JP5459243B2 - ビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜と光アイソレータ - Google Patents

ビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜と光アイソレータ Download PDF

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Description

本発明は、加工用高出力レーザー装置における戻り光対策として用いられる光アイソレータに係り、特に、ファラデー回転子として使用されるビスマス置換型希土類鉄ガーネットと光アイソレータの改良に関するものである。
光通信に利用されている半導体レーザーやレーザー加工等に利用されている固体レーザー等は、レーザー共振器外部の光学面や加工面で反射された光がレーザー素子に戻ってくるとレーザー発振が不安定になる。発振が不安定になると、光通信の場合には信号ノイズとなり、加工用レーザーの場合はレーザー素子が破壊されてしまうことがある。このため、このような反射戻り光がレーザー素子に戻らないように遮断するため光アイソレータが使用される。
ところで、近年、YAGレーザー(加工用レーザー)の代替として注目されているファイバレーザーに関し、その光アイソレータに用いられるファラデー回転子として、従来、テルビウム・ガリウム・ガーネット結晶(以下、TGGと称する)やテルビウム・アルミニウム・ガーネット結晶(以下、TAGと称する)が用いられてきた。
しかし、TGGやTAGは単位長さ当たりのファラデー回転係数が小さく、光アイソレータとして機能させるために45度の偏光回転角を得るには光路長を長くする必要があり、大きな結晶を用いなければならなかった。また、高い光アイソレーションを得るには、結晶に一様で大きな磁場をかける必要があるため、強力で大きな磁石を用いていた。このため、光アイソレータの寸法は大きなものとなっていた。また、光路長が長いためレーザーのビーム形状が結晶内で歪むことがあり、歪みを補正するための光学系が必要となる場合もあった。更に、TGGは高価でもあるため、小型で安価なファラデー回転子が望まれていた。
一方、光通信分野で専ら用いられているビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜(以下、RIGと称する)を、このタイプの光アイソレータに使用することで大きさを大幅に小型化することが可能である。しかし、RIGは、使用する光の波長が加工用レーザーに用いられる1.1μm付近まで短くなると、鉄イオンによる光吸収が大きくなり、この光吸収による温度上昇により性能劣化を起こすことが知られている。
そこで、RIGにおける温度上昇の問題を改善する方法が提案されている。例えば、特許文献1〜2には、通常は研磨により除去してしまうRIG育成用の基板であるガドリニウム・ガリウム・ガーネット基板(以下、GGG基板と称する)を残したままにしておき、RIGで発生した熱を放出し易くした方法が記載されている。また、以前から放熱基板として使用されているサファイア等の高熱伝導率基板を用いる方法(特許文献3)も提案されている。
しかし、いずれの手法もRIGにおいて発生した熱を放熱させるための技術に過ぎず、これ等手法により光吸収が減る訳でないため、RIG自体における光吸収を減らすことでRIGにおける発熱量を減少させる技術が望まれている。
ところで、加工用レーザーの波長である1μm程度の光に対しては、上述のRIGに含まれる鉄イオンがこの光を吸収していることが分かっている。しかし、鉄はRIGにおいてファラデー効果を生み出している重要な元素であり、鉄成分を減らした場合、光アイソレータとして要求されている45°のファラデー回転角を得るために必要なRIGの膜厚が増えてしまい、結局のところRIGにおける光吸収量の低減は達成されない。
そこで、1μm帯域付近の波長におけるRIGの光吸収を減らす技術として、従来から広く一般に用いられている格子定数が1.2497nmである(CaGd)3(ZrMgGa)512基板(以下、SGGGと称する)に代えてその格子定数がより大きい非磁性ガーネット基板をRIG育成用基板として適用することにより、鉄イオンの光吸収を短波長側にシフトさせる方法が提案されている。例えば、特許文献4では、格子定数が1.256nmであるGd3(ScGa)512基板(以下、GSGGと称する)を用いてRIGを育成した例が記載され、また、特許文献5や特許文献6では、格子定数が1.264〜1.279nmの範囲にあるSm3(ScGa)512基板(以下、SSGGと称する)あるいはLa3(ScGa)512基板(以下、LSGGと称する)を用いてRIGを育成した例が記載されている。
そして、いずれの技術も、従来から用いられているSGGGよりその格子定数が大きい非磁性ガーネット基板を用いてRIGを育成させる方法で、これ等の方法により、RIGに含まれる鉄イオンの光吸収を短波長側にシフトさせることで光吸収量を減らすものであった。
しかし、格子定数が1.256nmであるGd3(ScGa)512基板(GSGG)を適用して育成された特許文献4のRIGにおいては、ファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚さを調整したとき、波長1.05μmにおける吸収損失は1dB程度であり充分な低損失のRIGにはなっていない。一方、格子定数が1.264〜1.279nmの範囲にあるSSGGやLSGGを適用して育成された特許文献5や特許文献6のRIGにおいては、波長1.064μmにおける吸収損失が確かに0.6dB以下になっている。しかしながら、上記SSGGやLSGGを市場で安定的に入手することは現実的に困難なため、工業的にSSGGやLSGGを基板として利用することはできなかった。
特開2000−66160号公報 特開平7−281129号公報 特開2007−256616号公報 特開平6−281902号公報 特開平8−290997号公報 特開平8−290998号公報
従来の手法により1μm帯域の波長の光に対し、0.6dBを下回る低損失のRIGを工業的に得ることは上述したように困難であった。
しかし、RIGが利用されている小型で安価な1W級の加工用レーザーに使用される光アイソレータ市場では、挿入損失が0.6dBを下回るような低損失のRIGが望まれており、特に、近年では、1W級以上の加工用レーザー装置の光アイソレータにRIGを採用することが考えられている。このため、市場においては挿入損失0.5dB以下の非常に低損失なRIGを必要としており、低損失のRIGを工業的に高収率で提供できる手法が望まれている。
ところで、上記ビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜(RIG)においてBiが多量に添加されると、RIGのファラデー回転係数が大きくなる(特許文献4の段落0003参照)ことからRIGを薄くすることができ、また、イオン半径の大きなBiを多く添加することでRIGの格子定数が大きくなり、鉄イオンの光吸収を短波長側へシフトできることから挿入損失の低い結晶が得られ易いと考えられ、従来、RIGのBi添加量を多くすることが一般的に行われていた。
しかし、Biの添加量が多くなると、格子定数が1.256nmであるGSGG基板との格子定数のずれが大きくなり、上記GSGG基板上に育成されるRIGが割れ易くなることが知られていて高い収率でRIGを製造できなかった。
そこで、上述した課題を解決するため本発明者等が鋭意研究を重ねたところ、ビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜(RIG)における希土類の種類と添加量を制御することで、Biの添加量が少なくても挿入損失の低いRIGが得られることを見出すに至り、更に、Bi添加量が少なくできることに伴いRIGの格子定数とGSGG基板の格子定数を合わせることが可能になることから、GSGG基板上にRIGを育成してもRIGの割れが抑制され、高い収率でRIGを製造できることを見出すに至った。
本発明はこのような技術的発見に基づき完成されている。
すなわち、請求項1に係る発明は、
化学式Gd3(ScGa)512で示される非磁性ガーネット基板上に液相エピタキシャル成長法により育成されたビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜において、
化学式Pr3-x-yGdxBiyFe512で示されると共に、上記化学式のxとyが、
1.20≦x≦1.56、および、0.80≦y≦1.19、
であることを特徴とし、
請求項2に係る発明は、
光アイソレータにおいて、
請求項1に記載のビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜がファラデー回転子として用いられていることを特徴とする。
本発明に係るビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜(RIG)は、
化学式Pr3-x-yGdxBiyFe512で示されると共に、上記化学式のxとyが、
1.20≦x≦1.56、および、0.80≦y≦1.19、
であることを特徴とし、特許文献4等に記載された従来のRIGと比較して、挿入損失で0.6dBを下回り、かつ、高い収率で製造することができる。
そして、挿入損失で0.6dBを下回る本発明のRIGを適用することにより、RIGにおける発熱量そのものの低減が図れるため、本発明のRIGを加工用レーザーの光アイソレータに適用した場合、より高パワーのレーザー光に対し温度上昇を大幅に抑制できることから特性の劣化が少なくなる効果を有する。
Bi量と挿入損失との関係を示すグラフ図。 PrとGdとBiの組成を示したPr−Gd−Bi三元系組成図。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(A)希土類の選択
本発明に係るビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜(RIG)を構成する希土類元素の種類は、以下に示すようにPrとGdである。
まず、液相エピタキシャル成長法により基板上に結晶を育成する場合、基板と結晶膜の格子定数を整合させなければならない。そして、格子定数が1.256nmであるGSGG基板では、このGSGG基板の大きな格子定数から選択できる希土類元素は多数ある。また、希土類元素の中でも原子番号が57から71のランタノイドのイオン半径は、ランタノイド収縮と呼ばれる現象により、La>Ce>Pr>Nd>Pm>Sm>Eu>Gd>Tb>Dy>Ho>Er>Tm>Yb>Luの順になっている。
そして、RIGにイオン半径の大きなBiを入れない場合、RIGのファラデー回転性能が低下し、ファラデー回転角が45°となるのに必要なRIGの厚みが増加して光吸収による挿入損失が大きくなってしまう。従って、イオン半径の大きな希土類元素のみを選択することは、RIGにBiを含有させることが難しくなるため好ましくない。
また、ビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜(RIG)の化学式は、Gd量をx、Bi量をyとした場合、R3-x-yGdxBiyFe512と表わされる。化学式中のRは、Gd以外の希土類元素である。ここで、Bi量が増加すると、Bi量の増加と共にRIGの熱膨張係数が大きくなることから、基板との格子定数差が大きくなり、成長中にRIGが割れたり、RIGに転位が発生する等、生産性の低下並びに性能劣化が起こるという問題がある。そして、Bi量が1.3を超えた場合、良質なRIGを育成することが困難であることが判っており、Bi量が1.3を超えるようなRIGが得られるイオン半径の小さな希土類元素(例えばTm、Yb、Lu等)を用いることも好ましくない。
更に、上記希土類元素以外にも、Smの場合は1μm帯域近傍での吸収ピークが多く存在するために好ましくなく、Euは2価を持つことがあるため、2価の元素を添加した場合に吸収が増加することが知られているRIGでは2価をとるEuは好ましくない。
このような理由から、本発明に係るビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜を構成する希土類元素として、中ぐらいのイオン半径の希土類元素からGdを、イオン半径の大きな希土類元素からPrを選択したところ、後述のPrとGdの比率、Bi量にすることで、良好な挿入損失と高収率の両立を図れることが確認された。
(B)PrとGdの比率
化学式Pr3-x-yGdxBiyFe512で示されるビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜(RIG)において、Bi量が一定(すなわちyが一定値)であると仮定した場合、PrとGdの比率については、イオン半径の大きなPr量が多くなり過ぎるとRIGの格子定数が大きくなり、RIGの格子定数が大き過ぎるとRIG成長後に室温まで冷却した際、RIG側が凸に反り割れが発生し易くなる。反対にPr量が少なくなり過ぎるとRIGの格子定数が小さくなるため、RIG側が凹に反り割れが発生し易くなる。
そして、Gd量は、以下の実施例と比較例における結果を示す表2の「Gd量」欄から1.20〜1.56の範囲内であることを要し、また、Bi量は、以下のC欄「Bi量と挿入損失、歩留まりの関係」に記載された表1と図1の結果から0.80〜1.19の範囲内であることを必要とする。
従って、Pr量は、化学式Pr3-x-yGdxBiyFe512に示された(3−x−y)の数式と、上記Gd量(x値)とBi量(y値)の各最大値並びに最小値から、Pr量の下限値は(3−1.56−1.19=0.25)、上限値は(3−1.20−0.80=1.00)となる。すなわち、Pr量は0.25〜1.00の範囲内となる。
(C)Bi量と挿入損失、歩留まりの関係
ビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜(RIG)が適用されたファラデー回転子の温度上昇は、鉄イオンによる1μm付近の光吸収が原因であり、その吸収係数は温度上昇に伴い増加するため、更なる温度上昇をもたらすことになる。このため、RIGの挿入損失が大きい場合、発熱を抑えるために低出力のレーザーに使用が制限され、かつ、放熱用基板を付ける必要がある。そして、RIGを1W級の加工用レーザーに適用する場合、挿入損失は0.6dB以下であることが必要とされ、更に高出力のレーザー用には挿入損失0.5dB以下であることが必要とされている。
ここで、化学式Pr3-x-yGdxBiyFe512で示されるRIGのBi量が0.80未満である場合、ファラデー回転角が45°となるのに必要なRIGの厚みが増加して光吸収による挿入損失が大きくなり、0.6dBを下回る低損失なRIGが得られないことが図1のグラフ図から確認される。
尚、図1のグラフ図はBi量と挿入損失との関係を示し、以下のようにして求められている。すなわち、図1のグラフ図は、液相エピタキシャル成長法により各々成長させたRIGについてEPMA定量分析により各々のBi量を求め、次いで、成長させた各RIGをダイシングソーで11mm角に切断し、更に、波長1.06μmの光に対しファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、かつ、波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射して挿入損失を測定し、これ等の結果から求めたものである。
そして、RIGの挿入損失が0.6dB以下となるためには、図1のグラフ図からBi量は0.80以上であることを要し、更にRIGの挿入損失が0.5dB以下になるためには0.99以上であることが望ましい。
次に、Bi量と歩留まりとの関係について以下の表1に示す。
表1は、液相エピタキシャル法により成長させた化学式Pr3-x-yGdxBiyFe512で示されるRIGについて、EPMA定量分析により各々のBi量を求め、次いで、成長させた各々のRIGをダイシングソーを用いて11mm角に切断、更に11mm角から1mm角に切断し、その1mm角の中から、RIG中に発生していたクラック起因による角欠け変形のあるものを不良とし、角欠けのないものを良品として選別し、次いで、良品全ての1mm角面内にあるピット数を金属顕微鏡、赤外顕微鏡を用いて観察し、各々1mm角面積内にピット数量が5個を超えれば不良、5個以下なら良品として、各々Bi量の異なるRIGについてその良品収率を求めたものである。
尚、良品収率については、経験則上、良品収率が90%以上を高収率とし判定した。また、1mm角全数良品の場合の母数は100枚としている。
Figure 0005459243
「確認」
表1から、Bi量が増えるとRIGの収率が下がることが確認できる。ここで、Bi量が1.19以下であれば、90%以上の収率でRIGを育成できるため好ましい。
そして、「Bi量と挿入損失との関係」並びに「Bi量と歩留まりとの関係」より得られた結果から、化学式Pr3-x-yGdxBiyFe512で示されるRIGのBi量(y値)は、0.80≦y≦1.19の範囲内であることを要し、かつ、格子定数が1.256nmであるGSGG基板を用いて、挿入損失で0.6dBを下回り、かつ、高い収率でRIGを育成できることが確認される。
これ等の結果から、化学式Pr3-x-yGdxBiyFe512で示されるRIGのPrとGdとBiの組成は、図2におけるPr−Gd−Bi三元系組成図上で図示された範囲内であることが望ましい。尚、図2中、白丸印は以下の各実施例、黒丸印は各比較例を示す。
以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明する。
尚、実施例1〜8と比較例1〜5において全ての非磁性ガーネット基板については、直径が1インチ、格子定数1.2564nmのGd3(ScGa)512基板、すなわち、GSGG基板を用いた。
また、実施例1〜8の各RIGにおいては、組成設計段階で、上述した(A)「希土類の選択」、(B)「PrとGdの比率」および(C)「Bi量と挿入損失、歩留まりの関係」に示された条件を各々が満たす組成としている。
また、比較例1〜5の各RIGにおいては、上記(A)(B)および(C)の条件の内、いずれか1つ以上の条件を満たすことができない組成としている。
尚、Bi量とGd量はEPMA定量分析から求めた値であり、不良率、良品率は、各々のRIGから11mm角に切断し、更にその11mm角から1mm角に100枚切断し、次いで、その1mm角からその形状あるいは面内のピット数量によって、不良品、良品を選別した。尚、不良については、RIG中に発生したクラック起因による角欠け変形のあるもの、あるいは、角欠けは無いものの金属顕微鏡、赤外顕微鏡の観察による1mm角面内のピット数量が5個を超えるものとし、同様に良品は、角欠けもなく、面内のピット数量も5個以下のものとして選別し、その結果を元にした各々の発生率である。また、表2において、実施例と比較例に係るRIGの不良、良品率と挿入損失を比較している。
[実施例1]
まず、原料として、Pr611を1.90g、Gd23を2.30g、Fe23を30.95g、Bi23を254.26g、PbOを200.95g、B23を9.64gそれぞれ秤量し、白金坩堝中において1000℃で溶解し、融液が均一な組成になるように十分に撹拌混合した。
次に、RIGをエピタキシャル成長させるため、融液の温度を773℃の育成温度まで降下させた。その後、上記GSGG基板を片面のみが融液に浸漬するように設置し、GSGG基板を回転させながらRIGをエピタキシャル成長させた。得られたRIGをEPMA定量分析するとBi量は0.80、Gd量は1.20であった。
このような条件で育成したRIGから11mm角、更に1mm角を切断し、観察したところ、不良品は0個、良品は100個と極めて良好であった。また、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ0.58dBと良好な結果であった。これ等の結果を表2にまとめて示す。
[実施例2]
原料として、Pr611を1.36g、Gd23を2.69g、Fe23を29.53g、Bi23を255.11g、PbOを201.63g、B23を9.68gそれぞれ秤量して原料組成を変えたこと、および、育成温度を770℃とした以外は実施例1と同様にしてRIGを育成した。得られたRIGのBi量は1.19、Gd量は1.20であった。
そして、実施例1と同様にRIGを観察したところ、不良品は6個、良品は94個と良好であった。また、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ0.38dBと極めて良好な結果であった。
これ等の結果も表2にまとめて示す。
[実施例3]
原料として、Pr611を1.28g、Gd23を2.67g、Fe23を29.59g、Bi23を255.14g、PbOを201.65g、B23を9.68gそれぞれ秤量して原料組成を変えたこと、および、育成温度を768℃とした以外は実施例1と同様にしてRIGを育成した。得られたRIGのBi量は1.19、Gd量は1.56であった。
そして、実施例1と同様にRIGを観察したところ、不良品は7個、良品は93個と良好であった。また、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ0.36dBと極めて良好な結果であった。
これ等の結果も表2にまとめて示す。
[実施例4]
原料として、Pr611を1.82g、Gd23を2.39g、Fe23を30.94g、Bi23を254.25g、PbOを200.95g、B23を9.64gそれぞれ秤量して原料組成を変えたこと、および、育成温度を769℃とした以外は実施例1と同様にしてRIGを育成した。得られたRIGのBi量は0.80、Gd量は1.56であった。
そして、実施例1と同様にRIGを観察したところ、不良品は0個、良品は100個と極めて良好であった。また、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ0.56dBと良好な結果であった。
これ等の結果も表2にまとめて示す。
[実施例5]
原料として、Pr611を1.86g、Gd23を2.35g、Fe23を30.94g、Bi23を254.25g、PbOを200.95g、B23を9.64gそれぞれ秤量して原料組成を変えたこと、および、育成温度を775℃とした以外は実施例1と同様にしてRIGを育成した。得られたRIGのBi量は0.80、Gd量は1.46であった。
そして、実施例1と同様にRIGを観察したところ、不良品は0個、良品は100個と極めて良好であった。また、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ0.59dBと良好な結果であった。
これ等の結果も表2にまとめて示す。
[実施例6]
原料として、Pr611を1.34g、Gd23を2.72g、Fe23を29.53g、Bi23を255.11g、PbOを201.63g、B23を9.68gそれぞれ秤量して原料組成を変えたこと、および、育成温度を770℃とした以外は実施例1と同様にしてRIGを育成した。得られたRIGのBi量は1.19、Gd量は1.32であった。
そして、実施例1と同様にRIGを観察したところ、不良品は10個、良品は90個と良好であった。また、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ0.38dBと極めて良好な結果であった。
これ等の結果も表2にまとめて示す。
[実施例7]
原料として、Pr611を1.52g、Gd23を2.51g、Fe23を29.53g、Bi23を255.12g、PbOを201.64g、B23を9.68gそれぞれ秤量して原料組成を変えたこと、および、育成温度を774℃とした以外は実施例1と同様にしてRIGを育成した。得られたRIGのBi量は0.99、Gd量は1.44であった。
そして、実施例1と同様にRIGを観察したところ、不良品は0個、良品は100個と極めて良好であった。また、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ0.48dBと良好な結果であった。
これ等の結果も表2にまとめて示す。
[実施例8]
原料として、Pr611を1.35g、Gd23を2.71g、Fe23を29.53g、Bi23を255.11g、PbOを201.63g、B23を9.68gそれぞれ秤量して原料組成を変えたこと、および、育成温度を771℃とした以外は実施例1と同様にしてRIGを育成した。得られたRIGのBi量は1.10、Gd量は1.28であった。
そして、実施例1と同様にRIGを観察したところ、不良品は0個、良品は100個と極めて良好であった。また、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ0.41dBと極めて良好な結果であった。
これ等の結果も表2にまとめて示す。
[比較例1]
原料として、Pr611を1.86g、Gd23を2.35g、Fe23を30.94g、Bi23を254.25g、PbOを200.95g、B23を9.64gそれぞれ秤量して原料組成を変えたこと、および、育成温度を771℃とした以外は実施例1と同様にしてRIGを育成した。得られたRIGのBi量は0.78、Gd量は1.38であった。
そして、実施例1と同様にRIGを観察したところ、不良品は0個、良品は100個と極めて良好であった。また、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ、0.6dBを上回る0.63dBで良好では無かった。
これ等結果を表2にまとめて示す。
[比較例2]
原料として、Pr611を1.76g、Gd23を2.26g、Fe23を29.53g、Bi23を255.13g、PbOを201.64g、B23を9.68gそれぞれ秤量して原料組成を変えたこと、および、育成温度を769℃とした以外は実施例1と同様にしてRIGを育成した。得られたRIGのBi量は0.96、Gd量は1.18であった。
そして、実施例1と同様にRIGを観察したところ、不良品は14個、良品は86個と良好では無かった。一方、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ0.49dBと良好な結果ではあった。
これ等結果を表2にまとめて示す。
[比較例3]
原料として、Pr611を1.34g、Gd23を2.72g、Fe23を29.53g、Bi23を255.11g、PbOを201.63g、B23を9.68gそれぞれ秤量して原料組成を変えたこと、および、育成温度を766℃とした以外は実施例1と同様にしてRIGを育成した。得られたRIGのBi量は1.20、Gd量は1.38であった。
そして、実施例1と同様にRIGを観察したところ、不良品は16個、良品は84個と良好では無かった。また、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ、0.40dBと極めて良好ではあった。
これ等結果を表2にまとめて示す。
[比較例4]
原料として、Pr611を1.79g、Gd23を2.42g、Fe23を30.94g、Bi23を254.25g、PbOを200.95g、B23を9.64gそれぞれ秤量して原料組成を変えたこと、および、育成温度を772℃とした以外は実施例1と同様にしてRIGを育成した。得られたRIGのBi量は0.99、Gd量は1.58であった。
そして、実施例1と同様にRIGを観察したところ、不良品は44個、良品は56個と劣悪であった。また、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ、0.51dBと良好ではあった。
これ等結果を表2にまとめて示す。
[比較例5]
原料として、Pr611を1.31g、Gd23を2.95g、Fe23を30.94g、Bi23を254.23g、PbOを200.93g、B23を9.64gそれぞれ秤量して原料組成を変えたこと、および、育成温度を765℃とした以外は実施例1と同様にしてRIGを育成した。得られたRIGのBi量は1.24、Gd量は1.58であった。
そして、実施例1と同様にRIGを観察したところ、不良品は28個、良品は72個と劣悪であった。また、波長1.06μmの光に対してファラデー回転角が45°となるようにRIGの厚みを研磨により調整し、次いで波長1.06μmの光に対する反射防止膜を両面に形成した後、波長1.06μmのYVO4レーザー光を入射し、挿入損失(IL)を測定したところ、0.39dBと良好な結果ではあった。
これ等結果を表2にまとめて示す。
Figure 0005459243
本発明に係るビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜(RIG)は挿入損失で0.6dBを下回り、かつ、特許文献5〜6に記載されたRIGと同等の挿入損失を持つと共に、高い収率で製造することができる。そして、本発明に係るRIGは、波長1μm程度の光吸収に起因した発熱量の低減が図れるため、加工用高出力レーザー装置の光アイソレータ用ファラデー回転子に使用される産業上の利用可能性を有している。

Claims (2)

  1. 化学式Gd3(ScGa)512で示される非磁性ガーネット基板上に液相エピタキシャル成長法により育成されたビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜において、
    化学式Pr3-x-yGdxBiyFe512で示されると共に、上記化学式のxとyが、
    1.20≦x≦1.56、および、0.80≦y≦1.19、
    であることを特徴とするビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜。
  2. 請求項1に記載のビスマス置換型希土類鉄ガーネット結晶膜がファラデー回転子として用いられていることを特徴とする光アイソレータ。
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