[実施例1]画像形成装置例:図1は本発明に係る画像形成装置の一例の概略構成模式図である。この画像形成装置は電子写真技術を利用して転写紙やOHPシート等の記録材に画像を形成するフルカラーレーザープリンタである。
本実施例に示す画像形成装置は、記録材Sに未定着トナー像を形成する画像形成部Pと、記録材Sに未定着トナー像を加熱定着する定着部(以下、定着装置と記す)Fと、画像形成部P及び定着部Fなどを制御する制御部Cと、に大別される。画像形成部Pは、4つの画像形成ステーションYS,MS,CS,KSを備えている。4つの画像形成ステーションYS,MS,CS,KSのうち、YSはイエロー(以下Yと略記)色の画像を形成する画像形成ステーションである。MSはマゼンタ(以下Mと略記)色の画像を形成する画像形成ステーションである。CSはシアン(以下Cと略記)色の画像を形成する画像形成ステーションである。KSはブラック(以下Kと略記)色の画像を形成する画像形成ステーションである。画像形成ステーションYS,MS,CS,KSは、それぞれ、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、感光体ドラムと記す)1と、帯電手段としての帯電ローラ2を有している。また画像形成ステーションYS,MS,CS,KSは、それぞれ、露光手段としての露光装置3と、現像手段としての現像装置4と、一次転写部材としての一次転写ローラ5と、クリーニング手段としてのドラムクリーナー6などを有している。制御部CはCPUとROMやRAMなどのメモリとからなり、メモリには画像形成制御シーケンス、クリーニングモード、画像形成制御シーケンスやクリーニングモードに必要な各種テーブル及びプログラムなどが記憶されている。制御部Cはホストコンピュータなどの外部装置(不図示)から出力されるプリント指令に応じて画像形成制御シーケンスを実行し、この画像形成制御シーケンスに従って画像形成部P及び定着部Fなどを制御する。
本実施例の画像形成装置は、画像形成制御シーケンスが実行されると、画像形成ステーションYSでは感光体ドラム1が矢印方向に回転される。まず感光体ドラム1の外周面(表面)は帯電ローラ2により所定の極性・電位に一様に帯電される(帯電工程)。そしてこの感光体ドラム1表面の帯電面に対し露光装置3が外部装置から入力した画像情報(画像データ)に応じたレーザ光を照射することによって感光体ドラム1表面の帯電面が露光され静電潜像(静電像)が形成される(露光工程)。この潜像は現像装置4によりYトナーを用いて顕像化されYトナー像となる。これにより、感光体ドラム1表面にYトナー像が形成される(現像工程)。画像形成ステーションMS,CS,KSにおいても同様の帯電工程、露光工程、現像工程の画像形成プロセスが行なわれる。これにより、画像形成ステーションMSの感光体ドラム1表面にMトナー像が、画像形成ステーションMCの感光体ドラム1表面にCトナー像が、画像形成ステーションKSの感光体ドラム1表面にKトナー像が、それぞれ形成される。画像形成ステーションYS,MS,CS,KSの配列方向に沿って設けられているトナー像搬送部材としてのエンドレスの中間転写ベルト7は、駆動ローラ8aと、従動ローラ8bと、二次転写対向ローラ8cと、に張架されている。中間転写ベルト7は、各画像形成ステーションYS,MS,CS,KSに沿って駆動ローラ8aにより120mm/secの周速度で矢印方向に回転される。この中間転写ベルト7の外周面(表面)には、中間転写ベルト7を挟んで感光体ドラム1と対向するように配設されている一次転写ローラ5により、各色のトナー像が順次重ね転写される(一次転写工程)。これによって中間転写ベルト7表面に4色のフルカラーの未定着トナー像が担持される。一次転写後に感光体ドラム1表面に残った転写残トナーはドラムクリーナー6によって除去され、感光体ドラム1は次の画像形成に供される。
一方、中間転写ベルト7の下方に設けられている給送カセット9に積載されその状態に収納されている記録材Sは、給送ローラ10によって給送カセット9から一枚ずつ分離給送され、レジストローラ対11に給送される。レジストローラ対11は、給送された記録材Sを、中間転写ベルト7を挟んで二次転写対向ローラ8cと対向するように配設されている二次転写ローラ12との間の二次転写ニップ部に送り出す。この記録材Sは二次転写ニップ部で中間転写ベルト7表面と二次転写対向ローラ8cの外周面(表面)とで挟持搬送される。そしてこの搬送過程において中間転写ベルト7表面の未定着トナー像は二次転写ローラ12によって記録材Sに転写されその状態に担持される(二次転写工程)。未定着トナー像を担持した記録材Sは、定着装置Fの後述する定着ニップ部(ニップ部)Nに導入される。そして定着ニップ部Nを通過することにより未定着トナー像は熱と圧力を受けて記録材Sの面上に加熱定着される。この記録材Sは定着装置Fから排出ローラ13へと搬送され、排出ローラ13によって排出トレイ14に排出される。二次転写後に中間転写ベルト7表面に残った転写残トナーは像搬送部材クリーニング手段としてのベルトクリーナー15により除去される。これにより中間転写ベルト7は次の画像形成に供される。
(2)定着装置の構成:図2は定着装置の一例の概略構成模式図である。この定着装置はフィルム加熱方式の定着装置である。定着装置及びこの定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向である。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向である。幅とは短手方向の寸法である。記録材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向である。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向である。長さとは長手方向の寸法である。
本実施例に示す定着装置Fは、定着回転体としての定着フィルム21と、加圧回転体(加圧部材)としての加圧ローラ22と、加熱部材としてのセラミックヒータ(以下、ヒータ記す)23などを有している。筒状に形成されている定着フィルム21の外径は約18mmである。この定着フィルム21は、可撓性及び耐熱性を有する外径18mmの円筒形状のポリイミド基層21aを有している。そしてこのポリイミド基層21aの外周に厚み約200μmのシリコーンゴムで形成された弾性層22bを設け、さらにこの弾性層の外周に厚さ15μmのPFAからなる離型層22cを設けている。
定着フィルム21の内周面(内面)側には、ヒータ23と、ヒータを支持するヒータホルダ24と、ヒータホルダを支持するとともにヒータを定着フィルム21の内周面(内面)に加圧する加圧ステー25などが配置されている。ヒータ23は、窒化アルミニウム、アルミナなどの材料により形成された細長い耐熱性のヒータ基板23aを有している。このヒータ基板23aの表面(定着ニップ部N側の面)には通電により発熱する通電発熱抵抗層としての抵抗体パターン23bが印刷によってヒータ基板の長手方向に沿って形成してある。この抵抗体パターン23bはヒータ基板23a表面に設けられている保護層としてのガラス層23cによって被覆されている。ヒータ基板23aの裏面(定着ニップ部Nと反対側の面)には、ヒータ基板23a表面の抵抗体パターン23bの長手方向中央と対応する位置に、温度検知部材としてのサーミスタ26が配設されている。耐熱性樹脂製のヒータホルダ24の下面(定着ニップ部N側の面)の短手方向中央にはヒータホルダ24の長手方向に沿って溝24aが設けられている。このヒータホルダ24の溝24aにはヒータ23のヒータ基板23aがガラス層23cを溝の開口から表出させた状態に固定支持されている。このヒータホルダ24は、ヒータホルダの長手方向両端部が定着装置Fの装置フレーム(不図示)に上下動可能に支持されている。ヒータホルダ24の上面(定着ニップ部Nと反対側の面)に配設されている金属製の加圧ステー25は、加圧ステーの長手方向両端部が装置フレームに上下動可能に支持されている。
丸軸状に形成されている加圧ローラ22は、ステンレス製の外径13mmの芯金22aを有している。そしてこの芯金22aの外周に厚み約3.5mmのシリコーンゴムで形成された弾性層22bを設け、さらにこの弾性層の外周に厚さ約30μmのPFAからなる離型層22cを設けている。この加圧ローラ22は、加圧ローラ22表面が定着フィルム21表面と対向するように定着フィルム21の下方に配置されている。そして加圧ローラ22の長手方向両端部が装置フレームに軸受(不図示)を介して回転可能に支持されている。この加圧ローラ22の長手方向両端部の軸受を加圧ばね(不図示)により定着フィルム21の径方向に向けて付勢するとともに、加圧ステーの長手方向両端部を加圧ばね(不図示)により加圧ローラ22の径方向に向けて付勢している。これらの加圧ばねの付勢力により加圧ローラ22表面が定着フィルム21を介してヒータ23のヒータ基板23aに加圧される。これにより加圧ローラ22の弾性層22bをヒータ23の長手方向に沿って弾性変形させ定着フィルム21表面と加圧ローラ22表面との間に所定幅の定着ニップ部Nを形成している。
定着装置の加熱定着動作:プリント指令に応じて加圧ローラ22が矢印方向へ所定の周速度(プロセススピード)で回転される。加圧ローラ22の回転は定着ニップ部Nにおける加圧ローラ22表面と定着フィルム21表面との摩擦力によって定着フィルム21表面に伝わる。これにより定着フィルム21は、定着フィルム21内面がヒータ23のガラス層23cの表面を摺動しながら加圧ローラ22の回転に追従して矢印方向へ所定の周速度(プロセススピード)で回転する。またプリント指令に応じて通電制御回路としてのトライアック(不図示)がオンされヒータ23の抵抗体パターン23bへの通電が開始される。これにより抵抗体パターン23bが発熱しヒータ23は急速に昇温し定着フィルム21を加熱する。このヒータ23の温度はサーミスタ26により検知される。そしてこのサーミスタ26からの出力信号(以下、サーミスタ検知温度と記す)に基づいてヒータ23の温度が所定の温調温度(目標温度)を維持するようにトライアックがオン・オフ制御される。本実施例では温調温度を170℃に設定している。加圧ローラ22を回転させ、かつヒータ23の温度が温調温度に維持されると、未定着トナー画像Tを担持した記録材Sは定着ニップ部Nに導入される。この記録材Sは定着ニップ部Nで定着フィルム21と加圧ローラ22表面とによって挟持されその状態に搬送(挟持搬送)される。そしてこの搬送過程において定着フィルム21の熱と定着ニップ部Nの圧力を受けることによって未定着トナー画像Tは記録材Sに加熱定着される。未定着トナー画像Tが加熱定着された記録材Sは定着フィルム21表面から分離され定着ニップ部Nより排出される。
トナーの熱力学的な物性の説明:本実施例ではポリエステルから成る結着樹脂とパラフィンより成る結晶質のワックスより構成されているトナーAを用いた。トナーAは、トナーAの熱力学的な物性として、変形開始点(Tf1)と、変形終了点(Tf2)と、流出開始点(Tf3)と、流出終了点(Tf4)と、軟化点(Ts)と、を有している。トナーAの変形開始点(Tf1)の温度は約42℃である。変形終了点(Tf2)の温度は約62℃である。流出開始点(Tf3)の温度は約93℃である。流出終了点(Tf4)の温度は約141℃である。軟化点(Ts)の温度は約117℃である。
トナーAの変形開始点(Tf1)、変形終了点(Tf2)について説明する。トナーAの変形開始点(Tf1)とは、トナーを密閉された容器に入れ、トナーに一定の圧を加えつつトナーの温度を徐々に上昇させた際に、トナーが変形し始める温度のことである。さらにトナーAの温度を上げることでトナーはさらに変形し続けるが、ある温度でトナーは変形が止まり、それ以上温度を上げてもトナーはほぼ変形しなくなる。そのトナーAの変形が止まった温度がトナーの変形終了点(Tf2)である。具体的には以下に示す方法によって測定を行う。まず、トナーAの真密度を(ρ)g/cm3としたときに、トナー(0.16×ρ)gを加圧成型器にはかりとり、常温常圧環境下において1960N(200kgf)の荷重で2分間加圧成型し、直径約8mm、高さ約2mmの円柱状試料を作成する。次に、内径約10mm、内壁の高さが20mm以上、研磨された底面を有する筒状容器の中央に前記円柱状試料を載せ、さらに、外径約9.9mm、厚さ10mm以上の加圧ジグを前記サンプルに接触させた状態で試料の温度を35℃に保ち5分間保持する。その後、加圧ジグに98N(10kgf)の荷重を与え、昇温速度1℃/分で120℃まで円柱状試料を昇温し、試料に接する加圧ジグの変位量を計測する。その時、加圧ジグが変位し始める温度がトナーAの変形開始点(Tf1)である。また、トナーAの変形開始点(Tf1)より変位し始めた加圧ジグの変位量の増加が止まる温度がトナーの変形終了点(Tf2)である。
本実施例では、上記測定をフローテスタCFT―100D(島津製作所株式会社製)において行った。測定結果の一例を図2の(a)に示す。グラフの縦軸が加圧ジグの変位量(ストローク)、横軸がトナーAの温度である。図2の(a)に示すようにトナーAの変形開始点(Tf1)から変形終了点(Tf2)まで加圧ジグの変位量が急激に大きくなるのは、トナーが変形開始点(Tf1)から変形終了点(Tf2)間でトナーの剛性が急激に低下しているからである。トナーAの剛性が低下するのは、トナーの非晶質成分のガラス転移点が起こっているからである。トナーAの非晶質成分がガラス転移し始める温度が変形開始点(Tf1)付近である。トナーAの非晶質成分のガラス転移がほぼ完全に終了するのが変形終了点(Tf2)付近である。そして、トナーAの温度が変形終了点(Tf2)以上になると、トナーの非晶質成分のガラス転移が終了しているため、トナーの剛性が低下しなくなり、加圧ジグの変位量も増加しなくなる。
トナーAの流出開始点(Tf3)、流出終了点(Tf4)、軟化点(Ts)について説明する。トナーAの流出開始点(Tf3)とは、トナーを底面のみに穴を有しその他の面は密閉された容器に入れ、トナーに一定の圧を加えつつトナーの温度を徐々に上昇させた際に、トナーが容器の底面の穴から流出し始める温度である。さらにトナーAの温度を上げることで、トナーはさらに流出し続けるが、ある温度でトナーは全て容器から流出する。そのトナーAが全て容器から流出したときの温度がトナーの流出終了点(Tf4)である。
具体的には以下に示す方法によって測定を行う。
トナーAを(0.96×ρ)g加圧成型器にはかりとり、常温常圧環境下において1960N(200kgf)の荷重で2分間加圧成型し、直径約10mm、高さ約12mmの円柱状試料を調整する。内径約10mm、内壁の高さが30mm以上であり、研磨された底面を有する筒状容器の底面に、直径1mm、厚さ0.5mmの筒状の穴があいた装置を用い、前記円柱状試料をその中央部に載せる。さらに、外径約9.9mm、厚さ10mm以上の加圧ジグを前記サンプルに接触させる。これを40℃で5分間保持した後、加圧ジグに98N(10kgf)の荷重を与え、昇温速度4℃/分で200℃まで円柱状試料を昇温し、試料に接する加圧ジグの変位量を計測する。筒状容器の底面の穴からトナーAが流出し、加圧ジグが変位し始める温度がトナーの流出開始点(Tf3)である。また、トナーが全て筒状容器から流出することで加圧ジグが変位しなくなった点がトナーの流出終了点(Tf4)である。
本実施例では、上記測定をフローテスタCFT―100D(島津製作所株式会社製)において行った。測定結果の一例を図2の(b)に示す。グラフの縦軸が加圧ジグの変位量(ストローク)、横軸がトナーAの温度である。図2の(b)に示すようにトナーAの流出開始点(Tf3)から流出終了点(Tf4)まで加圧ジグの変位量が大きくなるのは、トナーの流動性がトナーの流出開始点(Tf3)以降急激に大きくなっているからである。トナーAの流動性が大きくなるのは、トナーの結晶質成分の融解が発生しているからである。トナーAの結晶質成分が融解し始めるのがトナーの流出開始点(Tf3)付近である。トナーAの結晶質成分がほぼ融解し終えるのがトナーの流出終了点(Tf4)付近である。トナーAの軟化点(Ts)はトナーの流出開始点(Tf3)とトナーの流出終了点(Tf4)のちょうど中間の温度である。トナーAの結晶質成分がある程度融解し、トナーが流動性を持っている状態にあるため、トナーAの温度が軟化点(Ts)以上である時には、トナーは記録材に対し大きな接着力を持つ。
クリーニングモードの説明:まず、サーミスタ検知温度が常温(30℃以下)になるまで画像形成装置を放置することで、加圧ローラ22の表面温度を常温にまで冷却する。次に温調温度100℃、定着フィルム21の回転速度50mm/secにて60秒間の定着フィルム2の空回転を行う。次に定着フィルム21の回転速度は50mm/secのままで、温調温度を170℃に変更し、その直後に記録材の定着ニップ部Nへの通紙を行う。この記録材の定着フィルム21表面と接する側の面には、クリーニング用未定着トナー像を担持させている。図4にクリーニング用未定着トナー像を担持させた記録材の一例を示す。通常の画像形成に用いられる記録材Sと区別するために、クリーニング用未定着トナー像を担持させた記録材をクリーニングペーパーCPとする。図4に示すように、クリーニング用未定着トナー像CTは、クリーニングペーパーCPの記録材搬送方向と直交する短手方向の略全域に渡って担持されている。そしてこのクリーニング用未定着トナー像CTの記録材搬送方向の担持領域は少なくとも定着フィルム21の周長以上としてある。本実施例では、記録材搬送方向のクリーニングペーパーCP先端よりクリーニングペーパーCP後端側に約50mm離れた位置からクリーニングペーパーCP後端側に約110mm離れた位置までの間の領域にクリーニング用未定着トナー像CTを担持させている。クリーニングペーパーCPの記録材として、A4サイズ、坪量75g/m2(商標TAEHA)を用いた。クリーニングモードにおいてクリーニング用未定着トナー像CTは次のようにして形成される。クリーニングモードが実行されたとき、ROMに記憶されているクリーニング用画像パターンを展開する。そして上述の画像形成動作(通常の画像形成動作)と同じ動作により、記録材Sにクリーニング用未定着トナー像を形成し、クリーニングペーパーを作成する。即ち、画像形成部に設けられている4つの画像形成ステーションのうち所定の1つ以上の画像形成ステーションを用いて、以下の工程を中間転写ベルトの回転に同調して行わせる。即ち、帯電ローラによる帯電工程と、露光装置による露光工程と、現像装置による現像工程と、一次帯電ローラによる一次転写工程を中間転写ベルトの回転に同調して行わせる。これによって中間転写ベルト表面には所定の1つ以上の画像形成ステーションの各色のトナー像が形成される。これにより中間転写ベルト表面に1色以上のトナーを用いてクリーニングに用いる未定着トナー像が担持される。一方、給送カセットからは記録材が給送ローラにより給送される。この記録材はレジストローラにより所定のタイミングで二次転写ニップ部に搬送される。そして二次転写ローラで中間転写ベルト表面のクリーニング用未定着トナー像が記録材に転写され担持される。
クリーニングモードの効果確認手法
クリーニングモードの効果確認手法について説明する。まず、本実施例の画像形成装置、定着装置F、トナーAを用いて、低温低湿環境(15℃10%)において、記録材搬送速度50mm/sec、温調温度170℃、にて記録材の通紙を1000枚行った。記録材はA4サイズ、坪量75g/m2の用紙(商標TAEHA)を用いた。1000枚通紙する用紙としてTAEHAを用いたのは、TAEHAが加圧ローラ22表面の紙粉リッチな汚れの発生し易い炭酸カルシウムやタルクといった填料を多分に含むためである。
次に、本実施例のクリーニングモードを実行し、クリーニングモードの定着フィルム21の空回転実行時における定着ニップ部N通過直後の定着フィルム21の表面温度(Th)と加圧ローラ22の表面温度(Tp)とを測定した。定着フィルム21の表面温度(Th)と加圧ローラ22の表面温度(Tp)は表面放射温度計(HORIBA、IT540)を用いて測定した。クリーニングモードの実行後、加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れを確認した。また、クリーニングモードの定着フィルム21の空回転時の温調温度を110℃、90℃、80℃に設定した場合について、それぞれ上記と同様のクリーニングモードの効果確認を行った。
次に本実施例のクリーニングモードの効果を比較するために必要な比較例1、比較例2、比較例3の各画像形成装置ついて説明する。
(比較例1):本比較例の画像形成装置は、実施例1の画像形成装置におけるクリーニングモードを実行しない点を除いて、実施例1の画像形成装置と同じ構成としてある。
(比較例2):本比較例の画像形成装置は、実施例1の画像形成装置におけるクリーニングモードの定着フィルム21の空回転時の温調温度を70℃、60℃、50℃に変更した点を除いて、実施例1の画像形成装置と同じ構成としてある。そしてこの温調温度70℃、60℃、50℃のそれぞれについてクリーニングモードの効果確認を行った。
(比較例3):本比較例の画像形成装置は、実施例1の画像形成装置におけるクリーニングモードの定着フィルム21の空回転時の温調温度を120℃、130℃、140℃に変更した点を除いて、実施例1の画像形成装置と同じ構成としてある。そしてこの温調温度120℃、130℃、140℃のそれぞれについてクリーニングモードの効果確認を行った。
実施例1、比較例1、比較例2、比較例3の各画像形成装置におけるクリーニングモードの効果確認の結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1では、クリーニングモードの定着フィルム21の空回転時の温調温度によらず、加圧ローラ22の表面には紙粉リッチな汚れの付着はほぼ見られなかった。また、実施例1では、クリーニングモード実行中の定着フィルム21の空回転時の加圧ローラ22の表面温度(Tp)とトナーの変形終了点(Tf2)、トナーの流出開始点(Tf3)の関係は、Tf2≦Tp≦Tf3であった。
これに対し、比較例1、比較例2、比較例3では、加圧ローラ22の表面全域に紙粉リッチな汚れの付着が見られた。また、比較例2では、クリーニングモード実行中の定着フィルム21の空回転時の加圧ローラ22の表面温度(Tp)とトナーの変形終了点(Tf2)の関係は、Tp<Tf2であった。また、比較例3では、クリーニングモード実行中の定着フィルム21の空回転時の加圧ローラ22の表面温度(Tp)とトナーの流出開始点(Tf3)の関係は、Tf3<Tpであった。
実施例1と比較例1の比較により、クリーニングモードを実行することで、加圧ローラ21の表面に付着した紙粉リッチな汚れが除去されることが分かる。また、実施例1と比較例2、実施例1と比較例3の比較により、次のようなことが分かる。即ち、クリーニングモード実行中の定着フィルムの空回転時の加圧ローラの表面温度(Tp)とトナーの変形終了点(Tf2)、トナーの流出開始点(Tf3)の関係が、Tf2≦Tp≦Tf3であるときのみ、下記の効果が得られることが分かる。即ち、クリーニングモードによって加圧ローラ22の表面に付着した紙粉リッチな汚れが十分に除去されることが分かる。
クリーニングモードが加圧ローラ21表面に付着した紙粉リッチな汚れを除去するメカニズムを説明する。加圧ローラ21表面の紙粉リッチな汚れは、紙の繊維や炭酸カルシウム等の充填材からなる紙粉同士をトナーが接着剤として繋ぎ止めるような構成になっている。フィルム加熱方式の定着装置Fは、加圧ローラ22表面と定着フィルム21表面との摩擦力により定着フィルム21を従動回転させる回転駆動方式である。この回転駆動方式では、加圧ローラ22を回転駆動させて定着フィルム21を従動回転させた際に、加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れにも摩擦力が働く。
図3において、(a)は加圧ローラの表面の紙粉リッチな汚れが定着フィルム表面に転移するメカニズムを表す説明図、(b)は定着フィルム表面に転移した紙粉リッチな汚れがクリーニングペーパーで除去されるメカニズムを表す説明図である。
実施例1のように加圧ローラ22の表面温度(Tp)をトナーの変形終了点(Tf2)以上、トナーの流出開始点(Tf3)以下にする。すると、加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れ(以下、汚れと記す)St中のトナーTaの温度も変形終了点(Tf2)以上、流出開始点(Tf3)以下になる。そのため、加圧ローラ22表面の汚れSt中のトナーTaはある程度変形し易いが、流動性はほぼ無いような状態になっている。そのような状態で加圧ローラ22を回転駆動させ、加圧ローラ22表面の汚れStに摩擦力を加える。すると、汚れ中のトナーTaの剛性が低いため、汚れの中で紙粉Saと紙粉Sa、紙粉Saと加圧ローラ22表面を接着しているトナーTaが摩擦力によって変形し、汚れSt中でのトナーと紙粉の接触面積が減少することがある。トナーTaと紙粉Saの接着力は、トナーと紙粉の接触面積の大きさに比例するため、トナーと紙粉との接触面積が減少すると、汚れ中の紙粉は、紙粉単独で、もしくはトナーの一部を付着したまま、汚れから脱落する。加圧ローラ22表面の汚れStから脱落した紙粉Saは、加圧ローラ22表面の汚れ中のトナーTaと再度接触しても、汚れ中のトナーの流動性が低くトナーとの接触面積は大きくなりづらいため、加圧ローラ22表面の汚れに再付着しづらい。そのため、加圧ローラ22表面の汚れStに再付着しなかった汚れから脱落した紙粉Saの一部は定着フィルム21の表面に転移し、定着フィルム21の表面に蓄積される(図3(a)参照)。そして、定着フィルム21の表面に転移した加圧ローラ22の表面の汚れStは、クリーニングペーパーCPを定着ニップ部Nに通紙(導入)することで、定着フィルム21表面からクリーニングペーパーへ転移する。即ち、加圧ローラ22表面の汚れStは、クリーニングペーパーCPのクリーニング用未定着トナー像担持面(以下、表面と記す)へと転移し(図3(b)参照)、定着装置F外部へと排出される。
それに対して、比較例2のように、加圧ローラ22の表面温度(Tp)がトナーの変形終了点(Tf2)より低い場合は、汚れ中のトナーの温度もトナーの変形終了点(Tf2)より低くなる。そのため、加圧ローラ22表面の汚れ中のトナーは剛性が非常に大きい完全な固体のような状態になっている。そのため、加圧ローラ22を回転駆動させ、加圧ローラ22表面の汚れに摩擦力を加えても、加圧ローラ22表面の汚れ中で紙粉をつなぎとめるトナーが変形することはほとんど無く、紙粉は加圧ローラ22表面の汚れに強固に固定されたままである。そのため、加圧ローラ22の表面温度(Tp)がトナーの変形終了点(Tf2)より低い状態で加圧ローラ1を回転駆動させ、加圧ローラ22表面の汚れに摩擦力を加えても、加圧ローラ22表面の汚れから紙粉やトナーが脱落することは少ない。そのため、定着フィルム21側へ加圧ローラ22表面の汚れが転移することは少ない。そのため、クリーニングモードにおいて、定着フィルム21の空回転時の加圧ローラ22の表面温度(Tp)がトナーの変形終了点(Tf2)より低い場合は、クリーニングモードによる加圧ローラ22の表面の汚れの除去が困難である。
また、比較例3のように、加圧ローラ22の表面温度がトナーの流出開始点(Tf3)より高い場合は、加圧ローラ22表面の汚れ中のトナーの温度がトナーの流出開始点(Tf3)より高くなる。そのため、汚れ中のトナーは流動性が非常に大きい粘性液体のような状態になっている。そのため、加圧ローラ22を回転駆動させ、加圧ローラ22表面の汚れに摩擦力を加えても、汚れ中のトナーは周囲の紙粉を包みこむように変形する。従って、汚れ中のトナーと紙粉の接触面積は減少しづらく、トナーと紙粉の接着力は強固なままであることが多いため、加圧ローラ22表面の汚れから紙粉やトナーが脱落することは少ない。また、加圧ローラ22表面の汚れ中のトナーから紙粉が脱落したとしても、脱落した紙粉が加圧ローラ22表面の汚れ中のトナーと再度接触した際には、汚れ中のトナーの流動性が高いために、脱落した紙粉は汚れ中のトナーに包み込まれる。そのため、汚れ中のトナーに包み込まれた紙粉は加圧ローラ22表面の汚れに再付着してしまう可能性が高い。そのため、加圧ローラ22の表面温度(Tp)がトナーの流出開始点(Tf3)より高い状態で加圧ローラ22を回転駆動させ、加圧ローラ22表面の汚れに摩擦力を加えても、加圧ローラ22表面の汚れから紙粉やトナーが脱落することは少ない。また脱落した紙粉についても加圧ローラ22表面の汚れへの再付着が発生し易いため、定着フィルム21側へ加圧ローラ22表面の汚れが転移することは少ない。そのため、クリーニングモードにおいて、定着フィルム21の空回転時の加圧ローラ22の表面温度(Tp)がトナーの流出開始点(Tf3)より高い場合は、クリーニングモードによる加圧ローラ22の表面の汚れの除去が困難である。
実施例1の画像形成装置は、クリーニングモードにおいて、加圧ローラ22の表面温度(Tp)をトナーの流出開始点(Tf3)以下、変形終了点(Tf2)以上に制御した状態で定着フィルム21を所定時間空回転(所定時間回転)させている。そしてその後クリーニングペーパーCPを定着ニップ部Nに通紙することで、加圧ローラ22の表面の汚れを除去することができる。
実施例1の画像形成装置のクリーニングモードにおいて、サーミスタ検知温度が常温になるまで待って、定着フィルム21の空回転を開始したのは以下の理由による。即ち、加圧ローラ22の表面温度(Tp)が確実にトナーの流出開始点(Tf3)以下になってから、定着フィルム21の空回転を開始するためである。加圧ローラ22の表面温度(Tp)がトナーの流出開始点(Tf3)より高いときに定着フィルム21の空回転を行っても、比較例3の結果で説明したように、加圧ローラ22表面の汚れは定着フィルム21の表面へはほぼ転移しない。そのため、加圧ローラ22の表面の汚れを除去することはできない。
また、定着フィルム21の表面温度(Th)がトナーの流出開始点(Tf3)以上の場合は、定着フィルム21の表面に転移した汚れ中のトナーが流出開始点(Tf3)以上に加熱されるため、加圧ローラ22表面の汚れに対する接着力が大きくなる。そのため、定着フィルム21の表面に転移した汚れが加圧ローラ22表面へと再転移してしまうことが多い。そのため、クリーニングモードにおいて、実施例1のように定着フィルム21の空回転時は定着フィルム22の表面温度(Th)をトナーの流出開始点(Tf3)以下にすることが好ましい。
本実施例の画像形成装置では、制御部Cが定着ローラ21の表面温度(Th)と加圧ローラ22の表面温度(Tp)をサーミスタ検知温度に基づいて求めている。制御部Cでは、サーミスタ検知温度と定着ローラ21の表面温度(Th)との相関性に応じて作成されたテーブル或いは演算式を用いて、サーミスタ検知温度に基づき定着ローラ21の表面温度(Th)を求めている。同様に、サーミスタ検知温度と加圧ローラ22の表面温度(Tp)との相関性に応じて作成されたテーブル或いは演算式を用いて、サーミスタ検知温度に基づき加圧ローラ22の表面温度(Tp)を求めている。
また、クリーニングモードにおいて定着ニップ部Nに通紙する記録材にクリーニング用未定着トナー像を担持させなくとも、定着フィルム21の表面上の汚れはある程度記録材へと転移する。しかし、実施例1のようにクリーニング用未定着トナー像を担持させた方が、クリーニング用未定着トナー像のトナーの接着力によって定着フィルム21表面の汚れがスムーズに記録材に転移するためより好ましい。また、クリーニングモードにおいて記録材を通紙する際に記録材にクリーニング用未定着トナー像を担持させない場合でも、定着フィルム21の表面温度(Th)をトナーの軟化点(Ts)以上にした方がよい。定着フィルム21の表面温度(Th)をトナーの軟化点(Ts)以上にすると、定着フィルム21表面の汚れ中のトナーの記録材への接着力を上げることができる。そのため、クリーニングモードにおいて記録材を通紙する際には定着フィルム21の表面温度(Th)をトナーの軟化点(Ts)以上にすることが好ましい。
[実施例2]画像形成装置の他の例を説明する。本実施例において、画像形成装置及び画像形成装置の構成部材について、実施例1と同じ部材には同一符号を付して、再度の説明を省略する。実施例3、実施例4及び実施例5も同様とする。
本実施例に示す画像形成装置は、実施例1の画像形成装置と異なるトナーを用いる点、及びクリーニングモードが異なる点を除いて、実施例1の画像形成装置と同じ構成としてある。
本実施例の画像形成装置で用いるトナーBは、スチレン−アクリル化合物から成る結着樹脂とパラフィンより成る結晶質のワックスより構成されている。トナーBの変形開始点(Tf1)の温度は約51℃である。変形終了点(Tf2)の温度は約67℃である。流出開始点(Tf3)の温度は約108℃である。流出終了点(Tf4)の温度は約162℃である。軟化点(Ts)は約135℃である。
本実施例の画像形成装置におけるクリーニングモードは、定着フィルム21の空回転時の温調温度を120℃、110℃、100℃、90℃にした点を除いて、実施例1のクリーニングモードと同じである。クリーニングモードの効果確認手法は実施例1と同じである。
以下に、本実施例のクリーニングモードの効果を比較するために必要な比較例4と比較例5のクリーニングモードついて説明する。
(比較例4):本比較例のクリーニングモードは、実施例1のクリーニングモードの定着フィルム21の空回転時の温調温度を80℃、70℃、60℃に設定した点を除いて、実施例1と同じである。そしてこの温調温度80℃、70℃、60℃のそれぞれについてクリーニングモードの効果確認を行った。
(比較例5):本比較例のクリーニングモードは、実施例1のクリーニングモードの定着フィルム21の空回転時の温調温度を150℃、140℃、130℃に設定した点を除いて、実施例1と同じである。そしてこの温調温度150℃、140℃、130℃のそれぞれについてクリーニングモードの効果確認を行った。実施例2、比較例4、比較例5における各クリーニングモードの効果確認の結果を表2に示す。
表2に示すように、本実施例2では、クリーニングモード実行中の定着フィルム21の空回転時の温調温度によらず、加圧ローラ22の表面には紙粉リッチな汚れの付着はほぼ見られなかった。また、実施例2では、クリーニングモード実行中の定着フィルム21の空回転時の加圧ローラ22の表面温度(Tp)と、トナーの変形終了温度(Tf2)と、トナーの流出開始温度(Tf3)の関係は、Tf2≦Tp≦Tf3であった。
それに対し、比較例4、比較例5では、加圧ローラ22の表面全域に紙粉リッチな汚れの付着が見られた。また、比較例4では、クリーニングモード実行中の定着フィルム21の空回転時の加圧ローラ22の表面温度(Tp)とトナーの変形終了点(Tf2)の関係は、Tp≦Tf2であった。また、比較例5では、クリーニングモード実行中の定着フィルム21の空回転時の加圧ローラ22の表面温度(Tp)とトナーの流出開始点(Tf3)の関係は、Tf3<Tpであった。
実施例2と比較例4、実施例2と比較例5の比較により、トナーBにおいても、次のようなことが分かる。即ち、クリーニングモード実行中の定着フィルム21の空回転時の加圧ローラ22の表面温度(Tp)とトナーの変形終了温度(Tf2)、トナーの流出開始温度(Tf3)の関係が、Tf2≦Tp≦Tf3であるときのみ、下記の効果が得られることが分かる。即ち、クリーニングモードによって加圧ローラ22の表面に付着した紙粉リッチな汚れが十分に除去されることが分かる。
[実施例3]画像形成装置の他の例を説明する。本実施例に示す画像形成装置は、実施例1の画像形成装置とクリーニングモードが異なる点を除いて、実施例1の画像形成装置と同じ構成としてある。
本実施例のクリーニングモードは、定着フィルム21の空回転の速度を実施例1の50mm/secから300mm/secにアップさせ、定着フィルム21の空回転時間を実施例1の60秒から10秒へと短縮した。つまり、定着フィルム21を所定時間空回転させる際の回転速度を、定着ニップ部Nで未定着トナー像Tを担持する記録材Sを挟持搬送しつつヒータ23の熱で未定着トナー像を記録材に加熱定着する際の定着フィルムの回転速度以上としている。この点を除いて、本実施例のクリーニングモードは、実施例1のクリーニングモードと同じにしてある。クリーニングモードの効果確認手法は実施例1と同じである。
以下に、本実施例の結果を比較するために必要な比較例6について説明する。
(比較例6):本比較例のクリーニングモードでは、実施例1のクリーニングモードにおける定着フィルム21の空回転の速度を実施例1の50mm/secから25mm/secへとダウンさせ、定着フィルムの空回転時間は実施例1と同じ60秒のままとした。この点を除いて、比較例のクリーニングモードは、実施例1のクリーニングモードと同じである。
実施例3と比較例6のクリーニングモードの効果確認の結果について説明する。実施例3では、クリーニングモード実行後は加圧ローラ22表面にはほぼ紙粉リッチな汚れは見られなかった。それに対して、比較例6では、クリーニングモード実行後でも加圧ローラ22表面に紙粉リッチな汚れの付着が見られた。
実施例3において、クリーニングモードの定着フィルム21の空回転時間を短縮しても加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れを除去できたのは、以下の理由による。即ち、定着フィルム21の回転速度を上げるために、加圧ローラ22の回転速度を上げたことで、加圧ローラ22と加圧ローラ22に対して従動する定着フィルム21との間に周速差が生まれ易くなる。これにより、加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れに大きな摩擦力が働き易いことと、定着フィルム22の回転速度を上げたため、単位時間当たりの加圧ローラ22表面と定着フィルム21表面との間の定着ニップ部Nでの摺動回数が多くなることによる。加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れに大きな摩擦力が働くほど、加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れから紙粉は脱落し易い。また単位時間当たりの加圧ローラ22表面と定着フィルム21表面との間の定着ニップ部Nでの摺動回数が多くなるほど、加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れから脱落する紙粉の数は増える。そのため、実施例3のようにクリーニングモードの空回転中の定着フィルム21の回転速度を上げることで、短時間でより多くの加圧ローラ22表面の紙粉リッチな汚れを定着フィルム21の表面へと転移させることができる。
本実施例の画像形成装置は、クリーニングモードの定着フィルム21の空回転の回転速度を上げることで、加圧ローラ22表面から定着フィルム21表面への紙粉リッチな汚れの転移効率がアップする。そのため、クリーニングモードに要する時間を短縮しつつ、加圧ローラ22表面の紙粉リッチな汚れを十分に除去することができる。また、比較例6のように、クリーニングモードにおける定着フィルム21の回転速度を遅くしすぎると、加圧ローラ22と加圧ローラ22に対して従動する定着フィルム21との間に周速差が生まれづらい。そのため、加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れに摩擦力が働きづらくなり、加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れから紙粉は脱落しづらい。そのため、クリーニングモードの定着フィルム21の空回転の回転速度は50mm/sec以上にすることが好ましい。また、クリーニングモードにおける定着フィルム21の空回転に必要な時間は、クリーニングモードにおける定着フィルム21の空回転速度や、クリーニングモードの実行頻度によって変わってくる。しかし、クリーニングモードの実行頻度増加によるユーザビリティの低下を考慮すると、クリーニングモードにおける定着フィルム21の空回転に必要な時間を10秒以上にすることが好ましい。
[実施例4]画像形成装置の他の例を説明する。本実施例に示す画像形成装置は、実施例1の画像形成装置とクリーニングモードが異なる点を除いて、実施例1の画像形成装置と同じ構成としてある。
本実施例のクリーニングモードは、実施例1のクリーニングモードにおける定着フィルム21の空回転の速度を実施例1の50mm/secから300mm/secにアップさせ、定着フィルム21の空回転時間を実施例1の60秒から10秒へと短縮した。そして定着ニップ部Nで所定の枚数の記録材Sが挟持搬送される毎にクリーニングモードを実行した。この点を除いて、本実施例のクリーニングモードは、実施例1のクリーニングモードと同じにしてある。
クリーニングモードの効果確認手法:実施例1では1000枚通紙後にクリーニングモードを実行したが、本実施例では所定の枚数の記録材Sとして100枚通紙毎にクリーニングモードを実行した。そして上記の「100枚通紙と100枚通紙後のクリーニングモードの実行」のサイクルを10回実行することで、合計で1000枚通紙を行い、1000枚通紙後の加圧ローラ1の表面の紙粉リッチな汚れを確認した。この点を除いて、クリーニングモードの効果確認手法は実施例1と同じである。
本実施例のクリーニングモードの結果を比較するために必要な比較例7について説明する。
(比較例7):本比較例のクリーニングモードは、クリーニングモードを1000枚通紙後にのみ実行し、1000枚通紙後の加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れを確認した。この点を除いて、実施例4のクリーニングモードと同じである。
実施例4と比較例7のクリーニングモードにおける効果確認の結果について説明する。実施例4では、加圧ローラ22の表面には紙粉リッチな汚れはほぼ見られなかった。それに対し、比較例6では、本実施例と同様のクリーニングモードを実行しているにも関わらず、加圧ローラ22の表面には紙粉リッチな汚れが見られた。これは、クリーニングモード実行の頻度が本実施例の方が多いためである。比較例7のように1000枚通紙後に一回のみクリーニングモードを実行しても加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れは十分にクリーニングできない。しかし、実施例4のように100枚通紙毎にクリーニングモードを実行することで、クリーニングモードにおける定着フィルム21の回転時間が短くとも、加圧ローラ22表面の紙粉リッチな汚れを十分に除去することができる。
クリーニングモードの実行頻度を本実施例よりもさらに増やすことで、クリーニングモードにおける定着フィルム21の回転時間をさらに短くすることが可能である。しかし、クリーニングモードの回数を増やすことでクリーニングペーパー通紙頻度や、加圧ローラ22の表面温度(Tp)が常温になるまでの冷却待ちの頻度が増えるため、ユーザビィティの低下が著しい。そのため、クリーニングモードの実行頻度は100枚以上毎が望ましく、また、100枚以上毎での加圧ローラ22の表面の紙粉リッチな汚れの除去性能を十分に確保するため、クリーニングモードにおける定着フィルム21の空回転時間は10秒以上が望ましい。
[実施例5]画像形成装置の他の例を説明する。本実施例に示す画像形成装置は、実施例1の画像形成装置とクリーニングモードが異なる点を除いて、実施例1の画像形成装置と同じ構成としてある。
本実施例のクリーニングモードでは、サーミスタ検知温度がトナーAの流出開始点(Tf3)以下になったタイミングで定着フィルム21の空回転を開始した。また定着フィルム21の空回転時の温調温度をトナーAの流出開始点(Tf3)である93℃にした。この点を除いて、本実施例のクリーニングモードは、実施例1のクリーニングモードと同じである。クリーニングモードの効果確認手法は実施例1と同じである。
実施例5では、加圧ローラ22の表面には紙粉リッチな汚れはほぼ見られなかった。定着装置Fにおいては、ヒータ23から定着フィルム21へと熱が伝わり、定着フィルム21から加圧ローラ22へと熱が伝わる構成になっている。そのため、通紙時のヒータ23の発熱中は温度の高い順に、ヒータ23、定着フィルム21表面、加圧ローラ22表面になっている。またこの温度の序列は通紙が終了し、ヒータ23の発熱が終了した後も維持される。そのため、ヒータ23の温度を検知しているサーミスタ26のサーミスタ検知温度がトナーの流出開始点以下になった際には、加圧ローラ22の表面温度(Tp)と定着フィルム2の表面温度(Th)もトナーAの流出開始点(Tf3)以下の温度になっている。
そのため、サーミスタ検知温度がトナーAの流出開始点(Tf3)以下になったタイミングで定着フィルム21の空回転を開始すれば、Tp<Th3、Th<Tf3の状態から定着フィルム21の空回転を開始できる。その上で、定着フィルム21の空回転時のヒータ23の温調温度を、Tf2<Tpになるように制御すれば、加圧ローラ22表面の紙粉リッチな汚れを定着フィルム21の表面へと転移させることができる。
加圧ローラ22の表面温度(Tp)が確実にトナーの流出開始点(Tf3)以下になったことを検知できる加圧部材温度検知部材が定着装置Fに搭載されている場合は、所定のタイミングでクリーニングモードの定着フィルム21の空回転を実行する。即ち、実施例5のようにサーミスタ等の加圧部材温度検知部材が加圧ローラ22の表面温度(Tp)よりもトナーの流出開始点(Tp)以下になったことを示したタイミングでクリーニングモードの定着フィルム21の空回転を実行する。これにより、実施例1から実施例4のようにサーミスタ検知温度が常温になるまで待ってから、クリーニングモードの定着フィルム21の空回転を開始するよりも、クリーニングモードに要する時間が短縮されるため、より好ましい。また、定着フィルム21の表面温度(Th)が確実にトナーの流出開始点Tf3以下になったことを検知できる定着回転体温度検知部材が定着装置Fに搭載されている場合も、所定のタイミングでクリーニングモードの定着フィルム21の空回転を実行する。即ち、実施例5のようにサーミスタ等の定着回転体温度検知部材が定着フィルム21の表面温度(Th)よりもトナーの流出開始点(Tp)以下になったことを示したタイミングでクリーニングモードの定着フィルム21の空回転を実行するようにしてもよい。つまり、実施例5のクリーニングモードは、定着回転体温度検知部材と加圧部材温度検知部材のうち少なくとも1つの温度検知部材の検知温度がトナーの流出開始温度(Tf3)以下の場合に、定着フィルム21を所定時間空回転させるようになっている。
[他の実施例]1)定着フィルムの回転に追従して加圧ローラを回転させる定着装置を搭載する画像形成装置にクリーニングモードを適用してもよい。或いは加圧ローラと定着フィルムを独立に回転させる定着装置を搭載する画像形成装置にクリーニングモードを適用してもよい。2)フィルム加熱方式の定着装置に代えて定着ローラ(定着回転体)と加圧ローラ(加圧部材)などを有してなる熱ローラ方式の定着装置を搭載する画像形成装置にクリーニングモードを適用しても同様の作用効果を得ることができる。