JP5449658B2 - 延焼防止構造及び延焼防止部材 - Google Patents

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Description

本発明は、ケーブル挿通孔から配線ボックスの内部に引き込まれたケーブルの延焼を防止するために壁に設けられる延焼防止構造及び延焼防止部材に関する。
例えば、建築物の間仕切壁の内部において、コンセントやスイッチ等の配線端末となる部分には、一面に開口する有底箱状の配線ボックスが配設されている。また、配線ボックスは配管接続口を有し、その配管接続口にはコネクタが装着されている。さらに、配線ボックスは、間仕切壁に設けられる開口部に向けて開口するように該間仕切壁の内部に配設される。そして、間仕切壁の内部において、配線ボックスの外側に位置する前記コネクタの一端開口に、可撓電線管等の配管材の端部を接続するとともに、コネクタの他端開口から前記配管材への内部挿通部材であるケーブル等の端部を取出して露出し、該ケーブルを間仕切壁の開口部に取り付けられる配線端末に電気的に接続するようにしている。
このような間仕切壁において、コネクタは合成樹脂等の可燃性材料よりなり、ケーブルは、金属製の芯材を合成樹脂等の可燃性材料製の被覆膜に覆って形成されている。このため、万一、火災等が発生し、火炎が間仕切壁の開口部に取付けた配線端末を燃焼し、該開口部を経て配線ボックスの内部に進入した場合、ケーブルの被覆膜が延焼してしまう虞がある。
そこで、特許文献1には、火災時等に配線ボックスの内部に火炎が進入した場合に、ケーブルの延焼を防止することができる配線ボックスの配設構造が開示されている。特許文献1において、配線ボックスの側壁に形成された貫通孔には合成樹脂製のコネクタが取着され、該コネクタには合成樹脂製の電線管が接続される。ケーブルは電線管及びコネクタの内部を通って配線ボックスの内部に引き込まれている。そして、この特許文献1においては、配線ボックスの内部空間へのコネクタの突出部及び該突出部に螺着されたナットの外面全体を所定厚の耐火材によって覆っている。さらに、耐火材はコネクタの突出部及びナットの内側にまで埋め込まれている。このため、特許文献1の配線ボックスの配設構造によれば、火災等が発生し、火炎が配線ボックスの内部空間に進入した場合、火炎の熱を受けて耐火材が配線ボックスの内部空間に向けて発泡、膨張する。すると、発泡、膨張した耐火材によってコネクタの燃焼が防止され、ケーブルの延焼が防止される。
特開2007−14045号公報
ところが、特許文献1に開示の配線ボックスの配設構造を形成するには、電線管と、コネクタと、耐火材とを必要としコストが嵩むという問題があった。また、配線ボックスの配設構造を形成する際、耐火材は、コネクタ及びナットにおける配線ボックスの内部空間への露出部全体を覆うように該コネクタの突出部、及びナットの外周面に付着させる必要がある。さらに、耐火材は、コネクタの内周面とケーブル周面との隙間を充填するように、両内周面に付着させて使用される。すなわち、配設構造を形成する際、作業者は耐火材を所要の厚み、形状に塑性変形させながら各周面に付着させなければならず、ケーブルの延焼防止のための配設構造を形成するのは非常に面倒であった。
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ケーブルの延焼防止のための構造をコストを抑えて簡単に形成することができる延焼防止構造及び延焼防止部材を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、耐火性を有し、一面に開口する有底箱状に形成され、周壁にケーブル挿通孔が形成された配線ボックスが、建築物の壁の表側に向けて開口するように該壁の裏側に配設され、前記ケーブル挿通孔から配線ボックスの内部に引き込まれたケーブルの延焼を防止するために設けられる延焼防止構造であって、前記配線ボックスと、該配線ボックスのケーブル挿通孔に挿入された状態で前記周壁に取着される延焼防止部材とから構成され、前記延焼防止部材は、熱膨張する膨張材である膨張黒鉛や水ガラスを含有する耐熱材料によって成形された可撓性及びゴム弾性を有する本体を備えており、前記本体に設けられた取着部に形成している一対の係合片が、前記配線ボックスの周壁の内外両面に係合して、延焼防止部材が前記ケーブル挿通孔に挿入された状態で前記周壁に取着されるとともに、該本体に形成された引込口から本体内にケーブルが挿通されることにより配線ボックスの内部にケーブルが引き込まれ、さらに、本体に設けられた密着部が前記ケーブルの周面全周に亘って密着することを要旨とする。
求項に記載の発明は、請求項1に記載の延焼防止構造において、前記取着部は前記本体の軸方向における基端側に形成され、延焼防止部材は本体の基端より先端側が配線ボックスの周壁より外方に延出していることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の壁における延焼防止構造において、前記取着部は、ケーブル挿通孔の周面全周に亘って密着していることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、耐火性を有し、一面に開口する有底箱状に形成され、周壁にケーブル挿通孔が形成されるとともに、建築物の壁の表側に向けて開口するように該壁の裏側に配設される配線ボックスの前記周壁に取着され、前記配線ボックスの内部に引き込まれたケーブルの延焼を防止する延焼防止部材であって、熱膨張する膨張材である膨張黒鉛や水ガラスを含有する耐熱材料によって可撓性及びゴム弾性を有するように成形された本体を備え、該本体には、本体内へのケーブルの引込口が形成されるとともに、該本体内に挿通された前記ケーブルの周面全周に亘って密着する密着部が設けられ、さらに、本体には前記ケーブル挿通孔に挿入された状態で前記周壁に取着する取着部が設けられ、該取着部には、前記配線ボックスの周壁の内外両面に係合する一対の係合片が形成されていることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の延焼防止部材において、前記本体は筒状に形成され、その内側に該本体を貫通しケーブルを挿通可能な貫通孔が形成されるとともに、該貫通孔によって前記引込口が形成されていることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の延焼防止部材において、前記取着部は前記本体の軸方向における基端側に形成されるとともに、前記貫通孔は本体の軸方向に沿って基端側から先端側に向かうに従い縮径するように形成され、本体の先端側の一部に前記密着部が設けられていることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の延焼防止部材において、前記本体の外周面には、数字又は文字を表示する表示部が形成されていることを要旨とする。
本発明によれば、ケーブルの延焼防止のための構造をコストを抑えて簡単に形成することができる。
以下、本発明を軽量間仕切壁に設けられた延焼防止構造に具体化した一実施形態を図1〜図5にしたがって説明する。
図1に示すように、軽量間仕切壁Wに設けられた延焼防止構造Kは、該軽量間仕切壁Wの裏側に配設された配線ボックス11と、該配線ボックス11に取着された延焼防止部材20とから構成される。そして、延焼防止構造Kは、火災等の発生時に、配線ボックス11の内部に引き込まれたケーブル40の延焼を防止するために軽量間仕切壁Wに設けられるものである。なお、ケーブル40は、金属製の芯材40aを合成樹脂等の可燃性材料製の被覆膜40bで覆って形成されている。
まず、延焼防止構造Kが設けられる建築物の壁としての軽量間仕切壁Wについて説明する。図1及び図4に示すように、軽量間仕切壁Wは、複数の軽量形鋼材P(図1及び図4では一本の軽量形鋼材Pのみ図示)と、該軽量形鋼材Pを挟むように立設される壁材Waとから構築されている。前記壁材Waは石膏ボードが用いられる。前記軽量形鋼材Pは、薄鋼板からなり、軽量形鋼材Pの立設方向に対して直交する方向への平断面視が略C字状をなすC型鋼である。そして、軽量間仕切壁Wを構築するには、まず、複数の軽量形鋼材Pを立設する。次に、軽量形鋼材Pを挟むように壁材Waを立設し、壁材Waをビスによって軽量形鋼材Pに固定すると、軽量間仕切壁Wが構築される。この軽量間仕切壁Wにおいて、対となる壁材Waの間には中空部Tが形成され、軽量間仕切壁Wは中空部Tを有する中空壁となっている。
次に、軽量間仕切壁Wの裏側に配設される配線ボックス11の構成について説明する。図1に示すように、金属材料製の耐火性を有する配線ボックス11は、一面に開口する有底四角箱状に形成されている。詳細には、配線ボックス11は、長方形状をなす底壁12と、該底壁12の四側周縁から立設された四つの側壁13a〜13dとから形成されている。なお、四つの側壁13a〜13dは、図1の上下に対向する上側壁13a及び下側壁13bと、図1の右左に対向する右側壁13c及び左側壁13dである。そして、前記底壁12と、四つの側壁13a〜13dによって配線ボックス11の周壁が形成され、底壁12と四つの側壁13a〜13dによって配線ボックス11が開口を有する四角箱状に形成されている。
上側壁13a及び下側壁13bには、ケーブル40を挿通可能とするケーブル挿通孔15が二つずつ形成されている。各ケーブル挿通孔15はノック部14によって閉鎖され、ノック部14を上側壁13a及び下側壁13bから除去することによりケーブル挿通孔15が開放されるようになっている。また、上側壁13a及び下側壁13bの内面には、配線端末41(図4参照)を配線ボックス11に取り付けるために用いられるボス部19が形成されている。
次に、延焼防止部材20について説明する。図1に示すように、延焼防止部材20は、略円錐筒状に形成されている。延焼防止部材20は、120℃以上の熱を受けると体積が加熱前の2倍以上に膨張する膨張材(膨張黒鉛や水ガラス)を含有する耐熱材料(ゴムや合成樹脂)によって前記略円錐筒状に成形されてなる。なお、本実施形態では、延焼防止部材20は、前記膨張材を混入し、所定形状に成形した(成形工程を経た)耐熱材料(熱膨張性ゴム)に加硫工程を経てなるものである。なお、前記加硫工程とは、成形工程を経た耐熱材料に熱を加え、加硫(架橋)反応や接着反応を起こさせ、ゴム弾性を有する製品を得る工程である。よって、延焼防止部材20は可撓性を有するとともにゴム弾性を有する。
延焼防止部材20は、可撓性及びゴム弾性を有するとともに略円錐筒状に成形された本体21を備える。なお、図2に示すように、本体21の長さ方向に沿って延びる中心軸Lの延びる方向を本体21の軸方向とする。そして、図4に示すように、本体21には、該本体21を軸方向に貫通する貫通孔22が形成され、この貫通孔22には前記ケーブル40を挿通することにより、ケーブル40を本体21内に貫通させることができる。よって、延焼防止部材20が配線ボックス11に取着された状態において、貫通孔22は、延焼防止部材20を介してケーブル40を配線ボックス11の内部に引き込むための引込口を形成する。
また、本体21において、前記軸方向における大径側を本体21の基端側とし、小径側を先端側とする。そして、本体21は、軸方向に沿って基端から先端に向かうに従い外径及び内径が縮径するように形成されている。なお、貫通孔22は、本体21の基端側の一部が軸方向に沿った所定長さだけ同じ直径を有するように形成されている。また、図3(c)に示すように、貫通孔22は、本体21の先端側のみ平面視長孔状に形成され、該長孔状をなす部位より基端側は全て丸孔状に形成されている。
図4に示すように、本体21の軸方向に沿った断面視において、本体21の内周面は略テーパ状に形成されている。そして、本体21の周壁部21Hにおける厚みは、本体21の軸方向における基端部が最も厚く、該基端部以外の部位は一定の厚みを有している。なお、略円錐筒状をなす本体21の周壁部21Hにおいて、本体21の軸方向に対し直交する方向(本体21の径方向とする)に沿った本体21の厚みは、所要の厚みに設定されている。周壁部21Hは、その外周面側に本体21の略円錐筒形状(外形形状)を維持する外形維持部21aを備えるとともに、内周側に熱膨張部21bを一体に備えている。すなわち、周壁部21Hの厚みには火災等で発生した熱により膨張する熱膨張部21bの厚みが確保されるとともに、該熱膨張部21bの外周側において火災等の発生時に本体21の外形形状を維持する外形維持部21aの厚みが確保されている。
このため、周壁部21Hの厚みは、外形維持部21aの厚みと熱膨張部21bの厚みの和となっている。なお、本実施形態では、外形維持部21aは周壁部21Hの厚みの1/2であり、熱膨張部21bの厚みも周壁部21Hの厚みの1/2となっている。そして、周壁部21Hにおいて、熱膨張部21bは本体21の内周面から熱を受けたとき、膨張して本体21の内周面とケーブル40の周面との間の隙間を密封閉鎖し、周壁部21Hにおける熱膨張部21b以外の部位が外形維持部21aとなる。
図3(a)に示すように、周壁部21Hの外周面には、該外周面の全周に亘って延びる切断溝23が、本体21の軸方向に沿って等間隔おきに複数形成されるとともに、周壁部21Hの厚み内に形成されている。本体21において、各切断溝23が形成された部位の周壁部21Hの厚みは、切断溝23が形成されていない部位の周壁部21Hの厚みより薄くなっている。そして、切断溝23から本体21を切断することにより、本体21の先端に臨む本体21の内径、すなわち貫通孔22の直径を変更することが可能になっている。
また、図3(b)に示すように、周壁部21Hの外周面には、数字又は文字を表示する表示部24が形成されている。この表示部24は、各表示部24より本体21の軸方向先端側に位置する切断溝23から本体21を切断したとき、本体21の先端に臨む貫通孔22に挿通するのに適したケーブル40のサイズを表示している。例えば、表示部24が表示する数字(例えば、「7」)より軸方向先端側に位置する切断溝23から本体21が切断された場合、本体21の先端に臨む貫通孔22には、直径7mmのケーブル40を挿通するのが適している。なお、本体21が切断されていない場合、本体21の先端に設けられた表示部24が表示する「光」は、貫通孔22にケーブル40として光ケーブルを挿通するのに適していること表示している。
なお、貫通孔22に挿通するのに適したケーブル40とは、貫通孔22にケーブル40を挿通したとき、本体21が弾性変形し、本体21の内周面たる熱膨張部21bがケーブル40の周面の全周に亘って密着するようになるケーブル40のことを示す。そして、本実施形態においては、本体21の熱膨張部21bのうち、本体21の軸方向における先端に位置する一部の熱膨張部21bがケーブル40の周面に密着する密着部を形成している。
図3(a)及び(b)に示すように、本体21の軸方向における基端には、係合溝25が本体21の全周に亘って凹設されるとともに該係合溝25を軸方向に挟むように一対の係合片26が形成されている。係合溝25における本体21の外径は、配線ボックス11のケーブル挿通孔15の直径と同じ又は僅かに大きく形成されている。また、本体21の軸方向に沿った一対の係合片26間の開口幅は、配線ボックス11の上側壁13a及び下側壁13bの厚みと同じ又は僅かに小さく設定されている。そして、本体21の基端側をケーブル挿通孔15に挿入するとともに、一対の係合片26を上側壁13a又は下側壁13bの内外両面に係合させることにより、本体21を上側壁13a又は下側壁13bに取着することができるようになっている。係合片26によって本体21が上側壁13a又は下側壁13bに取着された状態において、係合片26の各側壁13a,13bへの係合により、本体21の中心軸Lに沿った方向への移動が規制されるようになっている。よって、本実施形態では、係合溝25及び係合片26が本体21を延焼防止部材20を上側壁13a又は下側壁13bに取着する取着部を形成している。
図3(b)に示すように、本体21の外周面には、分割溝27が本体21の軸方向に沿って直線状に延びるように形成されている。なお、分割溝27は、本体21の軸方向のほぼ全体に亘って周壁部21Hの厚み内に形成されているが、本体21の基端では周壁部21Hを切断するスリット状に形成されている。
次に、軽量間仕切壁Wにおける延焼防止構造Kの形成方法について説明する。なお、ケーブル40として光ケーブルが配線ボックス11の内部に引き込まれるものとする。
まず、図4に示すように、軽量間仕切壁Wの表側に向けて配線ボックス11が開口するように、配線ボックス11を配設し、左側壁13dを貫通させたビスBを軽量形鋼材Pに螺入して配線ボックス11を軽量形鋼材Pに直接固定する。なお、配線ボックス11は、軽量形鋼材Pに固定されたボックス固定具(図示せず)やその他の支持具等を介して軽量形鋼材Pに取り付けられていてもよい。
次に、図2に示すように、配線ボックス11において、上側壁13aに開放されたケーブル挿通孔15に、延焼防止部材20における本体21の基端を挿入するとともに、係合片26を上側壁13aの内外両面に係合させ、延焼防止部材20を上側壁13aに取着する。この取着状態では、図4に示すように、係合溝25がケーブル挿通孔15の周面全周に亘って密着し、係合溝25とケーブル挿通孔15との間に隙間が形成されないようになっている。
延焼防止部材20が上側壁13aに取着された状態において、延焼防止部材20は可撓性を有し、その略円錐筒状が自身で維持されるため、上側壁13aには延焼防止部材20が略円錐筒状に立設した状態になっている。また、延焼防止部材20の貫通孔22は配線ボックス11の内部に連通し、該貫通孔22によってケーブル40の引込口が配線ボックス11に形成される。
そして、本体21の先端に臨む貫通孔22(引込口)にケーブル40を挿通する。このとき、本体21の先端を長孔状の貫通孔22の長さ方向両側から押し潰して弾性変形させ、長孔状をなす貫通孔22を丸孔状に押し広げる。ケーブル40を、本体21内(貫通孔22)を通過させ、配線ボックス11の内部にまで引き込む。その後、本体21の押し潰しを解除すると、本体21の原形状への復帰により、本体21の先端において、熱膨張部21b(密着部)がケーブル40の周面全周に亘って密着する。
その後、軽量形鋼材Pを挟むように一対の壁材Waが立設され、軽量間仕切壁Wが構築される。すると、軽量間仕切壁Wの裏側(中空部T)に延焼防止構造Kが形成されるとともに、配線ボックス11が中空部Tに露出した状態に設置される。そして、軽量間仕切壁Wの表側に位置する壁材Waに配線孔Wbが穿設され、配線ボックス11が軽量間仕切壁Wの表側に向けて開口する。その後、配線ボックス11内のケーブル40に配線端末41が接続され、さらに、配線端末41を保持した保持枠42がボス部19を利用して壁材Waに取り付けられる。
次に、上記構成の延焼防止構造Kの作用を説明する。
さて、軽量間仕切壁Wの表側で火災等が発生し、配線端末41及び保持枠42が消失し、ケーブル40における被覆膜40bが燃えたとする。火災等により発生した熱は、配線ボックス11の内部から延焼防止部材20の内側に伝播する。すると、図5に示すように、伝播した熱により、本体21は主に内周面側から加熱され、本体21における熱膨張部21bが加熱される。
加熱された熱膨張部21bは本体21の径方向内側、すなわちケーブル40に向けて膨張し、ケーブル40を全周側から押し潰しながらケーブル40の周面と本体21の内周面との隙間を密封閉鎖する。すると、熱膨張部21bの膨張によってケーブル40の延焼が防止されるとともに、ケーブル40の周面と本体21の内周面との間の隙間が熱、煙の経路となることが阻止される。そして、熱膨張部21bが膨張することにより、本体21の内周面とケーブル40の周面との間の隙間に熱が伝播することが防止され、本体21が内周面側から加熱されることが無くなる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)延焼防止部材20は、膨張材を含有する耐熱材料によって略円錐筒状に予め成形されるとともに可撓性を有する。そして、延焼防止部材20の貫通孔22にケーブル40を挿通すると、ケーブル40は配線ボックス11内に引き込まれる。そして、火災等の発生時には延焼防止部材20が膨張してケーブル40の延焼を防止することができる。すなわち、延焼防止構造Kは、配線ボックス11の他に延焼防止部材20を用いるだけで形成することができる。よって、ケーブル40の延焼を防止可能としつつ、配線ボックス11の内部にケーブル40を引き込み可能とするために背景技術のようなコネクタと耐火材を必要とした場合に比して、部品点数を減らし、ケーブル40の延焼防止構造Kを形成するのに要するコストを抑えることができる。
また、延焼防止部材20は係合片26を上側壁13aに係合させるだけでワンタッチで上側壁13aに取着することができる。よって、背景技術のように延焼防止のために、可塑性を有する耐火材を所要の形状に塑性変形させながら要所に付着させる場合に比してケーブル40の延焼防止構造Kを容易に形成することができる。
(2)貫通孔22にケーブル40が挿通された状態では、延焼防止部材20の熱膨張部21b(密着部)がケーブル40の周面の全周に亘って密着している。よって、延焼防止構造が形成された状態で、ケーブル40の周面と延焼防止部材20の内周面との間に隙間が形成されず、延焼防止構造Kが形成された状態において延焼防止部材20を介して配線ボックス11の内部に埃等が侵入することを防止することができる。
(3)係合溝25及び係合片26は本体21の基端に形成され、延焼防止部材20が上側壁13aに取着された状態では本体21の基端より先端側が配線ボックス11の上側壁13aより外方に延出し、軽量間仕切壁Wの中空部Tに露出している。このため、火炎等が配線ボックス11の内部に進入したとき、配線ボックス11の外方へ延出した本体21は、配線ボックス11内に比して冷やされている。よって、配線ボックス11の外方へ延出された本体21の先端側は膨張しにくくなる。このため、本体21において、配線ボックス11の内部に近い基端側の内周面(熱膨張部21b)のみが膨張することとなり、ケーブル40の周面と本体21の内周面との間に存在する隙間を速やかに密封閉鎖することができる。
(4)係合溝25及び係合片26によって延焼防止部材20が上側壁13aに取着された状態では、係合溝25の周面がケーブル挿通孔15の周面の全周に亘って密着している。このため、配線端末41、保持枠42、ケーブル40の被覆膜40b等が燃焼し、有毒ガスが発生したとき、ケーブル挿通孔15を介して有毒ガスが配線ボックス11外へ洩れることを防止することができる。
(5)貫通孔22は本体21の軸方向に沿った基端から先端に向かうに従い縮径するように形成されている。このため、貫通孔22にケーブル40が挿通されたとき、本体21の先端側で本体21の熱膨張部21b(密着部)がケーブル40の周面に密着し、基端側に向かうに従いケーブル40の周面から熱膨張部21bが離間するように隙間が形成されている。このため、火災等の発生時、火炎に近い本体21の基端側は熱を受けると、隙間が存在することにより熱膨張部21bがケーブル40に向けて勢い良く膨張する。このため、膨張する勢いを利用してケーブル40を確実に押し潰すことができる。
(6)本体21は略円錐筒状に予め成形されている。このため、貫通孔22に挿通されたケーブル40を全周に亘って包囲して保護することができる。
(7)周壁部21Hの厚みとして熱膨張部21bの厚みと外形維持部21aの厚みを確保した。このため、本体21が加熱されたとき、熱膨張部21bを膨張させつつも外形維持部21aによって本体21の外形形状が維持され、膨張した熱膨張部21bによってケーブル40の周面と本体21の内周面との間の隙間を密封封鎖することができる。
(8)延焼防止部材20は、本体21に貫通孔22、切断溝23、表示部24、係合溝25、係合片26、及び分割溝27を形成してなり、膨張材を含有する耐熱材料を一体成形することで得られる。よって、延焼防止部材20は容易に製造することができる。
(9)貫通孔22は本体21の軸方向に沿った基端から先端に向かうに従い縮径するように形成されている。このため、本体21をその軸方向に沿った所定の位置で切断することにより、直径の異なる貫通孔22を本体21の先端に臨ませることができる。よって、異なる直径を有する複数種類のケーブル40を貫通孔22に挿通しても、本体21の熱膨張部21b(密着部)をケーブル40の周面に密着させることができる。
(10)本体21には、表示部24が複数形成されるとともに、本体21の軸方向に沿った表示部24より先端側には切断溝23が形成されている。そして、表示部24に表示された数字を元に切断溝23から本体21を切断することにより、本体21の先端に位置する貫通孔22の直径を表示部24に表示された数字の直径を有するケーブル40に合わせることができる。したがって、ケーブル40の直径に合わせて本体21を切断する場所を探す必要がなく、ケーブル40の挿通作業、ひいては延焼防止構造Kの形成作業を容易とすることができる。また、切断溝23が形成されない場合に比して本体21の切断を容易に行うことができる。
(11)本体21に形成された係合片26は、上側壁13aの内外両面に係合する。このため、延焼防止部材20が係合片26を用いて配線ボックス11に取着された状態で延焼防止部材20にケーブル40を挿通したとき、延焼防止部材20を配線ボックス11の内方へ向けて押す力が作用しても係合片26の上側壁13aへの係合により延焼防止部材20が上側壁13aから外れてしまうことを防止することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 分割溝27に沿って本体21を切断し、延焼防止部材20を平面視C字状に形成する。又は延焼防止部材20を予め平面視C字状をなす円錐筒状に成形する。そして、配線ボックス11のケーブル挿通孔15にケーブル40を挿通し、配線ボックス11の内部にケーブル40を引き込んだ後、延焼防止部材20をケーブル40の外面側から被せて装着する。本体21における切断縁同士を当接させて円錐筒状にした後、本体21の基端側をケーブル挿通孔15に挿入するとともに係合片26を上側壁13aに係合して延焼防止部材20を上側壁13aに取着してもよい。
○ 分割溝27は無くてもよい。
○ 係合片26は無くてもよい。この場合、本体21の基端における外径をケーブル挿通孔15の直径より僅かに大きくする。そして、本体21の基端を弾性変形させて縮径させ、その縮径した基端をケーブル挿通孔15内に挿入する。すると、本体21の原形状への復帰により本体21の基端外周面がケーブル挿通孔15の周面に圧接し、延焼防止部材20が上側壁13aに取着される。よって、この場合、本体21の基端が取着部を形成する。
○ 図6に示すように、貫通孔22の直径を、本体21の軸方向に沿って全て同じに形成するとともに、周壁部21Hの厚みを、本体21の軸方向に沿って基端から先端に向かうに従い薄くなるように形成してもよい。
○ 図7に示すように、本体21の内周面から内方へ向けて延びる弾性片28を、内周面の周方向に沿って複数形成するとともに、該複数の弾性片28を本体21の軸方向に沿って複数箇所に形成してもよい。このように構成すると、弾性片28の先端がケーブル40の周面に密接し、該弾性片28によってケーブル40の周面と本体21の内周面との間に隙間が形成されなくなる。よって、配線ボックス11内に埃等が侵入することを防止することができる。
○ 図8に示すように、本体21の外周面を金属製のカバー部材30によって覆ってもよい。すなわち、延焼防止部材20は、貫通孔22、切断溝23、表示部24、係合溝25、係合片26、及び分割溝27が形成された本体21と、該本体21の外形を維持するためのカバー部材30とから形成され、延焼防止部材20における内周面に密着部が設けられることになる。
○ 延焼防止部材20において、本体21に係合溝25及び係合片26を形成せず、金属材料により係合片26及び係合溝25が予め形成された取着部を本体21に取り付けてもよい。
○ 建築物の壁として、中空部Tを有する中空壁に延焼防止構造を設置する際、本実施形態の延焼防止構造を用いてもよい。なお、中空壁は、軽量形鋼材P以外の造営材と、石膏ボード以外の壁材Waとからなるものであってもよい。
○ 耐火性を有する配線ボックスとして、合成樹脂材料よりなる配線ボックスの外面及び内面の少なくとも一方に耐火材が塗布されたものを使用してもよい。
○ 配線ボックス11において、周壁としての底壁12にケーブル挿通孔15が形成され、底壁12に延焼防止部材20を取着して延焼防止構造Kを形成してもよい。
○ 壁材Waにボックスカバーを取り付け、該ボックスカバーによって配線端末41を壁表側に臨ませつつ配線孔Wbを覆ってもよい。
○ 本体21は略円錐筒状でなく、円筒状、三角錐筒状、四角錐筒状等の任意の形状であってもよい。
○ 周壁部21Hの厚みにおいて、外形維持部21aの厚みと熱膨張部21bの厚みは貫通孔22内に挿通されるケーブル40の外面と本体21の内周面との間に形成される隙間の大きさに合わせて任意に変更してもよい。すなわち、火災等の発生時に、ケーブル40の周面と本体21の内周面との間の隙間が熱膨張部21bによって密封閉鎖されるとともに、外形維持部21aが膨張せず、外形形状が維持されるのであれば、外形維持部21a及び熱膨張部21bの厚みは任意に変更してもよい。
実施形態の軽量間仕切壁における延焼防止構造を示す斜視図。 実施形態の軽量間仕切壁における延焼防止構造を示す正面図。 (a)は延焼防止部材を示す正面図、(b)は延焼防止部材を示す背面図、(c)は延焼防止部材を示す平面図。 延焼防止構造を示す断面図。 本体の内周面が膨張した状態を示す断面図。 別例の延焼防止部材を示す断面図。 別例の延焼防止部材を示す断面図。 別例の延焼防止部材を示す断面図。
符号の説明
K…延焼防止構造、W…建築物の壁としての軽量間仕切壁、11…配線ボックス、12…周壁を形成する底壁、13a〜13d…周壁を形成する側壁、15…ケーブル挿通孔、20…延焼防止部材、21…本体、21a…外形維持部、21b…密着部を形成する熱膨張部、22…引込口を形成する貫通孔、25…取着部を形成する係合溝、26…取着部を形成する係合片、40…ケーブル。

Claims (7)

  1. 耐火性を有し、一面に開口する有底箱状に形成され、周壁にケーブル挿通孔が形成された配線ボックスが、建築物の壁の表側に向けて開口するように該壁の裏側に配設され、前記ケーブル挿通孔から配線ボックスの内部に引き込まれたケーブルの延焼を防止するために設けられる延焼防止構造であって、
    前記配線ボックスと、該配線ボックスのケーブル挿通孔に挿入された状態で前記周壁に取着される延焼防止部材とから構成され、
    前記延焼防止部材は、熱膨張する膨張材である膨張黒鉛や水ガラスを含有する耐熱材料によって成形された可撓性及びゴム弾性を有する本体を備えており、
    前記本体に設けられた取着部に形成している一対の係合片が、前記配線ボックスの周壁の内外両面に係合して、延焼防止部材が前記ケーブル挿通孔に挿入された状態で前記周壁に取着されるとともに、該本体に形成された引込口から本体内にケーブルが挿通されることにより配線ボックスの内部にケーブルが引き込まれ、さらに、本体に設けられた密着部が前記ケーブルの周面全周に亘って密着する壁における延焼防止構造。
  2. 前記取着部は前記本体の軸方向における基端側に形成され、延焼防止部材は本体の基端より先端側が配線ボックスの周壁より外方に延出している請求項1に記載の壁における延焼防止構造。
  3. 前記取着部は、ケーブル挿通孔の周面全周に亘って密着している請求項1又は請求項2に記載の壁における延焼防止構造。
  4. 耐火性を有し、一面に開口する有底箱状に形成され、周壁にケーブル挿通孔が形成されるとともに、建築物の壁の表側に向けて開口するように該壁の裏側に配設される配線ボックスの前記周壁に取着され、前記配線ボックスの内部に引き込まれたケーブルの延焼を防止する延焼防止部材であって、
    熱膨張する膨張材である膨張黒鉛や水ガラスを含有する耐熱材料によって可撓性及びゴム弾性を有するように成形された本体を備え、該本体には、本体内へのケーブルの引込口が形成されるとともに、該本体内に挿通された前記ケーブルの周面全周に亘って密着する密着部が設けられ、さらに、本体には前記ケーブル挿通孔に挿入された状態で前記周壁に取着する取着部が設けられ、該取着部には、前記配線ボックスの周壁の内外両面に係合する一対の係合片が形成されている延焼防止部材。
  5. 前記本体は筒状に形成され、その内側に該本体を貫通しケーブルを挿通可能な貫通孔が形成されるとともに、該貫通孔によって前記引込口が形成されている請求項4に記載の延焼防止部材。
  6. 前記取着部は前記本体の軸方向における基端側に形成されるとともに、前記貫通孔は本体の軸方向に沿って基端側から先端側に向かうに従い縮径するように形成され、本体の先端側の一部に前記密着部が設けられている請求項5に記載の延焼防止部材。
  7. 前記本体の外周面には、数字又は文字を表示する表示部が形成されている請求項6に記載の延焼防止部材。
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