JP6299521B2 - アーク溶接装置、アーク溶接システム、アーク溶接方法および被溶接物の製造方法 - Google Patents

アーク溶接装置、アーク溶接システム、アーク溶接方法および被溶接物の製造方法 Download PDF

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Description

開示の実施形態は、アーク溶接装置、アーク溶接システム、アーク溶接方法および被溶接物の製造方法に関する。
従来、溶接用ワイヤと被溶接物(ワーク)との間にアークを発生させて溶接するアーク溶接装置として、溶接用ワイヤを被溶接物へ向かう正方向または逆方向へと送給する速度を、所定の終期で周期的に変化させるものがある。
また、かかるアーク溶接装置には、所定期間中に短絡が発生しない場合に、ワイヤ送給の周期的な制御を中止し、送給速度を一定とする制御へと切り替え、強制的に短絡を発生させて周期の均一化を図るものがある(たとえば、特許文献1参照)。
国際公開第2010/146844号
しかしながら、上述した従来のアーク溶接装置には、溶接用ワイヤに高い送給負荷がかかった場合などに、溶接外観が悪化するという問題がある。具体的には、溶接用ワイヤに高い送給負荷がかかると、ワイヤ送給の応答性が悪くなり、均一化しようとした周期がずれてしまう。このため、アークが不安定になり、溶接外観が悪化する。
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、溶接外観を良好に保つことができるアーク溶接装置、アーク溶接システム、アーク溶接方法および被溶接物の製造方法を提供することを目的とする。
実施形態の一態様に係るアーク溶接装置は、送給部と、検出部と、判定部と、補正部とを備える。前記送給部は、溶接用ワイヤを、被溶接物の方向へ向かう正方向および正方向とは逆方向の少なくとも一方向へと送給する。前記検出部は、前記溶接用ワイヤと前記被溶接物との間で短絡が発生してから次に短絡が発生するまでを一周期として検出する。前記判定部は、前記検出部によって検出された周期が所定の範囲内か否かを判定する。前記補正部は、前記判定部によって前記周期が所定の範囲外と判定されると、前記溶接用ワイヤの送給状態を変化させることで前記周期を補正する。前記判定部は、前記補正部による周期の補正終了の条件を前記所定の範囲と同等範囲または前記所定の範囲よりも狭い範囲とする。
実施形態の一態様によれば、溶接外観を良好に保つことができる。
図1は、実施形態に係るアーク溶接装置の概要説明図である。 図2は、アーク溶接システムのシステム構成図である。 図3は、アーク溶接システムのブロック図である。 図4Aは、周期補正例のタイミングチャート(その1)である。 図4Bは、周期補正例のタイミングチャート(その2)である。 図5は、周期補正処理手順のフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本願の開示するアーク溶接装置、アーク溶接システム、アーク溶接方法および被溶接物の製造方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
まず、図1を参照して実施形態に係るアーク溶接装置の概要について説明する。図1は、実施形態に係るアーク溶接装置の概要説明図である。なお、図1では、溶接用ワイヤの送給状態を、たとえば、溶接用ワイヤの送給速度とする。
図1に示すように、アーク溶接装置10(図2参照)では、消耗電極である溶接用ワイヤを、被溶接物の方向へと向かう正方向および正方向とは逆方向の少なくとも一方向へと送給する。なお、以下では、上記正方向への送給を正送、正方向とは逆方向への送給を逆送という場合がある。
また、アーク溶接装置10(図2参照)では、溶接用ワイヤと被溶接物との間で短絡が発生してから次に短絡が発生するまでを1つの周期として検出する。なお、1つの周期において、短絡状態が始まり、短絡状態からアーク状態へと移行し、アーク状態が終了する。アーク溶接では、短絡状態とアーク状態とを繰り返し発生させながら、溶接トーチを移動させて溶接を行う。
ここで、短絡状態とは、溶接用ワイヤの先端が被溶接物へと近接または当接し、溶接用ワイヤと被溶接物とが導通する状態、換言すれば、溶接用ワイヤから被溶接物へ溶滴が移行する状態をいう。これに対し、アーク状態とは、溶接用ワイヤと被溶接物との間にアークが存在する状態、換言すれば、溶接用ワイヤの先端に形成された溶滴が成長する状態をいう。
また、アーク溶接装置10(図2参照)では、検出された周期が所定の範囲D内か否かを判定する。なお、所定の範囲Dは、1つの周期の終了時期、すなわち、アーク状態の終期に設定される。
そして、アーク溶接装置10(図2参照)では、周期が所定の範囲D外と判定されると、溶接用ワイヤの送給状態を変化させて周期が所定の範囲D内となるように補正する。なお、図1では、溶接用ワイヤの送給速度を変化させて周期を補正する。
具体的には、短絡発生から次の短絡発生までの1つの周期が所定の範囲D外となった場合、たとえば、次の周期で溶接用ワイヤの送給速度を加速する。図1では、1つの周期のうち、短絡状態で溶接用ワイヤの逆送を加速し、アーク状態で溶接用ワイヤの正送を加速する。なお、短絡発生は、溶接電流および溶接電圧に基づいて検出される。
これにより、周期の均一化を図ることができる。そして、周期を均一化することで、アークが安定し、この結果、溶接外観を良好に保つことができる。
なお、実施形態に係るアーク溶接装置10(図2参照)では、周期の補正終了の条件を所定の範囲Dと同等範囲または所定の範囲Dよりも狭い範囲とした。また、周期を補正する場合は、溶接用ワイヤの送給状態を複数の周期にわたって段階的に変化させることとした。かかる構成については後述する。
また、実施形態に係るアーク溶接装置10(図2参照)では、溶接条件に応じたパラメータに基づいて溶接用ワイヤの送給状態を変化させることとした。さらに、溶接条件を溶接用ワイヤの種類とした。かかる構成についても後述する。
なお、図1では、溶接用ワイヤの送給状態を、溶接用ワイヤの送給速度としたが、これに限定されず、たとえば、送給時間や送給距離としてもよい。また、溶接用ワイヤの送給方向を変化させるようにしてもよい。
また、図1では、溶接用ワイヤの送給速度指令を台形波で出力しているが、これに限定されず、送給速度指令を三角波やサイン波で出力してもよい。
また、図1では、周期ずれが検出された場合、ずれた周期の直後の周期で補正する例を示したが、これに限定されず、たとえば、ずれた周期からn回後(なお、nは正の整数とする)の周期で補正するようにしてもよい。また、ずれた周期からn回後までに設定周期となるように段階的に補正するようにしてもよい。
次に、図2を参照して実施形態に係るアーク溶接システムのシステム構成例について説明する。図2は、アーク溶接システムのシステム構成図である。図2に示すように、実施形態に係るアーク溶接システム1は、アーク溶接装置10と、ロボット20とを備える。
アーク溶接装置10は、後述するロボット20を動作させてポジショナP上の被溶接物(以下、ワークという)Wを溶接する。なお、ポジショナPは、ロボット20による溶接作業が容易となるように、ワークWの位置や姿勢を変化させるアクチュエータ(図示せず)を備える。また、アーク溶接装置10とポジショナPとは、ケーブル101などで接続される。
図2に示すように、アーク溶接装置10は、電源装置11と、制御装置12と、送給部13と、溶接部14とを備える。なお、制御装置12は、ロボット20およびポジショナPを制御する。また、制御装置12には、操作装置30が通信ネットワーク31を介して接続される。
図2に示すように、ロボット20は、ベース部21を介して床面などに固定される。ロボット20は、複数のリンク22を有し、各リンク22が互いに関節部23を介して他のリンク22と接続された、いわゆる多関節ロボットである。
また、関節部23を介して互いに接続されたリンク22のうちベース部21に最も近いリンク22の基端側は、ベース部21に固定される。一方、ベース部21から最も遠いリンク22の先端側には、溶接部14が取り付けられる。また、ロボット20は、各関節部23がサーボモータ(図示せず)などによって駆動され、溶接部14の位置や姿勢を様々に変更する。
図2に示すように、送給部13は、リンク22の所定位置に配置され、溶接用ワイヤ缶131に格納された消耗電極である溶接用ワイヤ131aを、トーチケーブル132を介して溶接部14へと送り出す。すなわち、送給部13は、溶接用ワイヤ131aをワークWの方向へと正送またはワークWとは反対方向へと逆送する。なお、トーチケーブル132は、コンジットケーブル132aを内包する。このため、溶接用ワイヤ131aは、コンジットケーブル132a内を通じて溶接部14へと送給される。
また、送給部13は、ガスボンベ133から供給されたシールドガスを、トーチケーブル132を介して溶接部14へと供給する。なお、トーチケーブル132は、ガス供給ホース132bを内包する。このため、ガスボンベから供給されたシールドガスは、ガス供給ホース132b内を通じて溶接部14へと供給される。
また、送給部13では、溶接用ワイヤ131aの送給を、正送および逆送を交互に切り替えながら送給する、いわゆるプッシュ・プル式で行う。溶接用ワイヤ131aの送給をプッシュ・プル式とすることで、たとえば、トーチケーブル132またはコンジットケーブル132a内で溶接用ワイヤ131aの詰りが自己的に解消されるようになる。これにより、溶接用ワイヤ131aの送給を良好に行うことができる。
さらに、送給部13には、溶接用ワイヤ131aの溶接部14への送給速度を検出する送給速度検出器(図示せず)が設けられる。かかる送給速度の情報は電源装置11へと出力される。そして、制御装置12は、電源装置11を介して送給部13による溶接用ワイヤ131aの送給速度を制御する。
溶接部14は、溶接トーチ141とコンタクトチップ142とを備える。溶接トーチ141は、中空部位にトーチケーブル132が挿入された中空構造を有し、最先端部にコンタクトチップ142が取り付けられる。
コンタクトチップ142は、貫通孔を有する。溶接用ワイヤ131aは、かかる貫通孔を通過してコンタクトチップ142の先端から送り出される。コンタクトチップ142には、ケーブル132cが接続され、ケーブル132cを介して電源装置11からアーク溶接の溶接電力が供給される。
また、溶接トーチ141内には、ガス供給ホース132bからシールドガスが供給される。かかるシールドガスは、溶接トーチ141の先端から吐出され、溶接用ワイヤ131aから発生するアークを雰囲気から遮蔽する。
操作装置30は、たとえば、作業者が、アーク溶接の作業内容をプログラムする場合やアーク溶接の状態を監視する場合などに用いられる。
操作装置30は、通信ネットワーク31を介して制御装置12へと溶接設定情報を送信する。通信ネットワーク31としては、有線LAN(Local Area Network)や無線LANといった一般的なネットワークを用いることができる。なお、溶接設定情報が操作装置30から制御装置12に送信されるのではなく、制御装置12が操作装置30からの情報に基づいて溶接設定情報を生成するようにしてもよい。
制御装置12は、操作装置30から取得した溶接設定情報に基づき、制御ケーブル121a,121bを介してロボット20や電源装置11を制御し、ワークWに対するアーク溶接を行う。溶接設定情報には、ロボット制御情報や電源制御情報が含まれる。
具体的には、制御装置12は、溶接設定情報のうちロボット制御情報に従ってロボット20を制御し、先端側のリンク22に取り付けられた溶接部14の位置や姿勢を変化させる。ロボット制御情報には、溶接線の情報や溶接速度の情報、ポジショナPの動作情報、溶接用ワイヤ131aの送給速度の情報などが含まれる。
ここで、溶接線の情報は、たとえば、溶接部14の軌道を示す情報である。すなわち、溶接線の情報は、溶接部14の位置の変化や溶接部14のワークWに対する姿勢の変化を示す情報であり、移動位置の座標情報や姿勢情報としてロボット20へ入力される。また、溶接速度の情報は、たとえば、溶接部14によるアーク溶接の速度(単位時間あたりの溶接部14の移動量)を示す情報であり、溶接速度指令値としてロボット20へ出力される。
また、制御装置12は、溶接設定情報のうち電源制御情報に従って電源装置11を制御する。具体的には、制御装置12は、送給部13に溶接用ワイヤ131aの送給を行わせつつ、電源制御情報に基づいて電源装置11に溶接部14への溶接電力の供給を行わせて、溶接部14にアーク溶接を実行させる。電源制御情報には、溶接電圧指令値、溶接電流指令値、溶接開始指令、溶接停止指令などが含まれる。
また、電源装置11は、後述する電流・電圧検出部111を有し、溶接用ワイヤ131aとワークWとの間の溶接電流および溶接電圧を検出する。そして、制御装置12は、かかる検出情報に基づいてアーク溶接の実行中におけるロボット20の動作を制御する。
このように、制御装置12は、溶接部14の位置や姿勢を変化させつつ、溶接用ワイヤ131aを送給部13から溶接部14へと送給させるとともに、溶接電力を電源装置11からコンタクトチップ142へと供給させる。
これにより、アーク溶接システム1では、溶接用ワイヤ131aの先端側からアークを発生させるとともに、短絡状態およびアーク状態を繰り返しながら溶接線に沿ってワークWを溶接することができる。
次に、図3を参照して上述したアーク溶接システム1の内部構成について説明する。図3は、アーク溶接システムのブロック図である。なお、図3では、アーク溶接システム1の説明に必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。また、図3を用いた説明では、主として制御装置12の内部構成について説明することとし、図2を用いてすでに述べた各部については、説明を簡略化する。
図3に示すように、制御装置12は、溶接制御部122と、記憶部123と、ロボット制御部124とを備える。溶接制御部122は、取得部122aと、検出部122bと、判定部122cと、補正部122dと、指示部122eとをさらに備える。
取得部122aは、電流・電圧検出部111から溶接用ワイヤ131a(図2参照)とワークW(図2参照)との間の溶接電流値や溶接電圧値の情報を受け取って検出部122bへと送信する。
また、取得部122aは、記憶部123から溶接条件情報を受け取って検出部122bへと送信する。溶接条件情報としては、たとえば、溶接用ワイヤ131a(図2参照)の種類がある。なお、溶接用ワイヤ131aには、ソリッドワイヤやフラックスワイヤなどがある。かかる種類の違いによって短絡周期が相違することにより、理想周期に近似する周期の範囲D(図1参照)は、溶接条件に応じて設定するパラメータとなる。
検出部122bは、溶接電流や溶接電圧の値から溶接用ワイヤ131aとワークWとの間で短絡が発生してから次に短絡が発生するまでを1つの周期として検出する。また、検出部122bは、1つの周期において短絡状態およびアーク状態のいずれであるかを検出する。
なお、検出部122bは、溶接電流の値が閾値電流よりも大きいかまたは溶接電圧の値が閾値電圧以下の場合に短絡状態を検出する。一方で検出部122bは、溶接電流の値が閾値電流以下かまたは溶接電圧の値が閾値電圧よりも大きい場合にアーク状態を検出する。そして、検出部122bは、かかる検出結果を判定部122cへと送信する。
判定部122cは、予め記憶部123に登録された周期範囲情報に基づき、検出部122bから受け取った検出結果から周期に関する判定を行う。すなわち、判定部122cは、検出結果から周期が所定の範囲D(図1参照)内か否かを判定する。また、判定部122cは、後述する補正部122dに補正を終了させるために、周期が所定の範囲Dと同等範囲または所定の範囲Dよりも狭い範囲で判定する。そして、判定部122cは、かかる判定結果を補正部122dへと送信する。
補正部122dは、判定部122cによって周期が所定の範囲D(図1参照)外と判定された場合に、溶接用ワイヤ131a(図1参照)の送給速度を変化させるよう補正指令(送給速度指令)を指示部122eへと送信する。また、補正部122dは、判定部122cによって周期が所定の範囲Dと同等範囲または所定の範囲Dよりも狭い範囲における所定の範囲内と判定された場合に、周期の補正を終了する。このように、補正終了の条件を周期が所定の範囲Dと同等範囲とした場合、補正量が少ないため、補正によって周期を早期に復帰させることができる。また、補正終了の条件を周期が所定の範囲Dよりも狭い範囲とした場合、一度復帰した周期がすぐにずれることを抑えることができる。
指示部122eは、補正部122dからの送給速度指令に基づき、送給部13および溶接部14へと動作指示するとともに、ロボット制御部124にロボット20の動作を指示する。
ロボット制御部124は、実行部124aを有し、ロボット20に所定の動作を実行させる。具体的には、ロボット制御部124は、指示部122eからの指示に基づいてロボット20に所望の動作を行わせる。
記憶部123は、ハードディスクドライブや不揮発性メモリといった記憶デバイスであり、上述した溶接条件情報および周期範囲情報を記憶する。
なお、図3で制御装置12の内部に示した各構成要素は、制御装置12単体に配置されなくてもよい。たとえば、溶接制御部122を含む制御装置とロボット制御部124を含む制御装置とが別体に設けられたり、制御対象となる各種装置のそれぞれに対応付けられた複数の筐体で構成されたりしてもよい。
次に、図4Aおよび図4Bを参照して補正部122dによる周期補正の具体例について説明する。図4Aおよび図4Bは、周期補正例のタイミングチャートである。なお、図4Aおよび図4Bでは、電源装置11の電流・電圧検出部111(図3参照)によって検出された溶接電流Iを上部、溶接電圧Vを中央、溶接用ワイヤ131a(図2参照)の送給速度指令を下部に示している。
また、図4Aおよび図4Bでは、タイミングT1,T3,T5において短絡が発生する。また、図4Aおよび図4Bでは、タイミングT2,T4において短絡状態が終了すると同時にアーク状態が開始する。さらに、図4Aおよび図4Bでは、タイミングT1〜タイミングT3を周期Aとし、タイミングT3〜タイミングT5を周期Bとする。
図4Aは、送給速度指令をサイン波で出力する例である。図4Aに示すように、補正部122d(図3参照)では、周期Aにおいて所定の範囲D(図1参照)を上回るずれが生じた場合、たとえば、次の周期Bにおいて溶接用ワイヤ131aの送給波形の振幅(最大速度)および傾き(加減速度)を変化させる。
具体的には、周期Bが開始するタイミングT3になると、短絡状態の間で溶接用ワイヤ131a(図2参照)の逆送速度を加速し、タイミングT4になると、アーク状態の間で溶接用ワイヤ131aの正送速度を加速する。すなわち、周期Bにおいて溶接用ワイヤ131aの出し引きを加速する。なお、図4Aでは、正送速度の加速時間の方が逆送速度の加速時間よりも長く設定される。
周期Bにおいて理想周期に近似する所定の範囲D内へと補正することで、周期の均一化を図ることができる。また、周期を補正する場合、図4Aでは、ずれた周期Aの直後の周期Bにおいて補正したが、周期Aからn回後(なお、nは正の整数)の周期で補正するようにしてもよい。
また、ずれた周期Aからn回後の周期で所定の範囲D内となるように溶接用ワイヤ131aの送給速度の補正において、1回で補正する速度変化量に上限を設け、送給速度の補正量を段階的に(徐々に)変化させるようにしてもよい。このように、溶接用ワイヤ131aの送給速度を徐々に変化させることで、ビードの乱れを抑えて溶接外観を良好に保つことができる。
また、周期の補正では、溶接条件に応じて予め設定されたパラメータに基づいて溶接用ワイヤ131aの送給速度を変化させる。上述したように、溶接条件とは、たとえば、溶接用ワイヤ131aの種類である。このように、溶接条件に応じてパラメータが設定されることで、周期の補正を容易に行うことができる。
さらに、周期の補正では、所定の範囲D外と判定されることを補正開始期とし、その後に所定の範囲D内と判定されることを補正終了期とする。また、補正終了期は、所定の範囲Dよりも狭い範囲における所定の範囲が設定される。たとえば、理想周期が60Hzであり、補正を開始する所定の範囲Dを±10Hzと設定した場合、周期が50Hz以下、または、70Hz以上となった場合に補正を開始する。また、補正の終了は、補正を開始する所定の範囲Dの範囲内となったとき、または、所定の範囲Dよりも狭い範囲の所定の範囲内、たとえば、±5Hzを設定している場合、55Hz以上65Hz以下となったとき、とする。
図4Bは、送給速度指令を台形波で出力する例である。図4Bの例においても、図4Aの例と同様に周期の補正を行う。図4Bの例では、振幅の最大値、すなわち、溶接用ワイヤ131a(図2参照)の最大速度を長時間とることができるため、周期の補正がさらに容易となる。なお、送給速度指令の波形は、上述したサイン波および台形波の他、三角波や矩形波などへの置換も可能である。
次に、図5を参照してアーク溶接システム1が実行する周期補正処理手順について説明する。図5は、周期補正処理手順のフローチャートである。図5に示すように、アーク溶接における短絡周期にずれが生じて周期が所定の範囲D(図1参照)外と判定されると(ステップS101,No)、次の周期において溶接用ワイヤ131a(図2参照)の送給速度を変更する(ステップS102)。なお、周期が所定の範囲D内と判定された場合(ステップS101,Yes)は、補正は開始されない。
次の周期が所定の範囲D内と判定されると(ステップS103,Yes)、周期の補正が終了する。なお、補正の終了に関しては、次の周期が所定の範囲よりも狭い範囲にあるか否かを判定するようにしてもよい。次の周期においても所定の範囲D外と判定されると(ステップS103,No)、さらに次の周期において溶接用ワイヤ131aの送給速度を変更する。以降、同様の処理を周期が所定の範囲D内となるまで繰り返す。
上述した実施形態に係るアーク溶接システム1によれば、短絡周期の均一化を図ることができる。これにより、アークを安定させることができ、溶接外観を良好に保つことができる。
なお、上述したアーク溶接システム1では、溶接用ワイヤ131aの送給状態を、溶接用ワイヤ131aの送給速度としたが、これに限定されず、たとえば、送給時間や送給距離としてもよい。また、溶接用ワイヤ131aの送給方向を変化させるようにしてもよい。
また、上述したアーク溶接システム1では、溶接用ワイヤ131aの送給速度指令を台形波で出力しているが、これに限定されず、送給速度指令をサイン波で出力してもよい。その他、三角波や矩形波で出力してもよい。
また、上述したアーク溶接システム1では、周期ずれが検出された場合、ずれた周期の直後の周期で補正するが、これに限定されず、ずれた周期からn回後(なお、nは正の整数)の周期で補正するようにしてもよい。また、ずれた周期からn回後までに設定周期となるように段階的に補正するようにしてもよい。
ここで、実施形態に係るアーク溶接方法について説明する。かかるアーク溶接方法は、送給工程と、検出工程と、判定工程と、補正工程とを含む。まず、送給工程では、消耗電極である溶接用ワイヤを、正送および逆送の少なくとも一方向へと送給する。次に、検出工程では、溶接用ワイヤと被溶接物との間で短絡が発生してから次に短絡が発生するまでを1つの周期として検出する。
次に、判定工程では、検出工程で検出された周期が所定の範囲D(図1参照)内か否かを判定する。そして、補正工程では、周期が所定の範囲D外と判定されると、溶接用ワイヤの送給状態(たとえば、送給速度)を変化させて周期が所定の範囲D内となるように補正する。
上述した実施形態に係るアーク溶接方法によれば、短絡周期の均一化を図ることができる。これにより、アークを安定させることができ、溶接外観を良好に保つことができる。
なお、上述したアーク溶接方法では、溶接用ワイヤの送給状態を、溶接用ワイヤの送給速度としたが、たとえば、送給時間や送給距離としてもよい。また、溶接用ワイヤの送給方向を変化させるようにしてもよい。また、周期ずれが検出された場合、ずれた周期からn回後(なお、nは正の整数)の周期で補正するようにしてもよい。さらに、ずれた周期からn回後までに設定周期となるように段階的に補正するようにしてもよい。
また、実施形態に係る被溶接物の製造方法について説明する。かかる被溶接物の製造方法は、上述したアーク溶接方法と同様、送給工程と、検出工程と、判定工程と、補正工程とを含む。なお、被溶接物(ワーク)の製造方法については、上述したアーク溶接方法と同様の手順で行うため、説明は省略する。
実施形態に係る被溶接物の製造方法によれば、短絡周期の均一化を図ることができる。これにより、アークを安定させることができ、溶接外観を良好に保つことができる。
なお、上述した被溶接物の製造方法においても、アーク溶接方法同様、溶接用ワイヤの送給状態を、たとえば、送給時間や送給距離としてもよいし、溶接用ワイヤの送給方向を変化させるようにしてもよい。また、周期ずれが検出された場合、ずれた周期からn回後(なお、nは正の整数)の周期で補正するようにしてもよい。さらに、ずれた周期からn回後までに設定周期となるように段階的に補正するようにしてもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
1 アーク溶接システム
10 アーク溶接装置
11 電源装置
12 制御装置
13 送給部
131a 溶接用ワイヤ
14 溶接部
20 ロボット
122 溶接制御部
122a 取得部
122b 検出部
122c 判定部
122d 補正部
122e 指示部
D (周期の)範囲
W 被溶接物

Claims (8)

  1. 溶接用ワイヤを、被溶接物の方向へ向かう正方向および前記正方向とは逆方向の少なくとも一方向へと送給する送給部と、
    前記溶接用ワイヤと前記被溶接物との間で短絡が発生してから次に短絡が発生するまでを一周期として検出する検出部と、
    前記検出部によって検出された周期が所定の範囲内か否かを判定する判定部と、
    前記判定部によって前記周期が前記所定の範囲外と判定されると、前記溶接用ワイヤの送給状態を変化させることで前記周期を補正する補正部と
    を備え
    前記判定部は、
    前記補正部による周期の補正終了の条件を前記所定の範囲と同等範囲または前記所定の範囲よりも狭い範囲とすること
    を特徴とするアーク溶接装置。
  2. 前記補正部は、
    前記送給状態を複数の前記周期にわたって段階的に変化させること
    を特徴とする請求項1に記載のアーク溶接装置。
  3. 前記補正部は、
    溶接条件に応じて予め設定されたパラメータに基づいて前記送給状態を変化させること
    を特徴とする請求項1または2に記載のアーク溶接装置。
  4. 前記溶接条件が前記溶接用ワイヤの種類であること
    を特徴とする請求項に記載のアーク溶接装置。
  5. 前記溶接用ワイヤの送給状態が該溶接用ワイヤの送給速度であること
    を特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載のアーク溶接装置。
  6. 溶接用ワイヤを、被溶接物の方向へ向かう正方向および前記正方向とは逆方向の少なくとも一方向へと送給する送給部と、前記溶接用ワイヤと前記被溶接物との間で短絡が発生してから次に短絡が発生するまでを一周期として検出する検出部と、前記検出部によって検出された周期が所定の範囲内か否かを判定する判定部と、前記判定部によって前記周期が前記所定の範囲外と判定されると、前記溶接用ワイヤの送給状態を変化させることで前記周期を補正する補正部とを備え、前記判定部は、前記補正部による周期の補正終了の条件を前記所定の範囲と同等範囲または前記所定の範囲よりも狭い範囲とするアーク溶接装置と、
    前記アーク溶接装置が先端部に取り付けられる多関節のロボットと
    を備えることを特徴とするアーク溶接システム。
  7. 溶接用ワイヤを、被溶接物の方向へ向かう正方向および前記正方向とは逆方向の少なくとも一方向へと送給する送給工程と、
    前記溶接用ワイヤと前記被溶接物との間で短絡が発生してから次に短絡が発生するまでを一周期として検出する検出工程と、
    前記検出工程によって検出された周期が所定の範囲内か否かを判定する判定工程と、
    前記判定工程によって前記周期が前記所定の範囲外と判定されると、前記溶接用ワイヤの送給状態を変化させることで前記周期を補正する補正工程と
    を含み、
    前記判定工程は、
    前記補正工程による周期の補正終了の条件を前記所定の範囲と同等範囲または前記所定の範囲よりも狭い範囲とすること
    を特徴とするアーク溶接方法。
  8. 溶接用ワイヤを、被溶接物の方向へ向かう正方向および前記正方向とは逆方向の少なくとも一方向へと送給する送給工程と、
    前記溶接用ワイヤと前記被溶接物との間で短絡が発生してから次に短絡が発生するまでを一周期として検出する検出工程と、
    前記検出工程によって検出された周期が所定の範囲内か否かを判定する判定工程と、
    前記判定工程によって前記周期が前記所定の範囲外と判定されると、前記溶接用ワイヤの送給状態を変化させることで前記周期を補正する補正工程と
    を含み、
    前記判定工程は、
    前記補正工程による周期の補正終了の条件を前記所定の範囲と同等範囲または前記所定の範囲よりも狭い範囲とすること
    を特徴とする被溶接物の製造方法。
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