JP5454888B2 - 防汚壁紙 - Google Patents

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本発明は、壁紙等のシート状内装材表面に、防汚性薬剤を塗布し、手垢等による黒ずみ汚れが付きにくく、また付いた場合でも簡単に除去することのできるようにする技術に関するものである。
従来から壁紙は、紙材等からなる基材層に、発泡塩化ビニル樹脂層が積層され、その表面に絵柄をデザインしたものが多く使われている。さらに、発泡塩化ビニル樹脂層の表面には、耐摩耗性や防汚性を目的に、表面保護層が設けられているものも多い。
しかしながら、表面保護層を積層すると、壁紙が固くなって施工性が悪くなったり製造工程が多くなるので、製品コストが上昇し問題であった。特許文献1においては、ペースト用塩化ビニル系樹脂を含む樹脂で表面をコーティングすることにより、耐摩耗性や耐汚染性に優れた壁紙を開示している。しかしながら、開示された壁紙では、一度汚れるとその汚れが落ちにくく、特に電源スイッチやコンセントの周辺等の人が手で触れやすい部分では、皮脂汚れが付着し更に他の汚れを呼び込んで黒ずみ汚れとなってしまい、問題となっていた。
また、特許文献2においては、結晶性ポリプロピレン系樹脂からなるポリプロピレン系樹脂層と、スルホン基含有ポリエステル系樹脂からなるポリエステル系樹脂層とが接着層を介して積層された壁紙用防汚フィルムを、塩化ビニルの層と共押出しして製造する壁紙を開示し、塩化ビニル層に高沸点の可塑剤が含まれていても接着力を維持し耐摩耗性や防汚性に優れた壁紙用防汚フィルムおよび壁紙を提案している。しかしながら、この方法は、耐摩耗性や防汚性に優れた壁紙であるが、製品コストの上昇は避けられない。また、これらのような防汚フィルムを積層する方法は、織物のような繊維素材を表面にする場合には、繊維素材の風合を失うことになり、適用されてこなかった。
特開2007−92197号公報 特開2009−208446号公報
本発明は、壁紙等のシート状内装材表面に、親水性防汚性薬剤とドライソイル防汚薬剤を塗布し、手垢等の皮脂汚れをできるだけ付かないようにし、もし付着したとしても、簡単に除去することのできる壁紙を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を達成するために、以下の手段を提供する。
[1]基材層に表面層を積層した壁紙において、前記表面層上に、親水性防汚薬剤と、ドライソイル防汚薬剤とを混合した加工液を塗布し、乾燥したことを特徴とする壁紙。
[2]前記親水性防汚薬剤がノニオン性を有するポリエステル系樹脂組成物で、ドライソイル防汚薬剤がフルオロカーボン樹脂組成物及び/または、変性オルガノシリケート微粒子であることを特徴とする前項1に記載の壁紙。
[3]前記親水性防汚薬剤を1〜10g/mと、ドライソイル防汚薬剤を1〜10g/mとを壁紙へ固着させたことに特徴のある前項1または2に記載の壁紙。
[1]の発明では、壁紙の表面層上に、親水性防汚薬剤とドライソイル防汚薬剤を混合した加工液を塗布し、乾燥させるので、壁紙の表面層上にSR加工とSG加工が施され、皮脂汚れのような油性の汚れは、水を含んだ布帛で擦るだけで簡単に落とすことができるようになり、また、砂や埃等のドライソイル性の汚れは手で叩いたり、掃除機で吸引するだけで簡単に落とすことができるようになる。(なお、親水性防汚加工のSR加工といわれる加工方法は、一度付着した汚れを洗濯等で落ちやすくする加工方法である。また、SG加工といわれる加工方法は、フッ素系加工材等のドライソイル防汚薬剤で表面を被覆することによって、汚れを付きにくくする加工方法である。)
[2]の発明では、前記親水性防汚薬剤がノニオン性を有するポリエステル系樹脂組成物からなるので、壁紙表面に吸水SR加工が施され水によって皮脂汚れが落ちやすい状況が形成される。さらに、ポリエステル系樹脂組成物がノニオン性を有するので、薬剤の混和性、繊維への加工性の面で好適である。また、ドライソイル防汚薬剤がフルオロカーボン樹脂組成物及び/または、変性オルガノシリケート微粒子からなるので、黒ずみ汚れに含まれる砂や埃を付きにくくすることができる。
[3]の発明では、親水性防汚薬剤を1〜10g/mと、ドライソイル防汚薬剤1〜10g/mとを壁紙へ固着させているので、黒ずみ汚れが付きにくく、また付いた場合でも水を含んだ布帛で擦るだけで簡単に落とすことができる。親水性防汚薬剤が、1g/mよりも少ない量では黒ずみ汚れは落ちにくく、10g/mを超える量でも黒ずみ汚れの落ちやすさが大きく向上するわけでもなく好ましくない。より好ましくは親水性防汚薬剤を、2〜8g/m壁紙へ固着させるのがよい。また、ドライソイル防汚薬剤は1〜10g/mを壁紙へ固着させるのがよく、1g/mよりも少ない量では黒ずみ汚れへの防汚性が不十分で、10g/mを超える量でも黒ずみ汚れへの防汚性が大きく向上するわけでもなく好ましくない。より好ましい固着量は2〜8g/mが好適である。
以下本発明をさらに詳しく説明する。壁紙は、室内において床や天井に較べ、最も大きな面積を占めている室内装飾品であるが、それ程汚れるものではなく何年も使用するのが普通であるが、使用年月を重ねるうちに、電源スイッチやコンセントの周辺等の、人が手で触れやすい部分のみが黒く汚れとなって目立つようになり、全体には汚れていなくても、壁紙の貼りかえが必要となり困っていた。また、皮脂汚れは一旦汚れるとその汚れが落ちにくく、特に電源スイッチやコンセントの周辺等の人が手で触れやすい部分では、皮脂汚れが付着し更に他の汚れを呼び込んで黒ずみ汚れとなってしまい、問題となっていた。本発明は、壁紙の黒く汚れるのを防ぎ、また、黒く汚れたとしても簡単に水の付いた布帛で擦るだけで落とすことができるようにするものである。また従来から行ってきた防汚フィルムを積層する方法とは異なり、さらに他の機能性も併用して加工することのできる優れた加工方法である。
基材層は、天然パルプ等のセルロース系繊維からなる紙を用いるのが好ましい。基材層は接着剤を介してコンクリートや木製板等の壁に貼着されるが、水分を放出しにくくカビが発生しやすいので、防カビ、抗菌加工が施されているものを使用することが好ましい。また、一般に接着剤は揮発性有機溶剤を含んでいることが多く、使用中に接着剤自身からVOC(揮発性有機化合物)が発生することもあることから、デンプン糊等揮発性有機溶剤を含まない接着剤が好ましい。
基材層の上側に表面層を積層する。表面層は、安価で付加価値加工のしやすい熱可塑性樹脂シートが好ましい。中でも、凹凸感のある立体的な風合いの発泡塩化ビニル性樹脂シートは、表面層として好ましく、塩化ビニル樹脂に発泡剤を混入し、シートを形成した後220〜240℃に加熱し発泡させて作られる。また、表面層として、織物のような繊維素材を表面層にする場合には、繊維素材の風合を生かしたまま、加工することができる。
基材層と表面層の接着は、接着剤を使う方法を採用することもあるが、接着剤に揮発性有機溶剤が使われると、VOC(揮発性有機化合物)が発生するので好ましくない。本発明では、基材層と表面層の間に熱可塑性樹脂を挿入し加熱して圧着する方法が、VOC(揮発性有機化合物)の発生を押える方法として好ましい。
親水性防汚薬剤としては、ポリエステル系、ポリアミド系、シリコン系、アクリル系等の親水性樹脂組成物をあげることができるが、中でも親水性ポリエステル系樹脂組成物からなるものが好適で、さらにノニオン性を有する親水性ポリエステル系樹脂組成物は、薬剤の混和性、加工性が良好で好適である。例えば、ポリエチレングリコールとポリエチレンテレフタレートのブロック共重合物で、ノニオン性を有するポリエステル系樹脂組成物が好適である。(本発明では高松油脂株式会社製の吸水SR剤SR1000を使用した。)表面層への固着量は、1.0〜10.0g/m(乾燥重量)が好ましく、1.0g/m未満では表面層の防汚性が不十分で、10.0g/mを超える固着量にしても防汚性能が大きく向上するわけでも無い。
また、本発明においては、親水性防汚薬剤とドライソイル防汚薬剤を混合した加工液を壁紙の表皮層に塗付して固着する。ドライソイル防汚薬剤としては、フッ素系化合物を含む組成物が好適であるが、中でもフルオロカーボン樹脂組成物及び/または、変性オルガノシリケート微粒子が好ましい。ドライソイル防汚薬剤の表面層への固着量は、1.0〜10.0g/m(乾燥重量)が好ましく、1.0g/m未満では表面層の防汚性が不十分で、10.0g/mを超える固着量にしても防汚性能が大きく向上するわけでも無い。
フルオロカーボン樹脂組成物としては、パーフルオロアクリレート系ポリマー、パーフルオロスルホンアミドアクリレート系ポリマー、パーフルオロアクリル芳香族エステル系化合物、パーフルオロアルキルポリエーテル、低分子パーフルオロアルキルウレタン系オリゴマー等を挙げることができる。なかでも、パーフルオロアクリレート系ポリマー、低分子パーフルオロアルキルウレタン系オリゴマーが好ましい。
変性オルガノシリケート微粒子は、ポリシロキサン誘導体であり、平均粒子径は、0.01μm〜0.1μmであるのが好ましい。平均粒子径が0.01μmを下回るようにしても、徒にコストが上がるだけで、効果はさほど大きなものにならい。また、平均粒子径が0.1μmを上回るようになるとザラツキ感が発現し好ましくない。
親水性防汚薬剤とドライソイル防汚薬剤の壁紙へ塗布する方法は、特に限定しないが、以下のコーティング法を例示できる。例えば親水性防汚薬剤とドライソイル防汚薬剤を含む水溶液をグラビアロール加工、スプレー加工、ロールコーター加工、ジェットプリント加工、転写プリント加工、スクリーンプリント加工等で表面層に塗布し乾燥すればよい。また、表面層が発泡塩化ビニル製樹脂シートのときは、塩化ビニル樹脂を発泡させる前に親水性防汚薬剤とドライソイル防汚薬剤を塗布し、加熱しながら表面層に固着し、同時に発泡するのが効率的である。
また、本発明では、防汚薬剤の塗付していない壁紙を施工した後で、スイッチやコンセント周辺に親水性防汚薬剤とドライソイル防汚薬剤を含む水溶液をスプレー等で塗布し乾燥しても、皮脂汚れが目立たないようにした壁紙を得ることができる。
次ぎに実施例により、本発明を具体的に説明する。なお、各性能試験測定は以下のように行った。
<汚れ試験1>
JIS L 1023−8に準じ以下の方法で評価した。試験片を直径140mmの円形に採取し、汚れ試験用衝撃回転子に標準汚染物質(表1)を20g入れ試験機に取り付ける。試験片を試験機に取り付け、試験台回転回数で50回汚染する。汚染終了後、直ちにバキュームを行なう。バキューム回数は試験台回転回数で20回とする。この汚染前と汚染後の試験片間にみえる色の開きと、汚染用グレースケールの各色票間にみえる色の開きとを比較して判定し、グレースケールの等級値で表した。4級以上を合格とした。
標準汚染物質の成分及び質量比(JIS L 1023−8)
Figure 0005454888
<汚れ試験2>
ISO1137−2に準じ以下の方法で評価した。ドラム試験機内側に試験片(23cm×20cm×4枚)を貼る。ドラムを100回転させながら、標準汚染物質(表2)を10g入れる。専用重りを入れ、蓋をし900回転させる。つぎに掃除機で汚れを吸い取り(2往復)、色彩色差計を用いて試験前試験後の試験片表面の色差(ΔE)を測定し試験片の汚染度とし、色差(ΔE)が2未満であれば合格とする。
標準汚染物質の成分及び質量比(ISO1137−2)
Figure 0005454888
汚れ試験1汚れ試験2は、ドライソイルリリース性を評価するものである。
<撥水性試験>
撥水性評価方法は、下記表3に示すイソプロピルアルコールと水の混合試験液をピペットを用いて、試験片表面に液滴を静かに置き、10秒以上滴状を保つことを基準に、試験片の異なる5ヶ所に一滴づつ置いて試験し、4ヶ所以上が滴状を示している場合をその級の合格とする評価であり、4級以上を合格とする。
Figure 0005454888
<撥油性試験>
撥油性評価方法はAATCC−TM−118に準じ以下の方法で評価した。下記表4に示す試験液の小滴を試験片表面に、ピペットを用いて静かに置き、3分以上滴状を保つことを基準に、試験片の異なる5ヶ所に一滴づつ置いて試験し、4ヶ所以上が滴状を示している場合をその級の合格とする評価であり、4級以上であれば合格とする。
Figure 0005454888
<皮脂汚れ試験>
人工汚れ成分:下記の汚粉と人工皮脂を1対10の割合で混合したもの。
汚粉:JIS Z8901の試験用粉体12種(カーボンブラック、粒径0.03〜0.2μm)25[Wt%]とJIS Z8901の試験用粉体8種(関東ローム層、粒径8μm)75[Wt%]混合したもの。
人工皮脂:オレイン酸70[Wt%]、パルミチン酸30[Wt%]の割合で混合したもの。
使用機器:平面摩耗試験機 面圧1000±10[g/cm]ストローク:200[mm]
負荷子:25[mm]×25[mm]の正方形
摩擦布:JIS L3102規定No.19並綿帆布
操作方法:摩擦布を負荷子に取り付け、人工汚れ成分を0.02[g]を摩擦布に均一に塗布し、試験片を平面摩耗試験機に取り付け、人工汚れ成分の付着した負荷子をセットする。試験片を負荷子で50回往復させて汚れ負荷を与える。次に負荷子の摩擦布を新しいものにして50回往復摩擦(乾拭き)する。次に負荷子の摩擦布を、水につけ、軽く絞った摩擦布に取替え50回往復摩擦(水拭き)する。試験片をはずし、100℃10分間乾燥し、試験片の中央部の色差ΔEを測定し、ΔEが3以下であれば合格とした。
<実施例1>
基材層としてクラフト紙を用い、表面層として塩化ビニルシートを用意した。親水性防汚薬剤として、高松油脂株式会社製の吸水SR剤SR1000を45g/lと、ドライソイル防汚薬剤として、平均粒子径0.03μmの変成オルガノシリケート30g/l及びパーフルオロアルキルアクリレートコポリマー30g/lの水溶液を表面層に、ロールコート加工にて塩化ビニルシート上に塗布し、ホットメルト樹脂を散布した前記クラフト紙に重ね、230℃5分間加熱して接着して壁紙を得た。親水性防汚薬剤の壁紙表面層への固着量は6.0g/mでドライソイル防汚薬剤の固着量8.0g/mであった。こうして得られた壁紙の汚れ試験1、2 、撥水性、撥油性、皮脂汚れの各試験を行い、防汚性評価を表5に記載した。
<実施例2>
実施例1において、ドライソイル防汚薬剤として、平均粒子径0.03μmの変成オルガノシリケート30g/lのみとした以外は、実施例1と同様にして壁紙を得た。親水性防汚薬剤の壁紙表面層への固着量は6.0g/mで、ドライソイル防汚薬剤の固着量は、4.0g/mであった。こうして得られた壁紙の汚れ試験等の各試験を行い、防汚性評価を表5に記載した。
<実施例3>
実施例1において、ドライソイル防汚薬剤として、パーフルオロアルキルアクリレートコポリマー30g/lの水溶液のみとした以外は、実施例1と同様にして壁紙を得た。親水性防汚薬剤の壁紙表面層への固着量は6.0g/mで、ドライソイル防汚薬剤の固着量は、4.0g/mであった。こうして得られた壁紙の汚れ試験等の各試験を行い、防汚性評価を表5に記載した。
<実施例4〜6>
親水性防汚薬剤とドライソイル防汚薬剤とを表5に記載した構成にし、得られた壁紙の汚れ試験等の各試験を行い、防汚性評価を表5に記載した。
<比較例1〜4>
親水性防汚薬剤とドライソイル防汚薬剤とを表6に記載した構成にし、得られた壁紙の汚れ試験等の各試験を行い、防汚性評価を表6に記載した。
Figure 0005454888
Figure 0005454888
表5、6から明らかなように、親水性防汚薬剤とドライソイル防汚薬剤のどちらかが欠ける比較例では、良好な防汚性能のある壁紙とはならなかった。また、ドライソイル防汚薬剤のうちフルオロカーボン樹脂組成物と変性オルガノシリケート微粒子のどちらかが欠ける実施例2〜4では、防汚性能の低下はあるものの実用上は問題のないレベルであった。
本発明の技術は、壁紙の表皮層に親水性防汚薬剤とドライソイル防汚薬剤を塗布させて、皮脂汚れによる黒ずみ汚れを防止するものであるが、利用される分野は壁紙に限らず、インテリア商材全体に展開でき、特にドアノブの周辺部や家具等の人が手を触れやすい周辺部に直接塗布することも可能で広く利用される。

Claims (2)

  1. 基材層に表面層を積層した壁紙において、前記表面層上に、ノニオン性を有するポリエステル系樹脂組成物である親水性防汚薬剤と、フルオロカーボン樹脂組成物であるドライソイル防汚薬剤とを混合した加工液を塗布し、乾燥したことを特徴とする壁紙。
  2. 前記親水性防汚薬剤を1〜10g/mと、ドライソイル防汚薬剤を1〜10g/mとを壁紙へ固着させたことに特徴のある請求項1記載の壁紙。
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