以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
我々は、かかる課題に対して、高度に水分を除去すること、および有機機能層中の酸素分子を除去すること、さらには水分や酸素分子を除去するための超臨界流体処理に耐えうる有機機能層を設計することによって、発光特性だけでなく、輝度コントロールでの色温度安定性や、長時間でのパルス駆動発光における耐久性を格段に向上させることを見出し、本発明に至った次第である。
本発明においては、有機EL素子の有機機能層の含水率を5ppm以下とし、かつ酸素分子含有率を100ppm以下とすることを特徴とする。含水率または酸素分子含有率がこの値を超えると、発光効率の低下、寿命の劣化が発生し好ましくない。有機機能層の含水率を5ppm以下とし、かつ酸素分子含有率を100ppm以下とするには、有機機能層を構成する材料を溶剤に溶解した塗布液で塗布後、高温乾燥する工程を経たのち、さらに超臨界流体処理を行うことが好ましい。高温乾燥としては、溶剤の沸点以上であって、有機機能層のガラス転移温度(以下Tgともいう)以下であることが好ましい。
超臨界流体について、以下に述べる。
物質の状態図(相図)において、蒸発曲線の高温、高圧側に終点があり、これを臨界点(critical point)と呼び、液体と蒸気との区別がつかなくなる状態が存在する。臨界温度以上でかつ臨界圧力以上の状態にある流体を超臨界流体といい、超臨界流体を与える温度・圧力領域を超臨界領域という。超臨界流体は高い運動エネルギーを有する高密度流体であり、超臨界状態にある溶媒としては、二酸化炭素、一酸化二窒素、アンモニア、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、ペンタン等が好ましく用いられるが、本発明の有機EL素子では、この中でも二酸化炭素を好ましく用いることができる。
本発明の超臨界流体処理とは、フレキシブル基板上の有機機能層を上記超臨界流体に浸漬することである。
二酸化炭素の超臨界流体を用いる場合、臨界温度(以下、Tcともいう)31℃以上で、かつ臨界圧力(以下、Pcともいう)が7.4MPa以上の超臨界領域では流体は拡散係数が大きくかつ粘性が小さくなり物質移動、濃度平衡への到達が早く、かつ液体のように密度が高いため、その温度と圧力をきめ細かく設定することによって、水分や酸素分子に限らず、除去または抽出対象物を色々と選択することができる。
超臨界流体の使用温度は、上記臨界温度以上であり、基本的に有機機能層が軟化する温度以下であれば良く、好ましくは有機機能層のTg以下であればよい。
超臨界流体の使用圧力は、基本的に用いる物質の臨界圧力以上であれば特に限定はないが、圧力が低過ぎると有機機能層中の水分や酸素分子の除去率が乏しくなる場合があり、また圧力が高過ぎると製造装置の耐久性、操作時の安全性等を考慮する必要がある。使用圧力は5〜100MPaとするのが好ましい。
本発明においては、有機EL素子の有機機能層に対して超臨界流体処理を行うことにより、水分を高度に除去できる。本発明において含水率の検出は、TOF−SIMS(Time−of−flight secondary ion mass spectrometer)を用いた解析によって確認できる。
TOF−SIMSは、一次イオンビームを固体試料に照射し、その際に試料の最表面から放出されるイオン(二次イオン)を検出する二次イオン質量分析法の一つで、固体試料上の原子、分子の化学情報を一分子層以下の感度で測定でき、また特定の分子や原子の分布を100nm以下の空間分解能で観察できる質量分析計である。TOF−SIMSは検出能が高いので、本発明において、有機機能層中に存在する水分量を、有機機能層表面から順次測定していき、そのプロファイルを得ることができる。
また、塗布量が明らかな他の元素のプロファイルと比較することによって、含水率を数ppmレベルまで精度よく確認できるので、超臨界流体処理での水分除去の条件を精密に設定できる。
本発明の有機EL素子において、有機機能層中の含水率は、5ppm以下である。下限は低いほうが好ましい。0〜3ppmが好ましく、さらに0〜1ppmが好ましい。
本発明においては、低含水率であるとともに、酸素分子含有率を100ppm以下にした有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができ、すぐれた性能を発揮する。
本発明においては、有機EL素子の有機機能層に対して超臨界流体処理を行うことにより、水分を高度に除去できるだけでなく、有機機能層中に吸着している酸素分子についても、効率よく除去できる。
本発明において有機機能層中の酸素分子の含有率は、前記含水率と同様の方法によって、TOF−SIMSによって調べることができる。
すなわち、有機機能層中から検出された全酸素量から、前記重水に由来する酸素や、塗布量が明らかな含酸素化合物の酸素量を差し引いた残りが、有機機能層中に存在する吸着酸素分子量である。より高精度な定量のためには、有機機能層形成に用いる材料は溶剤も含めてすべて、酸素原子を含有しないもので構成することが好ましい。この方法によって、超臨界流体処理での酸素分子除去の好適な条件を見出すことができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、有機機能層中の酸素分子の含有率は、100ppm以下であるが、0〜30ppm以下が好ましく、さらに0〜20ppm以下が好ましい。
本発明においては、有機EL素子を超臨界流体処理する工程において、該工程の前後にプロセス圧力置換工程を設けて、有機機能層にかかる圧力を徐々に変化させることによって、有機機能層中に存在する水分や酸素分子を、効率よく除去できることを見出したものである。
この圧力変化が急激であると、すなわち、加圧下で超臨界流体処理した後に、急激に大気圧に戻すと、有機機能層中に吸着している水分や酸素分子の除去が不充分であるばかりでなく、塗膜構造の変化によるものと思われる、有機EL素子の電荷輸送特性や発光特性への影響や、工程搬送での有機機能層の損傷への影響の可能性があるので、注意が必要である。
本発明においては、試料を超臨界流体から引き上げて、加圧状態から、0.01MPa/秒〜0.5MPa/秒の速度、好ましくは0.01MPa/秒〜0.3MPa/秒の速度、特に好ましくは0.02MPa/秒〜0.2MPa/秒の速度で大気圧までゆっくり戻すことにより、有機機能層に影響を与えることなく、水分や酸素分子を有効に低減することができることを見出した。
本発明におけるプロセス圧力置換工程は、時間に対する圧力の関係が連続的に変化することが好ましいが、複数の圧力レベルが段階的に変化する方式でも良い。
本発明においては、有機機能層が超臨界流体処理に耐えられるようにすることが好ましく、それによって超臨界流体処理する工程の自由度が向上するだけでなく、有機機能層中の水分や酸素分子を効率よく除去することができる。
有機機能層を超臨界流体処理に耐えられるように種々検討した結果、有機機能層のTgを140℃以上とすることが有効であることを見出した。これは、有機機能層に対する超臨界流体処理での加圧加熱条件への耐性が、およそ有機機能層のTg140℃に相当することを見出したことによる。すなわち、有機機能層のTgが140℃以上の場合、超臨界流体処理での耐性がより向上し好ましい。有機機能層のTgを140℃以上とするには、Tgが140℃以上の材料を選択して有機機能層を構成することである。
また、有機機能層に膜強化剤を添加して強化処理したり、重合性または架橋性材料を含有させておいて熱や放射線によって重合や架橋処理を施すことによっても、有機機能層を超臨界流体処理に耐えられるようにすることができる。この方法では、結果的に、有機機能層のTgが140℃以上に相当する場合も含む。
尚、本発明でいうガラス転移温度Tgとは、示差走査熱量測定器(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製 高感度示差走査熱量計EXSTAR DSC6220)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K 7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度とする。後述する有機機能層は個別に塗膜形成後、測定することができる。
本発明におけるTgは実際の測定値で定義されるが、有機概念図、甲田善生・佐藤四郎・本間善夫,「新版 有機概念図 基礎と応用」,三共出版(2008)における有機性−無機性の関係を活用して、およそのTgを推定することもできる。
本発明において、有機機能層のTg140℃以上であればよいが、2層以上がTg140℃以上であることが好ましく、すべての層がTg140℃以上であることが最も好ましい。
本発明において、有機機能層を超臨界流体処理に耐えられるようにするために、有機機能層に膜強化剤を含有させることが有効である。
本発明において用いられる膜強化剤とは、有機EL素子の有機機能層を超臨界液体処理した時に発生する塗膜の損傷を改善する材料を言い、この効果を奏する材料を包含する。
発明において用いられる膜強化剤としては、有機酸のアルカリ金属塩であることが好ましい。有機酸塩の種類としては特に制限はないが、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸、酪酸塩、吉草酸塩、カプロン酸塩、エナント酸塩、カプリル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、イソフタル酸塩、テレフタル酸塩、サリチル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、アジピン酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩が挙げられ、好ましくはギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、カプロン酸塩、エナント酸塩、カプリル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、より好ましくはギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩等の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩が好ましく、脂肪族カルボン酸の炭素数が4以下であることが好ましい。最も好ましくは酢酸塩である。
有機酸のアルカリ金属塩のアルカリ金属の種類としては特に制限はないが、Na、K、Csが挙げられ、好ましくはK、Cs、さらに好ましくはCsである。有機酸のアルカリ金属塩としては、前記有機酸とアルカリ金属の組み合わせが挙げられ、好ましくは、ギ酸Li、ギ酸K、ギ酸Na、ギ酸Cs、酢酸Li、酢酸K、酢酸Na、酢酸Cs、プロピオン酸Li、プロピオン酸Na、プロピオン酸K、プロピオン酸Cs、シュウ酸Li、シュウ酸Na、シュウ酸K、シュウ酸Cs、マロン酸Li、マロン酸Na、マロン酸K、マロン酸Cs、コハク酸Li、コハク酸Na、コハク酸K、コハク酸Cs、安息香酸Li、安息香酸Na、安息香酸K、安息香酸Cs、より好ましくは酢酸Li、酢酸K、酢酸Na、酢酸Cs、最も好ましくは酢酸Csである。
膜強化剤の含有量は添加量で調整すればよく、機能層に対し好ましくは1.5〜35質量%であり、より好ましくは3〜25質量%であり、最も好ましくは5〜15質量%である。有機機能層に対する有機酸のアルカリ金属塩の作用は明らかではないが、有機化合物の配向または結晶化効果と推定される。有機機能層に対して有機酸のアルカリ金属塩を添加することによって、未添加のものに比べてせん断力が向上することを確認している。
膜強化剤の効果は、以下のようにせん断力の向上によって確認することができる。すなわち、膜強化剤を添加した有機EL素子サンプルと、膜強化剤を含有させない有機EL素子サンプルとを用意し、各々、ダイプラウインテス性サイカスNN−04型の硬度測定器(SAICAS)を用い、膜のせん断力を測定する。測定条件としては、サンプリングステップは0.2sec/pointで、ダイヤモンド製1mm幅の刃を使用し、剪断角度は45°、押圧荷重を2μN、バランス加重1μNとし、垂直速度1nm/sec、水平速度100nm/secにて切削を行い、水平方向及び垂直方向での力を記録し、水平方向及び垂直方向のせん断力とする。
本発明における膜強化機能層は、膜強化剤を添加したことで、機能層の水平方向及び垂直方向のせん断力の平均が1.2倍以上増加することが好ましく、1.3倍以上増加することがより好ましく、1.5倍以上増加することが最も好ましい。
我々は、超臨界液体処理にて有機機能層塗膜が損傷することの対策として、かかる有機酸のアルカリ金属塩が効果を有することを見出した。有機酸のアルカリ金属塩を膜強化剤として本発明に適用することは好ましい態様の1つである。
本発明において、有機機能層の少なくとも1層が膜強化剤を含有していればよいが、2層以上が膜強化剤を含有していることが好ましく、すべての層が膜強化剤を含有していることが最も好ましい。拡散性の高い膜強化剤であれば、有機機能層の少なくとも1層に添加するだけでも優れた効果を発揮する。
本発明においては、有機機能層に膜強化剤を添加する以外に、有機機能層材料に熱や放射線によって重合、架橋可能な置換基を付与しておいて、有機機能層の塗膜形成後に熱や放射線によって重合、架橋させて、超臨界液体処理での有機機能層の耐性を向上させる方法も有効である。
例えば有機機能層材料が、国際公開第2007/148649号の請求項4に記載の、反応性置換基を有する有機化合物があげられる。
熱によって重合、架橋させる場合は、ホットプレートによる加熱、マイクロウェーブの照射、赤外線ランプによる照射、加熱した不活性ガスの循環等が挙げられる。放射線によって重合、架橋させる場合は、紫外線、X線、レーザー光などの照射が挙げられる。中でも紫外線照射が調整しやすく有効であり、特に、コンバータを用いた紫外線照射装置、直流電源方式の紫外線照射装置、さらには発光ダイオード、無電極紫外線照射装置による紫外線照射は、照射エネルギーのゆらぎが小さいので、有機機能層の均一性を高める効果があって好ましい。特に好ましくは、紫外線照射と加熱処理を併用することである。
本発明において、有機機能層の少なくとも1層が、重合、架橋可能な置換基を有する材料を用いればよいが、2層以上に用いることが好ましく、すべての層に用いてもよい。
有機EL素子の電極は対をなしており、第一、第二電極と呼ぶが、本発明においては、第一、第二電極がそれぞれ陽極、陰極に対応する。
本発明において、超臨界流体処理することによって、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)に代表される従来の金属酸化物型電極層の場合、表面が超臨界流体処理の影響を受けて、有機機能層との接着性の低下によると見られる発光特性の低下が引き起こされることがわかった。
鋭意改良を検討した結果、導電性ポリマー層を有する電極層、好ましくは導電性ポリマー層とグリッドを有する電極層が超臨界流体処理への耐性を有し、発光特性の低下が防止されることを見出した。
本発明の導電性ポリマー層に用いる導電性ポリマーとしては、π共役系導電性ポリマーが好ましい。π共役系導電性ポリマーとしては、特に限定されないが、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンであることが最も好ましい。
本発明における導電性ポリマー層としてより好ましいものは、π共役系導電性ポリマーとポリアニオンとを含んで成るものである。
ポリアニオンは、アニオン性基を有する構成単位とアニオン性基を有さない構成単位とからなるものが好ましい。このポリアニオンは、π共役系導電性ポリマーを溶媒に可溶化させる機能を有するものが好ましい。また、ポリアニオンのアニオン性基は、π共役系導電性ポリマーに対するドーパントとして機能して、π共役系導電性ポリマーの導電性と耐熱性を向上させるものが好ましい。
ポリアニオンのアニオン性基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
また、化合物内にフッ素(F)を有するポリアニオンであっても良い。具体的には、パーフルオロスルホ基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)などをあげることができる。
これらのうち、スルホ基を有する化合物であると、導電性ポリマー含有層を塗布、乾燥することによって形成した後に、100℃以上200℃以下の温度で5分以上の加熱処理を施した場合、この塗布膜の洗浄耐性や溶媒耐性が著しく向上することから、より好ましい。
さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、バインダー樹脂との相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
こうした導電性ポリマーは市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした材料も好ましく用いることができる。
本発明においてグリッドとは、光透過性電極の内部抵抗を減らす目的で設置されるものであり、本発明では特に導電性ポリマー層に積層して、補助電極として用いられるものである。そのために、材料としては金属が好ましい。
金属グリッドパターンの形状は特に制限はなく、例えば、ストライプ状、格子状、あるいはランダムな網目構造であってもよいが、開口率は透明性の観点から80%以上であることが好ましい。開口率とは、金属グリッドパターンをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅100μm、線間隔1mmのストライプ状グリッドパターンの開口率は、およそ90%である。
金属グリッドパターンの線幅は、導電性および透過率の面から、10〜200μmが好ましい。細線の高さ(導電性金属層の厚さ)は、導電性、電流リーク防止、細線分布均一性の面から、0.1〜10μmが好ましい。
金属グリッドパターンを形成する方法としては、特に制限はなく、従来公知な方法が利用できる。例えば、金属微粒子を含有するインクを、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷法により所望の形状に印刷する方法によって形成できる。
別な方法としては、基材全面に金属層を形成し、公知のフォトリソ法によって形成する方法や、メッキ可能な触媒インクを所望の形状に印刷した後にメッキ処理する方法、さらに別な方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用できる。また、銀塩写真技術を応用した方法については、例えば、特開2009−140750号公報の段落番号0076−0112、および実施例を参考にして実施できる。
第一導電層の細線部の表面比抵抗は、100Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K 6911、ASTM D257、等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
本発明においては、導電性ポリマー層とグリッドを有する電極層をもちいることによって、超臨界流体処理への耐性が向上し、発光特性の低下が有効に防止できるので好ましい。
以上述べてきたように、有機EL素子の性能向上に極めて有効な超臨界流体処理への耐性を向上させるために、有機機能層のTgを140℃以上とすること、または有機機能層に膜強化剤を添加して強化処理すること、または重合性、架橋性材料を用いること、さらには、導電性ポリマー層とグリッドを有する電極を用いることが重要であることがわかる。
超臨界流体処理での重要なポイントは、超臨界流体処理後に、加圧状態から大気圧状態まで圧力を置換する際に、0.01MPa/秒〜0.5MPa/秒の速度を維持することであるが、前記の改善を施した有機EL素子であれば、超臨界流体処理の自由度が向上するので、ウェットプロセス生産や、ロールツーロール方式生産への適用が可能になるものである。
本発明における有機EL素子の基本構成について説明する。
《有機EL素子の構成》
本発明の有機EL素子は、基板上に、第一、第二電極と、両電極に挟まれた有機機能層を有するものであり、具体例としては以下を例示することができる。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
本発明の有機EL素子において、青色発光層/緑色発光層/赤色発光層を有する場合は、青色発光層の発光極大波長は430nm〜480nmにあるものが好ましく、緑色発光層は発光極大波長が510nm〜550nm、赤色発光層は発光極大波長が600nm〜640nmの範囲にある単色発光層であることが好ましい。また、これらの少なくとも3層の発光層を任意に混合して、1〜3層からなる白色発光層としたものであってもよい。更に、発光層間には非発光性の中間層を有していてもよい。本発明の有機EL素子としては白色発光層であることが好ましく、これらを用いた照明装置であることが好ましい。
なお本発明における有機機能層とは正孔注入層、正孔輸送層、発光層(青色発光層、緑色発光層、赤色発光層を含む)電子輸送層、電子注入層をいう。
本発明の有機EL素子を構成する各層について説明する。
《発光層》
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
発光層の膜厚の総和は特に制限はないが、膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、かつ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜500nmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは2nm〜200nmの範囲に調整され、特に好ましくは、10nm〜20nmの範囲である。
発光層の作製には、後述する発光ドーパントやホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により成膜して形成することができる。
本発明の有機EL素子の発光層には、ホスト化合物と、発光ドーパント(リン光ドーパント(リン光発光性ドーパントともいう)や蛍光ドーパント等)の少なくとも1種類とを含有することが好ましい。
(ホスト化合物)
本発明に用いられるホスト化合物について説明する。
ここで、本発明においてホスト化合物とは、発光層に含有される化合物の内でその層中での質量比が20%以上であり、且つ室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物と定義される。好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、または複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、後述する発光ドーパントを複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
また、本発明に用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物を1種または複数種用いても良い。
(発光ドーパント)
発光ドーパントについて説明する。
発光ドーパントとしては、蛍光ドーパント(蛍光発光性ドーパントともいう)、リン光ドーパント(リン光性ドーパント、リン光発光性ドーパントともいう)を用いることができるが、より発光効率の高い有機EL素子を得る観点からは、本発明の有機EL素子の発光層や発光ユニットには、上記のホスト化合物を含有すると同時に、リン光ドーパントを含有することが好ましい。
(リン光ドーパント)
本発明に係るリン光ドーパントについて説明する。
本発明に係るリン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、「実験化学講座7」、第4版、丸善、398頁(1992年版)の分光IIに記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントの発光は原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはリン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こりリン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
リン光ドーパントは、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
リン光ドーパントは、好ましくは元素周期表で8族〜10族の遷移金属元素を中心金属として有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
本発明において好ましいリン光ドーパントの具体例としては、特開2008−159741号公報段落番号0137〜0154の化合物、特開2008−181937号公報段落番号0105〜0110の化合物、特開2010−49818号公報に記載されている化合物1−1〜1−110、および段落番号0149〜0153の化合物を好ましく用いることができる。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
次に、本発明の有機EL素子の構成層として用いられる、注入層、輸送層等について説明する。
《電子注入層、正孔注入層》
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記の如く陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層とも言う)と電子注入層(陰極バッファー層とも言う)とがある。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。
更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5nm〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、不純物をドープしたn型半導体性の高い電子輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
本発明においては、このようなn型半導体性の高い電子輸送層を用いることがより低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
《第一電極》
本発明における第一電極は陽極であり、有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例として一般的には、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられるが、本発明においては前述のように、超臨界液体処理する場合は、導電性ポリマーとグリッドを有する電極を陽極として用いることが好ましい。
《第二電極》
一方、本発明における第二電極は陰極であり、陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。尚、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1nm〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。陰極の場合も、導電性ポリマーとグリッドを有する電極を用いることができる。
《フレキシブル基板》
有機EL素子の基板は、本発明では可撓性があり、ロールツーロール方式で連続的生産に適したフレキシブル基板である。特に樹脂フィルムが好ましい。
本発明の有機EL素子に用いることのできるフレキシブル基板としては、樹脂等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明なフレキシブル基板としては、透明樹脂フィルムを挙げることができる。
好ましい透明樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
特に好ましい透明樹脂フィルムとしては、そのTgが80℃以上である樹脂フィルムが好ましく、特に100℃以上であることが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドである。前記有機機能層のTgとの関係で、Tg値の差が60℃以内、好ましくは40℃以内であることによって、超臨界流体処理への耐性が向上するとともに、有機EL素子の屈曲による膜剥がれや高温雰囲気下での寿命の向上に貢献する。
《封止》
本発明に用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されておればよく、凹板状でも平板状でもよい。また透明性、電気絶縁性は特に問わない。
具体的には、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。
本発明においては、素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。
更には、ポリマーフィルムは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−6g/(m2・24h)以下、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m2・24h・MPa)以下、のものであることが好ましい。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
尚、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また、有機層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。
この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素分子等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。
更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
本発明においては、前記超臨界流体処理する工程から封止工程まで、含水率1ppm以下の雰囲気下で維持されることが好ましい。
有機EL素子の製造方法について述べる。
本発明の有機EL素子の製造方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の製造方法を説明する。基本的には、基板上に、第一電極を形成する工程、Tgが140℃以上の有機機能層を形成する工程、超臨界流体処理する工程、第二電極を形成する工程、からなることが好ましい。
まず適当な基板上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ陽極を作製する。
次に、この上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層等の有機化合物薄膜を形成させる。
これら各層の形成方法としては、前記の如く蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、本発明においては材料を溶媒に溶解または分散して、塗布法により成膜するウェットプロセスが好ましい。具体的なウェットプロセスとしてはスピンコート法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法等が好ましい。また本発明は、材料や溶媒中に混入している水分や酸素分子を有効に除去するので、ウェットプロセスにて効果が大きい。
有機EL材料を溶解または分散する溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。これらを二種以上混合して用いてもよい。また分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは、50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより所望の有機EL素子が得られる。
有機EL素子、各有機機能層の膜厚は、0.05〜0.3μm程度必要であり、好ましくは0.1〜0.2μm程度である。
また、本発明では、上記の各機能層において、反応性基をもつ有機化合物(反応性有機化合物)を用いてもよい。反応性有機化合物を用いる層としては特に制限はなく、各層に用いることができる。それぞれ各機能層に反応性基をもつそれぞれの機能をもつ有機材料を用いればよい。
反応性有機化合物塗布層を形成後基板上で反応させ、有機分子によるネットワークポリマーを形成させ、硬化させることができる。ネットワークポリマーが生成することで、構成層のTgを上昇させることができるので好ましい。
また、素子使用中の活性ラジカルを用いて分子の共役系の切断または生成を伴う反応を調整することにより、有機EL素子の発光波長を変えたり、特定波長の劣化を抑制すること等も可能である。
一方、製造面では、例えば、塗布により積層する工程の場合では、下層が上層の塗布液に溶解しないことが好ましいため、下層を樹脂化し溶剤溶解性を劣化させることで、上層塗布を可能とすることができる。例えば、正孔輸送層をこのように架橋した有機層として樹脂化することで、上層として発光層を塗布する際に下層の溶解、又浸透を防止することができる。
用いることのできる反応性基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、エチニル基、イソシアネート基、エポキシ基等が代表的には挙げられる。
以上のようにして、有機機能層のTgを140℃以上にしてから、前述の超臨界流体処理を施すことが好ましい。超臨界流体処理を施した後は、必要に応じ前述の電子注入層を設け、さらに対となる電極の陰極を設ける。
本発明の有機EL素子の製造方法の特徴は、大気圧環境下でフレキシブル基板に処理を行う大気圧プロセス工程と、高圧環境下でフレキシブル基板に処理を行う高圧プロセス工程と、真空環境下でフレキシブル基板に処理を行う真空プロセス工程とから構成され、高圧プロセス工程が超臨界流体処理する工程であることである。さらに好ましくは前記工程のうち、大気圧プロセス工程と高圧プロセス工程との間に、及び高圧プロセス工程と真空プロセス工程との間に、それぞれの工程のプロセス圧力を置換するプロセス圧力置換工程を有する、有機EL素子の製造方法である。
公知のプロセス圧力置換工程は圧力置換装置を用いておこなうことができる。圧力置換装置には2通りある。第一は、例えば特開平8−27574号公報に示されるように、それぞれ段階的に気圧が調整された複数の疑似密閉空間が連結されている中を、帯状フレキシブル基板(ウェブ)が通過していくものであり、ウェブの搬送速度を変えることにより、圧力置換の速度を変えることができる。第二は、例えば特開2010−62012号公報に示されるように、挟持型ゲートバルブを備えたチャンバー内において、ウェブを導入した状態でゲートバルブがこれを挟持して、これにより疑似密閉空間を形成したのち、これをポンプで調整することで、プロセス圧力を変換することにより行われるもので、ポンプによって直接に圧力置換の速度を変えることができる。
本発明では、大気圧プロセス工程(大気圧環境)から高圧プロセス工程(高圧環境)へ、また逆に高圧環境から大気圧を経て真空環境に導入するプロセス圧力置換工程として、挟持型ゲートバルブを用いた圧力置換装置が好ましい。ウェブの長手方向の一部をその全幅に亘って、上下からゲートバルブを用いて挟み込んだ後、圧力調整して、ゲートバルブによって形成される空間(チャンバー)の圧力を確保するクランプ方式に基づくものである。その際にゲートバルブによって挟持された部分では搬送が止まり、搬送はここでは断続的になるためアキュームレータを併用して用いることが好ましい。搬送の停止時には、アキュームレータにウェブを蓄積し、ゲートバルブを開いたときにこれを次工程の例えばより高圧側へ送り込む方式として、連続的に搬送を行うことができる。
本発明の製造方法において、正孔注入層(大気圧プロセス)、正孔輸送層(大気圧プロセス)、発光層(大気圧プロセス)、電子輸送層(大気圧プロセス)、プロセス圧力置換工程にて加圧し、超臨界流体処理(高圧プロセス)、プロセス圧力置換工程にて減圧して大気圧に戻し、電子注入層と陰極形成(真空プロセス)、プロセス圧力置換工程にて加圧し、大気圧に戻すことを基本とする。
超臨界流体処理に向かうプロセス圧力置換工程での加圧は、常圧の窒素ガスまたは不活性ガス雰囲気に対して、超臨界流体処理が二酸化炭素流体である場合は、二酸化炭素ガスを注入して加圧することが好ましい。超臨界流体処理後は、ゆっくり減圧して大気圧まで戻し、さらに減圧して真空状態にして、電子注入層と陰極を形成し、その後窒素バスまたは不活性ガスにて常圧に戻し、封止が行われる。
本発明において、前記大気圧プロセス工程が、0.1MPa程度であり、超臨界流体処理の高圧プロセス工程が5MPa以上であり、真空プロセス工程が1×10−3Pa以下である。
試料を超臨界流体から引き上げて、加圧状態から、0.01MPa/秒〜0.5MPa/秒の速度で大気圧までゆっくり戻すことにより、有機機能層や電極に影響を与えることなく、水分や酸素分子を有効に低減することができる。
(用途)
本発明の有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。発光光源として、例えば、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特にカラーフィルタと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ製膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよい。
発光光源としては家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されず、広く応用することができる。
《ロールツーロール:製造ライン》
次に、ロールツーロール方式での製造について説明する。
シート方式に比べて、ロールツーロール方式は高速連続生産の点で有利であり、生産量の増大とコストダウンを達成する。
基本的には、ロール状に巻かれた帯状フレキシブル基板(ウェブ)を繰り出し、該ウェブ上に、少なくとも第一電極を形成する工程、Tgが140℃以上の有機機能層を形成する工程、超臨界流体処理する工程、電子注入層を形成する工程、第二電極を形成する工程によって、本発明の好ましい有機EL素子を製造できる。この全工程を連続した1つの製造ラインで製造しても良いし、該工程のうち、連続する少なくとも2つの工程を有する第一の製造ラインで製造した後に、一旦ロール状に巻き取り、残りの工程を有する第二の製造ラインで製造する製造方法であってもよい。
図1は有機EL素子を作製する工程の一例を示す模式図である。なお、本図で示す製造工程の説明は、有機EL素子の一例として、帯状フレキシブル基板上に第一電極、正孔輸送層、発光層、電子注入層、第二電極、封止フィルムを貼着の順番に各層が形成されている照明用(面発光)有機EL素子の場合について行う。本図では、第一電極形成工程は省略してある。
図2中、2aは有機EL素子の製造工程を示す。製造工程2aは、帯状フレキシブル基板の供給工程3と、正孔輸送層を形成する正孔輸送層形成工程4と、発光層を形成する発光層形成工程5と、電子輸送層形成工程6からなっている。
この例では電子輸送層形成後、一旦、帯状フレキシブル基板は巻き取り部7において巻き取られる。
図1中、製造工程2bにおいて、製造工程2aにおいて一旦巻き取られた、電子輸送層形成後の帯状フレキシブル基板はさらに、帯状フレキシブル基板の供給部8から、超臨界流体処理する工程9、電子注入層を形成する電子注入層形成工程10と、さらに、第二電極を形成する第二電極形成工程11と、封止層を形成する封止層形成工程12を経て有機EL素子として巻き取られ、その後断裁され個別の素子が形成され電気回路が実装され有機エレクトロルミネッセンスパネルが形成される。
本図で示される製造装置は、供給工程3から発光層形成工程5さらに電子輸送層形成工程6迄を連続して大気圧条件下で行い、一旦巻き取った後、超臨界流体処理する工程9では高圧条件下で行い、電子注入層形成工程10から第二電極形成工程11迄を減圧条件下で行う場合を示している。また、封止層形成工程12は減圧条件あるいは不活性ガス充填条件である。
帯状フレキシブル基板の供給工程3では、繰り出し部301と表面処理部302とを有している。繰り出し部301では、例えば、ガスバリア膜と第一電極を含む陽極層とがこの順番で既に形成された帯状フレキシブル基板Aが巻き芯に巻き取られたロール状態で供給される。3a1は帯状フレキシブル基板の元巻きロールを示す。
表面処理部302は洗浄表面改質処理装置や、帯電防止手段を有しているがここでは帯電防止手段は省略されている。洗浄表面改質処理装置は、有機機能層塗布前に供給工程3から送られる帯状フレキシブル基板Aの第一電極(不図示)表面の洗浄改質を行うため、例えば、低圧水銀ランプ、エキシマランプ、プラズマ洗浄装置等を使用し、例えば、低圧水銀ランプの場合、波長184.2nmの低圧水銀ランプを、照射強度5〜20mW/cm2で、距離5〜15mmで照射する。
また、帯電防止手段は、非接触式除電防止装置、接触式除電防止装置等からなり、例えば、非接触式のイオナイザーや、除電ロールまたはアース接続した導電性ブラシ等を用いて行われる。非接触式帯電防止装置は帯状フレキシブル基板Aの第一電極面側に使用し、接触式帯電防止装置帯状フレキシブル基板Aの裏面側に使用することが好ましい。
図ではこれら細部は省略されているが、帯状フレキシブル基板Aはロールから巻き出されて、正孔輸送層形成工程に入る。
正孔輸送層形成工程4においては、帯状フレキシブル基板Aを保持するバックアップロール4aと、バックアップロール4aに保持された帯状フレキシブル基板Aに正孔輸送層形成用塗布液を塗布する第一湿式塗布機4bと、帯状フレキシブル基板A上の第一電極上に形成された正孔輸送層の溶媒を除去する第一乾燥装置4cと、溶媒が除去された正孔輸送層を加熱する第一加熱処理装置4dとを有している。ここで帯電防止手段を設けてもよいが図では省略されている。
第一湿式塗布機4bによる正孔輸送層形成用塗布液は、例えば、既に形成されている第一電極の片方の端部の一部を除いて第一電極上に塗布される。
第一湿式塗布機4bは、パターン化されて形成されている第一電極のパターンに合わせて第一電極上に発光層をパターン塗布するため、例えば、インクジェット方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、マスクを用いたスプレー塗布方式等に使用する各種塗布装置を使用することが可能である。
第一乾燥装置4cは、加熱された気流による溶媒の除去を行う乾燥処理装置であり、例えば、スリットノズル形式の噴出し口から成膜面に向け高さ100mm、噴出し風速1m/s、幅手分布5%、乾燥温度100℃で実施する。
加熱処理装置4dは、帯状フレキシブル基板の裏面側から正孔輸送層を裏面伝熱方式で加熱する、例えば、複数の例えば200℃の加熱ローラを有する裏面伝熱型の加熱処理装置であり、溶媒除去後、温度200℃のヒートロールを密に並べたロール間から吸引して基板が吸着搬送され、裏面伝熱による加熱で熱処理を行うものである。この加熱処理により膜の平滑性や残留溶媒の除去、また、塗膜の硬化等を行う。
次いで、発光層形成工程5においては、バックアップロール5aに保持された正孔輸送層を有する帯状フレキシブル基板に発光層形成用塗布液を塗布する第二湿式塗布機5bと、正孔輸送層上に形成された発光層の溶媒を除去する乾燥装置5cと、溶媒が除去された発光層を加熱する加熱処理装置5dとを有している。ここでも前記同様の帯電防止手段を用いてよいが省略されている。
第二湿式塗布機5bは第一湿式塗布機4bと同じ型式のものが好ましい。
乾燥装置5cは乾燥装置4cと同じ構造をしている。加熱処理装置5dは第一加熱処理装置4dと同じ構造をしており、正孔輸送層上に形成された、発光層を帯状フレキシブル基板の裏面側から裏面伝熱方式で加熱するようになっている。
発光層形成工程5後に次いで電子輸送層塗布工程6にはいる。
電子輸送層形成工程6においも、バックアップロール6aに保持された正孔輸送層、発光層を有する帯状フレキシブル基板に電子輸送層形成用塗布液を塗布する第三湿式塗布機6bと、発光層上に形成された電子輸送層の溶媒を除去する乾燥装置6cと、溶媒が除去された電子輸送層を加熱する加熱処理装置6dとを有している。また、同様に帯電防止手段を用いてよい。
本図に示される、正孔輸送層形成工程4、発光層形成工程5また電子輸送層形成工程6は湿式塗布装置、乾燥装置、加熱処理装置がそれぞれ1台の場合を示しているが、必要に応じて増加することが可能となっている。また、正孔注入層や電子注入層等の有機機能層をさらに増やす場合は、例示した正孔輸送層形成工程4、発光層形成工程5、電子輸送層形成工程6と同様に湿式塗布装置、乾燥装置、加熱処理装置を備えた工程で、有機機能層の塗膜を形成することが好ましい。
巻き取り部7で有機機能層各層が形成された帯状フレキシブル基板を、有機機能層側を内側にして巻き芯に巻き取りロール状の帯状フレキシブル基板7g(以下、帯状フレキシブル基板B)とする。
また、巻き取り前に、形成した有機機能層について、その不要部を、各層を溶解できる溶媒等を用いて拭き取る工程を設けてもよい。拭き取り工程としては、例えば、特願2008−17776号に記載されたベルト状の拭き取り装置、またブレードを用いた装置等があるが、これらを用い、予め帯状フレキシブル基板上に形成されたアラインメントマークの位置に従って拭き取りを実施する。連続的に拭き取る方法が好ましく、搬送を止めて幅手方向の拭き取りを実施するときは、前後にアキューム機構等を設けて有機機能層の塗布から巻き取りまで連続して行うようにする。
以上で、電子輸送層迄が帯状フレキシブル基板上に形成される。帯状フレキシブル基板Bは、次いで、超臨界流体処理する工程9にはいる。
電子輸送層を形成したのち、一旦巻き取らず、連続して製造工程2bに送り、超臨界流体処理する工程9を行ってもよい。このときは、この巻き取り部は設けなくともよく、有機機能層の塗布形成速度と、電子注入層の形成時の、断続的な搬送を調整するための緩衝領域としてアキューム機構を、この間に設けることで、連続して超臨界流体処理する工程9に送ることができる。
図2中、製造工程2bにより、一旦巻き取られた帯状フレキシブル基板に、超臨界流体処理、および電子注入層、第二電極の形成、さらに封止を行う。
超臨界流体処理する工程9は高圧プロセス工程であり、電子注入層形成工程10と、第二電極を形成する第二電極形成工程11、については、真空プロセス工程であり、例えば、ここでは、電子注入層形成工程10、また第二電極形成工程11を真空蒸着により行うことで説明する。
製造工程2bにおいて、供給部8から、電子輸送層形成後の帯状フレキシブル基板Bは、前記高圧下において行われる超臨界流体処理する工程9にはいる。超臨界流体処理する工程9は高圧下で行われるが、供給部8については大気圧であるため、ここにはプロセス圧力置換工程が必要である。
プロセス圧力置換工程とは、大気圧プロセス工程と高圧プロセス工程と真空プロセス工程の3者の間における圧力を相互に置換するプロセスである。本発明においては、プロセス圧力置換工程は、挟持型ゲートバルブを備えたチャンバーを用い、チャンバー内に帯状フレキシブル基板を導入した状態でゲートバルブがこれを挟持して疑似密閉空間を形成して、この空間から真空プロセスの場合は真空ポンプで排気することで挟持型ゲートバルブにより密閉された空間を減圧としこれを維持することにより構成される。逆に高圧プロセスの場合はポンプで加圧することで挟持型ゲートバルブにより密閉された空間を加圧状態としこれを維持することにより構成される。
プロセス圧力置換工程は、基本的には、挟持型ゲートバルブとこれにより開閉されるチャンバー(バッファー室)からなっており、挟持型ゲートバルブにより密閉したチャンバー内の圧力をポンプにより減圧または加圧して調整することからなるため、帯状フレキシブル基板の通過搬送されるチャンバー(バッファー室)入り口と出口に挟持型ゲートバルブが設けられている。
製造工程2bにおいて、供給部8から、帯状フレキシブル基板Bがこの挟持型ゲートバルブを備えたバッファー室を介して超臨界流体処理する工程9にはいる。この例では、バッファー室として挟持型ゲートバルブG1、G2、G3をそれぞれ備えたチャンバーが、二つ連続して設けられ(Ch1、Ch2)、多段階でプロセス圧力を調整している。このバッファー室においては、超臨界流体処理する工程9において、高圧の確保のためには、バルブ位置において挟持型ゲートバルブを閉じ、フレキシブル基板の搬送を停止させて、加圧するため、連続で巻き出され搬送される帯状フレキシブル基板Bの搬送と停止をバッファーするための、アキューム機構を、チャンバー内部に備えている。
アキューム機構は、概略図で示したように、一定の張力をかけるためのダンサーローラで構成される。
図2中、2bで示される工程においては、プロセス圧力置換工程は挟持型ゲートバルブG1、チャンバーCh1、挟持型ゲートバルブG2、チャンバーCh2および挟持型ゲートバルブG3で構成され、二段階で加圧度の調整が行えるようにしている。挟持型ゲートバルブG1〜G3が、チャンバーCh1の入り口、Ch1とCh2の連結部、またチャンバーCh2の出口側、即ち、超臨界流体処理する工程9の入り口に連結するよう備えられている。勿論チャンバーCh1、チャンバーCh2は独立にポンプで排気することができる。またここでは2段階の構成であるが、必要とされる加圧度、また、効率的に搬送を行うため3段階以上、多段階設けてもよい。
供給部から巻き出されたフレキシブル基板は、開いた挟持型ゲートバルブG1を介してチャンバーCh1に搬送され、一方で挟持型ゲートバルブG2は閉じているので、フレキシブル基板はアキューム機構によって、チャンバーCh1内に蓄積される。
所定量のフレキシブル基板が搬送されたところで、挟持型ゲートバルブG1が閉じ、供給部から巻き出されるフレキシブル基板の搬送が停止すると共に、挟持型ゲートバルブG1、G2で閉じられたチャンバーCh1が加圧され高圧となる。またその際、チャンバーCh2(挟持型ゲートバルブG3が閉じられた状態で)も加圧され高圧に保たれている。チャンバーCh1を加圧し、高圧状態になったところで、挟持型ゲートバルブG2が開き、高圧状態のチャンバーCh2に所定量のフレキシブル基板が搬送される。また、所定量搬送されたところで、また挟持型ゲートバルブG2は閉じ、チャンバーCh2に可撓性支持体がチャンバーCh2内にも設けられたアキューム機構により所定量蓄積される。次いで、超臨界流体処理する工程9(高圧に加圧されている)との連結部を構成する挟持型ゲートバルブG3が開き、次にチャンバーCh2内に蓄積された所定量のフレキシブル基板が、超臨界流体処理する工程9に送り込まれる。ここで、また挟持型ゲートバルブG3を閉じて、搬送を停止し、超臨界流体処理が実施される。この間、チャンバーCh1からは、挟持型ゲートバルブG2を開くことで、所定量のフレキシブル基板がチャンバーCh2に搬送される。
この間チャンバーCh1、Ch2は所定の圧力を保つように維持される。
超臨界流体処理する工程9における有機機能層の処理は、容器9b中の超臨界流体9cに所定時間浸漬させることで連続的に搬送して超臨界流体処理されることが好ましい。容器9bと気密ローラー9dと浸漬ローラー9aとで気密された超臨界流体cの中を所定時間搬送する事により、超臨界流体処理することができる。超臨界流体処理の前後にアキューム機構をさらに設けることで、ゲートバルブでの停止を好ましく吸収することができる。
チャンバーCh1から、挟持型ゲートバルブG2を開くことにより所定量のフレキシブル基板が搬送されたのち、挟持型ゲートバルブG2は閉じ、さらに、挟持型ゲートバルブG1が開いて、チャンバーCh1の減圧は解除され、所定量のフレキシブル基板をアキューム機構付きのチャンバーCh1内に搬送する。所定量フレキシブル基板がチャンバー内に搬送された後、再び挟持型ゲートバルブG1は閉じて、供給部からの搬送は一旦停止し、再度チャンバーCh1をポンプで加圧し高圧とする。
ここで、チャンバーCh1、またチャンバーCh2は、ポンプでそれぞれ加圧することができ、チャンバーCh1はチャンバーCh2と供給部8(大気圧)とを連結し、また、チャンバーCh2はチャンバーCh1と超臨界流体処理との間に設置されており、段階的に、圧力を調整できるようになっている。
各チャンバーに設けられたアキューム機構は、適宜、チャンバーCh2から電子注入層形成部9への、またチャンバーCh1からチャンバーCh2へのフレキシブル基板の搬送を円滑に行えるようバッファー機能を有する。
このようにして繰り返し、所定量ずつ搬送、アキュームの各動作を所定のシーケンスを組んで行うことで、プロセス圧力を大気圧から高圧状態に円滑に移行させることができる。
ここでは供給部8から、直接、プロセス圧力置換工程に入るが、供給部とプロセス圧力置換工程の間に同様のアキューム機構を設置すれば、搬送を断続で行わずに、供給部8からの巻き出しを連続して行うことができる。
高圧状態から、大気圧に戻す時は加圧と逆のやり方をすれば良い。チャンバーCh3を超臨界流体処理する工程9と同じ圧力に達した後、ゲートバルブG4を開け、超臨界流体処理したウェブをチャンバーCh3に搬送し、その後ゲートバルブG4を閉じ、所定の速度で減圧することができる。また、アキュームの数、またはチャンバーを増設して減圧をチャンバーCh4以降で行うこともできる。
電子注入層形成工程10、第二電極形成工程11は真空プロセスであり、前述したプロセス圧力置換工程を経て、真空状態にすることができる。
電子注入層形成工程10、また、第二電極形成工程11は、同じ真空プロセス工程であり、ここでは、蒸着速度の違いを調整できるよう、アキューム機構を介して同じ真空槽内にそれぞれ、電子注入層形成工程、第二電極形成工程11となる二つの蒸着部が設けられている。チャンバーCh4から挟持型ゲートバルブG6を介して帯状フレキシブル基板Bが搬送されると、電子注入層形成工程10において、電子注入層形成部位が支持体ホルダーに固定され静止すると、挟持型ゲートバルブG6が閉じ、蒸着原料ボートが加熱されマスク蒸着が行われる。電子注入層形成工程10では、電子注入層形成部において、電子輸送層上に電子注入層が形成され、ここで10bは蒸着装置の支持体ホルダー、10aは蒸発源容器を概略的に示している。
第二電極形成工程11においても、その形成部位が支持体ホルダーに固定され静止すると、第二電極形成部(蒸着装置)において、電子注入層上に同様に第二電極が形成される。蒸着装置の11bは支持体ホルダー、11aはそれぞれ蒸発源容器をそれぞれ略図で示している。
ここで、電子注入層が形成された帯状フレキシブル基板Bは、アキューム機構を介して、第二電極形成工程11へ送られる構成となっている。
第二電極が形成された帯状フレキシブル基板は、引き続き、封止層形成工程12に送られる。
封止層形成工程12は、有害成分を最小に保つため、希ガスあるいは窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で封止することが好ましく、そのため第二電極形成工程の後、封止層形成工程12を連続で行うには、同様のプロセス圧力置換工程を用いる。
即ち、挟持型ゲートバルブG7さらにG8が閉じた状態で減圧・高真空に排気したチャンバーCh5に、蒸着工程である第二電極形成工程11から挟持型ゲートバルブG7をあけて、蒸着により第二電極が形成されたフレキシブル基板を所定量搬送したのち、挟持型ゲートバルブG7を閉じる。挟持型ゲートバルブG8は搬送時には閉じているが、内部のアキューム機構によりチャンバーCh5内には第二電極が形成されたフレキシブル基板を所定量蓄積する。次に、挟持型ゲートバルブG9、G8で閉じられ予め減圧に排気されたチャンバーCh6との連結部の挟持型ゲートバルブG8を開いて、フレキシブル基板を所定量チャンバーCh6内に蓄積する。
次いで、挟持型ゲートバルブG8を閉じた後、挟持型ゲートバルブG9を開いて、例えば窒素ガス雰囲気下に保たれた封止層形成工程12に、所定量の、第二電極まで形成された帯状フレキシブル基板Bを送る。この状態ではチャンバーCh6中は窒素雰囲気となる。所定量の帯状フレキシブル基板が封止層形成工程12に送られた後、再び挟持型ゲートバルブG9を閉じ(搬送停止)、再度ポンプで排気することで、チャンバーCh6を真空引きによって、減圧状態とする。
このように所定量ずつ、断続的に搬送することで、電子注入層形成工程10および第二電極形成工程11におけるプロセス圧力を真空に保ちつつ、プロセス圧力が大気圧である、フレキシブル基板供給部から、ロールツーロールで、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造を行うことができる。
封止層形成工程12は、封止フィルム貼着工程であり、封止フィルム貼着工程においては、挟持型ゲートバルブG9を通して帯状フレキシブル基板Bが所定量供給されるときに、帯状フレキシブル基板Bに、第二極上に接着剤を塗工する塗工装置により接着剤が塗工され、圧着ロール12b2で構成される貼着部において、封止フィルムと圧着され、さらに硬化処理部(図では省略されている)により硬化を受けて密封接着・封止される。この間帯状フレキシブル基板Bおよび封止フィルムは所定の量、搬送されるが、挟持型ゲートバルブG10は閉じており、窒素雰囲気は維持されたまま、アキューム機構により搬送が吸収される。所定量、封止フィルムがラミネートされた後、搬送を停止し、挟持型ゲートバルブG9が閉じられた後に、挟持型ゲートバルブG10が開き、封止フィルム貼着工程12は、開放となり、所定量の封止フィルムによりラミネートされた封止処理された有機EL素子が、取り出される。所定量を取り出した後、再び、挟持型ゲートバルブG10は閉じて、再び、窒素充填が行われ、窒素雰囲気が回復する。
接着剤の塗工はこの例では帯状フレキシブル基板Bの第二電極上に塗工されるが、封止フィルム上に塗工されてもよい。
なお、硬化処理部は、例えば紫外線ランプ等からなり、光硬化性接着剤等を用いたとき紫外線の照射のために配置される。
封止層形成工程12は、上記では窒素雰囲気の大気圧プロセス工程として説明したが、例えば真空中において封止を行ってもよい。この場合も、挟持型ゲートバルブを備えた(複数の)チャンバーからなるプロセス圧力置換工程により、同様の方法でコントロールすることができる。
封止層形成工程12の後は、巻き取り部により封止の終了した有機EL素子が形成され封止フィルムが貼着された帯状フレキシブル基板は一旦巻き取られてもよい。
巻き取られたロール状の帯状フレキシブル基板C(照明用(面発光)有機EL素子)は、性能維持、ダークスポット(未発光部分)等を考慮し、酸素濃度1〜100ppm、水分濃度1〜100ppmの環境下に保管することが好ましい。
また、巻き取らずに、封止フィルム貼合工程に続き、連続可撓性フィルムに作製された有機エレクトロルミネッセンス素子を製品サイズに断裁する連続可撓性フィルム断裁工程を行ってもよい。図2において13は、断裁工程を示す。打ち抜き断裁機13aを用いて、PETに付けられたアラインメントマークを検出し、アラインメントマークの位置に従って製品サイズにカッターによって打ち抜き断裁する。13bは打ち抜き断裁機を模式的に表す。有機EL素子が打ち抜かれた後の連続可撓性フィルムはその後巻き取り機でロール状に巻き取られる。
次に、以上においてプロセス圧力置換工程に用いた挟持型ゲートバルブについて説明する。
コンダクタンス型真空バルブの代表的なものとしては、ニップロールを多段に設置し、この部分のコンダクタンスにより真空を得る仕組みのものが古くより研究されているが、多くのものは加工面への接触を厭わない製品ラインへの適用が多い。有機ELのように加工面への接触が問題となる製品のラインへ適用する場合は、非接触状態を維持しながらも間隙をできる限り狭くする必要があり、かつ、蛇行等による加工面損傷をできる限り抑制した高精度の搬送技術も同時に必要となる。
本発明において用いる挟持型ゲートバルブは、フィルムの全幅あるいは一部をバルブでクランプする方式が好ましい。より詳しくは、真空側と大気側との間に位置する開口を弁体により開閉する真空ゲートバルブであって、弁体は変形可能な輪状の弾性弁体であり、弾性弁体を駆動するアクチュエータにより変形させ開口の開閉を行う構成である。弾性弁体は上部弁部材および下部弁部材より構成され、駆動アクチュエータにより互いに逆方向に移動する上部押え部材および下部押え部材を有し、上部押え部材は上部弁部材に接続され、下部押え部材は下部弁部材に接続されている構成であり、さらに、弾性弁体は、ゴムから構成される。なお、弾性体の材質はゴムが望ましいが、ゴムの中でも気体透過率の低いフッ素ゴムが適している。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
(実施例1)
幅700mm、厚さ180μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の両面に、大気圧プラズマ放電処理法で、酸化珪素からなる低密度層、中密度層、高密度層、中密度層のユニットを3ユニット積層して、それぞれ総膜厚90nmの透明ガスバリア層を形成した。
JIS K 7129−1992に準拠した方法により水蒸気透過度を測定した結果、1×10−6g/(m2・24h)以下であった。
JIS K 7126−1987に準拠した方法により酸素透過度を測定した結果、1×10−3ml/(m2・24hr・MPa)以下であった。
<試料101の作成>
(ITO陽極の作成)
前記PETフィルムの一方の面に、ロールツーロールの真空チャンバー内に元巻きを導入し、スパッタ装置を用いて、アルゴン雰囲気下でITO膜を130nm成膜して、陽極としての透明導電膜を形成した。このITO膜の表面比抵抗は、40Ω/□であった。
《正孔注入層の作製》
第一電極である陽極が形成された試料の表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)の水分を重水に置き換えて、アセトニトリルを少量添加した溶液を準備した。
次に塗布機として、特開2009−268975号公報の図6(a)に示される、スリットから連続して塗布液を吐出する前計量型の塗布装置(スリットコーター)を用いて、搬送速度3m/分で塗布後、乾燥装置ではスリットノズル形式の吐出口から成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度120℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理装置により温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、乾燥後の厚みが30nmの正孔注入層を形成した。
《正孔輸送層の作製》
次に、前記正孔注入層の上に、下記化合物HT−1(Tg97℃)2.0gをアセトニトリル400mlに溶解した正孔輸送層用塗布液を、窒素雰囲気下、JIS B 9920に準拠し、測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppm以下の条件で、前記と同様のスリットコーターにて塗布した。塗布後、基板表面温度150℃で30分間加熱乾燥し、乾燥膜厚20nmの正孔輸送層を設けた。
《発光層の作製》
次に、前記正孔輸送層の上に、発光層用塗布液として、下記Host−1(Tg132℃)4.0g、D−1を0.60g、D−2を0.08g、D−3を0.10gを、トルエン400gに溶解し、正孔輸送層の作製と同じ条件下で同様のスリットコーターにて塗布した。塗布後、基板表面温度120℃で30分加熱し、乾燥膜厚40nmの発光層を得た。
《電子輸送層の作製》
次に、前記発光層の上に、電子輸送層用塗布液として、下記ET−1(Tg114℃)3.0gをアセトニトリル400gに溶解し、正孔輸送層の作製と同じ条件下で同様のスリットコーターにて塗布した。塗布後、基板表面温度120℃で30分加熱し、乾燥膜厚30nmの電子輸送層を設けた。
<試料102〜104の作成>
次に、試料101の、HT−1をHT−2(Tg146℃)に、Host−1をHost−2(Tg143℃)に、ET−1をET−2(Tg195℃)に、それぞれ同等モル量で置き換えた以外は同様にして、試料102を作成した。なお、試料102の発光層のTgは140℃以上であった。
さらに、試料101の、HT−1をHT−3に、ET−1をET−3に、それぞれ同等モル量で置き換えた以外は同様にして、試料103を作成した。ただし、正孔輸送層塗設後に、130℃で基板を加熱しながら無電極方式の紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製、Light Hammer6)を用いて紫外線を50秒間照射し光重合を行った。また電子輸送層塗設後にも、同様に紫外線照射処理を行った。
さらに、試料101の電子輸送層形成時に、膜強化剤として酢酸セシウム0.70gを、電子輸送層用塗布液中に添加した以外は同様にして、試料104を作成した。
《超臨界流体処理》
前記、電子輸送層まで形成済みの試料101〜104を実験用に150mm×150mmのサイズに裁断し、圧力置換装置(図2)に入れて大気圧から加圧加熱状態(8.0MPa、35℃)とし、超臨界二酸化炭素流体に浸漬し、引き上げた後に、加圧加熱状態から常温大気圧状態へと戻した。
超臨界処理する工程で有機機能層を有するフレキシブル基板は超臨界流体処理される。図2を用いて超臨界流体処理を説明する。図2は圧力置換装置の一例を示す模式断面図である。前記、電子輸送層まで形成済みの試料を実験用に150mm×150mmのサイズに裁断し、ゲートA201を開け、圧力調整室203内のホルダー204に収納する。ゲートA201を閉じた後、バルブA205とバルブA205に連結された図示されていないポンプで減圧加圧を繰り返し、窒素ガスで大気圧から加圧加熱状態(8.0MPa、35℃)としたあと、ゲートB202をあけ、図示されていないポンプでバルブB206を介して加圧された処理室207(8.0MPa、35℃)内の処理器211にアーム208上のハンド209を操作して試料を格納し、処理器211のふたを閉じた。その後、ボンベ217から導入された二酸化炭素を加圧器212で加圧して(8.0MPa、35℃)、バルブD216を介して処理器211内に超臨界流体210として導入し、試料を所定時間浸漬した。その後バルブC215、減圧機213を操作して一定の速度で減圧した。この際処理室も同様に減圧した。大気圧に戻したあとでアーム208、ハンド209を操作して、試料を処理器211から外部にとりだした。
この時、加圧状態から大気圧状態までの圧力変化を、1.0MPa/秒の速度で実施したものを条件Aとし、その条件で超臨界流体処理された試料を101A〜104Aとし、0.2MPa/秒の速度で実施したものを条件Bとし、その条件で超臨界流体処理された試料を101B〜104Bとした。
《電子注入層、および、陰極の作製》
電子輸送層まで設けて、超臨界二酸化炭素流体処理した試料101A〜104A、および101B〜104Bを、大気曝露せずに含水率1ppm以下の窒素雰囲気下に置いた後、蒸着機に移動し、約4×10−4Paまで減圧した。
フッ化カリウムおよびアルミニウムをそれぞれタンタル製抵抗加熱ボートに入れ、蒸着機に取り付けておき、先ず、電子注入層形成として、フッ化カリウムの入った抵抗加熱ボートに通電し加熱し、基板上にフッ化カリウムからなる電子注入層を3nm設けた。続いて、陰極形成として、アルミニウムの入った抵抗加熱ボートに通電加熱し、蒸着速度1〜2nm/秒でアルミニウムからなる膜厚100nmの陰極を設けた。
《封止》
陰極までを作成した各試料を、大気圧下、含水率1ppm以下の窒素雰囲気下で、JIS B 9920に準拠し、測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppm以下の大気圧工程へ移し、封止工程において、厚さ100μmのアルミ箔の片面に熱硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ30μmで塗設してある封止部材を、素子の第1電極、第2電極の引き出し電極の端部が外にでるように、封止部材の接着剤面と素子の有機機能層面を連続的に重ね合わせ、ドライラミネート法により接着を行った。
なお、陽極、陰極からの引き出し配線等の形成に関する記載は省略してある。
<評価>
得られた有機EL素子試料101A〜104A、および101B〜104Bについて、含水率、含酸素分子率を前記「TOF−SIMS」のプロファイル解析の方法によって得た。
また有機EL素子試料101A〜104A、および101B〜104Bについて、発光効率、発光寿命、駆動電圧を求めた。さらに、調光時の色度変動、パルス駆動安定性についても評価した。
(発光効率)
有機EL素子試料を室温(約23〜25℃)下、2.5mA/cm2定電流を印加したときの発光輝度を、CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定し、外部取り出し量子効率を発光効率とした。有機EL素子101Aの発光効率を1.0とする相対値で表した。
(発光寿命)
有機EL素子試料を室温下、初期輝度1,000cd/m2となる直流電流による定電流条件下で連続点灯を行い、初期輝度の半分の輝度になるのに要する時間(τ1/2)を測定した。発光寿命は、有機EL素子101Aの発光寿命を1.0とする相対値で表した。
(駆動電圧)
有機EL素子を室温下、1,000cd/m2の定輝度条件下による点灯を行い、点灯開始直後の駆動電圧を測定した。駆動電圧は、有機EL素子101Aの駆動電圧を1.0とする相対値で表す。なお、駆動電圧は低いことが省エネルギー上好ましく、したがって相対値が小さいものほど優れていることを示す。
(調光時の色度変動)
有機EL素子を室温下、輝度が200cd/cm2から5,000cd/cm2まで駆動し、その間の色度x値及びy値で表される座標上での直線距離、すなわち色度変動幅の絶対値を測定した。調光時の色度変動幅は小さいことが好ましく、有機EL照明の明るさを調整しても、その照明色が安定しているので、演色性も維持できることを意味している。
(パルス駆動安定性)
有機EL素子に対し、パルス駆動方式により駆動電圧を印加して室温で初期輝度1,000cd/m2となる連続点灯を行い、初期輝度の半分の輝度になるのに要する時間(τ1/2)を測定してパルス駆動安定性の評価をおこなった。パルス駆動方式では、有機EL素子に周波数60Hz、デューティ比10%のパルス電圧を印加した。パルス駆動発光寿命は、有機EL素子101Aの発光寿命を1.0とする相対値で表した。以下表中ではパルス寿命と略記した。
上記評価結果を表1に示す。
101A〜104Aの結果から、超臨界流体処理によって水分や酸素分子を除去する際に、有機機能層にTgの高い材料を用いたり、重合架橋したり、膜強化剤を用いることによってその効果が大きく、性能が向上していることがわかる。さらには、101A〜104Aと101B〜104Bとの比較から、超臨界流体処理後の圧力置換をゆっくりと実施することによって、その効果が格段に向上することがわかる。
(実施例2)
陽極を、ITO型から、グリッドと導電性ポリマーからなるものに変更した効果を確認した。
<グリッドの形成>
Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、PVP K30(分子量5万;ISP社製)を利用して、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別、水洗処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を銀に対し25質量%加えた重水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
調製した銀ナノワイヤ分散液を、前記PETフィルムの一方の面に、銀ナノワイヤの目付け量が50mg/m2となるように、銀ナノワイヤ分散液を押し出しコーターを用いて塗布し、乾燥させた。続いて、銀ナノワイヤの塗布層にカレンダー処理を施した後、フォトリソグラフィー法により10mmの正方形格子状透明パターンを形成してグリッドを形成した。
<導電性ポリマー層の形成>
前記グリッド上に、PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分1.89%)(H.C.Starck社製)を、乾燥膜厚が150nmとなるよう塗布し、乾燥して導電性ポリマー層を形成した。
<正孔注入層〜電子輸送層の形成>
陽極が異なること以外は実施例1の試料101A〜104A、101B〜104Bと同様にして、試料201A〜204A、201B〜204Bを作成した。
また、評価についても実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
<結果>
以上の結果から、ITO電極を、グリッドと導電性ポリマーからなるものに変更した場合には、超臨界流体処理によって水分や酸素分子を除去する効果も向上し、特に、有機EL素子の色温度安定性やパルス安定が向上することがわかる。
(実施例3)
ロールツーロール生産適性を評価するために、得られた各試料について、下記の折り曲げ耐性試験を行った。
<折り曲げ耐性>
作製した各有機EL素子に対し、光出射面を内側にし、曲げ角90度、屈曲半径2cmになるように曲げて伸ばす動作を、不活性ガス雰囲気下で、1回/2秒の速度で100回繰り返した。曲げ伸ばし試験を実施した後の発光状態を目視で観察し、下記のランクづけを行った。得られた結果を表2に示す。
6:輝点、黒点がなく、均一な発光である
5:輝点あるいは黒点が1〜2個みられるが、安定した発光が見られる
4:輝点あるいは黒点が5個程度みられ、発光輝度がやや不安定である
3:輝点あるいは黒点が7〜8個程度みられ、発光輝度がさらに不安定である
2:輝点あるいは黒点が10個を越え、発光輝度が非常に不安定である
1:発光しない
得られた結果を表3に表した。
以上の結果から、本発明の構成は折り曲げ耐性が高いので、ロールツーロール生産適性が高いことがわかる。さらに、グリッドと導電性ポリマーからなる電極に変更したものはさらに優れ、超臨界流体処理での圧力置換速度を特定の条件で実施したものは極めて優れた耐性を示している。本発明によれば、フレキシブルな有機EL素子として様々な用途への展開が可能であることがわかかる。