JP5488160B2 - ポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
このポリベンズアミドは、そのテレキーリック構造を利用した、他のポリマーとのカップリング反応や、さらなる重合反応等によってロッド−コイルブロック共重合体へと導くことができる。
また、本発明者は、リビングアニオン重合によって得られたポリスチレンマクロイニシエータの存在下で、上述の連鎖重縮合反応を行うことで、ロッド−コイル状のポリスチレン−b−ポリベンズアミドが得られることを報告している(例えば、非特許文献3参照)。
一方、非特許文献2の方法では、最初に連鎖重縮合反応を行うため立体障害の問題は回避できるものの、合成経路が非常に長く、また、複雑な操作が必要であるという問題がある。
1. 式(1)
で示される化合物をイニシエータとし、塩基の存在下、式(2)
で示される化合物を連鎖重縮合させて式(3)
で示されるポリベンズアミド誘導体(A)を得、続いて、前記保護基R′を脱保護して得られた生成物を、式(4)
で示される酸ハロゲン化物と反応させて、式(5)
で示されるポリベンズアミド誘導体(B)を得、このポリベンズアミド誘導体(B)をマクロイニシエータとし、金属触媒の存在下、スチレンを原子移動ラジカル重合させることを特徴とする、式(6)
で示されるポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法、
2. 式(5)
で示されるポリベンズアミド誘導体(B)をマクロイニシエータとし、金属触媒の存在下、スチレンを原子移動ラジカル重合させることを特徴とする、式(6)
で示されるポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法、
3. 前記R2が、メチル基またはエチル基である1または2のポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法、
4. 前記X1が、臭素原子である1〜3のいずれかのポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法、
5. 前記金属触媒が、銅触媒である1〜4のいずれかのポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法、
6. 前記式(2)で示される化合物が、式(2a)または(2b)で示される1のポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法、
7. 前記R′が、トリアルキルシリル基である1のポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法
を提供する。
本発明に係るポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法は下記スキームで示される一連の工程からなる。
上記各式において、RおよびR2は、炭素数1〜10のアルキル基を、R′は、水酸基の保護基を、R1は、炭素数8〜12のアルキル基または置換基を有していてもよいベンジル基を、X1およびX2は、互いに独立して、ハロゲン原子を、nおよびmは2以上の整数を表す。
置換基を有していてもよいベンジル基の具体例としては、ベンジル基;4−メトキシベンジル基、4−エトキシベンジル基、4−n−プロポキシベンジル基、4−i−プロポキシベンジル基、4−n−ブトキシベンジル基、4−t−ブトキシベンジル基、4−n−ペントキシベンジル基、4−n−ヘキソキシベンジル基、4−n−ヘプトキシベンジル基、4−n−オクトキシベンジル基等の4−アルコキシベンジル基等が挙げられる。これらの中でも、R1としては、n−オクチル基、4−アルコキシベンジル基が好適であり、4−アルコキシベンジル基としては、4−オクトキシベンジル基がより好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、X1およびX2としては、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、より好ましくは臭素原子である。
mおよびnは、2以上の整数であるが、2〜100の整数が好ましい。
これらの中でも、R′としては、トリアルキルシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基が好ましく、トリアルキルシリル基がより好ましく、t−ブチルジメチルシリル基が最適である。
[1]工程1:式(3)で示されるポリベンズアミド誘導体(A)の製造
工程1は、上記式(1)で示される安息香酸誘導体をイニシエータとして、式(2)で示されるアミノ安息香酸誘導体を連鎖重縮合させて、ポリベンズアミド誘導体(A)を製造する工程であり、基本的には、上述した特許文献1および非特許文献1で報告された反応である。
この場合、式(1)で示される化合物(イニシエータ)の使用量は、式(2)で示される化合物1molに対して、0.01〜0.5mol程度が好ましい。
塩基の使用量は、重合基質である式(2)で示される化合物1molに対して、0.1〜3mol程度とすることができる。
重縮合の反応温度は、10℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましく、−5℃以下がより一層好ましく、−10℃程度が最適である。
工程2は、工程1で得られたポリベンズアミド誘導体(A)を脱保護した脱保護体(の水酸基)と、式(4)で示される酸ハロゲン化物とを反応させ(アシル化)、後の原子移動ラジカル重合反応のイニシエータ(マクロイニシエータ)となるポリベンズアミド誘導体(B)を製造する工程である。
脱保護条件は、使用する保護基に応じて従来公知の手法を適宜採用すればよい。例えば、トリアルキルシリル基等のシリルエーテル系の保護基では、塩酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸等の酸や、フッ化水素酸(HF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(TBAF)等のフッ化テトラアルキルアンモニウム塩等のフッ素アニオン(フッ化物イオン)を発生する試薬などを用いることで、容易にそれを除去することができる。これら脱保護試薬の使用量は、ポリベンズアミド誘導体(A)1molに対して、1〜2mol程度である。
反応温度は、−10〜50℃程度であり、反応時間は、0.1〜5時間程度である。
なお、脱保護反応では、反応に影響を与えない溶媒を用いてもよく、そのような溶媒としては上記と同様の溶媒が挙げられる。
例えば、有機溶媒中、塩基の存在下で、脱保護生成物と式(4)で示される酸ハロゲン化物とを反応させる手法などが挙げられる。
この場合、式(4)で示される酸ハロゲン化物の使用量は、脱保護体1molに対して、1〜20mol程度とすることができ、1〜10mol程度が好適である。
有機溶媒としては、上で例示した有機溶媒を用いることができるが、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類が好適である。
塩基としては、トリエチルアミン等の3級アミンが好適に用いられる。
反応温度は、−10〜50℃程度である。
工程3は、工程2で得られたポリベンズアミド誘導体(B)をマクロイニシエータとして、原子移動ラジカル重合反応によってスチレンを重合させて、目的物であるポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体を製造する工程である。
具体的には、金属触媒を用い、有機溶媒中で、マクロイニシエータのα−ハロケトン部位のハロゲン原子のラジカル的開裂によって生じた活性種(ポリベンズアミド誘導体(B)ラジカル)を基に、スチレンをラジカル的に重合させる工程である。
この場合、金属触媒としては、銅、鉄、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム等を中心金属とする錯体などを用いることができるが、コスト面を考慮すると、好ましくは銅錯体である。銅錯体としては、CuBr,CuI,CuCl等のハロゲン化銅(I)と、アミン/イミン系の多座配位子とから調製される錯体が好適に用いられる。
有機溶媒としては、上述したものと同様のものが挙げられるが、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族炭化水素類が好適である。
また、金属触媒の使用量は、ポリベンズアミド誘導体(B)1molに対して、金属分として0.01〜10mol程度とすることができ、0.1〜2mol程度が好ましい。
反応温度は、0℃から使用する溶媒の沸点までで適宜設定すればよいが、25〜100℃程度が好ましく、40〜100℃程度がより好ましい。
反応時間は、使用する触媒によって変動するものであるが、通常1〜120時間程度である。
例えば、数平均分子量Mn(GPCによるポリスチレン換算値)が7000以上、分布分布(Mw/Mn)が、1.30以下程度の、高度に制御されたポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体を容易に得ることができる。
[GC]
装置:GC−14B((株)島津製作所製)
カラム:OV−101(ジーエルサイエンス(株)製) 3m
検出器:FID
内標:ナフタレン(工程1)、アニソール(工程3)
重合中の転化率は、ナフタレンとアニソールの検出ピークの面積とモノマーの面積との比から求めた。
[1H−NMR]
装置:JEOL ECA600(600MHz)(日本電子(株)製)
測定溶媒:CDCl3,DMF−d7
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)(0.00ppm)、DMF(2.74ppm)
[13C−NMR]
装置:JEOL ECA600(600MHz)(日本電子(株)製)
測定溶媒:CDCl3,DMSO−d6
基準物質:CDCl3(77.0ppm)、DMSO−d6(39.5ppm)
[FT−IR]
装置:FT/IR−410(日本分光(株)製)
[GPC]
装置:HLC−8200(東ソー(株)製)
カラム:TSK−GEL Multipore HXL−M 2本(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン 1mL/分
検出器:UV(254nm)、RI
検量線:標準ポリスチレン
その後、純水50mLを加えて反応を停止させ、混合物を塩化メチレン100mLで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および純水で洗浄し、硫酸マグネシウム20gを加えて一晩放置して乾燥させた後、これをろ過した。エバポレータにて溶媒を留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン→塩化メチレン)で精製し、無色液体の化合物[1]7.54g(収率75%)を得た。
1H−NMR (600 MHz, CDCl3, δ, ppm): 8.02−7.98 (m, 2H), 7.40−7.36 (m, 2H), 4.78 (s, 2H), 3.89(s, 3H), 0.94 (s, 9H), 0.10 (s, 6H).
13C−NMR (150 MHz, DMSO−d6, δ, ppm): 165.92, 146.64, 128.97, 128.08, 125.72, 63.67, 51.81, 25.60, 17.82, −5.54.
1H−NMR (600 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 7.87−7.84 (m, 2H), 6.54−6.52 (m, 2H), 4.31 (q, J= 7.21 Hz, 2H), 4.05 (s, 1H), 3.15 (t, J= 7.21 Hz, 2H), 1.65−1.60 (p, J= 7.21 and 7.56 Hz, 2H), 1.42−1.26 (m, 13H), 0.88 (t, J= 6.87 Hz, 3H).
13C−NMR (150 MHz, CDCl3) δ (ppm) = 166.88, 152.03, 131.46, 118.35, 111.24, 60.11, 43.38, 31.78, 29.33, 29.21, 27.06, 22.63, 14.45, 14.08.
なお、化合物[2b]は、J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. 2006, 44, 4990−5003に従って合成した。
上記実施例1〜2のまとめを表1に示す。
実施例1で得られたポリベンズアミド誘導体[3a](PpBzAm−OTBS1)0.51g(0.17mmol)を乾燥THF3mLに溶かし、テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)の1.0MTHF溶液0.20mL(0.20mmol)をアルゴン雰囲気下、室温で加えた。得られた混合物を23℃で2時間撹拌した。1H−NMR分析によって反応が定量的に進行したことを確認した後、純水5mLを加えて反応を停止させ、塩化メチレン10mLで抽出した。有機層を純水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム1gを加えて一晩放置して乾燥させた後、これをろ過した。減圧下で濃縮し、黄色の粘稠物として脱保護体(PpBzAm−OH1)0.48g(収率94%)を得た。
乾燥させて窒素を充填した50mLの一口丸底フラスコ中で、上記で得られた脱保護体(PpBzAm−OH)0.48g(0.16mmol)およびトリエチルアミン0.22mL(1.6mmol)を塩化メチレン10mLと混合し、23℃で15分間撹拌した後、0℃まで冷却した。その後、2−ブロモイソブチリルブロミド0.20mL(1.6mmol)を乾燥塩化メチレン5mLに溶かした溶液を滴下し、窒素雰囲気下、23℃で23時間撹拌を続けた。1H−NMR分析によって反応が定量的に進行したことを確認した後、純水5mLを加えて反応を停止させ、塩化メチレン10mLで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および純水で洗浄し、有機層を分離した。有機層に硫酸マグネシウム1gを添加して一晩放置して乾燥させた後、これをろ過した。溶媒を減圧下で留去した粗生成物を塩化メチレン2mLに溶かし、メタノール/水(9/1,v/v)の混合溶媒20mL中で2回析出させ、黄色の粘稠オイルとしてポリベンズアミド誘導体[4a](PpBzAm−Br1)0.40g(収率83%)を得た。
以下において、分子量および分子量分布はGPCにて、転化率はGCにて測定した。
[実施例5]ポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体[5a]の合成
なお上記反応は、各試薬の使用比率を、スチレン/ポリベンズアミド誘導体[4](PpBzAm−Br)/CuBr/Me6TREN=600/1/1/1(モル比)とし、13体積%のアニソール溶液(対スチレン:7.56M)で行った。
CuのリガンドであるMe6TRENを、TPMA、PMDETA、Bpyにそれぞれ変更した以外は、実施例5と同様にしてポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体[5a]を合成した。ただし、Bpyについては、その使用量を2molとした。
実施例5〜9の結果を表2にまとめて示す。
また、実施例5の反応におけるGPC追跡結果を図3に、実施例9の反応におけるGPC追跡結果を図4に、それぞれ示す。
図1には、それぞれのモノマー消費速度が示されているが、これは、表2のスチレンモノマーの転化率と一致していることがわかる。
また、図2に示されるように、いずれの系でも原則モノマー転化率と理論分子量とがほぼ一致していることから、理想通り、ポリベンズアミドのBrからスチレンが重合していると推察される。
さらに、図3,4には、分子量の経時変化が示されている。一般のポリマーは分子量が上昇するに従って分子量分布が広くなるため、山の裾野が広くなるが、この系ではそれが見られないことがわかる。
トリフルオロ酢酸の添加前(a)、添加1日後(b)、添加4日後(c)の1H−NMRスペクトルを図5に示す。
図5に示されるように、添加1日後には、4.25〜4.85ppmおよび3.35〜3.45ppmに位置するオクチルオキシベンジル基由来のピークが消失していることがわかる。なお、図6のFT−IRスペクトルに示されるように、ポリマー主鎖中のエステルおよびアミドは残存していることが確認された。
この結果より、選択的な加水分解が可能であること、および主鎖中のエステル結合が安定性に優れていることが示された。
Claims (7)
- 式(1)
で示される化合物をイニシエータとし、塩基の存在下、式(2)
で示される化合物を連鎖重縮合させて式(3)
で示されるポリベンズアミド誘導体(A)を得、続いて、前記保護基R′を脱保護して得られた生成物を、式(4)
で示される酸ハロゲン化物と反応させて、式(5)
で示されるポリベンズアミド誘導体(B)を得、このポリベンズアミド誘導体(B)をマクロイニシエータとし、金属触媒の存在下、スチレンを原子移動ラジカル重合させることを特徴とする、式(6)
で示されるポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法。 - 前記R2が、メチル基またはエチル基である請求項1または2記載のポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法。
- 前記X1が、臭素原子である請求項1〜3のいずれか1項記載のポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法。
- 前記金属触媒が、銅触媒である請求項1〜4のいずれか1項記載のポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法。
- 前記R′が、トリアルキルシリル基である請求項1記載のポリベンズアミド−ポリスチレンブロック共重合体の製造方法。
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