弾性層からのはく離試験において、該弾性層が凝集破壊する電子写真用部材が提供される。
また、本発明によれば、基材と、シリコーンゴムを含む弾性層と、フッ素樹脂を含む表面層とを有する電子写真用部材の製造方法であって、
付加硬化型シリコーンゴム原液とアナターゼ型構造を有する酸化チタンとを含有する、付加硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させて弾性層を形成する工程;及び
該弾性層の表面に、分子内にビニル基を有するポリイミドシリコーンの塗膜を形成し、該塗膜を硬化することによって、該表面層と該弾性層とを接着する工程を有し、
該付加硬化型シリコーンゴム原液中の不飽和脂肪族基に対する活性水素基の数の割合が0.3以上0.8以下である、電子写真用部材の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、定着部材と加熱手段とを具備する定着装置を備えた画像形成装置であって、該定着部材が上記の電子写真用部材である画像形成装置が提供される。
本発明によれば、弾性層と表面層との接着耐久性に優れる電子写真用部材とその製造方法を得ることが可能である。また、本発明によれば、高品位な画像を安定して提供することが可能な画像形成装置を得ることが可能である。
本発明の一態様に係る電子写真用部材の例の断面模式図 はく離試験の説明図 分子内にビニル基を含むポリイミドシリコーンの推定反応機構を示す図 (a)本発明の一態様に係る画像形成装置の例の断面模式図、(b)本発明に係る定着装置の例の断面模式図
本発明者らは、フッ素樹脂を含む表面層とシリコーンゴムを含む弾性層との接着に、金属との接着に多用されている接着剤である、ポリイミドシリコーンを用いることを検討した。ポリイミドシリコーンは、分子内に耐熱性の高いポリイミド構造を有するため、高温環境下での接着強度の維持に有利であると考えられる。
しかしながら、ポリイミドシリコーンの種類によっては、フッ素樹脂とシリコーンゴムとが接着せず、使用初期の段階で十分な接着強度を有していなかった。
そこで、本発明者らはポリイミドシリコーンを用いて高い接着強度と接着耐久性とを有する電子写真用部材を得るべく検討を重ねた。その結果、分子内にビニル基を含むポリイミドシリコーンを硬化させることによって両者を接着した電子写真用部材が、使用初期および耐熱試験後も高い接着強度を有することを見出した。
分子内にビニル基を含むポリイミドシリコーンを用いることで高い接着耐久性が得られる理由について、本発明者らは以下のように推測している。
図3は、分子内にビニル基を含むポリイミドシリコーンの推定反応機構を示す図である。硬化前のポリイミドシリコーンに含まれるビニル基は、フッ素樹脂を含む表面層の接着層側の表面およびシリコーンゴムを含む弾性層の接着層側の表面にそれぞれ存在するヒドロキシ基と付加重合し、化学的な結合を形成すると考えられる。また、接着層内では、硬化前のポリイミドシリコーン内のビニル基同士が付加重合することで、ポリイミドシリコーンの硬化が起こる。このような反応によって、分子内にビニル基を含むポリイミドシリコーンは、弾性層と表面層との間に強固な化学結合を形成しているものと考えられる。これに加えて、前述したようにポリイミドシリコーンは高い耐熱性を有するポリイミド構造を有しているため、そもそもポリイミドシリコーン自体が熱により切断されにくい。以上のメカニズムによって、従前以上の接着耐久性が実現可能であると推定している。
本発明の一実施形態に係る電子写真用部材とその製造方法について、以下に具体的な構成に基づき詳細に説明する。
(1)電子写真用部材
図1は、本発明に係る電子写真用部材の例である、定着ベルト11および定着ローラ12の断面模式図である。定着ベルト11は、ベルト形態の電子写真用部材であり、定着ローラ12はローラ形態の電子写真用部材である。一般に、基材自体が変形することにより、定着ニップを形成して用いられる場合に定着ベルトと呼ばれ、基材自体はほとんど変形せず、弾性層の弾性変形で定着ニップを形成する場合に定着ローラと呼ばれる。
定着ベルト11及び定着ローラ12は、それぞれ、基材13と、弾性層14と、表面層16とを有し、該弾性層14と表面層16とは、接着層15によって接着されている。
(2)基材
基材13の材質としては、アルミニウム、鉄、ステンレス、ニッケルの如き金属およびその合金、ならびにポリイミドの如き耐熱性樹脂が用いられる。
電子写真用部材がローラ形状である場合、基材13には、芯金が用いられる。芯金の材質としては、アルミニウム、鉄、ステンレスといった金属およびその合金が挙げられる。このとき、定着装置での加圧に耐える強度を有していれば、芯金の内部が中空状であっても良い。また、中空状の場合には内部に熱源を設けることも可能である。
電子写真用部材がベルト形状を有する場合には、基材13としては、電鋳ニッケルスリーブ、ステンレススリーブ、およびポリイミドからなる耐熱樹脂ベルトが挙げられる。ベルトの内面には、耐摩耗性や断熱性などの機能を付与するための層(不図示)が更に設けられることがある。
基材13の外面には、弾性層14との接着性を付与するために、表面処理が施される場合がある。表面処理には、ブラスト・ラップ・研磨の如き物理的処理、酸化処理・カップリング剤処理・プライマー処理の如き化学的処理がある。これらの表面処理は複合的に用いる場合もある。
特に、後述する弾性層14としてシリコーンゴムを用いる場合には、接着性を確保するために表面処理としてプライマー処理が一般的に用いられる。ここで用いられるプライマーとは、有機溶剤中に、シランカップリング剤、シリコーンポリマー、水素化メチルシロキサン、アルコキシシラン、加水分解・縮合・付加の反応促進触媒、ベンガラの如き着色剤、が適宜配合分散された塗料である。これらは、市販されている。このプライマーを基材13の表面(弾性層14との接着面)に塗布し、乾燥や焼成のプロセスを経てプライマー処理が施される。
プライマーは基材13の材質、弾性層14の種類、架橋時の反応形態によって適宜選択可能である。特に弾性層14が不飽和脂肪族基を多く含む場合には、不飽和脂肪族基との反応により接着性を付与するため、プライマーとしてはヒドロシリル基を含有するものが好んで用いられる。また、弾性層14がヒドロシリル基を多く含む場合には、反対にプライマーとしては不飽和脂肪族基を含有するものが好んで用いられる。そのほかにもアルコキシ基を含有するものがある。
(3)弾性層、及びその形成方法
弾性層14としては、シリコーンゴムを用いることが好ましく、中でも付加硬化型のシリコーンゴム組成物の硬化物であることが好ましい。付加硬化型のシリコーンゴム組成物は、液状状態のものが多いため充填剤(フィラー)を分散させやすく、フィラーの種類や添加量に応じて、硬化後のシリコーンゴムの架橋度を調整することができ、容易に弾性率を調整することが可能であるからである。
付加硬化型シリコーンゴム組成物は、付加硬化型シリコーンゴム原液にフィラーの如き添加剤を配合・分散させてなる。そして、付加硬化型シリコーンゴム組成物を加熱によって、ヒドロシリル化に伴う架橋反応を進行させることで、弾性層14(以下「硬化シリコーンゴム弾性層」と称す)を形成することが可能である。
(3−1)付加硬化型のシリコーンゴム原液
一般に、付加硬化型シリコーンゴム原液は、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合した活性水素基を有するオルガノポリシロキサン、架橋触媒としての白金化合物、およびインヒビターとよばれる硬化制御剤(阻害剤)で構成される。
不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンは以下のものを含む。
・R1SiOで表わされる中間単位およびR1R2SiOで表わされる中間単位からなる群から選択されるいずれか一方または両方の中間単位と、R1R2SiO1/2で表される分子末端とを有する直鎖状オルガノポリシロキサン
・R1SiO3/2で表わされる中間単位およびSiO4/2で表わされる中間単位から選択されるいずれか一方または両方の中間単位と、R1R2SiO1/2で表される分子末端とを有する分岐状オルガノポリシロキサン。
ここでR1はケイ素原子に結合した、不飽和脂肪族基を含まない1価の非置換または置換炭化水素基を表す。具体例は、以下のものを含む。
・アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等);
・アリール基(フェニル基等);
・置換炭化水素基(例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−シアノプロピル基、3−メトキシプロピル基等)。
特に、合成や取扱いが容易で、優れた耐熱性が得られることから、R1の50%以上がメチル基であることが好ましく、すべてのR1がメチル基であることが特に好ましい。
また、R2はケイ素原子に結合した不飽和脂肪族基を表しており、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基が例示される。特に、合成や取扱いが容易で、架橋反応も容易に行われることから、ビニル基が好ましい。
後述するフィラーの配合により、付加硬化型シリコーンゴム組成物の粘性が増加するため、ベース剤として用いる不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンは、比較的粘度が低い、即ち分子量の小さいものを用いることが好ましい。オルガノポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーメーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。例えば、該オルガノポリシロキサンとしては、Mwが、150,000以下のものが好ましく、更には70,000以下のものが好ましい。Mwが、150,000以下のオルガノポリシロキサンを用いることで、成膜や成形をより容易に行うことができる。
また、ケイ素に結合した活性水素基を有するオルガノポリシロキサンは白金化合物の触媒作用により、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン成分のアルケニル基との反応によって架橋構造を形成させる架橋剤である。ケイ素原子に結合した水素原子の数は、1分子中に平均3個を越える数である。
ケイ素原子に結合した有機基としては、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン成分のR1と同じ範囲である非置換または置換の1価の炭化水素基が例示される。特に、合成及び取扱いが容易なことから、メチル基が好ましい。
ケイ素に結合した活性水素基を有するオルガノポリシロキサンの分子量は特に限定されない。また、当該オルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、好ましくは10mm/s以上100,000mm/s以下、さらに好ましくは15mm/s以上1000mm/s以下の範囲である。粘度をこれらの範囲内とすることによって、保存中の揮発を抑制し、所望の架橋度や成形品の物性を、より容易に得ることができ、また合成や取扱いが容易で、系に容易に均一に分散させることが可能である。
シロキサン骨格は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでも差支えなく、これらの混合物を用いてもよい。特に合成が容易であることから、直鎖状のものが好ましい。活性水素基は、分子中のどのシロキサン単位に存在してもよいが、少なくともその一部が、R1HSiO1/2のような分子末端のシロキサン単位に存在することが好ましい。
付加硬化型シリコーンゴム原液としては、不飽和脂肪族基の量が、ケイ素原子1モルに対して0.1モル%以上、2.0モル%以下であるものが好ましい。特には、0.2モル%以上、1.0モル%以下であるものが好ましい。
また、付加硬化型シリコーンゴム原液は、不飽和脂肪族基に対する活性水素基の数の割合(モル比、以降、「H/Vi」とも記す)が、0.3以上1.5以下、特には0.3以上0.8以下となるような割合で配合されていることが好ましい。H/Viを上記数値範囲内とすることで、硬化シリコーンゴム弾性層の弾性を、より容易に調整することができる。H/Viが0.3以上とすることで、電子写真用部材の硬化シリコーンゴム弾性層として必要な弾性を十分に確保可能な架橋構造を構築することが可能である。また、H/Viが1.5以下とすることで、硬化シリコーンゴム弾性層中に存在する、架橋反応時に未反応の不飽和脂肪族基により、架橋構造を構築させ、硬化シリコーンゴム弾性層の弾性の低下を十分に抑制することが可能である。H/Viは水素核磁気共鳴分析(例えば、H−NMR(商品名:AL400型 FT−NMR;日本電子株式会社製)を用いた測定により定量・算出することが可能である。例えば、不飽和脂肪族基がビニル基である場合は、ビニル基の水素原子(通常水素原子3個分)に帰属されるピーク(5.6〜6.2ppm)と、活性水素基の水素原子に帰属されるピーク(ピークトップが4.6〜4.8ppm付近にピーク)の積算値を求めて算出することができる。なお、活性水素基の水素原子に帰属されるピークのケミカルシフトは、活性水素基に直結しているケイ素原子の環境によって変化しやすい。
架橋触媒であるヒドロシリル化触媒としては、一般的に白金化合物やロジウム化合物の如き公知の物質が用いられる。また、硬化制御剤としては、メチルビニルテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイドの如き公知の物質が用いられる。
(3−2)フィラー
弾性層14には、本発明の効果を阻害しない限り、伝熱特性の向上、及び断熱性、補強性、耐熱性、加工性、導電性の付与のために、フィラーと呼ばれる充填剤を添加してもよい。
特に、弾性層14は、アナターゼ型構造を有する酸化チタンを含むことが好ましい。これによって、弾性層14の耐熱性を向上させることができる。また、アナターゼ型構造を有する酸化チタンを弾性層14に含有させることで、弾性層14と表面層16との接着耐久性を一層向上させることが出来る。
特に、弾性層が、ビニル基の如き不飽和脂肪族基を含む場合、当該弾性層にアナターゼ型構造を有する酸化チタンを含有させることによって、当該弾性層と表面層との接着耐久性をより高めることができる。ここで、不飽和脂肪族基を含む弾性層は、弾性層の形成に用いる付加硬化型シリコーンゴム原液中の不飽和脂肪族基に対する活性水素基の数の割合(以降、「H/Vi」とも記す)を、1.0未満とすることによって得られる。そして、H/Viが、0.3以上0.8以下である付加硬化型シリコーンゴム原液を用いることによって形成される、不飽和脂肪族基を含む弾性層においては、弾性層にアナターゼ型構造を有する酸化チタンを含有させることによる弾性層と表面層との接着耐久性の向上効果が顕著である。なお、H/Viが、0.3以上0.8以下である付加硬化型シリコーンゴム原液を用いることによって形成される弾性層は、後述する硬度上昇率としては、概ね、1.2以上5.0以下の範囲内とすることができる。
また、弾性層14は、弾性層14の熱伝導性向上のために熱伝導性フィラーを含有することが好ましい。
(3−2−1)酸化チタン
酸化チタンには、アナターゼ型構造やルチル型構造のものが存在することが知られている。本発明においては、アナターゼ型構造を有する酸化チタン(以降、「アナターゼ型酸化チタン」ともいう)を用いることが好ましい。本発明の効果を阻害しないものであれば、アナターゼ型構造以外の酸化チタンを含んでも良いが、アナターゼ型酸化チタンが多いほどよい。すなわち、シリコーンゴム中に含まれる酸化チタンは、ASTM D 3720−84の方法に従い、下記計算式(1)により算出されるルチル化率が小さいほど好ましい。具体的には、ルチル化率が、50%以下、特には、20%以下であることが好ましい。
計算式(1)
ルチル化率(質量%)=100−100/(1+1.2×Ir/Ia)
計算式(1)において、Irは、X線回折パターンにおける酸化チタンが有するルチル型構造の最強干渉線(面指数110)のピーク面積であり、Iaは、X線回折パターンにおける酸化チタンが有するアナターゼ型構造の最強干渉線(面指数101)のピーク面積である。
アナターゼ型酸化チタンは、付加硬化型シリコーンゴム原液100質量部に対して、0.2質量部以上20質量部以下の割合で含有させることが好ましい。特には、1質量部以上5質量部以下で含有させることが更に好ましい。0.2質量部以上とすることで、弾性層の弾性の耐久性を十分に確保することが可能である。また、20質量部以下とすることで、付加硬化型シリコーンゴムの構造粘性の上昇を抑えることが可能である。
また、少量の添加によって弾性層14の耐熱性を確保するため、アナターゼ型酸化チタンの一次粒径は小さいほど好ましい。具体的には、アナターゼ型酸化チタン粒子の一次粒子の体積平均粒径として、5nm以上、100nm以下、特には、20nm以上、40nm以下である。
ところで、弾性層14中のアナターゼ型酸化チタン粒子の一次粒子の体積平均粒子径は、フロー式粒子像分析装置(商品名:FPIA−3000;シスメックス株式会社製)を用いて求めることとする。具体的には、弾性層14から切り出したサンプルを磁器製のるつぼに入れ、窒素雰囲気中で1000℃に加熱し、ゴム成分を分解させ除去する。次いで、このるつぼを空気雰囲気下で1000℃に加熱し、気相成長法炭素繊維を燃焼させる。その結果、るつぼ中には、サンプルに含まれていた酸化チタン粒子のみが残る。るつぼ中の酸化チタン粒子を乳鉢と乳棒を用いて1次粒子となるように解砕したのち、これを水に分散させて、試料液を調製する。この試料液を、上記粒子像分析装置に投入し、装置内で撮像セル内に導入し通過させ、無機充填剤を静止画像として撮影する。
平面に投影された無機充填剤の粒子像(以下、「粒子投影像」ともいう)と等しい面積を有する円(以下、「等面積円」ともいう)の直径を、当該粒子像にかかる酸化チタン粒子の直径とする。そして、1000個の酸化チタン粒子の等面積円の直径を求め、それらの算術平均値を、酸化チタン粒子の一次粒子の体積平均粒子径とする。
また、酸化チタン粒子の結晶構造はX線回折測定(XRD)によって特定することが可能である。測定は、試料水平型多目的X線回折装置(商品名:UltimaIV,株式会社リガク製)を用い、以下の条件で行う。
X線源:Cu−Kα線
管電圧/電流:30kV/20mA
走査範囲:10゜〜80゜
スキャン速度:2.0゜/分
サンプリング幅:0.01゜
積算回数:3回
測定したX線回折プロファイルにおいて、2θ=25.3°付近に、アナターゼ型酸化チタン粒子の結晶の面指数(101)に特徴的な回折ピークが、最も強い強度で確認することが可能である。
(3−2−2)熱伝導性フィラー
熱伝導性フィラーは、高熱伝導性であることが好ましい。具体的には、無機物、特に金属、金属化合物、炭素繊維を挙げることが可能である。高熱伝導性フィラーの具体例は、以下のものを含む。炭化ケイ素(SiC);窒化ケイ素(Si);窒化ホウ素(BN);窒化アルミニウム(AlN);アルミナ(Al);酸化亜鉛(ZnO);酸化マグネシウム(MgO);シリカ(SiO);銅(Cu);アルミニウム(Al);銀(Ag);鉄(Fe);ニッケル(Ni);気相成長法炭素繊維;PAN系(ポリアクリロニトリル)炭素繊維;ピッチ系炭素繊維等。これらは単独であるいは2種類以上を混合して用いることが可能である。高熱伝導性フィラーの平均粒径は取扱い上、および分散性の観点から1μm以上50μm以下が好ましい。また、形状は球状、粉砕状、針状、板状、ウィスカ状などが用いられるが、分散性の観点から球状のものが好ましい。
熱伝導性フィラーは、その目的を十分に達成させるために、弾性層中に、付加硬化型シリコーンゴムを基準として、30vol%以上60vol%以下の範囲で含有させることが好ましい。
(3−3)弾性層の形成
本発明の一実施形態に係る電子写真用部材の製造方法においては、上記した各材料を含む付加硬化型のシリコーンゴム組成物の層を、金型成型法、ブレードコート法、ノズルコート法、リングコート法の如き方法によって、基材の外周面に形成し、加熱することによって弾性層14を形成することが可能である。
弾性層14の外表面には、後述する接着層15の形成に先だって、紫外線処理やプラズマ処理といった表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理を行うことで、弾性層14の表面にOH基を多量に存在させることができ、弾性層と接着層とがより強固に接着される。
紫外線処理を行う場合、紫外線の光源としては、175nmの波長を有する紫外線を用いることが好ましい。具体的な紫外線の光源としては、エキシマランプが挙げられる。また、紫外線は、波長175nmの紫外線の、単位面積当たりの積算光量が、300mJ/cm以上、1000mJ/cm以下となるように照射することが好ましい。紫外線の照射量は、紫外線積算光量計(商品名:C8026/H8025−172;浜松ホトニクス株式会社製)を用いて測定することが可能である。
弾性層14の厚さは、電子写真用部材の表面硬度への寄与、およびニップ幅確保の観点から、適宜設計可能である。
電子写真用部材がベルト形状を有する場合、弾性層14の厚さの好ましい範囲は、100μm以上、500μm以下、更に好ましくは200μm以上、400μm以下である。弾性層14の厚さが上記範囲であると、定着ベルトを定着装置に組み込んだ場合に、基材13がよく変形して十分なニップ幅を確保することが可能である。また、弾性層14の厚さが上記範囲であると、ベルト内に発熱源を有する場合に、熱源から記録媒体に効率よく熱を伝えることが可能である。電子写真用部材がローラ形状を有する場合には、基材13が剛体であるため、ニップ幅を弾性層14の変形で形成する必要がある。このため、定着ベルトの場合より弾性層14の厚さは大きい。具体的には、弾性層14の厚さの好ましい範囲は、300μm以上、10mm以下、更に好ましくは1mm以上5mm以下である。
なお、弾性層14の強度は、一般に、JIS K6251:2010に基づく、ダンベル状3号型試験片を用いて測定したときの引っ張り強さ(TS)が、0.4MPa以上、3.0MPa以下、特には、1.0MPa以上、2.5MPa以下であることが好ましい。弾性層14の引っ張り強さが上記範囲であると、電子写真用部材の弾性層14が十分な強度を有することが可能である。
なお、弾性層14の引っ張り強さは、シリコーンゴム組成物において、オルガノポリシロキサンの架橋度を大きくすることで大きくすることが可能である。具体的には、例えば、ケイ素原子数に対する不飽和脂肪族基、及びケイ素の結合した活性水素の割合を増加させることで可能となる。
(3−4)弾性層中における不飽和脂肪族基の存在の程度
弾性層14において、シリコーンゴムの耐老化性を確保するためには、弾性層14中に不飽和脂肪族基が存在することが好ましい。シリコーンゴム中の架橋構造が切断されても、該不飽和脂肪族基が新たな結合を形成するためである。
弾性層14中の不飽和脂肪族基の量を直接的に観測することは困難である。しかし、以下の方法により間接的には観測することが可能である。
まず、電子写真用部材の弾性層14から、所定のサイズ(例えば、20mm×20mm)の硬化シリコーンゴムの薄片の複数枚を切り出し、厚さ2mmになるように積層する。そして、この積層体について、タイプCマイクロ硬度をマイクロゴム硬度計(マイクロゴム硬度計MD−1 capaタイプC;高分子計器株式会社製)を用いて測定する。このとき測定値をHμ0とする。
次いで、上記の積層体を構成していたシリコーンゴムの薄片の全てをメチルハイドロジェンシリコーンオイル(商品名:DOW CORNING TORAY SH1107FLUID;東レ・ダウコーニング株式会社製)中に完全に浸漬させる。メチルハイドロジェンシリコーンオイルを温度30℃に維持して24時間静置する(以降、この処理を「24時間浸漬」)ともいう。これにより、各薄片の内部にまでメチルハイドロジェンシリコーンオイルを浸漬させる。次いで、24時間浸漬の処理を施した全ての薄片をメチルハイドロジェンシリコーンオイルから取り出し、表面のオイルを十分に取り除き、200℃のオーブン中で4時間加熱後、室温にまで冷却する。これにより、全ての薄片について、主反応の不飽和脂肪族基とメチルハイドロジェンシリコーンオイルとの反応を完了させる。次に全ての薄片を積層し、得られた積層体のマイクロ硬度を上記の装置を用いて測定する。このときのマイクロ硬度をHμ1とする。そして、硬度上昇率(=Hμ1/Hμ0)を算出する。
弾性層中に不飽和脂肪族基の量が多い場合には、試験片の内部に浸透したメチルハイドロジェンシリコーンオイルによって、試験片中に新たな架橋点が形成される。その為、熱処理後の試験片は大幅な硬度上昇を示す。つまり、硬度上昇率は比較的大きな値を示す。
一方、弾性層中の不飽和脂肪族基の量が少ない場合には、試験片にメチルハイドロジェンシリコーンオイルを浸漬させ、加熱処理を施しても、新たな架橋点が形成されにくい。よって、熱処理後の試験片の硬度変化は軽微なものとなる。つまり、硬度上昇率は比較的小さな値を示すことになる。
硬度上昇率の算出のための実験については、試験片中の不飽和脂肪族基を確実に反応させることができれば、上記した条件に限定されるものではない。
硬度上昇率としては、1.0以上、特には1.2以上が好ましい。不飽和脂肪族基が比較的潤沢に弾性層に存在することとなるため、老化による弾性の低下を有効に抑えられるからである。
また、弾性層における架橋構造の安定性の点から、硬度上昇率は、5.0以下、特には2.0以下が好ましい。
なお、硬度上昇率の具体的な制御は、弾性層の形成に用いる付加硬化型シリコーンゴム原液の組成の調整により可能である。
すなわち、付加硬化型シリコーンゴム原液中の、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合した活性水素基を有するオルガノポリシロキサンとの混合比を調整して、付加硬化型シリコーンゴム原液中の、不飽和脂肪族基のモル数と活性水素基のモル数との比を調整する。具体的には、活性水素基のモル数に対する不飽和脂肪族基のモル数を多くすることによって、弾性層中の不飽和脂肪族基の存在量を多くすることが可能である。その結果として、硬度上昇率を大きくすることが可能である。
(4)接着層
接着層15は、弾性層14と表面層16との接着耐久性を確保する上で重要な機能を有する層である。
接着層15はポリイミドシリコーンを含んでいる。ここでいうポリイミドシリコーンとは、分子内にポリイミド構造とオルガノシロキサン構造を有するものである。
接着層15は、分子内にビニル基を含有するポリイミドシリコーンの硬化物であることが好ましい。接着層15は、分子内にビニル基を含有するポリイミドシリコーンを含む塗工用液を弾性層14上にコーティングして塗膜を形成し、該塗膜を硬化することにより形成することが可能である。
分子内にビニル基を含有するポリイミドシリコーンにおいて、ビニル基は、オルガノシロキサン構造の側鎖に導入されていることが好ましい。また、オルガノシロキサン構造としては、ジメチルシロキサン構造であることが好ましい。
分子内にビニル基を含有するポリイミドシリコーンの代表例として、下記式(1)〜(3)で表されるいずれかのユニットと、下記式(4)〜(6)で表されるいずれかのユニットとを有するポリイミドシリコーンが挙げられる。
Figure 0006708436
Figure 0006708436
分子内にビニル基を含有するポリイミドシリコーンが有機溶剤に溶解された塗工用液としては、市販品(商品名:SMP−5005−PGMEA;信越化学工業株式会社製)を用いることが可能である。
なお、本発明の効果を阻害しない範囲で、分子内にビニル基を含有するポリイミドシリコーンを含む塗工液中に、ビニル基を含有しないポリイミドシリコーンが含まれていてもよい。
また、硬化前の塗膜に含まれるポリイミドシリコーン中のビニル基の量が多いほど高い接着耐久性を得ることが可能である。
接着層15の厚みは0.5μm以上10μm以下、さらには1μm以上5μm以下であることが好ましい。接着層15の厚みが0.5μm以上であると、均一な接着層を形成することができ、高い接着耐久性を得ることが可能である。また、接着層15の厚みが10μm以下であると、電子写真用部材の柔軟性を損なわずに高い接着性を得ることが可能である。また、電子写真用部材が定着部材である場合、紙の如き記録媒体への伝熱性が良好である。
(5)表面層
表面層16の材料としては、フッ素樹脂、例えば、以下に列挙する樹脂が単独もしくは複合で好ましく用いられる。テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)。上記例示列挙した材料中でも、成形性やトナーの離型性の観点からPFAが好ましい。
表面層16の厚みは5μm以上50μm以下、さらには10μm以上30μm以下が好ましい。5μm以上であると層としての形成が容易であり、50μm以下であると電子写真用部材から紙の如き記録媒体への伝熱性が良好であるためである。
(6)弾性層と表面層との接着方法
まず、上記した方法によって形成された弾性層14の外周面に、硬化前のポリイミドシリコーンが溶剤に溶解された塗工用液をコーティングし、乾燥する。コーティングの方法としては、スプレーコーティング、スリットコーティング、ブレードコーティング、ロールコーティング、ディップコーティングの如き公知の方法を用いることが可能である。乾燥方法としては、風乾および加熱乾燥が可能である。加熱乾燥する場合は、温度50℃以上150℃以下、さらには80℃以上120℃以下であることが好ましい。加熱温度が150℃より高いと接着層の硬化が開始する可能性がある。また、加熱乾燥をする時間は、1分以上、2時間以下、具体的には、1時間程度であることが好ましい。乾燥時間に特に上限はなく、接着層の溶剤が十分に揮発したら、乾燥を終了することが良い。
次に、該塗膜上に表面層16を形成する。表面層16の形成手段としては、特に限定されないが、以下の方法がある。
・押し出し成形によりチューブ状に成形したフッ素樹脂チューブで、上記塗膜が形成された弾性層14を被覆する方法(以降、この方法を「チューブ法」と称する場合がある)。
・フッ素樹脂の微粒子を溶媒中に分散させた塗料、または、フッ素樹脂の微粒子そのものを、上記塗膜が形成された弾性層14の表面、すなわち、上記塗膜の表面に適用した後、当該塗膜の表面上において、フッ素樹脂の微粒子を溶融せしめてフッ素樹脂を含む表面層を形成する方法(以降、この方法を「コート法」と称する場合がある)。
チューブ法においては、フッ素樹脂チューブの内面、すなわち、接着層15と接する側の表面に対して、エキシマレーザー処理、ナトリウム処理、アンモニア処理の如き表面処理を行うことが好ましい。このような表面処理を行うことによってフッ素樹脂チューブの内面に多量のOH基が形成されるため、接着層15と強固な結合が形成されると考えられる。エキシマレーザー処理は、チューブ内面にレーザーを照射することで行うことが可能である。ナトリウム処理は、金属ナトリウムの如きアルカリ金属分散液をチューブ内面に塗布することによって行うことが可能である。
コート法においては、フッ素樹脂の微粒子の表面に存在するOH基と、接着層中に含まれるビニル基とが結合することによって、弾性層14と表面層16とが良好に接着すると考えられる。
次に、得られた積層体を加熱することによりポリイミドシリコーンを硬化して、弾性層14と表面層16とを接着する。チューブ法の場合の加熱温度としては、温度150℃以上、400℃以下、特には、200℃以上、250℃以下であることが好ましい。また、加熱時間としては、10分以上、1時間以下、特には、20分以上、1時間以下であることが好ましい。加熱時間が上記範囲であることで硬化シリコーンゴム弾性層の熱劣化が抑制され、かつ高い接着性を得ることが可能である。コート法の場合の加熱温度としては、温度300℃以上、400℃以下、特には、330℃以上、390℃以下であることが好ましい。また、加熱時間としては、1分以上、30分以下、特には、2分以上、15分以下であることが好ましい。加熱時間と加熱温度が上記範囲であることで、フッ素樹脂を十分に溶融せしめ塗膜の形成を行うことが可能である。また、硬化シリコーンゴム弾性層の熱劣化を抑制し、かつ高い接着性を得ることが可能である。
(6)はく離試験
本発明に係る電子写真用部材は、260℃の環境下に10時間放置した後における、表面層16の弾性層14からのはく離試験において、弾性層14が凝集破壊を起こす。
ここでいう、「はく離試験」とは、日本工業規格(JIS) K6854−1:1999で規定される90°はく離接着強さ試験(以下、単に「はく離試験」とも称す)である。
電子写真用部材を、通常の定着装置で使用する温度、たとえば100〜190℃の温度よりも高い、260℃という高温環境下に放置することで、電子写真用部材の高温環境下での接着耐久性を加速して評価することが可能である。この耐熱試験を行った後において、はく離試験を行った結果弾性層14が凝集破壊を起こすとは、弾性層14と表面層16とが強固に接着されていることを意味する。
ここで、はく離試験方法を、図2を用いて説明する。定着ベルト11に中子(不図示)を入れ、中子の両端を図中R方向に回転自在のベアリング軸受(不図示)で外側から挟み込み保持する。次に、表面層の表面から弾性層14表面に到達するように剃刀を用いて幅10mmのスリットを入れる。このときのスリットの深さの目安は、40〜200μm程度(弾性層14中に達する深さであればよい)である。次に、スリットを入れた部分に電子写真用部材の長手方向に一か所切り込みを入れ、ここを剥がし端Hとする。そして、図2に示すように、定着ベルトの表面部を剥がし端Hから周方向長さ5〜20mm程度剥がす。
この剥がし端Hを、中子の回転軸の真上から垂直方向(図2中、矢印Fの方向)に、50mm/min.の速度にて引っ張り、周方向の長さが70mmに達するまで表面部を引きはがす。このとき、引き剥がした距離が70mmに達するまでの間、剥がし端Hを引っ張る方向Fの、剥がし端Hの根元における定着ベルト11接線方向に対する角度を90°に維持する。当該角度を、90°に維持する具体的な方法としては、剥がし端Hを、はく離評価試験機のフォースゲージ(不図示)で挟み込む。次に、剥がし端Hを、中子の回転軸の真上から矢印Fの方向に一定の移動速度(50mm/min)にて、引っ張ると同時に、当該剥がし端Hの根元における定着ベルト11の接線方向への定着ベルト11の移動速度を、剥がし端Hの矢印Fの方向への移動速度と等しくなるように、中子を図中R方向に回転させる方法が挙げられる。例えば、定着ベルト11の外径を30mmとした場合、中子を、矢印Rの方向に、0.53回転/分(rpm)で回転させればよい。
弾性層14のはく離モードは、上記はく離試験によって形成された破断面を、日本工業規格(JIS) K6866:1999で定められた「接着剤−主要破壊様式の名称」に則って判断する。
接着破壊:割れ目が接着剤と被着剤の界面にあることが目に見える接着剤結合の破壊。
凝集破壊:割れ目が接着剤又は被着剤の中にあると目に見える結合たい積物の破壊。
すなわち、弾性層14の凝集破壊とは、破断面の割れ目が弾性層14の中にあると目に見える破壊である。
(7)定着装置
定着装置とは、画像を担持した記録媒体を熱と圧力により加熱処理する装置である。そのような定着装置としては、記録媒体上のトナー像を加熱処理して定着或いは仮定着する定着装置が挙げられる。また、記録媒体に定着された画像を加熱処理して画像の光沢を増大させる光沢増大化装置、インクジェット方式で画像形成された記録媒体を加熱処理して乾燥させる装置が挙げられる。
図4の(b)は定着ベルト11を用いた定着装置114の要部の横断面模式図である。ここで、以下の説明において、定着装置及びこの定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録媒体の面において記録媒体搬送方向と直交する方向であり、短手方向とは記録媒体の面において記録媒体搬送方向と平行な方向である。また、幅とは短手方向の寸法であり、長さとは長手方向の寸法である。
本実施態様における定着装置114は、基本的には公知技術であるいわゆるテンションレスタイプのフィルム加熱方式の定着装置である。フィルム加熱方式の定着装置は、定着部材として、可撓性を有するエンドレスベルト状若しくは円筒状の耐熱性の定着ベルト11を用いている。そして、この定着ベルト11の周長の少なくとも一部は常にテンションフリー(テンションが加わらない状態)とし、定着ベルト11は加圧ローラ(加圧回転体)6の回転駆動力で回転駆動するようにした装置である。
図4(b)において、加熱体支持部材兼フィルムガイド部材としてのステー1は、長手方向(図面に垂直方向)に長い横断面略半円形樋型の耐熱樹脂製の剛性部材である。本実施態様では、ステー1の材料として高耐熱性の液晶ポリマーを用いている。また、ステー1の長手方向中央部の近傍には、加熱手段としてのヒータ3に接触するように配置されるサーミスタ(温度検知素子)5を収納する孔1bが溝部1aと連通させて設けてある。ヒータ3は、本実施態様においては、所謂セラミックスヒータであり、ステー1の下面において短手方向中央にステー1の長手方向に沿って設けられた溝部1a内に嵌入させて固定支持させてある。
電子写真用部材としての定着ベルト11は、可撓性を有し、耐熱性に優れた円筒状のベルトであり、ヒータ3を支持させたステー1の外周に、周長に余裕を持たせてルーズに外嵌されている。さらに定着ベルト11の内周面(内面)には、ヒータ3との摺動性を向上させるためにグリスが塗られている。上記のステー1、ヒータ3、定着ベルト11により加熱アセンブリ4が構成されている。
バックアップ部材としての加圧ローラ(加圧回転体)6は、定着ベルト11を挟んで、ステー1に保持されているヒータ3と対向している。本実施態様における加圧ローラ6は、鉄、ステンレス、アルミ等の丸軸の芯金6a上を、耐熱性弾性層6bとしてシリコ−ン発泡体で被覆し、さらにその上に離型層6cとしてフッ素樹脂チューブで被覆した構成を有する。そして、ステー1と加圧ローラ6の間には加圧機構(不図示)により所定の圧力が掛けられている。この圧力により、加圧ローラ6の弾性層6bが、定着ベルト11を挟んでヒータ3に沿って弾性変形する。これによって、加圧ローラ6は、記録媒体Pが担持するトナー像Tの加熱定着に必要な所定幅のニップ部(定着ニップ部)Nを、定着ベルト11を挟んで形成する。
加圧ローラ6は、少なくとも画像形成時には、制御回路部101で制御されるモータ(駆動手段)Mによって所定の速度で矢印に示す反時計方向に回転駆動される。この加圧ロー
ラ6の回転によって、ニップ部Nにおいて、加圧ローラ6と定着ベルト11との間に摩擦力が生じる。これにより、定着ベルト11は、その内面がヒータ3の底面と密着して摺動しながら、矢印に示す時計方向に、ステー1の外回りを加圧ローラ6の回転周速度にほぼ等しい周速度で回転する。即ち、画像形成部側から搬送されてくる、トナー像Tを担持した記録媒体Pの搬送速度とほぼ同一の周速度で回転される。
また、ヒータ3は電源装置102から電力が供給されて昇温する。ヒータ3の温度はサーミスタ5で検知され、その検知温度情報が制御回路部101にフィードバックされる。制御回路部101はサーミスタ5から入力する検知温度が所定の目標温度(定着温度)に維持されるように電源装置102からヒータ3に入力する電力を制御する。
ヒータ3が所定の定着温度に温調され、また、加圧ローラ6が回転駆動されている状態において、ニップ部Nに、トナー像Tを有する記録媒体Pがそのトナー像担持面側を定着ベルト11側にして導入される。記録媒体Pは、ニップ部Nにおいて、定着ベルト11の外面に密着して定着ベルト11と一緒に搬送されていく。これにより、記録媒体Pに対して、ヒータ3の熱が定着ベルト11を介して、また、加圧力が加圧ローラを介して付与され、トナー像Tが記録媒体Pの表面に定着される。ニップ部Nを通過した記録媒体Pは、定着ベルト11の外周面から自己分離して定着装置外へ搬送される。
(8)画像形成装置
図4の(a)は、定着ベルト11を用いた定着装置114を、記録媒体上の未定着トナー像を加熱処理して定着する定着装置として搭載した画像形成装置100の一例の模式図である。この画像形成装置100は電子写真方式を用いたカラープリンタである。
画像形成装置100は、パーソナルコンピュータ、イメージリーダーの如き外部ホスト装置200から画像形成装置側の制御回路部(制御手段)101に入力する電気的画像信号に基づいて、シート状の記録媒体Pにカラー画像形成を行う。制御回路部101はCPU(演算部)、ROM(記憶手段)を含み、ホスト装置200や画像形成装置100の操作部(不図示)との間で各種の電気的な情報の授受を行う。また、制御回路部101は画像形成装置100の画像形成動作を所定の制御プログラムや参照テーブルに従って統括的に制御する。
Y、C、M、Kは、それぞれ、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナー像を形成する4つの画像形成部であり、画像形成装置内において下からY、C、M、Kの順に配列されている。各画像形成部Y、C、MおよびKは、それぞれ、像担持体としての電子写真感光体ドラム51と、このドラム51に作用するプロセス手段としての、帯電装置52、現像装置53、クリーニング装置54を有している。イエローの画像形成部Yの現像装置53には現像剤としてイエロートナーが、シアンの画像形成部Cの現像装置53には現像剤としてシアントナーが収容されている。マゼンタの画像形成部Mの現像装置53には現像剤としてマゼンタトナーが、ブラックの画像形成部Kの現像装置53には現像剤としてブラックトナーがそれぞれ収容されている。ドラム51に露光を行うことにより静電潜像を形成する光学系55が上記4色の画像形成部Y、C、M、Kに対応して設けられている。光学系としては、レーザー走査露光光学系を用いている。
各画像形成部Y、C、M、Kにおいて、帯電装置52により一様に帯電されたドラム51に対して光学系55より画像データに基づいた走査露光がなされる。これにより、ドラム面に静電潜像が形成される。それらの静電潜像が現像装置53によりトナー像として現像される。即ち、例えば、イエローの画像形成部Yのドラム51にはフルカラー画像のイエロー成分に対応したイエローのトナー像が形成される。
各画像形成部Y、C、M、Kのドラム51上に形成された上記のトナー像は各ドラム51の回転と同期して、略等速で回転する中間転写体56上へ所定の位置合わせ状態で順に重畳されて一次転写される。これにより中間転写体56上にフルカラーのトナー像が合成形成される。本実施態様においては、中間転写体56として、エンドレスの中間転写ベルトを用いており、該ベルト56は、駆動ローラ57、二次転写ローラ対向ローラ58、テンションローラ59の3本のローラに巻きかけて張架してあり、駆動ローラ57によって駆動される。
各画像形成部Y、C、M、Kのドラム51上からベルト56上へのトナー像の一次転写手段としては、一次転写ローラ60を用いている。ローラ60に対して不図示のバイアス電源よりトナーと逆極性の一次転写バイアスを印加する。これにより、各画像形成部Y、C、M、Kのドラム51上からベルト56に対してトナー像が一次転写される。
各画像形成部Y、C、M、Kにおいてドラム51上からベルト56へトナー像が一次転写された後、ドラム51上に残留したトナーはクリーニング装置54により除去される。
上記工程をベルト56の回転に同調して、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に対して行い、ベルト56上に、各色のトナー像を順次重ねて形成していく。なお、単色のみの画像形成時(単色モード)には、上記工程は、目的の色についてのみ行われる。
一方、記録媒体カセット61内の記録媒体Pが給送ローラ68により所定のタイミングで一枚分離され給送される。そして、その記録媒体Pがレジストローラ62および63により所定のタイミングで、二次転写ローラ対向ローラ58に巻きかけられている中間転写ベルト部分と二次転写ローラ64との圧接部である転写ニップ部に搬送される。ベルト56上に形成されたトナー像は、二次転写ローラ64に不図示のバイアス電源より印加されるトナーと逆極性のバイアスにより、記録媒体P上に一括転写される(二次転写)。
二次転写後にベルト56上に残留した二次転写残トナーは中間転写ベルトクリーニング装置65により除去される。記録媒体P上に二次転写されたトナー像は、定着装置114により記録媒体P上に溶融混色定着され、フルカラープリントとして排紙パス66を通って排紙トレイ67に送り出される。
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明を適用可能な実施形態の例ではあるものの、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において種々の変形が可能である。
また、実施例1〜3は、参考例である。
(実施例1)
定着ベルトの基材として、外径30mm、肉厚40μm、軸方向の長さ400mmのステンレス製フィルムを用意した。
このステンレス製フィルム上に、付加硬化型のシリコーンゴム(商品名:XE15−B9236;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)を、リング形状の塗工ヘッドを用いて塗布し、組成物の塗膜を形成した。この塗膜の厚さは300μmであった。ここで、上記した付加硬化型のシリコーンゴムは、A剤およびB剤を、H/Viが、1.1となるように混合したものである。
次いで、該塗膜を200℃に加熱し、塗膜中の付加硬化型シリコーンゴムを反応させ、シリコーンゴムを含む弾性層を形成した。
次に、弾性層の表面に対して、表面が周方向に70mm/secの速度で移動するようにフィルムを回転させながら、表面から2mmの距離に設置したエキシマランプ(商品名:MEBF−460BQ;株式会社エム・ディ・エキシマ製)を用いて、大気雰囲気中室温で90秒間の照射を行なった。
そして、硬化前のポリイミドシリコーンが溶剤に溶解された塗工用液(商品名:SMP−5005−PGMEA;信越化学工業株式会社製)を、乾燥後の膜厚が3〜4μmとなるように弾性層上にスプレーコーティングして塗膜を形成した。その後塗膜を100℃において1時間加熱乾燥することで接着剤の層を形成した。
次いで、焼成後の表面層の厚みが25μmとなるようにPFA粒子の水系分散塗料(商品名:AW−5000L;ダイキン工業株式会社製)を該接着剤の層の上にスプレーコートしてPFA粒子が分散されてなる塗膜を形成した。この塗膜を350℃に加熱し、この温度で15分間維持して、該塗膜中のPFA粒子を熔融せしめると同時に、弾性層/接着層間および接着層/表面層間を付加反応により結合せしめ、定着ベルトを作製した。
上記の方法によって得られた定着ベルトにおける弾性層について、前記した方法により測定された引っ張り強さ(TS)は、0.4MPa以上、3.0MPa以下であった。
<はく離モードの評価>
作製した定着ベルトについて、定着ベルト作製直後の初期と、260℃のオーブンで10時間加熱した後の両方について、上述したはく離試験を行い、はく離モードを評価した。評価結果を表1に示す。
その結果、実施例1に係る定着ベルトは、高温に放置された後であっても、破壊モードは弾性層の凝集破壊であり、高温環境下でも接着強度が維持されていることが確認された。
(実施例2)
実施例1と同様にしてステンレス製フィルム上にシリコーンゴムを含む弾性層を形成した。
次に、弾性層の表面を実施例1と同様にエキシマランプで処理した。
そして、硬化前のポリイミドシリコーンが溶剤に溶解された塗工用液(商品名:SMP−5005−PGMEA;信越化学工業株式会社製)を、乾燥後膜厚が3〜4μmとなるように弾性層上にスプレーコーティングして、塗膜を形成した。その後、該塗膜を100℃において1時間加熱乾燥することで接着剤の層を形成した。
次いで、長さ400mm、内径29mm、厚み20μmの内面がエキシマレーザー処理されたフッ素樹脂チューブ(商品名:KURANFLON−LT;倉敷紡績株式会社製)を、上記接着剤の層の上から被覆した。その後、フッ素樹脂チューブの上からベルト表面を均一に扱くことにより、接着層とフッ素樹脂チューブを密着させた。このフッ素樹脂チューブによって被覆されたベルトを、200℃に加熱し、この温度で20分間維持して、弾性層/接着層間および接着層/表面層間を付加反応により結合せしめ、定着ベルトを作製した。
作製した定着ベルトについて、実施例1と同様にしてはく離試験を行い、はく離モードの評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
定着ベルトの基材として、外径30mm、肉厚40μm、軸方向の長さ400mmのステンレス製フィルムを用意した。
次いで、実施例1と同様に、H/Viが1.1となるように調製した、付加硬化型のシリコーンゴム(商品名:XE15−B9236;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)100質量部に対し、アナターゼ型構造を有する酸化チタン(商品名:酸化チタン(IV)アナターゼ型208−18231、和光純薬工業株式会社製、体積平均粒子径30nm)を3.0質量部添加し、十分に混練することでシリコーンゴム組成物を得た。このシリコーンゴム組成物を、ステンレス製フィルム上にリング形状の塗工ヘッドを用いて塗布し、組成物の塗膜を形成した。この塗膜の厚さは300μmであった。
次いで、該塗膜を200℃に加熱し、塗膜中の付加硬化型シリコーンゴムを反応させ、シリコーンゴムを含む弾性層を形成した。以降は実施例2と同様にして定着ベルトを作製した。
上記の方法によって作製した定着ベルトにおける弾性層について、前記した方法により測定された引っ張り強さ(TS)は、0.4MPa以上、3.0MPa以下であった。
作製した定着ベルトについて、実施例1と同様にしてはく離試験を行い、はく離モードの評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
定着ベルトの基材として、外径30mm、肉厚40μm、軸方向の長さ400mmのステンレス製フィルムを用意した。
次いで、付加硬化型のシリコーンゴム(商品名:XE15−B9236;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)について、A剤とB剤とを、H/Viが、0.7となるように配合した。具体的には、A剤とB剤との配合比を、2.2:1とした。
さらに、この付加硬化型のシリコーンゴム100質量部に対し、アナターゼ構造を有する酸化チタン(商品名:酸化チタン(IV)アナターゼ型208−18231、和光純薬工業株式会社製、体積平均粒子径30nm)を3.0質量部添加し、十分に混練することでシリコーンゴム組成物を得た。このシリコーンゴム組成物を、ステンレス製フィルム上にリング形状の塗工ヘッドを用いて塗布し、組成物の塗膜を形成した。この塗膜の厚さは300μmであった。
次いで、該塗膜を200℃に加熱し、塗膜中の付加硬化型シリコーンゴムを反応させ、シリコーンゴムを含む弾性層を形成した。
次に、弾性層の表面を実施例1と同様にエキシマランプで処理した。
そして、硬化前のポリイミドシリコーンが溶剤に溶解された塗工用液(商品名:SMP−5005−PGMEA;信越化学工業株式会社製)を、乾燥後膜厚が3〜4μmとなるように弾性層上にスプレーコーティングして、塗膜を形成した。その後、該塗膜を100℃において1時間加熱乾燥することで接着剤の層を形成した。以降は実施例2と同様にして定着ベルトを作製した。
上記の方法によって作製した定着ベルトにおける弾性層について、前記した方法により測定された引っ張り強さ(TS)は、0.4MPa以上、3.0MPa以下であった。また、前記の方法によって求めた硬度上昇率(Hμ1/Hμ0)は、1.2以上、5.0以下であった。
作製した定着ベルトについて、実施例1と同様にしてはく離試験を行い、はく離モードの評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様にしてステンレス製フィルム上にシリコーンゴムを含む弾性層を形成し、弾性層の表面を実施例1と同様にエキシマランプで処理した。
次に、リン酸基を含有するフッ素樹脂水性プライマーを、乾燥後の膜厚が2〜3μmとなるようにスプレーコーティングして接着層を形成した。次いで、焼成後の厚みが25μmとなるようにPFA粒子の水系分散塗料(商品名:AW−5000L;ダイキン工業株式会社製)をスプレーコートして、PFA粒子が分散されてなる塗膜を形成した。この塗膜を350℃に加熱し、定着ベルトを作製した。
作製した定着ベルトは実施例1と同様にして、はく離試験を行い、はく離モードの評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
接着層に、硬化前のポリイミドシリコーンが溶剤に溶解された塗工用液(商品名:SMP−4001;信越化学工業株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製した。この塗工溶液中のポリイミドシリコーンには、その分子内にビニル基が含まれていない。
作製した定着ベルトは実施例1と同様にして、はく離試験を行い、はく離モードの評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
接着層に、硬化前のポリイミドシリコーンが溶剤に溶解された塗工用液(商品名:SMP−4001;信越化学工業株式会社製)を用いた以外は、実施例2と同様にして、定着ベルトを作製した。この塗工溶液中のポリイミドシリコーンには、その分子内にビニル基が含まれていない。
作製した定着ベルトは実施例1と同様にして、はく離試験を行い、はく離モードの評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0006708436
11 定着ベルト
12 定着ローラ
13 基材
14 弾性層
15 接着層
16 表面層

Claims (7)

  1. 基材と、シリコーンゴムを含む弾性層と、フッ素樹脂を含む表面層と、該弾性層と該表面層との間の接着層とを有する電子写真用部材であって、
    該弾性層は、付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物であり、かつ、不飽和脂肪族基を有し、
    該接着層は分子内にビニル基を有するポリイミドシリコーンの硬化物であり
    該電子写真用部材を260℃の環境下に10時間放置した後における、該表面層の該弾性層からのはく離試験において、該弾性層が凝集破壊することを特徴とする電子写真用部材。
  2. 前記弾性層がアナターゼ型構造を有する酸化チタンを更に含む請求項1に記載の電子写真用部材。
  3. 前記弾性層の引っ張り強さが、0.4MPa以上、3.0MPa以下である請求項1または2に記載の電子写真用部材。
  4. ベルト形状を有し、前記弾性層の厚さが100μm以上、500μm以下である請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
  5. ローラ形状を有し、前記弾性層の厚さが300μm以上、10mm以下である請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真用部材。
  6. 基材と、シリコーンゴムを含む弾性層と、フッ素樹脂を含む表面層とを有する電子写真用部材の製造方法であって、
    付加硬化型シリコーンゴム原液とアナターゼ型構造を有する酸化チタンとを含有する、付加硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させて弾性層を形成する工程;及び
    該弾性層の表面に、分子内にビニル基を有するポリイミドシリコーンの塗膜を形成し、該塗膜を硬化することによって、該表面層と該弾性層とを接着する工程を有し、
    該付加硬化型シリコーンゴム原液中の不飽和脂肪族基に対する活性水素基の数の割合が0.3以上0.8以下である、ことを特徴とする電子写真用部材の製造方法。
  7. 定着部材と加熱手段とを具備する定着装置を備えた画像形成装置であって、該定着部材が請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真用部材であることを特徴とする画像形成装置。
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