JP5473867B2 - (e,z,z)−2,4,7−トリデカトリエナールの製造方法 - Google Patents

(e,z,z)−2,4,7−トリデカトリエナールの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、香料化合物などとして有用である(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの新規な製造方法に関する。
近年、消費者の嗜好性の多様化により、消費者のニーズに合うような様々な商品の開発が望まれている。特に、飲食品業界はこの傾向が強く、消費者の嗜好性に合うバラエティーに富んだ飲食品の開発が強く要求されている。これらの要求に対して、飲食品の一つの原料素材である香料についても、従来から提案されているフレーバー(食品香料)化合物だけでは十分には対応しきれず、従来にないユニークな香気香味特性を有し、且つ、その持続性に優れたフレーバー化合物の開発が緊急の課題となっている。
下記式(1)
Figure 0005473867
で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールは、調理したチキンのフレーバーから見出され(非特許文献1)、また、アラキドン酸の熱分解物から卵白様の香気を有する化合物として見出され(非特許文献2)、さらに、リン脂質の熱分解物(非特許文献3)などから見出され、天然にも存在する香気を有する揮発性化合物である。香料用途としては、チキン風味を想起させるフレーバーを付与する方法(特許文献1)、(Z)−4−デセナールと(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを併用することによる、鶏を想起させるフレーバーを付与する方法(特許文献2)などが提案されている。
また、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの製造方法についても検討されている。例えば、2−オクチン−1−オールをブロモ化し、銅触媒およびグリニャール試薬の存在下、(E)−2−ペンテン−4−イン−1−オールと反応させ、(E)−2−トリデセン−4,7−ジイン−1−オールとし、これにリンドラー触媒の存在下水素添加をした後、酸化反応を行うことによる(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの製造方法が記載されている(非特許文献4)。しかしながら、この方法は、別法にて(E)−2−ペンテン−4−イン−1−オールを製造する必要性があり、製造工程が煩雑となる。更にこの方法では収率が低いなどの問題があり、特に上記方法で製造された(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの純度は80%であるため、副生成物の香気により(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール本来の香気を損なうため、フレーバー用途として用いるには不十分であった。
特公昭41−7822号公報 特公昭54−12550号公報
Journal of the American Oil Chemists’ Society. 51(8),356−9(1974) Frontiers of Flavour Science, [Proceedings of the Weurman Flavour Research Symposium], 9th, Freising, Germany, June 22―25,1999(2000) Journal of Agricultural and Food Chemistry(2004),52(3),581―586 Journal of Agricultural and Food Chemistry(2001),49(6),2959―2965
本発明の目的は、汎用性が高くしかも工業規模で、高品質の(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、(Z,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オールを、二酸化マンガンおよびトリフェニルホスホラニリデン酢酸アルキルにてワンポット酸化ウィッティヒ反応させ、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエニル酸アルキルとし、これを還元してアルコールとした後に酸化することにより、高品質の(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを製造しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明は、下記式(6)
Figure 0005473867
で表される、(Z,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オールに、二酸化マンガンおよび下記式(9)
Figure 0005473867
(式中Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、Phはフェニル基を示す)で表される、トリフェニルホスホラニリデン酢酸アルキルにてワンポット酸化ウィッティヒ反応させ下記式(7)
Figure 0005473867
(式中Rは上記と同義である)で表される化合物とし、ヒドリド還元剤の存在下、還元することを特徴とする、下記式(8)
Figure 0005473867
で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエノールとし、さらに酸化剤の存在下、酸化することを特徴とする下記式(1)
Figure 0005473867
で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、下記式(4)
Figure 0005473867
(式中Xはハロゲン原子を示す)で表される、2−オクチニルハライドに2−プロピン−1−オールを反応させ、下記式(5)
Figure 0005473867
で表される、2,5−ウンデカジイン−1−オールとし、これに、リンドラー触媒の存在下水素添加を行い、下記式(6)
Figure 0005473867
で表される、(Z,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オールとし、これに、二酸化マンガンおよび下記式(9)
Figure 0005473867
(式中Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、Phはフェニル基を示す)で表される、トリフェニルホスホラニリデン酢酸アルキルにてワンポット酸化ウィッティヒ反応させ下記式(7)
Figure 0005473867
(式中Rは上記と同義である)で表される化合物とし、ヒドリド還元剤の存在下、還元することを特徴とする、下記式(8)
Figure 0005473867
で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエノールとし、さらに酸化剤の存在下、酸化することを特徴とする下記式(1)
Figure 0005473867
で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの製造方法を提供するものである。
本発明によれば、高品質で、特にフレーバー用途として有用である(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの、汎用性が高くしかも工業的に有効な製造方法を提供することが出来る。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の出発物質として用いられる前記式(4)で表される2−オクチニルハライドは、従来公知の方法で調製することができ、例えば、下記の反応式で示したように、ペンチルハライドに2−プロピン−1−オールをカップリングさせ、2−オクチン−1−オールとした後にハロゲン化することにより製造することができる。
Figure 0005473867
前記反応式のX、X’はハロゲン原子を示し、X、X’は同一であっても異なってもよく、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などを挙げることができる。
式(2)および2−プロピン−1−オールから式(3)を製造するために使用される2−プロピン−1−オールは、式(2)で表される化合物1モル対して1.0〜2.0モル用いられるが、1.0〜1.2モルがより好ましい。
また、式(2)および2−プロピン−1−オールから式(3)を製造するために使用される溶媒は、式(2)および2−プロピン−1−オールを溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルプロピルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、および、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの非プロトン性極性溶媒を、任意の割合で使用する方法を示すことができる。これらのうち、式(2)の溶媒としてはテトラヒドロフランが、2−プロピン−1−オールの溶媒としては1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが特に好ましい。その使用量としては、式(2)で表される化合物1質量部に対し3〜15質量部が好ましく、2−プロピン−1−オール1質量部に対し5〜30質量部が好ましい。
また、式(2)および2−プロピン−1−オールから式(3)を製造するために使用されるブチルリチウム/ヘキサン溶液は、2−プロピン−1−オールの1モルに対しブチルリチウムに換算して1〜4モル使用するのが好ましい。
さらに、式(2)および2−プロピン−1−オールから式(3)を製造するための温度は、低温下で反応が進行することを考慮すると、−70℃〜−20℃の範囲が好ましく、生成物の純度や収率の点から、2−プロピン−1−オールおよび溶媒を上記温度に冷却後、ブチルリチウム/ヘキサン溶液および式(2)で表される化合物溶液を滴下する方法が好ましい。
式(3)から式(4)を製造するために使用される三ハロゲン化リンは、式(3)で表される化合物1モルに対し、0.4〜0.8モルが好ましい。
また、式(3)から式(4)を製造するために使用される溶媒は、式(3)を溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルプロピルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒を単独または任意の割合で使用する方法を示すことができる。これらのうち、ジエチルエーテルが特に好ましい。その使用量は、式(3)で表される化合物1質量部に対し、10〜50質量部が好ましい。
さらに、式(3)から式(4)を製造するための温度は特に限定されないが、5℃〜30℃が好ましい。
前記式(1)を製造するための出発物質である前記式(6)で表される(Z,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オールは、下記の反応式で示したように、2−オクチニルハライドに2−プロピン−1−オールをカップリングさせ、2,5−ウンデカジイン−1−オールとした後に水素添加することにより製造することができる。
Figure 0005473867
前記反応式のX、X’’はハロゲン原子を示し、X、X’’は同一であっても異なってもよく、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などを挙げることができる。
前記反応式のR’−MgX’’で示されるグリニャール試薬のR’はアルキル基またはアリール基を示すが、好ましくは、炭素数1〜8で示されるアルキル基を、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、1−メチルプロピル基、ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基が例示され、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基を例示することができる。また、前記のグリニャール試薬の使用量は、式(4)で表される化合物1モルに対して2〜10モルが好ましく、さらには2〜5モルがより好ましい。
式(4)および2−プロピン−1−オールから式(5)を製造するために使用される2−プロピン−1−オールは、式(4)で表される化合物1モルに対して1〜5モルが好ましく、さらには1〜3モルがより好ましい。
また、式(4)および2−プロピン−1−オールから式(5)を製造するために使用される銅触媒は、例えば、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、シアン化銅(I)などを挙げることができ、その使用量は、2−プロピン−1−オールの1質量部対して0.2〜2質量部が好ましく、さらには0.2〜1質量部がより好ましい。
また、式(4)および2−プロピン−1−オールから式(5)を製造するために使用される溶媒は、例えば、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルプロピルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒を単独または任意の割合で使用する方法を示すことができる。これらのうち、式(4)の溶媒および、2−プロピン−1−オールの溶媒としてはテトラヒドロフランが特に好ましい。その使用量は、式(4)で表される化合物1質量部に対し2〜10質量部が好ましく、2−プロピン−1−オール1質量部に対し2〜20質量部が好ましい。
さらに、式(4)および2−プロピン−1−オールから式(5)を製造するための温度は反応系内の温度を上昇させないことが望ましく、−20℃〜20℃を例示することができる。
式(5)から式(6)を製造するために使用されるリンドラー触媒は、式(5)で表される化合物1質量部対して、0.2〜1質量部の範囲で使用することが好ましく、さらには0.3〜0.6質量部がより好ましい。
また、式(5)から式(6)を製造するために使用される溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジエチルエーテル、トルエン、ペンタン、ヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキサン、シクロへキセン、ヘプタン、1−ヘプテン、オクタン、イソオクタン、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ピリジン、キノリンなどを単独または任意の割合で使用する方法を示すことができる。これらのうち、メタノール、エタノール、1−ヘキセン、1−ヘプテン、シクロへキセンが好ましい。その使用量としては、式(5)で表される化合物1質量部に対し5〜50質量部が好ましい。
さらに、式(5)から式(6)を製造するための温度は特に限定されないが、5℃〜30℃が好ましい。
前記式(1)で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールは、下記の反応式で示したように、(Z,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オールを、酸化剤およびトリフェニルホスホラニリデン酢酸アルキルにてワンポット酸化ウィッティヒ反応させ(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエン酸アルキルエステルとし、これに、ヒドリド還元しアルコールとした後に、酸化することにより製造することができる。
Figure 0005473867
前記反応式のRはアルキル基を示すが、好ましくは、炭素数1〜10で示されるアルキル基を、より好ましくは、メチル基およびエチル基を例示することができる。
前記式(9)で表されるトリフェニルホスホラニリデン酢酸アルキルは、市販品として入手することもできるが、トリフェニルホスフィンとハロゲン化アルキルとの反応で合成されるホスホニウム塩を、塩基で処理した後、脱ハロゲン化水素反応することで合成することもできる。式(9)で表される化合物は、式(6)で表される化合物1モルあたり、5−30モル使用することが好ましく、さらには5−20モルがより好ましい。
また、式(6)から式(7)を製造するために使用される酸化剤は、例えば、酸化クロム(VI)、二酸化マンガン、デス・マーチン・ペルヨージナン、2−ヨードキシ安息香酸などが挙げられるが、好ましくは二酸化マンガンを例示することができ、式(6)で表される化合物1モルあたり、10−40モル使用することが好ましい。
また、式(6)から式(7)を製造するために使用される溶媒は、例えば、アセトニトリル、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒドロフランなどを、単独または任意の割合で使用する方法を示すことができる。これらのうち、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、塩化メチレンが好ましく、その使用量としては、式(6)で表される化合物1質量部に対し、10−100質量部が好ましく、50−80質量部がより好ましい。
さらに、式(6)から式(7)を製造するための温度は特に限定されないが、5℃〜30℃が好ましい。
式(7)の製造方法は、例えば文献(天然有機化合物討論会講演要旨集(26)561−568(1983))では、1−ヘプチンを出発物質として6段階の反応を経て合成されるとの記載がある。しかしながら、文献記載方法は反応経路が多岐にわたり、また収率も低いため、式(6)から式(7)へ変換する反応として、酸化剤およびトリフェニルホスホラニリデン酢酸アルキルにてワンポット酸化ウィッティヒ反応を鍵反応とすることにより、式(7)の収率および純度を向上させることが出来た。式(6)から式(7)へ変換するワンポット酸化ウィッティヒ反応とは、前記式(6)で表される(Z,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オールが酸化剤の作用によりアルデヒドに変換後、トリフェニルホスホラニリデン酢酸アルキルと反応し、前記式(7)で表される(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエニルアルキルエステルへの変換にいたる二段階の変換を、ワンポット反応で生成させることである。
式(7)から式(8)を製造するために使用される、ヒドリド還元剤は、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ホウ酸リチウム、水素化ホウ酸ナトリウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(商標登録 Red−Al)などが挙げられ、これらのうち、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。
また、式(7)から式(8)を製造するために使用される、ヒドリド還元剤の使用量は、式(7)で表される化合物1モルに対して、1〜5モルが好ましい。
さらに、式(7)から式(8)を製造するために使用される溶媒は、例えば、アセトニトリル、ジエチルエーテル、トルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ピリジンなどを単独または任意の割合で使用する方法を示すことができる。これらのうち、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよびトルエンが好ましく、その使用量としては、式(7)で表される化合物1質量部に対し、10−100質量部が好ましく、50−80質量部がより好ましい。
前記式(7)で表される化合物を溶媒に溶解する際には、冷却しながら、例えば−65℃〜−90℃の範囲で行うのが望ましい。また、式(7)から式(8)を製造するための温度は、−65℃〜−90℃の範囲に冷却した反応系内を、5℃〜30℃の範囲まで徐々に上昇させながら実施するのが好ましい。
式(8)から式(1)を製造するために使用される酸化剤は、例えば、酸化クロム(VI)、二酸化マンガン、デス・マーチン・ペルヨージナン、2−ヨードキシ安息香酸などが挙げられるが、好ましくは二酸化マンガンを例示することができ、式(8)で表される化合物1モルあたり、20−50モル使用することが好ましい。
また、式(8)から式(1)を製造するために使用される溶媒は、例えば、アセトニトリル、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、ペンタン、ヘキサン、1−ヘキセン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラヒドロフランなどを単独または任意の割合で使用する方法を示すことができる。これらのうち、ジエチルエーテルおよび塩化メチレンが好ましく、その使用量としては、式(8)で表される化合物1質量部に対し、20−200質量部が好ましく、50−150質量部がより好ましい。
さらに、式(8)から式(1)を製造するための温度は特に限定されないが、5℃〜30℃が好ましい。
前記反応で得られた式(1)および式(3)乃至式(8)で表される化合物は通常の精製方法、例えば蒸留あるいはシリカゲルクロマトグラフィーといった操作で精製することが出来る。
前記に示す工程により、化学純度90%以上の高品質な、前記式(1)で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを製造することが出来る。
かくして得られた、前記式(1)で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールは、例えば、カツオ節、宗田節、サバ節、イワシ節、ムロ節、サンマ節、ナマリ節、マグロ節などの魚節フレーバー;スイートオレンジ、ビターオレンジ、マンダリン、プチグレン、ベルガモット、タンゼリン、温州ミカン、ダイダイ、ハッサク、イヨカン、レモン、ライム、グレープフルーツ、ユズ、スダチ、カボス、スウィーティー、シークワーサーなどの柑橘フレーバー;アスパラガス、カボチャ、カリフラワー、キャベツ、キュウリ、ゴボウ、ザーサイ、サツマイモ、シソ、シュンギク、ショウガ、セリ、セロリ、タマネギ、チンゲン菜、トウガラシ、トウモロコシ、トマト、ナス、ニンジン、ニンニク、ネギ、ハクサイ、パセリ、ピーマン、ホウレンソウ、西洋ワサビ、ミョウガ、モヤシ、ヨモギ、ワサビなどの野菜フレーバー;濃縮乳、粉乳、ミルクホエイ、バター、チーズ、ヨーグルトなどの乳系フレーバー;アップル、グレープ、ストロベリー、パイナップル、バナナ、ピーチ、パパイヤ、メロン、アプリコット、梅、チェリー、ラズベリー、ブラックベリー、ブルーベリー、マンゴーなどのフルーツフレーバー;アサリ、アワビ、サザエ、ホタテガイ、カキ、シジミ、ハマグリ、アユ、カツオ、アンコウ、イイダコ、サケ、サバ、サンマ、スケトウダラ、ウナギ、タラコ、ニシン、バフンウニ、イカ、イワシ、タイ、タコ、ムロアジ、カレイ、タラ、アジ、アナゴ、マグロなどの魚介類フレーバー;コーヒーフレーバー、緑茶フレーバー、紅茶フレーバーなどのフレーバーに添加することにより、フレーバーに好ましいボディ感やコク味を賦与・強調することができる。
また、前記式(1)で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールは、フレーバーに対する配合量としては、目的とする香気、フレーバーの用途などによって異なるが、一般的にはフレーバー中に0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%配合することができる。
以下、参考例および実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例1:2−オクチン−1−オール(前記式(3)の化合物)の合成
500mL4口フラスコに2−プロピン−1−オール(4.68g、83.5mmol)およびテトラヒドロフラン(80mL)を仕込み、窒素雰囲気下で−40℃にて冷却攪拌した。次いで、系中にブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.67M、100mL、167mmol)を30分で滴下し、−20℃まで昇温させながら1時間攪拌した。再度−40℃まで冷却した後に1−ブロモペンタン(11.98g、79.3mmol)の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン溶液(80mL)を30分滴下した。滴下終了後終夜攪拌させ、攪拌終了後に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えてさらに15分攪拌し、反応を終了させた。反応液を分液ロートに移し有機層を取り除いた後に、水層を酢酸エチルで抽出して先の有機層とあわせ、水および食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。これを減圧濾過後、濾液をエバポレーターにて減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(200g、ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜3:1)にて精製し、前記式(3)で表される2−オクチン−1−オール(7.1g、収率71%)を得た。
参考例2:1−ブロモ−2−オクチン(前記式(4)の化合物)の合成
200mLナスフラスコに2−オクチン−1−オール(7.1g、56.3mmol)、ジエチルエーテル(70mL)およびピリジン(210mg)を仕込み、室温にて攪拌した。系内に三臭化リン(5.75g、21.3mmol)を30分で滴下し、室温で3時間攪拌した。反応液のサンプリングによりガスクロ測定にて原料の消失を確認後、系内に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて30分攪拌し、反応を終了させた。反応液を分液ロートに移し有機層を取り除いた後に、水層をジエチルエーテルで抽出して先の有機層とあわせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。これを減圧濾過後、濾液をエバポレーターにて減圧濃縮し、得られた残渣を減圧蒸留にて精製することで、1−ブロモ−2−オクチン(6.75g、収率63%、沸点66〜67℃/10mmHg)を得た。
実施例1:2,5−ウンデカジイン−1−オール(前記式(5)の化合物)の合成
500mL4口フラスコに臭化エチルマグネシウム/テトラヒドロフラン溶液(1.0M、106mL、106mmol)を仕込み、窒素雰囲気下にて氷浴で冷却しながら攪拌した。2−プロピン−1−オール(2.96g、52.8mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20mL)を滴下したところ、ガスの発生を伴い、系内の内温が上昇した。そこで室温で1.5時間攪拌した後に、再度氷浴を用いて冷却した。系内にシアン化銅(I)(1.33g)を加え、15分攪拌後に1−ブロモ−2−オクチン(5.0g、26.4mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20mL)を滴下した。水浴を除去し、2時間還流攪拌後、系内に2Nの塩酸水溶液を加え、反応を終了させた。反応液を分液ロートに移し、有機層を取り除いた後に水層をジエチルエーテルで抽出し、先の有機層とあわせて、水、2Nの塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。これを減圧濾過後、濾液をエバポレーターにて減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(250g、ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、前記式(5)で表される2,5−ウンデカジイン−1−オール(3.37g、収率76%)を得た。
実施例2:(Z,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(前記式(6)の化合物)の合成
20mL2口フラスコに2,5−ウンデカジイン−1−オール(740mg、4.51mmol)、1−ヘキセン(10mL)およびリンドラー触媒(370mg)を仕込み、室温、水素雰囲気下で終夜攪拌した。反応液のサンプリングによりガスクロ測定にて原料の消失を確認後、反応液をそのままシリカゲルクロマトグラフィー(75g、ヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製することで、(Z,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(553mg、収率73%)を得た。
実施例3:(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエン酸エチルの(前記式(7)の化合物)合成
50mLナスフラスコに(Z,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オール(100mg、0.59mmol)、トリフェニルホスホラニリデン酢酸エチル(1.05g、5.9mmol)および塩化メチレン(5mL)を仕込み、室温で攪拌してトリフェニルホスホラニリデン酢酸エチルの溶解を確認した。溶解後、系内に二酸化マンガン(1.02g、11.8mmol)を仕込み、室温で2日間攪拌した。反応液のサンプリングによりガスクロ測定にて原料の消失を確認後、減圧濾過することで得られた濾液にシリカゲル(2.0g)を加え、エバポレーターにて減圧濃縮した。シリカゲルに吸着させた残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(15g、ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製することで、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエン酸エチル(109mg、収率78%)を得た。
実施例4:(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエノール(前記式(8)の化合物)の合成
50mL2口フラスコに(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエン酸エチル(198mg、0.84mmol)および塩化メチレン(10mL)を仕込み、ドライアイスバスで−78℃に冷却しながら窒素雰囲気下で攪拌した。系内に水素化ジイソブチルアルミニウムトルエン溶液(0.99M、1.86mL、1.85mmol)を滴下し、ドライアイスバスを外して室温まで昇温させながら1時間攪拌した。ガスクロにて原料の消失を確認後、系内に10%ロッシェル塩水溶液(50mL)を加えて終夜攪拌した。攪拌後、反応液を分液ロートに移し、有機層を取り除いた後に水層をジエチルエーテルで抽出し、先の有機層とあわせて、水、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。これを減圧濾過後、濾液をエバポレーターにて減圧濃縮し、得られた残渣(186mg)をシリカゲルクロマトグラフィー(20g、ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエノール(156mg、収率96%)を得た。
実施例5:(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール(前記式(1)の化合物)の合成
50mLナスフラスコに(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエノール(156mg、0.80mmol)、二酸化マンガン(2.09g、24mmol)およびエーテル(10mL)を加えて室温にて終夜攪拌した。反応液のサンプリングによりガスクロ測定にて原料の消失を確認後、減圧濾過することで得られた濾液をエバポレーターにて減圧濃縮し、得られた残渣(121mg)をシリカゲルクロマトグラフィー(20g、ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール(104mg、収率68%)を得た。
また、上記の合成方法で製造された、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールをガスクロ分析した結果、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールは化学純度91%であった(ガスクロ条件、カラム:OV−1、昇温条件:70℃〜300℃、5.0℃/min昇温、キャリアガス:ヘリウム1mL/min、保持時間:18.2min)。
(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの物性データ
NMR(H、400MHz、CDCl):δppm 0.89(3H,t,J=6.9Hz),1.28−1.33(4H,br.m),1.38(2H,quint.,J=6.8Hz),2.08(2H,dt,J=6.8,6.8Hz),3.09(2H,t,J=7.5Hz),5.35(1H,dtt,J=1.5,7.2,10.6Hz),5.51(1H,dtt,J=1.5,7.2,10.6Hz),5.93(1H,dt−like,J=8.0,10.4Hz),6.17(1H,dd,J=8.0,15.2Hz),6.28(1H,t−like,J=11.2Hz),7.45(1H,dd−like,J=12.0,15.2Hz),9.62(1H,d,J=8.0Hz)
NMR(13C、100MHz、CDCl):δppm 14.0,22.5,26.7,27.3,29.1,31.5,125.2,126.5,132.0,132.2,141.5,146.5,193.9
MS(m/z):192(M+,6),163(5),135(8),121(27),107(23),92(47),91(60),81(100),79(88),77(45),67(42),55(40),41(62)

Claims (2)

  1. 下記式(6)
    Figure 0005473867
    で表される、(Z,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オールに、二酸化マンガンおよび下記式(9)
    Figure 0005473867
    (式中Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、Phはフェニル基を示す)で表される、トリフェニルホスホラニリデン酢酸アルキルにてワンポット酸化ウィッティヒ反応させ下記式(7)
    Figure 0005473867
    (式中Rは上記と同義である)で表される化合物とし、ヒドリド還元剤の存在下、還元することを特徴とする、下記式(8)
    Figure 0005473867
    で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエノールとし、さらに酸化剤の存在下、酸化することを特徴とする下記式(1)
    Figure 0005473867
    で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの製造方法。
  2. 下記式(4)
    Figure 0005473867
    (式中Xはハロゲン原子を示す)で表される、2−オクチニルハライドに2−プロピン−1−オールを反応させ、下記式(5)
    Figure 0005473867
    で表される、2,5−ウンデカジイン−1−オールとし、これに、リンドラー触媒の存在下水素添加を行い、下記式(6)
    Figure 0005473867
    で表される、(Z,Z)−2,5−ウンデカジエン−1−オールとし、これに、二酸化マンガンおよび下記式(9)
    Figure 0005473867
    (式中Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、Phはフェニル基を示す)で表される、トリフェニルホスホラニリデン酢酸アルキルにてワンポット酸化ウィッティヒ反応させ下記式(7)
    Figure 0005473867
    (式中Rは上記と同義である)で表される化合物とし、ヒドリド還元剤の存在下、還元することを特徴とする、下記式(8)
    Figure 0005473867
    で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエノールとし、さらに酸化剤の存在下、酸化することを特徴とする下記式(1)
    Figure 0005473867
    で表される、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールの製造方法。
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