まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体的な構成について説明する。
図1及び図2に示すように、コンバイン1は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、穀粒貯溜部6と、排藁処理部7と、操縦部8等から構成される。
走行部2は、機体フレーム90の下部に設けられている。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置10等を有する。走行部2は、クローラ式走行装置10が駆動することにより機体を走行させるように構成されている。
刈取部3は、機体フレーム90の前端部に機体に対して昇降可能に設けられている。刈取部3は、分草具11と、引起装置12と、切断装置13と、搬送装置30と、これらの各装置を支持する刈取フレーム14等から構成されている。刈取部3は、分草具11により圃場の穀稈を分草し、引起装置12により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置13により引き起こし後の穀稈の株元を切断し、搬送装置30により切断後の穀稈を脱穀部4側へ搬送するように構成されている。
図1及び図2に示すように、脱穀部4は、機体フレーム90の左側前部であって、刈取部3の後方に設けられている。脱穀部4は、フィードチェン50と、扱胴60(図5参照)等から構成されている。脱穀部4は、刈取部3から搬送される穀稈を受け継いで、フィードチェン50により排藁処理部7側へ搬送し、搬送中の穀稈を扱胴60等により脱穀し、その脱穀物を選別部5へ落下させるように構成されている。
選別部5は、機体フレーム90の左側部に設けられ、脱穀部4の下方に配置される。選別部5は、揺動選別装置や、風選別装置や、穀粒搬送装置等を有して、脱穀部4から落下する処理物を揺動選別装置により揺動選別し、揺動選別後のものを風選別装置により風選別して藁屑や塵埃等を藁屑排出装置により外部へ排出する一方、穀粒を穀粒搬送装置により穀粒貯溜部6へ搬送することができるように構成される。
穀粒貯溜部6は、機体フレーム90の右側後部に設けられ、脱穀部4及び選別部5の右側方に配置される。穀粒貯溜部6は、グレンタンク15や、穀粒排出装置16等を有して、選別部5から搬送されてくる穀粒をグレンタンク15により一時的に貯溜し、貯溜中の穀粒を穀粒排出装置16によりグレンタンク15から排出し、更に任意の方向に搬送してから外部へ排出することができるように構成される。
排藁処理部7は、機体フレーム90の後部であって、脱穀部4の後方に設けられている。排藁処理部7は、排藁搬送装置62(図5参照)や排藁切断装置63(図5参照)等から構成されている。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送される脱穀済みの穀稈を、排藁搬送装置62で受け継いで切断せずに排藁として外部へ排出し、又は排藁切断装置63に搬送して切断した後外部へ排出するように構成されている。
操縦部8は、機体フレーム90の右側前部であって、刈取部3の搬送装置30の右側方に設けられている。操縦部8は、キャビン17と、操縦席18と、ステアリングハンドル19と、図示せぬ操作ペダルや操作レバーやスイッチ等の操作具と、図示せぬ操作パネル等から構成されている。操縦部8は、キャビン17により操縦席18やステアリングハンドル19等が覆われるように構成されている。
このようにして、コンバイン1は、操縦部8での操作具類の操作によって、エンジン64の動力を各部の装置に伝達して、走行部2にて機体を走行させながら、刈取部3で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部4で刈取部3からの穀稈を脱穀し、選別部5で脱穀部4からの処理物を選別して、穀粒貯溜部6で選別部5からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部7で脱穀部4からの排藁を外部へ排出することができるように構成されている。
次に、刈取部3の構成について説明する。
搬送装置30は、圃場の穀稈を掻き込み、次いで刈取部3の切断装置13で切断された刈取後の穀稈を刈取部3の後方に設けられる脱穀部4のフィードチェン50まで搬送する装置である。図3及び図4に示すように、搬送装置30は、刈取フレーム14に支持され、引起装置12と、フィードチェン50の搬送始端部50a(送り始端部)との間に配置されている。
刈取部3において、刈取フレーム14は、左右方向の刈取入力パイプ96と、前後方向の縦伝動パイプ97とを含む。縦伝動パイプ97の後端部が刈取入力パイプ96の左右中途部に連結されて、この刈取入力パイプ96が機体フレーム90の前部に立設された左右一対の刈取架台95に回動自在に支持される。そして、昇降シリンダが縦伝動パイプ97の前後中途部と機体フレーム90の前部との間に介設されて、刈取フレーム14が昇降シリンダの伸縮駆動により刈取入力パイプ96回りに上下方向に回動可能とされる。
分草具11、引起装置12、切断装置13、及び搬送装置30は、刈取フレーム14に支持される。分草具11と、引起装置12と、搬送装置30とは、この順で前から後に向けて配置される。切断装置13は、刈刃を含み、引起装置12の後方で搬送装置30の搬送始端部の下方に配置される。
分草具11には、六条分七つの分草板11aが備えられる。これらの分草板11aはそれぞれ先細形状とされ、左右方向に適宜の間隔をとって並べて配置されて、刈取フレーム14の前下端部に前方へ突出するように設けられる。
引起装置12には、六条分六つの引起ケース12aが備えられる。各引起ケース12aは、タイン付チェン12bを含む。これらの引起ケース12aは、分草具11の後方で左右方向に適宜の間隔をとって並べて配置され、刈取フレーム14の前下端部と前上端部との間に前低後高の傾斜状に立設される。
搬送装置30には、掻込機構31と、搬送機構とが備えられる。掻込機構31は、搬送装置30の前部側に配置され、この搬送装置30の搬送始端部となるように設けられている。一方、搬送機構は、搬送装置30の後部側に配置され、搬送装置30の搬送中途部及び搬送終端部となるように設けられている。
掻込機構31には、左右及び中央の掻込装置31aと、六つの掻込輪31bとが備えられる。左右及び中央の掻込装置31aは、それぞれ左右一対で一組の突起付ベルトを含む。左右及び中央の掻込装置31aは、それぞれ引起ケース12aの後方で左右方向に並べて配置され、前低後高の傾斜状に設けられる。
六つの掻込輪31bは、それぞれスターホイルとされる。これらの掻込輪31bは、それぞれ一つずつ左右及び中央の掻込装置31aの各突起付ベルトの後部下方に配置され、前低後高の傾斜状に設けられる。
搬送機構には、左右及び中央の下部搬送装置32と、左右及び中央の穂先搬送装置36と、上部搬送装置33と、縦搬送装置34と、補助搬送装置35とが備えられる。各搬送装置はチェンを含む。
左側の下部搬送装置32は、左側の掻込装置31aの後方に配置され、左側の掻込装置31a側から右斜後方へ向けて前低後高の傾斜状に延設される。右側の下部搬送装置32は、右側の掻込装置31aの後方に配置され、右側の掻込装置31a側から左斜後方へ向けて前低後高の傾斜状に延設される。中央の下部搬送装置32は、中央の掻込装置31aの後方に配置され、中央の掻込装置31a側から右斜後方へ向けて前低後高の傾斜状に延設される。
左側の穂先搬送装置36は、左側の下部搬送装置32によって株元部が挟持搬送されている左側二条分の刈取穀稈の穂先部を係止搬送する。右側の穂先搬送装置36は、右側の下部搬送装置32によって株元部が挟持搬送されている右側二条分の刈取穀稈の穂先部を係止搬送する。中央の穂先搬送装置36は、中央の下部搬送装置32によって株元部が挟持搬送されている中央二条分の刈取穀稈の穂先部を係止搬送する。
上部搬送装置33は、引起装置12の後方であって右側の下部搬送装置32の上方に配置され、右側の掻込装置31a側から左斜後方へ向けて前低後高の傾斜状に延設される。縦搬送装置34は、左側の下部搬送装置32の後方であって、上部搬送装置33の下方に配置され、左側の下部搬送装置32側から左斜後方へ向けて前低後高の傾斜状に延設される。補助搬送装置35は、縦搬送装置34の後方であって、上部搬送装置33の下方に配置され、縦搬送装置34側から後方へ向けて脱穀部4のフィードチェン50の搬送始端部50a付近まで延設される。
また、このように分草具11及び各装置を支持する刈取フレーム14では、刈取入力パイプ96の内部に刈取入力軸37(図5)が挿設されるとともに、当該刈取フレーム14の一部である縦伝動パイプ97とその他のパイプとの内部に刈取伝動軸が挿設される。そして、引起装置12、切断装置13及び搬送装置30は、各刈取伝動軸や刈取入力軸37等を含む動力伝達機構を介してエンジン64と連動連結されて、エンジン64から供給される動力を得て駆動可能とされる。
このような構成により、刈取部3の各装置が駆動される場合に、分草具11の分草板11aにより圃場の穀稈が一条ごとに分離するように分草された後、引起装置12において、引起ケース12aにより分草後の穀稈が引き起こされる。続いて、搬送装置30の掻込機構31において、左右及び中央の掻込装置31aと、各掻込輪31bとにより、それぞれ左右二つの引起ケース12aの間から導入される引起後の左右及び中央の各二条分の穀稈の株元側が、一束に掻寄せられ掻き込まれる。このとき、切断装置13の刈刃により、引越後の穀稈が株元側で切断される。
そして、穀稈の切断後、搬送装置30の搬送機構において、右側の下部搬送装置32及び右側の穂先搬送装置36により右二条分の穀稈が左斜後方へ搬送され、左側の下部搬送装置32及び左側の穂先搬送装置36により左二条分の穀稈が右斜後方へ搬送され、中央の下部搬送装置32及び中央の穂先搬送装置36により中央二条分の穀稈が後方へ搬送されて、六条分の穀稈の株元側が右側の下部搬送装置32の搬送終端部付近で合流させられる。次に、上部搬送装置33により六条分の穀稈の穂先側が寄せ集められながら左斜後方へ搬送されるとともに、縦搬送装置34により右側の下部搬送装置32の搬送終端部付近にて合流させられた六条分の穀稈の株元側が、脱穀部4へ向けて後斜上方に搬送され、補助搬送装置35により穀稈の株元側が縦搬送装置34から脱穀部4のフィードチェン50へ後述の受継搬送装置70を介して渡される。
次に、エンジン64から各部への動力伝達構成について説明する。
図5に示すように、エンジン64の出力軸が走行部2のクローラ式走行装置10の駆動軸にトランスミッション66を介して連結されて、エンジン64の動力がクローラ式走行装置10に伝達可能とされる。また、エンジン64の出力軸が穀粒貯溜部6の穀粒排出装置16の入力軸に伝動機構を介して連結されて、エンジン64の動力が穀粒排出装置16に伝達可能とされる。
エンジン64の出力軸が、カウンタケース67の入力軸59と、ベルトテンションクラッチとを介して連結されて、エンジン64の動力がカウンタケース67に収容された伝動機構に伝達可能とされる。このカウンタケース67の入力軸59が、さらに脱穀部4の扱胴60の駆動軸と、伝動機構とを介して連結されて、動力が扱胴60に伝達可能とされる。扱胴60の駆動軸が、排藁処理部7の排藁搬送装置62の入力軸に伝動機構を介して連結されて、動力が排藁搬送装置62に伝達可能とされる。
カウンタケース67の伝動軸68が、選別部5の揺動選別装置、唐箕ファンやセカンドファンを含む風選別装置、及び一番コンベアや二番コンベアを含む穀粒搬送装置の各装置の入力軸に伝動機構を介して連結されて、動力が選別部5の各装置に伝達可能とされる。このカウンタケース67の伝動軸68が、排藁処理部7の排藁切断装置63の入力軸とも伝動機構を介して連結されて、動力が排藁切断装置63に伝達可能とされる。
カウンタケース67の伝動軸69が、刈取部3の刈取入力軸37に伝動機構を介して連結される。また、カウンタケース67の別の伝動軸65がトランスミッション66の出力軸66aとも伝動機構を介して連結される。こうして、エンジン64の動力がトランスミッション66及びカウンタケース67を経て、又はトランスミッション66を経ずにカウンタケース67のみを経て、刈取部3における補助搬送装置35を含む搬送装置30等の各装置に伝達可能とされる。
カウンタケース67のフィードチェン軸51に駆動スプロケット52が固設され、この駆動スプロケット52に脱穀部4のフィードチェン50が巻き掛けられる。こうして、エンジン64の動力がトランスミッション66及びカウンタケース67を経て、又はトランスミッション66を経ずにカウンタケース67のみを経て、フィードチェン50に伝達可能とされる。この駆動スプロケット52は、脱穀部4の左前部付近に配置されている。
そして、動力がフィードチェン50から受継搬送装置70に後述の伝動機構80により伝達可能とされる。つまり、エンジン64の動力がトランスミッション66を介して刈取部3の各装置と、フィードチェン50と、受継搬送装置70とへ伝達されて、これらの装置が走行速度と同調して駆動可能とされる。
次に、フィードチェン50付近の構成について説明する。
図1及び図6に示すように、フィードチェンフレーム78は、扱胴60の左側方で前後方向に延設され、その後部で図示しない上下方向の支持軸により機体側に回動自在に支持されて、この支持軸を中心に機体の左外方向に開放回動可能に構成されている。
フィードチェンフレーム78の後部には、第1従動スプロケット53が回転自在に支持されている。フィードチェンフレーム78の前部には、第2従動スプロケット55が回転軸57を介して回転自在に支持されている。第2従動スプロケット55は、左半部55aと右半部55bとで左右に分割されて構成されている。
また、フィードチェンフレーム78の前後中途部には、支持アーム78aが下方へ突出するように設けられている。支持アーム78aは、第2従動スプロケット55の後方で、第1従動スプロケット53よりも第2従動スプロケット55寄りに配置されている。この支持アーム78aの先端部には、駆動スプロケット52とテンションアーム79の基端が回転自在に支持されている。
駆動スプロケット52は、機体側方に向けて突出されたフィードチェン軸51の突出端にスプライン嵌合等で相対回転不能に嵌合されている。駆動スプロケット52は、第1従動スプロケット53と第2従動スプロケット55との間で、これらよりも下方に配置されている。
テンションアーム79の先端側には、テンションローラ54が回転自在に支持されている。テンションアーム79は、その基端側を回動支点として上方へ回動するように、バネ79aにより付勢されている。
そして、フィードチェン50が、テンションローラ54によりテンションをかけられながら、第1従動スプロケット53、第2従動スプロケット55、駆動スプロケット52、テンションローラ54に巻き掛けられ、駆動スプロケット52の回転により回転駆動可能とされている。
フィードチェン50は、フィードチェンフレーム78の前端側に設けられた図示しないロック機構が解除されることによって、当該フィードチェンフレーム78とともに機体の左外方向に開放回動可能とされる。
次に、伝動機構80の構成について説明する。
伝動機構80は、動力を走行速度と同調して回転駆動されるフィードチェン50を受継搬送装置70へ伝達させるものである。図6、図7、図8、図9に示すように、伝動機構80は、フィードチェン50の搬送始端部50aにおける左右中央の内周空間に設けられている。
詳しくは、伝動機構80は、その左右方向が回転軸57の軸受57a・57aの間であって、その前後方向がフィードチェン50の搬送始端部50a(第2従動スプロケット55)と、受継搬送装置70の搬送終端部70b(駆動側スプロケット73)との間である領域R1に位置するように、フィードチェン50の搬送方向に沿って配置されている。
この伝動機構80には、駆動側回転体である駆動スプロケット83と、従動側回転体である従動スプロケット84と、無端駆動体であるチェン85と、これらを覆い支持するカバー86とが備えられる。
駆動スプロケット83は、回転軸57の軸心方向の略中央部であって、回転軸57の軸受57a・57aの間に固定されている。即ち、駆動スプロケット83は、フィードチェン50の第2従動スプロケット55と同軸上であって、この第2従動スプロケット55の左半部55aと右半部55bとの間に配置されている。従動スプロケット84は、カバー86に支持された受継搬送駆動軸81の一側に固定されて、駆動スプロケット83と所定幅を隔てて後上方に配置されている。
チェン85は、駆動スプロケット83及び従動スプロケット84に巻き掛けられる。このチェン85により駆動スプロケット83から従動スプロケット84に動力が伝達される。なお、本実施形態の伝動機構80は、チェン式の伝動機構としているが、ベルト式の伝動機構や歯車式の伝動機構とすることも可能である。
これらの駆動スプロケット83、従動スプロケット84、及びチェン85は、カバー86により被覆されている。カバー86は、箱状の部材であり、フィードチェン50の搬送側に沿った前低後高の傾斜状態で前後方向に延設されている。カバー86の上部にカバー支持部材87が固設されて、カバー86が当該カバー支持部材87を介してフィードチェンフレーム78に支持されている。
カバー86の前部には、回転軸57が軸受57a・57aを介して回転自在に支持されて、左右方向に延長されている。そして、この回転軸57がカバー86の左右両側面からそれぞれ左側方又は右側方に向かって突出されて、この突出する回転軸57の左側に第2従動スプロケット55の左半部55aが、その右側に第2従動スプロケット55の右半部55bがそれぞれ固定されている。
カバー86の後部には、受継搬送駆動軸81が後述する軸受82を介して回動自在に支持されて、回転軸57と平行に左右方向に延長されている。そして、この受継搬送駆動軸81がカバー86の右側面から右側方に向かって突出されて、その右端部に受継搬送装置70の駆動側スプロケット73が固定されている。軸受82は、カバー支持部材87を介してフィードチェンフレーム78に固定されている。
このように、駆動スプロケット83と、従動スプロケット84と、チェン85とをカバー86により覆うことによって、これらの部材とフィードチェン50とが干渉することを防止することが可能となるとともに、これらの部材が藁屑等を巻き込むことを防止することが可能となっている。また、伝動機構80をフィードチェン50の搬送始端部50aにおける左右中央の内周空間に配置することによって、コンパクトに配置することができるようになっている。
次に、受継搬送装置70の構成について説明する。
図3、図4、図6及び図8に示すように、受継搬送装置70は、補助搬送装置35から搬送される穀稈の株元側をフィードチェン50へ受け継がせる装置である。受継搬送装置70は、その長手方向を前後方向(穀稈の搬送方向)として、補助搬送装置35の搬送終端部35bとフィードチェン50の搬送始端部50aの間に、フィードチェン50の搬送始端部50aに沿って設けられる。
受継搬送装置70は、フィードチェン50の搬送始端部50aの右側に取り付けられる。受継搬送装置70は、その全体がフィードチェン50の搬送始端部50aと平面視で互いに略平行に並ぶように、フィートチェン50の搬送始端部50aよりも右方に配置されるとともに、搬送始端部70aが補助搬送装置35の搬送終端部35bの左下方に位置するように、補助搬送装置35よりも左方に配置される。
この受継搬送装置70には、図7、図8及び図10に示すように、受継搬送装置70の主たる構造体である支持部材71と、穀稈を搬送する部分であるチェン72と、駆動側スプロケット73と、従動側スプロケット74と、テンション機構を有するスプロケット支持部材77とが備えられる。
支持部材71は、一枚のプレートを折り曲げ形成したものであり、フィードチェンフレーム78に取り付けられる取付部71aと、チェン72の搬送側(上側)をガイドして支持するガイド部71bを備える。
取付部71aは、左右両側面を上下方向の垂直面とし、この側面でフィードチェンフレーム78の前側面にボルト等により固定されている。ガイド部71bは、取付部71aから上方及び前後方向に延設され、上端面が左右両側面と直交する面となって側面視でフィードチェン50の搬送側に沿った前低後高の傾斜状態となるように形成されている。
駆動側スプロケット73は、受継搬送駆動軸81の右側に固定されて、従動スプロケット84と同軸上に配置されている。受継搬送駆動軸81の駆動側スプロケット73と従動スプロケット84との間には、所定の左右幅を有する軸受82が外嵌されている。
従動側スプロケット74は、スプロケット支持部材77に回動軸75を介して回動自在に支持されて、駆動側スプロケット73の前下方に配置されている。この回動軸75は、受継搬送駆動軸81と平行に左右方向に延長されている。
ここで、駆動側スプロケット73は、フィードチェン50の第2従動スプロケット55よりも後方に配置され、従動側スプロケット74は、第2従動スプロケット55よりも前方に配置される。即ち、第2従動スプロケット55が、側面視で駆動側スプロケット73と従動側スプロケット74との間に配置される。
チェン72は、駆動側スプロケット73と従動側スプロケット74とに巻き掛けられている。チェン72は、その搬送側(上側)がフィードチェン50の搬送側に沿った前低後高の傾斜状態となって、側面視で搬送側の後部がフィードチェン50の搬送側の前端部と重なるように配置されている。つまり、チェン72は、その搬送終端部側の搬送面がフィードチェン50の搬送始端部側の搬送面と同一面上に位置するように配置されている。
図10に示すように、スプロケット支持部材77は、ブラケット77aと、ロッド77bと、弾性部材77cと、支持体77dとで構成される。
ブラケット77aはプレートを側面視略U字状に折り曲げ形成したものであり、支持部材71の取付部71aの側面に固定される。ブラケット77aの前板と後板にはそれぞれ挿通孔が形成されて、これらの前後の挿通孔にロッド77bが挿通可能とされる。
ロッド77bは、ブラケット77aの前後の挿通孔に挿通されて、当該ブラケット77aに前後方向に摺動自在に支持されている。ロッド77bは、ブラケット77aの前板から前方へ向かって突出されている。
弾性部材77cは、圧縮コイルバネ等で構成される。弾性部材77cは、ブラケット77aの前板と後板との間でロッド77bに外嵌されて、ロッド77bを前方に摺動するように付勢する。なお、ロッド77b上にはナット等を螺装して付勢力を調整可能としている。
支持体77dは、プレートを平面視で前向きに開口する略U字状に折り曲げ形成して構成されるものであり、ロッド77bの突出端(前端)に固定されている。支持体77dは、従動側スプロケット74を左右の側板の間に配置して、これらの側板に回動軸75を介して回転自在に支持する。
このようにして、受継搬送装置70においては、チェン72が、スプロケット支持部材77によりテンションをかけられながら、受継搬送装置70の後端側に位置する駆動側スプロケット73と、受継搬送装置70の前端側に位置する従動側スプロケット74との間に巻き掛けられ、駆動側スプロケット73の回転により回転駆動可能とされている。
このような構成において、受継搬送装置70は、補助搬送装置35の左側方で、その搬送始端部70a(受継搬送装置70の前端部)が、図1及び図3に示すように、補助搬送装置35の搬送終端部35b(補助搬送装置35の後端部)よりも前方、且つ下方に位置し、その搬送終端部70b(受継搬送装置70の後端部)が補助搬送装置35の搬送終端部35b(補助搬送装置35の後端部)よりも後方、且つ下方に位置するように、補助搬送装置35と左右に並設されている。そして、受継搬送装置70は、コンバイン1の側面視で、受継搬送装置70の搬送始端部70a側が補助搬送装置35の搬送終端部35b側と一部重なるように配置されている。
また、図1及び図3に示すように、受継搬送装置70は、フィードチェン50の搬送始端部50a(フィードチェン50の前端部)の右側方で、フィードチェン50の搬送方向(前後方向)に沿って、フィードチェン50と左右に並設されている。詳しくは、受継搬送装置70は、その搬送始端部70aがフィードチェン50の搬送始端部50aよりも前方に位置し、その搬送終端部70bがフィードチェン50の搬送始端部50aよりも後方に位置するように、フィードチェン50と左右に並設されている。
そして、受継搬送装置70は、コンバイン1の側面視で、受継搬送装置70の搬送始端部70aと搬送終端部70bとの間に、フィードチェン50の搬送始端部50a(第2従動スプロケット55)が位置して、互いの一部が重なるように配置されている。その上で、受継搬送装置70は、側面視でフィードチェン50と重なる部分において、その搬送面がフィードチェン50の搬送面と揃うように配置されている。
こうした受継搬送装置70の構成によって、刈取後の穀稈を受継搬送装置70によりフィードチェン50に受け継がせる際における穀稈の受継領域R2の拡大化が図られている(図6及び図8参照)。そのため、受継搬送装置70とフィードチェン50との間における穀稈の受継姿勢が安定し、穀稈の受継性能が向上することとなる。
また、受継搬送装置70は、伝動機構80と平行となるように左右に並設されている。具体的には、駆動スプロケット83を支持する回転軸57と、従動スプロケット84と駆動側スプロケット73とを支持する受継搬送駆動軸81と、従動側スプロケット74を支持する回動軸75とは、それぞれの軸心方向を左右方向として平行に配置されている。そして、駆動スプロケット83と従動スプロケット84とに巻回されるチェン85と、駆動側スプロケット73と従動側スプロケット74との間に巻回されるチェン72とが、互いに平行に配置されている。
このように構成することによって、刈取後の穀稈が、補助搬送装置35の搬送作用により後外方(後左側方)に向けて搬送されるのに対して、受継搬送装置70は縦回りの回転で側方への搬送作用はもたないため、受継搬送装置70の搬送作用により後方へ搬送されることになる。従って、穀稈の扱き位置が側方へズレることを防止できる。
次に、フィードチェン50から受継搬送装置70への動力伝動について、詳細に説明する。
図5及び図6に示すように、エンジン64からの動力が前述のようにカウンタケース67を経てフィードチェン軸51に伝達され、該フィードチェン軸51に固定されている駆動スプロケット52が回転する。この駆動スプロケット52の回転により、フィードチェン50が回転駆動し、第2従動スプロケット55が回転する。
第2従動スプロケット55が回転することによって、この第2従動スプロケット55を軸支する回転軸57が回転して、回転軸57上の伝動機構80の駆動スプロケット83も回転する。この駆動スプロケット83の回動により、チェン85が回転駆動し、従動スプロケット84が回転する。
そして、該従動スプロケット84の回転することによって、受継搬送駆動軸81が回転して、受継搬送駆動軸81上の駆動側スプロケット73も回転する。この駆動側スプロケット73の回動により、チェン72が回転駆動し、従動側スプロケット74が回転する。
こうして、受継搬送装置70が駆動することになる。つまり、動力が走行速度と同調して駆動されるフィードチェン50から伝動機構80を介して受継搬送装置70に伝達されて、受継搬送装置70も走行速度と同調して駆動されることになる。その結果、刈取作業時に、走行速度が速くなって、刈取部3における穀稈の刈取量が増加した場合、受継搬送装置70の駆動速度も速くなって、搬送装置30からの穀稈が受継搬送装置70によりフィードチェン50に円滑に受け継がれることとなる。一方、走行速度が遅くなって、刈取部3における穀稈の刈取量が減少した場合、受継搬送装置70の駆動速度も遅くなって、搬送装置30からの穀稈が受継搬送装置70によりフィードチェン50に円滑に受け継がれることとなる。
以上のように、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、刈取後の穀稈を、刈取部3からその後方に配置される脱穀部4のフィードチェン50に受け継がせる受継搬送装置70を具備するものであって、受継搬送装置70の搬送始端部70aがフィードチェン50の搬送始端部50aよりも前方に位置し、受継搬送装置70の搬送終端部70bがフィードチェン50の搬送始端部50aよりも後方に位置するように、受継搬送装置70を、このフィードチェン50の搬送方向に沿ってフィードチェン50と並設し、並設するフィードチェン50及び受継搬送装置70のうちのフィードチェン50側であって、且つフィードチェン50の搬送始端部50aと受継搬送装置70の搬送終端部70bとの間に伝動機構80を設けて、走行速度と同調して駆動するフィードチェン50の動力を伝動機構80により受継搬送装置70の搬送終端部70bに伝動するものとされる。
これにより、受継搬送装置70をフィードチェン50とともにコンバイン1の走行速度と同調して駆動させることができるとともに、受継搬送装置70とフィードチェン50との間の穀稈の受継領域R2を拡大することができる。従って、刈取後の穀稈を刈取部3から受継搬送装置70によりフィードチェン50に受け継がせる際に、穀稈の受継姿勢が安定し、穀稈の受継性能が向上する。
また、フィードチェン50から受継搬送装置70に動力を伝動するための伝動機構(受継搬送装置70における動力の入力部)を、受継搬送装置70の搬送始端部70aと搬送終端部70bとの間に設ける必要がないため、穀稈が受継搬送装置70により搬送される際に受継搬送装置70に巻き込まれることがなくなり、この巻き込みによる穀稈の搬送姿勢の乱れを防止することができる。
本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、また、伝動機構80は、フィードチェン50の搬送始端部50a、特にその内周空間に設けられて、フィードチェン50と連動する駆動スプロケット83(駆動側回転体)と、駆動スプロケット83(駆動側回転体)の後方に設けられて、受継搬送装置70の搬送終端部70bからフィードチェン50側へ延出される受継搬送駆動軸81と連動する従動スプロケット84(従動側回転体)と、駆動スプロケット83(駆動側回転体)と従動スプロケット84(従動側回転体)とにフィードチェン50の搬送方向に沿って巻き掛けられるチェン85(無端駆動体)と、を備えるものとされる。
これにより、受継搬送装置70の搬送終端部70bの搬送面をフィードチェン50の搬送始端部50aの搬送面に沿うように構成することが容易に可能となり、刈取後の穀稈の受継姿勢が乱されることがないようにして、受継性能の向上を図ることができる。また、伝動機構80全体がフィードチェン50の搬送始端部50aの内側に配置されることとなり、伝動機構80をコンパクトに設置することができる。