JP5468503B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の制御装置に係り、特に、正確に空気流量を演算する空気流量演算部を備えた内燃機関の制御装置に関する。
従来から、内燃機関の制御装置においては、内燃機関の吸入空気流量を検出するために内燃機関の吸気管に空気流量検出装置が配置され、該空気流量検出装置によって検出される吸入空気流量を用いて燃料噴射量が制御されている。
近年においては、内燃機関の排気エミッションを低減させることが重要な課題となっていることから、内燃機関の各センサの出力をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号をデジタル演算装置に適用して燃料噴射量を制御することが一般的になっていると共に、空気流量検出装置の出力信号を用いてデジタル演算装置にて演算される吸入空気流量の演算精度を向上させることが、内燃機関の排気エミッションを低減させるための重要な技術課題となっている。
前記空気流量検出装置の出力信号としては、空気流量に応じて電圧値が変化する電圧信号や、特許文献1や特許文献2で開示される空気流量に応じて出力パルスの周期が変化する周波数信号が用いられることが多い。
一般に、周波数信号を出力する空気流量検出装置を採用する場合、デジタル演算装置では、その周波数信号の立ち上がりエッジや立下りエッジを検出し、そのエッジ間の周期(周波数)を検出して、周波数信号の周期や周波数を計測することができる。
既述するような周期(周波数)を検出して吸入空気流量を測定する方法としては、吸入空気流量の演算タイミングの直前に入力された空気流量検出装置の出力パルスの周期もしくは周波数を、所定時間や内燃機関の所定回転角度毎の演算タイミングで演算される出力パルスの周期もしくは周波数として空気流量に変換する方法や、特許文献3で開示されるような、吸入空気流量の演算タイミングの間に検出した複数個のパルス列の時間幅を計測し、そこから1パルスの平均周期を算出して、その平均周期に基づいて吸入空気流量を算出する方法が挙げられる。
特許第3808038号公報 特開平3−269218号公報 特開平2−129522号公報
しかしながら、既述する吸入空気流量を算出するいずれの方法においても、吸入空気流量を演算するタイミングは所定時間や内燃機関の所定回転角度毎であるのに対し、空気流量検出装置の出力周期もしくは出力周波数を認識できるタイミングは、出力信号の立ち上がりエッジや立下りエッジとなってしまう。よって、吸入空気流量を演算するタイミングと出力周期もしくは出力周波数を認識するタイミングがずれてしまう場合が多い。すなわち、吸入空気流量の演算を行う際には、演算するタイミングより僅かながら以前の時間の空気流量検出装置の出力信号の情報に基づいて、吸入空気流量が演算されることとなる。
これにより、たとえば吸入空気流量が急激に変化するような場合においては、正確に吸入空気流量を算出することができず、排気エミッションの悪化を引き起こすことがある。
本発明は、前記点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、吸入空気流量を精度良く演算できる内燃機関の制御装置を提供することにある。
上記する課題を解決するために、本発明の内燃機関の制御装置においては、吸入空気流量を演算するタイミングにおける空気流量検出部の信号値を、演算するタイミングの複数回前の検出信号値と、その検出信号値を検出したタイミングと吸入空気流量を演算するタイミングから補正することで、高精度の空気流量演算を実現する。
さらに、本発明の内燃機関の制御装置においては、上記対策による補正誤差の影響を低減するために、空気流量検出部であるエアフローセンサを通過する空気流量とシリンダに流入する空気流量の位相差を補正することを目的として、演算タイミングより前の過去の空気流量検出部を通過する空気流量を使用することに着目する。そして、過去となる前回の空気流量演算タイミングにおける空気流量演算値を、その前回の空気流量演算タイミングの前後の周期または周波数計測値から補正して演算する。
以上の説明から理解できるように、本発明によれば、周波数信号を出力する空気流量検出部を採用した内燃機関の制御装置において、吸入空気流量の変化速度にかかわらず、吸入空気流量を精緻に演算することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
内燃機関の全体のシステム構成図。 コントロールユニットを説明する図。 エアフローセンサの内部の構成を示した概略図。 エアフローセンサの出力信号の時系列波形を示した図。 エアフローセンサの出力周波数と検出される空気流量の関係を示した図。 エアフローセンサの出力周期と検出される空気流量の関係を示した図。 本発明の制御装置を用いた燃料噴射量演算の一実施の形態の概要を説明するブロック図。 本発明の制御装置を用いた燃料噴射量演算の他の実施の形態の概要を説明するブロック図。 空気流量と出力信号と演算タイミングの時系列の関係を示した図。 周期を計測する演算方法を説明するフロー図。 従来の方法による空気流量の演算方法と燃料噴射量の演算方法を説明するフロー図。 本発明による空気流量の演算方法と燃料噴射量の演算方法の一実施の形態を説明するフロー図。 本発明による空気流量の演算方法と燃料噴射量の演算方法の他の実施の形態を説明するフロー図。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施において前提となる内燃機関の概要であって、いわゆるMPI(Multi Point Injection:多気筒燃料噴射)方式の4気筒内燃機関を示した図である。以下、本発明の実施例として、MPI方式の4気筒内燃機関について説明するが、本発明の実施形態は必ずしもMPI方式の4気筒内燃機関に限定されるものではなく、出力値として周波数(周期)信号を用いた空気流量計を備える全ての内燃機関が含まれる。
図1に示すように、内燃機関に吸入した空気の流量は、エアクリーナー1の出口部に設けられた熱式エアフローセンサ(空気流量検出部)2によって検出される。この吸入空気は、エアクリーナー1に接続された吸気管3、吸入空気流量を調節する絞り弁4を有するスロットルボディ5を通過してコレクタ6に吸入される。その後、吸入空気は吸気管3の一部を構成する吸気分岐管7に分配され、吸気弁8を通過してシリンダ9内に吸入される。
また、燃料は、燃料タンク10から燃料ポンプ11で吸引、加圧され、プレッシャレギュレータ12によって一定圧力に調圧されて、吸気管3に設けられたインジェクタ13から吸気分岐管7内に噴射される。
シリンダ9内においては、吸気分岐管7で混合された空気と燃料から成る気体が点火プラグ14によって点火されて、燃焼される。各気筒のシリンダ9内で燃焼した後の排気ガスは、排気管16を通過し、触媒17によって浄化されて内燃機関の外部へ排出される。
図1に示すコントロールユニット18は、内燃機関の各アクチュエータを制御する制御装置であって、たとえば、エアフローセンサ2、クランク角センサ19、空燃比センサ(0センサ)20、絞り弁(スロットル)4の開度センサ、イグニッションスイッチ21とスタータスイッチ22を介したバッテリ23からの電力、アクセル開度センサ45等からの信号を入力信号として、4つのインジェクタ13、燃料ポンプ11、点火プラグ14の点火スイッチであるパワートランジスタ24に制御信号を出力する。
次に、図2の各アクチュエータを制御するコントロールユニット18について詳述する。図示すように、コントロールユニット18は、電源IC40とLSI42から大略構成されており、LSI42のRESET端子は電源IC40と接続されて、RESET信号41で制御されている。
コントロールユニット18は、LSI42に内蔵されるA/D変換器や周波数(周期)信号の周波数(周期)を検出するタイマによって、内燃機関に設置された各センサの出力値や内燃機関が設置された車両の運転手の操作情報を検出するセンサの出力値をデジタル値に変換して演算を行う。そして、演算した結果を制御信号として出力することで、各アクチュエータを制御することができる。
既述するように、このコントロールユニット18に入力される信号としては、エアフローセンサ2、クランク角センサ19、空燃比センサ(0センサ)20、絞り弁(スロットル)4の開度センサ、イグニッションスイッチ21とスタータスイッチ22を介したバッテリ23からの電力、アクセル開度センサ45からの信号等が挙げられる。
また、コントロールユニット18から出力される制御信号としては、4つのインジェクタ13、燃料ポンプ11、点火プラグ14の点火スイッチであるパワートランジスタ24への信号等が挙げられる。
次に、図3を参照して、熱式エアフローセンサ(空気流量検出部)2の動作原理について説明する。この熱式エアフローセンサ2は、図示するように、測定対象である空気流の中に配置される発熱抵抗体60、固定抵抗体61、バッファ回路62、電圧周波数変換回路63を備えている。そして、吸入空気流量が多い場合には発熱抵抗体60が空冷されて発熱抵抗体60に流れる電流が増加し、吸入空気量が少ない場合には発熱抵抗体60に流れる電流が減少するようにバッファ回路が構成されている。
このような発熱抵抗体60に流れる発熱抵抗電流によって空気流量電圧信号Viが取り出され、この空気流量電圧信号Viは、バッファ回路62を介して電圧周波数変換回路63へ供給される。
前記電圧周波数変換回路63は、その内部に積分コンデンサを備えている。この積分コンデンサは、内部スイッチを介して空気流量電圧信号Viと接続されており、積分コンデンサの電位が上限閾値よりも大きくなると内部スイッチをOFFとし、積分コンデンサの電位が下限閾値よりも小さくなると内部スイッチをONとする。このような動作を繰り返すことで、空気流量電圧信号Viに応じて周期(周波数)の変化する連続的な信号を作り出して、エアフローセンサ2の出力としている。
前記作用によって、図4で示すように、空気流量に応じて出力信号電圧の周期Pが変化する周波数(周期)信号L1が熱式エアフローセンサ2から出力されることとなる。
図5は、熱式エアフローセンサ2によって計測される吸入空気流量と、熱式エアフローセンサ2の出力信号の周波数との関係を示したものである。図示するように、吸入空気流量が小さい場合には出力信号の周波数は低く、吸入空気流量が大きい場合には出力信号の周波数は高くなり、この2つは非線形な関係を有している。すなわち、後述する空気流量の演算において、出力信号の周波数が低いと空気流量は小さくなり、出力信号の周波数が高いと空気流量は大きくなり、その空気流量の増加率は周波数が高くなるにしたがって増大する。
なお、周波数と周期は逆数の関係にあることから、図6で示すように、熱式エアフローセンサ2によって計測される吸入空気流量と、熱式エアフローセンサ2の出力信号の周期との関係は、図5で示す特性とは逆の特性を示している。
次に、図7および図8を参照して、LSI42の内部における、熱式エアフローセンサ(空気流量検出部)2の出力である周波数信号L1を用いた燃料噴射量演算の実施例の概要について説明する。なお、図7および図8では空気流量演算部の構成が異なる。
まず、図7を参照して燃料噴射量演算の一実施の形態の概要を説明する。
熱式エアフローセンサ(空気流量検出部)2から出力される周波数信号L1は、コントロールユニット18内部のLSI42に入力される。ここで、LSI42に内蔵される周波数計測部(タイマ)70は、周波数信号L1の周波数(周期)を検出して情報記憶部71に記憶し、記憶した周波数(周期)をデジタル値Pに変換する。また、時間計測部72では、周波数(周期)を検出したタイミングから演算タイミングまでの経過時間が計測される。その後、空気流量演算部80が有する補正演算部81において、周波数(周期)のデジタル値Pと時間計測部72によって計測された経過時間から、補正周波数(周期)が算出され、変換演算部82において、エアフローセンサ2を通過する空気流量に相当する補正空気流量Qhosに変換される。燃料噴射パルス幅演算部83では、演算した補正空気流量Qhosを別途のクランク角センサ19の入力信号から演算した内燃機関の回転数Nで除算し、シリンダに吸入される空気流量相当とする。そして、コレクタ6(図1参照)における圧力変化によって発生する、エアフローセンサ設置部を通過する空気流量とシリンダに吸入される空気流量の位相差の補正を行い、所定の係数を乗算して、インジェクタ13にて燃料を噴射する時間幅である燃料噴射パルス幅Fpを演算する。なお、補正演算部81と変換演算部82から成る空気流量演算部80と燃料噴射パルス幅演算部83から、燃料噴射量演算部90が構成されている。
次いで、図8を参照して燃料噴射量演算の他の実施の形態の概要を説明する。ここで、周波数演算部70と情報記憶部71と時間計測部72については、図7で示す実施の形態と同様であり、その説明を省略する。
図示する空気流量演算部80′が有する変換演算部82′において、周波数(周期)のデジタル値Pがエアフローセンサ(空気流量検出部)2を通過する空気流量に相当する空気流量Qに変換され、補正演算部81′において、その空気流量Qと時間計測部72によって計測された経過時間から、補正空気流量Qhosが算出される。燃料噴射パルス幅演算部83では、図7で示す実施の形態と同様の演算により、この補正空気流量Qhosを別途のクランク角センサ19の入力信号から演算した内燃機関の回転数Nで除算し、シリンダに吸入される空気流量相当とし、エアフローセンサ設置部を通過する空気流量とシリンダに吸入される空気流量の位相差の補正を行い、所定の係数を乗算して、インジェクタ13にて燃料を噴射する時間幅である燃料噴射パルス幅Fpを演算する。なお、補正演算部81′と変換演算部82′から成る空気流量演算部80′と燃料噴射パルス幅演算部83から、燃料噴射量演算部90′が構成されている。
なお、補正空気流量を演算するタイミングの直前に周波数計測部70によって計測された周期や周波数については、それらの周期や周波数を一度情報記憶部71に記憶した後に空気流量演算部80に適用する形態や、情報記憶部70に記憶される前に周波数計測部70から空気流量演算部80に直接適用する形態等を適用できる。
次に、図9、図10および図11を参照して、従来の方法による、熱式エアフローセンサ2の出力である周波数信号L1を用いた燃料噴射パルス幅Fpの演算方法について説明する。図9は、実際にエアフローセンサ2を通過する空気流量L2と、エアフローセンサ2の出力である周波数信号L1と、空気流量演算部80にて演算をおこなう演算タイミングの関係を示した図である。以下、特に、図9における空気流量演算部80の演算タイミングTjでの空気流量に相当する算出(推定)空気流量Qjの演算方法について具体的に説明する。
まず、図9で示す計測タイミングT5において、周波数計測部(タイマ)70では、図10で示すように、熱式エアフローセンサ2の出力である周波数信号L1の立ち上がりエッジを検出し(S111)、その時点の計測タイミング(タイマ値)T5を保存する(S112)。次いで、その計測タイミング(タイマ値)T5と、その計測タイミングT5の一回前の立ち上がりエッジの検出タイミングT4の時間の差分をパルス幅Pdとして算出する(S113)。また、上記と同様の演算を行うことにより、図9における計測タイミングT1からT6までのパルス幅PaからPeを算出する。
空気流量演算タイミングTjでは、図11で示す演算を実施する。まず、空気流量演算タイミングTjにおいてはパルス幅が算出されていないため、周波数計測部で計測された最新の計測周期(パルス幅)Pdを、その空気流量演算タイミングTjの周期Pjとする(S122)。次いで、図7における変換演算部82において、図6で示すような出力周期と空気流量の特性を有する変換テーブルを用いて、周期Pjを空気流量単位を有する空気流量Qjへ変換する(S123)。その後、図7における燃料噴射パルス幅演算部83において、以下の数1によって燃料噴射パルス幅Fpを算出する(S124)。
[数1]
Fp=C2・{C1・Qj/N+(1−C1)・Fpz−1
ここで、C1は熱式エアフローセンサ2を通過する空気流量とシリンダ9に吸入される空気流量の位相差に応じた係数、C2はシリンダ9に吸入される吸気量と最適なA/Fとするためにインジェクタに指令する燃料噴射パルス幅を表す係数、Nは内燃機関の回転数である。また、Fpz−1は、演算タイミングTjより前に演算された一回前の燃料噴射パルス幅である。
なお、上記する説明においては、たとえば図6で示すような出力周期と空気流量の変換テーブルを用いて、周期Pjを空気流量単位を有する空気流量Qjへと変換する方法を説明したが、周期Pjを周波数へ変換した後に、図5で示す特性を有する出力周波数と空気流量の変換テーブルを用いて空気流量Qjへと変換する方法を用いることもできる。
上記する従来の方法によれば、図9で示すように、空気流量が変化する状態において、実際にエアフローセンサ2を通過する空気流量L2(実線)と、演算に用いる空気流量L3(一点鎖線)との間に誤差が生じてしまう。このような誤差は、空気流量演算タイミングと熱式エアフローセンサ2の出力である周波数信号L1の立ち上がりエッジのタイミングが異なるために発生するものである。すなわち、立ち上がりエッジのタイミングT5から空気流量演算タイミングTjまでの時間遅れがこの誤差の要因となっている。
なお、記述する説明においては、図9における周期Pdの検出が、周波数信号L1の立ち上がりに対応するような周波数計測部を使用することを前提として説明している。それに対して、周波数信号L1の立ち下がりエッジに対応するような周波数計測部を使用して周期Pdを検出する場合についても同様に説明される。
[実施例1]
次に、図9、図10および図12を参照して、本発明の内燃機関の制御装置による、熱式エアフローセンサ(空気流量検出部)2から出力される周波数信号L1を用いた燃料噴射パルス幅Fpの演算方法について説明する。なお、本実施例1では周期を用いて実施する方法について説明するが、周期を周波数に置換して燃料噴射パルス幅を演算する場合についても同様の効果を得ることができる。
まず、従来の方法と同様に、周波数計測部(タイマ)70では、計測タイミングT5において、図10で示すように、熱式エアフローセンサ2の出力である周波数信号L1の立ち上がりエッジを検出し(S111)、その時点の計測タイミング(タイマ値)T5を保存する(S112)。次いで、その計測タイミング(タイマ値)T5と、その計測タイミングT5の一回前の立ち上がりエッジの検出タイミングT4の時間の差分をパルス幅Pdとして算出する(S113)。また、上記と同様の演算をおこなうことにより、図9における計測タイミングT1からT6までのパルス幅PaからPeを算出する。
空気流量演算タイミングTjでは、図12で示す演算を実施する。まず、空気流量演算タイミングTjにおいてはパルス幅が算出されていないため、周波数計測部で計測された最新の計測周期(パルス幅)Pdとその一回前の計測周期(パルス幅)Pcを用いて、数2で示す線形補完によって演算タイミングTjにおける補正周期Pjhosを演算する(S142)。
[数2]
Pjhos=(Pd−Pc)/(T5−T4)・(Tj−T5)+Pd
その後、補正周期Pjhosを空気流量に変換して補正空気流量Qjhosへ換算する(S143)。これにより、従来の方法で説明したような、図9における演算タイミングTjと計測タイミングT5との間の時間遅れに起因して発生する誤差を低減することができる。
なお、数2により算出した補正周期Pjhosが、演算タイミングTjと計測タイミングT5との時間幅より小さい場合には、補正周期Pjhosをその演算タイミングTjと計測タイミングT5との時間幅へ置換することで、補正の精度をさらに向上させることもできる(S142’)。また、前記計測周期PcからPdまでの変化量を複数区分に分割し、その所定の点を補正周期Pjhosとして使用すれば、演算タイミングTjを用いることなく線形補完による演算を行うことができ、補正周期Pjhosの演算を簡素化できる。
しかしながら、前記演算方法においても、実際の空気流量が急激に変化する場合や、空気流量が増減を繰り返す場合には、過補正や補正不足によって補正後の空気流量と実際の空気流量との誤差が増加することがある。その結果、燃料噴射パルス幅Fpにも大きな誤差が生じて排気エミッションを十分に改善できない可能性がある。
そこで、本発明の内燃機関の制御装置においては、以下で示す方法によって、燃料噴射パルス幅Fpの誤差をさらに抑制する。
すなわち、図12で示すように、補正空気流量Qjhosを算出した(S143)後に、一回前の空気流量演算タイミングTj−1の前後に検出した周期Pa、Pbを使用し(図9参照)、数3で示す線形補完によって、前回の演算タイミングTj−1における補正周期Pjhos−1を算出する(S144)。
[数3]
Pjhos−1=(Pb−Pa)/(T3−T2)・(Tj−1−T2)+Pa
その後、補正周期Pjhos−1を空気流量に変換して補正空気流量Qjhos−1へ換算し(S145)、数4で示す演算式によって燃料噴射パルス幅Fpを演算する(S146)。なお、数3の演算においても、計測周期PaからPbまでの変化量を複数区分に分割し、その所定の点を補正周期Pjhos−1として使用すれば、演算タイミングTj−1を用いることなく線形補完による演算を行うことができ、補正周期Pjhos−1の演算を簡素化できる。
また、補正空気流量Qjhosを算出する前に、一回前の空気流量演算タイミングTj−1の補正周期Pjhos−1を算出し、補正周期Pjhos、Pjhos−1を算出した後に、変換演算部によって補正周期Pjhos、Pjhos−1を補正空気流量Qjhos、Qjhos−1へ変換することもできる。
[数4]
Fp=C2・[C1・Qjhos/N+(1−C1)・{C1・Qjhos−1/N+(1−C1)・Fpz−2}]
ここで、C1は熱式エアフローセンサ2を通過する空気流量とシリンダ9に吸入される空気流量の位相差に応じた係数、C2はシリンダ9に吸入される吸気量と最適なA/Fとするためにインジェクタに指令する燃料噴射パルス幅を表す係数、Nは内燃機関の回転数である。また、Fpz−2は、演算タイミングTjより前に演算された二回前の燃料噴射パルス幅である。なお、数1の式に対して数4の式は、Qjに代わってQjhosが代入され、Fpz−1に代わってC1・Qjhos−1/N+(1−C1)・Fpz−2が代入されている。
すなわち、燃料噴射パルス幅の演算において、熱式エアフローセンサ設置部を通過する空気流量とシリンダに吸入される空気流量の位相差の補正を行うために、過去に演算された補正空気流量を直接的もしくは間接的に使用して、一回前の空気流量演算タイミングにおける燃料噴射パルス幅演算結果をより精度の高い補正値に置換している。これにより、燃料噴射パルス幅Fpの誤差を一層低減することが可能となる。
[実施例2]
次に、図9、図10および図13を参照して、本発明の内燃機関の制御装置による、熱式エアフローセンサ(空気流量検出部)2から出力される周波数信号L1を用いた燃料噴射パルス幅Fpの演算方法の別の実施例2について説明する。なお、本実施例2では周期を用いて実施する方法について説明するが、周期を周波数に置換して燃料噴射パルス幅を演算する場合についても同様の効果を得ることができる。
まず、実施例1と同様に、図10で示す演算によって、図9における計測タイミングT1からT6までのパルス幅PaからPeを算出する。
次に、空気流量演算タイミングTjでは、図13で示す演算を実施する。ここで、空気流量演算タイミングTjにおいてはパルス幅が算出されていないため、周波数計測部で計測された最新の計測周期(パルス幅)Pdを空気流量に変換して空気流量Qdへ換算する(S152)。これと同様に、空気流量演算タイミングTjより二回前の計測周期(パルス幅)Pcを空気流量に変換して空気流量Qcへ換算する(S153)。その後、これらの空気流量Qd,Qcを使用し、数5で示す線形補完によって、演算タイミングTjにおける補正空気流量Qjhosを演算する(S154)。
[数5]
Qjhos=(Qd−Qc)/(T5−T4)・(Tj−T5)+Qd
これにより、従来の方法で説明したような、図9における演算タイミングTjと計測タイミングT5との間の時間遅れに起因して発生する誤差を低減することができる。なお、空気流量QcからQdまでの変化量を複数区分に分割し、その所定の点を補正空気流量Qjhosとして使用すれば、演算タイミングTjを用いることなく線形補完による演算を行うことができ、補正空気流量Qjhosの演算を簡素化できる。
また、実施例1と同様に、実際の空気流量が急激に変化する場合や、空気流量が増減を繰り返す場合には、過補正や補正不足によって補正後の空気流量と実際の空気流量との誤差が増加することがある。その結果、燃料噴射パルス幅Fpにも大きな誤差が生じて排気エミッションを十分に改善できない可能性がある。この課題への対策として、以下で示す演算方法によって、燃料噴射パルス幅Fpの誤差をさらに低減することができる。
すなわち、図13で示すように、補正空気流量Qjhosを算出した(S154)後に、その一回前の空気流量演算タイミングTj−1の直後に検出した周期Pbを空気流量に変換して空気流量Qbへ換算し(S155)、空気流量演算タイミングTj−1の直前に検出した周期Paを空気流量に変換して空気流量Qaへ換算する(S156)。そして、これらの空気流量Qb,Qaを使用し、数6で示す線形補完によって、前回の演算タイミングTj−1における補正空気流量Qjhos−1を算出する(S157)。
[数6]
Qjhos−1=(Qb−Qa)/(T3−T2)・(Tj−1−T2)+Qa
その後、数7で示す演算式によって燃料噴射パルス幅Fpを演算する(S158)。なお、数6の演算においても、空気流量QaからQbまでの変化量を複数区分に分割し、その所定の点を補正空気流量Qjhos−1として使用すれば、演算タイミングTj−1を用いることなく線形補完による演算を行うことができ、補正空気流量Qjhos−1の演算を簡素化できる。
また、補正空気流量Qjhosを算出する前に、演算で使用する周期PaからPdを空気流量QaからQdへ変換し、変換した空気流量QaからQdを補正演算部に適用して補正空気流量Qjhos、Qjhos−1を算出することもできる。
[数7]
Fp=C2・[C1・Qjhos/N+(1−C1)・{C1・Qjhos−1/N+(1−C1)・Fpz−2}]
ここで、C1は熱式エアフローセンサ2を通過する空気流量とシリンダ9に吸入される空気流量の位相差に応じた係数、C2はシリンダ9に吸入される吸気量と最適なA/Fとするためにインジェクタに指令する燃料噴射パルス幅を表す係数、Nは内燃機関の回転数である。また、Fpz−2は、すでに算出された二回前の燃料噴射パルス幅である。なお、数7の式と数4の式とは同一である。
すなわち、図12を参照して説明したのと同様に、燃料噴射パルス幅の演算において、熱式エアフローセンサ設置部を通過する空気流量とシリンダに吸入される空気流量の位相差の補正を行うために、過去に演算された補正空気流量を直接的もしくは間接的に使用して、一回前の流量演算タイミングにおける燃料噴射パルス幅演算結果をより精度の高い補正値に置換している。これにより、燃料噴射パルス幅Fpの誤差を一層低減することが可能となる。
なお、前記説明において、演算タイミングにおける補正周波数や補正周期、補正空気流量を演算する場合、その直前とさらにその一回前の計測タイミングにおける計測周期を使用したが、それらの計測タイミングについては、演算タイミングより前であれば上記以外のいかなる計測タイミングも適用することができる。また、演算に適用する計測タイミングの数は、上記する数に限定されるものではなく、さらに複数の計測タイミングを使用すれば、補正演算の精度を一層向上させることもできる。さらに、演算タイミングの一回前の演算タイミングにおける補正周波数や補正周期、補正空気流量を演算する場合についても、その直前と直後の計測タイミングに限定されず、一回前の演算タイミングの前後であれば上記以外のいかなる計測タイミングも適用することできる。また、演算に適用する計測タイミングの数についても、上記する数に限定されるものではない。
また、前記説明においては、熱式エアフローセンサ設置部を通過する空気流量とシリンダに吸入される空気流量の位相差の補正を行うために、一回前の演算タイミングにおける空気流量演算を使用する方法について説明したが、その一回前の演算タイミングよりもさらに前回の演算タイミングを適用することもできる。さらに、演算タイミングより前の複数回の演算タイミングを使用することで、より一層精緻な空気流量演算を行うこともできる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1…エアクリーナ
2…熱式エアフローセンサ(空気流量計測部)
3…吸気管
4…絞り弁(スロットル)
5…スロットルボディ
6…コレクタ
7…吸気分岐管
8…吸気弁
9…シリンダ
10…燃料タンク
11…燃料ポンプ
12…プレッシャレギュレータ
13…インジェクタ
14…点火プラグ
16…排気管
17…触媒
18…コントロールユニット
19…クランク角センサ
20…空燃比センサ
21…イグニッションスイッチ
22…スタータスイッチ
23…バッテリ
40…電源IC
42…LSI
70…周波数計測部(タイマ)
71…情報記憶部
72…時間計測部
80…空気流量演算部
81…補正演算部
82…変換演算部
83…燃料噴射パルス幅演算部
90…燃料噴射量演算部
L1…エアフローセンサ出力周波数信号

Claims (13)

  1. 内燃機関の空気流量に応じて連続的に変化する周期または周波数信号を出力する空気流量検出部と、
    該空気流量検出部が出力する信号の周期または周波数を計測する周波数計測部と、
    該周波数計測部によって計測された前記周期または前記周波数の情報を記憶する情報記憶部と、
    前記周波数計測部によって前記周期または前記周波数が計測されたタイミングから、前記周期または前記周波数が計測された最新のタイミングより後の補正空気流量を演算する演算タイミングまでの経過時間を計測する時間計測部と、
    少なくとも前記情報記憶部で記憶された前記周期または前記周波数を用いて補正空気流量を演算する空気流量演算部とを備え、
    前記空気流量演算部は、補正演算部と変換演算部を有し、
    前記補正演算部は、前記情報記憶部で記憶された前記周期または前記周波数と前記時間計測部によって計測された前記経過時間に基づいて、演算タイミングにおける補正周期または補正周波数を算出し、前記変換演算部は、該補正周期または該補正周波数を前記空気流量検出部を通過する補正空気流量に変換することを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 演算タイミングにおける前記補正周期または前記補正周波数は、演算タイミングの直前に前記周波数計測部によって計測された周期または周波数と、さらにその一回以上前に計測された周期または周波数と、それらの周期または周波数が計測されたタイミングと、演算タイミングから算出されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 演算タイミングにおける前記補正周期または前記補正周波数は、演算タイミングの直前に前記周波数計測部によって計測された周期または周波数と、さらにその一回以上前に計測された周期または周波数と、それらの周期または周波数が計測されたタイミングと、演算タイミングから、線形補完によって算出されることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 演算タイミングにおける前記補正周波数は、演算タイミングと該演算タイミングの直前に周波数が計測されたタイミングとの時間幅を周期として算出される周波数以下となるように制限されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 演算タイミングより前の前回の演算タイミングにおける補正周期または補正周波数は、その前回の演算タイミングの後に前記周波数計測部によって計測された周期または周波数を用いて算出されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 演算タイミングより前の前回の演算タイミングにおける補正周期または補正周波数は、その前回の演算タイミングの前後に前記周波数計測部によって計測された周期または周波数の線形補完によって算出されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  7. 演算タイミングより前の前回の演算タイミングにおける補正周期または補正周波数は、その前回の演算タイミングの前後に前記周波数計測部によって計測された周期または周波数と、前回の演算タイミングと、該前回の演算タイミングの前後の前記周期または前記周波数が計測されたタイミングに基づいて算出されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  8. 内燃機関の空気流量に応じて連続的に変化する周期または周波数信号を出力する空気流量検出部と、
    該空気流量検出部が出力する信号の周期または周波数を計測する周波数計測部と、
    該周波数計測部によって計測された前記周期または前記周波数の情報を記憶する情報記憶部と、
    前記周波数計測部によって前記周期または前記周波数が計測されたタイミングから、前記周期または前記周波数が計測された最新のタイミングより後の補正空気流量を演算する演算タイミングまでの経過時間を計測する時間計測部と、
    少なくとも前記情報記憶部で記憶された前記周期または前記周波数を用いて補正空気流量を演算する空気流量演算部とを備え、
    前記空気流量演算部は、補正演算部と変換演算部を有し、
    前記変換演算部は、前記情報記憶部で記憶された前記周期または前記周波数を空気流量に変換し、前記補正演算部は、該空気流量と前記時間計測部によって計測された前記経過時間に基づいて、演算タイミングにおける前記空気流量検出部を通過する補正空気流量を算出することを特徴とする内燃機関の制御装置。
  9. 演算タイミングにおける前記補正空気流量は、演算タイミングの直前に前記周波数計測部によって計測された周期または周波数から変換された空気流量と、さらにその一回以上前に計測された周期または周波数から変換された空気流量と、それらの周期または周波数が計測されたタイミングと、演算タイミングから算出されることを特徴とする請求項8に記載の内燃機関の制御装置。
  10. 演算タイミングにおける前記補正空気流量は、演算タイミングの直前に前記周波数計測部によって計測された周期または周波数から変換された空気流量と、さらにその一回以上前に計測された周期または周波数から変換された空気流量と、それらの周期または周波数が計測されたタイミングと、演算タイミングから、線形補完によって算出されることを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の制御装置。
  11. 演算タイミングより前の前回の演算タイミングにおける補正空気流量は、その前回の演算タイミングの後に前記周波数計測部によって計測された周期または周波数から変換された空気流量を用いて算出されることを特徴とする請求項8に記載の内燃機関の制御装置。
  12. 演算タイミングより前の前回の演算タイミングにおける補正空気流量は、その前回の演算タイミングの前後に前記周波数計測部によって計測された周期または周波数から変換された空気流量の線形補完によって算出されることを特徴とする請求項8に記載の内燃機関の制御装置。
  13. 演算タイミングより前の前回の演算タイミングにおける補正空気流量は、その前回の演算タイミングの前後に前記周波数計測部によって計測された周期または周波数から変換された空気流量と、前回の演算タイミングと、該前回の演算タイミングの前後の前記周期または前記周波数が計測されたタイミングに基づいて算出されることを特徴とする請求項8に記載の内燃機関の制御装置。
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