JP5450150B2 - アーク溶接システムによるチップ−母材間距離の制御方法およびアーク溶接システム - Google Patents
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Description
行ワイヤからなる2本のワイヤを供給してアーク溶接を行う場合であっても、チップ−母材間距離を適切に制御することができる。
ここで、各実施形態におけるチップ−母材間距離Lwとは、図1(a)に示すような平板に対するビード溶接においては、ワイヤ送給モータ20によって溶接トーチ10先端のチップ1からワイヤ送給速度Vfで送給されるワイヤWの突き出し長さLxと、アークAのアーク長Laと、を合計した距離のことを指している。また同様に、図1(b)に示すようなすみ肉溶接においては、溶接線の中心線上における突き出し長さLxと、アーク長Laと、溶接ビードBの深さと、を合計した距離のことを指している。
シングルアーク溶接システム100は、溶接トーチ10を上方向または下方向に位置補正、あるいは、左右方向にウィービングしながら母材Mの溶接線にアーク溶接を行うシステムである。シングルアーク溶接システム100は、図2(a)に示すように、溶接トーチ10と、ワイヤ送給モータ20と、溶接ロボット30と、ロボットコントローラ40と、溶接電源50と、を主な構成として備えている。以下、シングルアーク溶接システム100が備える各構成について、詳細に説明する。
溶接電流変換部41は、実溶接電流値のアナログデータをデジタルデータに変換する処理を行うものである。溶接電流変換部41には、試験溶接時および本溶接時のそれぞれにおいて、後記する溶接電源50の溶接電流検出部51から実溶接電流値のアナログデータが所定のサンプリング間隔で入力される。そして、溶接電流変換部41は、入力された実溶接電流値を電流変換(AD変換)し、当該変換後の実溶接電流値をアーク倣い制御処理部42に出力する。
平均値算出手段42aは、溶接電流検出部51が所定のサンプリング間隔で検出した実溶接電流値から、試験溶接時(試験溶接条件下)における平均実溶接電流値と、本溶接時(本溶接条件下)における平均実溶接電流値と、を算出する手段である。また、基準電流値格納テーブル生成手段42bは、平均値算出手段42aによって算出した平均実溶接電流値と、これに対応する試験溶接条件と、を各々テーブルに格納して基準電流値格納テーブルを生成する手段である。
まず、基準電流値格納テーブルを生成するための準備工程では、作業者等が所定の試験溶接条件で試験溶接を行うと、溶接電源50の電流値測定手段(溶接電流検出部)51が試験溶接時における実溶接電流値のアナログデータを所定のサンプリング間隔で検出し、当該データをロボットコントローラ40の電流値変換手段(溶接電流変換部)41に出力する。
基準電流値補間手段は、本溶接条件と同じ条件で試験溶接を行っておらず、基準電流値格納テーブルから直接基準電流値を取得することができない場合において、基準電流値格納テーブルに格納された試験溶接条件と、試験溶接時における平均実溶接電流値と、を補間する手段である。基準電流値補間手段は、例えば、基準電流値格納テーブルに既に格納された試験溶接条件とこれに対応する平均実溶接電流値から関係式を求め、当該関係式に本溶接条件を代入することで、本溶接時における平均実溶接電流値を算出する。
本実施形態に係るチップ−母材間距離の制御方法は、従来とは異なる倣い処理によってチップ−母材間距離Lwを制御することを特徴としており、準備工程と、位置補正工程と、に大別される。以下、第1実施形態に係るチップ−母材間距離の制御方法の各工程の詳細について説明する。
準備工程は、位置補正工程の前に予め基準電流値格納テーブルを準備する工程である。準備工程では、具体的には、実溶接電流値事前取得工程と、基準電流値格納テーブル生成工程と、を行う。以下、各工程の詳細について説明する。
本工程は、実際の溶接(本溶接)を行う前に、予め所定のチップ−母材間距離Lwで試験的な溶接(試験溶接)を行い、実溶接電流値の平均値である平均実溶接電流値を算出する工程である。本工程では、まず作業者が所定の試験溶接条件下で試験溶接を行い、アーク溶接システム100の電流値測定手段(溶接電流検出部)51によって試験溶接時における安定した実溶接電流値を所定のサンプリング間隔でサンプリングする。そして、アーク溶接システム100の平均値算出手段42aによって、電流値測定手段51でサンプリングした複数の実溶接電流値から平均実溶接電流値を算出し、アーク溶接システム100のメモリ手段42fにデータとして保存する。
本工程は、アーク溶接システム100の基準電流値格納テーブル生成手段42bによって、試験溶接時に算出した平均実溶接電流値と、これに対応する試験溶接条件と、を各々テーブルに格納し、図5に示すような基準電流値格納テーブルを生成する工程である。ここで、基準電流値格納テーブルとは、アーク溶接が安定している際の平均実溶接電流値と、その平均実溶接電流値を測定・算出した際の溶接条件(設定溶接電流値、設定溶接電圧値等)が対応付けられて格納されたテーブルである。以下、図5を参照しながら、基準電流値格納テーブルについて、詳細に説明する。
位置補正工程は、準備工程で準備した基準電流値格納テーブルに基づいて溶接トーチ10を上方向または下方向に位置補正する工程である。位置補正工程では、具体的には、実溶接電流値取得工程と、基準電流値取得工程と、電流値比較工程と、溶接トーチ位置補正工程と、を行う。以下、各工程の詳細について説明する。
本工程は、所定のチップ−母材間距離Lwおよび所定の本溶接条件下で本溶接を行い、平均実溶接電流値を算出する工程である。本工程における平均実溶接電流値の算出方法および算出手段は、実溶接電流値事前取得工程と同様であるため説明を省略する。本工程で算出した本溶接時における平均実溶接電流値は、後記するように、電流値比較手段42dによって試験溶接時における平均実溶接電流値である基準電流値と比較され、その比較結果に従って、溶接トーチ10が上方向または下方向に位置補正されることになる。
本工程は、アーク溶接システム100の基準電流値取得手段42cが、本溶接時における本溶接条件と、予め生成した基準電流値格納テーブルに格納された試験溶接条件とを照らし合わせることで、当該本溶接条件に対応する試験溶接時における平均実溶接電流値を抽出し、かつ、これを基準電流値として設定する工程である。
本工程は、アーク溶接システム100の電流値比較手段42dによって、所定の本溶接条件下における平均実溶接電流値と、前記した基準電流値取得工程で取得した基準電流値の大小を比較する工程である。ここで、基準電流値は、アーク溶接が安定している際の平均実溶接電流値である。従って、本溶接時における平均実溶接電流値と基準電流値とを比較することで、本溶接時における平均実溶接電流値が安定しているか、すなわち、本溶接が安定的に行われているのかを判断することができる。
本工程は、電流値比較工程における比較結果に従って、アーク溶接システム100の溶接トーチ位置補正手段42eによって、本溶接時における実溶接電流値が安定するように、溶接ロボット30先端の溶接トーチ10を上方向または下方向に位置補正する工程である。本工程は、溶接トーチ10を位置補正してワイヤWの突き出し長さLxを変化させることで、ワイヤの抵抗値が変化して実溶接電流値が変化するというアーク溶接の性質を利用して、溶接トーチ10の位置補正によって実溶接電流値を調整し、チップ−母材間距離Lwを制御するものである。本工程における処理は、具体的には以下の通りである。
本実施形態に係るチップ−母材間距離の制御方法は、実溶接電流値事前取得工程と、基準電流値格納テーブル生成工程と、実溶接電流値取得工程と、基準電流値取得工程と、電流値比較工程と、溶接トーチ位置補正工程と、を有する点では、前記した第1実施形態と同様である。
本実施形態に係るチップ−母材間距離の制御方法は、実溶接電流値事前取得工程と、基準電流値格納テーブル生成工程と、実溶接電流値取得工程と、基準電流値取得工程と、電流値比較工程と、溶接トーチ位置補正工程と、を有する点では、前記した第1実施形態と同様である。
タンデムアーク溶接システム200は、2本のワイヤWを備える溶接トーチ10を上方向または下方向に位置補正、あるいは、左右方向にウィービングしながら母材Mの溶接線にアーク溶接を行うシステムである。タンデムアーク溶接システム200は、図2(b)に示すように、2本のワイヤWに対応してワイヤ送給モータ20、ロボットコントローラ40の溶接電流変換部41、溶接電源50および溶接電流検出部51をそれぞれ2つずつ備える点を除けば、前記したシングルアーク溶接システム100と同様の構成を有している。従って、シングルアーク溶接システム100と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
10 溶接トーチ
20 ワイヤ送給モータ
30 溶接ロボット
40 ロボットコントローラ
41 溶接電流変換部(電流値変換手段)
42 アーク倣い制御処理部
42a 平均値算出手段
42b 基準電流値格納テーブル生成手段
42c 基準電流値取得手段
42d 電流値比較手段
42e 溶接トーチ位置補正手段
42f メモリ手段
43 ティーチング処理部(ティーチング処理手段)
44 ロボット軌跡計画処理部
50 溶接電源
51 溶接電流検出部(電流値測定手段)
100 シングルアーク溶接システム(アーク溶接システム)
200 タンデムアーク溶接システム(アーク溶接システム)
A アーク
B 溶接ビード
La アーク長
Lw チップ−母材間距離
Lx 突き出し長さ
M 母材
Vf 送給速度
W ワイヤ
Claims (9)
- 所定の溶接条件と当該溶接条件によって試験溶接において定電圧特性を有する溶接電源を用いてアーク溶接を行った場合の平均実溶接電流値とが予め対応付けられて格納された基準電流値格納テーブルに基づいて、本溶接において溶接トーチを位置補正するアーク溶接システムによるチップ−母材間距離の制御方法であって、
前記基準電流値格納テーブルは、前記試験溶接において所定の溶接電流の設定値と溶接電圧の設定値との組み合せを含む試験溶接条件を変更しながら複数の試験溶接条件下において前記溶接電源が備える電流値測定手段で測定された実溶接電流値を平均化して算出した平均実溶接電流値とこれに対応する前記複数の試験溶接条件とを格納したものであり、
前記本溶接において、所定の溶接電流の設定値と溶接電圧の設定値との組み合せを含む本溶接条件下において、定電圧特性を有する溶接電源が備える電流値測定手段によって実溶接電流値を測定するとともに、平均値算出手段によって前記本溶接条件下の平均実溶接電流値を算出する実溶接電流値取得工程と、
基準電流値取得手段によって、前記基準電流値格納テーブルから前記本溶接条件と一致する前記試験溶接条件に対応して算出された前記平均実溶接電流値を抽出し、この抽出した平均実溶接電流値を前記本溶接において前記溶接トーチを位置補正する際の目標電流値である基準電流値として設定する基準電流値取得工程と、
電流値比較手段によって、前記本溶接条件下の平均実溶接電流値と前記基準電流値とを比較する電流値比較工程と、
前記電流値比較工程における比較結果に従って、前記本溶接条件下の実溶接電流値を前記基準電流値に近づけるように、溶接トーチ位置補正手段によって前記溶接トーチを上方向または下方向に位置補正する溶接トーチ位置補正工程と、
を行うことを特徴とするアーク溶接システムによるチップ−母材間距離の制御方法。 - 前記基準電流値取得工程において、前記本溶接条件と一致する前記試験溶接条件が前記基準電流値格納テーブルに存在しない場合、基準電流値補間手段によって前記基準電流値格納テーブルに格納された前記試験溶接条件およびこれに対応する前記平均実溶接電流値を補間し、補間により算出された平均実溶接電流値を、前記基準電流値取得手段によって前記基準電流値として設定することを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接システムによるチップ−母材間距離の制御方法。
- 前記実溶接電流値取得工程の前に、
前記複数の試験溶接条件下において、前記電流値測定手段によって前記実溶接電流値を測定するとともに、前記平均値算出手段によって前記試験溶接条件下の平均実溶接電流値を算出する実溶接電流値事前取得工程と、
基準電流値格納テーブル生成手段によって、前記複数の試験溶接条件下の平均実溶接電流値とこれに対応する前記試験溶接条件とを各々テーブルに格納して前記基準電流値格納テーブルを生成する基準電流値格納テーブル生成工程と、
を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアーク溶接システムによるチップ−母材間距離の制御方法。 - 前記試験溶接は、平板に対するビード溶接、または、すみ肉溶接のいずれかの溶接方法で前記アーク溶接を行うことを特徴とする請求項3に記載のアーク溶接システムによるチップ−母材間距離の制御方法。
- 前記基準電流値取得工程において、前記試験溶接および前記本溶接の溶接方法が異なる場合、パラメータ補正手段によって、予め求めたパラメータを用いて前記基準電流値を補正することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のアーク溶接システムによるチップ−母材間距離の制御方法。
- 前記実溶接電流値事前取得工程において、前記複数の試験溶接条件のうち所定の試験溶接条件下で測定された前記実溶接電流値のばらつきが所定の閾値を越えると前記平均値算出手段によって判断された場合、エラーフラグ生成手段によって当該試験溶接条件下での平均実溶接電流値をエラーフラグとし、
前記基準電流値格納テーブル生成工程において、前記基準電流値格納テーブル生成手段によって、前記エラーフラグとこれに対応する前記試験溶接条件とを各々テーブルに格納して前記基準電流値格納テーブルを生成し、
前記基準電流値取得工程において、前記基準電流値として設定した前記試験溶接条件下の平均実溶接電流値が前記エラーフラグであると前記基準電流値取得手段によって判断された場合、エラー出力手段によってエラー出力することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のアーク溶接システムによるチップ−母材間距離の制御方法。 - 前記実溶接電流値取得工程および前記実溶接電流値事前取得工程において、前記試験溶接および前記本溶接の開始時、あるいは、前記試験溶接条件及び前記本溶接条件の変更時から所定期間が経過した後に、前記電流値測定手段によって前記実溶接電流値を測定することを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか一項に記載のアーク溶接システムによるチップ−母材間距離の制御方法。
- 母材に対してワイヤを供給する溶接トーチと、前記溶接トーチの倣い処理を制御するアーク倣い制御処理部と、を備え、所定の溶接条件と当該溶接条件によって試験溶接において定電圧特性を有する溶接電源を用いてアーク溶接を行った場合の平均実溶接電流値とが予め対応付けて格納された基準電流値格納テーブルに基づいて、本溶接において前記溶接トーチの位置を補正するシングルアーク溶接システムであって、
前記基準電流値格納テーブルは、前記試験溶接において所定の溶接電流の設定値と溶接電圧の設定値との組み合せを含む試験溶接条件を変更しながら複数の試験溶接条件下において前記溶接電源が備える電流値測定手段で測定された実溶接電流値を平均化して算出した平均実溶接電流値とこれに対応する前記複数の試験溶接条件とを格納したものであり、
前記アーク倣い制御処理部は、
前記本溶接において、所定の溶接電流の設定値と溶接電圧の設定値との組み合せを含む本溶接条件下において、定電圧特性を有する溶接電源が備える電流値測定手段によって測定された実溶接電流値を平均化した平均実溶接電流値を算出する平均値算出手段と、
前記基準電流値格納テーブルから前記本溶接条件と一致する前記試験溶接条件に対応して算出された前記平均実溶接電流値を抽出し、この抽出した平均実溶接電流値を前記本溶接において前記溶接トーチを位置補正する際の目標電流値である基準電流値として設定する基準電流値取得手段と、
前記本溶接条件下の平均実溶接電流値と前記基準電流値とを比較する電流比較手段と、
前記電流値比較手段による比較結果に従って、前記本溶接条件下の実溶接電流値を前記基準電流値に近づけるように前記溶接トーチを上方向または下方向に位置補正する溶接トーチ位置補正手段と、
を備えることを特徴とするシングルアーク溶接システム。 - 母材に対して先行ワイヤと後行ワイヤからなる2本のワイヤを供給する溶接トーチと、前記溶接トーチの倣い処理を制御するアーク倣い制御処理部と、を備え、所定の溶接条件と当該溶接条件によって試験溶接において定電圧特性を有する溶接電源を用いてアーク溶接を行った場合の平均実溶接電流値とが、前記ワイヤごとに予め対応付けて格納された基準電流値格納テーブルに基づいて、本溶接において前記溶接トーチの位置を補正するタンデムアーク溶接システムであって、
前記基準電流値格納テーブルは、前記試験溶接において溶接トーチが供給する後行ワイヤとなるワイヤからアークを出さずに前記溶接トーチが供給する先行ワイヤとなるワイヤのみでアーク溶接を行う際に所定の溶接電流の設定値と溶接電圧の設定値との組み合せを含む試験溶接条件を変更しながら複数の試験溶接条件下において前記溶接電源が有する電流値測定手段で測定された実溶接電流値を平均化して算出した平均実溶接電流値とこれに対応する前記複数の試験溶接条件とを前記先行ワイヤとなるワイヤ毎に格納したものであり、
前記アーク倣い制御処理部は、
前記本溶接において、母材に対して前記溶接トーチの先行ワイヤと後行ワイヤによって同時に溶接を行う際に前記先行ワイヤに対する所定の溶接電流の設定値と溶接電圧の設定値との組み合せを含む本溶接条件下において、定電圧特性を有する溶接電源が備える電流値測定手段によって測定された実溶接電流値を平均化した平均実溶接電流値を算出する平均値算出手段と、
前記基準電流値格納テーブルから前記先行ワイヤ及びその本溶接条件と一致するワイヤ及びその前記試験溶接条件に対応して算出された前記平均実溶接電流値を抽出し、この抽出した平均実溶接電流値を前記本溶接において前記溶接トーチを位置補正する際の目標電流値である基準電流値として設定する基準電流値取得手段と、
前記本溶接条件下の平均実溶接電流値と前記基準電流値とを比較する電流比較手段と、
前記電流値比較手段による比較結果に従って、前記本溶接条件下の実溶接電流値を前記基準電流値に近づけるように前記溶接トーチを上方向または下方向に位置補正する溶接トーチ位置補正手段と、
を備えることを特徴とするタンデムアーク溶接システム。
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