JP6180259B2 - アーク溶接開始方法および溶接装置 - Google Patents

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Description

本発明は、アーク溶接の開始方法および溶接装置に関する。
電気エネルギーを利用して溶接を行なうアーク溶接は、設備費用が比較的安価なことや作業性に優れるといったこともあり、広く用いられている。アーク溶接(以下、単に「溶接」という場合もある)は、電極と母材との間にアークを発生させて行なう。
特開昭62−161471号公報
アークの発生は、溶接を開始しようとする位置(溶接開始予定位置)において、たとえば、電極と母材との間に電圧を印加した状態で、両者を接触させるという作業によって行なわれる。しかし、溶接開始予定位置において、たとえば、母材の表面にスラグなどの非金属物質が存在すると、アークが発生しないことがある。
溶接開始予定位置においてアークが発生しなかったとき、溶接開始予定位置から溶接方向に進んだ位置でアークを発生させて、アークが発生した位置(アーク発生位置)から溶接を開始するという方法が考えられる。その場合、溶接開始予定位置からアーク発生位置までの間では、溶接が行なわれない。特開昭62−161471号公報は、アーク発生位置から、一旦、溶接進行方向とは逆方向に溶接を進め、溶接開始予定位置まで溶接を行なったうえで再び溶接開始予定位置から溶接方向に溶接を進めるといった溶接方法を提案している。
アーク溶接方法の1つに、フィラーワイヤを用いる溶接方法がある。フィラーワイヤを用いるアーク溶接では、溶加材としてのフィラーワイヤを母材に溶融させる。電極と母材との間の溶接電圧および溶接電流によってアークが発生すると、アーク熱によって母材に溶融池が形成されはじめる。母材に形成されはじめた溶融池にフィラーワイヤを送給すると、フィラーワイヤが溶融し、溶融池が成長する。これにより、母材とフィラーワイヤとが溶融する。成長した溶融池は、アークが遠ざかりまたはアークが消滅して温度が低下すると固化し、溶接に適切な厚み(深さ)や幅を有する溶接ビードになる。溶接ビードが溶接方向に沿って形成されて、溶接は完了する。
フィラーワイヤを用いる溶接方法において、溶接開始予定点でアークが発生しない場合がある。その場合、特開昭62−161471号公報の溶接方法を適用すると、溶接開始予定位置とアーク発生位置の間で、アーク発生位置から溶接開始予定位置までの溶接、および溶接開始予定位置から溶接方向への溶接の、計2回のフィラーワイヤ送給による溶接が行なわれる。その結果、溶接開始予定位置とアーク発生位置との間で2重に溶接ビード(溶接金属)が形成されてしまい、適切な溶接が行なわれないという課題が生じる。
上記の課題を解決するためになされた本発明の目的は、溶接開始予定点においてアークが発生しない場合であっても、適切な溶接を行なうことを可能にしたアーク溶接開始方法および溶接装置を提供することである。
本発明の一局面におけるアーク溶接開始方法は、フィラーワイヤを用いるアーク溶接の開始方法であって、アークを発生させるステップと、アークが発生した位置が溶接開始予定位置でなかった場合に、発生したアークを溶接開始予定位置に移動させるステップと、発生したアークが溶接開始予定位置に移動した後に、フィラーワイヤの送給を開始するステップとを備える。アークが発生した位置が溶接開始予定位置であった場合に、アークを発生させるための処理を開始してからフィラーワイヤの送給を開始するまでの第1フィラーワイヤ送給開始遅延時間は、アークが発生した位置が溶接開始予定位置でなかった場合に、アークが溶接開始予定位置に到達してからフィラーワイヤの送給を開始するまでの第2フィラーワイヤ送給開始遅延時間よりも長い。
ましくは、フィラーワイヤの送給を開始するステップにおいて、第2フィラーワイヤ送給開始遅延時間での溶接電流、溶接電圧または溶接速度の増加率は、第1フィラーワイヤ送給開始遅延時間での溶接電流、溶接電圧または溶接速度の増加率よりも大きい。
本発明は、他の局面において、上記のアーク溶接の開始方法を制御装置に実行させて溶接を行なう溶接装置である。
本発明によると、溶接開始予定点においてアークが発生しない場合であっても、適切な溶接を行なうことが可能になる。
実施の形態に共通する溶接装置のブロック図である。 トーチ移動機構の一例である溶接ロボットに溶接トーチおよびワイヤ送給装置が装着された具体的な形状を説明するための図である。 フィラーワイヤの先端部の母材からの距離Dを説明するための図である。 溶接開始時における溶接装置の動作を説明するための図である。 実施の形態の溶接開始方法により形成された溶接ビードを説明するための図である。 実施の形態のアーク溶接開始方法における溶接開始時の制御を説明するためのフローチャートである。 ステップS103およびステップS110の詳細を対比しつつ説明するためのフローチャートである。図7(a)は、ステップ103の詳細を説明するフローチャートであり、図7(b)は、ステップS110の詳細を説明するフローチャートである。 実施の形態によるアーク溶接開始方法を説明するための図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、実施の形態に共通する溶接装置のブロック図である。なお、図1は、溶接装置が2ワイヤ溶接を行なう例を示すが、これには限定されない。たとえば、電極が消耗電極ワイヤでない溶接装置(たとえば、TIG溶接装置)などにも本発明は適用することができる。
図1を参照して、溶接装置100は、溶接トーチ14と、ワイヤ送給装置25,26と、電源装置22と、トーチ移動機構(ロボット)21と、制御装置27とを含む。溶接装置100は、消耗電極ワイヤ3と、フィラーワイヤ4とを用いた2ワイヤ溶接を行なう。
溶接トーチ14は、トーチ移動機構21に装着されている。トーチ移動機構21は、一般的にはロボットアームなどが使用されるが、他の機構であっても良い。溶接トーチ14は、コンタクトチップ1,2を有している。コンタクトチップ1には、消耗電極ワイヤ3が挿通可能な貫通孔が設けられている。コンタクトチップ2には、フィラーワイヤ4が挿通可能な貫通孔が設けられている。
2ワイヤ溶接においては、消耗電極ワイヤ3が図1中の矢印で示す溶接方向の前方に位置し、フィラーワイヤ4が溶接方向の後方に位置した状態で、溶接トーチ14がトーチ移動機構21よって溶接方向に移動される。
電源装置22は、溶接用電源23と、検出用電源24とを含む。溶接用電源23は、消耗電極ワイヤ3にアークを発生させるための電源であり、設定された溶接電圧および溶接電流に基づいてコンタクトチップ1に溶接電流および溶接電圧を供給する。溶接電圧および溶接電流の設定は、制御装置27によって行なわれる。また、溶接電圧および溶接電流の設定値は、溶接中に随時変更され得る。コンタクトチップ1は、消耗電極ワイヤ3と導通している。したがって、消耗電極ワイヤ3には、コンタクトチップ1を経由して溶接用電源23から溶接電圧および溶接電流が供給される。図示しないが、溶接用電源23は、溶接電流が流れるとオンになるウェルディングカレントリレー(WCR)を含む。制御装置27は、WCRのON・OFF状態を監視することができる。
検出用電源24は、フィラーワイヤ4が母材8に接触したことを検出するための電源である。コンタクトチップ2は、フィラーワイヤ4と導通している。したがって、フィラーワイヤ4には、コンタクトチップ2を経由して検出用電源24から検出電圧および検出電流が供給される。
制御装置27は、ワイヤ送給装置25,26と、電源装置22とトーチ移動機構21とを制御する。なお、制御装置27は、電源装置22とトーチ移動機構21に分割配置されても良く、複数のコンピュータが相互通信して実現されるものであっても良い。
図2は、トーチ移動機構の一例である溶接ロボットに溶接トーチおよびワイヤ送給装置が装着された具体的な形状を説明するための図である。
図2を参照して、トーチ移動機構21(以下、ロボット21と称する)のアームの先端に溶接トーチ14が装着される。また、ワイヤ送給装置25,26は、アーム上腕部の関節付近に装着される。
ワイヤ送給装置25は、消耗電極ワイヤ3を送給する。ワイヤ送給装置26は、フィラーワイヤ4を送給する。ワイヤ送給装置25,26は、各々が、モータなどの駆動源を有しており、消耗電極ワイヤ3とフィラーワイヤ4とを個別に送給することが可能である。
図3は、フィラーワイヤの先端部の母材からの距離Dを説明するための図である。図3を参照して、フィラーワイヤ4が送給されると母材と接触する点を点Pとすると、点Pとフィラーワイヤ4の先端との間の距離を距離Dとする。溶接開始時に距離Dが短すぎると、送給開始タイミングが早すぎることになり、溶融池が形成されていない母材8にフィラーワイヤ4が衝突してしまう。これは、フィラーワイヤ4の座屈や折損を生じるおそれがある。一方、溶接開始時に距離Dが長すぎると、フィラーワイヤ4の送給開始タイミングが遅すぎることになり、溶融池が形成されたにもかかわらずフィラーワイヤ4が供給されない箇所ができてしまう。この箇所に形成された溶接ビードは極端に肉痩せすることとなり、溶接割れなどの溶接欠陥の原因となってしまう。したがって、距離Dは、溶接開始時には、適切な値に設定される。
次に、溶接装置100(図1)の溶接開始時の動作について説明する。
再び図1を参照して、溶接装置100は、消耗電極ワイヤ3に加えてフィラーワイヤ4を使用することによって2ワイヤ溶接を行なう。具体的に、消耗電極ワイヤ3の先端と母材8の表面との間にアークを発生させ、そのアーク熱によって形成され始めた溶融池にフィラーワイヤ4を送給することによって、溶融池を溶接に適した大きさ(厚みや幅)に成長させる。これにより溶接が適切に行なわれる。
溶接開始時に消耗電極ワイヤ3の先端と母材8の表面との間にアークを発生させるための処理(以後、「アーク発生処理」という)は、溶接用電源23から消耗電極ワイヤ3に溶接電圧および溶接電流を供給することによって行なう。具体的に、消耗電極ワイヤ3に溶接電圧が印加された状態で、消耗電極ワイヤ3を母材8に接触させると、両者の間にアークが発生し得る。
アークが発生すると、アーク熱によって母材8の温度が上昇して融解し、溶融池が形成され始める。形成され始めた溶融池にフィラーワイヤ4が送給され、また、溶接方向に沿って溶接が進められる。ここで、アーク発生処理を実行してから溶融池が形成されるまでには、一定の時間が掛かる。そのため、溶接開始予定位置において、アーク発生処理を実行してからフィラーワイヤ4の送給を開始するまでの間には、適切な遅延時間(以後、「第1フィラーワイヤ送給開始遅延時間」という)が設定される。
また、フィラーワイヤ4の送給は、送給開始時は比較的小さい速度で行なわれ、その後徐々に速度を上げ、最終的に一定の速度になる。この変化は、溶接速度、溶接電流および溶接電圧についても同様である。そのため、フィラーワイヤ4の送給速度、溶接速度、溶接電流および溶接電圧が一定(以後、「溶接定常状態」という場合もある)になるタイミングが揃うように、それぞれの変化が適切に制御される。
アーク発生処理は、通常、溶接を開始しようとする位置(溶接開始予定位置)において行なわれる。しかし、このアーク発生処理を行なうときに、たとえば、母材の表面にスラグなどの非金属物質が存在すると、アークが発生しないことがある。
そこで、溶接開始予定位置でアークが発生しない場合、溶接装置100は、溶接開始予定位置とは異なる位置(以後、「アーク発生処理リトライ位置」という)でアーク発生処理を実行する。アーク発生処理リトライ位置は、たとえば、溶接開始予定位置から溶接方向に進んだ位置、すなわち溶接線(溶接ライン)上のいずれかの位置とすることができる。もちろん、アーク発生処理リトライ位置は、溶接線上とは異なる位置であってもよい。また、アーク発生処理リトライ位置においてもアークが発生しないことがあるが、その場合、溶接装置100は、さらに別のアーク発生処理リトライ位置においてアーク発生処理を実行することができる。すなわち、溶接装置100は、アークの発生を試行しながら消耗電極ワイヤ3の先端を溶接開始予定位置から移動させ、いずれかのアーク発生処理リトライ位置でアークを発生させる。
アーク発生処理リトライ位置でアークが発生すると、溶接装置100は、発生したアークを維持しつつ溶接開始予定位置に移動させる。アークを維持しつつ移動させるには、消耗電極ワイヤ3と母材8との間の距離を適切に保ちながら消耗電極ワイヤ3を移動させる。消耗電極ワイヤ3は、溶接トーチ14によって、フィラーワイヤ4とともに移動する。
この移動の間、溶接装置100は、フィラーワイヤ4の送給は行なわない。消耗電極ワイヤと母材との間にアークが発生していても、フィラーワイヤの送給を行なわなければ、アーク熱によって溶融池が形成されはじめたとしてもその成長が抑制される。これにより、アークが発生した位置と溶接開始予定位置との間に、不所望な溶接ビードが形成されるのを防ぐことができる。
アークが溶接開始予定位置まで移動した後は、フィラーワイヤ4の送給を開始し、溶接方向に沿って溶接が進められる。ここで、アークが溶接開始予定位置に到達してから溶融池が形成されるまでには、一定の時間が掛かる。そのため、アーク発生処理リトライ位置において発生したアークが、溶接開始予定位置に到達してからフィラーワイヤ4の送給を開始するまでの間にも遅延時間(以後、「第2フィラーワイヤ送給開始遅延時間」という)を設けることが好ましい。この場合、フィラーワイヤ4の送給速度、溶接速度、溶接電流および溶接電圧が一定(すなわち溶接定常状態)になるタイミングが揃うように、それぞれの変化が適切に制御される。
アーク発生処理リトライ位置においてアークが発生した場合、そのアークが溶接開始予定位置に移動するまでの間に、アーク熱によって母材が加熱される。つまり、アークが溶接開始予定位置に到達したときには、すでに母材の温度がある程度上昇しており、比較的短時間で母材が融解して溶融池が形成され始める。ここで、アーク熱により長期間母材を加熱すると溶融池が大きくなりすぎて好ましくない。そのため、第2フィラーワイヤ送給開始遅延時間は、第1フィラーワイヤ送給開始遅延時間よりも短く設定される。これにより、適切な大きさの溶融池が形成される。また、溶接全体に掛かる時間も短縮される。
さらに、アーク発生処理リトライ位置においてアークが発生した場合は、アークが溶接開始予定位置に到達してから溶接定常状態に至るまでの時間が比較的短いため、溶接速度、溶接電流および溶接電圧も、比較的短時間で大きく変化するように制御する。
図4は、上述の、溶接開始時における溶接装置の動作を説明するための図である。図4は、溶接対象の一例として、2枚の金属板をL字型に組み合わせてなる母材8Aを示す。
図1および図4を参照して、溶接開始予定位置においてアークが発生しない場合、消耗電極ワイヤ3はアーク発生処理リトライ位置に移動する(図4の「移動1」)。アーク発生処理リトライ位置でアーク発生処理を実行し、アークが発生すると、発生したアークは、消耗電極ワイヤ3の移動に伴い溶接開始予定位置に移動する(図4の「移動2」)。アークが溶接開始予定位置に移動した後、フィラーワイヤ4の送給が開始され、消耗電極ワイヤ3は溶接方向に移動する(図4の「移動3」)。
消耗電極ワイヤ3の溶接方向への移動によりアークが移動するため、溶接方向には溶融池が連続的に形成され始める。それに合わせてフィラーワイヤ4が送給されることで、溶接方向に、適切な大きさの溶融池が連続的に形成される。形成された溶融池は、アークが遠ざかるまたはアークが消滅すると、温度が低下して固化し、溶接ビードになる。
図5は、実施の形態の溶接開始方法により形成された溶接ビードを説明するための図である。図5は、母材とその表面に形成された溶接ビードを断面で見た図である。図5に示すように、溶接開始予定位置から溶接方向に向かって、均一な厚みの溶接ビードが形成される。このため、実施の形態の溶接開始方法によれば、溶接箇所によって溶接ビードの形状が異なるといったことがなく、適切な溶接が行なわれることになる。
図6は、実施の形態のアーク溶接開始方法における溶接開始時の制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、図1および図2の制御装置27で実行される。
図1および図6を参照して、はじめに、溶接開始予定位置においてアーク発生処理が実行される(ステップS101)。
溶接開始予定位置においてアークが発生した場合(ステップS102でYES)、通常設定でフィラーワイヤ4の送給が開始され、溶接方向に溶接が行なわれる(ステップS103)。通常設定については、後に図7を参照して説明する。ステップS103の溶接が開始されると、フローチャートの処理は終了する(ステップS111)。
溶接開始予定位置においてアークが発生しなかった場合(ステップS102でNO)、アーク発生処理が中止される(ステップS104)。アーク発生処理の中止は、たとえば、消耗電極ワイヤ3への溶接電流および溶接電圧の供給を停止することによって行なわれる。
ステップS104においてアーク発生処理が中止された後、消耗電極ワイヤ3はアーク発生処理リトライ位置に移動する(ステップS105)。アーク発生処理リトライ位置は溶接開始予定位置以外の任意の位置でよいが、すでにアークの発生を試みて失敗した位置は除かれる。
ステップS105においてアーク発生リトライ位置に移動した後、アーク発生処理が実行される(ステップS106)。
アーク発生リトライ位置においてアークが発生した場合(ステップS107でYES)、ステップS108に処理が進められる。一方、アーク発生リトライ位置においてアークが発生しなかった場合(ステップS107でNO)、ステップS104に再び処理が戻される。
ステップS108では、アーク発生リトライ位置において発生したアークが維持されつつ溶接開始予定位置に移動する。このとき、フィラーワイヤ4の送給は行なわれない。このときの移動速度は、溶接が行なわれる速度とは異なる速度であってもよい。生産性などの観点から、移動速度は、アークが維持されなくなるのを回避できる(すなわちアーク切れを起こさない)程度に速い速度であることが好ましい。これにより、フィラーワイヤ4の送給による溶接が行なわれることなく、アークが溶接開始予定位置に到達する(ステップS109)。
アークが溶接開始予定位置に到達すると、リトライ設定で、フィラーワイヤ4の送給が開始され、溶接方向に溶接が行なわれる(ステップS110)。リトライ設定については、後に図7を参照して説明する。ステップS110の溶接が開始されると、フローチャートの処理は終了する(ステップS111)。
図7は、図6のステップS103およびステップS110の詳細を対比しつつ説明するためのフローチャートである。
図7(a)は、図6のステップS103、すなわち通常設定の詳細を説明するフローチャートである。図1および図7(a)を参照して、通常設定では、アークが発生して(WCRがONとなって)から、通常設定での遅延時間経過後にフィラーワイヤ4の送給を開始する(ステップS201)。通常設定での遅延時間は、第1のフィラーワイヤ送給開始遅延時間に相当する。
ステップS201においてフィラーワイヤの送給が開始されると、そこから溶接定常状態に至るまでの間、溶接電流は増加率「β1」で、溶接電圧は増加率「β2」で、溶接速度は増加率「β3」で変化するように制御される(ステップS202)。
フィラーワイヤ4の送給速度、溶接速度、溶接電流、または溶接電圧が一定、つまり溶接定常状態になると、フローチャートの処理は終了する(ステップS203)。
図7(b)は、図6のステップS110、すなわちリトライ設定の詳細を説明するフローチャートである。図1および図7(b)を参照して、リトライ設定では、アークが溶接開始予定位置に到達してからリトライ設定での遅延時間経過後にフィラーワイヤ4の送給を開始する(ステップS301)。リトライ設定での遅延時間は、第2フィラーワイヤ送給開始遅延時間に相当する。つまり、ステップS301におけるリトライ設定での遅延時間は、図7(a)のステップS201における通常設定での遅延時間よりも短い。
ステップS301においてフィラーワイヤの送給が開始されると、そこから溶接定常状態に至るまでの間、溶接電流は増加率「β1R」で、溶接電圧は増加率「β2R」で、溶接速度は増加率「β3R」で変化するよう制御される(ステップS302)。ステップS302における溶接電流、溶接電圧および溶接速度は、図7(a)のステップS202における溶接電流、溶接電圧および溶接速度よりも、短時間で大きく変化する。そのため、ステップS302における溶接電流、溶接電圧および溶接速度の増加率は、図7(a)のステップS202における溶接電流、溶接電圧および溶接速度の増加率よりも、大きい。
フィラーワイヤ4の送給速度、溶接速度、溶接電流、または溶接電圧が一定、つまり溶接定常状態になると、フローチャートの処理は終了する(ステップS303)。
図8は、実施の形態によるアーク溶接開始方法を説明するための図である。
まず、溶接開始予定位置においてアークが発生した場合の各要素の経時変化を、図8の実線で説明する。
図1および図8を参照して、溶接開始時には、まず、時刻t10において、トーチスイッチがONになる。トーチスイッチは、溶接装置100に溶接を開始させるためのスイッチである。トーチスイッチは、たとえば、制御装置27に設けられおよび/または制御される。なお、溶接が手動で行なわれる場合、トーチスイッチは、溶接トーチ14に設けられ、作業者によって制御される。
時刻t10においてトーチスイッチがオンになると、溶接電圧が消耗電極ワイヤ3に印加される。また、消耗電極ワイヤ3の送給が開始される。ただし、このときの消耗電極ワイヤ3の送給速度Fw0は比較的低い速度(スローダウン速度)である。
時刻t20において、WCR(ウェルディングカレントリレー)がオン(ON)になる。すなわち、溶接電流が流れ始め、アークが発生する。これに伴い、溶接電圧は低下する。また、溶接速度Fが与えられ、進行方向に溶接が進み始める。
溶接開始予定位置でアークが発生すると、時刻t40において溶接定常状態になるよう、溶接電流I、溶接電圧V、溶接速度F、フィラーワイヤ送給速度Fw1、消耗電極ワイヤ送給速度Fw0が変化する(t20からt40の間の実線)。特に、溶接電流Iは、傾き(スロープ)が「β1」で変化する。溶接電圧Vは、傾きが「β2」で変化する。溶接速度Fは、傾きが「β3」で変化する。
また、フィラーワイヤ送給速度Fw1は、時刻t28において0から増加する。つまり、時刻t28においてフィラーワイヤの送給が開始される。時刻t10から時刻t28に至るまでの時間TDが、第1フィラーワイヤ送給開始遅延時間に相当する。
時刻t40以降、溶接電流I、溶接電圧V、溶接速度F、フィラーワイヤ送給速度Fw1、消耗電極ワイヤ送給速度Fw0がいずれも一定の状態(溶接定常状態)で、溶接方向に溶接が進められる。
一方、溶接開始予定位置ではなくアーク発生処理リトライ位置においてアークが発生した場合の各要素の経時変化を、図8の一点鎖線で説明する。
図1および図8を参照して、アーク発生処理リトライ位置において発生したアークが、溶接開始予定位置に到達した時刻は、時刻t20に対応する。この場合、時刻t30において溶接定常状態になるよう、溶接電流I、溶接電圧V、溶接速度F、フィラーワイヤ送給速度Fw1、消耗電極ワイヤ送給速度Fw0が変化する(t20からt30の間の一点鎖線)。つまり、アーク発生処理リトライ位置でアークが発生した場合、溶接開始予定位置でアークが発生した場合に溶接定常状態になる時刻t40よりも前の時刻である時刻t30で、溶接定常状態に至る。特に、溶接電流Iは、傾きが「β1R」で変化する。溶接電圧Vは、傾きが「β2R」で変化する。溶接速度Fは、傾きが「β3R」で変化する。
また、フィラーワイヤ送給速度Fw1は、時刻t25において0から増加する。つまり、時刻t25においてフィラーワイヤの送給が開始される。すなわち、時刻t20から時刻t25に至る時間TDRが、第2フィラーワイヤ送給開始遅延時間に相当する。
時刻t30以降、溶接電流、溶接電圧、溶接速度、フィラーワイヤ送給速度、消耗電極ワイヤ送給速度がいずれも一定の状態(溶接定常状態)で、溶接方向に溶接が進められる。
図8に示すように、溶接開始予定位置でアークが発生した場合(図8の実線)と、溶接開始予定位置とは異なる位置であるアーク発生処理リトライ位置でアークが発生した場合(図8の一点鎖線)では、フィラーワイヤの送給を開始するタイミング、溶接電流、溶接電圧、溶接速度などの各要素が相違する。
最後に、本発明の実施の形態について総括する。
図1および図6を参照して、実施の形態に係るアーク溶接開始方法は、フィラーワイヤ4を用いるアーク溶接の開始方法であって、アークを発生させるステップ(S101)と、アークが発生した位置が溶接開始予定位置でなかった場合に、発生したアークを溶接開始予定位置に移動させるステップ(S108)と、発生したアークが溶接開始予定位置に移動した後に、フィラーワイヤ4の送給を開始するステップ(S110)とを備える。これにより、アークが発生した位置が溶接開始予定位置でなかった場合であっても、アークが発生した位置と溶接開始予定位置との間に、不所望な溶接ビードが形成されるのを防ぐことができる。
好ましくは、アークが発生した位置が溶接開始予定位置であった場合に、アークを発生させるための処理を開始してからフィラーワイヤ4の送給を開始するまでの第1フィラーワイヤ送給開始遅延時間は、アークが発生した位置が溶接開始予定位置でなかった場合に、アークが溶接開始予定位置に到達してからフィラーワイヤ4の送給を開始するまでの第2フィラーワイヤ送給開始遅延時間よりも長い。これにより、適切な大きさの溶融池を形成できる。また、溶接全体に掛かる時間も短縮される。
さらに好ましくは、フィラーワイヤ4の送給を開始するステップ(S110)において、第2フィラーワイヤ送給開始遅延時間での溶接電流、溶接電圧または溶接速度の増加率は、第1フィラーワイヤ送給開始遅延時間での溶接電流、溶接電圧または溶接速度の増加率よりも大きい。これによっても、適切な大きさの溶融池を形成できる。また、溶接全体に掛かる時間も短縮される。
なお、溶接装置100は、上記のアーク溶接の開始方法を制御装置27に実行させて溶接を行なう溶接装置である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,2 コンタクトチップ、3 消耗電極ワイヤ、4 フィラーワイヤ、8,8A 母材、14 溶接トーチ、21 トーチ移動機構(ロボット)、22 電源装置、23 溶接用電源、24 検出用電源、25,26 ワイヤ送給装置、27 制御装置、100 溶接装置。

Claims (3)

  1. フィラーワイヤを用いるアーク溶接の開始方法であって、
    アークを発生させるステップと、
    アークが発生した位置が溶接開始予定位置でなかった場合に、発生したアークを前記溶接開始予定位置に移動させるステップと、
    前記発生したアークが前記溶接開始予定位置に移動した後に、前記フィラーワイヤの送給を開始するステップとを備え
    前記アークが発生した位置が前記溶接開始予定位置であった場合に、前記アークを発生させるための処理を開始してから前記フィラーワイヤの送給を開始するまでの第1フィラーワイヤ送給開始遅延時間は、前記アークが発生した位置が前記溶接開始予定位置でなかった場合に、前記アークが前記溶接開始予定位置に到達してから前記フィラーワイヤの送給を開始するまでの第2フィラーワイヤ送給開始遅延時間よりも長い、アーク溶接開始方法。
  2. 前記フィラーワイヤの送給を開始するステップにおいて、前記第2フィラーワイヤ送給開始遅延時間での溶接電流、溶接電圧または溶接速度の増加率は、前記第1フィラーワイヤ送給開始遅延時間での溶接電流、溶接電圧または溶接速度の増加率よりも大きい、請求項に記載のアーク溶接開始方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のアーク溶接の開始方法を制御装置に実行させて溶接を行なう溶接装置。
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