JP5464945B2 - 酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂及び同樹脂を含有する印刷インキ用ワニス - Google Patents

酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂及び同樹脂を含有する印刷インキ用ワニス Download PDF

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Description

本発明は酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂並びに当該樹脂を含有する印刷インキ用ワニスに関して、上記樹脂を含有するワニスの貯蔵安定性と印刷後の乾燥性の両面に優れたものを提供する。
ロジン変性フェノール樹脂はオフセットインキのバインダー成分として大量に使用されている。
通常、オフセット印刷インキは、このロジン変性フェノール樹脂と、植物油と、インキ溶剤又は脂肪酸エステル類と、或は必要に応じてゲル化剤とを加熱混合し、均一化させてインキ用ワニスを調製したのち、顔料を混合し、練肉工程及び調整工程を経て製品化される。
上記オフセットインキにはヒートセット型と酸化重合型の乾燥方式があるが、特に酸化重合型では、インキに含まれるヨウ素価の高い植物油や不飽和結合の多いロジン変性フェノール樹脂を空気酸化によって高分子量化させ、皮膜を形成して乾燥させている。
この場合、酸化促進の目的で金属ドライヤー等の助剤を加えることが多い。
一般に、ロジン変性フェノール樹脂、植物油、その他の成分を加熱混合して調製されるオフセットインキ用のワニスは、タンクに加温して貯蔵されることが多い。
このうち、特に酸化重合型インキに用いるワニスでは、タンク貯蔵中に酸化により表面の皮張り、増粘、色調悪化などの不具合を起こすことがしばしばある。
そこで、酸化防止剤を添加することでワニスの保存安定性を向上させているが(例えば、色材工学ハンドブック初版 1005頁(社団法人色材協会発行、1989年)参照)、その一方で、この酸化防止剤の添加は印刷後の酸化重合を阻害させ、乾燥遅延を引き起こす原因にもなり、乾燥性と貯蔵安定性の両立は非常に困難である。
また、ワニスに使用される植物油には、食用廃油を処理して得られる回収油を使用する場合が増えてきているが、この回収油は精製処理の程度によって品質に格差があり、品質の悪い回収油を使用すると、ワニスの酸化による皮張り、増粘、色調の度合が一層悪化するという問題もある。
そこで、保存時の皮張りの抑制とドライヤーによる酸化重合を阻害しないことを目的としたものに特許文献1がある。
上記特許文献1は、ヒートセット型乾燥方式に酸化重合型乾燥方式を付加しようとするものであり(段落16)、金属ドライヤーを添加するオフセット印刷インキにおいて、酸化防止剤としてアスコルビン酸の酸エステル化合物を3〜7重量%、金属ドライヤーを0.01〜0.05重量%含有させることで、保存時にその酸化防止作用で皮張りを抑制するとともに、ヒートセット型オフ輪印刷の乾燥工程での熱風でアスコルビン酸エステル化合物を失活させて、酸化重合反応を阻害しないようにするものである(段落16)。
特開2008−150469号公報
上記特許文献1では、アスコルビン酸のエステル化合物と金属ドライヤーとの所定量での添加の組み合わせにより、保存性をある程度向上することは考えられるが、上記エステル化合物の添加量が3〜7質量%と比較的多く、コスト的な観点から実用化に疑問がある。
また、上記エステル化合物とドライヤー、或はその他のフェノール系酸化防止剤(同文献1の請求項2)との添加量の調整が簡単ではないうえ、ヒートセット型乾燥方式を前提にしているため、酸化重合型の乾燥方式のインキには適合性が低いという問題もある。
本発明は、上記特許文献1のような酸化防止剤などの添加剤の種類の選択、或は添加量の制御とは異なり、ロジン変性フェノール樹脂の製造方式との関連で、酸化安定性と印刷後の乾燥性との両立を図ることを技術的課題とする。
本発明者らは、前記課題に鑑みて、ロジン変性フェノール樹脂の製造の具体的な条件を鋭意研究した結果、当該樹脂製造時のエステル化反応とロジンの不均化反応がほぼ同じ温度で進行するという知見を得て、特定のイオウ化合物をエステル化反応中に共存させることで、ロジンのエステル化反応中に同時にロジンの不均化反応をも進行させることを着想した。
そして、特定の有機イオウ化合物を適正な添加量の存在下で、ロジン類とレゾール型フェノール樹脂とポリオール類とを反応させると、酸化安定性に優れたロジン変性フェノール樹脂が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明1は、ロジン類(a)と、レゾール型フェノール樹脂(b)と、ポリオール類(c)とを反応して得られるロジン変性フェノール樹脂において、
上記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び下記一般式(1)で表される有機イオウ化合物(d)
を同時に反応させ、
或いは、(a)成分と(b)成分を付加反応し、(d)成分の添加により(c)成分でエステル化反応させ、
或いは、(a)成分と(c)成分をエステル化させてロジンエステルとし、(b)成分を付加反応させ、(d)成分を添加して熟成反応させるとともに、
Figure 0005464945
(式(1)中、Aはベンゼン環又はナフタレン環の芳香族環である;Rは水素、C1〜C20アルキル基又はC1〜C20シクロアルキル基である;nは1〜3の整数である;mは1〜4の整数である;xは1〜4の整数である;yは0〜2の整数である;pは0〜10の整数である。)
上記有機イオウ化合物(d)のロジン類(a)に対する添加量が0.01〜3.0重量%であることを特徴とする酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂である。
本発明2は、上記本発明1において、有機イオウ化合物が、4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフィド、4,4′−ビス(フェノール)スルフィド、2,2′−ビス(p−クレゾール)スルフィド、2,2′−ビス(p−t−ブチルフェノール)スルフィド、4,4′−ビス(レゾルシノール)スルフィド、4,4′−ビス(α−ナフトール)スルフィド、t−アミルフェノールジスルフィドオリゴマー類、ノニルフェノールジスルフィドオリゴマー類より選ばれたスルフィド化合物であることを特徴とする酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂である。
本発明3は、上記本発明1又は2において、レゾール型フェノール樹脂(b)が、C1〜C20アルキル基を有するフェノール類を反応物とすることを特徴とする酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂である。
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、ポリオール類(c)がグリセリン、ペンタエリスリトールの少なくとも一種であることを特徴とする酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂である。
本発明5は、ロジン類(a)と、レゾール型フェノール樹脂(b)と、ポリオール類(c)とを反応して得られるロジン変性フェノール樹脂において、
上記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び下記一般式(1)で表される有機イオウ化合物(d)
を同時に反応させ、
或いは、(a)成分と(b)成分を付加反応した後、(d)成分の添加により(c)成分でエステル化反応させ、
或いは、(a)成分と(c)成分をエステル化させてロジンエステルとした後、(b)成分を付加反応させ、(d)成分を添加して熟成反応させるとともに、
Figure 0005464945
(式(1)中、Aはベンゼン環又はナフタレン環の芳香族環である;Rは水素、C 1 〜C 20 アルキル基又はC 1 〜C 20 シクロアルキル基である;nは1〜3の整数である;mは1〜4の整数である;xは1〜4の整数である;yは0〜2の整数である;pは0〜10の整数である。)
上記有機イオウ化合物(d)のロジン類(a)に対する添加量が0.01〜3.0重量%であることを特徴とする酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂の製造方法である。
本発明6は、上記本発明5において、成分(a)と成分(b)を付加反応させた後、有機イオウ化合物(d)の存在下において240〜280℃の温度条件にて、成分(c)によりエステル化することを特徴とする酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂の製造方法である。
また、本発明7は、上記本発明6において、成分(a)と成分(b)を付加反応させた後、成分(c)と有機イオウ化合物(d)の添加量の一部を添加し、次いでエステル化反応温度到達後に有機イオウ化合物の添加量のさらに一部を添加し、その後、有機イオウ化合物の残部を添加することを特徴とする酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂の製造方法である。
本発明8は、上記本発明1〜4のいずれかの酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂と、植物油と、インキ溶剤又は脂肪酸エステル類とを、或はさらにゲル化剤とを含有することを特徴とする印刷インキ用樹脂ワニスである。
従来、酸化重合型のインキ用ワニスは貯蔵に際して表面の皮張り、増粘、色調悪化などの不具合を起こす場合があるため、貯蔵安定性の改善を目的として酸化防止剤(フェノール系化合物やアスコルビン酸エステルなど)を添加しているが、印刷後の酸化重合が阻害され、乾燥が遅延する問題があった。
本発明では、特定の有機イオウ化合物を適正な添加量の存在下で製造したロジン変性フェノール樹脂を使用するため、これを含有する樹脂ワニスは皮張りなどの問題がなく貯蔵安定性に優れるとともに、印刷後の乾燥性も良好であり、貯蔵安定性と乾燥性を両立できる。
即ち、特定の有機イオウ化合物(d)の存在下でロジン変性フェノール樹脂を製造することで、ロジンの不均化が起こり、構造上安定なデヒドロアビエチン酸やジヒドロアビエチン酸を蓄積させて(特に、レゾール型フェノール樹脂と反応していない未反応ロジンあるいはロジンエステル中に含まれるアビエチン酸等の樹脂酸を不均化させて、安定なデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸等を蓄積させて)、その結果、経時での酸化安定性に優れたロジン変性フェノール樹脂が得られ、もって、当該樹脂を含有するワニスの貯蔵安定性が向上する。
このように、本発明は大豆油などの植物油の改善ではなく、ロジン変性フェノール樹脂の製造方式の改変で酸化安定性を向上するものであるため、食用廃油から得られる回収油を植物油に使用する場合、この回収油の品質にある程度の格差があっても、貯蔵安定性を水準以上に確保することができる。
本発明は、第一に、ロジン類(a)とレゾール型フェノール樹脂(b)とポリオール類(c)とを反応して得られるロジン変性フェノール樹脂において、特定の有機イオウ化合物(d)を所定量共存させた条件で、且つ、所定の手順により、成分(a)〜(c)を反応させた酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂であり、第二に、当該樹脂の製造方法であり、第三に、当該樹脂を含有する印刷インキ用樹脂ワニスである。
上記ロジン類(a)としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、重合ロジン、これらの変性物、さらにはこれらと金属との塩などが挙げられる。
また、ロジン類(a)は、必要に応じて、その一部をロジン以外の不飽和カルボン酸類で変性されたものを使用しても良い。
不飽和カルボン酸類には、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などがあり、不飽和カルボン酸類で変性した(a)成分の具体例としては、一般にマレイン化ロジン、フマル化ロジン、アクリル化ロジンなどが挙げられる。
さらに、ロジン類(a)には、未変性ロジンを多価アルコールでエステル化したロジンエステル、或は、このロジンエステルに不飽和カルボン酸類を付加した不飽和カルボン酸変性ロジエステルなどを使用することもできる。
上記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリエチロールエタン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の4価アルコール、或いは、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−イソブチルジエタノールアミン、N−ノルマルブチルジエタノールアミン等のアミノアルコールなどが挙げられ、グリセリン、ペンタエリスリトールが好ましい。
上記レゾール型フェノール樹脂(b)としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、トリエチルアミンなどのアルカリ触媒の存在下に、フェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)を付加縮合して得られる各種公知の縮合物が挙げられる。この場合、必要により、当該縮合物を中和・水洗して得られたものを使用できるのは勿論である。
上記フェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)を反応させる際の含有量は、通常、F/P(モル比)=1〜3である。
上記フェノール類としては、石炭酸、クレゾール類、アミルフェノール、ビスフェノール−A、p−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノールなどが挙げられる。
前記ロジン類(a)に対するこのレゾール型フェノール樹脂(b)の使用量は特に限定されないが、通常、10〜120重量%であり、好ましくは30重量%〜100重量%である。
尚、本発明では、成分(a)〜(c)を反応してロジン変性フェノール樹脂を製造する場合、成分(b)に替えてその反応物段階のフェノール類とホルムアルデヒドを使用する場合もあるため、ロジン類、フェノール類、ホルムアルデヒド、ポリオール類の4成分を反応させてロジン変性フェノール樹脂を製造する場合を包含する。
前記ポリオール類(c)としては、ロジン変性フェノール樹脂のポリオール成分として従来から知られる各種のもの、例えば、前述のロジンエステルを製造する際の多価アルコールとして列挙した化合物を使用でき、特にグリセリン、ペンタエリスリトールが好ましい。
前記ロジン類(a)に対するポリオール類(c)の使用量は特に限定されないが、通常、カルボキシル基1当量に対して0.3当量〜過剰量を添加すれば良く、より好ましくは0.5〜1.5当量、さらに好ましくは0.7〜1.2当量である。
本発明は、有機イオウ化合物(d)の存在下で成分(a)〜(c)を反応させることを特徴とする。
上記有機イオウ化合物(d)には、4,4′−ビス(フェノール)スルフィド、4,4′−ビス(フェノール)スルフォキド、4,4′−ビス(フェノール)スルフォン、4,4′−ビス(フェノール)チオールスルフィナート、4,4′−ビス(フェノール)チオールスルフォナート、2,2′−ビス(p−クレゾール)スルフィド、2,2′−ビス(p−クレゾール)スルフォキシド、2,2′−ビス(p−クレゾール)スルフォン、2,2′−ビス(p−t−ブチルフェノール)スルフィド、2,2−ビス(p−t−ブチルフェノール)スルフォキシド、2,2′−ビス(p−t−ブチルフェノール)スルフォン、4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフィド、4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフォキシド、4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフィド、4,4′−ビス(6−t−ブチルオルトクレゾール)スルフォキシド、4,4′−ビス(6−t−ブチルオルトクレゾール)スルフォン、4,4′−ビス(6−t−ブチルオルトクレゾール)スルフォン、4,4′−ビス(レゾルシノール)スルフィド、4,4′−ビス(レゾルシノール)スルフォキド、4,4′−ビス(レゾルシノール)スルフォン、1,1′−ビス(β−ナフトール)スルフィド、1,1′−ビス(β−ナフトール)スルフォキシド、1,1′−ビス(β−ナフトール)スルフォン、4,4′−ビス(α−ナフトール)スルフィド、4,4′−ビス(α−ナフトール)スルフォキド、4,4′−ビス(α−ナフトール)スルフォン、t−アミルフェノールジスルフィドオリゴマー、ノニルフェノールジスルフィドオリゴマー、p−クレゾールと塩化チオニルとを反応させて得られるポリスルフォキシドなどが挙げられる。
これらの有機イオウ化合物の中では、ベンゼン環に結合した水酸基が立体障害を受けた化合物が好ましく、具体的には、本発明2に示すように、4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフィド、4,4′−ビス(フェノール)スルフィド、2,2′−ビス(p−クレゾール)スルフィド、2,2′−ビス(p−t−ブチルフェノール)スルフィド、4,4′−ビス(レゾルシノール)スルフィド、4,4′−ビス(α−ナフトール)スルフィド、t−アミルフェノールジスルフィドオリゴマー類、ノニルフェノールジスルフィドオリゴマー類より選ばれたスルフィド化合物が好適である。
そこで、上記有機イオウ化合物を一般式(1)に基づいて説明すると、例えば、p=0、A=ベンゼン環、m=2でR=t−ブチルとメチル、n=1、x=1、y=0の場合、当該イオウ化合物は、4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフィドを意味することになる。
従って、上記スルフィド化合物(好適な有機イオウ化合物)について、対応する市販品には、4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフィド(MONSANTO Corp.社製;Santonox R)、t−アミルフェノールジスルフィドオリゴマー(Arkema Inc.社製;VULTAC 2)、ノニルフェノールジスルフィドオリゴマー(ALBEMARLE Corp.社製;ETHANOX 323)などが挙げられる。
この有機イオウ化合物(d)の添加量はロジン類(a)に対して0.01〜3.0重量%であり、0.05〜1重量%が好ましく、0.1〜0.3重量%がより好ましい。
添加量が0.01重量%より少ないと酸化安定性の効果が出にくく、3.0重量%より多いと樹脂の軟化点が必要以上に下がる傾向が見られる。
本発明のロジン変性フェノール樹脂は、次の(1)〜(3)の3つの方式のいずれかで製造される。
(1)(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を同時に仕込み、反応させる方法。
(2)(a)成分と(b)成分を付加反応した後、(c)成分でエステル化させる工程で、(d)成分を添加し、反応させる方法。
(3)(a)成分と(c)成分をエステル化させてロジンエステルとし、次いで、(b)成分を付加反応させた後、熟成工程で(d)成分を添加し、反応させる方法。
前記本発明5は当該3つの方式(1)〜(3)のいずれかにより、ロジン変性フェノール樹脂を製造する方法である。
前記(a)成分、(b)成分、(c)成分および(d)成分の反応条件は、従来公知のロジン変性フェノール樹脂を製造する際のそれを採用することができる。
例えば、前記(2)の製造方法では、(a)成分を180〜250℃に加熱溶融し、そこに(b)成分を1〜5時間程度滴下して付加反応させた後、200〜220℃で公知のエステル化触媒の存在下または不存在下に(c)成分を加えて均一化させた後、さらに(d)成分を添加して、240〜280℃程度で2〜20時間程度反応させるのである。
上記本発明6のロジン変性フェノール樹脂の製造方法はこの方法(2)の基本原理を述べたものである。
この場合、有機イオウ化合物(d)の添加方法については、所定量を一括添加あるいは分割添加しても良いが、例えば前記(2)の方法では、200〜220℃で(c)成分と所定量の1/3量の(d)成分を加え、所定のエステル化反応温度到達後にさらに1/3量の(d)成分を添加し、1〜2時間後に残りの1/3量の(d)成分を添加して、所望の分子量、酸価、粘度、溶解性に到達するまで反応を行う方法を採用することが好ましい。
上記本発明7のロジン変性フェノール樹脂の製造方法は、上記分割添加方式の基本原理に基づき、有機イオウ化合物を3段階に分けて反応系に添加するものである。
尚、ロジン変性フェノール樹脂を上記(1)〜(3)の方法で製造する際には、反応終点付近で減圧蒸留等により、低沸点の未反応原料、反応中に生成する低沸点物質等を除去することで、より一層樹脂の品質を向上することができる。
本発明8の印刷インキ用ワニスは、ロジン変性フェノール樹脂、植物油、インキ溶剤あるいは脂肪酸エステル類、必要に応じてゲル化剤、その他助剤を配合し、さらに加熱溶解して調製される。
上記植物油としては、特に限定はないが、亜麻仁油、大豆油、桐油、綿実油、コメ油、菜種油、サフラワー油、ゴマ油、ヒマワリ油、オリーブ油、コーン油、パーム油、ヤシ油、パーム核油等のバージン油を単用又は併用することができる。
また、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、コメ油、ゴマ油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油等の食用廃油から回収し、精製させて得られる回収再生植物油を単用又は併用することもできる。さらに、回収再生植物油を上記バージン油と併用することもできる。
本発明の酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂を使用すると、回収油において品質の格差が大きい場合でも、従来公知の当該樹脂を使用した場合に比して、ワニスの保存時に皮張り、増粘、色調悪化が増進することをより抑制できる。





上記インキ溶剤としては、公知公用のインキ溶剤を使用することができ、石油系非芳香族のナフテン系溶剤を使用することが好ましく、特にナフテン系炭化水素を60%以上、好ましくは70%以上含有し、沸点が200℃以上である溶剤が好ましい。
非芳香族系溶剤の市販品としては、AFソルベント(商品名、新日本石油(株)製)などが挙げられる。
また、インキ溶剤の全部又は一部を、植物油のエステル交換、或は植物脂肪酸と一価アルコールとの直接エステル化により得られる脂肪酸エステル類に置き換えて使用しても良い。
印刷インキ用樹脂ワニスの調製においては、上述した通り、必要に応じて、当該ワニスに対して0.01〜3.0重量部のゲル化剤を加えることができる。
上記ゲル化剤としては、アルミニウムアルコラ−トやアルミニウム石鹸等のアルミニウム化合物、マンガン、コバルト、ジルコニウム等の金属石鹸、アルカノ−ルアミン系等のゲル化剤などが適当である。
印刷インキは、本発明で得られた印刷インキ用樹脂ワニスに、黄、紅、藍または墨などの顔料を分散し、必要に応じて耐摩擦性向上剤、金属ドライヤ−、乾燥抑制剤などのコンパウンドを添加し、適切な粘度に調節することにより製造される。
得られた印刷インキは、枚葉インキ、オフ輪インキ等のオフセットインキに適しており、また、新聞インキや凸版インキ用にも使用できる。
以下、レゾール型フェノール樹脂(b)の合成例、当該成分(b)と前記成分(a)及び成分(c)とを反応させたロジン変性フェノール樹脂の実施例、当該ロジン変性フェノール樹脂の製造に際して本発明の有機イオウ化合物によるアビエチン酸の不均化反応を促進する度合の確認試験例、当該ロジン変性フェノール樹脂を含有した樹脂ワニスの調製例、当該樹脂ワニスについての酸化安定性の評価試験例、樹脂ワニスを使用した印刷インキの製造例、当該印刷インキについての乾燥性の評価試験例を順次述べる。但し、下記の合成例、実施例、調製例、製造例において、「%」、「部」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の合成例、実施例、調製例、製造例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
《レゾール型フェノール樹脂の合成例》
撹拌機、冷却管および温度計を備えたフラスコにキシレン400gとp−オクチルフェノール1000gを仕込んで70℃で溶解させ、次いで92%パラホルムアルデヒド325gを加えた後、50℃に冷却し、48%水酸化ナトリウム6.25gを徐々に添加した。
そして、90℃に昇温して8時間付加反応を行い、固形分75%のレゾール型フェノール樹脂を得た。
そこで、上記レゾール型フェノール樹脂(b)と、ロジン類(a)と、ポリオール(c)とを、有機イオウ化合物(d)の存在下で反応させて、ロジン変性フェノール樹脂を製造した。
《ロジン変性フェノール樹脂の実施例》
下記の実施例1〜4のうち、実施例1、3、4は有機イオウ化合物(d)にノニルフェノールジスルフィドオリゴマーを使用した例、実施例2は同じく4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフィドを使用した例である。また、実施例1〜3は有機イオウ化合物(d)をロジン類(a)に対して0.3重量%の割合で添加した例、実施例4は同じく2.0重量%にて添加した例である。
また、下記の比較例1〜4のうち、比較例1は有機イオウ化合物(d)をロジン類(a)に対して4重量%の割合で添加した例、比較例2は同じく0.005重量%にて添加した例である。比較例3は有機イオウ化合物(d)の不存在下で成分(a)〜(c)を反応させたブランク例である。比較例4は従来のロジン変性フェノール樹脂に公知の酸化防止剤(BHT:ジブチルヒドロキシトルエン)を添加した例である。
(1)実施例1
撹拌機、分水受器、冷却管および温度計を備えたフラスコに、ガムロジン800gを仕込み、窒素下に200℃で溶融させた。次いで、前記レゾール型フェノール樹脂711g(固形分533.3g)を3〜4時間かけて滴下した。滴下終了後、ペンタエリスリトール74g、酢酸カルシウム2.4gを添加し均一化させた。
次いで、ノニルフェノールジスルフィドオリゴマー(ALBEMARLE Corp.社製;ETHANOX 323)0.8gを添加し、徐々に250℃まで昇温した。この時点でノニルフェノールジスルフィドオリゴマー0.8gを追加した。2時間後、さらにノニルフェノールジスルフィドオリゴマー0.8gを追加した。ノニルフェノールジスルフィドオリゴマーの添加量はロジンの重量に対して0.3%であった。
そして、所定の酸価、粘度、溶解性に到達するまで反応した後、20kPaで60分間減圧、冷却して固形のロジン変性フェノール樹脂を得た。当該樹脂の酸価は18、軟化点は171℃、n−ヘキサントレランスは2.0g/g、重量平均分子量は80,000であった。
但し、重量平均分子量とは、ゲルパーメーションクロマトグラフ(東ソー(株)製、HLC-8020)および東ソー(株)製のTSK−GELカラムを用い、THF溶媒下で測定した値である(以下の実施例及び比較例も同じ)。
(2)実施例2
撹拌機、分水受器、冷却管および温度計を備えたフラスコに、ガムロジン800gを仕込み、窒素下に200℃で溶融させた。次いで、前記レゾール型フェノール樹脂711g(固形分533.3g)を3〜4時間かけて滴下した。滴下終了後、ペンタエリスリトール74g、酢酸カルシウム2.4gを添加し均一化させた。
次いで、4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフィド(MONSANTO Corp.社製;Santonox R)0.8gを添加し、徐々に250℃まで昇温した。この時点で4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフィド0.8gを追加した。2時間後、さらに4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフィド0.8gを追加した。4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフィドの添加量はロジンの重量に対して0.3%であった。
そして、所定の酸価、粘度、溶解性に到達するまで反応した後、20kPaで60分間減圧、冷却して固形のロジン変性フェノール樹脂を得た。当該樹脂の酸価は19、軟化点は169℃、n−ヘキサントレランスは2.5g/g、重量平均分子量は75,000であった。
(3)実施例3
撹拌機、分水受器、冷却管および温度計を備えたフラスコに、ガムロジン800gを仕込み、窒素下に200℃で溶融させた。次いで、前記レゾール型フェノール樹脂711g(固形分533.3g)を3〜4時間かけて滴下した。滴下終了後、グリセリン78g、酸化亜鉛2.4gを添加し均一化させた。
次いで、ノニルフェノールジスルフィドオリゴマー(ALBEMARLE Corp.社製;ETHANOX 323)0.8gを添加し、徐々に250℃まで昇温した。この時点でノニルフェノールジスルフィドオリゴマー0.8gを追加した。2時間後、さらにノニルフェノールジスルフィドオリゴマー0.8gを追加した。ノニルフェノールジスルフィドオリゴマーの添加量はロジンの重量に対して0.3%であった。
そして、所定の酸価、粘度、溶解性に到達するまで反応した後、20kPaで60分間減圧、冷却して固形のロジン変性フェノール樹脂を得た。当該樹脂の酸価は19、軟化点は161℃、n−ヘキサントレランスは3.0g/g、重量平均分子量は50,000であった。
(4)実施例4
撹拌機、分水受器、冷却管および温度計を備えたフラスコに、ガムロジン800gを仕込み、窒素下に200℃で溶融させた。次いで、前記レゾール型フェノール樹脂711g(固形分533.3g)を3〜4時間かけて滴下した。滴下終了後、ペンタエリスリトール74g、酢酸カルシウム2.4gを添加し均一化させた。
次いで、ノニルフェノールジスルフィドオリゴマー(ALBEMARLE Corp.社製;ETHANOX 323)4.8gを添加し、徐々に250℃まで昇温した。この時点でノニルフェノールジスルフィドオリゴマー5.6gを追加した。2時間後、さらにノニルフェノールジスルフィドオリゴマー5.6gを追加した。ノニルフェノールジスルフィドオリゴマーの添加量はロジンの重量に対して2.0%であった。
そして、所定の酸価、粘度、溶解性に到達するまで反応した後、20kPaで180分間減圧して低沸点物を除去したのち、冷却して固形のロジン変性フェノール樹脂を得た。当該樹脂の酸価は11、軟化点は154℃、n−ヘキサントレランスは3.3g/g、重量平均分子量は51,000であった。
(5)比較例1
ロジンの重量に対して4.0%のノニルフェノールジスルフィドオリゴマーを3分割して用いた以外は、上記実施例1と同様に反応を行った。
得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は10、軟化点は140℃、n−ヘキサントレランスは6.1g/g、重量平均分子量は36,000であり、軟化点の低下と分子量の低分子量化が見られた。
(6)比較例2
ロジンの重量に対して0.005%のノニルフェノールジスルフィドオリゴマーを3分割して用いた以外は、上記実施例1と同様に反応を行った。
得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は23、軟化点は172℃、n−ヘキサントレランスは1.9g/g、重量平均分子量は91,000であった。
(7)比較例3
本発明の有機イオウ化合物を用いなかった以外は、上記実施例1と同様に反応を行った。
得られたロジン変性フェノール樹脂の酸価は24、軟化点は174℃、n−ヘキサントレランスは1.2g/g、重量平均分子量は95,000であった。
(8)比較例4
上記比較例3と同様に反応を行い、反応終了後、仕込んだロジンの重量に対して0.3%のBHTを添加して充分に均一化した後、冷却して固形のロジン変性フェノール樹脂を得た。
当該ロジン変性フェノール樹脂の酸価は24、軟化点は175℃、n−ヘキサントレランスは1.4g/g、重量平均分子量は95,000であった。
そこで、上記実施例1〜4並びに比較例1〜4の各ロジン変性フェノール樹脂の製造に際して、本発明の有機イオウ化合物によるアビエチン酸の不均化反応の促進度合を調べた。
《アビエチン酸に対するデヒドロアビエチン酸の含有比率の確認試験例》
上記実施例1〜4並びに比較例1〜4で得られた各ロジン変性フェノール樹脂の熱分解ガスクロマトグラフィーを行った。運転条件は以下の通りである。
ガスクロマトグラフ:Agilent Technologies社製 7890A GC System
熱分解装置:フロンティア・ラボ(株)製 ダブルショット・パイロライザー MODEL PY-2020iD
カラム:DB−5(J&W社製;0.25mm×30m)
温度:170→320℃、5℃/分
キャリアガス:ヘリウム(1ml/分)
熱分解温度:500℃
各ロジン変性フェノール樹脂を粉末状にした後、サンプルカップに極微量の前記粉末を入れ、これに水酸化テトラメチルアンモニウム10%メタノール溶液1μlを加えたのち、熱分解装置にセットして反応分解により、ロジン変性フェノール樹脂中のデヒドロアビエチン酸、アビエチン酸を上記ガスクロマトグラフで検出した。
アビエチン酸(A)に対するデヒドロアビエチン酸(D)の比率(D/A)は、各成分のクロマトグラム上の面積に基づいて下式(p)により求めた。
D/A=Dのクロマトグラム上の面積/Aのクロマトグラム上の面積 …(p)
図1はその測定結果である。
次いで、下記の通り、印刷インキ用樹脂(ロジン変性フェノール樹脂)に植物油、溶剤などを配合して樹脂ワニスを調製し、調製例1〜4及び比較調製例1〜4の各樹脂ワニスの酸化安定性を試験するとともに、各樹脂ワニスに酸性カーボンブラックを配合して印刷インキを製造した後、当該印刷インキの乾燥性の評価試験を行った。
《樹脂ワニスの調製例》
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた各ロジン変性フェノール樹脂と、大豆白絞油と、トール油脂肪酸ブチル(ハリマ化成(株)製;HT−BU)とを図2に示す配合で加えて、200℃で1時間クッキングした。
その後、100℃に冷却し、アルミキレート(ALCH、川研ファインケミカル(株)製)を加え、さらに200℃で45分間クッキングすることにより、調製例1〜4及び比較調製例1〜4の各樹脂ワニスを得た。
《印刷インキの製造例》
図2で得られた樹脂ワニスと酸性カーボンブラック(三菱化学(株)製、MA7)とを、3本ロ−ルミルを用いて分散した後、トール油脂肪酸ブチル(ハリマ化成(株)製;HT−BU)、前記調製例1〜4及び比較調製例1〜4の各樹脂ワニスおよびドライヤー(6%ナフテン酸マンガン溶液)を図3に示す配合で添加して均一化し、25℃でのインキのタックが9±0.3、フローが35±5mmになるように調整して、製造例1〜4及び比較製造例1〜4の各印刷インキを得た。
《樹脂ワニスの酸化安定性の評価試験例》
調製例1〜4及び比較調製例1〜4の各樹脂ワニスについて、酸化安定性の指標の一つとして、樹脂ワニス表面の皮張り試験を行った。
即ち、上記各樹脂ワニス300gを500ml容のビーカーに入れ、90℃に調節したオーブン内に置き、表面の皮張りの発生の有無を、試験開始から42日間に亘り経時的に目視観察した。
図4はその試験結果である。
《印刷インキの乾燥性の評価試験例》
製造例1〜4及び比較製造例1〜4の各インキ0.3ccをRIテスター((株)明製作所製)2分割ロ−ルでア−ト紙に展色した後、60℃の環境下に置いた際に、指触で乾燥状態を比較して、下記の基準で乾燥性の優劣を評価した。
○:指のべたつきなし。
×:指がべたついた。
図5はその試験結果である。
《各種試験例による総合評価》
有機イオウ化合物(d)を添加しないで成分(a)〜(c)を反応させた比較例3(=ブランク例)では、試験開始から5日後に既に皮張り現象が生じたが(図3参照)、印刷後の乾燥性は良好であった(図5参照)。有機イオウ化合物を0.005重量%しか添加しなかった比較例2では、28日後に皮張りが発生したが、印刷後の乾燥性は良好であった。通常のロジン変性フェノール樹脂に公知の酸化防止剤(BHT)を添加した比較例4では、比較例2と同様に28日後に皮張りが発生し、印刷後の乾燥性も悪かった(図5参照)。また、有機イオウ化合物を4重量%に増量した比較例1では、42日経過時点でも皮張りは認められなかったが(図4参照)、印刷後の乾燥性は悪くてミスチングが発生する恐れもあり、インキ適性が劣るものと判断できる(図5参照)。
これに対して、ロジン類に対して有機イオウ化合物を適正範囲で添加した実施例1〜4では、共に42日経過時点でも皮張りは認められず(図4参照)、印刷後の乾燥性も良好であった(図5参照)。
そこで、図1に基づいてアビエチン酸に対するデヒドロアビエチン酸の比率(D/A)を見ると、実施例1〜4のそれは共に比較例1〜4よりかなり大きいことが認められ、これにより実施例1〜4の優れた酸化安定性が裏付けられる。
即ち、本発明の有機イオウ化合物の存在下で反応すると、アビエチン酸の不均化が起こりデヒドロアビエチン酸が蓄積するため、D/Aが大きくなるものと思われ、実施例1〜4では、特に有機イオウ化合物を使用していない比較例3〜4に比べてD/Aが大きく、アビエチン酸の不均化によりデヒドロアビエチン酸が蓄積されていることが明らかである。
一方、実施例1〜3のロジン変性フェノール樹脂の軟化点は共に161〜171℃であり、この点が実施例1〜3の印刷後の乾燥性の良さを裏付けるものと思われる。また、ロジン類に対する有機イオウ化合物の添加量が2重量%である実施例4のそれは154℃であって、乾燥性に実用上の問題はなかった。
これに対して、有機イオウ化合物を4重量%に増量した比較例1では、軟化点は140℃であり、これにより印刷後の乾燥性が劣ったものと思われ、有機イオウ化合物(d)を適正範囲を越えて添加すると、印刷後の乾燥性に悪影響を及ぼすことが判断できる。
また、この比較例1では、図1の比率(D/A)はそれほど大きくなく、デヒドロアビエチン酸の蓄積よりもむしろ、カルボキシル基、メチル基、イソプロピル基等が脱離した成分の比率が大きくなったものと思われ、これにより、酸価や軟化点の大幅な低下が起こったものと推定できる。
以上の通り、本発明の有機イオウ化合物が適正な添加量で存在する下で、ロジン変性フェノール樹脂を製造することにより、インキの乾燥性に悪影響を及ぼすことなく、酸化安定性に優れたものを製造できることが確認できた。これにより、樹脂ワニスの状態でタンク保存をすると、変質の少ない長期保存が可能となる。
実施例1〜4及び比較例1〜4のロジン変性フェノール樹脂について、アビエチン酸に対するデヒドロアビエチン酸の含有比率の確認試験の結果をまとめた図表である。 調製例1〜4及び比較調製例1〜4の各樹脂ワニスの組成をまとめた図表である。 製造例1〜4及び比較製造例1〜4の各印刷インキの組成をまとめた図表である。 調製例1〜4及び比較調製例1〜4の各樹脂ワニスについて、酸化安定性の評価試験結果をまとめた図表である。 製造例1〜4及び比較製造例1〜4の各印刷インキについて、乾燥性の評価試験結果をまとめた図表である。

Claims (8)

  1. ロジン類(a)と、レゾール型フェノール樹脂(b)と、ポリオール類(c)とを反応して得られるロジン変性フェノール樹脂において、
    上記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び下記一般式(1)で表される有機イオウ化合物(d)
    を同時に反応させ、
    或いは、(a)成分と(b)成分を付加反応し、(d)成分の添加により(c)成分でエステル化反応させ、
    或いは、(a)成分と(c)成分をエステル化させてロジンエステルとし、(b)成分を付加反応させ、(d)成分を添加して熟成反応させるとともに、
    Figure 0005464945
    (式(1)中、Aはベンゼン環又はナフタレン環の芳香族環である;Rは水素、C1〜C20アルキル基又はC1〜C20シクロアルキル基である;nは1〜3の整数である;mは1〜4の整数である;xは1〜4の整数である;yは0〜2の整数である;pは0〜10の整数である。)
    上記有機イオウ化合物(d)のロジン類(a)に対する添加量が0.01〜3.0重量%であることを特徴とする酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂。
  2. 有機イオウ化合物が、4,4′−ビス(6−t−ブチルメタクレゾール)スルフィド、4,4′−ビス(フェノール)スルフィド、2,2′−ビス(p−クレゾール)スルフィド、2,2′−ビス(p−t−ブチルフェノール)スルフィド、4,4′−ビス(レゾルシノール)スルフィド、4,4′−ビス(α−ナフトール)スルフィド、t−アミルフェノールジスルフィドオリゴマー類、ノニルフェノールジスルフィドオリゴマー類より選ばれたスルフィド化合物であることを特徴とする請求項1に記載の酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂。
  3. レゾール型フェノール樹脂(b)が、C1〜C20アルキル基を有するフェノール類を反応物とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂。
  4. ポリオール類(c)がグリセリン、ペンタエリスリトールの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂。
  5. ロジン類(a)と、レゾール型フェノール樹脂(b)と、ポリオール類(c)とを反応して得られるロジン変性フェノール樹脂において、
    上記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び下記一般式(1)で表される有機イオウ化合物(d)
    を同時に反応させ、
    或いは、(a)成分と(b)成分を付加反応した後、(d)成分の添加により(c)成分でエステル化反応させ、
    或いは、(a)成分と(c)成分をエステル化させてロジンエステルとした後、(b)成分を付加反応させ、(d)成分を添加して熟成反応させるとともに、
    Figure 0005464945
    (式(1)中、Aはベンゼン環又はナフタレン環の芳香族環である;Rは水素、C 1 〜C 20 アルキル基又はC 1 〜C 20 シクロアルキル基である;nは1〜3の整数である;mは1〜4の整数である;xは1〜4の整数である;yは0〜2の整数である;pは0〜10の整数である。)
    上記有機イオウ化合物(d)のロジン類(a)に対する添加量が0.01〜3.0重量%であることを特徴とする酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂の製造方法。
  6. 成分(a)と成分(b)を付加反応させた後、有機イオウ化合物(d)の存在下において240〜280℃の温度条件にて、成分(c)によりエステル化することを特徴とする請求項5に記載の酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂の製造方法。
  7. 成分(a)と成分(b)を付加反応させた後、成分(c)と有機イオウ化合物(d)の添加量の一部を添加し、次いでエステル化反応温度到達後に有機イオウ化合物の添加量のさらに一部を添加し、その後、有機イオウ化合物の残部を添加することを特徴とする請求項6に記載の酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂の製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化安定型のロジン変性フェノール樹脂と、植物油と、インキ溶剤又は脂肪酸エステル類とを、或はさらにゲル化剤とを含有することを特徴とする印刷インキ用樹脂ワニス。
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