JP5480076B2 - 導電性無端ベルトの製造方法 - Google Patents
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しかしながら、粘着面を有するテープ状の補強部材はベルト基材への接着作業をする場合の簡便性や補強部材の即装着性という利点がある反面、ベルト基材と補強部材とが物理的な粘着力で固定されているだけである。そのため、導電性無端ベルトが走行中に大きな斜行力を受けたり、装置内の温度が40〜60℃程度上昇するなどにより粘着層が軟化して接着の強度が低下したりしてベルト基材と補強部材との間に剥離が生じる可能性がある。また、低温環境下では、粘着層の脆化によりベルト基材との接着強度が低下するので、同様にベルト基材と補強部材との間に剥離が懸念される。
さらには、長尺であるテープ状の補強部材を、環状ベルト基材の端部に位置精度良く、しかも均一に固定して、完成品として導電性無端ベルトを製造することが求められる。仮に、ベルト基材上に補強部材を配置する工程に不備があると、製造された導電性無端ベルトが不良品となって歩留まりが低下してしまう。
よって、本発明の主な目的は、ベルト基材上に所定剛性を備えた補強部材を具備する導電性無端ベルトの製造に関し、より好適な製造方法を提案することである。
前記ベルト基材に対して、熱溶融型接着剤を用いて前記補強部材を接着するもので、
前記補強部材の接着開始時においては、前記先端部から所定長さの範囲を初期非接着部とし、該初期非接着部を逃がした位置で前記補強部材側から加熱することにより前記熱溶融型接着剤を溶融して接着を始め、その後はベルト周方向に沿って接着して前記ベルト基材上に前記補強部材を順次に固定し、
最後に、先端部側の前記初期非接着部と末端部とを接合するようにした、ことを特徴とする導電性無端ベルトの製造方法により達成できる。
そして、本願発明では、ベルト基材上に補強部材を接着するのに熱融着型接着剤を採用しているので、両面テープなどの粘着剤で接着する場合と比較して、強固、安定に補強部材をベルト基材に接着固定することができ、耐久性にも富む導電性無端ベルトを製造できる。
なお、本願発明は導電性無端ベルトの製造方法に係るものであるが、発明理解を容易とするため、先ず、本願発明の対象となる導電性無端ベルトの概略構成を説明する。
図1(a)〜(c)は導電性無端ベルトについて示した図である。図1(a)は導電性無端ベルト1の使用状況例を模式的に示した図であり、この図で示すように、通常、導電性無端ベルト1は電子写真装置などの内部で所定位置に配置されているローラR−1、R−2間に張架されて使用される。
そして、仮に、ベルト基材10の両側に補強部材12を設けた場合、両側で位置規制する構造や、片当たり状態による蛇行規制基準を左右意図的に切り替え可能による利便性があり、且つ、両端部に補強部材を設けることによりベルト基材の左右張力を均一化して、一端側のみへの当接負荷を軽減して、ベルト寿命を延命させる構造にすることもできる。
ホットメルト系接着剤は、化学結合による強固な接着状態を形成することができるのでベルト基材10と補強部材12とを確実に接着固定し、温度や湿度などの環境変化に十分に耐えて接着部分を安定に保持できる。これにより、走行中にベルトにかかる斜行力や、温度や湿度の変動など外的環境の変化によっても剥離を生じない。これにより耐環境に優れた、高耐久の導電性無端ベルトを実現する。
なお、上記接着層14の接着力をより確実に得るため、ベルト基材10と接着層14との間、もしくは補強部材12と接着層14との間のうちの少なくとも一方に、プライマー層16を設けるのが望ましい(図1(c)は、ベルト基材10と接着層14との間の場合を例示)。プライマー層16を設けて接着することで、化学結合による接着状態をより強固にできる。
上記で最も好ましい基材樹脂は、ナイロン(ポリアミド系樹脂)である。ベルトの耐屈曲疲労特性に優れるという面と、汎用性があるという面から好ましい。ポリアミド系樹脂は分子構造上、大きな変形や屈曲に対して強い抵抗力を有する樹脂の1つであり、耐引張性においても良好だからである。
高分子イオン導電剤としては、例えば、Irgastat(登録商標)P18およびIrgastat(登録商標)P22(共に、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・インコーポレーテッド製)、ペレスタット300,303(三洋化成(株)製)、サンコノールTBX−310(三光化学工業(株)製)等が挙げられ、これらは市場で容易に入手可能である。また、カーボンブラックとしては、具体的には例えば、ケッチェンブラックやアセチレンブラック、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボンブラック、酸化カーボンブラック等のインク用カーボンブラック,熱分解カーボンブラック等を挙げることができる。高分子イオン導電剤の添加量は、基材樹脂100質量部に対し、通常1〜500質量部、好ましくは10〜400質量部程度であり、カーボンブラックの添加量は、基材樹脂100質量部に対し、5〜30質量部程度とすることができる。
そして、ベルト基材10は、少なくとも、弾性率が1000Mpa以上で、引裂き強度が2N以上とするのが好ましい。
なお、ベルト基材10の外表面の表面粗さとしては、好適には、JIS10点平均粗さRzで10μm以下、特に6μm以下、更には3μm以下とするのが好ましい。
補強部材12の厚さは、補強すべきベルト基材10の素材、形状により適宜調整されるが、例えばベルト基材10の厚みが0.1mm〜0.2mmであるときに、好ましくは0.05mm〜0.3mmの範囲であり、より好ましくは0.1mm〜0.2mmの範囲である。また、補強部材12の厚さを、ベルト基材10の厚みに対して、例えば100〜200%とするのが好ましい。
更に、図を参照して、導電性無端ベルト1を製造するプロセスを説明する。図2は導電性無端ベルト1の製造工程について示しており、図2(a)は補強部材12を形成する様子を示した図である。補強部材12とする樹脂シートを適宜に準備し、その上に必要に応じてプライマー層16を設け、更にホットメルト系接着剤による接着層14を順に積層して、加熱圧着板を具備した貼付装置を用いて、加熱・加圧の加熱圧着処理をして、これらを熱溶着させる。これにより、接着層14を片面に具える補強部材12の母シート12Aを形成する。この母シート12Aは、実際に仕様する長尺の接着層付きの補強部材12が多数、幅方向に接続された状態である。よって、裁断装置により所定寸法に裁断して、ベルト基材10の端部を補強するための補強部材12を得ることができる。
このベルト製造装置20は、無端状に形成されているベルト基材10を張架する2つのローラ21R−1、21R−2が配置されている。一方のローラ11R−1は駆動源となりモータ(図示せず)に接続された駆動ローラであり、他方のローラ11R−2は従動ローラである。よって、ローラ21R−1、21R−2間に張架されたベルト基材10は、矢印AR方向へ回転される。
先ず、補強部材12の先端部をベルト基材10の端部位置に、確実に固定する。その後、この最初の固定箇所を起点にして、順次に接着を継続して、最後に補強部材12の終端部を最初に固定した先端部と突き合わせて、或いは、一部を重ね合わせて接合作業を完了する。
しかし、この場合、ベルト基材10の回転方向ARで、先端部12TPより上流側においはヒータ22の一部22PAが露出した状態になっており、ベルト基材10の表面に直に接触することになる。ヒータ22からは少なくとも補強部材12下のホットメルト系接着剤を溶融できる熱が印加されるので、この熱を受けたベルト基材10の表面に凹凸の熱変形や歪が発生し易くなる。この領域は、補強部材12の末端部を最後に接着して、先端部と合わせる領域である。その表面が不均一になってしまうと、補強部材を均一に接着するのが困難となる。これにより接着した補強部材の直進性を保証できなくなる。その結果、補強部材12に設けた電性無端ベルトの蛇行防止や端部補強の効果を十分に発揮できなくなることが懸念される。
より具体的には、図3(b)で示すように、補強部材12の接着開始時において、先端部12TPから所定長さの範囲を初期非接着部12NAとし、この初期非接着部12NAを逃がした位置(先端側を余分に送り出した状態)で補強部材側から加熱して、ホットメルト系接着剤を溶融して初期接着を実施する。
そして、その後はベルト周方向に沿って接着して前記ベルト基材上に前記補強部材を順次に固定し、最後に、先端部側の前記初期非接着部と末端部とを接合する。
なお、上記初期非接着部12NAは補強部材の先端部12TPから2〜10mmの長さ範囲とすることが好ましく、より好ましくは5〜10mmの長さに設定する。この初期非接着部12NAが2mm未満になるとヒータ22からの熱がベルト基材10の表面に影響を与える可能性が高くなり、前述した不都合が発生する可能性が高くなる。すなわち、ヒータ22の端部と補強部材12の先端部12TPがちょうど一致した場合、ベルト基材10の表面にヒータが接触していないのであるが、その距離が極めて近いので前述したと同様の熱的影響を受けるので、初期非接着部12NAを2mm以上とするのが望ましい。その一方で、初期非接着部12NAが10mmを超え長くなると、未接着でブラブラになる部分が長く成り過ぎで接着作業がし難く、作業性が悪くなるという不都合がある。このように作業性が悪くなると補強部材を真っ直ぐに接着することができない場合がある。これでは、補強部剤によるベルトの蛇行防止の効果が低下してしまうことになる。
(実施例1)
ポリアミド樹脂(ナイロン12)100質量部と、導電性材料としてのカーボンブラック20質量部とを、二軸混練機により溶融混練して、得られた混練物を環状ダイスを用いて押出成形することにより、周長600mm、幅240mm、厚み0.1mm、の寸法を有する導電性無端ベルト用のベルト基材10を得た。このベルト基材10の外周面上で補強部材12を接着する予定領域に、プライマーとして多官能性のポリイソシアネートであるバイエル製デスモジュールREを0.002g/cm2程度にて塗布し、乾燥させて、プライマー層16を形成した。
のポリアミド樹脂(ナイロン12)に上記と同じプライマー(バイエル製デスモジュールRE)を塗布してプライマー層16とし、ホットメルト系接着剤として日本マタイ(株)製 エルファンUH203(ポリウレタン系ホットメルト接着剤、厚み0.05mm)をその上に接着層14として配置し、この接着層14を熱溶融して接着層付きの補強部材12を作製した。
なお、ベルト基材10上の補強部材12の幅を5.0mm、突合わせ量(先端部と末端部との重ね合わせ量)を0〜3.0mmとした。この導電性無端ベルトを、図4に示す耐久試験装置に装着して、耐久性を評価した。
走行速度22m/分、試験環境として温度22℃、湿度50%で耐久走行試験を実施して、端部の引裂き強度、接着後の補強部材の直進性の状態を確認して評価した。
なお、無端ベルトを耐久試験装置100にセットして連続して走行させると、補強シートの貼付け方が不均一なベルトは徐々に蛇行が発生する。この装置は、上記センサ105でその蛇行量を測定し、ベルトの走行安定性を測定する他、後述のようにベルト走行時に於けるベルト表面の歪を評価できるように構成してある。
表1、表2で示す初期非接着部(mm)が上記初期非接着部12NAの長さである。
比較例1で−10とあるのは先端部12TPがヒータの端部から10mm内側にあることを示している。比較例3で0mmであるのは、先端部12TPとヒータの端部とが一致している場合である。
また、接着後の補強部材の直進性は、ベルト基材の側面にキーエンス製のレーザ変位計(LK−G30)のレーザ光を照射し、その変化量を測定して、補強部材がベルト基材上に真っ直ぐに接着されているかを確認した。数値は蛇行の状態を示すので、少ないほど好ましい。直進性は0.5(mm)未満であるのが好ましく、これを合格とした。
更に、ベルト表面歪は、無端ベルト表面にキーエンス製レーザ変位計(LK−G30)のレーザ光を照射して、表面の凹凸の最大、最小差を表面歪とした。
ここでのベルト表面歪の判定は、直径2mm以上かつ深さ5mm以上である場合を×、直径1mm以上2mm未満、かつ、深さ3mm以上5mm未満である場合を△、直径1mm未満、かつ、深さ3mm未満である場合を○とし、△と○を合格とした。
b)ホットメルト接着剤:日本マタイ(株) エルファン UH203
c)プライマー:バイエル製デスモジュールRE
そして、得られた導電性無端ベルト1は、ホットメルト系接着剤による接着層14によるので、耐久性に優れた導電性無端ベルトが得られていることも確かめられた。
なお、ベルト基材および補強部材ともに、ポリアミド系樹脂を好適であることが確認できる。ポリアミド(PA)は、ポリイミド(PI)やポリアミドイミド(PAI)よりも可撓性及び低温、低湿度の環境下での耐久性に優れ、割れや、割けの発生防止性能が高いものである。
また、本願発明は、補強部材12を採用することによって、ガイドリブを用いずに構造を簡素化し、コスト低減を図った導電性無端ベルトを製造するのに好適な発明である。しかし、状況によっては、ガイドリブを採用する導電性無端ベルトで、更に補強部材も配置する構造とする場合も否定できない。このような場合にも、本願発明を適用してもよいことは、改めて言うまでもない。
10 ベルト基材
12 補強部材
12TP 補強部材の先端部
12NA 初期非接着部
14 接着層(熱溶融型接着剤)
16 プライマー層
20 ベルト製造装置
22 ヒータ
Claims (3)
- 導電性の樹脂フィルムを無端状に形成してあるベルト基材の少なくとも一面側の幅方向での端部に、長尺状の補強部材がベルト周方向に配置されていると共に該補強部材の先端部と末端部とが接合してある導電性無端ベルトの製造方法であって、
前記ベルト基材に対して、熱溶融型接着剤を用いて前記補強部材を接着するもので、
前記補強部材の接着開始時においては、前記先端部から所定長さの範囲を初期非接着部とし、該初期非接着部を逃がした位置で前記補強部材側から加熱することにより前記熱溶融型接着剤を溶融して接着を始め、その後はベルト周方向に沿って接着して前記ベルト基材上に前記補強部材を順次に固定し、
最後に、先端部側の前記初期非接着部と末端部とを接合するようにした、ことを特徴とする導電性無端ベルトの製造方法。 - 前記ベルト基材と前記熱溶融型接着剤による接着層との間、もしくは前記補強部材と前記熱溶融型接着剤による接着層との間のうちの少なくとも一方に、更にプライマー層を設ける、ことを特徴とする請求項1に記載の導電性無端ベルトの製造方法。
- 前記初期非接着部は、前記補強部材の先端部から2〜10mmの長さである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性無端ベルトの製造方法。
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