JP5483898B2 - 酸化物蛍光体の製造方法 - Google Patents
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(1)SiO2粉末と金属元素を含む多数の化合物を原料として用い、これらの原料を混合した後に、1000℃〜1700℃の高温で長時間焼成して固体間の反応によって蛍光体を合成する方法(固相反応法)
(2)複数の有機酸金属塩をクエン酸と共に有機溶媒中に溶解時に加熱してゲル状前駆体を生成させ、この前駆体を加熱分解するクエン酸法(非特許文献1参照)
(3)複数の金属塩の水溶液にアルカリや蓚酸などの沈殿化剤を添加して金属の水酸化物や蓚酸塩を共沈させ、得られた沈殿物を加熱酸化する共沈法
(4)複数の金属化合物をアルコールに溶解、得られた金属アルコキシドを加水分解するアルコキシド法
(5)複数の金属イオンと熱分解可能な錯化性の有機物質とからなる安定な溶液を作製し、その溶液を急速に濃縮して無定形生成物を生成し、その生成物を熱分解する方法(特許文献5参照)
(6)複数の金属塩及び/またはアルコキシド、並びに、オキシカルボン酸またはポリアミノキレート剤を含有する溶媒にポリオールを添加して重合させる錯体重合法(特許文献6参照)
(7)複数の金属元素の化合物、及びポリビニルアルコールを溶媒に溶解し、両者を反応させて金属錯体を生成した後、加熱して溶媒を除去することで、その金属錯体を加熱してゲル化し、生成したゲルをさらに加熱することにより複合金属酸化物の前駆体を生成させ、次いで前駆体を焼成する方法(特許文献7参照)
他方、焼成温度を1000〜1200℃の比較的低温にすると、未反応原料が残存するため、未反応原料が残らないように反応させるためには焼成温度は例えば1400℃よりも高温にする必要があるが、このような高温焼成は、低沸点金属元素を含む複合金属酸化物の製造においては、低沸点金属元素の揮発を避けることができず、このため均一な化学組成を有する単相の複合金属酸化物を得ることができなかった。
この水熱ゲル化法は、珪素アルコキシドのように加水分解の遅いアルコキシドと他の金属の均一溶液を水熱処理して、アルコキシドをゲル化し、このゲル網の中に他の金属を巻き込み、均一な前駆体を得る方法である。
しかし水熱ゲル化法は珪素をゲル化剤として使うために珪素と金属元素の元素比がある値以上の物質にしか使えず、珪素と金属元素の元素比が3/8未満で、金属元素の比率を自由に選択でき、均一な化学組成の単相の金属シリケート蛍光体を収率良く製造する水熱ゲル化方法は提案されていなかった。
なお、以下においては、複合金属化合物として、特に複合金属酸化物の場合を例示して本発明を説明するが、本発明の複合金属化合物の製造方法は、複合金属酸化物に限らず、複合金属窒化物、複合金属酸窒化物、複合金属硫化物、または複合金属酸硫化物についても、後述の焼成工程において、窒化または硫化すること以外は、同様に実施することができるものである。
本発明の複合金属化合物の製造方法は、いわゆる水熱合成法と呼ばれるものであり、複合金属酸化物の製造は、以下の工程を経るものである。
第1工程は、1種以上の金属元素化合物、溶液状態の水溶性珪素及び溶媒からなる液体を密閉容器に入れ、密閉状態で加熱することにより、金属元素が均一に分散した珪素含有ゲルを生成するものである。
第2工程は、生成したゲルから溶媒を除去することにより乾燥状態のゲルを得る工程である。
第3工程は、乾燥状態のゲルを加熱することにより有機物を除き複合金属酸化物前駆体を得る工程である。
第4工程は、複合金属酸化物前駆体を熱処理する工程である。
[第1工程]
この工程は、1種以上の金属元素化合物、溶液状態の水溶性珪素及び溶媒からなる液体を、密閉容器に入れて加熱することにより、常圧加熱では得られない高温で珪素原料の重合反応を進行させ、金属元素が均一に分散した珪素含有ゲルを生成させるものである。これは珪素をマトリックスとし、そのマトリックス中に金属元素化合物の金属元素が均一に分散したゲルである。
なお、これらの金属元素化合物、溶液状態の水溶性珪素及び溶媒は、金属元素化合物を溶媒に溶解し、金属元素化合物溶液(特に水溶液)を作製し、この金属元素化合物溶液に所定量の水溶性珪素化合物を添加混合し、40℃〜90℃の温度に暖め、1〜3時間攪拌、混合して作製した均一な液体とした後に、密閉容器内に入れられる。
なお、金属元素化合物は、各々の金属元素について、これらの化合物の1種のみでも、或いは2種以上の化合物を混合して用いても良い。
溶媒の使用量は、均一な反応溶液を形成し得るような量であって、Si以外の金属を溶解するのに十分な量であれば良いが、通常Si以外の全金属元素1モルに対して1〜4リットル程度とすることが好ましい。溶媒の使用量が多過ぎると溶媒中にSi以外の金属が残ったままゲルと上澄み(溶媒)が分離して、金属含有ゲルが形成しにくい傾向があり、少な過ぎるとゲル形成前に金属が析出し、不均一なゲルとなる傾向にある。
この水溶性珪素は、テトラエトキシシラン(TEOS)とプロピレングリコールの混合液に塩酸及び水を加えて作られるものである。
具体的には、テトラエトキシシラン(TEOS)(関東化学株式会社製)とプロピレングリコール(関東化学株式会社製99%)を22.4ml秤量し、80℃で48時間混合した。更に混合液に塩酸を100μl加えて室温で1時間攪拌した。この攪拌液に蒸留水を加えて100mlに定溶して1Mの水溶性珪素が作製される。
この加熱温度が高すぎると密閉容器の耐圧性能を高める必要が生じ、そのために過大なコストがかかり、加熱温度が低すぎると十分な圧力が得られず、且つ反応性も低くなり満足するゲルが得難くなる。
その反応時間は、加熱温度によっても異なるが、6〜24時間である。
この工程は、第1工程で生成した珪素含有ゲルから溶媒を除去することにより乾燥状態のゲルを得るものである。
その溶媒の除去は加熱により行うが、この加熱温度は用いた溶媒の沸点付近の温度とすることが好ましい。この加熱温度が低いと、溶媒除去に時間がかかり、温度が高すぎると突沸で吹き零れるため物性制御が難しくなる。通常、溶媒として水を用いた場合は100〜120℃程度で加熱することが好ましい。
加熱時間は、溶媒が除去されて乾燥状態のゲルが生成する時間であれば良い。
この工程は固体状態のゲルをさらに加熱することにより熱分解を起こして複合金属酸化物前駆体を得るものである。
先ず、固体状態のゲルを250〜550℃で加熱することにより、ゲル中の有機物を熱分解する。この加熱温度が低すぎると熱分解に時間が掛かり過ぎて非効率であり、また熱分解が完結しないこともある。他方、加熱温度が高すぎると異常な粒子成長が起きたり、構成成分の揮発が起きたりするおそれがあるので好ましくない。
その好ましい加熱温度は、350℃以上、さらには450℃以上とすることが好ましい。
そのため、加熱時に使用する容器は内容物が飛散しにくいようにサンプル量に対して十分大きい容器とすることが好ましく、口の小さい容器も好ましい。また、熱分解ガスが容器外に放出される程度に隙間のある蓋付きの容器であることも良く、例えばサンプル量に対して十分長い試験管や十分に大きいフラスコや深型の大きいるつぼ、三角フラスコ等のフラスコに小型ビーカーをかぶせた容器や蓋付のるつぼなどを用いると良い。また、ロータリーキルンを用いることも好ましい。
さらに、急激に温度を上昇させず徐々に加熱すると良く、最高温度以下の複数の温度で段階的に一定時間保持することも飛散防止に効果がある。例えば、最高温度500℃で加熱する場合、200℃、300℃、400℃でそれぞれ30分ずつ保持したのちに500℃にする。
このような加熱により、残留している有機物の除去や炭酸塩の分解を十分に行うことができ、炭素を含まない前駆体を得ることができる。他方、有機物の残留した前駆体は、次の第4工程で還元雰囲気で熱処理した場合にそれが炭化して黒い着色の原因となるため、好ましくない。
この工程は第3工程で得られた複合金属酸化物前駆体を所望の化合物となるまで熱処理する工程である。
第4工程における熱処理温度及び熱処理時間は、複合金属酸化物の種類によるが熱処理温度が高いほど、また熱処理時間が長いほど所望の化合物の結晶性が向上し、高輝度の蛍光体が得られる。他方熱処理温度が高いほど、また熱処理時間が長いほど蛍光体の粒径が大きくなり、粒子が焼結して固い2次粒子を形成する傾向にあるために、所望の粒径となるように適宜条件を選択する必要がある。
熱処理時間は0.5時間〜12時間、好ましくは1.5〜6時間である。
さらに、複数回の熱処理を行うことも好ましい方法の一つである。例えば、炭酸塩等の金属塩の分解温度を超える温度で熱処理を行い、得られる焼成物を粉砕混合して熱処理を行うことは、結晶性の向上の点で好ましい方法である。
中性又は還元性の焼成雰囲気としては、例えば、N2、Ar、H2、CO雰囲気或いはそれらの混合ガス雰囲気が良い。なかでも窒素と水素の混合ガス(水素比率1〜10モル%)がコスト面で好ましい。CO雰囲気は、COを含むガスボンベを用いる以外に固体の炭素を還元剤とし、ガス中の酸素との反応でCOを生成させる方法が簡便で好ましい。
得られた複合金属酸化物の同定は、X線回折を用いて行った。
蛍光特性の評価は、日立製分光蛍光光度計F−4500を使用して、光源:キセノンランプ,励起光スリット:5.0nm,蛍光スリット:1.0nmの条件で測定した。
蛍光スペクトル測定時の励起波長と励起スペクトル測定時の蛍光波長は、それぞれ励起スペクトルと蛍光スペクトルのピーク波長とした。
[第1工程]
金属元素化合物として硝酸イットリウム、硝酸セリウム及び硝酸ガドリニウムを用いて、1Mの水溶液とし、これらの溶液及び1Mの珪素に相当する水溶性珪素水溶液をイットリウム、セリウム、ガドリニウム及び珪素の元素比が0.79:0.01:0.20:0.50になるように混ぜて一様で透明な混合液を得た。
次に、この固化した含水ゲルをビーカーに移し100℃で10時間程乾燥し、溶媒を完全に除去して乾燥状態のゲルを得た。
この乾燥状態のゲルを三角フラスコに移し換え、500℃の砂浴で4時間の加熱を行った。その後、アルミナ坩堝に入れ換え、300Paの真空中、800℃で12時間の熱処理をして残留炭素分を完全除去して前駆体を得た。
この前駆体を7試料に分けて、各試料を10mlサイズのアルミナ坩堝に入れ、その坩堝を黒鉛粉末を満たした50mlサイズのアルミナ坩堝に埋め込んで蓋をし、電気炉(光洋サーモシステム社製、KDF−314N)で1000℃から1600℃までの熱処理温度で12時間の熱処理を行って、熱処理温度の異なる7種類の金属シリケート蛍光体を作製した。
各試料のX線回折および蛍光特性を測定した。その結果を実施例1(WSS)として図2および図3に記した。
[第1工程]
酢酸亜鉛と塩化マンガンを98:2になるように純水に入れ、更に金属元素の2倍モル数のクエン酸を入れて混合し、この金属塩が溶解した溶液に1Mの水溶性珪素を金属元素の半分になるように加えて80℃で2時間混合して混合液を得た。
この混合液を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製水熱内容器(内容積100ml)に入れて蓋をし、更にこの内容器をステンレス製外容器に入れてトルクレンチで18Nmのトルクで締め蓋を閉じた。これを200℃の乾燥機に入れて24時間静置した。その後、室温まで放冷してから蓋を開けて内容器を取り出した。内容物は含水ゲルとして固化していた。
これをビーカーに移し100℃で10時間程乾燥して、乾燥のゲルを得た。
この乾燥のゲルを三角フラスコに移し換え、500℃の砂浴で4時間の加熱を行い、その後、アルミナ坩堝に入れ換えて300Paの真空中、800℃で12時間の熱処理をして残留炭素分を完全除去して前駆体を作製した。
作製した前駆体を10mlサイズのアルミナ坩堝に入れ、その坩堝を黒鉛粉末を満たした50mlサイズのアルミナ坩堝に埋め込んで蓋をし、電気炉(光洋サーモシステム社製、KDF−314N)で温度1150℃、5時間の熱処理を行って蛍光体を作製した。
この作製した蛍光体のX線回折および蛍光特性を評価した。その結果を図4および図5に記した。
<比較例1>
各試料についてX線回折と蛍光特性を測定し、その結果を比較例1(TEOS)として図2および図3に記した。
<従来例1>
各試料についてX線回折と蛍光特性を測定し、その結果を従来例1(SSR)として図2および図3に記した。
<従来例2>
(Y0.79Ce0.01Gd0.20)2SiO5;
図2に示す実施例1(WSS)、比較例1(TEOS)及び従来例1(SSR)で得られた金属シリケート蛍光体の1600℃で焼成した試料のX線回折から、水溶性珪素を用いた実施例1(WSS)及び従来例1(SSR)では、Y2SiO5の単相が得られているが、テトラエトキシシランを用いた比較例1(TEOS)ではY2SiO5の単相でなく、Y2O3やY2Si2O7の相が含まれていることがわかる。
X線回折の結果からは、実施例2の水溶性珪素を用いた製造方法で合成した試料は単相で、その結晶性も良好であった。一方従来例2で得た試料は単相であるが結晶性が低くなっていた。
また実施例2の蛍光輝度は、従来例2の2倍の輝度を示していた。
Claims (3)
- 珪素、金属元素及び酸素からなる、前記珪素と、前記珪素及び金属元素との元素比(珪素/(珪素+金属元素))が3/8未満の酸化物蛍光体の製造方法であって、
前記元素比が3/8未満となる金属元素組成を有する金属元素化合物と、前記元素比が3/8未満となる珪素組成を有する珪素源となる、テトラエトキシシラン(TEOS)とプロピレングリコールの混合液に塩酸を加えて攪拌し、次いで水を加えて作製される溶液状態の水溶性珪素及び溶媒からなる液体を密閉状態に置いて加熱し、前記金属元素が均一に分散した珪素含有ゲルを生成する第1の工程、
生成した前記珪素含有ゲルを含む液体から溶媒を除去することにより固体状態のゲルを形成する第2の工程、
前記固体状態のゲルを加熱して複合金属化合物前駆体を作製する第3の工程、
前記複合金属化合物前駆体を熱処理する第4の工程を、
含むことを特徴とする酸化物蛍光体の製造方法。 - 珪素、金属元素(A、B)及び酸素からなる、一般式A2−xBxSiO5で表される酸化物蛍光体の製造方法であって、
前記A元素がY、Gdの少なくとも1種、
前記B元素がSc、Tb、Ceの少なくとも1種、且つ
前記xが0<x<0.1の範囲、
珪素(Si)と、前記珪素及び金属元素(Si+A+B)との元素比が3/8未満となる金属元素組成を有する金属元素化合物、前記元素比の珪素組成を有する珪素源となる、テトラエトキシシラン(TEOS)とプロピレングリコールの混合液に塩酸を加えて攪拌し、次いで水を加えて作製される溶液状態の水溶性珪素及び溶媒からなる液体を密閉状態に置いて加熱し、前記金属元素が均一に分散した珪素含有ゲルを生成する第1の工程、
生成した前記珪素含有ゲルを含む液体から溶媒を除去することにより固体状態のゲルを形成する第2の工程、
前記固体状態のゲルを加熱して複合金属化合物前駆体を作製する第3の工程、
前記複合金属化合物前駆体を熱処理する第4の工程を、
含むことを特徴とする酸化物蛍光体の製造方法。 - 珪素(Si)、金属元素(C、D)及び酸素(O)からなる、一般式C2-yDySiO4で表される酸化物蛍光体の製造方法であって、
前記C元素がZn、Mgの少なくとも1種、
前記D元素がMn、Euの少なくとも1種、且つ
前記yが0<y<0.1の範囲であり、
珪素(Si)と、前記珪素及び金属元素(Si+C+D)との元素比が3/8未満となる金属元素組成を有する金属元素化合物、前記元素比の珪素組成を有する珪素源となる、テトラエトキシシラン(TEOS)とプロピレングリコールの混合液に塩酸を加えて攪拌し、次いで水を加えて作製される溶液状態の水溶性珪素、及び溶媒からなる液体を密閉状態に置いて加熱し、前記金属元素が均一に分散した珪素含有ゲルを生成する第1の工程、
生成した前記珪素含有ゲルを含む液体から溶媒を除去することにより固体状態のゲルを形成する第2の工程、
前記固体状態のゲルを加熱して複合金属化合物前駆体を作製する第3の工程、
前記複合金属化合物前駆体を熱処理する第4の工程を、
含むことを特徴とする酸化物蛍光体の製造方法。
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