JP5466879B2 - 銅合金板材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銅合金板材およびその製造方法に関し、特に、コネクタなどの電気電子部品に使用するCu−Ni−Sn−P系銅合金板材およびその製造法に関する。
コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチなどの通電部品として電気電子部品に使用される材料には、通電によるジュール熱の発生を抑制するために良好な導電性を有することが要求されるとともに、電気電子機器の組立時や作動時に付与される応力に耐え得る高い強度を有することが要求される。また、コネクタなどの電気電子部品は、一般にプレス打ち抜き後に曲げ加工により成形されることから、優れた曲げ加工性を有することも要求される。さらに、コネクタなどの電気電子部品間の接触信頼性を確保するために、接触圧力が時間とともに低下する現象(応力緩和)に対する耐久性、すなわち、耐応力緩和特性に優れていることも要求される。
近年、コネクタなどの電気電子部品は、高集積化、小型化および軽量化が進む傾向にあり、それに伴って、その素材である銅や銅合金の板材には、薄肉化の要求が高まっている。そのため、その素材に要求される強度レベルは一層厳しいものとなっている。特に、自動車用コネクタなどは、激しい振動が繰り返し負荷される環境で使用されるため、その素材には、疲労破壊を生じ難い性質、すなわち高い疲れ強さを有することが求められる。
また、コネクタなどの電気電子部品の小型化や形状の複雑化に対応するには、曲げ加工品の形状や寸法精度を向上させることが求められている。そのため、最近では、素材の曲げ加工を施す部位にノッチを付ける加工(ノッチング)を施し、その後、そのノッチに沿って曲げ加工を行う所謂ノッチング後曲げ加工法を適用することが多くなっている。しかし、このノッチング後曲げ加工法は、ノッチングによってノッチ部の近傍が加工硬化されるため、その後の曲げ加工において割れを生じ易くなる。そのため、ノッチング後曲げ加工法は、材料にとって非常に厳しい曲げ加工であるが、コネクタなどの電気電子部品の素材では、一般に圧延方向(LD)および板厚方向に垂直な方向(TD)を曲げ軸とする曲げ加工が行われている。
さらに、コネクタなどの電気電子部品が過酷な環境で使用される場合が多くなるに従って、その素材である銅合金板材には、耐応力緩和特性に対する要求も厳しくなっている。例えば、自動車用コネクタのように高温に曝される環境下で使用される場合は、耐応力緩和特性が特に重要になる。なお、応力緩和とは、コネクタなどの電気電子部品を構成する素材のばね部の接触圧力が、常温では一定の状態に維持されても、比較的高温(例えば100〜200℃)の環境下では時間とともに低下するという、一種のクリープ現象である。すなわち、金属材料に応力が加えられている状態において、マトリックスを構成する原子の自己拡散や固溶原子の拡散によって転位が移動して、塑性変形が生じることにより、付与されている応力が緩和される現象である。
しかし、一般に銅合金板材では、強度と導電性の間、強度と曲げ加工性の間、曲げ加工性と耐応力緩和特性の間には、それぞれトレードオフの関係があるので、従来、このようなコネクタなどの通電部品に使用される材料として、用途に応じて導電性、強度、曲げ加工性または耐応力緩和特性が良好な板材を適宜選択して使用している。
銅合金板材の中で、導電性、強度、曲げ加工性および耐応力緩和特性のバランスが良く且つ製造し易い板材として、Cu−Ni−Sn−P系銅合金板材がある。このCu−Ni−Sn−P系合金板材では、SnとNiによる銅合金板材の固溶強化作用に加えて、Ni−P系析出物を微細に分散させることによって上記の各特性の向上が図られており、コネクタなどの電気電子部品に使用される材料として、様々なCu−Ni−Sn−P系銅金板材が提案されている(例えば、特許文献1〜8参照)。
また、{420}面を主方位成分とする集合組織を発達させてノッチング後曲げ加工法に最適化したCu−Ni−Sn−P系銅合金板材(例えば、特許文献9参照)、Brass方位の発達を抑制して耐応力緩和特性や曲げ加工性などを向上させたCu−Ni−Sn−P系銅合金板材(例えば、特許文献10参照)、高強度銅合金であるCu−Ni−Si系銅合金(所謂コルソン合金)の板材において{100}面を主方位成分とする集合組織を発達させて曲げ加工性やプレス打抜き性を向上させた銅合金板材(例えば、特許文献11、12参照)などが提案されている。これらの銅合金板材は、圧延面における特性の異方性を避け、強度と曲げ加工性のバランスを保つように設計されている。
特開平4−154942号公報(第1頁) 特開4−236736号公報(段落番号0006−0007) 特開平10−226835号公報(段落番号0007−0008) 特開2000−129377号公報(段落番号0009−0010) 特開2000−256814号公報(段落番号0008−0009) 特開2001−262255号公報(段落番号0008−0009) 特開2001−262297号公報(段落番号0010−0011) 特開2002−294368号公報(段落番号0007) 特開2008−231492号公報(段落番号0024−0034) 特開2009−62592号公報(段落番号0011−0012) 特開2000−80428号公報(段落番号0004) 特開2000−73130号公報(段落番号0004)
Cu−Ni−Sn−P系銅合金板材は、比較的高い強度(500〜600MPaの引張強さ)と導電率(30〜55%IACS)を有し、強度と導電性のバランスに優れている。また、Cu−Ni−Sn−P系銅合金板材の耐応力緩和特性は、黄銅やりん青銅などの一般的な固溶強化型銅合金の板材の耐応力緩和特性と比べて格段に優れ、Cu−Ni−Si系銅合金(所謂コルソン合金)やCu−Ti系銅合金などの析出強化型銅合金の板材の耐応力緩和特性と比べても同等以上である。さらに、Cu−Ni−Sn−P系銅合金板材は、曲げ加工性にも優れており、自動車用コネクタなどの材料に適している。
また、Cu−Ni−Sn−P系銅合金板材は、基本的に固溶強化型合金の板材であり、析出強化や鋳造組織の微細化などのために、Si、Ti、Mg、Zrなどの易酸化性元素を添加する場合でもその添加量を少なくすることができるので、一般に良好な鋳造性を有する。さらに、析出強化型銅合金の板材を製造する場合に必要な溶体化処理や時効処理などの複雑な熱処理工程を省略することもできるので、比較低コストで製造することができる。
しかし、近年のコネクタなどの電気電子部品の薄肉化や小型化に対する厳しい要求に応えるためには、Cu−Ni−Sn−P系銅合金板材の強度レベルを一段と高める必要がある。例えば、引張強さ600MPa以上、さらに650MPa以上といった高強度の板材が要求される場合には、従来のCu−Ni−Sn−P系銅合金では、優れた耐応力緩和特性と曲げ加工性を維持しながら、製造コストを増大させないで高強度化するのは非常に困難である。
Cu−Ni−Sn−P系銅合金板材を高強度化する一般的な方法として、NiやSnなどの溶質元素を多量に添加する方法や、仕上げ圧延(調質処理)率を増大する方法などがある。しかし、溶質元素を多量に添加する方法では、導電率を著しく低下させるとともに、比較的高価なNiやSnなどの添加量が増加して経済的に不利になる。また、仕上げ圧延率を増大する方法では、加工硬化が高くなるにつれて曲げ加工性が低下する。そのため、強度レベルと導電性レベルが高くても、箱曲げが必要になる雌端子などの電気電子部品に使用できなくなる場合がある。一方、NiやPなどの析出物の量に寄与する元素を多量に添加する方法もあるが、これらの元素を多量に添加することによって、粗大な析出物が形成されてクラック発生の起点になり、曲げ加工性や疲れ強さの低下を招くことがある。また、これらの元素を多量に添加しても微細な析出物が形成されるように制御しようとすると、熱処理の回数を多くしたり、製造条件が限定されて、製造コストが増大する。
銅合金板材の曲げ加工性を向上させるためには、一般に結晶粒を微細化する方法が採用されている。銅合金板材の結晶粒径が小さい程、単位体積当たりに存在する結晶粒界の面積が大きくなる。結晶粒界は、曲げ加工の際に粒界すべりや粒界の両側の結晶粒の回転を可能にする界面として機能するので、その界面の面積が大きい程、局部的な応力集中が回避され、曲げ加工性が向上する傾向になる。しかし、結晶粒微細化による結晶粒界の面積の増大は、クリープ現象の一種である応力緩和を助長する要因になる。特に、車載用コネクタなどのように高温環境で使用される場合では、原子の粒界に沿った拡散速度が粒内より著しく速いので、結晶粒微細化による耐応力緩和特性の低下は重大な問題になる。さらに、結晶粒界は、繰り返し曲げ変形時に転位の蓄積場所として働き、加工硬化を引き起こすため、疲労破壊の起点になることがある。このような温度環境下では、結晶粒微細化は、必ずしも疲れ強さの向上に適しているとはいえない。また、車載用コネクタは、その接続箇所や接続の方法などにより、エンジンの振動の影響を受け、電線かしめ部やその周辺で疲労破壊を起こすことがある。このような疲労破壊は、電線のかしめを強固にしたり、電線とコネクタの密着性を良好にするためにセレーションを打つとともに、電線をつぶしながらかしめる工法により、加工硬化と部分的な応力集中箇所が発生することによって起こる。また、雌端子のバネ部は、180°曲げによって加工硬化が激しい上に、細幅であるが故に、振動による疲労や熱による応力緩和によって接触圧力が低下するため、致命的な問題に発展しかねない。これらの問題を解決するために、コネクタの構造やハウジングなどによる支持構造を改良したり、電線の振動防止などの対策を講じているが、コネクタの素材の特性を向上させることは、コスト面や設計の自由度から大きく期待されている。従って、セレーションやかしめ部における過度の加工硬化を防止するために、コネクタの素材が適切な集合組織を有するようにする方法は、加工硬化を適度に抑えるため、有効であると考えられる。
近年、強度と曲げ加工性を同時に解決する方法として、所定の集合組織を発達させる方法や所定の集合組織の発達を抑制する方法が提案されている。例えば、特許文献9に開示された{420}面を主方位成分とする集合組織を発達させる方法や、特許文献10に開示されたBrass方位の発達を抑制する方法などが提案されている。しかし、{420}面を主方位成分とする集合組織を発達させる方法では、最終製品としての板材を得るまでに熱処理の回数が極端に制限されるため、圧延工程における製造負荷が高くなるという問題があり、また、Brass方位の発達を抑制する方法では、仕上げ圧延における圧下率を高くすることができず、加工硬化を利用して強度を十分に向上させることが困難になる。
このように、Cu−Ni−Sn−P系銅合金板材において、強度と疲れ強さをさらに向上させながら曲げ加工性と耐応力緩和特性を同時に向上させることは困難であった。特に、近年の自動車用コネクタなどの電気電子部品の厳しい使用環境に対応するためには、強度、導電率、曲げ加工性および耐応力緩和特性に優れ、さらに疲労破壊を起こし難い銅合金板材を製造することが望まれている。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、強度、導電率、疲れ強さ、曲げ加工性および耐応力緩和特性を同時に高レベルに向上させた銅合金板材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、0.1〜5質量%のNiと0.1〜5質量%のSnと0.01〜0.5質量%のPを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、銅合金板材の圧延面における粉末X線回折法により測定された{hkl}結晶面の配向度をf{hkl}とすると、2.9≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦4.0を満たす結晶配向を有するようにすることによって、強度、導電性、疲れ強さ、曲げ加工性および耐応力緩和特性を同時に高レベルに向上させた銅合金板材を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による銅合金板材は、0.1〜5質量%のNiと0.1〜5質量%のSnと0.01〜0.5質量%のPを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、銅合金板材の圧延面における粉末X線回折法により測定された{hkl}結晶面の配向度をf{hkl}とすると、2.9≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦4.0を満たす結晶配向を有することを特徴とする。
この銅合金板材は、3質量%以下のFe、5質量%以下のZn、1質量%以下のMg、1質量%以下のSiおよび2質量%以下のCoからなる群から選ばれる1種以上の元素をさらに含む組成を有してもよい。また、銅合金板材が、Cr、B、Zr、Ti、MnおよびVからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計3質量%以下の範囲でさらに含む組成を有してもよい。
また、本発明による銅合金板材の製造方法は、0.1〜5質量%のNiと0.1〜5質量%のSnと0.01〜0.5質量%のPを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造する溶解・鋳造工程と、この溶解・鋳造工程後に950℃〜700℃の温度域で最初の圧延パスの熱間圧延を行うとともに700℃未満〜350℃の温度域で熱間圧延を行う熱間圧延工程と、この熱間圧延工程後に圧延率60%以上で冷間圧延を行う冷間圧延工程と、この冷間圧延工程後に到達温度400〜750℃で再結晶化を行う再結晶焼鈍工程と、この再結晶焼鈍工程後に圧延率40〜95%で冷間圧延を行う仕上げ冷間圧延工程とを備え、熱間圧延工程において、熱間圧延後の銅合金板材の比抵抗をρ(μΩ・cm)、同一の熱間圧延後の銅合金板材を900℃で30分間保持した後に急冷したときの比抵抗をρST(μΩ・cm)、銅合金板材が鋳造時に含有するPの濃度をχ(質量%)として、3≦(ρST−ρ)/χ≦16を満たすように熱間圧延を行い、再結晶焼鈍工程において、最終再結晶焼鈍後の銅合金板材の圧延面において粉末X線回折法によって測定された{hkl}結晶面の配向度をf{hkl}として、2.5≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦2.8を満たす結晶配向を有するように、400〜750℃の温度域の保持時間および到達温度を設定して熱処理を行うことを特徴とする。
この銅合金板材の製造方法において、銅合金の原料が、3質量%以下のFe、5質量%以下のZn、1質量%以下のMg、1質量%以下のSiおよび2質量%以下のCoからなる群から選ばれる1種以上の元素をさらに含む組成を有してもよい。また、銅合金の原料が、Cr、B、Zr、Ti、MnおよびVからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計3質量%以下の範囲でさらに含む組成を有してもよい。
上記の銅合金板材の製造方法において、再結晶焼鈍前の冷間圧延率を60〜95%とするのが好ましい。また、仕上げ冷間圧延後に150〜450℃の低温焼鈍を行うのが好ましい。さらに、熱間圧延工程と冷間圧延工程の間において、冷間圧延と熱処理をこの順で繰り返してもよい。
本発明によれば、強度、導電率、疲れ強さ、曲げ加工性および耐応力緩和特性を同時に高レベルに向上させた銅合金板材およびその製造方法を提供することができる。
本発明による銅合金板材の実施の形態は、0.1〜5質量%のNiと0.1〜5質量%のSnと0.01〜0.5質量%のPを含み、必要に応じて3質量%以下のFe、5質量%以下のZn、1質量%以下のMg、1質量%以下のSiおよび2質量%以下のCoからなる群から選ばれる1種以上の元素を含み、さらに必要に応じてCr、B、Zr、Ti、MnおよびVからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計3質量%以下の範囲で含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、銅合金板材の圧延面における粉末X線回折法により測定された{hkl}結晶面の配向度をf{hkl}とすると、2.9≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦4.0を満たす結晶配向を有する。以下、この銅合金板材およびその製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
[合金組成]
本発明による銅合金板材の実施の形態は、CuとNiとSnとPを含むCu−Ni−Sn−P系銅合金からなる板材、好ましくは、Cu−Ni−Sn−Pの4元系銅合金からなる板材であり、必要に応じてZn、Fe、その他の元素を含有してもよい。
Niは、Cuマトリクス中に固溶して、銅合金板材の強度、弾性、耐熱性の向上に寄与する。特に、Niは、Pとの化合物を形成して、導電率の向上および耐応力緩和特性の向上に寄与する。Ni含有量が0.1質量%未満では、これらの効果を十分に発揮させるのが困難である。そのため、Ni含有量は、0.1質量%以上にする必要があり、0.3質量%以上であるのが好ましく、0.5%質量%以上であるのがさらに好ましく、0.7質量%以上であるのが最も好ましい。一方、Ni含有量が過剰であると、導電率が低下し易い。そのため、Ni含有量は、5質量%以下にする必要があり、3質量%以下であるのが好ましく、2質量%以下であるのがさらに好ましく、1.5質量%以下であるのがさらに好ましく、1.2質量%未満であるのが最も好ましい。
Snは、銅合金板材の固溶強化効果が大きく、特に、Niとともに添加することにより、その効果がさらに大きくなる。また、Snは、銅合金板材の耐応力緩和特性を向上させる効果を有する。これらの効果を十分に発揮させるためには、Sn含有量は、0.1質量%以上にする必要があり、0.3質量%以上であるのが好ましく、0.5%質量%以上であるのがさらに好ましい。一方、Sn含有量が5質量%を超えると、銅合金板材の導電率が著しく低下してしまい、また、Snは偏析し易い元素であるため、熱間圧延の際に割れが発生し易くなる。そのため、Sn含有量は、5質量%以下にする必要があり、3質量%以下であるのが好ましく、2質量%以下であるのがさらに好ましい。
Pは、Niとの析出物を生成して、銅合金板材の強度と導電率と耐応力緩和特性を同時に向上させる効果を有する。また、Pは、銅合金の原料を溶解して鋳造する際の脱酸剤として作用して溶湯の酸素濃度を低下させる効果を有する。これらの効果を十分に発揮させるためには、P含有量は、0.01質量%以上にする必要があり、0.03質量%以上であるのが好ましく、0.04質量%以上であるのがさらに好ましい。一方、P含有量が0.5質量%を超えると、粗大なNi−P系析出物が生成したり、過剰脱酸によって水素濃度が増大することにより、銅合金板材の鋳造欠陥や熱間圧延時の割れが発生し易くなり、また、銅合金板材の導電率と曲げ加工性も低下してしまう。そのため、P含有量は、0.5質量%以下にする必要があり、0.2質量%以下であるのが好ましく、0.15質量%以下であるのがさらに好ましい。
Feは、Pとの析出物を生成し、Pの他にNiを含めた3元化合物を生成する場合もある。また、微量のFeを添加することによって、Fe−P化合物またはNi−Fe−P化合物の核生成サイトが分散して、微細な析出物が生成し易くなる。しかし、Fe含有量が過剰であると析出物の凝集および粗大化を招く。そのため、銅合金板材がFeを含有する場合には、Fe含有量は、3質量%以下にする必要があり、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがさらに好ましい。
Znは、銅合金板材のはんだ付け性および強度を向上させるとともに、鋳造性を向上させる効果を有する。また、Znを添加することができれば、安価な黄銅スクラップを使用することができるという利点がある。しかし、Zn含有量が5質量%を超えると、銅合金板材の導電性や耐応力腐食割れ性が低下する要因になり易い。そのため、銅合金板材がZnを含有する場合には、Zn含有量は、5質量%以下であるのが好ましく、2質量%以下であるのがさらに好ましい。
Mgは、銅中に固溶するが、一部がPとの化合物を形成する。また、Mgは、銅合金板材の耐応力緩和特性を向上させる効果と、脱S効果を有する。しかし、Mgは酸化し易い元素であるため、Mg含有量が1質量%を超えると、銅合金板材の鋳造性が著しく低下してしまう。そのため、銅合金板材がMgを含有する場合には、Mg含有量は、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがさらに好ましい。
Coは、Pとの析出物を生成するとともに、単体で析出することができる元素であり、銅合金板材の強度と導電率を同時に向上させる効果を有する。しかし、Coは高価な元素であるため、Co含有量が2質量%を超えると、コスト的に不利になる。そのため、銅合金板材がCoを含有する場合には、Co含有量は、2質量%以下であるのが好ましく、1.5質量%以下であるのがさらに好ましい。
必要に応じて銅合金板材に添加するその他の元素として、Cr、B、Zr、Ti、Mn、Vなどがある。例えば、Cr、B、Zr、Ti、Mn、Vは、銅合金板材の強度をさらに高めるとともに、応力緩和を小さくする作用を有する。また、Cr、Zr、Ti、Mn、Vは、銅合金板材に存在するSやPbなどの不可避的不純物と高融点化合物を生成し易く、また、B、Zr、Tiは、銅合金板材の鋳造組織を微細化する効果を有し、熱間加工性の向上に寄与し得る。銅合金板材がCr、B、Zr、Ti、MnおよびVからなる群から選ばれる1種以上を含有する場合には、各元素を添加した効果を十分に得るために、これらの元素の総量が0.001質量%以上であるのが好ましい。しかし、これらの元素の総量が3質量%を超えると、銅合金板材の熱間加工性または冷間加工性に悪い影響を与えるとともに、コスト的にも不利になる。そのため、これらの元素の総量は、3質量%以下にする必要があり、2質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下であるのがさらに好ましく、0.5質量%以下であるのが最も好ましい。
[集合組織]
一般に全ての板材において、強度が向上するに従って曲げ加工性が低下する。そのため、強度と曲げ加工性をバランス良く向上させるような製造工程を設計するのが理想とされている。しかし、コネクタの一つである「ばね一体箱型雌端子」では、最も強度が必要になるばね部は、使用される銅合金材料のコイル幅方向(TD)に延びるように形成されるのに対して、ノッチング後曲げ加工のような厳しい広幅曲げが必要になる部分は、使用される銅合金板材の圧延方向(LD)に延びるように形成される。すなわち、LDに対するTDの相対強度を向上させることにより、LDの曲げ加工性に優れ、TDのばね性を最高に引き出すことを可能にするような結晶配向(集合組織)を見出すことが望まれる。この異方性の発現は、従来では弊害とされてきたTDの曲げ加工性を著しく悪化させるものではなく、LDの曲げ程ではないものの、ばねの形成に必要になるTDの細幅曲げに十分に対応することができる曲げ加工性も有する必要がある。
本発明による銅合金板材の実施の形態では、銅合金圧延材の集合組織による面内異方性を1つの無次元量で取り扱うことを可能にする異方性指数(Ia)を利用する。この指数は、LDに対するTDの相対的な引張強さと一意的な関係を示し、高い値を有する程、LDの曲げ加工性を損なうことなく、TDの強度を向上させることができることを意味している。すなわち、この指数を高くすることによって、TDの引張強さや耐力を選択的に向上させたばね一体箱型雌端子への利用に最適化された素材になる。後述する本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、このような特有の集合組織を有する結晶粒の割合を、銅合金の原料の組成と製造条件によって制御する。この特有の集合組織によって、強度と曲げ加工性を同時に向上させることができる。また、このような異方性を有する材料では、疲労破壊が極めて遅延することがわかった。
圧延面に対するX線回折プロファイル(2θ/θスキャン法)のうち、{111}面、{200}面、{220}面、{311}面、{331}面および{420}面の各々の回折ピークの積分強度I{hkl}と、ランダム方位材料とみなすことができる歪のない純銅粉末(標準試料)の積分強度I {hkl}との比P{hkl}=I{hkl}/I {hkl}をそれぞれの回折面について求め、6つの回折面に対するP{hkl}の和が1になるように各分率f{hkl}=P{hkl}/ΣP{hkl}を定める。なお、{hkl}={111}、{200}、{220}、{311}、{331}または{420}である。これらの分率は、測定面(圧延面)に平行な低指数面の配向度を意味している。例えば、{111}面の場合の分率f{111}は、f{111}=P{111}/(P{111}+P{200}+P{220}+P{311}+P{331}+P{420})から求められる。
X線回折により圧延面で測定された各々の面方位{hkl}を有する結晶が一般的な銅合金の圧延または再結晶集合組織であると仮定した場合に、予測されるLD(圧延方向)またはTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)と平行な方向<uvw>と、各々の<uvw>を引張軸としたときのSchmid因子S<uvw>を表1に示す。
Figure 0005466879
表1から、{111}面や{200}面の配向度の高い材料では異方性が小さく、{220}面、{311}面、{420}面の配向度の高い材料では異方性が大きいことが予想される。したがって、本発明による銅合金板材の実施の形態では、圧延板材の異方性を取り扱う方法として、圧延面の方位{hkl}を有する結晶のLDを<LD{hkl}>、TDを<TD{hkl}>として、異方性指数Ia(Index of anisotropy)=Σ(S<LD{hkl}>・f{hkl})/Σ(S<TD{hkl}>・f{hkl})を利用する。
Schmid因子が小さい程、大きな引張応力(外力)で臨界せん断応力に達するので、IaはLDに対するTDの相対強度に対応すると考えられる。特に、異方性の効果が強い{220}面、{311}面、{420}面についてのみ考慮して、上記のIaの式を書き換えると、Ia≒(0.41・f{220}+0.41・f{311}+0.41・f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})になる。
この式は、多結晶体のトータルの異方性が一配向面だけでは決定されないことや、各々の配向面毎にその寄与が異なることを示している。また、この式は、X線回折の各々のピークの強度の和には、相対的な意味や物理的意味はなく、配向度に変換するような規格化や重みづけを行って初めて意味のあるものになることを近似的に示している。
この異方性指数(Ia)が大きい程、ばね一体箱型雌端子への利用に最適化された素材になることがわかった。但し、通常の製造工程で得られたCu−Ni−Sn−P系銅合金板材の配向性では、Iaを十分に高めることはできず、結果として曲げ加工性は良くてもTDの強度が不足したり、TDの強度が高くても曲げ加工性に劣ることになり、個々の特性が最適点から低下した領域においてバランスのよい合金を製造せざるを得ない。しかし、後述する本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、Iaを高めた集合組織を有するCu−Ni−Sn−P系銅合金板材を得ることができる。
さらに、このようにして製造された高いIaを有する銅合金板材では、疲労破壊を遅延させる効果がみられることがわかった。一般に、銅合金板材では曲げ加工を繰り返すうちに結晶粒界に転位が蓄積されるが、Iaが高い銅合金板材では結晶配向性が高くなっており、交差すべりを起こし易く、転位の蓄積が緩和され、これにより局所的な加工硬化が抑制されて、疲労破壊が遅延すると考えられる。
このような結晶配向は、銅合金板材の圧延面における粉末X線回折法により測定された{hkl}結晶面の配向度をf{hkl}とすると、Ia’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})として、2.9≦Ia’fin.≦4.0、好ましくは2.9≦Ia’fin.≦3.8によって特定することができることがわかった。
この式を満足する集合組織は、最適な熱間圧延、冷間圧延および熱処理の条件や組み合わせが全て揃って初めて得ることができる。銅合金板材を高強度化するためには、再結晶焼鈍後に冷間圧延することが極めて有効であるが、仕上げ冷間圧延の条件を調整するだけでは、この式を満足するような優れたLDの曲げ加工性とTDの高強度化の両立はできないため、再結晶焼鈍後の仕上げ冷間圧延前に、Ia’ann.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})として、2.5≦Ia’ann.≦2.8を満たす結晶配向を有するようにしておくのが望ましい。
[平均結晶粒径]
平均結晶粒径が小さい程、曲げ加工性の向上に有利であるが、平均結晶粒径が小さ過ぎると、耐応力緩和特性が悪くなり易く、また、疲れ強さが低下する場合がある。一方、平均結晶粒径が大きくなり過ぎると、銅合金板材の曲げ部の表面の肌荒が生じ易くなり、曲げ加工性が低下し、疲れ強さが低下する場合がある。
また、焼鈍工程における再結晶や粒成長の際にも結晶の配向性が変化するため、上述したように2.9≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦4.0を満たすような集合組織を得るとともに、車載用コネクタに使用する場合でも満足できるレベルの耐応力緩和特性を維持するためには、結晶粒径の管理が必要であるが、仕上げ圧延によって長手方向に伸ばされた結晶粒形状になるため、粒径の測定やその定義が困難である。そのため、仕上げ圧延前の再結晶焼鈍において結晶粒度を制限するのが好ましい。
最終工程後の平均結晶粒径は、最終再結晶焼鈍後の結晶粒径によってほぼ決まってくるため、上述したように再結晶焼鈍後に2.5≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦2.8を満たすように焼鈍条件を設定するのが好ましい。なお、結晶粒径が1μmより小さいと、耐応力緩和特性が低下し、一方、結晶粒径が20μmを超えると、曲げ加工性や疲れ強さが低下するので、上記の焼鈍条件で熱処理した後の結晶粒径が1〜20μmになるようにするのが好ましく、1〜10μmになるようにするのがさらに好ましく、1〜5μm未満にするのが最も好ましい。
[特性]
コネクタなどの電気電子部品を小型化および薄肉化するためには、素材である銅合金板材の引張強さを600MPa以上にするのが好ましく、650MPa以上にするのがさらに好ましい。また、導電率は、30%IACS以上であるのが好ましく、32.5%IACS以上であるのがさらに好ましい。
また、銅合金板材の曲げ加工性の評価として、銅合金板材から長手方向がLD(圧延方向)になるように切り出した曲げ加工試験片を曲げ軸をTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)にして90°W曲げ試験を行うとともに、長手方向がTDになるように切り出した曲げ加工試験片を曲げ軸をLDにして90°W曲げ試験を行った場合に、LDとTDのいずれも90°W曲げ試験における最小曲げ半径Rと板厚tの比R/tが、1.0以下であるのが好ましく、0.5以下であるのがさらに好ましい。
耐応力緩和特性については、銅合金板材を車載用コネクタなどに使用する場合は、TDの耐応力緩和特性が特に重要であるため、長手方向がTDである試験片を用いた応力緩和率により応力緩和特性を評価するのが好ましい。また、銅合金板材の表面の最大負荷応力が0.2%耐力の80%の大きさになるようにして、160℃で1000時間保持した場合に、応力緩和率が10%以下になるのが好ましく、7%以下になるのがさらに好ましい。
疲労破壊を起こし難い銅合金板材であるか否かの指標として疲れ限度比がある。本明細書中において、「疲れ限度比」とは、両振り平面曲げを10回繰り返し行ったときに耐える応力の上限値(疲れ強さ)をばね限界値で除した値を示す。銅合金板材を車載用コネクタなどに使用する場合には、ばね限界値と疲れ強さのいずれも大きいことが重要であるが、コネクタの小型化に対応するためには、信頼性を向上させるために、耐応力緩和特性と同様に、コネクタのばね部を形成するTDの疲れ限度比が特に重要であることがわかった。そのため、疲れ限度比は、長手方向がTDである試験片を用いた疲れ限度比により評価するのが好ましい。従来の銅合金板材では、疲れ限度比が0.4〜0.5程度であるが、コネクタの小型化に伴って、0.55以上であるのが好ましく、0.6以上であるのがさらに好ましい。
近年のコネクタなどの電気電子部品に要求される特性を満足するためには、強度、導電率、曲げ加工性、耐応力緩和特性および疲れ限度比の全てを高いレベルにすることが重量である。
[製造方法]
上述したような銅合金板材は、本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態によって製造することができる。本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態は、上述した組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造する溶解・鋳造工程と、この溶解・鋳造工程後に950℃〜700℃の温度域で最初の圧延パスの熱間圧延を行うとともに700℃未満〜350℃の温度域で熱間圧延を行う熱間圧延工程と、この熱間圧延工程後に圧延率60%以上で冷間圧延を行う冷間圧延工程と、この冷間圧延工程後に400〜750℃で再結晶化を行う再結晶焼鈍工程と、この再結晶焼鈍工程後に圧延率40〜95%で冷間圧延を行う仕上げ冷間圧延工程とを備えている。なお、仕上げ冷間圧延工程後に、さらに150〜450℃で加熱処理(低温焼鈍)を行うのが好ましい。また、熱間圧延工程後には、必要に応じて面削を行い、各熱処理後には、必要に応じて酸洗、研磨、脱脂を行ってもよい。さらに、熱間圧延工程と冷間圧延工程の間において、冷間圧延と熱処理をこの順で繰り返して最終的な板厚を調整してもよい。以下、これらの工程について詳細に説明する。
(溶解・鋳造工程)
一般的な銅合金の溶製方法と同様の方法により、銅合金の原料を溶解した後、連続鋳造や半連続鋳造などにより鋳片を製造すればよい。
(熱間圧延工程)
通常、Cu−Ni−Sn−P系銅合金の熱間圧延では、圧延途中で析出物を生成させないようにするため、700℃以上または750℃以上の高温域で圧延し、圧延終了後に急冷する。しかし、このような通常の熱間圧延条件では、本発明による銅合金板材の実施の形態のように特異な集合組織を有する銅合金板材を製造することはできない。そのため、本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、熱間圧延工程において、950℃〜700℃の温度域で最初の圧延パスの熱間圧延を行うとともに、700℃未満〜350℃の温度域で熱間圧延を行う。但し、熱間圧延後の銅合金板材の比抵抗をρ(μΩ・cm)、同一の熱間圧延後の銅合金板材を900℃で30分間保持した後に急冷したときの比抵抗をρST(μΩ・cm)、銅合金板材が鋳造時に含有するPの濃度をχ(質量%)とすると、熱間圧延後の銅合金板材が、3≦(ρST−ρ)/χ≦16を満たすNi−P化合物などの金属間化合物の析出状態を有する必要がある。
鋳片を熱間圧延する際に、再結晶が発生し易い700℃より高温域で最初の圧延パスを行うことによって、鋳造組織を破壊し、成分と組織の均一化を図ることができる。しかし、950℃を超える高温で圧延を行うと、合金成分の偏析部分など、融点が低下している部分で割れを生じるおそれがあるので好ましくない。したがって、熱間圧延工程中における完全再結晶が確実に生じるようにするためには、950℃〜700℃の温度域で圧延率70%以上の圧延を行うのが好ましく、これによって組織の均一化が一層促進される。なお、1パスで70%以上の圧延率を得るためには大きな圧延荷重が必要になるので、多パスに分けてトータル70%以上の圧延率を確保すればよい。また、本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、圧延歪が生じ易い700℃未満〜350℃の温度域で一定時間の圧延を確保する。この際も700℃未満〜350℃の温度域で複数パスの圧延を行うことができる。また、熱間圧延の最終パス温度は、350℃以上にするのが好ましく、600〜350℃にするのがさらに好ましい。なお、700℃未満〜350℃の温度域における圧延率は、55%以上であるのが好ましく、60%以上であるのがさらに好ましい。また、熱間圧延におけるトータルの圧延率は、85〜95%程度にすればよい。
それぞれの温度域における圧延率ε(%)は、熱間圧延前の鋳片の板厚をt、熱間圧延後の鋳片の板厚をtとすると、ε=(t−t)×100/tによって算出される。例えば、950〜700℃の間で行う最初の圧延パスに供する鋳片の板厚が180mmであり、700℃以上の温度域で圧延を行って、700℃以上の温度で行われた最後の圧延パス終了時に板厚が30mmになり、引き続き圧延を継続して、熱間圧延の最終パスを700℃未満〜350℃の範囲で行い、最終的に板厚10mmの熱間圧延材を得たとする。この場合、950℃〜700℃の温度域で行われた圧延の圧延率は、(180−30)×100/180=83(%)になり、トータルの圧延率は、(180−10)×100/180=94(%)になる。
また、700℃未満〜350℃の熱間圧延によってNi−P化合物が析出する。この熱間圧延後の銅合金板材について、透過型電子顕微鏡(TEM)―エネルギー分散型X線分光による測定を行うと、適切に熱間圧延された銅合金板材では、微細なNi−P化合物が細かく分散しているのがわかる。この時点におけるNi−P化合物の析出量が不足すると、後工程で熱処理を行っても所望の析出状態を得難く、再結晶焼鈍前の冷間圧延において導入される歪が不十分になり、最終的に目的とする集合組織を得難くなる。一方、Ni−P化合物の析出量が多過ぎると、析出物が粗大化して、再結晶焼鈍前の冷間圧延において導入される歪エネルギーに悪影響を及ぼすとともに、最終的な銅合金板材の曲げ加工性が低下する。本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、目的とする特性を有する銅合金板材を得るために、適切に熱間圧延された銅合金板材は、上述した3≦(ρST−ρ)/χ≦16を満たすことがわかった。
(冷間圧延工程)
再結晶焼鈍前に行う冷間圧延工程では、圧延率を60%以上にする必要があり、70%以上にするのが好ましい。圧延率が60%未満であると、歪エネルギーの導入が不十分になり、次工程の再結晶焼鈍時に再結晶核が減少し、結晶粒が粗大化する原因になる。また、95%より大きな圧延率で加工された銅合金板材に対して次工程で再結晶焼鈍を施すと、上述した2.5≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦2.8を満たさなくなり、特に、再結晶集合組織は再結晶前の冷間圧延率に大きく依存するので、圧延率を95%以下にするのが好ましい。
(再結晶焼鈍工程)
従来の銅合金板材の製造方法では、再結晶焼鈍は再結晶化のために行われる。本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、再結晶焼鈍後の配向性において再結晶集合組織が支配的にならない程度に圧延集合組織を残存させるのが好ましい。このような再結晶焼鈍は、400〜750℃の炉温で行うのが好ましい。この温度が低過ぎると再結晶が不十分になり、高過ぎると結晶粒が粗大化してしまい、いずれの場合も、目的とする結晶配向の生成に不利になり、最終的に曲げ加工性の優れた高強度銅合金板材を得るのが困難になる。このような400〜750℃の炉温で行う再結晶焼鈍の保持時間および到達温度は、再結晶焼鈍後の銅合金板材の圧延面において粉末X線回折法によって測定された{hkl}結晶面の配向度をf{hkl}とすると、2.5≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦2.8を満たす結晶配向を有するように設定するのが好ましい。具体的には、本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態において使用する化学組成の銅合金の原料では、400〜750℃、好ましくは500〜750℃の温度で数秒〜数時間保持する加熱条件において適正な条件を設定することができる。なお、上記の(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})の値は、熱量を増大させると小さくなる傾向がある。
(仕上げ冷間圧延工程)
仕上げ冷間圧延は、銅合金板材の強度レベルを向上させるために行われる。仕上げ冷間圧延率が低過ぎると、加工硬化が不足して十分な強度を得難くなる。一方、仕上げ冷間圧延率が高過ぎると、加工硬化も限界に達して起こらなくなり、伸びのない板材になってしまうため、プレス成型素材として使用するには適さない。このように、仕上げ冷間圧延率が低過ぎても高過ぎても強度と曲げ加工性を高いレベルで両立する結晶配向を実現することができない。本発明による銅合金板材の製造方法の実施の形態では、仕上げ冷間圧延率を40〜95%以下にするのが好ましい。上述した各工程の条件を満たし、さらにこのような仕上げ冷間圧延を行うことによって、上述した2.9≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦4.0を満たす結晶配向を有する銅合金板材を得ることができる。なお、最終的な銅合金板材の板厚は、用途によって最適な板厚にされるが、0.05〜1.0mm程度にするのが好ましく、0.08〜0.5mmにするのがさらに好ましい。
(低温焼鈍工程)
仕上げ冷間圧延後には、銅合金板材の残留応力の低減により曲げ加工性を向上させ、空孔やすべり面上の転位の低減により耐応力緩和特性を向上させるために、仕上げ冷間圧延後の結晶配向が変化しない範囲で低温焼鈍を行ってもよい。この低温焼鈍の加熱温度は、材料の温度が150〜450℃になるように設定するのが好ましい。この低温焼鈍により、銅合金板材の強度の低下を殆ど伴わずに曲げ加工性と耐応力緩和特性を向上させることができ、銅合金板材の導電率を上昇させる効果もある。この低温焼鈍の加熱温度が高過ぎると、短時間で軟化し、バッチ式でも連続式でも特性のバラツキが生じ易くなる。一方、加熱温度が低過ぎると、上記の特性を向上させる効果を十分に得ることができない。また、この加熱温度における保持時間は、連続式では安定面から5秒間以上であるのが好ましく、バッチ式ではコスト面から10時間以内であるのが好ましい。
また、仕上げ冷間圧延と低温焼鈍の間または低温焼鈍後に、銅合金板材の形状の矯正を目的とするテンションレベラーの通板を行ってもよい。但し、低温焼鈍後にテンションレベラーの通板を行う場合には、ばね限界値などの特性が変化しないように行う必要がある。
以下、本発明による銅合金板材およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
[実施例1〜8]
0.90質量%のNiと1.44質量%のSnと0.071質量%のPを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例1)、2.15質量%のNiと1.35質量%のSnと0.092質量%のPと0.10質量%のCrと0.05質量%のZrを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例2)、2.27質量%のNiと1.86質量%のSnと0.074質量%のPと0.05質量%のCoと0.005質量%のBを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例3)、0.66質量%のNiと1.70質量%のSnと0.120質量%のPと0.08質量%のMgと0.09質量%のTiを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例4)、1.06質量%のNiと0.79質量%のSnと0.038質量%のPと0.03質量%のSiと0.11質量%のMnを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例5)、0.74質量%のNiと1.40質量%のSnと0.090質量%のPと0.32質量%のZnと0.10質量%のVを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例6)、1.04質量%のNiと0.90質量%のSnと0.056質量%のPと0.036質量%のZnと0.06質量%のFeを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例7)、0.97質量%のNiと1.51質量%のSnと0.080質量%のPと0.026質量%のZnを含み、残部がCuからなる銅合金(実施例8)をそれぞれ溶製し、縦型連続鋳造機を用いて鋳造して、それぞれ厚さ180mmの鋳片を得た。
それぞれの鋳片を920℃に加熱した後に抽出し、熱間圧延を開始した。この熱間圧延では、950℃〜700℃の温度域における圧延率が70%以上になり且つ700℃未満の温度域でも圧延が行われるようにパススケジュールを設定した。なお、700℃未満〜350℃における熱間圧延率をそれぞれ67%(実施例1、4、5、7、8)、73%(実施例2)、62%(実施例3、6)とし、熱間圧延の最終パス温度を600℃〜350℃の間とした。また、鋳片からのトータルの熱間圧延率は約94%であった。熱間圧延後、表層の酸化層を機械的に除去(面削)した。なお、この熱間圧延後の析出状態を示す(ρST−ρ)/χは、それぞれ9.3(実施例1)、15.0(実施例2)、5.9(実施例3)、9.5(実施例4)、10.0(実施例5)、4.3(実施例6)、6.7(実施例7)、9.0(実施例8)であり、いずれも3≦(ρST−ρ)/χ≦16を満たしていた。
次いで、それぞれ圧延率72%(実施例1、2、4、6)、73%(実施例3)、61%(実施例5)、0%(実施例7)、78%(実施例8)で板厚を調整するための冷間圧延を行った後、実施例7を除いて550℃で約3時間熱処理して再結晶を行った。
次いで、それぞれ圧延率85%(実施例1、6、7)、87%(実施例2、8)、83%(実施例3、4)、72%(実施例5)で冷間圧延を行った後、650〜750℃で10〜60秒間再結晶焼鈍を行った。各実施例における再結晶焼鈍の温度と時間については、最終再結晶焼鈍後の結晶配向性を示すIa’ann.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})が2.5〜2.8になるように、各実施例における合金組成に応じて到達温度を650〜750℃の範囲内で調整し、650〜750℃の温度域における保持時間を10〜60秒間の範囲で調整した。なお、最終再結晶焼鈍後の結晶配向性を示すIa’ann.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})は、それぞれ2.69(実施例1)、2.73(実施例2)、2.77(実施例3)、2.64(実施例4)、2.55(実施例5)、2.52(実施例6)、2.62(実施例7)、2.63(実施例8)であり、いずれも2.5≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦2.8を満たしていた。
次いで、最終再結晶焼鈍後の銅合金板材に対して、それぞれ圧延率61%(実施例1、6)、55%(実施例2)、65%(実施例3、4)、85%(実施例5)、90%(実施例7)、42%(実施例8)で仕上げ冷間圧延を行った後、400℃の炉中に5分間装入する低温焼鈍を施した。
このようにして実施例1〜8の銅合金板材を得た。なお、必要に応じて途中で面削を行い、銅合金板材の板厚を0.15mmに揃えた。
次に、これらの実施例で得られた銅合金板材から試料を採取し、平均結晶粒径、X線回折強度、引張強さ、導電率、曲げ加工性、応力緩和率、疲れ限度比を以下のように調べた。
平均結晶粒径は、銅合金板材の表面(圧延面)を研磨した後、エッチングし、その表面を光学顕微鏡で観察して、JIS H0501の切断法により求めた。その結果、平均結晶粒径は、それぞれ5μm未満(実施例1〜4、7、8)、5.1μm(実施例5)、8.7μm(実施例6)であった。
X線回折強度(X線回折積分強度)は、X線回折装置(XRD)を用いて、Mo−Kα線、管電圧40kV、管電流30mAの条件で、銅合金板材の表面(圧延面)について測定した。このように測定したX線回折プロファイル(2θ/θスキャン法)のうち、{111}面、{200}面、{220}面、{311}面、{331}面および{420}面の各々の回折ピークの積分強度I{hkl}を求めた。また、同じX線回折装置を用いて、同じ測定条件で、ランダム方位材料とみなすことができる歪のない純銅粉末(標準試料)の積分強度I {hkl}を求めた。これらの積分強度の比P{hkl}=I{hkl}/I {hkl}をそれぞれの回折面について求め、6つの回折面に対するP{hkl}の和が1になるように各分率f{hkl}=P{hkl}/ΣP{hkl}を定めた。これらの分率を各々の結晶面の配向度とし、得られた銅合金板材の結晶配向性を示すIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})を求めた。その結果、得られた銅合金板材の結晶配向性を示すIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})は、それぞれ3.07(実施例1)、3.03(実施例2)、3.21(実施例3)、3.15(実施例4)、2.99(実施例5)、2.96(実施例6)、3.52(実施例7)、2.98(実施例8)であり、いずれも2.9≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦4.0を満たしていた。
銅合金板材の機械的特性としての引張強さとして、銅合金板材のTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)の引張試験用の試験片(JIS Z2201の5号試験片)をそれぞれ3個ずつ採取し、それぞれの試験片についてJIS Z2241に準拠した引張試験を行い、平均値によってTDの引張強さを求めた。その結果、TDの引張強さは、それぞれ649MPa(実施例1)、631MPa(実施例2)、664MPa(実施例3)、677MPa(実施例4)、629MPa(実施例5)、652MPa(実施例6)、707MPa(実施例7)、605MPa(実施例8)であった。
銅合金板材の導電率は、JIS H0505の導電率測定方法に従って測定した。その結果、導電率は、それぞれ34.2%IACS(実施例1)、32.1%IACS(実施例2)、30.5%IACS(実施例3)、38.8%IACS(実施例4)、39.1%IACS(実施例5)、37.3%IACS(実施例6)、41.0%IACS(実施例7)、34.3%IACS(実施例8)であった。
銅合金板材の曲げ加工性を評価するために、銅合金板材から長手方向がLD(圧延方向)の曲げ試験片(幅10mm)をそれぞれ3個ずつ採取し、それぞれの試験片についてJIS H3110に準拠した90°W曲げ試験を行った。この試験後の試験片について、曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡によって24倍(必要に応じて100倍)で観察して、割れが発生しない最小曲げ半径Rを求め、この最小曲げ半径Rを銅合金板材の板厚tで除することによって、LDのR/t値を求めた。LDのそれぞれ3個の試験片のうち、それぞれ最も悪い結果の試験片の結果を採用してR/t値とした。その結果、LDのR/tは、それぞれ0.0(実施例1〜6、8)、0.3(実施例7)であった。このR/t値が0.5以下であれば、曲げ加工性に優れた銅合金板材であると判定することができる。
銅合金板材の応力緩和特性を評価するために、銅合金板材から長手方向がTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)の曲げ試験片(幅10mm)を採取し、試験片の長手方向中央部の表面応力が0.2%耐力の80%の大きさになるようにアーチ曲げした状態で固定した。なお、表面応力は、表面応力(MPa)=6Etδ/L (但し、Eは弾性係数(MPa)、tは試料の厚さ(mm)、δは試料のたわみ高さ(mm))により定められる。この状態の試験片を大気中において150℃で1000時間保持した後の曲げ癖から、応力緩和率(%)=(L−L)×100/(L−L)(但し、Lは治具の長さ、すなわち、試験中に固定されている試料端間の水平距離(mm)、Lは試験開始時の試料長さ(mm)、Lは試験後の試料端間の水平距離(mm))を用いて、応力緩和率を算出した。その結果、応力緩和率は、それぞれ4.9%(実施例1)、6.8%(実施例2)、6.9%(実施例3)、3.3%(実施例4)、2.9%(実施例5)、2.8%(実施例6)、6.2%(実施例7)、4.8%(実施例8)であった。このように応力緩和率が7%以下の銅合金板材は、車載用コネクタに使用する銅合金板材として高い耐久性を有すると評価することができる。
銅合金板材の疲れ強さを評価するために、銅合金板材から長手方向がTD(圧延方向および板厚方向に対して垂直な方向)の試験片を採取し、JIS Z2273に準拠した疲労試験を行った。この疲労試験では、両振り平面曲げ疲れ限度を測定し、10回の繰り返し数に耐える応力値から疲れ限度比を求めた。なお、「疲れ限度比」とは、一般に疲れ限度を引張強さで除した値を示すが、本明細書中では、JIS H
3130に準拠したモーメント式ばね限界値試験によって得られたばね限界値で除した値を示す。その結果、疲れ限度比は、それぞれ0.62(実施例1)、0.59(実施例2、7)、0.60(実施例3)、0.64(実施例4、6)、0.65(実施例5)、0.66(実施例8)であった。
[比較例1]
板厚を調整するための冷間圧延率を18%とし、最終再結晶焼鈍前の冷間圧延率を96%とし、最終再結晶焼鈍後の結晶配向性を示すIa’ann.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})を2.20とし、仕上げ冷間圧延率を50%とした以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金板材を得た。この比較例で得られた銅合金板材から試料を採取し、平均結晶粒径、X線回折強度、引張強さ、導電率、曲げ加工性、応力緩和率、疲れ限度比について、実施例1〜8と同様の方法により調べた。その結果、平均結晶粒径は15μmであり、X線回折強度から得られた銅合金板材の結晶配向性を示すIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})は2.56であった。また、TDの引張強さは568MPa、導電率は32.1%IACS、LDのR/tは0.0、応力緩和率は4.8%、疲れ限度比は0.53であった。
[比較例2]
仕上げ冷間圧延率を34%とし、板厚を調整するために面削量を変えた以外は、実施例8と同様の方法により、銅合金板材を得た。この比較例で得られた銅合金板材から試料を採取し、平均結晶粒径、X線回折強度、引張強さ、導電率、曲げ加工性、応力緩和率、疲れ限度比について、実施例1〜8と同様の方法により調べた。その結果、平均結晶粒径は5μm未満であり、X線回折強度から得られた銅合金板材の結晶配向性を示すIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})は2.82であった。また、TDの引張強さは580MPa、導電率は35.8%IACS、LDのR/tは0.0、応力緩和率は4.6%、疲れ限度比は0.52であった。
[比較例3]
最終再結晶焼鈍前の冷間圧延率を55%とし、最終再結晶焼鈍後の結晶配向性を示すIa’ann.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})を2.38とし、仕上げ冷間圧延率を81%とし、板厚を調整するために面削量を変えた以外は、実施例8と同様の方法により、銅合金板材を得た。この比較例で得られた銅合金板材から試料を採取し、平均結晶粒径、X線回折強度、引張強さ、導電率、曲げ加工性、応力緩和率、疲れ限度比について、実施例1〜8と同様の方法により調べた。その結果、平均結晶粒径は10μmであり、X線回折強度から得られた銅合金板材の結晶配向性を示すIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})は2.84であった。また、TDの引張強さは610MPa、導電率は34.2%IACS、LDのR/tは0.7、応力緩和率は3.0%、疲れ限度比は0.51であった。
[比較例4]
700℃未満〜350℃における熱間圧延率を50%とし、熱間圧延後の析出状態を示す(ρST−ρ)/χを1.3とし、板厚を調整するための冷間圧延率を72%とし、最終再結晶焼鈍前の冷間圧延率を85%とし、最終再結晶焼鈍後の結晶配向性を示すIa’ann.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})を2.44とし、仕上げ冷間圧延率を60%とした以外は、実施例5と同様の方法により、銅合金板材を得た。この比較例で得られた銅合金板材から試料を採取し、平均結晶粒径、X線回折強度、引張強さ、導電率、曲げ加工性、応力緩和率、疲れ限度比について、実施例1〜8と同様の方法により調べた。その結果、平均結晶粒径は15μmであり、X線回折強度から得られた銅合金板材の結晶配向性を示すIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})は2.83であった。また、TDの引張強さは607MPa、導電率は40.1%IACS、LDのR/tは0.0、応力緩和率は5.4%、疲れ限度比は0.49であった。
[比較例5]
700℃未満〜350℃における熱間圧延率を80%とし、熱間圧延後の析出状態を示す(ρST−ρ)/χを17.5とし、板厚を調整するための冷間圧延率を68%とし、最終再結晶焼鈍前の冷間圧延率を87%とし、最終再結晶焼鈍後の結晶配向性を示すIa’ann.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})を2.78とし、仕上げ冷間圧延率を60%とした以外は、実施例4と同様の方法により、銅合金板材を得た。この比較例で得られた銅合金板材から試料を採取し、平均結晶粒径、X線回折強度、引張強さ、導電率、曲げ加工性、応力緩和率、疲れ限度比について、実施例1〜8と同様の方法により調べた。その結果、平均結晶粒径は5μm未満であり、X線回折強度から得られた銅合金板材の結晶配向性を示すIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})は2.81であった。また、TDの引張強さは650MPa、導電率は35.3%IACS、LDのR/tは0.7、応力緩和率は10.2%、疲れ限度比は0.50であった。
[比較例6]
板厚を調整するための冷間圧延率を0%とし、板厚を調整するための冷間圧延後の熱処理を省略し、最終再結晶焼鈍前の冷間圧延率を83%とし、最終再結晶焼鈍後の結晶配向性を示すIa’ann.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})を2.58とし、仕上げ冷間圧延率を96%とし、最終的な板厚を0.08mmとした以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金板材を得た。この比較例で得られた銅合金板材から試料を採取し、平均結晶粒径、X線回折強度、引張強さ、導電率、曲げ加工性、応力緩和率、疲れ限度比について、実施例1〜8と同様の方法により調べた。その結果、平均結晶粒径は5μmであり、X線回折強度から得られた銅合金板材の結晶配向性を示すIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})は4.05であった。また、TDの引張強さは710MPa、導電率は31.8%IACS、LDのR/tは1.8、応力緩和率は8.3%、疲れ限度比は0.49であった。
[比較例7]
板厚を調整するための冷間圧延率を68%とし、最終再結晶焼鈍後の結晶配向性を示すIa’ann.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})を2.91とし、仕上げ冷間圧延率を60%とした以外は、実施例8と同様の方法により、銅合金板材を得た。この比較例で得られた銅合金板材から試料を採取し、平均結晶粒径、X線回折強度、引張強さ、導電率、曲げ加工性、応力緩和率、疲れ限度比について、実施例1〜8と同様の方法により調べた。その結果、平均結晶粒径は5μm未満であり、X線回折強度から得られた銅合金板材の結晶配向性を示すIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})は4.07であった。また、TDの引張強さは730MPa、導電率は32.7%IACS、LDのR/tは2.6、応力緩和率は13.8%、疲れ限度比は0.48であった。
[比較例8]
溶製した銅合金を0.08質量%のNiと0.09質量%のSnと0.100質量%のPと0.21質量%のZnを含み、残部がCuからなる銅合金とし、700℃未満〜350℃における熱間圧延率を62%とし、熱間圧延後の析出状態を示す(ρST−ρ)/χを1.5とし、板厚を調整するための冷間圧延率を0%とし、板厚を調整するための冷間圧延後の熱処理を省略し、最終再結晶焼鈍前の冷間圧延率を89%とし、最終再結晶焼鈍後の結晶配向性を示すIa’ann.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})を2.61とし、仕上げ冷間圧延率を86%とした以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金板材を得た。この比較例で得られた銅合金板材から試料を採取し、平均結晶粒径、X線回折強度、引張強さ、導電率、曲げ加工性、応力緩和率、疲れ限度比について、実施例1〜8と同様の方法により調べた。その結果、平均結晶粒径は9.8μmであり、X線回折強度から得られた銅合金板材の結晶配向性を示すIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})は2.91であった。また、TDの引張強さは458MPa、導電率は67.4%IACS、LDのR/tは0.0、応力緩和率は13.2%、疲れ限度比は0.55であった。
[比較例9]
溶製した銅合金を1.06質量%のNiと0.78質量%のSnと0.710質量%のPと0.03質量%のSiと0.11質量%のMnを含み、残部がCuからなる銅合金として、実施例1と同様の方法により鋳造して得られた鋳片を熱間圧延したところ、熱間圧延の途中で割れが発生して最終に評価できるサンプルを作成することができなかった。なお、この比較例では、熱間圧延後の析出状態を示す(ρST−ρ)/χが1.8であった。
[比較例10]
溶製した銅合金を1.06質量%のNiと5.30質量%のSnと0.038質量%のPと0.03質量%のSiと0.11質量%のMnを含み、残部がCuからなる銅合金とし、熱間圧延後の析出状態を示す(ρST−ρ)/χを6.1とし、最終再結晶焼鈍後の結晶配向性を示すIa’ann.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})を2.56とした以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金板材を得た。この比較例で得られた銅合金板材から試料を採取し、平均結晶粒径、X線回折強度、引張強さ、導電率、曲げ加工性、応力緩和率、疲れ限度比について、実施例1〜8と同様の方法により調べた。その結果、平均結晶粒径は5μm未満であり、X線回折強度から得られた銅合金板材の結晶配向性を示すIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})は2.93であった。また、TDの引張強さは702MPa、導電率は17.5%IACS、LDのR/tは1.0、応力緩和率は9.1%、疲れ限度比は0.56であった。
これらの実施例および比較例の銅合金板材の組成、製造条件、組織および特性を表2〜表6に示す。
Figure 0005466879
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Figure 0005466879
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表5および表6からわかるように、実施例1〜8の銅合金板材は、いずれも2.9≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦4.0を満たす結晶配向を有し、導電率が30%IACS以上であり、TDの引張強さが600MPa以上という高強度を有し、LDのR/t値が0.5以下の優れた曲げ加工性を有するとともに、車載用コネクタなどに使用する場合に重要になるTDの応力緩和率が7%以下の優れた耐応力緩和特性を有し、疲れ限度比が0.55以上の優れた疲れ強さを有している。
一方、比較例1〜7の銅合金板材は、実施例1、4、5、8と同じ組成の銅合金の原料から、実施例1〜8と異なる製造条件で製造した銅合金板材である。これらの銅合金板材はいずれもIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})が2.9〜4.0の範囲外になっており、疲れ限度比が0.55未満であり、強度、曲げ加工性、耐応力緩和特性および疲れ限度比の全ての特性を満足するものはなかった。比較例1の銅合金板材は、最終再結晶焼鈍前の冷間圧延率が高く、最終再結晶焼鈍条件が過焼鈍になる条件であり、Ia’ann.=f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})が2.5よりも低くなり、良好な特性が得られず、強度が低下した。一方、比較例3の銅合金板材は、最終再結晶焼鈍前の冷間圧延率が不足しており、最終再結晶焼鈍後の結晶配向性を示すIa’ann.が2.5に到達せず、最終工程後の結晶配向性を示すIa’fin.=(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})も2.9に到達しなかった。この比較例3では、強度を目標値の600MPaにするため、仕上げ圧延率を高めに設定したが、曲げ加工性が低下した。比較例2の銅合金板材は、仕上げ圧下率が低過ぎたことにより、最終工程後の結晶配向性を示すIa’fin.が2.9に到達しなかっただけでなく、強度も不十分であった。比較例4の銅合金板材は、熱間圧延の際の700℃未満から350℃の温度域における圧延量や圧延時間が少なかったために析出物の量が不足し、その後の冷間圧延と焼鈍によって最終再結晶焼鈍後の結晶配向性を示すIa’ann.が2.5に到達せず、最終工程後の結晶配向性を示すIa’fin.も2.9に到達しなかった。比較例5の銅合金板材は、熱間圧延の際に過剰に析出が起こるように700℃未満から350℃の温度域における圧延を時間をかけて行ったため、最終工程後の結晶配向性を示すIa’fin.が低くなっただけでなく、曲げ加工性、耐応力緩和特性および疲れ限度比のいずれも良好でなかった。比較例6の銅合金板材は、仕上げ圧延率が高過ぎたために、最終工程後の結晶配向性を示すIa’fin.が4.0を超えており、強度は十分であるものの、曲げ加工性、耐応力緩和特性および疲れ限度比のいずれも良好でなかった。比較例7の銅合金板材は、最終再結晶焼鈍条件が不適切であり、最終再結晶焼鈍後の結晶配向性示すIa’ann.が2.8を超えており、曲げ加工性、耐応力緩和特性および疲れ限度比のいずれも良好ではなかった。
比較例8〜10の銅合金板材は、Ni、SnまたはPの含有量が所定の範囲外であることにより、良好な特性が得られなかった。比較例8の銅合金板材は、NiとSnの含有量が低過ぎたことにより強度レベルが低く、Znを添加しても強度を向上させることができなかった。また、この比較例8では、熱間圧延後の析出物が少なく、結晶粒が粗大化し易い傾向があるものの、耐応力緩和特性の劣化もみられた。比較例9では、Pの含有量が高過ぎたので、熱間圧延の途中で割れが発生して最終に評価できるサンプルを作成することができなかった。比較例10の銅合金板材は、Snの含有量が高過ぎたので、引張強さが高いものの導電率が低くなり、曲げ加工性と耐応力緩和特性も劣っていた。

Claims (8)

  1. 0.1〜5質量%のNiと0.1〜5質量%のSnと0.01〜0.5質量%のPを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、平均結晶粒径が1〜20μmであり、銅合金板材の圧延面における粉末X線回折法により測定された{hkl}結晶面の配向度をf{hkl}とすると、2.9≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦4.0を満たす結晶配向を有することを特徴とする、銅合金板材。
  2. 前記銅合金板材が、3質量%以下のFe、5質量%以下のZn、1質量%以下のMg、1質量%以下のSiおよび2質量%以下のCoからなる群から選ばれる1種以上の元素をさらに含む組成を有することを特徴とする、請求項1に記載の銅合金板材。
  3. 前記銅合金板材が、Cr、B、Zr、Ti、MnおよびVからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計3質量%以下の範囲でさらに含む組成を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の銅合金板材。
  4. 0.1〜5質量%のNiと0.1〜5質量%のSnと0.01〜0.5質量%のPを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造する溶解・鋳造工程と、この溶解・鋳造工程後に950℃〜700℃の温度域で最初の圧延パスの熱間圧延を行うとともに700℃未満〜350℃の温度域で熱間圧延を行う熱間圧延工程と、この熱間圧延工程後に圧延率60%以上で冷間圧延を行う冷間圧延工程と、この冷間圧延工程後に到達温度400〜750℃で再結晶化を行う再結晶焼鈍工程と、この再結晶焼鈍工程後に圧延率40〜95%で冷間圧延を行う仕上げ冷間圧延工程と、仕上げ冷間圧延後に150〜450℃の低温焼鈍を行う低温焼鈍工程とを備え、前記熱間圧延工程において、熱間圧延後の銅合金板材の比抵抗をρ(μΩ・cm)、同一の熱間圧延後の銅合金板材を900℃で30分間保持した後に急冷したときの比抵抗をρST(μΩ・cm)、銅合金板材が鋳造時に含有するPの濃度をχ(質量%)として、3≦(ρST−ρ)/χ≦16を満たすようにパススケジュールを設定して熱間圧延を行い、前記再結晶焼鈍工程において、最終再結晶焼鈍後の銅合金板材の圧延面において粉末X線回折法によって測定された{hkl}結晶面の配向度をf{hkl}として、2.5≦(f{220}+f{311}+f{420})/(0.27・f{220}+0.49・f{311}+0.49・f{420})≦2.8を満たす結晶配向を有するように、400〜750℃の温度域の保持時間および到達温度を設定して熱処理を行うことを特徴とする、銅合金板材の製造方法。
  5. 前記銅合金の原料が、3質量%以下のFe、5質量%以下のZn、1質量%以下のMg、1質量%以下のSiおよび2質量%以下のCoからなる群から選ばれる1種以上の元素をさらに含む組成を有することを特徴とする、請求項4に記載の銅合金板材の製造方法。
  6. 前記銅合金の原料が、Cr、B、Zr、Ti、MnおよびVからなる群から選ばれる1種以上の元素を合計3質量%以下の範囲でさらに含む組成を有することを特徴とする、請求項4または5に記載の銅合金板材の製造方法。
  7. 前記再結晶焼鈍前の冷間圧延率を60〜95%とすることを特徴とする、請求項4乃至6のいずれかに記載の銅合金板材の製造方法。
  8. 前記熱間圧延工程と前記冷間圧延工程の間において、冷間圧延と熱処理をこの順で繰り返すことを特徴とする、請求項4乃至のいずれかに記載の銅合金板材の製造方法。
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