JP5486936B2 - レーザ加工によるメタルマスクの化学研磨方法 - Google Patents
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この発明によるレーザ加工により得られたメタルマスク1とは、ステンレス鋼板(SUS)からなるステンレス薄板2(板厚約130μm前後)にレーザ光源からレーザビームを照射し、複数の開口部(貫通穴)3を貫通形成することにより得られるものである。複数の開口部3は、上下一対で対向して配置されたA部分と、左右一対で対向して配置されたB部分とからなり、各開口部3の開口寸法幅は、設計値で約180μmである。そして、上記のようにレーザ加工を行うと、ステンレス薄板2は、開口部3の内面にドロスと呼ばれる溶融酸化物4が付着したり、開口部3の下端エッジに溶融酸化物4がバリとなって付着したり、金属の溶融物の飛散物が付着したり、開口部周囲表面に酸化膜が形成される。このような溶融酸化物(バリ)4、飛散物及び酸化膜をそのままにしておくと、加工精度が悪く使用できないため、ドロス等を除去する研磨処理が必要となってくる。
・塩化鉄溶液:ステンレス鋼板研磨の主剤であり、原液は40°Be溶液、比重1.385 使用濃度3〜5%(W/V)塩化鉄濃度として90〜120cc/Lとする。なお、好ましくは100cc/Lである。
・リン酸:化学研磨の作用ができるように液粘度を上げる。原液は85%溶液、比重1.75 腐食性のある液体であり、37cc/L以上が良いが、高価な薬品であるため、40cc/Lが好ましい。なお、少ないと(例えば、27cc/Lでは)開口部内壁が研磨されない。
・でんぷん粉:液粘度の調整のために用いるもので、使用濃度0.12%(W/V)で1〜1.2g/Lが適当である。少ないと開口部内壁が研磨されないし、多すぎても開口部内壁が研磨されない。
・ポリエチレングリコール:表面光沢を良くする。使用濃度0.25%(W/V)で2〜2.5g/Lが適当である。少ないとピッティングを発生させる。
・n-ドデシル硫酸ナトリウム:金属表面のヌレ性を良くする界面活性剤として使用 する。使用濃度0.002%(W/V)で0.005g/Lが適当である。多すぎると、開口部内壁が研磨されない。
・酸化チタン:液色を整えるために加えるもので、研磨効果に影響しないが、使用濃度0.1%(W/V)で0.1g/Lが適当である。
上記化学研磨によるステンレス鋼板の表面粗度は、元のステンレス鋼板の表面粗度よりも粗れることになる。
図3において、試験試料No.1〜5は、いずれもヤスリ研磨ありの場合である。レーザ加工によるメタルマスクの表面は粗面となっているので、化学研磨の前に軽くヤスリを掛けるヤスリ研磨ありの場合が好ましい。そして、試験試料No.1は化学研磨時間5分、試験試料No.2は化学研磨時間10分、試験試料No.3は化学研磨時間15分、試験試料No.4は化学研磨時間20分、試験試料No.5は化学研磨時間なしの場合である。この試験例では、化学研磨前後の板厚(μm)の測定結果とその差異、及び化学研磨前後の開口寸法幅(μm)の測定結果とその差異をそれぞれ表わしている。この測定結果を分析すると、試料No.1〜試料No.4は、試料化学研磨なしの試料No.5と比較しても、大きな変化は認められない。すなわち、化学研磨前後の板厚では1〜4μm程度の差異が認められるだけであり、化学研磨前後のA部の開口寸法幅では2〜3μm程度の差異、B部の開口寸法幅では3〜5μm程度の差異が認められるだけであるので問題がない。
この発明の化学研磨方法により、開口部周囲表面のドロス除去、開口部エッジのバリ除去、及び開口部壁面の凹凸緩和を実施した場合は、図4及び図5に示すように、開口部周囲表面のドロス除去及び開口部壁面の凹凸緩和はもちろん、特に開口部エッジに付着している溶融酸化物(バリ)除去の際、溶解し過ぎて開口部エッジに丸みを帯びさせることなく、開口部エッジを略直角(略垂直に立っている)に保ちながら前記バリを除去するので、半田印刷における抜け性に影響が発生することもなく、要求された半田量を供給することができる。また、この発明の化学研磨方法により得られたメタルマスクの表面は、軽くヤスリを掛けるヤスリ研磨ありの場合であっても、図6の顕微鏡写真に示すように、表面は粗面であって、鏡面仕上げとはならないので、はんだ印刷の際、ペーストの流動性を適正に抑えることができる。なお、従来の電解研磨の場合では、図7及び図8に示すように、開口部エッジのバリの先端部に電流が集中することから溶解が進み、エッジが丸みを帯びてくるという問題が発生する。また、従来の弗酸を含む水溶液に浸漬してドロス等の溶解とともにメタルマスク本体も溶解されて、開口部エッジが丸みを帯びてくるという同様の問題が発生する。この丸みは、縦が約1〜3μm、横が約6〜8μm程度である。また、従来の電解研磨方法により得られたメタルマスクの表面は、図9の顕微鏡写真に示すように、表面は鏡面仕上げとなっているので、はんだ印刷の際、ペーストの流動性が良すぎて流れてしまうという問題がある。これに対し、この発明の化学研磨方法によれば、開口部周囲表面のドロス除去、開口部エッジのバリ除去、及び開口部壁面の凹凸緩和を実施した場合でも、開口部エッジが略直角(略垂直に立っている)であるため、半田印刷における抜け性に影響が発生することもなく、要求された半田量を供給することができる。なお、この発明の化学研磨によるメタルマスクと従来の電解研磨によるメタルマスクの印刷結果をはんだ転写率で比較したものが図10のグラフである。縦軸ははんだ転写率(はんだが全部抜けると100%)であり、横軸は開口部サイズΦ0.2mm、Φ0.25mm、Φ0.3mm、Φ0.35mm、Φ0.4mm、0.2mm×0.2mm、0.3mm×0.3mmである。棒グラフの右側がこの発明の化学研磨による印刷結果を示し、棒グラフの左側が従来の電解研磨による印刷結果を示す。この図10によれば、この発明の化学研磨による処理マスクは、従来の電解研磨による処理マスクと比較して、はんだ転写量が約5%弱改善されるものである。
2 ステンレス薄板
3 開口部(貫通穴)
4 溶融酸化物(バリ)
Claims (6)
- ステンレス薄板にレーザビームを照射して複数の開口部を貫通形成し、前記開口部内面や開口部エッジに溶融酸化物が付着され、開口部周囲表面に酸化膜が形成されたレーザ加工によりメタルマスクを得る工程と、
レーザ加工により得られたメタルマスクを化学研磨処理することにより、前記開口部内面や開口部エッジに付着している溶融酸化物、及び開口部周囲表面に形成されている酸化膜を化学研磨する化学研磨処理工程とを備え、
前記化学研磨処理工程は、前記開口部エッジに付着している溶融酸化物(バリ)除去の際、溶解し過ぎて開口部エッジに丸みを帯びさせることなく、開口部エッジを略直角に保ちながら前記バリを除去するものであり、化学研磨処理工程で用いる化学研磨液は、ステンレス鋼板研磨の主剤として、使用濃度3〜5%(W/V)の塩化鉄溶液を90〜120cc/L含むことを特徴とするレーザ加工によるメタルマスクの化学研磨方法。 - 化学研磨処理工程で用いる化学研磨液は、化学研磨作用ができる液粘度に上げるために、リン酸を37〜40cc/L含むことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工によるメタルマスクの化学研磨方法。
- 化学研磨処理工程で用いる化学研磨液は、液粘度の調整のために、使用濃度0.12%(W/V)程度のでんぷん粉を1〜1.2g/L含むことを特徴とする請求項3又は請求項2記載のレーザ加工によるメタルマスクの化学研磨方法。
- 化学研磨処理工程で用いる化学研磨液は、表面光沢を良くするために、使用濃度0.25%(W/V)程度のポリエチレングリコールを2〜2.5g/L含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のレーザ加工によるメタルマスクの化学研磨方法。
- 化学研磨処理工程で用いる化学研磨液は、金属表面のヌレ性を良くする界面活性剤として、使用濃度0.002%(W/V)程度のn−ドデシル硫酸ナトリウムを0.005g/L含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のレーザ加工によるメタルマスクの化学研磨方法。
- 化学研磨処理工程で用いる化学研磨液は、液色を整えるために、使用濃度0.1%(W/V)程度の酸化チタンを0.1g/L含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のレーザ加工によるメタルマスクの化学研磨方法。
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