JP5464397B2 - 人体等価電磁ファントム - Google Patents

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Description

本発明は、人体等価電磁ファントムに関する。
携帯電話などの移動通信機器やテレビ、冷蔵庫等の家電製品が発する電磁波、および通信塔や高圧送電線等が発する電磁波、近年開発が進んでいるGHz帯の近距離通信を使用したウウエアラブル機器などが人体へ与える影響が関心を集め、種々の調査・研究が進められている。
一般に電磁波が人体へ与える影響を検討する場合、人体の代わりに電磁波に対する電気的特性が人体と等価な物質からなる擬似人体(以下「ファントム」という。)を使用して測定を行う。
ファントムは、その形状と組成から液体ファントム、半固体(固体)ファントム、又は固体(剛体)ファントムに分類され、それぞれに異なる特徴を有している。従来のファントムに関する技術としては、例えば下記に示される特許文献に記載がされている。
特開2000−082333号公報 特開2004−236876号公報 特開2006−078232号公報 特開2006−251012号公報
液体ファントムは比較的安価だが、組成に毒性の高い化学物質が採用せざるを得ない場合がある。また充填容器を別途必要とするため、使用用途が限られてしまうといった課題もある。また電気的特性が変化しやすく、その都度調整が必要であるといった課題もある。
また固体(剛体)ファントムは、価格が高く、セラミック製で堅固なため、経時変化に対する耐久性は高いが、比重が大きい上、周波数範囲も狭く、汎用性に乏しいといった課題がある。特にインプラントには活用できないといった課題がある。
ところで、人体は脳、筋肉、内臓、脂肪、骨などの各部位によって含水率や組織構造が異なる。さらに人体の電気特性は電磁波の周波数帯域によって細分される。それゆえ、これまでは測定の際は対象部位の電気特性と周波数帯域の双方に対応した複数のファントムを準備しなければならなかった。
また一般に広帯域ファントムといわれるものであっても、測定評価可能な帯域は最大で6GHzまでであり、現行でそれ以上の帯域を網羅するものは公表されていない。
そこで、本発明は上記課題を解決し、より広帯域な周波数帯域に適応可能であって、より実際の人体の電気的特性に近く、より長期安定な人体等価電磁ファントムを提供することを目的とする。
本発明の一手段に係るファントムは、タルク及び水を含む。なおこの場合において、炭酸カルシウム、寒天、メタノール、塩化マグネシウム、及び食用油を含むことが好ましい。またこの場合において、限定されるわけではないが、増粘剤を含むことはより望ましい。
また、本発明の他の一手段に係る人体等価電磁ファントムは、パラフィン、アルミニウム粉末、ポリエチレン粉末を固化した第一のファントムの周囲に、タルク及び水を含む第二のファントムを配置してなる。なおこの場合において、第二のファントムは炭酸カルシウム、寒天、アルコール、塩化マグネシウム、及び食用油を含むことが好ましい。またこの場合において、限定されるわけではないが、増粘剤を含むことはより望ましい。
本発明により、より広帯域な周波数帯域に適応可能であって、より実際の人体の電気的特性に近く、より長期安定な人体等価電磁ファントムを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の記載そのものに狭く限定されるものではない。
(実施形態1)
本実施形態に係るファントム(以下「本ファントム」という。)は、炭酸カルシウム、タルク、寒天、水を含み、更に、増粘剤、アルコール、塩化マグネシウム、食用油を含むことを特徴とする。
本ファントムにおいて、タルクと水は本ファントムの必須成分であり、主原料である。用いるタルクと水の合わせた量は、ファントム全量に対し、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上含有されていることが好ましい。
本ファントムにおいて炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、寒天、アルコール及び食用油は、本ファントムにおいて用いることがより好ましい原料であり、ファントム全量に対し、少なくとも20%以上含有されていることが好ましい。
本ファントムにおいてアルコールは、誘電率調整のために用いられるものであり、用いるアルコールとしては、例えばメタノールやエタノールは好ましい一例である。またアルコールはファントム全量に対し1%以上10%以下の範囲で含有されていることが好ましい。
本ファントムにおいて炭酸カルシウムは、ファントム全量に対し1%以上10%以下の範囲で含有されていることが好ましい。
本ファントムにおいて塩化マグネシウムは、ファントム全量に対し1%以上10%以下の範囲で含有されていることが好ましい。
なお本実施形態においては、炭酸カルシウム及び塩化マグネシウムを用いているが、これらのいずれかに加えて、又は、これの代わりに塩化ナトリウムを用いることも可能ではある。この場合、ファントムに含まれる量としては、ファントム全量に対し1%以上10%以下であることが好ましい。
本ファントムにおいて食用油は、ファントム全量に対し1%以上10%以下の範囲で含有されていることが好ましい。なお食用油としては、限定されること無く種々のものを採用することができるが例えば菜種油は好ましい一例である。
本ファントムにおいて増粘剤は必須成分ではないが、加えておくことが好ましい。加える像粘剤の量としては、ファントム全量に対し1%以上10%以下の範囲で含有されていることが好ましい。なお増粘剤としては、限定されること無く種々のものを採用することができるが例えばポリアミド樹脂は好ましい一例である。
なお本実施形態においてファントムは不可避の不純物が含まれるとともに、上記構成要件の他に物質を適宜選択し加えることができる。
本実施形態によるファントムは、様々な大きさ、形状のものを作製することができ、その大きさ等により製造は適宜調整可能であるが、例えば、攪拌機に水と寒天を加えて攪拌し、タルク、炭酸カルシウム、塩化マグネシウムを加えてさらに攪拌する。そしてその後更に増粘剤を加えて十分に攪拌した後、メタノールと食用油を加えて再び攪拌し、加熱容器に移し、攪拌しながら加熱する。沸騰し、クリーム状になったら、成型用容器に流し込み、常温で放置、冷却後に型抜、整形することで作製することができる。
なお、本実施形態に係るファントムには、更に、合成樹脂の皮膜が表面に施されている。これにより水分蒸散を防ぎ、長期にわたる性能を維持することができる。合成樹脂の皮膜としては、限定されるわけではないが、電気的特性に影響を与えないことと水分の蒸散を防ぐことのバランスが良い皮膜を形成することができる物質であることが好ましく、例えばビニル樹脂やポリオレフィン樹脂であることが好ましい一例である。
以上、本実施形態によると、人体特に筋肉を擬似したファントムとなり、より人体の構成に近い人体等価電磁ファントムとなる。すなわち人体と同じ形状に作製し、感覚的にも人体と同等にすることができ様々な評価試験に用いることができる。また、本ファントムは柔軟性を有するためファントム内にペースメーカー等の電子機器や調査危機などを隙間なく埋め込んで作製することいわゆるインプラントでの測定が可能となる。なおインプラントは、インプラントする機器を成形型の内部に位置決めしておいて人体等価電磁ファントムの成型時に同時に埋め込むことも出来るし、人体等価電磁ファントムに凹部を設けて成型した後に機器を装着して、あとから隙間を同等の電気特性を有するファントムを充填することも出来る。さらに全体の形状を維持したまま、中に埋め込んだ機器を取り出すことも、柔軟性があることから可能である。更に本実施形態に係るファントムは、適応周波数帯域が400MHzから11GHzまでと広く、アンテナ通信等に使用される周波数帯域のほとんどを網羅することができる。更に、本実施形態に係るファントムは、従来の固体ファントムと異なり高温炉等の設備が不要となり、容易に作製が可能であり安価となる。また特に、人間や環境に無害で廃棄処分が容易な物質を原料としているためより安全で好ましいものとなる。
(実施形態2)
本実施形態に係る人体等電磁ファントム(以下「本ファントム」という。)は、パラフィン、アルミニウム粉末、ポリエチレン粉末を固化した第一のファントムの周囲に、炭酸カルシウム、タルク、寒天、水を含み、更に、増粘剤、メタノール、塩化マグネシウム、食用油を含む第二のファントムを配置してなることを特徴とする。なお第二のファントムの構成については上記実施形態1に記載のものを採用することができる。
本実施形態に係る第一のファントムは、パラフィン、アルミニウム粉末、ポリエチレン粉末を固化したことを特徴の一つとする。
本実施形態においてパラフィンは、限定されることなく種々のものを採用することができるが、常温常圧で固体又は半固体、高温では溶融して適度な流動性を有するものが好ましい。
本実施形態に係る第一のファントムは、上記パラフィンを加熱溶解し、この中にアルミニウム粉末、ポリエチレン粉末を加え、所望の形状の空間を有する成形容器に移して十分に押し固め、固化、型抜、整形することで製造することができる。
以上、第一のファントムは人体特に骨と同様の電気特性を擬似できるファントムとなる。また、本実施形態に係る第一のファントムは、人間や環境に無害で廃棄処分が容易な物質を原料としているためより安全で好ましいものとなる。
また、本実施形態に係る人体等価電磁ファントムは、第一のファントムの周囲に、第二のファントムが配置されていることを特徴とする。本実施形態によるファントムは、様々な大きさ、形状のものを作製することができるため適宜調整可能であるが、例えば、攪拌機に水と寒天を加えて攪拌し、タルク、炭酸カルシウム、塩化マグネシウムを加えてさらに攪拌する。そしてその後更に増粘剤を加えて十分に攪拌した後、メタノールと食用油を加えて再び攪拌し、加熱容器に移し、攪拌しながら加熱する。沸騰し、クリーム状になったら、上記第一のファントムを挿入した成型用容器に流し込み、常温で放置、冷却後に型抜、整形することで作製することができる。
なお、本実施形態に係る人体等価電磁ファントムには、更に、合成樹脂の皮膜が表面に施されている。これにより水分蒸散を防ぎ、長期にわたる性能を維持することができる。合成樹脂の皮膜としては、限定されるわけではないが、電気的特性に影響を与えないことと水分の蒸散を防ぐことのバランスが良い皮膜を形成することができる物質であることが好ましく、例えばビニル樹脂やポリオレフィン樹脂であることが好ましい一例である。
以上、本実施形態によると、人体特に骨を擬似したファントムに、人体特に筋肉を擬似したファントムを配置することでより人体の構成に近い人体等価電磁ファントムとなる。すなわち人体と同じ形状に作製し、感覚的にも人体と同等にすることができ様々な評価試験に用いることができる。また、本実施形態によると骨を擬似した第一のファントムに第二のファントムを配置することで適度な柔軟性を有するセミハードな状態となり、長期にわたる形状及び性能の維持を図ることが可能となり、またファントム内にペースメーカー等の電子機器や調査危機などを隙間なく埋め込んで作製することいわゆるインプラントでの測定が可能となる。なおインプラントは、インプラントする機器を成形型の内部に位置決めしておいて人体等価電磁ファントムの成型時に同時に埋め込むことも出来るし、人体等価電磁ファントムに凹部を設けて成型した後に機器を装着して、あとから隙間を同等の電気特性を有するファントムを充填することも出来る。さらに全体の形状を維持したまま、中に埋め込んだ機器を取り出すことも、柔軟性があることから可能である。更に本実施形態に係るファントムは、適応周波数帯域が400MHzから11GHzまでと広く、アンテナ通信等に使用される周波数帯域のほとんどを網羅することができる。更に、実施形態1と同様に、実施形態に係るファントムは、従来の固体ファントムと異なり高温炉等の設備が不要となり、容易に作製が可能であり安価となる。また特に、人間や環境に無害で廃棄処分が容易な物質を原料としているためより安全で好ましいものとなる。
以下、上記実施形態に記載したファントムに関し、実際に作製し、その評価を行なった。以下具体的に示す。
(第一のファントム)
攪拌機にパラフィンを加熱溶解し、この中にアルミニウム粉末、ポリエチレン粉末を混合し、混合した。この後、円柱状の空間を有する整形容器に移して十分に押し固め、固化、型抜き、整形した。この結果作製した第一のファントム(擬似骨格)を図1に示し、図2に、このファントムの誘電率と導電率の周波数特性の測定値と人間の骨に関する同パラメータの文献値を示す。この結果、十分に人間の骨に近似したものとなっていることが確認できた。
(第一及び第二のファントム)
攪拌機に水、寒天を入れて攪拌した後タルク、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、増粘剤を加えて再び攪拌し、更にその後メタノール、食用油を加えて攪拌した。その後、加熱容器に移し、攪拌しながら加熱し、沸騰させてクリーム状になったら擬似骨格を装着した形成用容器に流し込み、常温で放置し、冷却後に型抜、整形した。この結果作製した人体等価電磁ファントムの例を図3乃至5に示す。なお図3では、一辺20cmの立方体形状のファントムとし、図4では直径20cmの球形状のファントムし、図5では人間の上半身に似せたファントムとした。なお図5中(A)はその正面図を、(B)は左側面図を、(C)は背面図を示す。図5では成人男子の上半身と同じ形状に成型してあるが、女子の形状にすることも容易であるし、頭部のみや腕の部分のみなどの形状を作るのも容易であり、人体の各部に似せて作製することが可能となる。
なお、このファントムにおいて、第二のファントム(擬似筋肉ファントム)単独の比誘電率及び導電率の周波数特性の測定結果及び目標値の関係について図6に示す。この結果、本図で示すように、400Hzから11GHzの広い周波数範囲において、誘電率、電気抵抗ともに人体の電気特性の実測値(文献値)と良く一致していることが確認できた。
また、本実施例で作成した第二のファントムの重量の変化について測定を行った。この結果を図7に示す。本図で示すように、皮膜を施すことで、皮膜がない場合、急激に減少し、50%以下に低下してしまう重量が10日を経過しても90%程度にまで維持できることが確認でき、しかも形状に大きな変化は見られなかった。これにより長期に形状、重量、性能を維持することができることを確認した。
(比較例)
比較例として、寒天、食塩、水を攪拌機に加えて攪拌した後、ポリエチレン粉末、アジ化ナトリウム、増粘剤を加えて更に攪拌した。次に、この攪拌後の物質を耐熱性のビニール容器に入れ、密封して加熱殺菌し、セミハードな人体等価電磁ファントムを得た。
また、この作製したファントムに対し、誘電率及び伝導率の周波数特性を測定した。この結果、400MHzから5GHzまでは人体におけるそれと同様の特性を有していることが確認できたが、5GHz以上では、人体におけるそれとは大きく異なっていた。また、本比較例ではアジ化ナトリウムを使用しているため、環境及び人体に影響が大きいといった課題も残っている。
本発明はファントムとして産業上の利用可能性がある。
第一のファントムの外観図である。 第一のファントムにおける誘電率と導電率に関して周波数特性と文献値との近似を示すグラフ図である。 第二のファントムの規範モデル(立方体)外観図である。 第二のファントムの規範モデル(球体)外観図である。 第二のファントムの成人男子外観図である。 第二のファントムにおける誘電率と導電率に関して周波数特性と文献値との近似を示すグラフ図である。 被膜による水分蒸発防止効果を示すグラフ図である。

Claims (8)

  1. タルク、水、炭酸カルシウム及び寒天を含むファントムであって、
    前記タルク及び水をあわせた量は、ファントム全量に対し70%以上であるファントム。
  2. アルコール、塩化マグネシウム、及び食用油を含む請求項1記載のファントム。
  3. 増粘剤を含む請求項1記載のファントム。
  4. 表面に皮膜が形成されてなる請求項1記載のファントム。
  5. パラフィン、アルミニウム粉末、ポリエチレン粉末を固化した第一のファントムの周囲に、タルク、水、炭酸カルシウム及び寒天を含む第二のファントムを配置してなる人体等価電磁ファントムであって、
    前記タルク及び水をあわせた量は、ファントム全量に対し70%以上である人体等価電磁ファントム。
  6. 第二のファントムがアルコール、塩化マグネシウム、及び食用油を含む請求項5記載の人体等価電磁ファントム。
  7. 前記第二のファントムが増粘剤を含む請求項5記載の人体等価電磁ファントム。
  8. 前記第二のファントムの表面に皮膜が形成されてなる請求項5に記載の人体等価電磁ファントム。
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