以下は、本開示を通して使用される例示的な用語の定義を含む。全ての用語の単数形及び複数形の両方は、各々の意味の範囲に入る。
“論理回路(Logic)”は、本明細書において使用される場合は“回路(circuit)”と同義であり、(複数の)機能又は(複数の)動作を実行するためのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア及び/又は各々の組み合わせを含むが、これらに限定されない。例えば、所望の用途又は必要性に基づき、論理回路は、ソフトウェアに制御されるマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)のような個別論理回路、又はその他のプログラムドロジックデバイス及び/又は制御装置を含んでもよい。論理回路はまた、完全にソフトウェアとして具体化されてもよい。
“ソフトウェア”は、本明細書において使用される場合、コンピュータ、論理回路又はそのたの電子デバイスに機能、動作を実行させる及び/又は所望の方法で振る舞わせる、一つ又はそれ以上のコンピュータ可読及び/又は実行可能な命令を含むが、これらに限定されない。命令は、別個のアプリケーション若しくはダイナミックに結合されたライブラリからのコードを含むルーチン(routines)、アルゴリズム、モジュール又はプログラムのような、様々な形式で具体化されてもよい。ソフトウェアはまた、スタンドアロンプログラム、関数呼び出し、サーブレット、アプレット、メモリに記憶された命令、オペレーティングシステムの一部又はその他の種類の実行可能な命令のような、様々な形式で実装されてもよい。ソフトウェアの形式は、例えば、所望の用途の要求、それが作動する環境、及び/又は設計者/プログラマー等の希望に依存することが、当業者によって明確に理解されるであろう。
これから、図面を参照する。図面は、本考案の例示的な実施形態を示すのみの目的のためであり、これを限定する目的のためではない。図1は、例示的な溶接システム100のブロック図を示す。溶接システム100は、高速スイッチング電源のような電源110、溶接ガン120、ワイヤ給送装置130及び制御装置140を含んでもよい。溶接システム100は、例えばガス金属アーク溶接(GMAW)、フラックス入りガスシールド(FCAW−G)、フラックス入りセルフシールド(FCAW−S)等を含む、様々な種類の電気アーク溶接プロセスをサポートしてもよい。例示的な電源110は、出力線112,114を通して電力を提供する。その出力線112,114は、電極E及びワークピースWに接続される。溶接中に、電極EとワークピースWとの間にアークが生じる(図2も参照)。例示的なワイヤ給送装置130は、溶接ガン120を通してワークピースWに向かって溶接ワイヤ132を給送する。溶接中、ワイヤ132はアークにおける電極Eとして働く。アークでは、ワイヤ132は溶解されて溶融材料となり、ワークピースWの上に置かれる。一つの実施形態において、ワイヤ給送装置130はサーボモータ134を含む。サーボモータ134は、制御装置140によって指令されたワイヤ給送速度で、例えばワイヤスプールのようなワイヤ供給源からワイヤ132を引っ張る。
溶接システム100はまた、電流フィードバック手段150及び電圧フィードバック手段160を含んでもよい。これらのフィードバック手段150,160は、それぞれ、出力線112,114で制御装置140に関連付けられた電流及び電圧フィードバックを提供するための、様々なセンサ、回路等を含んでもよい。例示的な制御装置140は、所望の溶接プロセス及びフィードバックに基づいて、電源110及びワイヤ給送装置130を制御する。制御装置140は、様々な溶接パラメータを特定するために、様々な溶接設定及び入力を含んでもよい。制御装置140はまた、様々な溶接ルーチン、プロセス、パラメータ等を決定及び実行するための、例えば、探索表(look-up table)を含む、論理回路又はメモリを含んでもよい。
制御装置140は、様々な溶接プロセス、用途、状況、入力設定、パラメータ等のために、溶接システム100に関連する様々な波形を作るための波形発生器142を含んでもよい。例えば、溶接システム100がGMAWプロセス用に構成される場合に、波形発生器142は、例えば短絡回路金属移行、グロビュール移行、軸スプレー移行、パルススプレー移行等のような様々なGMAW型溶接プロセス又は実施形態に関連する、様々な波形の一つを実施してもよい。これらの様々な実施形態のいずれにおいても、継時的な電圧及び電流の組み合わせ及び変動は、高周波パルスを規定するために、規制されてもよい。それは、溶接中に、溶融材料の電極EからワークピースWへの移行を制御するために使用され得る。上述の構成要素及び装置のいずれも、同じ能力を尚も含んだままで、他の装置と組み合わせられてもよく又は他の装置に分割されてもよいことが、明確に理解されるべきである。例えば、電源110及び制御装置140は組み合わされて、例えば、溶接機のthe Lincoln Electric Power Wave(登録商標)シリーズのようなユニットにされてもよい。
様々な実施形態において、溶接システム100は、自動的なシステム、半自動的なシステム又は手動のシステムであってもよい。これらの実施形態の各々は、様々な他の関連する装置、設備及び/又は能力を含んでもよい。例えば、一つの半自動的な実施形態において、溶接ガン120は、溶接を開始及び終了するときに信号を送るために制御装置145と動作的に連絡する(in operative communication)トリガを含んでもよい。一つの自動的な実施形態において、溶接ガン120は、制御装置140と動作的に連絡するロボットに装着され、開始及び停止溶接信号は、自動化された溶接シークエンスに従う。これらの実施形態の全てにおいて、制御装置140は、溶接レート、電流及び/又は溶接開始信号及び溶接停止信号に従ってワイヤ給送装置130を制御してもよい。すなわち、制御装置140は、ワイヤ給送装置130に、溶接と協調した方法で、ガン120を通してワークピースWに向かって溶接ワイヤ132を給送することをいつ開始及び停止するかを含め、ワイヤ給送レート(例えば、ワイヤ給送速度(WFS)信号)を通信する。典型的に、WFS及び電流は、ワイヤ給送レートが電流と共に増大するように関係付けられる。以下の表(表1)は、例示的な溶接電流に対するワイヤ給送速度を示す。
溶接中の例示的な電極Eを示す図2を更に参照して、電極Eが例示的な溶接ガン220からワークピースWに向かって前進するにつれて、アークAが、電極EとワークピースWとの間の隙間を横切って確立される。ガン220のコンタクトチップの端部からアークAに延びる電極Eの長さは、電極突出し長さ(electrode extension)である。電極突出し長さの代わりの他の用語は、電気的突出し(ESO)である。GMAWにおいては、これが、溶接工が見ることができる電極Eの量である。電極突出し長さは、電極Eの長さのみを含み、突出し長さに加えてアークAの長さは含まない。用語電極突出し長さの使用は、自動的な溶接、例えばロボット又は機械化された溶接操作に関して使用されるよりも、半自動的な溶接に関してより一般的に使用される。コンタクトチップからワークへの距離(CTWD)は、自動的な溶接において典型的に使用される用語である。CTWDは、コンタクトチップの端部からワークピースWまで測定される。
例えば、半自動的な溶接のような、短絡回路金属移行(GMAW−S)の実施形態において、電極突出し長さは、約3/8”−1/2”(10−12mm)の間であってもよい。軸スプレー又はパルススプレー金属移行(GMAW−P)のいずれかの実施形態に関しては、電極突出し長さは、約3/4”−1”(19−25mm)の間であってもよい。適切な電極突出し長さを維持することは、溶接の長さに沿った溶け込み(penetration)プロファイルの均質さのために重要であり、また、それは、如何なるGMAWプロセスに関しても重要な変数であると考えられる。
溶接中に、アークAの存在下で電極Eの先端部が溶解するにつれて、溶融材料は、溶接パドル/溶融池PにおいてワークピースWの上に移行され又は置かれる。その溶接パドル/溶融池Pは、電極E及びワークピースWの材料から構成される溶融材料の領域である。選択される溶接プロセスに依存して、電極Eからの溶融材料は溶融池Pと不断の接触状態にあってもよく、溶融液滴が溶融池Pの中に供給されて/落とされてもよく、且つ/或いは溶融液滴が溶融池Pの中にスプレーされてもよい。これらの実施形態のいずれにおいても、電極Eの固体の部分は、溶融池Pに非常に接近してもよく、電極Eの溶融部分及び/又はアーク長さの寸法でのみ隔てられてもよい。
図3は、例示的な溶接終了プロセスを含む、例示的な溶接プロセスの様々なステージ(I−VII)における例示的な溶接ガン320、電極E、アークA、ワークピースW及び溶融池Pを示す。本実施形態において、例示の目的のため、CTWDは約20mm、ESOは約10mmのGMAW−P溶接プロセスが示される。ステージ(I)において、溶接プロセスはアクティブ溶接モードで示され、液滴(droplet)Dは電極EからワークピースW上の溶融池Pにまさに移行しようとしている。ステージ(I)の間、ワイヤはあるWFSでガン320を通して給送され、電極EはアークAにおいて連続的に溶解され、液滴Dは溶融池PでワークピースW上に置かれる。
また、ステージ(I)中に、電流は、ある溶接電流レベルである。例えば、一つの実施形態において、溶接電流は、軸スプレー移行溶接プロセス中、大電流(例えば約300−350アンペア)であってもよい。他の実施形態において、溶接電流は、パルススプレー移行溶接プロセス中、ピーク電流(例えば約450アンペア)と低いバックグラウンド電流(例えば約100アンペア)との間を交互に行ったり来たりしてもよい。本実施形態において、ピーク電流の間、期間の高点、溶融材料の単一の液滴Dが分離され、アークAを横切ってワークピースWに移行される。低いバックグラウンド電流への下降は、アーク安定性を提供し、溶接への熱入力全体に大きく貢献する。周波数は、周期が秒毎に起こる又は秒毎にサイクルする回数の数である。周期の周波数は、WFSに比例して増大する。
ステージ(II)において、溶接終了プロセスはシャットダウンコマンドに基づいて始められてもよい。シャットダウンコマンドは、例えば、ロボット溶接中の自動的な溶接シークエンスからであってもよく、又は半自動的な溶接中の操作者による溶接ガンのトリガの解放からであってもよい。溶接終了プロセス中に、WFS信号は、ワイヤ給送装置に対してガン320を通してワイヤを給送することを停止するように命令し、電流は、低いレベルに低下する。そのレベルはバックグラウンド電流よりも低くてもよい(例えば約20アンペア)。ステージ(II)において制御装置はワイヤを給送することを停止するようにワイヤ給送装置に信号を送っているが、処理遅延、(例えば700インチ毎分(約17.78m毎分)以上でワイヤを給送することによる)ワイヤ給送装置の勢い等が、ワイヤが瞬時に停止することを妨げ得る。したがって、ワイヤ給送装置が停止信号を受信した後のある時間の間、ワイヤは、ガン320を通してワークピースWに向かって更に送り込まれている。加えて、ステージ(II)において、電流は、溶融材料を作り出して電極Eの先端部からワークピースWに移行させるのに十分でない。
これらの状況下で、電極EワイヤはワークピースWに向かって更に動いているため、電極Eの先端部がワークピースWと“ぶつかる(stub out)”又は接触することがよく起こる。これは、電極Eの先端部への、例えば屈曲を含む損傷、及び/又は、電極Eの先端部上での溶融材料の積層を、結果として生じ得る。例えば、溶融材料は、電極EがワークピースWの溶融池Pと接触するときに電極Eの先端部に付着し得る。加えて、溶融材料は、例えば溶接プロセスが終了される前に形成し始めたが、溶融材料がワークピースWに移行される前の液滴Dのような、溶融材料に由来し得る。ひとたび冷却されると、電極Eの先端部上で硬化した材料の形状及び/又は組成は、例えば溶融材料に起因する先端部の鈍い及び/又は不規則な形状、溶融材料に起因する先端部の表面上のシリコン残渣、折れ曲がったワイヤの先端部等のような、次の溶接のためのアーク確立に問題を引き起こし得る。
これらの状況を防止するために、溶接終了プロセスは、溶接終了プロセス中に、ワイヤ給送装置がワークピースWに向かって溶接ワイヤを前進させることを停止するまで、繰り返し溶融材料を作り出し、電極EからワークピースWに移行させるための、ワイヤ材料移行ルーチンを実行してもよい。一つの実施形態において、ワイヤ材料移行ルーチンは、繰り返し溶融材料の液滴を作り出し、電極EからワークピースWに移行させる、液滴移行ルーチンであってもよい。これから、図3のステージ(III)を参照すると、溶融池PでワークピースWと接触している電極Eが示されている。この接触は、例えば電圧を感知することによって、制御装置の液滴移行ルーチンによって感知され得る(例えば、図1に示される出力線112,114に交差する電圧フィードバック160を参照)。一つの実施形態において、電極EがワークピースWと接触したときに、それは、電極EとワークピースWとの間の電気的な“短絡”として感知される。
短絡に応じて、図3のステージ(IV)に示されるように、ここでは液滴移行ルーチンとして示されるワイヤ材料移行ルーチンは、電極E及びワークピースWを通る電流を増大させ、溶融液滴Dを形成し、その後溶融液滴Dを電極EからワークピースWに移行させる。図3のステージ(V)は、ステージ(IV)で生じた液滴Dが溶融池Pに移行させられた後の、電極E、ワークピースW及び溶融池Pを示す。溶接終了プロセスの液滴移行ルーチンは、ワイヤがガン320を通してワークピースWに向かって更に送り込まれている場合は、電極EとワークピースWとの間の接触の感知を続ける。ステージ(III)から(V)は、ワイヤがガン320を通して送り込まれることを停止するまで、(例えば、最大で回数の数Nまで)繰り返される。様々な実施形態において、ワイヤ材料移行ルーチンは、WFS、ワイヤ給送装置、CTWD等に依存して、およそ100ms又はそれ以上の間、実行してもよい。
図3のステージ(VI)において、ワイヤがガン320を通して送り込まれることを停止した後の電極E、ワークピースW及びプールPが示される。短絡を感知することによって電極EとワークピースWとの間の接触が決定される本実施形態において、短絡は感知されない。このステージにおいて、溶接終了プロセスは、電極から延びるワイヤの全て若しくは一部分又はESO距離を後退させ、ガン320の中に戻すことに進んでもよい。後退距離は、制御装置に関連する探索表の使用を含め、ESO、CTWD等に基づいて決定されてもよい。例えば、CTWDが20mmである一つの実施形態において、後退距離は約19−21mmであってもよい。他の実施形態において、後退距離は、CTWDの約半分であってもよく、約10mmであってもよい。概して、後退距離は、ワイヤを十分に保護する如何なる距離であってもよく、ESO及びCTWDを除く他の要素に基づいてもよい。例えば、溶接シークエンスが完了し、コンタクトチップがホーム位置又は保管位置に動かされる場合等は、溶接の間の潜在的な障害物に対するコンタクトチップの近さに基づいてもよい。いくつかの実施形態において、後退距離は溶接毎に変動し得る。これらの実施形態において、選択された後退距離だけワイヤを後退させることは、ガンが動かされる間、電極Eの先端部をコンタクトチップ内で保護する。
ワイヤ材料移行ルーチンは、例えば溶融液滴の生成及び移行を含む、電極Eのワイヤ材料を融解して電極EからワークピースWに移行させるための如何なる適用可能なプロセスでも利用し得る。例えば、ワイヤ材料移行ルーチンは、短絡回路金属移行ルーチン、短絡アーク応答ルーチン、短絡解消ルーチン、表面張力移行(STT)ルーチン等の使用を含んでもよい。様々な実施形態において、(例えば短絡として測定された)接触に応じて、これらのルーチンは、電極Eの材料を溶解させるために迅速に電流を(例えば、約50−100アンペア毎ミリ秒に)強め、溶融材料を電極EからワークピースWに移行させるために溶融材料に作用するピンチ力を増大させてもよい。いくつかの実施形態において、電流は、短絡が解消されたこと(すなわち、溶融材料がワークピースWに移行し、もはや電極EとワークピースWとの間の接触を生じさせる如何なる材料も存在しないこと)を示す電圧スパイクが感知されるまで高められる。
例えば、図4は、溶接終了プロセス中に、ワイヤ材料移行ルーチン(例えば、この場合は液滴移行ルーチン)としてSTTルーチンが利用される一つの実施形態を示す。WFS410は、同じタイムラインに沿って電流420の上に示される。時点t1の前に、溶接プロセスは、「A」で示されるように溶融液滴を溶解し、電極の先端部からワークピースに移行させるのに十分な、ピーク電流及びバックグラウンド電流を含む、特定のWFS及び電流で実行する。時点t1において、溶接終了プロセスが始められる。時点t1における、ワイヤ給送装置に対するワイヤ給送を停止させる信号に従い、WFSは低下を開始し、ワイヤ給送が実際に停止する時点t2まで低下する。図4は、時点t1及び時点t2にそれぞれ対応する、点412から点414までの例示的なWFS低下を示す。簡明さのために、WFS410は、時点t1と時点t2との間で線形な型式で低下するように示されている。しかしながら、WFSは、様々な非線形な型式で低下してもよい。溶接終了プロセス及び液滴移行ルーチンは、速度上昇を含む、継時的なワイヤ速度の変動を受け入れることができる。
また、時点t1において、溶接終了プロセスに従い、電流は、バックグラウンド電流よりも低い溶接終了電流まで低減される。上述されたように、溶接終了電流は、溶融材料を溶解させて電極Eの先端部からワークピースWに移行させるのに十分でない。上述されたように、ワイヤ給送装置はWFS410を瞬時に停止することができないため、「B」で示されるように、電極EはワークピースWに接触し得る。応答して、STT液滴移行ルーチンは、溶接ワイヤの溶融液滴を電極EからワークピースWに移行することを実行する。ステージC,D及びEは、STT液滴移行ルーチン中の、電流の上昇及び低下を含む、材料の溶融液滴を生成し電極EからワークピースWに移行させることに関連する電流波形430を示す。
具体的に、電流は、液滴を生成するために(「C」参照)迅速に、また、電流の上昇に関連するピンチ力(電磁力)が電極の溶融カラムが狭窄を形成されて下方に落ち始める点まで(「D」参照)強められてもよい。この点において電源は、継時的な電圧の変化を監視し始めてもよい。なぜなら、それは、溶融金属が尚もワークピースW上の溶融池と接触している間の、溶融液滴の狭窄形成に関係するからである。電圧を感知する手段を用いて、電源は、観察された電圧を参照し、新たな電圧値を先の電圧値に対して連続的に比較してもよい。溶融金属が電極Eの端部からまさに分離しようとしている点において、電源は、電流をバックグラウンド電流よりも低くまで低下させてもよい。波形430内のこの点において、表面張力が崩壊し、溶融液滴はワークピースWに移行する(「E」参照)。図4は、電極Eのワイヤ材料の液滴を生成してワークピースWに移行させるために急上昇(スパイク)する、ある具体的な電流プロファイルを有する波形430を示すが、時間、電流及び/又は電圧等の他の変動を有する波形形状を含む、如何なる波形形状でも、電極Eのワイヤ材料を溶解させて電極EからワークピースWに移行させるために使用され得る。
図示されるように、波形430を含むSTT液滴移行ルーチンは、WFSがゼロに等しくなるまで、如何なる回数の数Nだけ繰り返し実行されてもよい。WFSが低下するにつれて、STT液滴移行ルーチンの実行の間の時間は、増大してもよい。図4のステージB−Eを繰り返すことは、ワイヤ給送が停止するまで図3のステージ(III)−(V)をループすることに対応する。
このようにして、溶接及び溶接終了プロセスの完了の後に、電極Eの先端部には先に溶解された硬化材料がなく、次の溶接のためのより容易なアーク始動を可能にする。上述されたように、ワイヤをガン先端部の中に後退させることによって更なる保護が提供されてもよい。
図5は、プロセスを実行するための例示的な手順/論理回路を示すプロセスフローチャートを含む。図示されるように、複数のブロックは、そこで実行される機能、動作及び/又は事象を示す。電子的アプリケーション及びソフトウェアアプリケーションは、例示されるブロックが図示されたものとは異なる他のシークエンスにおいて実行され得るように、動的且つ柔軟なプロセスを伴うことが明確に理解されるであろう。ソフトウェアとして具体化される要素は、機械語、手続き型、オブジェクト指向型又は人工知能技術のような様々なプログラミングのアプローチを使用して実装され得ることもまた、当業者によって明確に理解されるであろう。さらに、要求され且つ適切である場合には、論理回路/ソフトウェアのいくつか又は全ては、デバイスのオペレーションシステムの一部として具体化されてもよく且つ/或いはデバイスの制御装置内で具体化されてもよいことが、明確に理解されるであろう。
流れ図において、要素は、“処理ブロック”を意味し、論理回路、コンピュータソフトウェアの命令及び/又は一群の命令を示す。ひし形の要素は、“決定ブロック”を意味し、処理ブロックによって示されるコンピュータソフトウェア命令の実行に影響を与える論理回路、コンピュータソフトウェアの命令及び/又は一群の命令を示す。代替的に、処理ブロック及び決定ブロックは、デジタル信号処理回路又は特定用途向け集積回路(ASIC)のような機能的に同等な回路によって実行されるステップを示す。流れ図は、如何なる具体的なプログラミング言語の統語論(シンタックス)も表現しない。むしろ、流れ図は、回路を組み立てるため又はシステムの処理を実行するための論理回路/コンピュータソフトウェアを生成するために当業者が使用し得る機能的な情報を例示する。ループ及び変数の初期化並びにテンポラリ変数の使用のような多くのルーチンプログラム要素が図示されていないことが、留意されるべきである。
図5は、例えば、上述のプロセスによる、溶接終了プロセス500を実行するための例示的な手順/論理回路を例示するプロセス流れ図を示す。本実施形態においては、ブロック510において、例えば、予めプログラムされた自動的な溶接の終了、溶接操作者によるトリガの解放等に起因して、溶接終了プロセスが始められる。このステップはまた、電極ワイヤを給送しているワイヤ給送装置を停止させる制御装置の命令及び溶接機の電流を低下させる(すなわち、溶接を停止する)命令に関連付けられてもよい。ブロック520において、プロセスは、電極ワイヤとワークピースとの間に(例えば電極ワイヤの継続した給送に起因する)接触があるかどうかを感知する。このステップは、溶接における溶接機の出力線の間の電圧を監視する電圧センサ/感知回路の使用を伴ってもよい。ブロック520においてプロセスが電極ワイヤとワークピースとの間の接触を感知した場合は、次いでプロセスはブロック530に進む。ブロック530において、プロセスは、(例えば、液滴移行ルーチンを含む上述されたルーチンに従って)ワイヤの先端部を融解してワークピースに移行させるためのワイヤ材料移行ルーチンを実行する。ブロック530を実行した後に、プロセスは、ブロック520に戻って継続し、再び、電極ワイヤとワークピースとの間に接触があるかどうかを感知する。ブロック520とブロック530との間のループは、電極ワイヤがワークピースと接触し続ける限り継続する。ブロック520においてプロセスが電極ワイヤとワークピースとの間の接触を感知しない場合は、次いでプロセスはブロック540に進む。ブロック520は、電極ワイヤとワークピースとの間に接触がある場合にいつ感知を停止するかのタイマー又はその他の計器の使用を含んでもよい。ブロック540において、プロセスは、次の溶接への移動の準備をするためにワイヤを後退させてもよい。
図6は、一つの例示的な溶接システム600を示し、一つの例示的な自動溶接セル制御装置610のブロック図及び一つの例示的なロボット溶接機620を含む。自動溶接セル制御装置610は、様々な周辺機器及び関連する制御装置を含む溶接システム600のために必要な他の装置と共に、電源612、ロボット制御装置614及び溶接制御装置616を含んでもよい。ロボット溶接機は、ロボット622(例えば、ファナック(登録商標)ロボティクスのARC Mate(登録商標)ロボット)、溶接ガン624及びサーボ制御されるワイヤ給送装置626(例えば、ファナック(登録商標)ロボティクスのServoTorch(商標)を含む。溶接制御装置616、電源612及びワイヤ給送装置626は、関連する電流及び電圧のフィードバック(図示なし)を含めて、図1において上述されたように構成されてもよい。
サーボ制御されるワイヤ給送装置626は、ロボット622の頭部に一体化されており、ワイヤ供給装置628からワイヤを直接的に引っ張り、ワイヤを、溶接ガン624を通して電極Eに給送する。ワイヤ供給装置628は、例えば、溶接ワイヤのスプールであってもよい。溶接セルは、3つの溶接ステーション630,632,634を、それぞれのワークピースW1,W2,W3と共に含む。
溶接制御装置616は、ロボット622が溶接ステーション630,632,634における溶接の終点に到達したときに、ワイヤ材料移行ルーチンを含めて溶接終了プロセスを始めてもよい。溶接終了プロセス及びワイヤ材料移行ルーチンは、図3−5に示されたものを含む、上述されたプロセス及びルーチンを含んでもよい。
例えば、一つの実施形態において、溶接ステーション630における溶接の終点において、セル制御装置610は、ワイヤ給送を停止することを含めて、溶接を停止させるためにロボット制御装置614、溶接制御装置616及びワイヤ給送装置626と通信してもよい。溶接制御装置616は溶接終了プロセスを始め、ワイヤ給送装置626がワイヤの給送を停止するまで、電極EとワークピースW1との間の接触を感知してもよい。電極EとワークピースW1との間の接触の感知に応じて、制御装置は、ワイヤ給送装置626が停止するまで、材料を溶解して電極EからワークピースW1に移行させるためのワイヤ材料移行ルーチンを繰り返し実行してもよい。ひとたびワイヤ給送装置626がワイヤの前進を停止すると、例えば溶接ステーション632における更なる溶接のための適切な位置にロボット622が溶接ガン624を動かす際にワイヤが損傷されないように、溶接制御装置616は、ワイヤ給送装置626に、ワイヤを溶接ガン624の中に後退させるように命令してもよい。このプロセスは、全ての溶接の終点において繰り返されてもよい。上述の構成要素及び装置のいずれも、同じ能力を尚も含んだままで、他の装置と組み合わせられてもよく又は他の装置に分割されてもよいことが、明確に理解されるべきである。例えば、ロボット制御装置614及び溶接制御装置616は、例えば、セル制御装置610を含む、一つの制御装置の中に組み合わされてもよい。同様に、様々なデバイスに関連する論理回路は、様々な構成要素の内部で記憶され、実行されてもよい。
本明細書において議論された複数の実施形態は上記のシステム及び方法に関係していたが、これらの実施形態は、例示的であるように意図されており、これらの実施形態の適用可能性を本明細書において説明されたそれらの議論のみに限定するように意図されていない。本明細書において議論された制御システム及び方法論は、上記の考案の精神及び範囲から逸脱することなく、アーク溶接、レーザー溶接、ろう付け、はんだ付け、プラズマ切断、水ジェット切断、レーザー切断、及び類似の制御方法論を使用する任意のその他のシステム又は方法に関係するシステム及び方法に、同等に適用可能であり、利用され得る。本明細書における複数の実施形態及び議論は、当業者によって、これらのシステム及び方法論のいずれにも容易に組み込まれ得る。例えば、ある実施形態はGMAWプロセスを記述するが、本考案はまた、例えば、フラックス入りガスシールド(FCAW−G)、フラックス入りセルフシールド(FCAW−S)等を含む、他の溶接プロセスにも適用可能である。
本考案は、その実施形態の記述によって説明され、また、複数の実施形態は幾分詳細に記述されたが、本出願人は、添付の請求の範囲をそのような詳細に制限すること又は如何なる意味においても限定することを意図しない。追加的な利点及び変更が、当業者には容易に思われるであろう。したがって、その広い態様における本考案は、特定の詳細、代表的な装置又は方法、及び図示及び記述された例示的な実施例に限定されない。その結果、本出願人の全体的な考案の構想の精神及び範囲から逸脱することなく、前記の詳細からの発展が成され得る。