JP4132781B2 - トランス−1−{(1’e,3’z)−1’,3’−ヘキサジエニル}−2−ビニルシクロプロパンの両鏡像体の製造方法および該鏡像体を含有する香料組成物 - Google Patents
トランス−1−{(1’e,3’z)−1’,3’−ヘキサジエニル}−2−ビニルシクロプロパンの両鏡像体の製造方法および該鏡像体を含有する香料組成物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、褐藻の性フェロモンであり、爽快なマリンノートを有する香粧品、飲食品等への賦香用組成物の香料原料として有用な1−{(1'E,3'Z)−1',3'−ヘキサジエニル}−2−ビニルシクロプロパン(ジクチオプテレンBともいう)の両鏡像体の製造方法およびそれを配合した香料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジクチオプテレンBは、R. E. Moore等によってハワイ産の海藻Dictyopteris plagiogramma(スジヤハズ)とD. australisの生鮮藻体から単離・同定された既知化合物で、強いマリンノート(磯の香り)を有する化合物である。その絶対構造は、彼らによって(1R,2R)−(−)−1−{(1'E,3'Z)−1',3'− ヘキサジエニル)−2−ビニルシクロプロパンと報告された [R. E. Moore, J. A. Pettus, Jr., and J. Mistysyn, J. Org. Chem., 39, 2201-2207 (1974)]。しかしながら、この報告された絶対構造は、後になって(1S,2R)−(−)−体の間違いであることがW. Bolandらによって明らかにされた [G. Pohnert and W. Boland, Tetrahedron, 52(30), 10073 (1996)]。
【0003】
ところで、ジクチオプテレンBのラセミ体や光学活性体の合成法については種々の方法が報告されている。例えば、光学活性体については、▲1▼ 梶原、中富、佐々木、畑中、 Agr. Biol. Chem., 45, 2099 (1980);▲2▼ T. Schotten, W. Boland and L. Jaenicke, Helv. Chim. Acta, 68, 1186 (1985);▲3▼ D. Dorsch, E. Kunz, and G. Helmchen, Tetrahedron Lett., 26(28), 3319 (1985). ラセミ体では、▲4▼ W. D. Abraham and T. Cohen, J. Am. Chem. Soc., 113, 2313 (1991)がある。この内、▲1▼と▲2▼は合成前駆体であるビニルシクロプロパン酸のラセミ体を加水分解酵素や分割剤を用いてキラル体にしたもので、▲3▼は(+)−カンファーから数工程で光学活性なビニルシクロプロパンメタノールに導いた後、酸化、アルキル化などの工程を経て光学活性なジクチオプテレンBを合成している。いずれの例においても長い工程を必要とし、Wittig反応で側鎖のZ−二重結合を導入するため、E−二重結合誘導体が混入してくる欠点があった。また、報告された旋光度の値から判断して、光学純度は90%e.e.以下であることが推定された。
【0004】
一方、▲4▼の合成方法は、(5Z及び5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オールのラセミ体を、極性溶媒であるTHF中で相当するリン酸エステルに誘導した後、極性溶媒であるTHF中、アルカリ条件下でビスアリル位の水素を引き抜き、一連の脱離・環化反応を引き起こすことによって(±)−ジクチオプテレンBに変換する生物類似反応に基づく方法で、収率においても優れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、▲4▼の方法は、出発原料のトリエノールがラセミ体であるため、一連の反応がエナンチオ選択的に進行しているのか否かの判定が難しかった。また、第二工程のシクロプロパン環の形成反応においては、b-脱離反応が進行した直鎖テトラエンが20%ほど副生し、これらの混合物からジクチオプテレンBを単離・精製するためには、精密で煩雑なカラムクロマト法を用いる必要があった。実際に本発明者らが行った光学活性な(3S,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オールを原料にした上記▲4▼に記載の方法に従って製造したジクチオプテレンBの光学純度は50〜80%であった。すなわち、上記▲4▼記載の合成法で光学活性なジクチオプテレンBを合成する場合においては、エナンチオ選択性とシクロプロパン環の形成反応におけるb-脱離反応生成物の副生という大きな問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、爽快なマリンノートを有するジクチオプテレンBの両鏡像体を、高い化学および光学純度で合成し、香料工業に有用な香料原料として、各種食品や香粧品に配合することができる香料組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
式(2)で表される(3S,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、(3S,5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、またはそれらの混合物、或いは式(2')で表される(3R,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、(3R,5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、またはそれらの混合物
【化4】
を非極性溶媒中で水酸基をアルカリ金属塩にした後、ピロリン酸アルキルエステルと反応させて式(3)で表される(3S,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−イル ジアルキルホスフェート、(3S,5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−イル ジアルキルホスフェート、またはそれらの混合物、或いは式(3') で表される(3R,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−イル ジアルキルホスフェート、(3R,5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−イル ジアルキルホスフェート、またはそれらの混合物
【化5】
を製造し、得られた式(3)の化合物或いは式(3')の化合物を非極性溶媒中、アルカリ条件下でビスアリル位の水素を引き抜き、一連の脱離・環化反応を引き起こすことを特徴とする式(1)で表される(1S,2R)−1−{(1'E,3'Z)−1',3'−ヘキサジエニル}−2−ビニルシクロプロパン{(1S,2R)−ジクチオプテレンBともいう}或いは式(1') で表される(1R,2S)−1−{(1'E,3'Z)−1',3'−ヘキサジエニル}−2−ビニルシクロプロパン{(1R,2S)−ジクチオプテレンBともいう}の製造方法である。
【化6】
また本発明は、前記(1S,2R)−ジクチオプテレンB、または(1R,2S)−ジクチオプテレンBを含有することを特徴とする香料組成物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の式(1)化合物は、式(2)で表される(3S,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、(3S,5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、またはそれらの混合物を出発原料として、例えば下記のような反応工程で合成することができる。
【0009】
【化7】
【0010】
得られた(1S,2R)−ジクチオプテレンB(式1の化合物)は、強く、爽快な磯の香りを有する。
【0011】
また、式(1')の化合物の場合も式(2')で表される(3R,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、(3R,5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、またはそれらの混合物を出発原料として全く同様に合成することができる。
【0012】
【化8】
【0013】
得られた(1R,2S)−ジクチオプテレンB(式1'の化合物)は、(1S,2R)−体に比べて弱いが、同様の爽快な磯の香りを有している。
【0014】
本発明で使用することができる式(2)及び式(2')で表される出発原料のうち、(3S,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オールと(3R,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オールは、本発明者らが開発した方法{山本、赤壁、松井、清水、梶原、Z. Naturforsch., 54c, 1027 (1999)}で容易に合成できる。また、(3S,5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オールと(3R,5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オールは、市販の(3E,6Z)−3,6−ノナジエナールとビニルマグネシウムブロマイドとのGrignard反応で得られる(5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オールを光学分割して得ることができる。さらに、5位の二重結合の異性体混合物である(3S,5Z and 5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オールと(3R,5Z and 5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オールは、例えば、上述の文献▲4▼に記載の方法で得られるラセミ体を同様に光学分割することによって得ることができる。
【0015】
上記の式(2)或いは式(2')であらわされる化合物は、高光学純度のものであることが望ましい。また、5位の立体配置については、Z体、E体、或いはZ、Eの混合物であっても反応生成物の選択性や光学純度はほとんど変わらない。
【0016】
上記反応工程で式(3)或いは式(3')の化合物を得るために使用される非極性溶媒としては、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、トルエンなどを挙げることができるが、反応や後処理の操作性、安全性などを勘案するとヘキサンが望ましい。その使用量としては、式(2)或いは式(2')の化合物に対して2〜200部、好ましくは5〜80部である。
また、水酸基をアルカリ金属塩にする際に用いる塩基としては、リチウムジイソプロピルアミド、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどを例示することができる。その使用量は、式(2)或いは式(2')の化合物1モルに対して0.5〜5モルの範囲を挙げることができるが、好ましくは1〜3モルの範囲で使用できる。
更に、ピロリン酸アルキルエステルとしては、ピロリン酸ジメチルエステル、ピロリン酸ジエチルエステル、ピロリン酸ジイソプロピルエステルなどを好ましく例示することができるが、中でもピロリン酸ジエチルエステルが好ましい。
その使用量は、式(2)或いは式(2')の化合物1モルに対して0.5〜3モルの範囲を挙げることができるが、好ましくは1〜2モルの範囲で使用できる。
【0017】
式(2)或いは式(2')の化合物の水酸基をアルカリ金属塩にする際の反応条件は、一般的には−100℃〜30℃の温度範囲で0.1〜5時間、ピロリン酸アルキルエステルを加える際の反応温度は、−100℃〜0℃の範囲が挙げられる。
【0018】
上記反応工程で式(1)或いは式(1')の化合物を得るために使用される非極性溶媒としては、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、トルエンなどを挙げることができるが、反応や後処理の操作性、安全性などを勘案するとヘキサンが望ましい。その使用量としては、式(3)或いは式(3')の化合物に対して5〜500部、好ましくは5〜300部である。また、ビスアリル位の水素を引き抜き、一連の脱離・環化反応を起こすために用いる塩基としては、カリウムビストリメチルシリルアミド、ナトリウム ビストリメチルシリルアミド、リチウムジイソプロピルアミドなど例示することができる。その使用量は、式(3)或いは式(3')の化合物1モルに対して0.5〜10モルの範囲を挙げることができるが、好ましくは1〜5モルの範囲で使用できる。
【0019】
式(3)或いは式(3')の化合物のビスアリル位の水素を引き抜き、一連の脱離・環化反応を引き起こす際の反応条件は、一般的には−100℃〜30℃の温度範囲で0.1〜5時間の範囲が挙げられる。
【0020】
上記の反応によって得られたジクチオプテレンBの精製法としては、一般的に減圧蒸留法、シリカゲルクロマトグラフィー法などが好ましく採用される。減圧蒸留によって精製する場合は、ジクチオプテレンBが比較的熱に不安定なため、内温を100℃以下に抑えることが好ましい。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する場合の展開溶媒としてはペンタン、ヘキサンなどの低沸点炭化水素溶媒が好ましい。
【0021】
上記で得られる本発明化合物の(1S,2R)−ジクチオプテレンB(式1の化合物)は、強く、爽快な磯の香りを、(1R,2S)−ジクチオプテレンB(式1'の化合物)は、(1S,2R)−体に比べて弱いが、同様の爽快な磯の香りを有している。本発明化合物は上記のようにそれ自体で特有の香気を有するものであるが、公知の香料組成物に本発明化合物を含有させることにより、該香料組成物は夫々の化合物の香気特性を生じながら、該香料組成物自身の香気ときわめて効果的な調和を示し、各香料組成物の香気の改善および増強に優れた効果を示す。例えば、(1S,2R)−体をフロ−ラル系調合香料に添加・使用することにより、華やかな拡散性のあるトップノ−トが賦与され、ナチュラル感が賦与される。また、例えば(1R,2S)−体をフル−ツ系調合香料に添加・使用することにより、シャープで拡がりのあるトップノートが賦与され、フレッシュな果汁感が増強される。
【0022】
即ち本発明の香料組成物は、本発明化合物の(1S,2R)−体または(1R,2S)−体を含有することを特徴とする香料組成物である。その含有量は、一般に香料組成物全重量の約0.0001〜20重量%、好ましくは約0.0005〜10重量%の範囲が挙げられるが、これによって限定されるものではなく、対象となる香料組成物の種類によって、その含量は適宜調整できる。
【0023】
本発明化合物を用いて香料組成物を調製する場合、他に使用される香料化合物としては、例えばリモネン、カリオフィレン、ピネンなどの各種炭化水素類;アセトアルデヒド、α−ヘキシルシンナムアルデヒド、シトラ−ルなどの各種アルデヒド類;マルト−ル、ベンジルアセトン、ダマセノンなどの各種ケトン類;ブタノ−ル、ベンジルアルコ−ル、リナロ−ルなどの各種アルコ−ル類;ゲラニル エチル エ−テル、ロ−ズオキサイド、フルフラ−ルなどの各種エ−テル・オキサイド類;エチル アセテ−ト、ベンジル アセテ−ト、リナリル アセテ−トなどの各種エステル類;γ−デカラクトン、クマリン、スクラレオライドなどの各種ラクトン類;インド−ル、2−イソプロピル−4−メチルチアゾ−ル、フェニルアセトニトリルなどの各種ヘテロ化合物類;オレンジオイル、ジャスミンアブソリュ−ト、シダ−ウッドオイル、オリスコンクリ−トなどの各種天然素材類が挙げられる。使用する溶剤としては、例えばエタノ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ベンジル ベンゾエ−ト、水、トリアセチン、トリエチル シトレ−トなどが挙げられる。
【0024】
本発明の香料組成物は、下記の飲食品類および香粧品類に用いることによって、その特徴的な香気または香気香味特性を商品に賦与し、消費者のニ−ズにあった、かつユニ−クな商品を提供できる。飲食品類としては、例えば、酒類、柑橘飲料類、フル−ツ飲料類、乳飲料類、炭酸飲料類、茶飲料などの各種飲料類;アイスクリ−ム、アイスシャ−ベット、アイスキャンディなどの各種冷菓類;タバコ、チュ−インガム、キャンディ、プリン、ゼリ−などの各種嗜好品類;和風ス−プ、洋風ス−プなどの各種ス−プ類;インスタント食品類、スナック食品類、動植物エキス類などが挙げられる。香粧品類としては、例えばパルファム、オ−ドパルファム、オ−ドトワレなどの香水類;シャンプ−類、リンス類、トリ−トメント類、石鹸類、ボディシャンプ−類などの各種トイレタリ−製品類;線香、ろうそく、練り香などの各種香類;染毛剤類、ブリ−チ剤類、ヘアトニック類などの各種毛髪料類;ファンデ−ション、化粧水、口紅などの各種化粧品類;室内芳香剤類、車内芳香剤類などの各種芳香剤類;食器洗剤類、洗濯洗剤類、柔軟剤類などの各種洗剤類などが挙げられる。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではなく、本反応の範囲を逸脱しない範囲で変更することは可能である。なお、各実施例および参考例において物性の測定に用いた装置は次の通りである。
【0026】
キラルガスクロマトグラフィー:島津GLC−6A;カラム:Lipodex E(Macherey Nagel社製)もしくはCP-Cyclodex 236M(ジー・エル・サイエンス社製);検出器:FID
プロトンおよび13C核磁気共鳴スペクトル(1 H−および13C−NMR):JMN−LA400(400および100MHz)(日本電子社製)、或いはR−250(250および62.5MHz)(日立製作所社製);内部標準物質:テトラメチルシラン(重クロロホルム中)
赤外吸収スペクトル(IR):IR−260−10型(日立製作所社製)
旋光度:DIP−370(日本分光社製)
質量分析スペクトル:M−80B(日立製作所社製)
【0027】
参考例1 (3S,5Z,8Z)−(−)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール(式2の化合物)の合成
(5Z,8Z)−(±)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−イル アセテート(500 mg, 2.4 mmol)、リン酸緩衝液(pH 7.2, 15 mL)およびアセトン(10 mL)からなる溶液に、Novozym 435(Novo Nordisk社製、500 mg)を加え、室温で5時間撹拌した後、混合物を濾過し、濾液をエーテルで抽出した。エーテル抽出物を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。抽出物を減圧下濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマト(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製ですると、最初に(3R,5Z,8Z)−(+)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−イル アセテート(300 mg, 収率:61%)が得られ、続いて式2の化合物(100 mg, 収率:31%)が得られた。
【0028】
式2の化合物の分析値:光学純度(CP-Cyclodex 236M):99% e.e.以上;[a]D 25 = -1.2 (c = 5.02, CHCl3); IR u max (film) cm-1: 3300-3400, 3020, 2970, 2930, 2880, 1679, 1030, 990, 920; 1H-NMR (250 MHz, CDCl3) d: 0.94-1.00 (3H, t), 2.01-2.10 (2H, m), 2.32-2.38 (2H, t), 2.79-2.84 (2H, t), 4.12-4.19 (1H, m), 5.12-5.16 (2H, d), 5.23-5.59 (4H, m), 5.87-5.95 (1H, m); ); 13C-NMR (62.5 MHz, CDCl3) d: 14.2, 20.6, 25.7, 35.0, 72.4, 114.8, 124.6, 126.7, 131.6, 132.2, 140.4.
【0029】
参考例2 (3R,5Z,8Z)−(+)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール(式2'の化合物)の合成
(5Z,8Z)−(±)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール(500 mg, 2.9 mmol)の酢酸ビニル(15 mL)溶液に、Novozym 435(500 mg)を加え、室温で5時間撹拌した後、混合物を濾過し、濾液をエーテルで抽出した。エーテル抽出物を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。抽出物を減圧下濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマト(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製ですると、最初に(3S,5Z,8Z)−(−)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−イル アセテート(400 mg, 収率:60%)が得られ、続いて式2'の化合物(200 mg, 収率:32%)が得られた。
【0030】
式2'の化合物の分析値:光学純度(CP-Cyclodex 236M):99% e.e.以上;[a]D 25 = +1.2 (c = 5.00, CHCl3); IR, 1H-および13C-NMRのスペクトルデータは、式2の化合物のデータと一致した。
【0031】
実施例1
(3S,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−イルジエチルホスフェート(式3の化合物)の合成
(3S,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール(166 mg, 1.0 mmol, e.e.>99%)のヘキサン溶液(10 mL)を激しく撹拌しながらリチウムジイソプロピルアミド(LDA)のヘキサン溶液(1.5 mmol)をアルゴン置換下、−75℃で加えた。1時間後、ピロリン酸ジエチルエステル(378 mg, 1.6 mmol)を−76℃で加え、反応温度を徐々に0℃まで上げた。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を中止し、混合物を室温まで温めた。反応混合物をエーテルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。減圧下溶媒を留去し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマト(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製して式(3)の化合物(216 mg, 収率:74%)を得た。
【0032】
式(3)の化合物の分析値:[a]D 25 = +30.5 (c = 5.00, CHCl3); IR u max (film) cm-1: 3500, 3260, 3020, 3000, 2950, 1650, 1450, 1440, 1400, 1370, 1270, 1190, 1100, 1040, 830, 760; 1H-NMR (250 MHz, CDCl3) d: 0.96 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.31 (6H, m), 2.06 (2H, m), 2.50 (2H, m), 2.80 (2H, t, J = 7.3 Hz), 4.10 (4H, m), 4.79 (1H, m), 5.21-5.53 (6H, m), 5.85 (1H, ddd, J = 6.7, 10.4, 17.1 Hz).
【0033】
実施例2
(3R,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−イルジエチルホスフェート(式3'の化合物)の合成
(3R,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール(式2'の化合物)から上記と全く同様にして(3R,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−イル ホスフェート(式3'の化合物)が71%の収率で得られた。式(3')の化合物の分析値:[a]D 25 = -30.3 (c = 5.01, CHCl3); IRと 1H-NMRのスペクトルデータは、式(3)の化合物のデータと一致した。
【0034】
実施例3
(1S,2R)−ジクチオプテレンB(式1の化合物)の合成
式(3)の化合物(100 mg, 0.35 mmol)のヘキサン(30 mL)溶液を激しく撹拌しながら、カリウムビストリメチルシリルアミドの0.5 M THF溶液(12.5 mL, 0.7 mmol)を−76℃で加えた。反応混合物を−76℃で30分間撹拌した後、0℃まで昇温した。水を加えて反応を中止し、反応混合物をペンタンで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。減圧下溶媒を留去し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマト(展開溶媒:ペンタン)で精製して(1S,2R)−ジクチオプテレンBを無色透明な液体として得た。(43 mg, 収率:84%)
【0035】
(1S,2R)−ジクチオプテレンB(式1の化合物)の分析値:光学純度(Lipodex E):99% e.e.以上; [a]D 25 = -50.3 (c = 5.11, CHCl3); IR u max (film) cm-1: 3090, 3025, 2980, 2950, 2890, 1650, 1640, 1465, 985, 945, 855; 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) d: 0.86-0.92 (2H, m), 0.98 (3H, t, J = 5.1 Hz), 1.48 (2H, m), 2.18 (2H, dq, J = 1.4, 7.6 Hz), 4.88 (1H, dd, J = 1.5, 10.2 Hz), 5.03 (1H, dd, J = 2.0, 17.1 Hz), 5.23 (1H, m), 5.29 (1H, m), 5.41 (1H, ddd, J = 8.3, 8.8, 17.1 Hz), 5.90 (1H, dd, J = 11.0, 11.4 Hz), 6.39 (1H, dd, J = 11.0, 14.9 Hz); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) d: 14.32, 15.53, 21.04, 24.30, 25.15, 112.35, 124.04, 127.55, 131.57, 135.87, 140.26; GC-MS m/Z (rel. intensity): 148 (M+, 5), 133 (6), 119 (31), 105 (35), 91 (94), 79 (100), 66 (49), 41 (65), 39 (49), 27 (27).
【0036】
実施例4
(1R,2S)−ジクチオプテレンB(式1'の化合物)の合成
(3R,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−イル ホスフェート(式3'の化合物)から実施例3と全く同様にして(1R,2S)−ジクチオプテレンB(式1'の化合物)が82%の収率で得られた。式(1')の化合物の分析値:光学純度(Lipodex E):99% e.e.以上;[a]D 25 = +50.4 (c = 5.11, CHCl3); IR, 1H-および13C-NMR, GC-MSのスペクトルデータは、式(1)の化合物のデータと一致した。
【0037】
比較例1
(3S,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−イル ジエチルホスフェート(式3の化合物)の合成
(3S,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール(166 mg, 1.0 mmol, e.e.>99%)のTHF溶液(10 mL)を激しく撹拌しながらリチウムジイソプロピルアミド(LDA)のTHF溶液(1.5 mmol)をアルゴン置換下、−75℃で加えた。1時間後、ピロリン酸エチルエステル(378 mg, 1.6 mmol)を−76℃で加え、反応温度を徐々に0℃まで上げた。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を中止し、混合物を室温まで温めた。反応混合物をエーテルで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。減圧下溶媒を留去し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマト(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製して式(3)の化合物(216 mg, 収率:74%)を得た。
【0038】
式(3)の化合物の分析値:[a]D 25 = +20.5 (c = 5.00, CHCl3); IRと 1H-NMRのスペクトルデータは、実施例1で得た式(3)の化合物のデータと一致した。
【0039】
比較例2
(1S,2R)−ジクチオプテレンB(式1の化合物)の合成
比較例1で得た式(3)の化合物(100 mg, 0.35 mmol)のTHF(30 mL)溶液を激しく撹拌しながら、カリウムビストリメチルシリルアミドの0.5 M THF溶液(12.5 mL, 0.7 mmol)を−76℃で加えた。反応混合物を−76℃で30分間撹拌した後、0℃まで昇温した。水を加えて反応を中止し、反応混合物をペンタンで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で1回洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。減圧下溶媒を留去し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマト(展開溶媒:ペンタン)で精製して(1S,2R)−ジクチオプテレンB(35 mg, 収率:68%)と(3E,5Z,8Z)−1,3,5,8−ウンデカテトラエン(9 mg, 収率:17%)を無色透明な液体として得た。
【0040】
(1S,2R)−ジクチオプテレンB(式1の化合物)の分析値:光学純度(Lipodex E):57% e.e.; [a]D 25 = -35.4 (c = 5.11, CHCl3); IR, 1H-および13C-NMR, GC-MSのスペクトルデータは、実施例2で得た式(1)の化合物のデータと一致した。
【0041】
比較例3、実施例5および実施例6
グレープフルーツタイプの調合香料として下記の成分(重量部)を混合した。
【表1】
【0042】
上記香料組成物について、よく訓練された専門パネラー10人で比較した。実施例5の香料組成物は、比較例3のものに比べて明るさと華やかさが出て、グレープフルーツのピール感とフラベド的なニュアンスが付与されて優れていると全員が評価した。また、実施例6の香料組成物は、比較例3のものに比べて香り立ちがシャープになり、瑞々しいフレッシュ感が付与されたと全員が評価した。
【0043】
比較例4および実施例7
フローラルタイプの調合ベースとして下記の成分(重量部)を混合した。
【表2】
【0044】
上記香料組成物について、よく訓練された専門パネラー10人で比較した。実施例7の香料組成物は、比較例4のものに比べてフレッシュなフローラル感が増大した。また、爽やかで瑞々しいナチュラル感も付与された、と全員が評価した。
【0045】
【発明の効果】
生成物およびエナンチオ選択性に問題のあった、従来公知の合成方法を改良することによって、ジクチオプテレンBの両鏡像体を高収率および高純度で得ることができる製造方法を見出した。また、得られた高純度の鏡像体が配合された香料組成物は、香気の改善および増強に優れた効果を示す。
Claims (1)
- 式(2)で表される(3S,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、(3S,5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、またはそれらの混合物、或いは式(2')で表される(3R,5Z,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、(3R,5E,8Z)−1,5,8−ウンデカトリエン−3−オール、またはそれらの混合物
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