JP5471988B2 - 圧電体薄膜ウェハの製造方法、圧電体薄膜素子及び圧電体薄膜デバイス、並びに圧電体薄膜ウェハの加工方法 - Google Patents
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非鉛圧電体薄膜を用いてアクチュエータやセンサを作製する場合は、微細加工プロセスにより非鉛圧電体薄膜を梁や音叉の形状に加工する必要がある。これまで、この非鉛圧電体薄膜をエッチングする際には、反応ガスとしてCl系の反応ガスを用いることが提案されている。(非特許文献1参照)
このNa発光ピーク強度の変化を圧電体薄膜のエッチングの進行度の検出や終点検出に使用することにより、圧電体薄膜に対して精度の良い微細加工が可能となることが分かり、本発明に至った。
前記エッチング速度を変更する工程は、前記ドライエッチングが前記下地層まで進行したときの前記Naの発光ピーク強度が強くなることを検出してもよい。
前記下部電極層として、Pt下部電極層を形成してもよい。
前記圧電体薄膜ウェハのエッチング断面にフッ素化合物を形成してもよい。
図1において、全体を示す符号1は、この実施の形態に係る圧電体薄膜ウェハの一構成例を模式的に示している。この圧電体薄膜ウェハ1は、シリコン(Si)基板2を備える。そのSi基板2の上面には、下部電極層3が形成されている。その下部電極層3は、一例として白金(Pt)薄膜からなる(以下、Pt下部電極層3ともいう)。そのPt下部電極層3が形成されたSi基板2上には、組成式(K1-xNax)NbO3(0.7<x≦1.0)で表されるペロブスカイト構造の下地層4(以下、誘電体下地層ともいう)が形成され、その下地層4上には、組成式(K1-xNax)NbO3(0.4≦x≦0.7)で表されるペロブスカイト構造の圧電体薄膜5(以下、KNN圧電体薄膜ともいう)が形成される。Si基板2の表面には、図示しない酸化膜(SiO2)を形成し、Si基板2とPt下部電極層3との密着性を向上させてもよい。
まず、Si基板2上にPt下部電極層3を形成する。Pt下部電極層3は、一例として、RFマグネトロンスパッタリング法を用い形成される。Pt下部電極層3は、(111)面に優先配向するよう、成膜条件を制御して形成するとよい。Pt下部電極層3を形成するにあたり、Si基板2とPt下部電極層3との密着性を高めると共に、Pt下部電極層3の良好は配向性を得るために、Si基板2とPt下部電極層3との間に図示しないチタン(Ti)密着層を形成しても良い。Ti密着層の膜厚は1nm〜30nmの範囲とするのがよい。Pt下部電極層3は、圧電薄膜素子が所望の特性を実現するため、所定の表面粗さに抑えることが好ましい。
また、一例として、下地層4の厚さは、20nm〜120nmの厚さに形成される。これは、薄すぎると発光ピーク強度の変化の検出を確実に行うことができず、厚すぎても、成膜時間の増大や、エッチングの停止制御が難しくなるためである。
圧電体薄膜ウェハ1の一部を構成するKNN圧電体薄膜5の微細加工を行うにあたり、図2のように、KNN圧電体薄膜5の上にマスクパターンを形成する。RFマグネトロンスパッタリング法により、KNN圧電体薄膜5の上にTi膜を形成し、次に、フォトレジストを塗布し、露光及び現像を行い、Ti膜上にフォトレジストパターンを形成する。そして、フッ酸と硝酸の混合液を用いてTi膜をエッチングする。その後、アセトン洗浄を行うことで、フォトレジストパターンを除去し、パターンが形成されたTi層6(以下、Tiパターンともいう)をKNN圧電体薄膜5上に形成する。
このTiパターン6は、非鉛系の圧電体薄膜ウェハ1の微細加工における適切なマスク材料として用いられる。この実施の形態に係るニオブ酸化物系圧電体薄膜に対しても、所定のエッチング選択比を有しており、Arイオンエッチングにおけるマスク厚さの増加によるパターン精度の悪化を防止することができる。
この実施の形態に係る圧電体薄膜ウェハ1を用い、センサやアクチュエータ、フィルタを作製する場合は、ドライエッチングによりKNN圧電体薄膜5を梁や音叉、櫛などの所望の形状に加工する。
図2は、圧電体薄膜ウェハ1上にTiパターン6を直線状に形成し、圧電体薄膜5に対し微細加工を施した圧電体薄膜ウェハ1を示す。Tiパターン6は、所定の幅、ピッチに形成され、圧電体薄膜ウェハ1のエッチングが行われる。図2では、Tiパターン6は圧電体薄膜5上に直接形成したが、上部電極層となる金属層を圧電体薄膜5上に形成し、Tiパターン6を金属層上に形成しても良い。
微細加工が施されたKNN圧電体薄膜5は、図2のように所定のテーパ角を備えた台形状のKNN素子部7を有する。各KNN素子部7の間には、Pt下部電極層3が露出して形成される。このKNN素子部7が形成された圧電体薄膜ウェハにダイシング等を行うことで、KNN素子部7を個片化した圧電体薄膜素子が得られる。
特に、下地層4のNa組成比を、KNN圧電体薄膜5よりも高くすることで、Na発光ピーク強度の変化の良好な検出を実現した。
例えば、Naの発光ピーク強度が、定常値から上昇した後、急激に減少し、定常値に対し50〜70%程度まで減衰した状態の値でエッチングを停止することで、微細加工を達成する。
また、発光ピーク強度が増加するまでは、Arガスのみでドライエッチングを進めることで、短時間にKNN圧電体薄膜のエッチングを行い、発光ピーク強度の増加を検出した後は、フッ素系ガスを混合しエッチング速度を落としてエッチングを進めることができる。なお、フッ素系反応ガスを混合した場合、Pt下部電極層3とのエッチング選択比が高くなるため、Pt下部電極層3において、エッチングの停止制御が容易になり、結果的に加工精度を高めることができる。
基板は、熱酸化膜付きのSi基板2((100)面方位、厚さ0.525mm、熱酸化膜厚さ200nm、サイズ4インチウェハ)を用いた。RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、Si基板2上にPt下部電極層3(Pt、膜厚210nm)を形成するにあたり、Si基板2とPt下部電極層3との間に図示しないTi密着層(10nm)をスパッタにより形成した。
まず、KNN圧電体薄膜5の上に、Ti膜をRFマグネトロンスパッタリング法により約1.2μm成膜した。次に、OFPR−800などのフォトレジストを塗布し、露光及び現像を行い、Ti膜上にフォトレジストパターンを形成した。その後、フッ酸と硝酸の混合液(HF:HNO3:H2O=1:1:50)を用いてTi膜をエッチングした。アセトン洗浄によりフォトレジストパターンを除去し、Tiパターン6をKNN圧電体薄膜5上に形成した。Tiパターン6は、幅2.5mm、ピッチ5.0mmで形成した。
具体的には、基台上にKNN膜を形成し、さらにKNN膜の一部にTiマスクを形成した試料を作製し、Arガス、又はArを含むガスを用いたドライエッチングを施した。所定時間エッチングした後、残留したTiパターンフッ酸と硝酸の混合液を用いて除去し、段差を測定することでエッチング深さを求めた。そして、厚さの変化量(段差量)の測定からKNNとTiのエッチング選択比を求めた。変化量の測定から求めた「圧電体薄膜/マスク厚」のエッチング選択比は、最大で3程度であり、KNN圧電体薄膜5を加工する場合は、「圧電体薄膜/マスク厚」比を3程度とすることが好適であることが分かった。
Tiパターン6を形成したKNN圧電体薄膜5上に、Arを含むガスを用いたドライエッチングにより微細加工を行う。この工程において、イオンプラズマ中のNa発光ピーク強度の時間変化を観測することで、下部電極層3において制御性良く加工を停止する微細加工を行った。ドライエッチング装置としては、ICP−RIE装置(サムコ製RIE−102L)を用いた。ガスとしては、Ar、もしくは、ArとCHF3、C2F6、CF4、SF6、C4F8などのフッ素系反応ガスとの混合ガスを用いることができる。
上記ドライエッチング工程において、イオンプラズマ中のNa発光ピーク強度(以下、Naピーク強度ともいう)の時間変化の観測を行った。そのNaピーク強度は、スペクトルメータ(OceanOptics製USB2000)を用いて測定した。ドライエッチングは、RF出力415W、チャンバー内圧力33.3Pa(0.25Torr)、ガス総流量100sccmの条件とした。また、バイアス電力は0Wとした。KNN圧電体薄膜5のエッチングの終点検出には、上記イオンプラズマ中のNaピーク強度の時間変化により検出する方法を用いた。
また、エッチングにより露出したPt下部電極層は、いずれの試料においても厚さが120nm以上に保たれ、Pt下部電極層において、エッチングの停止ができていることを確認できた。また、KNN素子部のテーパ角は、46°〜60°の範囲であった。このテーパ角は、バイアス電力を制御することで、60°以上の急峻な角度にすることができる。
ここでは、KNN圧電体薄膜5においてエッチングが進行しているときから、誘電体下地層4へエッチングが進行したとき、Naピーク強度は定常値から増大していることが分かる。その後、下地層を削り切る付近において、イオンプラズマ中のNaピーク強度が大きく減少している。これは、エッチングの進行がPt下部電極層に移っていっていることを示している。このNa発光ピーク強度の増減部分をKNN圧電体薄膜5のエッチングの終点検出に使用が可能であることが理解できる。
微細加工された圧電薄膜素子を用いてデバイスを構成する場合、電圧の印加又は電圧の検知を行うために、エッチングにより露出させたPt下部電極層をパッドとして用いる形態がある。このような形態の場合には、エッチング後に露出した下部電極層の厚さが100nm以上となるように予め各層の膜厚やエッチング選択比を決定しておくことが好ましい。
上述した通り、Arを含むガスを用いたドライエッチングでKNN圧電体薄膜5を加工し、イオンプラズマ中のNa発光ピーク強度の変化を検知することにより、Pt下部電極層3において制御性よく加工を停止することで、KNN圧電体薄膜5の微細加工を行い、KNN素子部7を形成すると共に、Pt下部電極層3を露出させ、かつPt下部電極層3においてエッチングを停止できる。
KNN素子部7の上部にPt上部電極8を形成し、長さ20mm、幅2.5mmの短冊型素子9を切り出した。短冊型素子9の長手方向の端をクランプ11で固定することで、簡易型のカンチレバー型アクチュエータ10を作製した。この状態で上部電極、下部電極間に、電圧を印加することで、KNN圧電体薄膜5に変位を生じさせ、伸縮させるように動作させることで、レバー全体を屈曲動作させた。この先端部の位置をレーザドップラー変位計12で測定することにより圧電定数を求めることができる。
上部電極は、エッチングによる圧電体薄膜ウェハ1の微細加工後にTi膜を除去し、Ti膜が除去されたKNN素子部上に形成してもよいが、工程の簡略化には、エッチング前に圧電体薄膜上に形成しても良い。この場合は、微細加工前に、圧電体薄膜上に上部電極層を形成し、その上にTiなどのマスクを設けて、エッチングを行う。
このため、圧電体薄膜5の厚さが1μm未満である場合は、C4F8などのフッ素系反応ガスを混合して反応性イオンエッチングを行うことで、削りムラの少ない良好なエッチングが可能となる。また、エッチングガスの流量を制御することで、Na発光ピーク強度の時間変化の検知やエッチングの制御性の改善が可能となり、圧電体薄膜5の厚さが1μm未満であっても、初期の目的とする微細加工が得られる。
特に、厚さが200nm〜500nmと薄い圧電体薄膜を加工する際には、Arとフッ素系反応ガスとの割合を1:1とし、エッチング速度を落とすと共に、Pt下部電極層において選択的にエッチングを止めることで、良好な微細加工が可能になる。
(ゾルゲル法により形成したKNN圧電体薄膜の加工)
ゾルゲル法やMOD法により圧電体層を形成する場合には、所望の組成式となるよう材料の組成比を調製した前駆体溶液を用いて塗布層を形成し、塗布層を結晶化することで圧電体層を形成する。例えば、Naを含む有機金属化合物としてナトリウムエトキシド、カリウムを含む有機金属化合物としてカリウムエトキシド、ニオブを含む有機金属化合物としてニオブエトキシドを用い、これらを所望のモル比となるよう混合し、さらにアルコールなどの有機溶媒を用いて溶解、分散して、前駆体溶液を作製する。
具体的には、まず、誘電体下地層を形成するための下地層用前駆体溶液と、KNN圧電体薄膜を形成するためのKNN膜用前駆体溶液を用意する。次に、NbドープのSrTiO3基板上にスピンコート法により下地層用前駆体溶液を塗布し、ホットプレート上で乾燥、仮焼結した後、700℃でアニール処理を施す。次に、SrTiO3基板上に形成された誘電体下地層上に、スピンコート法によりKNN膜用前駆体溶液を、スピンコート法により塗布し、ホットプレートで乾燥、仮焼結後、700〜800℃でアニール処理を施し、結晶化させる。
各工程は、必要とする膜厚が得られるまで繰り返し行われ、例えば、50nm厚さの下地層、4μm厚さのKNN圧電体薄膜を有する圧電体薄膜ウェハを形成する。
(AD法により形成したKNN圧電体薄膜の加工)
次に、エアロゾルデポジション法(AD法)により形成したKNN圧電体薄膜の加工を検討した。主原料としては、所望のKNN圧電体薄膜の組成と同じ組成比の原料粉末を用い、ヘリウムガスを搬送ガスとして成膜を行った。また、副原料としてエアロゾルデポジション法で成膜されやすい誘電体の結晶粉体を混合してもよい。この場合、Al2O3などの副原料の混合は、主原料に対し重量比で3〜10%程度とする。
まず、Pt下部電極層が形成された基板を用意し、基板温度500℃として、下地層用原料粉末の吹き付けを行う。次に、基板温度を500℃に保ったまま、KNN膜用原料粉末の吹き付けを行う。その後、700℃〜800℃でアニール処理を行うことで、100nm厚さの下地層と、10μm厚さのKNN圧電体薄膜を有する圧電体薄膜ウェハを形成した。なお、基板としては、500nm厚さのPt層を形成したMgO基板を用いた。
2 基板
3 下部電極層
4 下地層
5 圧電体薄膜層
6 マスクパターン
7 素子部
8 上部電極層
9 短冊型素子
10 カンチレバー型アクチュエータ
Claims (9)
- 基板上に組成式(K1-xNax)NbO3(0.7<x≦1.0)で表される下地層を形成する工程と、該下地層上に組成式(K1-xNax)NbO3(0.4≦x≦0.7)で表されるアルカリニオブ酸化物系ペロブスカイト構造の圧電体薄膜を形成する工程と、
前記基板上に形成された前記下地層及び前記圧電体薄膜に、Arを含むガスを用いてドライエッチングを行う工程と、
前記ドライエッチングにおいて放出されるイオンプラズマ中のNaの発光ピーク強度の変化を検出してエッチング速度を変更する工程とを有することを特徴とする圧電体薄膜ウェハの製造方法。 - 前記エッチング速度を変更する工程は、前記ドライエッチングが前記下地層まで進行したときの前記Naの発光ピーク強度が強くなることを検出する工程を含む請求項1に記載の圧電体薄膜ウェハの製造方法。
- 前記基板と前記下地層との間に下部電極層を備え、前記エッチング速度を変更する工程は、前記ドライエッチングが前記下部電極層まで進行したときの前記Naの発光ピーク強度の減衰を検出する工程を含む請求項2に記載の圧電体薄膜ウェハの製造方法。
- 前記下部電極層として、Pt下部電極層を形成した請求項3に記載の圧電体薄膜ウェハの製造方法。
- 前記ドライエッチングは、前記Arを含むガスにフッ素系反応ガスを混合したガスを用いて行う反応性イオンエッチングを含む請求項1〜4のいずれかに記載の圧電体薄膜ウェハの製造方法。
- 前記圧電体薄膜ウェハのエッチング断面にフッ素化合物を形成する請求項5に記載の圧電体薄膜ウェハの製造方法。
- 請求項6に記載の前記圧電体薄膜ウェハの製造方法により得られる圧電体薄膜ウェハを個片化して形成することを特徴とする圧電体薄膜素子。
- 請求項7に記載の前記圧電体薄膜素子と、電圧印加手段又は電圧検知手段とを備えることを特徴とする圧電体薄膜デバイス。
- 基板上に形成された組成式(K1-xNax)NbO3(0.7<x≦1.0)で表される下地層と該下地層上に形成された組成式(K1-xNax)NbO3(0.4≦x≦0.7)で表されるアルカリニオブ酸化物系ペロブスカイト構造の圧電体薄膜にドライエッチングを行う工程と、
前記ドライエッチングにおいて放出されるイオンプラズマ中のNaの発光ピーク強度の変化を検出してエッチング速度を変更する工程とを有し、
前記エッチング速度を変更する工程は、前記ドライエッチングが前記下地層まで進行したときの前記Naの発光ピーク強度が強くなることを検出して行うことを特徴とする圧電体薄膜ウェハの加工方法。
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