JP5446414B2 - 光電変換素子 - Google Patents

光電変換素子 Download PDF

Info

Publication number
JP5446414B2
JP5446414B2 JP2009099642A JP2009099642A JP5446414B2 JP 5446414 B2 JP5446414 B2 JP 5446414B2 JP 2009099642 A JP2009099642 A JP 2009099642A JP 2009099642 A JP2009099642 A JP 2009099642A JP 5446414 B2 JP5446414 B2 JP 5446414B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cytochrome
electrode
photoelectric conversion
zinc
conversion element
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009099642A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010251533A (ja
Inventor
裕一 戸木田
義夫 後藤
重輔 志村
斉爾 山田
イ ラ
大介 山口
大輔 伊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sony Corp filed Critical Sony Corp
Priority to JP2009099642A priority Critical patent/JP5446414B2/ja
Priority to US12/756,555 priority patent/US8178872B2/en
Priority to CN2010101481833A priority patent/CN101866755B/zh
Publication of JP2010251533A publication Critical patent/JP2010251533A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5446414B2 publication Critical patent/JP5446414B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K10/00Organic devices specially adapted for rectifying, amplifying, oscillating or switching; Organic capacitors or resistors having a potential-jump barrier or a surface barrier
    • H10K10/701Organic molecular electronic devices
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B82NANOTECHNOLOGY
    • B82YSPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
    • B82Y10/00Nanotechnology for information processing, storage or transmission, e.g. quantum computing or single electron logic
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K85/00Organic materials used in the body or electrodes of devices covered by this subclass
    • H10K85/761Biomolecules or bio-macromolecules, e.g. proteins, chlorophyl, lipids or enzymes
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K30/00Organic devices sensitive to infrared radiation, light, electromagnetic radiation of shorter wavelength or corpuscular radiation
    • H10K30/451Organic devices sensitive to infrared radiation, light, electromagnetic radiation of shorter wavelength or corpuscular radiation comprising a metal-semiconductor-metal [m-s-m] structure

Description

この発明は分子素子、撮像素子、光センサーおよび電子機器に関する。より詳細には、この発明は、例えば、亜鉛置換シトクロムcなどの電子伝達タンパク質を用いた分子素子ならびにこの分子素子を用いた撮像素子、光センサーおよび電子機器に関する。
撮像素子は、より高精細でより高感度のものを目指して開発が進められており、高精細な画像を再現するために画素のサイズの縮小が図られている。しかしながら、従来のCCDやCMOSセンサーなどでは、画素のサイズが小さくなると、1画素中に蓄えることができる電荷の量が少なくなり、感度が下がってしまう。この画素のサイズの縮小と感度の確保とはトレードオフの関係にあり、CCDやCMOSセンサーの技術の延長線上では、いずれ限界が来ることが示唆されている。その主な原因は、CCDやCMOSセンサーでは、1光子で1電子(1電荷)しか発生させることができないことや、画素のサイズをμm2 程度以下に縮小することが困難であることなどである。
一方、タンパク質は半導体素子に代わる機能素子として期待されている。半導体素子の微細化は数十nmのサイズが限界とされる中、タンパク質は1〜10nmというはるかに小さいサイズで高度な機能を発揮する。このタンパク質を用いた光電変換素子として、亜鉛置換シトクロムc(馬心筋シトクロムcのヘムの中心金属の鉄を亜鉛に置換したもの)を金電極に固定化したタンパク質固定化電極を用いたものが本発明者らにより提案されており、このタンパク質固定化電極から光電流が得られることが示されている(特許文献1参照。)。亜鉛置換シトクロムcのサイズは2nm程度であるから、この亜鉛置換シトクロムcを用いた光電変換素子により画素を形成することにより、画素のサイズを極めて小さくすることができる。
また、電極上にバクテリオロドプシンのような感光性色素タンパク質の配向膜を担持してなる光電変換機能を有する受光単位を有し、かつその感光性色素タンパク質の感光波長が異なる受光単位の組み合わせを複数有するカラー画像受光素子が提案されている(特許文献2、3参照。)。
さらに、最近、本発明者らにより、光励起された亜鉛置換シトクロムcにおける分子内電子移動のメカニズムが理論的および実験的に解明され、このメカニズムを用いた分子素子などが提案されている(非特許文献1および特許文献4参照。)。
特開2007−220445号公報 特開平3−237769号公報 特開平3−252530号公報 特開2009−21501号公報
Tokita,Y.;Shimura,J.;Nakajima,H.;Goto,Y.;Watanabe.Y. J.Am.Chem.Soc.2008,130,5302-5310 Fee,J.A.and 13 others, Protein Sci. 9, 2074 (2000) Muresanu,L.and 13 others, J.Biol.Chem. 281, 14503 (2006) Bernad,S.and 3 others, Eur.Biophys.J. 36, 1039 (2007) Vanderkooi, J.M. and 2 others, Eur. J. Biochem. 64, 381-387(1976) Robert K. and 2 others, Isolation and modification of natural porphyrins, in "The Porphyrins, vol.I"(Dolphin D. ed.), pp. 289-334, Academicpress, New York, 1978. Fuhrhop J.H., Irreversible reactions on the porphyrin periphery (excluding oxidations reductions, and photochemical reactions), in "The Porphyrins, vol.II"(Dolphin D ed.) pp. 131-156, Academic Press, New York, 1978. McDonagh A.F., Bile pigments: bilatrienes and 5,15-biladienes, in "The Porphyrins, vol.VI"(Dolphin D ed.) pp. 294-472, Academic Press, NewYork, 1979. Jackson AH., Azaporphyrins, in "The Porphyrins, vol.I"(Dolphin D ed.), pp. 365-387, Academic Press, New York, 1978. Gouterman M., Optical spectra and electronic structure ofporphyrins and related rings, in "The Porphyrinis, vol.III"(Dolphin D ed.), pp.1-156, Academic Press, New York, 1978. Gouterman M., Optical spectra and electronic structure ofporphyrins and related rings, in "The Porphyrinis, vol.III"(Dolphin D ed.), pp.11-30, Academic Press, New York, 1978. Sano S., Reconstitution of hemoproteins, in "The Porphyrins, vol. VII"(Dolphin D. ed.), pp. 391-396, Academic Press, New York, 1979. [平成20年7月15日検索]、インターネット〈URL:http://www.wako-chem.co.jp/siyaku/info/gene/article/EvrogenSeries.htm 〉 [平成20年7月15日検索]、インターネット〈URL:http://clontech.takara-bio.co.jp/product/families/gfp/lc_table2.shtml〉 [平成20年7月15日検索]、インターネット〈URL:http://clontech.takara-bio.co.jp/product/catalog/200708 _12.shtml〉
しかしながら、特許文献1〜4で提案された光電変換素子、カラー画像受光素子、分子素子などで用いられている亜鉛置換シトクロムcやバクテリオロドプシンなどは生体外では不安定であるため、これらの光電変換素子、カラー画像受光素子、分子素子などは長期安定性に欠けるという問題がある。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、画素のサイズを極めて小さくすることができるとともに、1光子で多電子を発生させることができることにより高精細かつ高感度でしかも長期安定利用可能な、タンパク質を用いた撮像素子および光センサーを提供することである。
この発明が解決しようとする他の課題は、上記の撮像素子および光センサーに用いて好適な、光増幅機能を有し、しかも長期安定利用可能な、タンパク質を用いた分子素子を提供することである。
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、上記の分子素子を用いた電子機器を提供することである。
上記課題および他の課題は、添付図面を参照した本明細書の記述から明らかとなるであろう。
本発明者らの検討によれば、非特許文献1および特許文献4で提案した亜鉛置換シトクロムcなどの光電変換機能を有する電子伝達タンパク質を用いた分子素子は、1光子で多電子を発生させることができ、言い換えれば100%を超える量子収率を有する。これはこの分子素子が光増幅機能を有することを意味する。すなわち、非特許文献1および特許文献4に記載されているように、亜鉛置換シトクロムcでは、ある分子軌道に対し、電子移動の速度kETが最大の分子軌道との間での遷移に伴いこの亜鉛置換シトクロムc内で電子移動が起きる。この場合、分子軌道の組み合わせによってはkETは1010〜1011sec-1程度となる。一方、エネルギーが低い分子軌道からエネルギーが高い分子軌道に光励起された電子がエネルギーが低い分子軌道に遷移する速度は108 sec-1程度である。このことから、1光子の入射に対して(1010〜1011)/108 =102 〜103 個の電子が移動し得ることが分かる。言い換えれば、この分子素子では102 〜103 の光増幅率を得ることができる。
また、この分子素子は電子伝達タンパク質を用いたものであるため、サイズを1〜10nmと極めて小さくすることができる。そこで、この光増幅機能を有する分子素子を光電変換素子として用い、これを撮像素子の画素に用いることにより、高精細かつ高感度の撮像素子を実現することが可能である。光センサーについても同様である。
一方、好熱菌Thermus thermophilus由来シトクロムc552は、馬心筋シトクロムcと同様に生体内では電子伝達体として働いている。シトクロムc552は、馬心筋シトクロムcに比べて非常に高い熱安定性を有することが知られている(非特許文献2参照。)。例えば、一般的なタンパク質の変性中点は50〜60℃、馬心筋シトクロムcの変性中点は85℃であるのに対し、シトクロムc552の変性温度は一般的な水溶液中(温度の上限は100℃)では計測不能であることから、少なくとも100℃以上と高い。また、グアニジン塩酸塩(変性剤)4.2M存在下におけるシトクロムc552の変性中点は60〜70℃と報告されている。
シトクロムc552は上述のように高い熱安定性を有することによりデバイス材料として適している。シトクロムc552と馬心筋シトクロムcとは、構成アミノ酸、立体構造は似ているが、電子伝達を行う活性中心ヘムポケットの環境が異なる。具体的には、馬心筋シトクロムcでは正電荷を持つリジン残基が分子の全体に分散しているが、シトクロムc552ではリジン残基数こそ馬心筋シトクロムcと同程度であるものの、リジン残基はヘムポケットの周りには配置されていない。シトクロムc552の生体内レドックスパートナーとの複合体構造から、この複合体形成は疎水性相互作用がメインであることが報告されている(非特許文献3参照。)。したがって、シトクロムc552をその電子伝達能を保持したまま電極へ固定化するには、その特異な条件検索が必要である。
馬心筋シトクロムcを電極に固定化する方法としては、単分子膜(HS(CH2 10COO- 、1−カルボキシ−10−デカンチオール)を用いる方法が知られている。そこで、シトクロムc552の固定化にこの固定化法を用いることが考えられる。しかしながら、馬心筋シトクロムcの固定化法に用いられている単分子膜を用いてシトクロムc552を電極に固定化する方法では、これまで、シトクロムc552の酸化還元電流は得られていない。
シトクロムc552を銀電極に固定化し、このタンパク質固定化電極を用いてタンパク質由来の酸化還元電流を得ることに成功したとの報告がある(非特許文献4参照。)。しかしながら、このタンパク質固定化電極を用いて得られたサイクリックボルタモグラムでは酸化波と還元波との間のピーク分離が著しいことから、タンパク質の配向制御に問題がある。また、電極素材としての銀は、通常環境の利用においても容易に腐食、酸化が起こり得る。すなわち、銀電極は、長期安定利用には向かないため、銀電極の代わりに、化学的に安定な電極を利用する必要がある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行う中で、全く偶然に、化学的に安定な金電極に対してシトクロムc552をその電子伝達能を損なうことなく固定化することができることを見出した。同様に、このシトクロムc552のヘムの中心金属の鉄を亜鉛などの他の金属に置換した金属置換シトクロムc552もその電子伝達能を損なうことなく金電極に対して固定化することができる。そこで、この固定化法を上記の分子素子に適用することにより、熱安定性の向上を図ることができる。
この発明は上記の知見に基づいて鋭意検討を行った結果、案出されたものである。
すなわち、この発明は、
金電極と、
上記金電極に固定化されたシトクロムc552、その誘導体または変異体と、
上記シトクロムc552、その誘導体または変異体と結合した電子伝達タンパク質とを有し、
上記電子伝達タンパク質の分子軌道間の電子の遷移を利用してこの電子伝達タンパク質内で電子またはホールあるいはその両方を移動させる分子素子である。
この分子素子は、電子伝達タンパク質として光電変換機能を有するもの、すなわち蛍光タンパク質を用いることにより、光電変換素子として用いることができる。
また、この発明は、
金電極と、
上記金電極に固定化されたシトクロムc552、その誘導体または変異体と、
上記シトクロムc552、その誘導体または変異体と結合した電子伝達タンパク質とを有し、
上記電子伝達タンパク質の分子軌道間の電子の遷移を利用してこの電子伝達タンパク質内で電子またはホールあるいはその両方を移動させる分子素子を有する撮像素子である。
ここで、分子素子はこの撮像素子の画素を構成する。
また、この発明は、
金電極と、
上記金電極に固定化されたシトクロムc552、その誘導体または変異体と、
上記シトクロムc552、その誘導体または変異体と結合した電子伝達タンパク質とを有し、
上記電子伝達タンパク質の分子軌道間の電子の遷移を利用してこの電子伝達タンパク質内で電子またはホールあるいはその両方を移動させる分子素子を有する光センサーである。
ここで、分子素子はこの光センサーのセンサー部を構成する。
また、この発明は、
金電極と、
上記金電極に固定化されたシトクロムc552、その誘導体または変異体と、
上記シトクロムc552、その誘導体または変異体と結合した電子伝達タンパク質とを有し、
上記電子伝達タンパク質の分子軌道間の電子の遷移を利用してこの電子伝達タンパク質内で電子またはホールあるいはその両方を移動させる分子素子を有する電子機器である。
以上の各発明において、電子の遷移に関与する分子軌道は、遷移の結果、電子伝達タンパク質内のある位置から、この位置から離れた他の位置に電子またはホールあるいはその両方が移動するものである限り、基本的にはどのような分子軌道であってもよい。この分子軌道は、具体的には、例えば、電子伝達タンパク質の第1のアミノ酸残基に局在化する第1の分子軌道および電子伝達タンパク質の第2のアミノ酸残基に局在化し、かつ第1の分子軌道に対して単位時間当たりの遷移確率が最大の第2の分子軌道であり、この場合、第1のアミノ酸残基と第2のアミノ酸残基との間を電子またはホールあるいはその両方が移動する。このとき、第1のアミノ酸残基および第2のアミノ酸残基が電子またはホールの移動の始点および終点を構成する。典型的には、第1の分子軌道および第2の分子軌道の一方に光励起により電子またはホールを発生させるが、他の手法、例えば電場を印加することによって電子またはホールを発生させるようにしてもよい。また、この分子軌道は、例えば、電子伝達タンパク質のあるアミノ酸残基に局在化する分子軌道および他のアミノ酸残基に局在化し、かつ前者の分子軌道に対して単位時間当たりの遷移確率が最大の分子軌道であり、この場合、前者のアミノ酸残基と後者のアミノ酸残基との間を電子またはホールあるいはその両方が移動する。
上記の各発明においては、好適には、シトクロムc552、その誘導体またはその変異体は、その疎水性部分を金電極側に向けて固定化される。典型的には、シトクロムc552、その誘導体またはその変異体と金電極とは自己組織化単分子膜を介して結合される。ここで、シトクロムc552の誘導体は、シトクロムc552の骨格のアミノ酸残基、またはヘムが化学修飾されたもの、シトクロムc552の変異体は、シトクロムc552の骨格のアミノ酸残基の一部が他のアミノ酸残基に置換されたものである。
上記の各発明において、電子伝達タンパク質は、一般的には金属を含む電子伝達タンパク質である。この金属は、好適には、d軌道以上の高エネルギーの軌道に電子を有する遷移金属(例えば、亜鉛や鉄など)である。この電子伝達タンパク質は、鉄−硫黄タンパク質類(例えば、ルブレドキシン、二鉄フェレドキシン、三鉄フェレドキシン、四鉄フェレドキシンなど)、ブルー銅タンパク質類(例えば、プラストシアニン、アズリン、シュードアズリン、プランタシアニン、ステラシアニン、アミシアニンなど)、シトクロム類(例えば、シトクロムc、亜鉛置換シトクロムc、シトクロムc552のヘムの中心金属の鉄を亜鉛などの他の金属で置換した金属置換シトクロムc552、修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552、シトクロムb、シトクロムb5、シトクロムc1、シトクロムa、シトクロムa3、シトクロムf、シトクロムb6など)であるが、これらに限定されるものではない。例えば、これらの電子伝達タンパク質の誘導体(骨格のアミノ酸残基が化学修飾されたもの)またはその変異体(骨格のアミノ酸残基の一部が他のアミノ酸残基に置換されたもの)である。
また、この発明は、
金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552を有し、
上記金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552の分子軌道間の電子の遷移を利用してこの金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552内で電子またはホールあるいはその両方を移動させる分子素子である。
また、この発明は、
金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552を有し、
上記金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552の分子軌道間の電子の遷移を利用してこの金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552内で電子またはホールあるいはその両方を移動させる分子素子を有する撮像素子である。
また、この発明は、
金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552を有し、
上記金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552の分子軌道間の電子の遷移を利用してこの金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552内で電子またはホールあるいはその両方を移動させる分子素子を有する光センサーである。
また、この発明は、
金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552を有し、
上記金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552の分子軌道間の電子の遷移を利用してこの金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552内で電子またはホールあるいはその両方を移動させる分子素子を有する電子機器である。
金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体または修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552を用いる上記の各発明において、金属置換シトクロムc552、その誘導体もしくは変異体あるいは修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552を固定化する電極の材料としては、最も好適には金電極が用いられるが、その他の材料を用いることも可能である。具体的には、無機材料としては、例えば、白金、銀などの金属のほか、ITO(インジウム−スズ複合酸化物)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ネサガラス(SnO2 )などの金属酸化物などを用いることができる。また、有機材料としては、例えば、各種の導電性高分子や、テトラチアフルバレン誘導体(TTF、TMTSF、BEDT−TTFなど)を含む電荷移動錯体(例えば、TTF−TCNQなど)などを用いることができる。導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンスルフィドなどを用いることができる。
以上の各発明において、分子素子、撮像素子、光センサーなどの使用時には、シトクロムc552、電子伝達タンパク質、金属置換シトクロムc552、修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552などが固定化された電極に加えて対極が設けられる。この対極は、この電極に対向するように設けられる。
上述のように構成されたこの発明においては、シトクロムc552、金属置換シトクロムc552、修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552などは、亜鉛置換シトクロムcやバクテリオロドプシンなどに比べて高い熱的安定性を有する。また、これらのシトクロムc552、金属置換シトクロムc552、修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552などのサイズは1〜10nmと極めて小さい。また、これらの金属置換シトクロムc552、修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552などを用いた分子素子は光増幅機能を有する。加えて、亜鉛置換シトクロムc552や修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552などにより、赤色光、緑色光または青色光を吸収する光電変換素子を得ることができる。また、金属置換シトクロムc552や修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552などにより、所望の波長の光を吸収する光電変換素子を得ることができる。
この発明によれば、サイズが極めて小さく、光増幅機能を有し、しかも長期安定利用可能な、タンパク質を用いた分子素子を得ることができる。また、高精細かつ高感度でしかも長期安定利用可能な、タンパク質を用いた撮像素子および光センサーを得ることができる。そして、これらの優れた分子素子、撮像素子、光センサーなどを用いることにより高性能の電子機器を得ることができる。
この発明の第1の実施の形態による光電変換素子を示す略線図である。 この発明の第1の実施の形態による光電変換素子において用いられるシトクロムc552の構造を示す略線図である。 この発明の第1の実施の形態による光電変換素子において用いられるシトクロムc552の構造を示す略線図である。 馬心筋シトクロムcの構造を示す略線図である。 馬心筋シトクロムcの構造を示す略線図である。 この発明の第1の実施の形態による光電変換素子において用いられるシトクロムc552の構造の詳細を示す略線図である。 この発明の第1の実施の形態による光電変換素子において用いられるシトクロムc552の構造の詳細を示す略線図である。 この発明の第1の実施の形態による光電変換素子において用いられる電子伝達タンパク質の一例としての亜鉛置換シトクロムcの構造を示す略線図である。 この発明の第1の実施の形態による光電変換素子において用いられる自己組織化単分子膜の構造を示す略線図である。 この発明の第1の実施の形態による光電変換素子の使用形態の第1または第2の例を示す略線図である。 この発明の第1の実施の形態による光電変換素子の使用形態の第3の例を示す略線図である。 シトクロムc552固定化電極を用いて行ったサイクリックボルタンメトリーの結果を示す略線図である。 シトクロムc552固定化電極を用いて行ったサイクリックボルタンメトリーの結果を示す略線図である。 シトクロムc552固定化電極を室温でタンパク質溶液中に保存したときの電流値の経日変化を示す略線図である。 シトクロムc552固定化電極を用いて行ったサイクリックボルタンメトリーの結果を示す略線図である。 シトクロムc552固定化電極を用いて行ったサイクリックボルタンメトリーの結果を示す略線図である。 シトクロムc552溶液中のKCl濃度を変えて作製したシトクロムc552固定化電極を用いて行ったカソーディック電流の総電荷量の測定結果を示す略線図である。 自己組織化単分子膜の形成に用いるHS(CH3 10CH2 OHの含有量を変えて作製したシトクロムc552固定化電極を用いて行ったサイクリックボルタンメトリーの結果を示す略線図である。 自己組織化単分子膜の形成に用いるHS(CH3 10CH2 OHの含有量を変えて作製したシトクロムc552固定化電極を用いて行ったサイクリックボルタンメトリーの結果を示す略線図である。 自己組織化単分子膜の形成に用いる原料中のHS(CH3 10CH2 OHの含有量を変えて作製したシトクロムc552固定化電極を用いて行ったサイクリックボルタンメトリーにより得られたサイクリックボルタモグラムにおけるピークにおける電流値をHS(CH3 10CH2 OHの含有量に対してプロットした略線図である。 自己組織化単分子膜の形成に用いる疎水性チオールおよび親水性チオールの長さを変えて作製したシトクロムc552固定化電極を用いて行ったサイクリックボルタンメトリーの結果を示す略線図である。 この発明の第2の実施の形態による光電変換素子を示す略線図である。 亜鉛置換シトクロムc552の円二色性スペクトルの測定結果を示す略線図である。 各種のシトクロムc552の吸収スペクトルの測定結果を示す略線図である。 亜鉛置換シトクロムcの吸収スペクトルおよび亜鉛置換シトクロムcの発色団の亜鉛ポルフィリンの構造を示す略線図である。 亜鉛置換シトクロムc552の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルの測定結果を示す略線図である。 亜鉛置換シトクロムc552および亜鉛置換シトクロムcの量子収率の測定結果を示す略線図である。 亜鉛置換シトクロムc552および亜鉛置換シトクロムcの光分解を説明するための略線図である。 亜鉛置換シトクロムc552および亜鉛置換シトクロムcの光分解反応の二次反応式のフィッティングの一例を示す略線図である。 亜鉛置換シトクロムc552の光分解反応の除酸素および除ラジカルによる抑制効果を説明するための略線図である。 亜鉛置換シトクロムc552固定化金ドロップ電極の光電流アクションスペクトルの測定結果を示す略線図である。 この発明の第3の実施の形態による光電変換素子を示す略線図である。 修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552の合成方法を示す略線図である。 プロトポルフィリンを示す略線図である。 2,4−ジアセチルドイトロポルフィリンを示す略線図である。 ジホルミルドイトロポルフィリンを示す略線図である。 メソテトラクロロオクタエチルポルフィリンを示す略線図である。 メソテトラクロロオクタエチルポルフィリンの吸収スペクトルの測定結果を示す略線図である。 メソテトラクロロポルフィリンを示す略線図である。 プロトポルフィリンをα位で開環し、酸素を付加させたビリルビンを示す略線図である。 ビリルビンの亜鉛滴定スペクトルの変化の測定結果を示す略線図である。 テトラアザポルフィリンを示す略線図である。 テトラアザポルフィリンの吸収スペクトルの測定結果を示す略線図である。 2、4位にビニル基、6、7位にプロピオン酸基を付加したテトラアザポルフィリンを示す略線図である。 フリーベースオクタエチルポルフィリンおよびバナジルオクタエチルポルフィリンの吸収スペクトルを示す略線図である。 ニッケルオクタエチルポルフィリンおよび亜鉛オクタエチルポルフィリンの吸収スペクトルを示す略線図である。 マグネシウムエチオポルフィリン−Iおよびコバルトオクタエチルポルフィリンの吸収スペクトルを示す略線図である。 銅オクタエチルポルフィリンおよびパラジウムオクタエチルポルフィリンの吸収スペクトルを示す略線図である。 オクタエチルポルフィリンを示す略線図である。 エチオポルフィリンを示す略線図である。 この発明の第4の実施の形態によるカラー撮像素子を示す略線図である。 この発明の第5の実施の形態によるカラー撮像素子を示す略線図である。 この発明の第7の実施の形態による光センサーを示す回路図である。 この発明の第7の実施の形態による光センサーの構造例を示す平面図である。 この発明の第7の実施の形態による光センサーの構造例を示す断面図である。 この発明の第7の実施の形態による光センサーの構造例を示す断面図である。 この発明の第8の実施の形態によるカラーCCD撮像素子を示す断面図である。 この発明の第9の実施の形態によるインバータ回路を示す回路図である。 この発明の第9の実施の形態によるインバータ回路の構造例を示す回路図である。 この発明の第10の実施の形態による光センサーを示す略線図である。 この発明の第10の実施の形態による光センサーを示す断面図である。 この発明の第10の実施の形態による光センサーを示す回路図である。
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(光電変換素子)
2.第2の実施の形態(青色光の光電変換素子)
3.第3の実施の形態(緑色光または赤色光の光電変換素子)
4.第4の実施の形態(カラー撮像素子)
5.第5の実施の形態(カラー撮像素子)
6.第6の実施の形態(光センサー)
7.第7の実施の形態(光センサー)
8.第8の実施の形態(カラーCCD撮像素子)
9.第9の実施の形態(インバータ回路)
10.第10の実施の形態(光センサー)
〈1.第1の実施の形態〉
[光電変換素子]
図1に第1の実施の形態による光電変換素子を示す。
図1に示すように、この光電変換素子においては、金基板11上に自己組織化単分子膜12を介してシトクロムc552 13が固定化されている。このシトクロムc552
13は、その疎水性部分13aを金基板11側に向けて固定化されている。シトクロムc552 13の内部にあるヘム13bには、中心金属として鉄(Fe)が配位している。このシトクロムc552 13に光電変換機能を有する電子伝達タンパク質14が固定化されている。この電子伝達タンパク質14としては、例えば、既に挙げたものを用いることができる。この電子伝達タンパク質14の第1のアミノ酸残基14aがシトクロムc552 13のアミノ酸残基と接続されている。また、この電子伝達タンパク質14の第2のアミノ酸残基14bが必要に応じてリンカーなどを介して対極15と接続されている。電子伝達タンパク質14の第1のアミノ酸残基14aには第1の分子軌道が局在化し、第2のアミノ酸残基14bには第2の分子軌道が局在化し、第2の分子軌道は第1の分子軌道に対して単位時間当たりの遷移確率が最大である。この場合、光励起により第1の分子軌道と第2の分子軌道との間を電子が遷移する結果、第1のアミノ酸残基14aと第2のアミノ酸残基14bとの間を電子またはホールが移動する。これらの詳細については、特許文献4に記載されている。
図2Aにシトクロムc552の構造を模式的に示す。図2Aはシトクロムc552のヘムとその軸配位子ヒスチジン(His)、メチオニン(Met)とリジン残基(正電荷アミノ酸)とを棒モデルで示したものである。このシトクロムc552の軸配位子ヒスチジン(His)が右に来る向きを正面としたとき、図2Aはヘムの正面図である。図2Bに図2Aに示すシトクロムc552の表面電荷分布図を示す。図3Aにシトクロムc552をヘム背面側から見た図を示す。図3Bに図3Aに示すシトクロムc552の表面電荷分布図を示す。
比較のために、図4Aに馬心筋シトクロムcのヘム正面側から見た図を、図4Bに図4Aに示す馬心筋シトクロムcの表面電荷分布図を、図5Aに馬心筋シトクロムcのヘム背面側から見た図を、図5Bに図5Aに示す馬心筋シトクロムcの表面電荷分布図を示す。
図4Bおよび図5Bに示すように、馬心筋シトクロムcでは正電荷が分子全体に散在しているのに対し、図2Bおよび図3Bに示すように、シトクロムc552では正電荷はヘム背面に集中している。また、シトクロムc552のヘム正面は疎水性残基と中性極性残基とが占める。シトクロムc552 13の疎水性部分13aはこのヘム正面の部分を指す。
図6に、金電極11上に自己組織化単分子膜12を介して固定化されたシトクロムc552 13を模式的に示す。図6においては、シトクロムc552 13の軸配位子ヒスチジンは手前側にあり、また、リジン残基を棒モデルで示した。
図7は、金電極11上に自己組織化単分子膜12を介して固定化されたシトクロムc552 13を金電極11側から見た図を示し、軸配位子ヒスチジンは右側にある(ヘム正面)。図7においては、アミノ酸側鎖を棒モデルで示した。
図8AおよびBに、電子伝達タンパク質14の一例として亜鉛置換シトクロムcのリボンモデル図を示す。図8Aはアミノ酸側鎖も示したもの、図8Bはアミノ酸側鎖を省略したものである。亜鉛置換シトクロムcのアミノ酸残基数は104である。この亜鉛置換シトクロムcの中心にあるポルフィリンには中心金属として亜鉛が配位しており、光吸収や光誘起電子移動反応の中心となるものである。この亜鉛置換シトクロムcのうちのポルフィリンを取り巻くタンパク質部分は絶縁体である。亜鉛置換シトクロムcは可視光領域にソーレー帯(Soret band)およびQ帯と呼ばれる特徴的な吸収ピークを有し、可視光により光励起することが可能である。
自己組織化単分子膜12は三つの部分から構成される。第1の部分は、この自己組織化単分子膜12を固定化しようとする金電極11の表面の原子と反応する結合性官能基(例えば、チオール基(−SH)など)である。第2の部分は通常はアルキル鎖であり、自己組織化単分子膜12の二次元的な規則構造は主としてこのアルキル鎖間のファン・デル・ワールス力によって決まる。そのため、一般に、アルキル鎖の炭素数がある程度以上多い場合に、安定・高密度・高配向な膜が形成される。第3の部分は末端基であり、この末端基を機能性官能基とすることにより固体表面の機能化が可能となる。
自己組織化単分子膜12は、例えば、疎水性チオールおよび親水性チオールを用いて形成されたものであり、これらの疎水性チオールおよび親水性チオールの割合により、亜鉛置換シトクロムc552 13と金電極11との間の結合のしやすさが変わる。親水性チオールの親水基は、例えば、−OH、−NH2 、SO3 - 、OSO3 - 、COO- 、NH4 + などである。これらの疎水性チオールおよび親水性チオールは必要に応じて選択される。
これらの疎水性チオールおよび親水性チオールの組み合わせの好適な例を挙げると、疎水性チオールがHS(CH2 n CH3 (n=5,8,10)、親水性チオールがHS(CH2 n CH2 OH(n=5,8,10)である。具体的には、例えば、疎水性チオールが1−ウンデカンチオール(HS(CH2 10CH3 )、親水性チオールが1−ヒドロキシ−11−ウンデカンチオール(HS(CH2 10CH2 OH)である。疎水性チオールおよび親水性チオールの他の組み合わせの例としては、疎水性チオールがHS(CH2 m CH3 、親水性チオールがHS(CH2 n CH2 OH(ただし、m<n、mは例えば5以上、nは例えば10以下)の例も挙げられる。具体的には、例えば、疎水性チオールがHS(CH2 9 CH3 、親水性チオールがHS(CH2 10CH2 OHの例である。
図9に疎水性チオールおよび親水性チオールを用いて形成された自己組織化単分子膜12の構造を模式的に示す。図9に示すように、疎水性チオール12aおよび親水性チオール12bのチオール基(−SH)側が金電極11の表面に結合する。また、疎水性チオール12aの疎水基および親水性チオール12bの親水基(図9において○で示す)側が、シトクロムc552 13の疎水性部分13a(図1参照)と結合する。
図1においては一分子のシトクロムc552 13が示されているが、金電極11に固定化するシトクロムc552 13の数は必要に応じて決められる、一般的には複数のシトクロムc552 13が単分子膜として固定される。そして、それぞれのシトクロムc552 13に電子伝達タンパク質14が結合する。また、図1においては金電極11は平坦な表面形状を有するように描かれているが、金電極11の表面形状は任意であり、例えば凹面、凸面、凹凸面などのいずれであってよく、いずれの形状の面にも容易にシトクロムc552 13を固定化することが可能である。
対極15の材料としては、例えば、金、白金、銀などの金属、ITO(インジウム−スズ複合酸化物)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ネサガラス(SnO2 ガラス)などの金属酸化物あるいはガラスなどに代表される無機材料を用いることができる。この対極15の材料としては、導電性高分子(ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンスルフィドなど)、テトラチアフルバレン誘導体(TTF、TMTSF、BEDT−TTFなど)を含む電荷移動錯体(例えば、TTF−TCNQなど)などを用いることもできる。金電極11にシトクロムc552 13を介して固定化された電子伝達タンパク質14の全部またはほぼ全部に光が照射されるようにするために、この対極15は、好適には、可視光に対して透明に構成される。
この光電変換素子は、電子伝達タンパク質14の光電変換機能および電子伝達機能を損なわない限り、溶液(緩衝液)中、ドライな環境中のいずれにおいても動作させることが可能である。この光電変換素子をドライな環境中で動作させる場合には、典型的には、例えば、電子伝達タンパク質14を吸着しない固体電解質、具体的には例えば寒天やポリアクリルアミドゲルなどの湿潤な固体電解質が、タンパク質固定化電極と対極15との間に挟み込まれ、好適にはこの固体電解質の周囲にこの固体電解質の乾燥を防ぐための封止壁が設けられる。これらの場合においては、タンパク質固定化電極と対極15との自然電極電位の差に基づいた極性で、電子伝達タンパク質14からなる受光部で光を受光したときに光電流を得ることができる。
[光電変換素子の使用形態]
図10はこの光電変換素子の使用形態の第1の例を示す。
図10に示すように、この第1の例では、タンパク質固定化電極と対極15とが互いに対向して設けられる。これらのタンパク質固定化電極および対極15は、容器16中に入れられた緩衝液17中に浸漬される。緩衝液17は、電子伝達タンパク質14の機能を損なわないものが用いられる。
この光電変換素子により光電変換を行うには、バイアス電源により、タンパク質固定化電極と対極15との間にタンパク質固定化電極側が高電位となるようにバイアス電圧を印加した状態で、タンパク質固定化電極の電子伝達タンパク質14に光を照射する。この光は、電子伝達タンパク質14の光励起が可能な波長成分を有する光である。この場合、バイアス電圧、照射する光の強度および照射する光の波長のうちの少なくとも一つを調節することによって、素子内部を流れる光電流の大きさおよび/または極性を変化させることができる。光電流は端子18a、18bより外部に取り出される。
次に、この光電変換素子の使用形態の第2の例について説明する。
この第2の例では、第1の例のようにバイアス電源を用いてバイアス電圧を印加するのではなく、タンパク質固定化電極および対極15が有する自然電極電位の差をバイアス電圧として用いる。第2の例の上記以外のことは第1の例と同様である。
図11はこの光電変換素子の使用形態の第3の例を示す。第1および第2の例による光電変換素子が溶液中で動作させるものであるのに対し、この光電変換素子はドライな環境中で動作させることができるものである。
図11に示すように、この光電変換素子においては、タンパク質固定化電極と対極15との間に固体電解質19が挟み込まれている。さらに、この固体電解質19の周囲を取り巻くように、固体電解質19の乾燥を防ぐための封止壁20が設けられている。固体電解質19としては、電子伝達タンパク質14の機能を損なわないものが用いられ、具体的には、タンパク質を吸着しない寒天やポリアクリルアミドゲルなどが用いられる。この光電変換素子により光電変換を行うには、タンパク質固定化電極および対極15が有する自然電極電位の差をバイアス電圧として用い、タンパク質固定化電極の電子伝達タンパク質14に光を照射する。この光は、電子伝達タンパク質14の光励起が可能な波長成分を有する光である。この場合、タンパク質固定化電極および対極15が有する自然電極電位の差、照射する光の強度および照射する光の波長のうちの少なくとも一つを調節することによって、素子内部を流れる光電流の大きさおよび/または極性を変化させることができる。第3の例の上記以外のことは第1の例と同様である。
[光電変換素子の製造方法]
この光電変換素子の製造方法の一例について説明する。
まず、金電極11を上記の疎水性チオールおよび親水性チオールを所定の割合で混ぜた溶液(溶媒は例えばエタノール)に浸漬することによって、図1に示すように、自己組織化単分子膜12を金基板11の表面に形成する。
次に、こうして自己組織化単分子膜12を形成した金電極11をシトクロムc552
13と緩衝液と必要に応じて塩化カリウム(KCl)などの塩とを含む溶液に浸漬する。これによって、自己組織化単分子膜12上にシトクロムc552 13をその疎水性部分13aが金電極11側を向くように吸着固定する。こうしてシトクロムc552固定化電極が形成される。
次に、電子伝達タンパク質14の第1のアミノ酸残基14aをシトクロムc552 13のアミノ酸残基に接続するとともに、電子伝達タンパク質14の第2のアミノ酸残基14bを必要に応じてリンカーなどを介して対極15に接続する。
ドライな環境で使用する光電変換素子では、図11に示すように、タンパク質固定化電極と対極15との間に固体電解質19を挟み込む。
以上のようにして、図10または図11に示すものと同様な構成を有する光電変換素子を製造する。
[光電変換素子の動作]
この光電変換素子の電子伝達タンパク質14に光が入射すると、光励起により電子が発生してこの電子伝達タンパク質14を通り抜け、さらにシトクロムc552 13を通り抜けて自己組織化単分子膜12を介して金電極11に電子が移動する。そして、金電極11と対極15とから外部に光電流が取り出される。
[実施例1]
この光電変換素子の実施例について説明する。
疎水性チオールとしての1−ウンデカンチオール(HS(CH2 10CH3 )と親水性チオールとしての1−ヒドロキシ−11−ウンデカンチオール(HS(CH2 10CH2 OH)とを25:75の割合で混ぜた0.1mMエタノール溶液を調製した。この溶液に清浄な金ドロップ電極または金平板電極を浸漬し、室温で一昼夜放置する。こうして、自己組織化単分子膜が金ドロップ電極または金平板電極の表面に形成される。
これらの電極を超純水でリンスした後、50μMシトクロムc552溶液(10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.6)、50mM KCl)に浸漬し、室温で30分以上インキュベートする。こうして、自己組織化単分子膜を介して金ドロップ電極または金平板電極の表面にシトクロムc552が固定化されたシトクロムc552固定化電極が作製される。
この後、シトクロムc552に電子伝達タンパク質14としてシトクロムcを結合する。
自己組織化単分子膜を介して金ドロップ電極または金平板電極の表面にシトクロムc552が固定化されたシトクロムc552固定化電極を用いてサイクリックボルタンメトリーを行った。その結果を図12および図13に示す。図12および図13において、Iは電流(A)、Eは参照電極(Ag/AgCl)に対する電位(V)である(以下同様)。図12および図13に示すように、ピーク分離のない典型的な吸着型のサイクリックボルタモグラムを描いていることが分かる。ここで、図12に示すサイクリックボルタモグラムは、電位掃引速度を10〜100mV/sの範囲で10mV/sずつ変えて測定した結果を示す。また、図13に示すサイクリックボルタモグラムは、電位掃引速度を100〜1000mV/sの範囲で100mV/sずつ変えて測定した結果を示す。
図12および図13から分かるように、このシトクロムc552固定化電極では、電位掃引速度が10〜1000mV/sの範囲ではピーク分離が生じていない。これは、このシトクロムc552固定化電極においては、シトクロムc552のヘムポケットが金電極に対して最適に配向していることを示している。
図14はこのシトクロムc552固定化電極を室温でタンパク質溶液中に保存したときの電流値(アノーディック電流Ipaおよびカソーディック電流Ica)の経日変化を示す。図14に示すように、このシトクロムc552固定化電極は、タンパク質溶液中において室温で1カ月間保存した後でも、同じ酸化還元電流値が得られる。これに対し、馬心筋シトクロムcを使った同様の実験では、時間が経つごとに電流値が減少し、サイクリックボルタモグラムにおけるピーク分離も起こる。
次に、シトクロムc552固定化電極におけるシトクロムc552のヘムの向きが、実施例1によるシトクロムc552固定化電極におけるシトクロムc552のヘムの向きと反対、すなわち金電極と反対側を向いている場合の比較データについて説明する。より具体的には、末端の異なる自己組織化単分子膜を用いてシトクロムc552を金電極に固定化した場合、すなわち正しくない配向でシトクロムc552を固定化した場合のデータについて説明する。
具体的には、末端(−R)の異なる炭素数10のチオール(HS(CH2 10R)を用いてシトクロムc552を金電極に固定化したシトクロムc552固定化電極を用いてサイクリックボルタンメトリーを行った。得られたサイクリックボルタモグラムを図15に示す。ただし、緩衝液としては10mMリン酸−Na溶液(pH7.0)を用い、電位掃引速度は50mV/sとした。
図15より、末端(−R)が−COO- である場合に、タンパク質らしい酸化還元のピークが見られるが、酸化還元サイクルを繰り返すと、いずれ消滅する。このことから、シトクロムc552を正しくない配向で金電極に固定化した場合には、シトクロムc552の機能を保持することができないことが分かる。
次に、上記のシトクロムc552固定化電極を作製する際に用いるシトクロムc552溶液中のKCl濃度を変化させてサイクリックボルタンメトリーを行った結果について説明する。
測定に際しては、緩衝液として10mMリン酸−Na溶液(pH7.0)を用い、電位掃引速度は50mV/sとした。シトクロムc552固定化電極としては、上記と同様にHS(CH2 10CH3 およびHS(CH3 10CH2 OHを用いて形成した自己組織化単分子膜を介して金ドロップ電極にシトクロムc552を固定化したものを用いた。ただし、金ドロップ電極の直径は2.5mmである。
得られたサイクリックボルタモグラムを図16に示す。ただし、シトクロムc552溶液中の緩衝液は10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.6)を用いた。シトクロムc552を固定化することができるシトクロムc552溶液中のKCl濃度の範囲は0〜200mMであるので、この範囲でKCl濃度を変化させてサイクリックボルタンメトリーを行った。
図17は、図16に示すサイクリックボルタモグラムのカソーディック電流(下向きのピーク)を積分し、総電荷量を求め、KCl濃度に対してプロットしたグラフを示す。図17より、KCl濃度は10〜30mMが最適濃度であることが分かる。この最適濃度の場合、シトクロムc552溶液中にKClが存在しない場合、すなわちKCl濃度が0mMである場合、あるいは、KCl濃度が50mM以上の場合に比べ、シトクロムc552の固定化量は約1.5倍になる。
次に、自己組織化単分子膜を形成する際に用いる、HS(CH2 10CH3 とHS(CH2 10CH2 OHとを混ぜたエタノール溶液中のHS(CH2 10CH3 とHS(CH2 10CH2 OHとの比率を変えて自己組織化単分子膜を形成した。そして、この自己組織化単分子膜を介してシトクロムc552を金電極に固定化したシトクロムc552固定化電極のサイクリックボルタンメトリーを行った。ただし、測定に際しては、緩衝液として10mMリン酸−Na溶液(pH7.0)を用い、電位掃引速度は50mV/sとした。
得られたサイクリックボルタモグラムを図18に示す。図18の脚注の数値は([HS(CH2 10CH3 ]/[HS(CH2 10CH2 OH])を示し、例えば、(20/80)はHS(CH2 10CH3 が20%、HS(CH2 10CH2 OHが80%であることを意味する。
図18に示す結果を踏まえて、HS(CH2 10CH3 とHS(CH2 10CH2 OHとの全体におけるHS(CH2 10CH2 OHの含有量を60〜95%の範囲で5%刻みで細かく変化させて調べた。その結果を図19に示す。
図18および図19に示す結果の、酸化還元ピークにおける電流値をHS(CH2 10CH2 OHの含有量に対してプロットしたグラフを図20に示す。図20より、HS(CH2 10CH2 OHの含有量が60〜90%の範囲でシトクロムc552の固定化を良好に行うことが可能であることが分かる。詳細は省略するが、別途行った実験により、疎水性チオールがHS(CH2 n CH3 (n=5,8,10)、親水性チオールがHS(CH2 n CH2 OH(n=5,8,10)である場合全般について、HS(CH2 n CH2 OHの含有量が60〜90%の範囲でシトクロムc552の固定化を良好に行うことが可能であることが確認されている。
次に、自己組織化単分子膜を形成する際に用いる疎水性チオールおよび親水性チオールの長さを変化させてサイクリックボルタンメトリーを行った結果について説明する。具体的には、疎水性チオールとして末端がメチル基で炭素数が5または10のHS(CH2 5 CH3 、HS(CH2 10CH3 、親水性チオールとして末端がヒドロキシメチル基で炭素数が5または10のHS(CH2 10CH2 OH、HS(CH2 5 CH2 OHを用い、これらを組み合わせて自己組織化単分子膜を作製した。そして、この自己組織化単分子膜を介して金電極にシトクロムc552を固定化した。こうして作製されたシトクロムc552固定化電極を用いてサイクリックボルタンメトリーを行った。得られたサイクリックボルタモグラムを図21に示す。
図21に示す曲線(1)、(2)、(3)、(7)において、タンパク質由来のピークが0V付近に見られる。これは、自己組織化単分子膜を形成する際に用いる疎水性チオールおよび親水性チオールにおける疎水性チオールのメチル基と親水性チオールのヒドロキシル基とのバランス、すなわち、自己組織化単分子膜の表面における疎水基と親水基との分布のバランスが保たれれば、疎水性チオールおよび親水性チオールの炭素数を変えてもシトクロムc552を同様な配向で固定化することができることを示している。親水性チオールについては、親水基の炭素数は5の場合より10の場合の方がより良好な結果が得られている。
以上のように、この第1の実施の形態によれば、化学的に安定な金電極11上に高い安定性を有するシトクロムc552 13をその疎水性部分13aが金電極11側を向くように自己組織化単分子膜12を介して固定化するようにしている。このため、シトクロムc552 13をその電子伝達能を保持したまま金電極11に固定化することができる。そして、このシトクロムc552 13に光電変換機能を有する電子伝達タンパク質14を結合していることにより、光電変換素子を実現することができる。この光電変換素子の吸収波長は電子伝達タンパク質14の選択により選択することができる。例えば、電子伝達タンパク質14として亜鉛置換シトクロムcを用いることにより緑色光の光電変換素子を得ることができ、電子伝達タンパク質14として亜鉛置換シトクロムc552を用いることにより青色光の光電変換素子を得ることができる。また、電子伝達タンパク質14として亜鉛置換シトクロムc552や修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552などの熱的安定性を有するものを用いることにより、長期安定利用可能な光電変換素子を実現することができる。さらに、この光電変換素子は光増幅機能を有するため、高感度の光電変換素子を得ることができる。また、シトクロムc552 13および電子伝達タンパク質14のサイズは1〜10nm程度と極めて小さいことから、この光電変換素子のサイズを極めて小さくすることができる。以上により、極微小かつ高感度で長期安定利用可能な光電変換素子を実現することができる。
この光電変換素子は、例えば撮像素子あるいは光センサーに用いることができ、必要に応じて光電流の増幅回路などを併せて用いることができる。光センサーは光信号の検出などの各種の用途に用いることができ、人工網膜などに応用することも可能である。
この光電変換素子は、光電変換を利用する各種の装置や機器などに用いることができ、具体的には、例えば、受光部を有する電子機器などに用いることができる。このような電子機器は、基本的にはどのようなものであってもよく、携帯型のものと据え置き型のものとの双方を含むが、具体例を挙げると、デジタルカメラ、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ)などである。
〈2.第2の実施の形態〉
[青色光の光電変換素子]
図22に第2の実施の形態による青色光の光電変換素子を示す。
図22に示すように、この光電変換素子においては、基板21上に亜鉛置換シトクロムc552 22が固定化されている。この亜鉛置換シトクロムc552 22の第1のアミノ酸残基22aが必要に応じてリンカーなどを介して基板21と接続されている。また、この亜鉛置換シトクロムc552 22の第2のアミノ酸残基22bが必要に応じてリンカーなどを介して対極23と接続されている。亜鉛置換シトクロムc552 22の第1のアミノ酸残基22aには第1の分子軌道が局在化し、第2のアミノ酸残基22bには第2の分子軌道が局在化し、第2の分子軌道は第1の分子軌道に対して単位時間当たりの遷移確率が最大である。この場合、光励起により第1の分子軌道と第2の分子軌道との間を電子が遷移する結果、第1のアミノ酸残基22aと第2のアミノ酸残基22bとの間を電子またはホールが移動する。これらの詳細については、特許文献4に記載されている。電極21としては、金電極などの既に挙げたものを用いることができ、必要に応じて選ばれる。対極23も同様である。
亜鉛置換シトクロムc552 22は、シトクロムc552のヘムの中心金属の鉄を亜鉛に置換したものであり、シトクロムc552と同様に高い熱安定性を有しており、しかも青色光を吸収する蛍光タンパク質である。
[光電変換素子の動作]
この光電変換素子の亜鉛置換シトクロムc552 22に光が入射すると、光励起により電子および/またはホールが発生してこの亜鉛置換シトクロムc552 22を通り抜け、電極21に移動する。そして、電極21と対極23とから外部に光電流が取り出される。
上記以外のことは第1の実施の形態と同様である。
[実施例2]
a.亜鉛置換シトクロムc552の合成方法
好熱菌Thermus thermophilusのシトクロムc552遺伝子を含むベクターを組み込んだ大腸菌を培養、破砕、精製した組み換えシトクロム552(中心金属は鉄)を出発物質として用いる。このシトクロムc552の凍結乾燥粉末50〜100mgに70%フッ酸/ピリジンを6mL加え、室温で10分インキュベートすることにより、シトクロムc552から中心金属の鉄を抜く。次に、これに50mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)を9mL加えて、反応停止後、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー(カラム体積:150mL、樹脂:Sephadex G−50、展開溶媒:50mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.0)により、中心金属の抜けたメタルフリーシトクロムc552(MFc552)を得る。
こうして得られたMFc552溶液をできるだけ濃縮し、これに氷酢酸を加えて、pH2.5(±0.05)とする。この溶液に無水酢酸亜鉛粉末30mgを加えて、遮光下、50℃で2〜3時間インキュベートする。30分毎に吸収スペクトルを測定し、タンパク質の波長280nmの吸収と亜鉛ポルフィリン由来の波長420nmの吸収との強度の比が一定になるまでインキュベーションを続ける。
これ以降の操作は全て遮光下で行う。飽和二リン酸一水素ナトリウム溶液を加えてpHを中性(6.0<)にした後、70℃で5〜10分インキュベートする。得られた沈殿および濃縮液を、少量の7.2Mグアニジン塩酸塩に溶かす。これを10倍容量の10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に少しずつ滴下していく。濃縮と10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)への緩衝液交換とを行った後、陽イオン交換カラムクロマトグラフィー(溶出は10〜150mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)の直線濃度勾配)により単量体の画分を回収する。こうして、亜鉛置換シトクロムc552(Znc552)が合成される。
b.亜鉛置換シトクロムc552の諸性質
上記の要領で合成した亜鉛置換シトクロムc552はネイティブ(鉄型)シトクロムc552と同じタンパク質の折れ畳みをしていることを円二色性スペクトルで確認した(図23)。ただし、この円二色性スペクトルの測定においては、感度100mdeg、波長掃引速度100nm/min、応答時間2秒、帯域幅2.0nm、インテグレート:5、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を用いた。
亜鉛置換シトクロムc552およびシトクロムc552の吸収スペクトルを測定した結果を図24に示す。比較のために、馬心筋シトクロムcのヘムの中心金属の鉄を亜鉛に置換した亜鉛置換シトクロムc(Znhhc)の吸収スペクトルを測定した結果を図25Aに示す(非特許文献5参照。)。図25Bは亜鉛置換シトクロムc(Znhhc)の発色団である亜鉛ポルフィリンの構造を示す。図25Bに示すように、プロトポルフィリンIXの中心に亜鉛が配位しており、また、ポルフィリンのビニル基とシトクロムタンパク質のシステイン残基とがチオエーテル結合している。
図24および図25Aから分かるように、亜鉛置換シトクロムc552の吸収スペクトルは、波長422nm、549nm、583nmに吸収極大を持ち、馬心筋シトクロムcから合成した亜鉛置換シトクロムc(Znhhc)とほぼ同じ形をしている。亜鉛置換シトクロムc552のそれぞれの吸収極大における吸光係数εは亜鉛置換シトクロムcに比べて高い(表1)。
Figure 0005446414
図26Aは亜鉛置換シトクロムc552の吸収スペクトル、図26Bは波長424nmの光で励起したときの亜鉛置換シトクロムc552の蛍光スペクトルを示す。図26AおよびBにおいては、それぞれの曲線に付けた番号が同濃度における吸収・蛍光スペクトルに対応する。図26Bに示すように、亜鉛置換シトクロムc552の蛍光スペクトルの極大波長は590nm、641nmであり、これは亜鉛置換シトクロムcと同じである。
異なる濃度の亜鉛置換シトクロムc552を用い、吸収・蛍光スペクトルを測定し、波長424nmの吸光度に対して波長568〜668nmにおける積分蛍光強度をプロットしたグラフを図27に示す。亜鉛置換シトクロムcでも同様の操作を行う。得られた直線の傾きから相対量子収率を求める。その結果、亜鉛置換シトクロムcにおける直線の傾きを相対量子収率φ=1としたとき、亜鉛置換シトクロムc552のφは0.86であり、亜鉛置換シトクロムcとほぼ同じであることが分かった。
亜鉛置換シトクロムcは、光を照射することにより速やかに分解することが知られている。そこで、亜鉛置換シトクロムc552、亜鉛置換シトクロムcの両サンプルに対し、最も影響を受けやすい吸収極大の波長420nmの青色光の照射による光分解速度を求めた。約3μMのタンパク質溶液1mLを石英製の分光光度計用キュベットに入れ、波長420nmの青色光(1630μW)を照射し、30分毎に吸収スペクトルを測定した。図28AおよびBにそれぞれ、亜鉛置換シトクロムc552および亜鉛置換シトクロムcの吸収スペクトルの測定結果を示す。図28AおよびBより、亜鉛置換シトクロムcの吸収スペクトルは変化が激しいが、亜鉛置換シトクロムc552の吸収スペクトルは変化が少なく光照射に対して安定であることが分かる。
波長422nmにおける吸光度からミリモル吸光係数(表1)を用いて濃度(C)を算出し、この濃度Cの逆数1/Cを時間に対してプロットした。その結果を図29に示す。図29より、得られた直線の傾きから求めた光分解速度定数kは33(±1.5)M-1-1であり、これは亜鉛置換シトクロムc(k=96±7.1M-1-1)の1/3の値であった。この結果は、亜鉛置換シトクロムc552は、光照射に対して亜鉛置換シトクロムcの3倍分解が遅い、すなわち3倍安定であることを示している。この光分解反応は、亜鉛置換シトクロムc552または亜鉛置換シトクロムcと酸素との二次反応である。
図30は、亜鉛置換シトクロムc552に対する光照射を空気中、アルゴン中、酸素中、空気にアスコルビン酸を添加した混合ガス中で行ったときの亜鉛置換シトクロムc552の光分解速度を測定した結果を示す。アルゴン中の光照射は、具体的には、キュベットを密閉し、純アルゴンを15分通気して酸素を除去した状態で行った。また、酸素中の光照射は、具体的には、キュベットを密閉し、純酸素を15分通気した状態で行った。また、空気雰囲気下、アスコルビン酸中の光照射は、キュベットを開放し、ラジカルトラップ剤として10mMのアスコルビン酸(pH7.0)を加えた状態で行った。図30より、除酸素雰囲気中で光照射を行った場合の光分解速度定数kは7.1M-1-1、除ラジカル雰囲気中で光照射を行った場合の光分解速度定数kは8.1M-1-1であり、空気中あるいは酸素中で光照射を行った場合に比べて直線の傾きは緩やかである。すなわち、亜鉛置換シトクロムc552の光分解反応は、雰囲気を除酸素状態(アルゴン置換)としたり、アスコルビン酸を添加したりすることで抑えることができることが分かる。
以上のことから明らかなように、亜鉛置換シトクロムc552は、亜鉛置換シトクロムcと同じ光学的性質(光子の吸収、発光)を有し、しかもその化学的・物理的安定性が高いという青色光の光電変換素子用の優れた蛍光タンパク質である。
c.亜鉛置換シトクロムc552固定化電極の光電流
亜鉛置換シトクロムc552が青色光の光電変換機能を有することを確認するために、亜鉛置換シトクロムc552を金電極に固定化した亜鉛置換シトクロムc552固定化電極を作製し、光電流の測定を行った。
この亜鉛置換シトクロムc552固定化電極は次のようにして作製した。
疎水性チオールとしての1−ウンデカンチオール(HS(CH2 10CH3 )と親水性チオールとしての1−ヒドロキシ−11−ウンデカンチオール(HS(CH2 10CH2 OH)とを25:75の割合で混ぜた0.1mMエタノール溶液を調製した。この溶液に清浄な金ドロップ電極を浸漬し、室温で一昼夜放置する。こうして、自己組織化単分子膜が金ドロップ電極の表面に形成される。
この電極を超純水でリンスした後、50μM亜鉛置換シトクロムc552溶液(10mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.6)、50mM KCl)に浸漬し、室温で30分以上インキュベートする。こうして、自己組織化単分子膜を介して金ドロップ電極の表面に亜鉛置換シトクロムc552が固定化された亜鉛置換シトクロムc552固定化電極が作製される。
こうして作製された亜鉛置換シトクロムc552固定化電極の表面に満遍なく単色光を照射することができる光学実験系を整えた。そして、亜鉛置換シトクロムc552固定化電極を作用極、銀塩化銀電極を参照極、白金線を対極としてポテンショスタットに接続し、これらの電極を、0.25mMフェロシアン化カリウムを含む10mMリン酸バッファー水溶液(pH7.0)に浸した。光源としてはXeランプ(150W)を用いた。
こうして作製した亜鉛置換シトクロムc552固定化電極に参照極としての銀塩化銀電極に対してバイアス電圧を印加した状態で、波長を1nmずつ掃引しながら光を照射し、発生した光電流を測定した。バイアス電圧は240.0mV、160.0mV、80.0mV、0.0mV、−80.0mV、−160.0mV、−240.0mVに変えた。得られた光電流アクションスペクトルを図31に示す。図31において、横軸は波長、縦軸は電流値Ip である。図31より、波長420nm付近で最も大きい光電流が得られることが分かる。これより、亜鉛置換シトクロムc552が青色光の光電変換用の蛍光タンパク質であることが分かる。また、図31より、亜鉛置換シトクロムc552固定化電極に印加するバイアス電圧を調節することによって、光電流の極性(流れる方向)を制御することが可能であることが分かる。これは、バイアス電圧を調節しても正方向の光電流しか得られない亜鉛置換シトクロムc固定化電極とは異なる、亜鉛置換シトクロムc552固定化電極の特筆すべき特徴である。
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
〈3.第3の実施の形態〉
[緑色光または赤色光の光電変換素子]
図32に第3の実施の形態による光電変換素子を示す。
図32に示すように、この光電変換素子においては、基板31上に修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 32が固定化されている。この修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 32の第1のアミノ酸残基32aが必要に応じてリンカーなどを介して基板31と接続されている。また、この修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 32の第2のアミノ酸残基32bが対極33と接続されている。修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 32の第1のアミノ酸残基32aには第1の分子軌道が局在化し、第2のアミノ酸残基32bには第2の分子軌道が局在化し、第2の分子軌道は第1の分子軌道に対して単位時間当たりの遷移確率が最大である。この場合、光励起により第1の分子軌道と第2の分子軌道との間を電子が遷移する結果、第1のアミノ酸残基32aと第2のアミノ酸残基32bとの間を電子またはホールが移動する。これらの詳細については、特許文献4に記載されている。電極31としては、金電極などの既に挙げたものを用いることができ、必要に応じて選ばれる。対極33も同様である。
修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 32は、シトクロムc552のポルフィリンを修飾したもので、ポルフィリンの内部に中心金属として亜鉛が配位しており、シトクロムc552と同様に高い熱安定性を有しており、しかも緑色光または赤色光を吸収する蛍光タンパク質である。
[光電変換素子の動作]
この光電変換素子の修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 32に光が入射すると、光励起により電子が発生してこの修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 32を通り抜け、電極31に移動する。そして、電極31と対極33とから外部に光電流が取り出される。
上記以外のことは第1の実施の形態と同様である。
緑色光または赤色光を吸収することができる修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 32は、次のようにして合成することができる。すなわち、シトクロムc552のポルフィリンを修飾することで吸収波長を変えることができる。そこで、まず、シトクロムc552のポルフィリンを修飾することで吸収波長を赤色または青色の波長域に設定する。そして、こうして修飾した合成ポルフィリンとシトクロムc552とを再構成させた後、そのポルフィリンの中心金属として蛍光性を示す金属である亜鉛を導入する。この修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 32の合成方法の概要を図33に示す。
以下、この修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 32の合成方法について詳細に説明する。
[ポルフィリンの修飾による吸収波長制御]
一般に、ポルフィリン骨格を修飾することで、その吸収波長を大きく変えることができる。このポルフィリン骨格の修飾による吸収波長の制御の方法について説明する。
(1)プロトポルフィリンの吸収特性
シトクロムc552に含まれているヘムから金属を抜いたプロトポルフィリン(図34)の吸収極大(吸収極大波長λmax )は表2に示す通りである(非特許文献6参照。)。この吸収極大、特にSoret 帯を長波長側にシフトさせることにより、緑色光、赤色光の変換用の蛍光ポルフィリン前駆体を調製する。
Figure 0005446414
図34中、プロトポルフィリンの2、4位のビニル基はシトクロムc552と共有結合させる際に必要であり、6、7位のプロピオン酸基はシトクロムc552の電子伝達機能のために必要である。したがって、プロトポルフィリンの1、3、5、8位のメチル基や、α、β、γ、δ位の炭素を修飾し、あるいは置換することになる。
プロトポルフィリンを出発物質として使う場合や、中には全合成しなければならない場合もあり得る。
(2)緑色光の光電変換用のポルフィリン
(a)アセチルポルフィリン
電子吸引性の高いアセチル基をプロトポルフィリンの1、3、5、8位に付加させることで、吸収波長を長波長側にシフトさせることが可能である。実例として、2,4−ジアセチルドイトロポルフィリン(図35)の吸収特性を表3に示す(非特許文献6参照。)。表3より、Soret 帯がプロトポルフィリンに比べて約20nmシフトしていることが分かる。
Figure 0005446414
(b)ホルミルポルフィリン
電子吸引性の高いホルミル基をプロトポルフィリンの1、3、5、8位に付加させることで、吸収波長をシフトさせることができる。実例として、ジホルミルドイトロポルフィリン(図36)の吸収特性を表4に示す(非特許文献6参照。)。表4より、Soret 帯がプロトポルフィリンに比べて約30nmシフトしていることが分かる。
Figure 0005446414
(c)ハロゲン化ポルフィリン
プロトポルフィリンのメソ位(α、β、γ、δ位)の炭素にハロゲンを付加させることで、吸収波長をシフトさせることができる。実例として、メソテトラクロロオクタエチルポルフィリン(図37)の吸収スペクトルを図38に示す(非特許文献7参照。)。図38に示すように、波長480nm付近に強い吸収を持たせることができる。図39に示した2、4位にビニル基、6、7位にプロピオン酸基を付加したメソテトラクロロポルフィリンを合成すれば、シトクロムc552と結合することができる。
(d)ビリルビン
プロトポルフィリンをα位で開環し、酸素を付加させたビリルビンを図40に示す。図41はビリルビンの亜鉛滴定スペクトル変化を示し、曲線Aはビリルビンのスペクトル、曲線Iは亜鉛を2等量加えた後のスペクトルである(非特許文献8参照。)。図41の曲線Aに示すように、ビリルビンは450nmに強い吸収波長を持つ。また、曲線Iに示すように、ビリルビンに亜鉛を配位させると、その吸収極大の波長は530nmにシフトする。
(3)赤色光の光電変換用のポルフィリン
赤色光の光電変換用のポルフィリンとして、アザポルフィリン(非特許文献9参照。)を挙げることができる。
プロトポルフィリンのメソ位(α、β、γ、δ)の炭素を窒素にすることで、400nm付近のSoret 帯を消失させ、Q帯付近に強い吸収を持たせることができる。実例としてテトラアザポルフィリン(図42)の吸収スペクトルを図43に示す(非特許文献10参照。)。図43に示すように、テトラアザポルフィリンの中心に金属を配位させた場合、波長580nm付近に強い吸収帯を持たせることができる。図44に示した2、4位にビニル基、6、7位にプロピオン酸基を付加したテトラアザポルフィリンを合成することにより、シトクロムc552と結合することができる。
[ポルフィリンの中心金属置換による吸収波長の細かい制御]
上述の亜鉛以外にも、ポルフィリンに導入することで蛍光性を示す金属が知られているこれらの金属を表5および表6に示す(非特許文献11参照。)。
Figure 0005446414
Figure 0005446414
図45〜図48にこれらの金属のオクタエチルポルフィリン−金属錯体およびエチオポルフィリン−金属錯体の気相吸収スペクトルを示す。図49および図50にそれぞれオクタエチルポルフィリンおよびエチオポルフィリンの構造を示す。プロトポルフィリンおよび上述のようにして調製した修飾ポルフィリンに表5および表6に示す金属を導入することにより、図45〜図48に示すように吸収波長を細かく変えた蛍光性ポルフィリンを調製することができる。
[アポシトクロムc552の調製]
修飾ポルフィリンをシトクロムc552に再構成させるには、あらかじめシトクロムc552からヘムを抜いておく必要がある。ここでは、ヘムを持たないシトクロムc552(アポシトクロムc552)の合成について説明する。
牛シトクロムcを用いたアポシトクロムc調製法が報告されている(非特許文献12参照。)。好熱菌シトクロムc552はアミノ酸配列が牛シトクロムcと異なるが、ヘムと結合するための特殊なアミノ酸配列(−Cys−X−X−Cys−His−)は保存されているため、アポシトクロムc552の合成にこの報告された方法を適用することができる。この方法の詳細を説明すると次の通りである。
シトクロムc552粉末70〜80mgを超純水に溶かし、2mLの氷酢酸と15mLの0.8%硫酸銀とを加える。遮光下、42℃、4 時間インキュベートした後、0℃で冷やす。そこに10倍容量のアセトン(0.05N硫酸を含む)を−20℃で加えて、タンパク質を沈殿させる。この液を遠心分離し、沈殿を回収する。回収した沈殿を少量の0.2M酢酸に溶かし、遮光下、窒素雰囲気、2〜4℃で0.2M酢酸に対して透析を行う。この時(pH5.0)、アポシトクロムc552は三量体であるが、8%シアン化ナトリウム溶液を加えてpH8.7に調製することにより二量体になる。この溶液に酢酸を加えてpH3.5にすると、単量体アポシトクロムc552が得られる。シアン化ナトリウムは、これらのタンパク質同士の凝集を解消させるだけでなく、先の脱ヘム反応で生じたシステインの硫黄と銀との結合を切断する効果もある。これにより、フリーのシステインSH基を持ったアポシトクロムc552ができる。このアポシトクロムc552はpH3.5で1時間は安定である。
[アポシトクロムc552、修飾ポルフィリン、金属の再構成]
以下の方法で、先に調製した修飾ポルフィリンを上述のようにして調製したアポシトクロムc552に結合させ、表5および表6に示す金属を導入することにより、緑色光または赤色光の光電変換用の修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552を合成する。
牛シトクロムcの再構成法、すなわち、アポ牛シトクロムcとプロトポルフィリノーゲンおよび鉄導入法が既に報告されている。この方法を用いて修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552を合成する。
まず、上述のようにして調製したアポシトクロムc552(溶媒は0.2M酢酸)に1mLの8%シアン化ナトリウム溶液を加える。これを直ちに、あらかじめナトリウムアマルガムで還元型にした修飾ポルフィリン溶液に加える。得られた溶液に酢酸を加えてpH3.5に調製し、あらかじめ除酸素しておいた超純水を加えて45mLとし、遮光、窒素通気下で30分攪拌する。この攪拌後の溶液に蟻酸を加えてpH2.9とし、3℃、45〜60分、デイライトランプを照射して自動酸化させる。この溶液を0.02M酢酸に対して透析を行う。こうして修飾ポルフィリンシトクロムc552が得られる。
亜鉛をはじめとする蛍光性金属の導入以降の操作は、実施例2と同様に行う。すなわち、その金属の酢酸塩あるいは塩化物の粉末を上述の修飾ポルフィリンシトクロムc552の溶液に加えて、タンパク質の再折り畳み、カラムによる精製を行い、修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552を得る。
以上のようにして、緑色光または赤色光の光電変換用の修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552を得ることができる。
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
〈4.第4の実施の形態〉
[カラー撮像素子]
第4の実施の形態によるカラー撮像素子においては、赤色光の光電変換素子、緑色光の光電変換素子および青色光の光電変換素子を用いる。これらの光電変換素子の少なくとも一つとして、第1の実施の形態による赤色光、緑色光または青色光の光電変換素子が用いられる。これらの光電変換素子は同一基板上に形成してもよいし、赤色光の光電変換素子、緑色光の光電変換素子および青色光の光電変換素子をそれぞれ別の基板上に形成し、これらの基板を配列することでカラー撮像素子を構成してもよい。
図51はこのカラー撮像素子の一例を示し、特に一画素の領域を示す。
図51に示すように、このカラー撮像素子においては、基板41上の一画素の領域における赤色光、緑色光および青色光の光電変換素子形成領域に、それぞれ金電極42a、42b、42cが設けられている。これらの金電極42a、42b、42cは互いに電気的に絶縁されている。基板41としては各種のものを用いることができ、必要に応じて選ばれるが、例えば、シリコン基板などの半導体基板、ガラス基板などの透明基板などを用いることができる。特に、基板41としてシリコン基板などの半導体基板を用いることにより、従来公知の半導体テクノロジーを用いてカラー撮像素子の信号処理回路や駆動回路などをこの半導体基板に容易に形成することができる。基板41として導電性基板を用いる場合には、例えば、この基板41の表面にSiO2 膜などの絶縁膜を形成し、その上に金電極42a、42b、42cを形成してもよい。
赤色光の光電変換素子の部位においては、金電極42a上に自己組織化単分子膜43aを介してシトクロムc552 44を固定化し、このシトクロムc552 44に赤色光を吸収する電子伝達タンパク質45の第1のアミノ酸残基45aを接続する。そして、この電子伝達タンパク質45の第2のアミノ酸残基45bを必要に応じてリンカーなどを介して対極46と結合する。この電子伝達タンパク質45としては、市販の蛍光タンパク質(例えば、非特許文献13〜15参照。)や修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552などを用いることができる。また、緑色光の光電変換素子の部位においては、金電極42b上に自己組織化単分子膜43bを介してシトクロムc552 47を固定化し、このシトクロムc552 47に緑色光を吸収する電子伝達タンパク質48の第1のアミノ酸残基48aを接続する。そして、この電子伝達タンパク質48の第2のアミノ酸残基48bを必要に応じてリンカーなどを介して対極46と結合する。この電子伝達タンパク質48としては、例えば市販の蛍光タンパク質や修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552などを用いることができる。また、青色光の光電変換素子の部位においては、金電極42c上に自己組織化単分子膜43cを介してシトクロムc552 49を固定化し、このシトクロムc552 49に青色光を吸収する蛍光タンパク質、例えば亜鉛置換シトクロムc552や亜鉛置換シトクロムcや市販の蛍光タンパク質などを結合する。
赤色光の光電変換素子、緑色光の光電変換素子および青色光の光電変換素子の基板41上における配置の仕方は、従来公知のCCDカラー撮像素子やMOSカラー撮像素子などと同様であり、必要に応じて決められる。
上記以外のことは第1の実施の形態と同様である。
この第4の実施の形態によれば、高精細かつ高感度で長期安定利用可能な、タンパク質を用いた新規なカラー撮像素子を実現することができる。
〈5.第5の実施の形態〉
[カラー撮像素子]
第5の実施の形態によるカラー撮像素子においては、赤色光の光電変換素子、緑色光の光電変換素子および青色光の光電変換素子を用いる。これらの光電変換素子の少なくとも一つとして、第2または第3の実施の形態による赤色光、緑色光または青色光の光電変換素子が用いられる。これらの光電変換素子は同一基板上に形成してもよいし、赤色光の光電変換素子、緑色光の光電変換素子および青色光の光電変換素子をそれぞれ別の基板上に形成し、これらの基板を配列することでカラー撮像素子を構成してもよい。
図52はこのカラー撮像素子の一例を示し、特に一画素の領域を示す。
図52に示すように、このカラー撮像素子においては、基板51上の一画素の領域における赤色光、緑色光および青色光の光電変換素子形成領域に、それぞれ電極52a、52b、52cが設けられている。これらの電極52a、52b、52cは互いに電気的に絶縁されている。基板51としては各種のものを用いることができ、必要に応じて選ばれるが、例えば、シリコン基板などの半導体基板、ガラス基板などの透明基板などを用いることができる。特に、基板51としてシリコン基板などの半導体基板を用いることにより、従来公知の半導体テクノロジーを用いてカラー撮像素子の信号処理回路や駆動回路などをこの半導体基板に容易に形成することができる。基板51として導電性基板を用いる場合には、例えば、この基板51の表面にSiO2 膜などの絶縁膜を形成し、その上に電極52a、52b、52cを形成してもよい。
赤色光の光電変換素子の部位においては、第3の実施の形態による赤色光の光電変換素子と同様に、例えば、電極52aに、赤色光を吸収する修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 53の第1のアミノ酸残基53aを必要に応じてリンカーなどを介して接続する。そして、この修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 53の第2のアミノ酸残基53bを必要に応じてリンカーなどを介して対極54と結合する。また、緑色光の光電変換素子の部位においては、第3の実施の形態による緑色光の光電変換素子と同様に、例えば、電極52bに、緑色光を吸収する修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 55の第1のアミノ酸残基55aを必要に応じてリンカーなどを介して接続する。そして、この修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552 55の第2のアミノ酸残基55bを必要に応じてリンカーなどを介して対極54と結合する。また、青色光の光電変換素子の部位においては、第2の実施の形態による青色光の光電変換素子と同様に、電極52cに、青色光を吸収する亜鉛置換シトクロムc552 56の第1のアミノ酸残基56aを必要に応じてリンカーなどを介して接続する。そして、この亜鉛置換シトクロムc552 56の第2のアミノ酸残基56bを必要に応じてリンカーなどを介して対極54と結合する。
赤色光の光電変換素子、緑色光の光電変換素子および青色光の光電変換素子の基板51上における配置の仕方は、従来公知のCCDカラー撮像素子やMOSカラー撮像素子などと同様であり、必要に応じて決められる。
上記以外のことは第1の実施の形態と同様である。
この第5の実施の形態によれば、高精細かつ高感度で長期安定利用可能な、タンパク質を用いた新規なカラー撮像素子を実現することができる。
〈6.第6の実施の形態〉
[光センサー]
第6の実施の形態による光センサーにおいては、検出しようとする光の波長に対応した吸収波長を有する電子伝達タンパク質を用いた光電変換素子が用いられる。特にこの光センサーがカラー光センサーである場合には、赤色光の光電変換素子、緑色光の光電変換素子および青色光の光電変換素子が用いられる。これらの光電変換素子としては、赤色光、緑色光または青色光を検出する場合には、第1〜第3の実施の形態による赤色光、緑色光または青色光の光電変換素子を用いることができる。あるいは、赤色光、緑色光または青色光以外の波長の光を検出する場合には、その波長に吸収波長を合わせた修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552を用いた光電変換素子を用いる。これらの光電変換素子は同一基板上に形成してもよいし、光電変換素子を複数の基板に分けて形成し、これらの基板を配列することで光センサーを構成してもよい。基板上の光電変換素子の配置の仕方は、必要に応じて決められるが、カラー光センサーでは、例えば、従来公知のCCDカラー撮像素子やMOSカラー撮像素子などと同様に配置することができる。
上記以外のことは第1の実施の形態と同様である。
この第6の実施の形態によれば、高精細かつ高感度で長期安定利用可能な、タンパク質を用いた新規な光センサーを実現することができる。
〈7.第7の実施の形態〉
[光センサー]
図53は第7の実施の形態による光センサーを示す回路図である。
図53に示すように、この光センサーは、第1〜第3の実施形態のいずれかによる光電変換素子からなるフォトダイオード71と、このフォトダイオード71の出力を増幅するための単一電子トランジスタ72とにより構成されている。単一電子トランジスタ72はドレイン側の微小トンネル接合J1 とソース側の微小トンネル接合J2 とにより構成されている。これらの微小トンネル接合J1 、J2 の容量をそれぞれC1 、C2 とする。例えば、フォトダイオード71の一方の電極は負荷抵抗RL を介して接地されており、他方の電極はフォトダイオード72をバイアスするための正電圧VPDを供給する正極電源に接続されている。一方、単一電子トランジスタ72のソースは接地されており、そのドレインは出力抵抗Rout を介して正電圧Vccを供給する正極電源に接続されている。そして、フォトダイオード71の負荷抵抗RL 側の電極と単一電子トランジスタ72のゲートとが容量Cg を介して互いに接続されている。
上述のように構成されたこの光センサーにおいては、フォトダイオード71に光が照射されて光電流が流れたときに負荷抵抗RL の両端に発生する電圧により容量Cg が充電され、この容量Cg を介して単一電子トランジスタ72のゲートにゲート電圧Vg が印加される。そして、この容量Cg に蓄積された電荷量の変化ΔQ=Cg ΔVg を測定することによりゲート電圧Vg の変化ΔVg を測定する。ここで、フォトダイオード71の出力を増幅するために用いられている単一電子トランジスタ72は、従来のトランジスタの例えば100万倍もの感度で、容量Cg に蓄積された電荷量の変化ΔQ=Cg ΔVg を測定することができることができるものである。すなわち、単一電子トランジスタ72は微小なゲート電圧Vg の変化ΔVg を測定することができるため、負荷抵抗RL の値を小さくすることができる。これによって、光センサーの大幅な高感度化および高速化を図ることができる。また、単一電子トランジスタ72側では帯電効果により熱雑音が抑制されるので、増幅回路側で発生する雑音を抑制することができる。さらに、単一電子トランジスタ72はその基本動作において一個の電子のトンネル効果しか用いないので、極めて低消費電力である。
この光センサーにおいては、上述のようにフォトダイオード71と単一電子トランジスタ72とは容量結合されている。このときの電圧利得はCg /C1 で与えられるため、微小トンネル接合J1 の容量C1 を十分に小さくしておくことにより、この光センサーの次段に接続される素子を駆動するのに十分な大きさの出力電圧Vout を容易に得ることができる。
次に、この光センサーの具体的な構造例について説明する。
この例では、単一電子トランジスタ72が金属/絶縁体接合により構成されたものであり、フォトダイオード71が第1〜第3の実施の形態のいずれかによる光電変換素子からなるものである。
図54はこの光センサーの平面図である。また、図55はこの光センサーにおけるフォトダイオード71の部分の断面図、図56はこの光センサーにおける単一電子トランジスタ72の部分の断面図である。
図54、図55および図56に示すように、この光センサーにおいては、例えば半導体基板のような基板81上に、例えばSiO2 膜、SiN膜、ポリイミド膜のような絶縁膜82が設けられている。フォトダイオード71の部分における絶縁膜82には開口82aが設けられている。そして、この開口82aの内部の基板81上に電極83が設けられ、この電極83上に、検出しようとする光の波長に対応した吸収波長を有する電子伝達タンパク質84が第1〜第3の実施の形態と同様に直接またはシトクロムc552を介して固定化され、その上に対極85が設けられている。この場合、光はこの対極85を透過して受光されるので、この対極85は電子伝達タンパク質84の光励起に用いられる光に対して透明に構成されている。電子伝達タンパク質84としては、例えば、第1〜第3の実施の形態による光電変換素子で用いられたものと同様な電子伝達タンパク質を用いることができる。
一方、単一電子トランジスタ72の部分においては、絶縁膜82上にソース電極86およびドレイン電極87が互いに対向して設けられている。そして、これらのソース電極86およびドレイン電極87のそれぞれの一端部と部分的に重なるようにゲート電極88が形成されている。ここで、少なくともこのゲート電極88が重なっている部分のソース電極86およびドレイン電極87の表面には例えば膜厚が0.数nm〜数nmの絶縁膜89が形成されている。したがって、ゲート電極88はこの絶縁膜89を介してソース電極86およびドレイン電極87のそれぞれの一端部と部分的に重なっている。この重なり部の大きさは、典型的には、数100nm×数100nm以下である。この場合、ゲート電極88とソース電極86とが絶縁膜89を介して重なった部分がそれぞれ図54および図55における微小トンネル接合J1 、J2 に対応する。これらのゲート電極88、ソース電極86およびドレイン電極87は、例えばAl、In、Nb、Au、Ptなどの金属からなる。
図示は省略するが、必要に応じて、フォトダイオード71および単一電子トランジスタ72を覆うように全面にパッシベーション膜が設けられる。
この場合、フォトダイオード71の対極85の一端部は、単一電子トランジスタ72のゲート電極88と近接している。そして、パッシベーション膜が設けられていない場合には、対極85の一端部とゲート電極88との間に空気層がはさまれた構造のキャパシタが形成され、それによってこの対極85とゲート電極88とが容量結合される。また、パッシベーション膜が設けられる場合には、対極85の一端部とゲート電極88との間にこのパッシベーション膜がはさまれた構造のキャパシタが形成され、それによってこの対極85とゲート電極88とが容量結合される。
以上のように、この第7の実施形態によれば、長期安定利用可能な、タンパク質を用いた新規な光センサーを実現することができる。また、この光センサーは、単一電子トランジスタ72によりフォトダイオード71の出力を増幅するように構成されている。このため、従来の通常のトランジスタによりフォトダイオードの出力を増幅する従来の一般的な光センサーに比べて、光センサーの大幅な高速化、高感度化および低消費電力化を図ることができる。
〈8.第8の実施の形態〉
[カラーCCD撮像素子]
次に、第8の実施の形態によるカラーCCD撮像素子について説明する。このカラーCCD撮像素子は、受光部、垂直レジスタおよび水平レジスタを有するインタライン転送方式のものである。
図57にこのカラーCCD撮像素子の受光部およびこの受光部の近傍の垂直レジスタの断面構造を示す。図57に示すように、p型シリコン基板91(あるいはn型シリコン基板に形成されたpウエル層)上にゲート絶縁膜92が形成され、このゲート絶縁膜92上に読み出しゲート電極93が形成されている。この読み出しゲート電極93の両側の部分のp型シリコン基板91中にn型層94および垂直レジスタを構成するn型層95が形成されている。n型層94上の部分のゲート絶縁膜92には開口92aが形成されている。そして、この開口92aの内部のn型層94上に金電極95が設けられ、この金電極95上に第1〜第3の実施の形態のいずれかによる光電変換素子と同様な電子伝達タンパク質96が固定化され、その上に対極97が設けられている。この光電変換素子が受光部98を構成する。この場合、光は対極97を透過して受光されるので、この対極97は電子伝達タンパク質96の光励起に用いられる光に対して透明に構成されている。このカラーCCD撮像素子の上記以外の構成(赤色光、緑色光および青色光の受光部98の配置を含む)は、従来公知のインタライン転送方式のカラーCCD撮像素子の構成と同様である。
このカラーCCD撮像素子においては、受光部98を構成する光電変換素子の対極97に対して金電極95を正の電圧にバイアスしておく。受光部98において蛍光タンパク質96に光が入射すると光励起により発生した電子がn型層94に流れ込む。次に、垂直レジスタを構成するn型層95にn型層94より高い電圧を印加した状態で読み出しゲート電極93に正電圧を印加することによりこの読み出しゲート電極93の直下のp型Si基板91にn型チャネルを形成し、このn型チャネルを通してn型層94の電子をn型層95に読み出す。この後、こうして読み出された電荷は垂直レジスタ内を転送され、さらに水平レジスタを転送され、出力端子から撮像された画像に対応する電気信号が取り出される。
この第8の実施の形態によれば、受光部98に電子伝達タンパク質96を用いた、高精細かつ高感度で長期安定利用可能な新規なカラーCCD撮像素子を実現することができる。
〈9.第9の実施の形態〉
[インバータ回路]
次に、第9の実施の形態によるインバータ回路について説明する。
このインバータ回路を図58に示す。図58に示すように、このインバータ回路においては、第1〜第4の実施形態のいずれかによる光電変換素子と同様な構成の光電変換素子101と負荷抵抗RL とが直列に接続されている。ここで、負荷抵抗RL は光電変換素子101の対極(図示せず)と接続されている。負荷抵抗RL の一端に所定の正の電源電圧VDDが印加されるとともに、電極が接地される。光電変換素子101の電子伝達タンパク質(図示せず)に信号光としてこの電子伝達タンパク質の吸収波長の光を照射すると光電変換素子101がオンして光電流が流れることにより電極(図示せず)からの出力電圧Vout はローレベルとなり、光の照射を止めると光電変換素子101がオフして光電流が流れなくなることにより電極からの出力電圧Vout はハイレベルとなる。
このインバータ回路の構造例を図59に示す。図59に示すように、この構造例においては、p型シリコン基板111(あるいはn型シリコン基板に形成されたpウエル層)中に負荷抵抗RL として用いられるn型層112が形成されている。p型シリコン基板111の表面には例えばSiO2 膜のような絶縁膜113が形成されている。この絶縁膜113には、n型層112の一端部および他端部に開口113a、113bが形成されている。開口113aの内部のn型層112上に電極114が設けられ、この金電極114上に第1〜第3の実施の形態のいずれかによる光電変換素子と同様な電子伝達タンパク質115が固定化され、その上に対極115が設けられている。これらの電極114、蛍光タンパク質115および対極116により光電変換素子117が形成されている。開口113bを通じて電極118がn型層112とオーミックコンタクトしている。このp型シリコン基板111には、必要に応じて、上記のインバータ回路に加えて、出力電圧Vout により駆動される各種の電子回路(増幅回路など)を形成することができる。
この第9の実施形態によれば、タンパク質を用いた、長期安定利用可能な新規なインバータ回路を構成することができ、このインバータ回路を用いて論理回路などの各種の回路を構成することができる。
〈10.第10の実施の形態〉
[光センサー]
図60は第10の実施の形態による光センサーを示す。
図60に示すように、この光センサーは、シリコン基板121上に第1〜第4の実施の形態による光電変換素子と同様な光電変換素子からなる受光部122が二次元マトリクス状に設けられている。シリコン基板121は、信号処理回路や駆動回路などの光センサーに必要な回路を含む集積回路となっている。
図61に受光部122の構成の詳細を示す。図61に示すように、例えばp型のシリコン基板121上に例えばSiO2 膜のような絶縁膜123が形成されている。この絶縁膜123の上部に、所定の平面形状、例えば正方形の平面形状を有する凹部124が形成されている。この凹部124の中央部に、所定の平面形状、例えば円形の形状を有するコンタクトホール125が形成されている。凹部124の底面に電極126が形成されている。この電極126はコンタクトホール125の内部にも形成されている。電極126上に第1〜第3の実施の形態と同様にして直接またはシトクロムcを介して電子伝達タンパク質127が固定化されている。この電子伝達タンパク質127上には固体電解質層128が設けられている。そして、この固体電解質層128上に対極129が設けられている。これらの電極126、電子伝達タンパク質127、固体電解質層128および対極129により光電変換素子が形成されている。この光電変換素子により受光部122が形成されている。
p型のシリコン基板121には、ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極130、n型のソース領域131およびドレイン領域132からなるnチャネルMOSFET133が形成されている。金電極126はコンタクトホール125を通してこのnチャネルMOSFET133のドレイン領域132とコンタクトしている。また、p型のシリコン基板121には、ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極134、n型のソース領域135およびドレイン領域136からなるnチャネルMOSFET137が形成されている。対極129の一端は凹部124の外側の絶縁膜123上に延在しており、この延在した部分が、絶縁膜123に形成されたコンタクトホール138内に埋め込まれた金属139を通してこのnチャネルMOSFET137のドレイン領域136とコンタクトしている。nチャネルMOSFET133のソース領域131、nチャネルMOSFET137のゲート電極134およびソース領域135は列選択/電流検出回路140と接続されている。
図62はこの光センサーの回路構成の一例を示す。図62に示すように、シリコン基板121上に二次元マトリクス状に設けられた受光部122の選択および受光部122から得られる光電流の検出は、行選択回路141および列選択/電流検出回路140により行われる。これらの行選択回路141および列選択/電流検出回路140は、従来公知の半導体メモリと同様に構成することができる。
この第10の実施の形態によれば、受光部122に電子伝達タンパク質を用いた、高精細かつ高感度で長期安定利用可能な新規な光センサーを実現することができる。
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
また、第1〜第3の実施の形態による光電変換素子を混用してカラー撮像素子や光センサーなどを構成してもよい。
さらに、この発明による分子素子あるいはその原理を適用して、特許文献4で提案された単分子光スイッチ素子および分子ワイヤー(同文献の図36〜図38参照。)を構成してもよい。
11…金電極、12…自己組織化単分子膜、12a…疎水性チオール、12b…親水性チオール、13…シトクロムc552、13a…疎水性部分、13b…ヘム、14…電子伝達タンパク質、14a…第1のアミノ酸残基、14b…第2のアミノ酸残基、15…対極、16…容器、17…緩衝液、19…固体電解質、20…封止壁、21…電極、22…亜鉛置換シトクロムc552、22a…第1のアミノ酸残基、22b…第2のアミノ酸残基、23…対極、31…電極、32…修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552、32a…第1のアミノ酸残基、32b…第2のアミノ酸残基、33…対極、41…基板、42a、42b、42c…金電極、43a、43b、43c…自己組織化単分子膜、44、47、49…シトクロムc552、46…対極、51…基板、52a、52b、52c…電極、53、55…修飾亜鉛ポルフィリンシトクロムc552、54…対極、56…亜鉛置換シトクロムc552

Claims (7)

  1. 金電極と、
    上記金電極に固定化されたシトクロムc552、その誘導体または変異体と、
    上記シトクロムc552、その誘導体または変異体と結合した電子伝達タンパク質と、
    を含む、
    光電変換素子。
  2. 上記シトクロムc552、その誘導体または変異体はその疎水性部分を上記金電極側に向けて固定化されている
    請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 上記シトクロムc552、その誘導体またはその変異体と上記金電極とは自己組織化単分子膜を介して結合している
    請求項2に記載の光電変換素子。
  4. 上記自己組織化単分子膜は疎水性チオールおよび親水性チオールを用いて形成されたものである
    請求項3に記載の光電変換素子。
  5. 上記電子伝達タンパク質は亜鉛置換シトクロムcまたは金属置換シトクロムc552である
    請求項1に記載の光電変換素子。
  6. 前記光電変換素子は撮像素子を構成する、
    請求項1に記載の光電変換素子。
  7. 前記光電変換素子は光センサーをを構成する、
    請求項1に記載の光電変換素子。
JP2009099642A 2009-04-16 2009-04-16 光電変換素子 Expired - Fee Related JP5446414B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009099642A JP5446414B2 (ja) 2009-04-16 2009-04-16 光電変換素子
US12/756,555 US8178872B2 (en) 2009-04-16 2010-04-08 Molecular device, imaging device, photosensor, and electronic apparatus
CN2010101481833A CN101866755B (zh) 2009-04-16 2010-04-09 分子器件、成像器件、光传感器以及电子设备

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009099642A JP5446414B2 (ja) 2009-04-16 2009-04-16 光電変換素子

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010251533A JP2010251533A (ja) 2010-11-04
JP5446414B2 true JP5446414B2 (ja) 2014-03-19

Family

ID=42958426

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009099642A Expired - Fee Related JP5446414B2 (ja) 2009-04-16 2009-04-16 光電変換素子

Country Status (3)

Country Link
US (1) US8178872B2 (ja)
JP (1) JP5446414B2 (ja)
CN (1) CN101866755B (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5233650B2 (ja) * 2008-12-18 2013-07-10 ソニー株式会社 タンパク質固定化電極およびその製造方法ならびに機能素子およびその製造方法
JP5444747B2 (ja) * 2009-02-17 2014-03-19 ソニー株式会社 カラー撮像素子およびその製造方法ならびに光センサーおよびその製造方法ならびに光電変換素子およびその製造方法ならびに電子機器
JP5560727B2 (ja) * 2009-08-28 2014-07-30 ソニー株式会社 非接液全固体型タンパク質光電変換素子およびその製造方法ならびに電子機器
JP2012146566A (ja) * 2011-01-13 2012-08-02 Sony Corp タンパク質光電変換素子、光電変換システム、タンパク質光電変換素子の製造方法、光電変換システムの製造方法およびタンパク質固定化電極
JP2012186320A (ja) * 2011-03-07 2012-09-27 Sony Corp 光電変換素子、光電変換素子の製造方法、固体撮像素子、固体撮像素子の製造方法、電子機器、光伝導体、光伝導体の製造方法および多層透明光電変換素子
JP2012248684A (ja) * 2011-05-27 2012-12-13 Sony Corp タンパク質半導体の製造方法、タンパク質半導体、pn接合の製造方法、pn接合、半導体装置の製造方法、半導体装置、電子機器およびタンパク質半導体の導電型の制御方法
KR101962030B1 (ko) * 2017-09-20 2019-07-17 성균관대학교산학협력단 단백질 기반의 비휘발성 메모리 소자 및 이의 제조 방법
JP2023081627A (ja) * 2021-12-01 2023-06-13 キオクシア株式会社 有機分子メモリ

Family Cites Families (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2995070B2 (ja) * 1989-02-28 1999-12-27 サントリー株式会社 水素細菌由来チトクロームc遺伝子
JPH03237769A (ja) 1989-12-04 1991-10-23 Fuji Photo Film Co Ltd カラー画像受光素子
JP2632063B2 (ja) 1990-03-02 1997-07-16 富士写真フイルム株式会社 カラー画像受光素子
JP2778304B2 (ja) * 1991-09-17 1998-07-23 三菱電機株式会社 有機電子素子材料
JP3237769B2 (ja) 1991-12-19 2001-12-10 旭硝子株式会社 板状材の曲げ成形装置
JP3155854B2 (ja) * 1993-03-31 2001-04-16 サントリー株式会社 タンパク質分子膜
JP3252530B2 (ja) 1993-05-19 2002-02-04 松下電器産業株式会社 熱搬送装置
US20030170913A1 (en) * 1997-09-30 2003-09-11 Hitoshi Fukushima Manufacture of a microsensor device and a method for evaluating the function of a liquid by the use thereof
US6231983B1 (en) * 1998-10-27 2001-05-15 Ut-Battelle Method of orienting molecular electronic components
DE60128824T2 (de) * 2000-10-31 2008-02-07 Koji Sode Neue glucosedehydrogenase und verfahren zur herstellung der dehydrogenase
CN101163793B (zh) * 2005-02-22 2011-11-09 特拉维夫大学拉莫特有限公司 分子光电器件及其制造方法
JP5369366B2 (ja) 2006-02-16 2013-12-18 ソニー株式会社 光電変換素子、半導体装置および電子機器
JP2009021501A (ja) * 2007-07-13 2009-01-29 Sony Corp 分子素子、単分子光スイッチ素子、機能素子、分子ワイヤーおよび電子機器

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010251533A (ja) 2010-11-04
CN101866755B (zh) 2012-09-26
US8178872B2 (en) 2012-05-15
CN101866755A (zh) 2010-10-20
US20100264409A1 (en) 2010-10-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5446414B2 (ja) 光電変換素子
Trammell et al. Effect of protein orientation on electron transfer between photosynthetic reaction centers and carbon electrodes
Tu et al. Selective photoelectrochemical architectures for biosensing: design, mechanism and responsibility
Dashtian et al. L-phenylalanine-imprinted polydopamine-coated CdS/CdSe nn type II heterojunction as an ultrasensitive photoelectrochemical biosensor for the PKU monitoring
Wessendorf et al. Implementation of a hamiliton-receptor-based hydrogen-bonding motif toward a new electron donor− acceptor prototype: electron versus energy transfer
Jin et al. Electrochemical-signal-amplification strategy for an electrochemiluminescence immunoassay with g-C3N4 as tags
JP5444747B2 (ja) カラー撮像素子およびその製造方法ならびに光センサーおよびその製造方法ならびに光電変換素子およびその製造方法ならびに電子機器
Wei et al. Diverse redox-active molecules bearing identical thiol-terminated tripodal tethers for studies of molecular information storage
Claessens et al. Phthalocyanines: From outstanding electronic properties to emerging applications
US8993513B2 (en) Molecular device, single-molecular optical switching device, functional device, molecular wire, and electronic apparatus using functional device
JP5369366B2 (ja) 光電変換素子、半導体装置および電子機器
Pu et al. Investigation into the oxygen-involved electrochemiluminescence of porphyrins and its regulation by peripheral substituents/central metals
Peng et al. Photoelectrochemical sensor based on zinc phthalocyanine semiconducting polymer dots for ultrasensitive detection of dopamine
Wang et al. Formation of a photoelectrochemical Z-scheme structure with inorganic/organic hybrid materials for evaluation of receptor protein expression on the membrane of cancer cells
JP4326167B2 (ja) ポルフィリン・フラーレン連結分子により化学修飾されたito電極を用いた光エネルギー・電気エネルギー変換素子
Fendt et al. meso, meso‐Linked and Triply Fused Diporphyrins with Mixed‐Metal Ions: Synthesis and Electrochemical Investigations
JP5195693B2 (ja) タンパク質光電変換素子
Dilgin et al. Quantum dots-based photoelectrochemical sensors and biosensors
Arora et al. Organic–Inorganic Porphyrinoid Frameworks for Biomolecule Sensing
Zhang et al. Non-covalent immobilization of C60 on gold surfaces by SAMs of porphyrin derivatives
JP5673769B2 (ja) 分子素子、単分子光スイッチ素子、機能素子、分子ワイヤーおよび電子機器
Khan Singlet oxygen-based photoelectrocatalysis: from photosensitizer structures to plasmonic enhancement
US8748874B2 (en) Protein photoelectric conversion device, photoelectric conversion system, protein photoelectric conversion device manufacturing method, photoelectric conversion system manufacturing method and protein-immobilized electrode
WO2012164849A1 (ja) タンパク質半導体の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120130

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20130308

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130924

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131118

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131203

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131216

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees