以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の記載や図面にのみ限定されるものではない。
〈基本構成〉
まず、本発明の代表的な一例を示した図1を参照し、本発明の電池1のセパレータ20の基本構成について説明する。本発明の電池1のセパレータ20は、電池1のケース60の内部で正極部材10及び負極部材50の間に配置され、絶縁機能及び吸液機能を有する本体部21と、本体部21の端縁の局部及び/又は角部に1箇所又は複数箇所に設けられ、ケース60の外側に張り出して外部の電解液を吸収し、この電解液を本体部21に浸透させるための吸液部22とを備え、本体部21自体又は本体部21に対応する領域には、電解液が早く浸透する領域の液量及び遅く浸透する領域の液量を制御する導液制御構造が設けられている。この導液制御構造は、本体部21に浸透された電解液が吸液される領域及び/又は電解液が吸液されない領域を設けて構成されている。また、このセパレータ20は、1枚又は複数枚の部材によって構成されている。
なお、「1枚又は複数枚の部材によって構成されている」とは、セパレータ20を1枚の部材で構成したり、複数枚の部材でセパレータ20を構成したりすることができることを意味している。
本発明に係る電池1のセパレータ20によれば、道具を用いないで電解液を電池1に供給することができるという特有の効果を奏する。電解液を少ない時間差で電池の全体に到達させ且つ、浸透した電解液を確実に保液することができる。そのため、負極部材の全体を電解液と無駄なく反応させ、電極等の材料が持つエネルギーを有効に活用することによって、起電力が短時間で極端に低下することを防止できるという特有の効果を奏する。
こうした電池1のセパレータの使用態様は、厚さが薄いケースに収容されて使用される第1使用態様、筒状のケースの内部に横断面の形状が旋回するにつれ中心に近づく曲線状に巻かれた状態、すなわち、渦巻状に巻かれた状態で使用される第2実使用態様、及びケースの内部に折り畳まれた状態で使用される第3実使用態様に大別することができる。なお、本発明のセパレータは、1つのセルからなる電池に適用することができるだけでなく、2つ以上のセルからなる電池にも適用することができる。以下、使用態様毎に図面を参照しつつ、1つのセルからなる電池にセパレータを適用した場合を代表例として電池のセパレータの詳細を説明する。
[第1使用態様]
第1使用態様は、厚さが薄いケース60に収容されて使用される態様である。この態様でセパレータ20が使用される電池1は、例えば図1及び図2に示すように、平板状の正極部材10、平板状の負極部材50、正極部材10と負極部材50との間に配置されるセパレータ20、及び厚さが薄く形成された直方体状のケース60とを備えている。正極部材10、負極部材50及びセパレータ20は、重ね合わされた状態でケース60の内部に収容される。以下、こうした電池1の各構成を説明する。
〈ケース〉
ケース60は、図1に示すように、厚さが薄い直方体に形成されており、上面61、下面62及び4つの周壁面63,64,65,66とから構成されている。4つの周壁面63,64,65,66のうち、対向する2つの周壁面63,64は、ケース60の内外を連通させる細長い穴をそれぞれ備えている。周壁面63に設けられた2つの穴は、正極部材10及び負極部材50に設けられている端子部12,52をケース60の外側に向けて突出させるための端子穴70,71である。周壁面64に設けられている1つの穴は、セパレータ20に設けられている吸液部22をケース60の外側に突出させるための吸液穴80である。このケース60は、電池1の使用に伴って発生する反応熱によって破損や変形が生じることがないように、強度及び剛性を備えた部材によって形成されている。
〈正極部材〉
正極部材10は、図1に示すように、板厚が薄い導電性部材である。この正極部材10は、矩形状の本体部11と、本体部11の周縁をなす4辺のなかの1辺から外側に向けて突出する端子部12とから構成されている。導電性部材としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル若しくは銀又はこれらの合金を挙げることができる。なお、電解液として水を使用した場合、電池1の使用に伴って、正極では、水素ガスと水酸化物イオンとが発生する。
〈負極部材〉
負極部材50は、図1に示すように、板厚が薄い金属である。この負極部材50は、矩形状の本体部51と、本体部51の周縁をなす4辺のなかの1辺から外側に向けて突出する端子部52とから構成されている。正極部材10の端子部12と負極部材50の端子部52とは、両者が重ね合わされた際に、正極部材10の端子部12が幅方向の一端側に位置され、負極部材50の端子部52が幅方向の他端側に位置されるように、各々の本体部11,51の1辺に形成されている。また、正極部材10の端子部12と負極部材50の端子部52とを区別することができるように、各端子部12,52の幅が相互に異なるように構成されている。図1に示す電池11Aの場合は、正極部材10の端子部12の幅が負極部材50の端子部52の幅よりも広く形成されている。
こうした負極部材50は、イオン化傾向や酸化傾向が比較的大きな金属が用いられる。このような金属としては、例えば、マグネシウム、ベリリウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、マンガン若しくは亜鉛又はこれらの合金を挙げることができる。なお、電解液として水を用い且つ、負極部材50としてマグネシウムを用いた場合、電池1の使用に余伴って、負極では、マグネシウムと水とが反応してマグネシウムイオンと電子とが発生する。
〈セパレータ〉
セパレータ20は、正極部材10と負極部材50との間に配置される本体部21と、この本体部21から外側に向けて突出する吸液部22とを備えている。本体部21の輪郭は、ケース60の形状に対応した形状に形成されている。こうしたセパレータ20は、本体部21自体又は本体部21に対応する領域に、電解液が早く浸透する領域の液量及び遅く浸透する領域の液量を制御する導液制御構造が設けられている。この導液制御構造は、本体部21に浸透された電解液が吸液される領域及び/又は電解液が吸液されない領域を設けて構成されている。この導液制御構造を備えたセパレータ20は、1枚の部材だけで構成された第1実施形態と、複数枚の部材が重ね合わされて構成された第2実施形態とに大別することができる。なお、1枚の部材でセパレータを構成し、セパレータの中央に折り目を設け、この折り目でセパレータを折り返すことにより重ね合わされた状態に構成したセパレータは、便宜上、第2実施形態として説明する。
なお、こうしたセパレータ20は、本体部21を負極部材50の周縁からはみ出る大きさに形成することが好ましい。その場合、負極部材50の周縁からはみ出した本体部21の周縁の形状は、直線に形成することには限定されず、曲線、波形、折れ線及びそれらの組み合わせ、並びにその他の形状に形成することができる。本体部21が負極部材50の周縁からはみ出る大きさに形成した場合、電解液を負極部材50の隅々まで浸透させることができる。そのため、負極部材50は、電解液と反応しないで残存してしまう部位がなく、負極部材50の全体が有効に起電に利用される。また、保液部21それ自体は、電解液を吸液する部材で構成されているので、負極部材50の周縁からはみ出た本体部21の部分は、電解液を保液させておくための保液部として機能する。本体部21を負極部材50の周縁からはみ出る大きさに形成することは、第1〜第3の使用態様に用いられるすべてのセパレータに適用することができる。
(第1実施形態)
第1実施形態のセパレータは、1枚のシート状の部材により構成されたものであり、導液制御構造が、1枚のシート状の部材に設けられた形態である。第1実施形態のセパレータが備える導液制御構造は、具体的には、切り込みからなる切り込み構造と、撥水体及び/又は吸水体からなる構造とを、組み合わせた第1タイプ、切り込みからなる切り込み構造のみを設けた第2タイプ、並びに撥水体及び/又は吸水体からなる構造のみを設けた第3タイプとに分けることができる。
こうした3つのタイプの中でも第1タイプの導液制御構造を備えたが最も本発明の効果を顕著に奏すると考えられるので、以下、第1タイプの導液制御構造を備えたセパレータについて最初に説明し、切り込み構造の種々のパターンは、その後に説明する。
(第1態様のセパレータ)
第1態様のセパレータ20aは、導液制御構造が、本体部21の電解液が早く浸透する領域から電解液が遅く浸透する領域に電解液を誘導するように延びるように形成された切り込み101からなる切り込み構造100Aと、電解液が早く浸透する領域に配置された撥水体30とを有する態様である。なお、切り込み構造は、後述するように種々の態様を挙げることができる。図3〜図6に示したセパレータ20a,20b,20c,20dのように2本の切り込み101からなる切り込み構造100Aを第1態様の切り込み構造として説明する。
セパレータ20aは、図3に示すように、矩形状の本体部21と、本体部21から外側に向けて突出する吸液部22とから構成されている。吸液部22は、本体部21の周縁をなす4辺のなかの1辺の中央に局部的に設けられている。吸液部22、電池1とは別に設けられた図示しない容器等に溜められた電解液に浸漬され、電解液を吸収し、電解液を本体部21に浸透させるための部位である。本体部21は、吸液部22が吸収した電解液を、その全体に浸透させると共に保液することによって、負極部材50の全体と化学反応させるための部位である。なお、吸液部22は、先端側の幅を根本側の幅よりも広く形成するとよい。その場合、吸液部22は、先端側の幅が根本側の幅よりも広い形状であればよく、形状は限定されない。先端側の幅を根本側の幅よりも広く形成した場合、電解液を早く且つ確実に吸液させることができる。先端側の幅を根本側の幅よりも広く形成することは、図3に示したセパレータだけでなく、図4,5,7〜19に示したセパレータについても同様に適用するとことができる。
このセパレータ20aは、正極部材10と負極部材50とが短絡することを防止する絶縁性を有している。また、電解液を容易に浸透させる親水性と、浸透された電解液を保持する保液性とを備えている。なお、この形態のセパレータ20aは、セパレータ20aの全体に保液性を有していてもよく、一部にのみ保液性を有していてもよい。さらに、セパレータ20aは、電解液が浸透しても長時間にわたって劣化することがないように耐久性を備えている。こうしたセパレータ20aは、例えば、ポリプロピレン繊維、ガラス繊維、ろ紙、布、不織布又は吸水ポリマー樹脂若しくはそれらの複合材等によって形成されている。
次に、セパレータ20aが備える導液制御構造の詳細を説明する。上記のように、この導液制御構造は、本体部21の電解液が早く浸透する領域から電解液が遅く浸透する領域に電解液を誘導するように延びるように形成された切り込み101からなる第1態様の切り込み構造100Aと、電解液が早く浸透する領域に配置された撥水体30とから構成されている。
切り込み構造100Aは、2本の切り込み101を備えており、各切り込み101は、吸液部22側と、吸液部22を有しない他の端縁側とを結ぶように形成されている。切り込み101の始端S101は、吸液部22が設けられた本体部21の端縁よりもやや内側に位置している。一方、切り込み101の末端E101は、吸液部22を有しない本体部21の他の端縁よりもやや内側に位置している。より具体的には、切り込み101の末端E101は、本体部21の頂点S、Tよりも本体部21の内側の部位に位置している。なお、切り込み構造100Aの切り込み101は、この図3に示した態様や図4から図7に示した態様に限定されるものではない。
切り込み101それ自体は、セパレータ20を構成する部材が存在しないので、電解液を吸液しない領域である。本体部21に浸透された電解液は、切り込み101によって本体部21を浸透する流れが制御される。すなわち、切り込み101は、電解液が早く浸透する領域から遅く浸透する領域に電解液を誘導している。切り込みのこうした機能は、第1態様の切り込み構造100Aの切り込みだけでなく、後述する第2態様から第9態様の切り込み構造100B〜100Iも備えている。
撥水体30は、切り込み101同士の間の領域に設けられている。この撥水体30は、例えば、印刷、塗布、浸漬、貼り付け及びそれらの組み合わせ、並びにその他の方法によって本体部21に設けられる。図3に示した撥水体30は、直径の小さな円形の撥水部材31が複数集合することにより構成されている。撥水体30は、吸液部22を有する本体部21の端縁側から本体部21の中央に向かうにつれて、その輪郭が拡幅されるように形成されている。撥水体30は、本体部21の中央から吸液部22を有しない端縁側に向かうにつれ、輪郭の幅が徐々に狭くなるように形成されている。こうした撥水体30は、本体部21の電解液が早く浸透する領域から電解液が遅く浸透する領域に電解液を強制的に誘導している。
なお、撥水体30は、図3に示した撥水体30の輪郭とは異なる形状になるように設けることもできる。例えば、撥水体は、吸液部22を有する本体部21の端縁側から吸液部22を有しない本体部21の端縁側に向かうにつれ、撥水体の輪郭の幅が徐々に細くなり、先細りになるように形成してもよい。また、撥水体は、吸液部22を有する本体部21の端縁側から吸液部22を有しない本体部21の他の端縁側に向けて枝分かれして放射状に延びるように設けてもよい。すなわち、撥水体は、電解液が早く浸透する領域の面積及び輪郭に応じて、その面積及び輪郭の形状を適宜に形成すればよい。
なお、図3は、撥水体30が直径の小さな円形状の撥水部材31の集合体によって構成されたものを示している。しかし、撥水体は、特に図面に示していないが、様々な形状のドット状の複数の撥水部材の集合体により構成したり、電解液が早く浸透する領域の面積及び輪郭に対応する面積及び輪郭の1つの撥水部材により構成したりすることができる。
(第2態様のセパレータ)
第2態様のセパレータ20bは、図4に示すように、導液制御構造が、本体部21の電解液が早く浸透する領域から電解液が遅く浸透する領域に電解液を誘導するように延びるように形成された切り込み101からなる切り込み構造100Aと、電解液が早く浸透する領域に配置された撥水体30と、電解液が遅く浸透する領域に配置された吸水体40とを有する態様である。なお、第2態様のセパレータ20bは、導液制御構造が吸水体40を備えている点が第1態様のセパレータ20bとは異なるだけなので、第1態様のセパレータ20bと同一の構成ついては、同一の符号を付して簡単に説明し、異なる構成のみを詳細に説明する。
第2態様のセパレータ20bは、図4に示すように、矩形状の本体部21と、本体部21から外側に向けて突出する吸液部22とから構成されている。導液制御構造は、本体部21に設けられており、上記のように、切り込み構造100A、撥水体30及び吸水体40により構成されている。
切り込み構造100Aは、2本の切り込み101を備えており、各切り込み101は、吸液部22側と、吸液部22を有しない他の端縁側とを結ぶように形成されている。切り込み101の始端S101は、吸液部22が設けられた本体部21の端縁よりもやや内側に位置している。一方、切り込み101の末端E101は、吸液部22を有しない本体部21の他の端縁よりもやや内側に位置している。
撥水体30は、切り込み101同士の間の領域に設けられており、直径の小さな円形の撥水部材31が複数集合することにより構成されている。この撥水体30も、例えば、印刷、塗布、浸漬、貼り付け及びそれらの組み合わせ、並びにその他の方法によって本体部21に設けられる。
吸水体40は、電解液が相対的に遅く浸透する領域に配置されている。図4に示したセパレータ20bは、吸水体40の配置の一例を示したものである。具体的には、吸水体40は、セパレータ20bを構成している本体部21のうち、吸液部22を有しない3つの端縁よりも内側の領域に配置されている。図4に示した配置例のように、吸水体40を、吸液部22が存在しない本体部21の3つの端縁よりも内側の領域に配置する場合、切り込み101の末端が吸水体40の内縁40aに位置するように設けることによって、本体部21に浸透された電解液は、吸水体40が配置された領域に円滑に誘導される。
こうした吸水体40は、セパレータ20bの本体部21を構成している部材よりも吸水性が相対的に大きな部材が使用される。吸水体40としては、例えば、吸水ポリマー樹脂を挙げることができる。また、吸水体40は、セパレータ20bの本体部21に印刷、塗布、浸漬、貼り付け及びそれらの組み合わせ、並びにその他の手法によって設けることができる。
セパレータ20bに撥水体30と吸水体40とを設けた場合、撥水体30が電解液を吸収しない領域を構成し且つ、吸収体40が電解液を吸収する領域を構成するので、撥水体30及び吸水体40が導液制御構造を構成する。また、こうした導液制御構造を構成する吸水体40は、浸透された電解液をその場にとどめる保液部として機能する。このように、セパレータに設けられた撥水体及び吸水体は、この第2態様のセパレータ20bに限らず、電解液が早く浸透する領域の液量及び遅く浸透する領域の液量を制御する導液制御構造として機能する。しかも、この導液制御構造は、吸水体40がセパレータ20の本体部21自体又は本体部21に対応する領域の少なくとも一部に電解液を保液させる保液構造を兼ね備えている。
なお、図4に示したセパレータ20bは、吸水体40が吸液部22を有しない3つの端縁よりも内側の領域に配置されている場合を一例として示している。しかし、吸水体40は、電解液が相対的に遅く浸透する領域に配置されるのであれば、吸水体40を配置する領域は、図4に示したセパレータ20bの態様には限定されない。なお、電解液が遅く浸透する領域は、吸水体40が配置される面積及び領域、並びに切り込み構造の態様によって変化するので、吸水体40を配置する領域は、吸水体40が配置される面積及び領域、並びに切り込み構造の態様に応じて適宜に配置すればよい。
(第3態様のセパレータ)
第3態様のセパレータ20cは、図5に示すように、導液制御構造が、本体部21の電解液が早く浸透する領域から電解液が遅く浸透する領域に電解液を誘導するように延びるように形成された切り込み101からなる切り込み構造100Aと、電解液が遅く浸透する領域に配置された吸水体40とを有する態様である。なお、第3態様のセパレータ20cは、導液制御構造が撥水体30を備えていない点が第2態様のセパレータ20cとは異なるだけなので、第2態様のセパレータ20bと同一の構成に同一の符号を付して簡単に説明する。
第3態様のセパレータ20cは、図5に示すように、矩形状の本体部21と、本体部21から外側に向けて突出する吸液部22とから構成されている。切り込み構造100Aと吸水体40とにより構成された導液制御構造は、本体部21に設けられている。
切り込み構造100Aは、2本の切り込み101を備えており、各切り込み101は、吸液部22側と、吸液部22を有しない他の端縁側とを結ぶように形成されている。切り込み101の始端はS101、吸液部22が設けられた本体部21の端縁よりもやや内側に位置している。一方、切り込み101の末端E101は、吸液部22を有しない本体部21の他の端縁よりもやや内側に位置している。
図5は、吸水体40の配置の一例を示したものであり、吸水体40は電解液が遅く浸透する領域に配置されている。具体的には、吸水体40は、吸液部22を有しない本体部21の3つの端縁よりも内側の領域に配置されている。切り込み101の末端E101は、吸水体40の内縁40aに位置するように設けられており、本体部21に浸透された電解液が、吸水体40が配置された領域に円滑に誘導されるようになっている。なお、この吸水体40も、例えば、吸水ポリマー樹脂等のセパレータ20cの本体部21よりも吸水性が相対的に大きな部材が使用されている。また、吸水体40は、セパレータ20cの本体部21に印刷、塗布、浸漬、貼り付け及びそれらの組み合わせ、並びにその他の手法によって設けることができる。
(第4態様のセパレータ)
次に、図6を参照して、第1態様から第3態様のセパレータ20a,20b,20cとは異なる構造の吸液部25を備えた第4態様のセパレータ20dについて説明する。
吸液部25は、本体部21の1辺の中央部で本体部21から外側に突出するようにして設けられている。この吸液部25は、電解液に浸漬される浸漬部26と、浸漬部26と本体部21とを結んでいる複数の連結部27とから構成されている。浸漬部26は、図6の波線で示したに円形に形成されている。図6に示した態様では、連結部27は、2本設けられている。2本の連結部27は、本体部21から浸漬部26に向かうにつれて両者の間隔が徐々に狭まるように設けられている。
こうした吸液部25は、浸漬部26が電池とは別に設けられた容器等に溜められた電解液に浸漬されたとき、電解液を、連結部27を通して浸漬部26から本体部21に浸透させる。そのため、電解液は、本体部21の2箇所から本体部21に浸透する。
なお、図6に示した吸液部25は、浸漬部26と本体部21とを2本の連結部27で結んだ態様を示しているが、連結部27の本数は2本には限定されず、1本の連結部27だけで浸漬部26と本体部21とを結んだり、3本以上の連結部27で浸漬部26と本体部21とを結んだりしてもよい。こうした吸液部25は、浸漬部26の幅を連結部27の幅よりも広く形成するとよい。その場合、吸液部22は、浸漬部26の幅が連結部27の幅よりも広く形成されていればよく、浸漬部26の形状は円形であることには限定されず、楕円形に形成したり、正方形や長方形に形成したりしてもよい。浸漬部26の幅を連結部27の幅よりも広く形成した場合、電解液を早く且つ確実に吸液させることができる。また、本体部21に設ける切り込み構造は、切り込みの始端を、吸液部25の連結部27が本体部21に連結されている位置に応じて適宜な位置に設ければよい。
(切り込み構造)
次に、導液制御構造を構成している切り込み構造の様々な態様について説明する。なお、以下に説明する切り込み構造の態様は、導液制御構造が、切り込み構造と撥水体30及び/又は吸水体40で構成した構造と組み合わせた第1タイプに適用することができるだけでなく、導液制御構造が切り込み構造だけで構成された第2タイプにも適用することができる。
切り込み構造の態様は、図3から図6に示した2本の切り込み101からなる第1態様の切り込み構造100Aの他に、様々な態様を挙げることができる。切り込み構造のパターンは、電池がデバイスに装着される実装状態に応じ、重力の影響等を考慮して形成するとよい。以下、切り込み構造の各態様について図面を適宜参照しながら説明する。
(第2態様の切り込み構造)
第2態様の切り込み構造100Bは、図7に示すように、吸液部22を有する本体部21の端縁側と、吸液部22を有しない他の端縁側とを結ぶ方向に延びる複数の切り込み111,112,113によって形成された態様である。この切り込み構造100Bは、吸液部22から一定の距離だけ離れた本体部21の位置と、吸液部22を有しない本体部21の他の端縁上の点とを直線状に結ぶ複数の切り込み111,11,113により形成されている。具体的は、切り込み構造100Bは、セパレータ20の吸液部22側からこの吸液部22が設けられた端縁以外の3つの端縁側に向けて直線状に延びる6本の切り込み111,112,113によって構成されている。各切り込み111,112,113の吸液部22側の始端S111,S112,S113は、この吸液部22を囲む扇状の輪郭線をなす基線BL上に配置されており、各切り込み111,112,113は、この基線BLから放射状に延びている。
各切り込み111,112,113の末端E111,E112,E113は、吸液部22が設けられた端縁以外の端縁上にそれぞれ位置している。具体的には、中央部に形成された2本の切り込み111の末端E111は、吸液部22を有する端縁に対向する端縁を幅方向に約3等分する点にそれぞれ位置している。本体部21の幅方向の両側に形成された2本の切り込み113の末端E113は、本体部21の両側部の端縁上に位置している。切り込み111と切り込み113との間に形成された切り込み112の末端E112は、頂点P,Qに位置している。こうした切り込み構造111,11,113が形成されたセパレータ20eは、切り込みにより区分けされた各領域の面積が相互に同じ大きさに構成されている。
こうした切り込み構造100Bは、吸液部22から浸透した電解液を次のようにセパレータ20eの全体に浸透させる。
各切り込み111,112,113は、セパレータ20eを構成する部材が存在しないので電解液を吸液しない領域を構成している。こうした電解液を吸液しない領域を構成する各切り込み111,112,113は、本体部21に浸透した電解液を未だ電解液が浸透していない本体部21の領域に誘導する機能を有している。そのため、吸液部22に吸収された電解液は、図7の破線で示した矢印のように吸液部22を中心にしてセパレータ20eを扇状に浸透する。各切り込み111,112,113の吸液部22側の始端S111,S112,S113は、この吸液部22を囲む扇状の輪郭線をなす基線BL上に配置されているので、電解液は、基線BLの位置までは、時間差なく均等にセパレータ20eに浸透する。
電解液は、基線BLの位置まで到達すると、切り込み111,112,113同士の間に位置するセパレータ20eの領域を一点鎖線で示した矢印のように、吸液部22を有しない他の端縁に向かって浸透する。セパレータ20eは、切り込み111,112,113により区分けされた各領域の面積が相互に同じ大きさに構成されているので、切り込み111,112,113同士の間の各領域が電解液を保持することができる容量は、相互に同じである。その結果、基線BLの位置から浸透した電解液は、各領域を浸透した後、セパレータ20eの周縁の位置に少ない時間差で到達する。
なお、図7に示す切り込み構造100Bは、切り込みが基線BLから放射状にそれぞれ延びている。しかし、切り込み構造を構成する切り込みは、吸液部22側から平行に延びるように設けることもできる。この場合、すべての切り込み構造の末端は、吸液部22と対向する端縁に位置する。
また、図7に示した切り込み構造100Bの切り込み111,112,113の末端E111,E112,E113は、すべてセパレータ20eの端縁に位置している。しかし、切り込み111,112,113のうち、いくつかの切り込みの末端を、端縁よりも内側の点に設けてもよい。例えば、切り込み構造は、末端E111と末端E113とをセパレータ20eの端縁に設け、末端E112を端縁よりも内側の点に設けて構成することもできる。
なお、図7に示した切り込み構造100Bは、切り込みの始端S111,S112,S113が同一の基線BL状に位置する切り込みにより構成されている。しかし、電池1がデバイスに装着される実装状態によっては、吸液部22から浸透した電解液が基線BLに均等に到達しない場合がある。そのため、切り込みの始端は、基線BL状に設けることには限定されず、電池1の実装状態に応じて適宜な位置に設ければよい。また、切り込み構造100Bは、切り込み111,112,113により区分けされた各領域の面積が相互に同じ大きさになるように構成されている。しかし、電池1がデバイスに装着される実装状態によっては、電解液が浸透する速度は区分けされた各領域より異なる場合がある。そのため、区分けされた各領域の面積は、電池1の実装状態に応じて適宜な大きさに形成すればよい。なお、切り込みの始端の位置及び区分けされた各領域の面積を電池1がデバイスに装着される実装状態に応じて適宜に設けることは、この第2態様の切り込み構造に限らず、すべての切り込み構造に当てはまることである。
以上、直線状に延びる切り込みによって切り込み構造が構成されたものについて説明した。しかし、切り込み構造は、曲線状に湾曲する切り込みによって構成することもできる。例えば、切り込み構造は、セパレータ20eの幅方向の中心を境にして、右側に配置された切り込みの末端側を右側に向けて湾曲させ、左側に配置された切り込みの末端側を左側に向けて湾曲させて構成することもできる。
また、切り込み構造の態様としては、特に図面には示していないが、吸液部22自体に切り込みを設け、この切り込みをセパレータ20eの吸液部22を有しない端縁上の点とを結ぶように設けることもできる。この場合、セパレータ20eは、複数のピースに分割される態様になる。ただし、セパレータ20eを複数のピースに完全に分割しないで部分的にピース同士を接続するようにして設けてもよい。なお、切り込み構造は、直線状に延びる切り込み、直線の途中に折れ曲がり部を有する切り込み、曲線状に湾曲する切り込み及びこれらの切り込みを任意に組み合わせたものの中から選択することができる。また、切り込みは連続する線で構成することには限定されず、短い切り込みを並べて構成した点線で構成したり、円、楕円、多角形、星形等の様々な形状の図形で構成したりすることもできる。また、こうした切り込みを単独で設けるだけなく、それらを組み合わせて構成してもよい。
(第3態様の切り込み構造)
第3態様の切り込み構造100Cは、図8に示すように、吸液部22を有する本体部21の端縁側と、吸液部22を有しない他の端縁側とを結ぶ方向に延びる4本の切り込み115,116,117,118によって形成された態様である。4本の切り込み115,116,117,118は、波線によりそれぞれ形成されている。2本の切り込み115,116は、吸液部に相対的に近い領域に形成され、2本の切り込み117,118は、吸液部から相対的に離れた領域に形成されている。
具体的には、切り込み115,116の始端S115,S116は、本体部21の幅方向の中央に位置し、切り込み115,116は、外側に向けてそれぞれ延びている。切り込み115,116の末端E115,E116は、本体部21の長手方向のほぼ中央の位置で、本体部21の側部の端縁にそれぞれ位置している。切り込み117,118の始端S117,S118も、本体部21の幅方向の中央に位置し、切り込み117,118は、外側に向けてそれぞれ延びている。切り込み117,118の末端E117,E118は、頂点Q,Pにそれぞれ位置している。
各切り込み115,116,117,118は、セパレータ20fを構成する部材が存在しないので電解液を吸液しない領域を構成している。こうした電解液を吸液しない領域を構成する各切り込み115,116,117,118は、本体部21に浸透した電解液を未だ電解液が浸透していない本体部21の領域に誘導する機能を有している。そのため、電解液は、吸液部22側から本体部21の吸液部22を有しない他の端縁側に向けて円滑に浸透される。
また、図8において、各切り込み115,116,117,118の直近に付した網目模様の領域は、保液部45として機能する。網目模様によって示した保液部45は、各切り込み115,116,117,118が湾曲している部分により囲まれた部分である。この保液部45は、切り込みが湾曲した部分のように、電解液が所定の部分の周囲を部分的に切り込みが囲む部分である。保液部45は、湾曲した切り込みの他に、例えば、折れ曲がり部を有する切り込み、複数の直線が交差するように形成された切り込み等を挙げることができる。こうした部分に浸透した電解液は、他の部分に浸透することを各切り込み115,116,117,118によって阻害される。そのため、保液部45は、そこに浸透した電解液を滞留させる。こうした保液部45は、保液部45に浸透された電解液を保液し、電解液が吸液部22側に向かって逆流したり、電解液が一方の側部の端縁のみに向かって流れたりすることを防止することができる。そのため、電池がデバイスに装着された実装状態に関わりなく電解液を確実に保液させることができる。
切り込み構造100Cは、以上のように、電解液が早く浸透する領域の液量及び遅く浸透する領域の液量を制御すると共に本体部21自体又は本体部21に対応する領域の少なくとも一部に電解液を保液させる保液構造を兼ね備えている。こうした特徴は、図14〜図16に示す切り込み構造100D〜100Fも同様に備えている。なお、図8に示した切り込み構造100Cの各切り込み115,116,117,118は、曲線状に湾曲する波形に形成されている。しかし、切り込み構造100Cの切り込みは、直線同士を組み合わせてなる折れ線により形成してもよい。
(第4態様の切り込み構造)
第4態様の切り込み構造100Dは、図9に示すように、吸液部22を有する本体部21の端縁側と、吸液部22を有しない他の端縁側とを結ぶ方向に延びる5本の本線120,121,122と、各切り込みに設けられた短い枝線125,126,127から構成された態様である。
本線120は、本体部21の幅方向の中央に設けられていて、吸液部22側と、頂点P,Qを結ぶ端縁の中心とを結ぶように延びている。本線120の始端S120は、吸液部22よりも本体部21の内側に位置しており、本線120の末端E120は、頂点P,Qを結ぶ端縁よりも本体部21の内側に位置している。2本の本線121は、本線120に対して左右対称に形成されており、吸液部22側と、頂点P,Qを結ぶように延びている。本線121の始端S121は、吸液部22よりも本体部21の内側に位置しており、本線121の末端E121は、頂点P,Qよりも本体部21の内側に位置している。最も外側に位置する2本の本線122は、本線120に対して左右対称に形成されており、吸液部22側と、本体部21の側部の端縁とを結ぶように延びている。本線122の始端S122は、吸液部22よりも本体部21の内側に位置しており、本線122の末端E122は、本体部21の側部の端縁の内側に位置している。
本線120は、本線120の左右両側に延びる枝線125と本線120から左右の片側に延びる枝線126とを備えている。枝線125は、本線120の始端S120及び末端E120の近傍にそれぞれ設けられ、枝線126は、本線120の中間部分に2本設けられている。本線121は、本線121が延びる方向に千鳥状に配置された「T」字状に形成された枝線127を備えている。枝線127は、本線121の始端S121及び末端E121の近傍にそれぞれ1つずつ設けられ、本線121の中間部分に2つ設けられている。本線122は、本線122の左右両側に延びる枝線125を備えている。枝線125は、本線122の末端E122の近傍に設けられている。
こうした本線120,121,122及び枝線125,126,127は、セパレータ20gを構成する部材が存在しないので電解液を吸液しない領域を構成している。電解液を吸液しない領域を構成する本線120,121,122及び枝線125,126,127は、本体部21に浸透した電解液を未だ電解液が浸透していない本体部21の領域に誘導する機能を有している。そのため、電解液は、吸液部22側から本体部21の吸液部22を有しない他の端縁側に向けて円滑に浸透される。
また、図9の網目模様の領域は、保液部45として機能する。網目模様によって示した保液部45は、本線120,121,122及び枝線125,126,127により囲まれた部分である。こうした部分に浸透した電解液は、保液部45から他の部分に浸透することを本線120,121,122及び枝線125,126,127によって阻害される。そのため、保液部45は、そこに浸透した電解液を滞留させる。こうした保液部45は、保液部45に浸透された電解液を保液し、電解液が吸液部22側に向かって逆流したり、電解液が一方の側部の端縁のみに向かって流れたりすることを防止することができる。そのため、電池がデバイスに装着された実装状態に関わりなく電解液を確実に保液させることができる。
なお、本体部21に設ける枝線125,126,127の種類及び配置は、図9に示した態様には限定されない。例えば、枝線125,126,127のうち1種類のみを設けたり、2種類の枝線を設けたりしてもよい。また、配置も、必要に応じて適宜な位置に設ければよい。
(第5態様の切り込み構造)
次に、図10を参照してセパレータ20hが備える第5態様の切り込み構造100Eについて説明する。第5態様の切り込み構造100Eは、図10に示すように、吸液部22側に曲線部131を備えた切り込み構造である。この切り込み構造100Eは、セパレータ20hを構成する本体部21の中央の領域又はほぼ中央の領域に設けられている。この切り込み構造100Eは、半円状の輪郭をなす曲線部121と、曲線部131の両端から延びる直線部132とがつながれて構成されている。曲線部131は、吸液部22を有する本体部21の端縁側に向けて凸状をなしている。各直線部132は、曲線部131の両端部から吸液部22を有しない本体部21の端縁側に向けて延びている。直線部132は、両者間隔が曲線部131との接続された始端よりも末端側に向かうにつれて拡幅するように形成されている。
また、図10において、切り込み構造100Eの内側に付した網目模様の領域は、保液部45として機能する。網目模様によって示した保液部45は、切り込み131,132により囲まれた部分である。こうした部分に浸透した電解液は、他の部分に浸透することを各切り込み131,132によって阻害される。そのため、保液部45は、そこに浸透した電解液を滞留させる。こうした保液部45は、保液部45に浸透された電解液を保液し、電解液が吸液部22側に向かって逆流したり、電解液が一方の側部の端縁のみに向かって流れたりすることを防止することができる。そのため、電池がデバイスに装着された実装状態に関わりなく電解液を確実に保液させることができる。
なお、図10に示した切り込み構造100Eは、曲線部131と直線部132とがつながれて1本の切り込みにより構成されている。しかし、第5態様の切り込み構造100Eは、1本の切り込みにより構成することには限定されない。例えば、曲線部131と直線部132とを間隔を空けて切り込みを形成したり、曲線部131が延びる方向の中央に切り込みが形成されない部分を設け、2つの切り込みで曲線部131を形成したりして切り込み構造を形成することもできる。また、直線部132は、波線や折れ線で構成してもよい。
(第6態様の切り込み構造)
次に、図11を参照してセパレータ20iが備える第6態様の切り込み構造100Fについて説明する。切り込み構造100Fは、図11に示すように、吸液部22側に複数の「L」字状の切り込みを備えた切り込み構造である。この切り込み構造100Fは、本体部21の中央又は略中央の領域に2つの切り込み140が対向して配置されるようにして設けられている。また、4つの切り込み145が本体部の角部よりも内側の領域に設けられている。
2つの切り込み140は、折れ曲がり部142が本体部21の幅方向の外側に向けられ、2本の直線部141どうしが相互に近づくように配置されている。4つの切り込み145のうち、吸液部22の近くに設けられた2つの切り込み145は、折れ曲がり部147が頂点P,Qに向けられており、2本の直線部146は、頂点P,Qを結ぶ端縁と本体部21の側部の端縁とに平行をなすように配置されている。頂点P,Qの近くに設けられた2つの切り込み145も同様に、折れ曲がり部147が頂点P,Qに向けられており、2本の直線部146は、頂点P,Qを結ぶ端縁と本体部21の側部の端縁とに平行をなすように配置されている。
また、図11において、各切り込み140,145の折れ曲がり部142,147の内側に付した網目模様の領域は、保液部45として機能する。網目模様によって示した保液部45は、切り込み140,145により囲まれた部分である。こうした部分に浸透した電解液は、他の部分に浸透することを各切り込み140,145によって阻害される。そのため、保液部45は、そこに浸透した電解液を滞留させる。こうした保液部45は、保液部45に浸透された電解液を保液し、電解液が吸液部22側に向かって逆流したり、電解液が一方の側部の端縁のみに向かって流れたりすることを防止することができる。そのため、電池がデバイスに装着された実装状態に関わりなく電解液を確実に保液させることができる。
なお、図11に示した切り込み構造100Fは、切り込み140,145が「L」字状に形成されている。しかし、切り込みは、例えば円弧状に形成してもよい。また切り込みの配置及び向きは、必要に応じて適宜に設ければよい。
(第7態様及び第8態様の切り込み構造)
図12は、2種類の切り込み構造100G,100Hを設けたセパレータ20jを示している。中心線CLよりも左側に示したものが切り込み構造100Gで中心線CLよりも右側に示したものが切り込み構造100Hである。
切り込み構造100Gは、図12において中心線CLよりも左側に示されているように、4本の直線状に延びる切り込み150により構成されている。各切り込み150は、本体部21の幅方向に延びており、相互に平行をなしている。また、各切り込み150は、比較的広い幅を有している。なお、切り込み構造100Gは、図12において、中心線CLよりも左側にのみ示されている。しかし、切り込み構造100Gは、中心線CLよりも右側にも設けられている。
切り込み構造100Hは、図12において中心線CLよりも右側に示されているように、4本の円弧状に延びる切り込み155により構成されている。各切り込み155は間隔を空けて配置されており、切り込み155が延びる方向はランダムに向いている。また、各切り込み155は、比較的広い幅を有している。なお、切り込み構造100Hは、図12において、中心線CLよりも右側にのみ示されている。しかし、切り込み構造100Hは、中心線CLよりも左側にも設けられている。
以上、本体部21が直線状に延びる切り込み150のみから構成された切り込み構造100Gを備えている場合、及び円弧状に延びる切り込み155から構成された切り込み構造100Hを備えている場合を説明した。しかし、比較的広い幅を有する切り込みから構成された切り込み構造は、こうした形態のみに限定されない。
例えば、直線状に延びる切り込みと円弧状に延びる切り込みとを組み合わせて切り込み構造を構成することもできる。また、「L」字状の切り込みと直線状の切り込みとを組み合わせたり、「L」字状の切り込みと円弧状の切り込みとを組み合わせたりすることもできる。
(第9態様の切り込み構造)
図13は、第9態様の切り込み構造100Iを設けたセパレータ20kを示している。この切り込み構造100Iは、切り込みが所定の形状を有する穴160,161であり、こうした穴160,161を本体部21に複数設けて構成されている。図13に示した穴160,161は、菱形にそれぞれ形成されており、吸液部22から吸液部に対向する端縁側に向かうにつれて面密度が徐々に高くなるように形成されている。また、吸液部22に相対的に近い領域に設けられている穴161は面積が大きく形成され、吸液部に対向する端縁側に相対的に近い領域に設けられている穴160は面積が小さく形成されている。
ただし、穴の形状は、菱形以外の多角形、円、楕円、星形及びそれらの組み合わせ、並びにその他の形状に形成してもよい。また、穴は、電池がデバイスに装着される実装状態に応じて適宜な密度で配置すればよい。
以上、第1の切り込み構造から第9の切り込み構造をそれぞれ個別にセパレータの本体部21に設けた場合を説明した。しかし、切り込み構造は第1の切り込み構造から第9の切り込み構造の中から任意に選択した2通り以上のものを本体部21に設けてもよい。
(第2実施形態)
次に複数枚の部材によってセパレータ20が構成された第2実施形態のセパレータ200について説明する。第2実施形態のセパレータ200は、絶縁機能及び吸液機能を有する複数枚のセパレータ構成部材を重ね合わせて構成されている。
第2実施形態のセパレータ20は、次の2つのタイプに大別することができる。第1タイプのセパレータは、導液制御構造を備えた1枚のセパレータ構成部材と導液制御構造を備えていない1枚のセパレータ構成部材とを少なくとも重ね合わせて構成されたセパレータである。第2タイプのセパレータは、導液制御構造を備えたセパレータ構成部材同士を少なくとも2枚重ね合わせて構成されたセパレータである。以下、第2タイプのセパレータの代表的な態様をメインに説明する。なお、以下に説明する第1セパレータ200A、第2セパレータ200B及び第3セパレータ200Cは、セパレータ構成部材をそれぞれ意味する。
(第1態様)
第1態様のセパレータ200は、図14(A)及び図14(B)に示すように、重ね合わされた第1セパレータ200Aと第2セパレータ200Bとを含む複数枚の部材により構成されている。なお、図14(A)及び図14(B)に示したセパレータ200は、第1セパレータ200A及び第2セパレータ200Bの2枚の部材により構成されたものを示している。しかし、第1態様のセパレータ200は、第1セパレータ200A及び第2セパレータ200B以外に他の部材を重ね合わせて構成することもできる。
このセパレータ200の導液制御構造は、本体部221の電解液が早く浸透する領域から電解液が遅く浸透する領域に該電解液を誘導するように形成された切り込みからなる切り込み構造と、電解液が早く浸透する領域に配置された撥水体230及び/又は前記電解液が遅く浸透する領域に配置された吸水体240と、から構成されている。第1セパレータ200Aは切り込み構造を備え、第2セパレータ200Bは電解液が早く浸透する領域に配置された撥水体230及び/又は電解液が遅く浸透する領域に配置された吸水体240を備えている。
第1セパレータ200Aは、図14(A)及び図14(B)には示していないが、例えば、図7に示した切り込み構造100Bを備えたものが使用される。その場合、第1セパレータ200Aの切り込み構造100Bは、吸液部222を有する本体部221の端縁側と、吸液部222を有しない他の端縁側とを結ぶ方向に延びる複数の切り込み111,112,113によって構成される。また、切り込み構造100Bは、吸液部222から一定の距離だけ離れた本体部221の位置と、吸液部222を有しない本体部221の他の端縁上の点とを直線状に結ぶように複数形成されている。具体的は、切り込み構造100Bは、セパレータ200の吸液部222側からこの吸液部222が設けられた端縁以外の3つの端縁側に向けて直線状に延びる6本の切り込み111,112,113によって構成されている。各切り込み111,112,113の吸液部222側の始端S111,S112,S113は、この吸液部222を囲む扇状の輪郭線をなす基線BL上に配置されており、各切り込み111,112,113は、この基線BLから放射状に延びている。
ただし、第1セパレータ200Aの切り込み構造は、図7に示した態様のものには限定されず、その他の態様のものを適用することができる。
第2セパレータ200Bは、撥水体230と吸水体240とを組み合わせて構成されている。この第2セパレータ200Bは、吸水体240の中央の領域に空間部を設け、撥水体230をこの空間部にはめ込むことにより構成されている。
撥水体230は、電解液が相対的に早く浸透する第1セパレータ200Aの領域に配置されている。この図14(A)及び図14(B)に示した態様では、撥水体230は、負極部材50の中央の領域に対応する第2セパレータ200Bの領域に配置されている。一方、吸水体240は、電解液が相対的に遅く浸透する第1セパレータ200Aの領域に配置されている。この図14(A)及び図14(B)に示した態様では、吸水体240は、負極部材50の周縁の領域に対応する第2セパレータ200Bの領域に配置されている。なお、図14(A)及び図14(B)に示した第2セパレータ200Bは、撥水体230が円形をなして中央に配置したものを示している。しかし、撥水体230は、円形であることには限定されず、電解液が相対的に早く浸透する第1セパレータ200Aの領域の輪郭に応じて適宜に形成すればよい。
こうした第2セパレータ200Bは、撥水体230が、電解液が相対的に早く浸透する第1セパレータ200Aの領域から電解液が相対的に遅く浸透する第1セパレータ200Aの領域に電解液を移動させる。図14(A)及び図14(B)に示した態様では、撥水体230は、中央の領域から外側に向けて電解液を移動させる。さらに、吸水体240は、電解液が相対的に遅く浸透する第1セパレータ200Aの領域で電解液を吸収して保液する。図14(A)及び図14(B)に示した態様では、吸水体240は、第1セパレータ200Aの周縁の領域で電解液を確実に保液する。
なお、第1セパレータ200Aと第2セパレータ200Bとが重ね合わされたセパレータ200は、必要に応じて正極部材10側に第1セパレータ200Aを配置し、負極部材50側に第2セパレータ200B側を配置したり、負極部材50側に第1セパレータ200Aを配置し、正極部材10側に第2セパレータ200B側を配置したりして正極部材10と負極部材50との間に配置される。
以上、第2セパレータ200Bが吸水体240の中央の領域に空間部を設け、撥水体230をこの空間部にはめ込むことにより構成されているものについて説明した。しかし第2セパレータ200Bは、こうした構造のものには限定されない。たとえば、第2セパレータ200Bは、空間部が存在しないシート状の部材からなる吸水体240をベースにして、電解液が相対的に遅く浸透する領域に撥水体230を印刷、塗布、浸漬、貼り付け及びそれらの組み合わせ、並びにその他の方法により設けることによって構成することもできる。
なお、第2セパレータ200Bは、吸水性が相対的に低い吸水体240と吸水性が相対的に高い吸水体240とを組み合わせて構成することもできる。その場合、第2セパレータ200Bは、吸水性が相対的に低い吸水体240を、電解液が相対的に早く浸透する領域に配置し、吸水性が相対的に高い吸水体240を、電解液が相対的に遅く浸透する領域に配置して構成すればよい。
以上、第2セパレータ200Bが、撥水体230と吸水体240とから構成された態様について説明した。しかしながら、第2セパレータ200Bは、撥水体230だけで構成することもできる。その場合、撥水体230は、電解液が相対的に早く浸透する領域に配置する。また、第2セパレータ200Bは吸水体240だけで構成することもできる。その場合、吸水体240は、電解液が相対的に遅く浸透する領域に配置する。
なお、セパレータ200は、第1セパレータ200Aが切り込み構造を備えたものを用いて第2タイプのセパレータとして構成されている。しかし、セパレータ200が、第1セパレータとして切り込み構造等の導液制御構造を備えていないセパレータ構成部材を用いた場合、このセパレータは、第1タイプのセパレータになる。
(第2態様)
次に、図15(A)及び図15(B)を参照して、第2実施形態の第2態様のセパレータ201を説明する。
第2態様のセパレータ201は、重ね合わされた第1セパレータ200Aと第3セパレータ200Cとを含む複数枚の部材により構成されている。セパレータ201の導液制御構造は、第1セパレータ200Aの本体部221の電解液が早く浸透する領域から電解液が遅く浸透する領域該電解液を誘導するように延びるように第1セパレータ200Aに形成された切り込み構造と、第3セパレータ200Cを、その厚さ方向に部分的に突出させることによって、第1セパレータ200Aと第3セパレータ200Cとの間に形成された収容空間211,212と、から構成されている。なお、図15(B)は、説明のため、収容空間211,212を強調して示している。実際の収容空間211,212は、第3セパレータ200Cに若干凹凸が現れる程度に形成される。
第1セパレータ200Aは、例えば、図7に示した切り込み構造100Bを備えたものが使用される。ただし、第1セパレータ200Aの切り込み構造は、図7に示した態様のものには限定されず、その他の態様のものを適用することができる。
第3セパレータ200Cは、第3セパレータ200Cをその厚さ方向に複数の位置で部分的に突出させ、第1セパレータ200Aと第3セパレータ200Cとの間に形成された収容空間211,212を備えている。各収容空間211,212は、気化した電解液を収容するための空間であり、円筒状にそれぞれ形成されている。なお、収容空間211,212の第3セパレータ200Cに占める単位面積あたりの割合は、電解液が相対的に早く浸透する領域よりも電解液が相対的に遅く浸透する領域の方が大きくなるように形成されている。
具体的には、収容空間211は、負極部材50の中央に対応する領域に、収容空間211同士の間隔が広くなるようにして形成されている。なお、図15(A)及び図15(B)に示す第3セパレータ200Cは、中央の領域に9個の収容空間211を備えている。これに対し、収容空間212は、負極部材50の周縁に対応する領域には、収容空間212同士の間隔が狭くなるようにして形成されている。こうした収容空間211,212は、第3セパレータ200Cをプレス加工等して形成される。
なお、収容空間211,212の第3セパレータ200Cに占める単位面積あたりの割合は、図15(A)及び図15(B)に示す態様に限定されず、電解液が相対的に早く浸透する領域と相対的に遅く浸透する領域の分布、電解液が気化しやすい領域の分布に応じて適宜に形成すればよい。また、収容空間211,212は、円筒状に形成することには限定されず、平面視の形状が楕円、正方形、長方形になるように形成することもできる。
以上、第3セパレータ200Cをプレス加工等して収容空間を形成した態様を例にして第3セパレータ200Cを説明した。しかし、第3セパレータ200Cは、複数の位置で折り込むことによって、第2セパレータ200Cをその厚さ方向に部分的に突出させ、第1セパレータ200Aと第3セパレータ200Cとの間に収容空間を形成することにより構成してもよい。その場合、例えば、収容空間は、第3セパレータ200Cに襞が形成されるように折り込むことで形成する。
なお、第1セパレータ200Aと第3セパレータ200Cとが重ね合わされたセパレータ202は、必要に応じて正極部材10側に第1セパレータ200Aを配置し、負極部材50側に第3セパレータ200Cを配置したり、負極部材50側に第1セパレータ200Aを配置し、正極部材10側に第3セパレータ200Cを配置したりして正極部材10と負極部材50との間に配置される。
なお、セパレータ200は、第1セパレータ200Aが切り込み構造を備えたものを用いて第2タイプのセパレータとして構成されている。しかし、セパレータ200が、第1セパレータとして切り込み構造等の導液制御構造を備えていないセパレータ構成部材を用いた場合、このセパレータは、第1タイプのセパレータになる。
なお、第2実施形態のセパレータは、2枚のセパレータ構成部材の双方に切り込み構造を設けたもの同士を重ね合わせて構成することもできる。その場合、各セパレータ構成部材に設けられる切り込み構造は、相互に異なっていても、相互に同じであってもよい。
以上、第1セパレータ200Aと第3セパレータ200Cとが別体として構成した場合について説明しが、第2態様のセパレータ200は、第1セパレータ200Aと第3セパレータ200Cとを一体に形成することもできる。
図16は、第1セパレータ200Aと第3セパレータ200Cとが一体に形成されたセパレータ202の一例を示したものである。セパレータ202は長方形に形成されており、長手方向の中心に折り目が設けられている。図16に示した中央の折り目90よりも下側が第1セパレータ200Aであり、折り目90よりも上側が第3セパレータ200Cである。
第1セパレータ200Aは、本体部221と吸液部222とから構成されている。吸液部222は、折り目90と対辺をなす第1セパレータ200Aの端縁に設けられている。この吸液部222は、第1セパレータ200Aの幅方向の中央で本体部221から外側に突出するようにして設けられている。なお、この第1セパレータ200Aが備える切り込み構造100Bは、図7に示したセパレータ20eが備える切り込み構造100Bと同様である。そのため、切り込み構造100Bについては、図7に示したセパレータ20eの切り込み構造100Bと同一の符号を付してその説明は省略する。
第3セパレータ200Cは、第3セパレータ200Cをその厚さ方向に複数の位置で部分的に突出させた収容空間211,212を備えている。各収容空間211,212は、気化した電解液を収容するための空間であり、円筒状にそれぞれ形成されている。なお、この第3セパレータ200Cの具体的な構造は、図15(A)及び図15(B)に示した第3セパレータと200C同様である。そのため、この第3セパレータ200Cは、図15(A)及び図15(B)に示した第3セパレータ200Cと同一の符号を付してその説明は省略する。
図16示したセパレータ202は、折り目90の位置で折りたたみ、第1セパレータ200Aと第3セパレータ200Cとの間に収容空間211,212が位置される態様で正極部材10と負極部材50の間に配置される。なお、第1セパレータ200Aの切り込み構造は、図16に示した態様のものには限定されず、その他態様の切り込み構造を適用することもできる。また、第3セパレータ200Cの収容空間が設けられる態様も、図16に示した態様のものには限定されず、その他態様に収容空間を設けたものを適用することもできる。
以上、セパレータが第1セパレータ200Aと第2セパレータ200Bとにより構成された場合と、セパレータが第1セパレータ200Aと第3セパレータ200Cとにより構成された場合を例に説明した。しかしながら、セパレータは、第1セパレータ200Aを第2セパレータ200Bと第3セパレータ200Cとで挟み込んで構成してもよい。また、折りたたんで重ねる構造は、重ね合わされるセパレータ構成部材同士が完全に重ね合わされる場合には限定されず、部分的に重ね合わされる場合も含む。
〈起電力維持部材〉
なお、以上に説明した電池のセパレータは、特に図面には示していないが、必要に応じて起電力維持部材を設けることができる。起電力維持部材は、親水性を有するシート状の部材であり、多価のカルボン酸塩の水溶液が含浸されたものである。そのため、多価のカルボン酸イオンが、負極部材から溶出したマグネシウムイオンと錯体化し、水酸化マグネシウムの溶解度が増大する。クエン酸の緩衝作用により、電解液がアルカリ性へ変化するのが防止される。その結果、酸化マグネシウムの析出を抑制しマグネシウムの持続的電解を可能にする。多価のカルボン酸イオンとしては、たとえばクエン酸イオンや琥珀酸イオンを用いることができる。こうした起電力維持部材を設ける場合、起電力維持部材は、第1セパレータと負極部材との間に配置する。
以上、吸液部が本体部の幅方向の中央に設けられたものについて説明した。しかし、吸液部は本体部の幅方向の端部付近に設けてもよい。また、本体部の1箇所に吸液部を設けた場合を例に説明したが、吸液部は、本体部の複数の部分に設けることもできる。その場合、本体部の1辺に複数の吸液部を設けたり、本体部の異なる辺や角部に吸液部を設けたりすることができる。
[第2使用態様]
次に、図17を参照して電池のセパレータの第2使用態様について説明する。
第2使用態様は、例えば、図示しないケースが円筒状に形成されている電池に使用する態様である。なお、第2使用態様に用いられるセパレータ320は、第1使用態様に用いられるセパレータと同様に、1枚の部材により構成された形態及び複数枚の部材により構成された形態の双方の形態に適用することができる。図17は、セパレータ320が1枚の部材により構成された形態を示したものである。
図17に示したセパレータ320は、帯状の本体部321と、本体部321の長手方向の一端に設けられた吸液部322とから構成されている。本体部321は、特に図面には示していないが、導液制御構造を備えている。導液制御構造は、電解液が早く浸透する領域から電解液が遅く浸透する領域に電解液を誘導するように延びる切り込み構造と、電解液が早く浸透する領域に配置された撥水体及び/又は電解液が遅く浸透する領域に配置された吸水体と、から構成されている。ただし、導液制御構造は、電解液が早く浸透する領域から電解液が遅く浸透する領域に電解液を誘導するように延びる切り込み構造だけで構成してもよい。
こうしたセパレータ320は、薄い導電性部材からなる正極部材310と、薄い金属からなり、電解液によって酸化される負極部材350との間に配置されて使用される。正極部材310、負極部材350及びこれらの間に配置されたセパレータ320は、図示しない円筒状のケースに収容する場合、図17に示すように、横断面の形状が、旋回するにつれて中心に近づく曲線状に巻かれた状態で収容される。その際、セパレータ320の吸液部320は、図示しないケースの外側に突出させることができるように旋回の外周側の端部に位置される。
また、第2使用態様では、正極部材310、負極部材350及びセパレータ320の横断面の形状が、旋回するにつれて中心に近づく曲線状に巻かれた状態で図示しないケースに収容される場合、絶縁材370が図示しないケースに収容される。絶縁材370は、重ね合わされた正極部材310負極部材350及びセパレータ320によって形成された各層同士の間に配置されている。この絶縁材370は、層と層との間において、内側の層をなす正極部材310と、外側の層をなす負極部材350とが短絡することを防止している。
なお、吸液部は、本体部の幅方向の中央に設けたり、幅方向の端部付近に設けたりすることができる。また、本体部の1箇所に吸液部を設けたり、本体部の複数の部分に設けたりすることができる。本体部の複数の部分に設ける場合、本体部の1辺に複数の吸液部を設けたり、本体部の異なる辺に吸液部を設けたりすることができる。
[第3使用態様]
次に、図18及び図19を参照して、電池セパレータの第3使用態様ついて説明する。
第3実使用態様は、セパレータ420が折り畳まれて、例えば、図18の二点鎖線で示したが直方体のケース460に収容されて用いられる態様である。なお、第3使用態様に用いられるセパレータ420は、第1使用態様及び第2使用態様に用いられるセパレータと同様に、1枚の部材により構成された形態及び複数枚の部材により構成された形態の双方の形態に適用することができる。図18は、セパレータ420が1枚の部材により構成された形態を示したものである。
セパレータ420は、帯状の本体部421と、本体部421の長手方向の両端にそれぞれ設けられた吸液部422とから構成されている。本体部421は、導液制御構造を備えている。導液制御構造は、電解液が早く浸透する領域から電解液が遅く浸透する領域に電解液を誘導するように延びる切り込み構造と、電解液が早く浸透する領域に配置された撥水体及び/又は電解液が遅く浸透する領域に配置された吸水体と、から構成されている。なお、導液制御構造は、電解液が早く浸透する領域から電解液が遅く浸透する領域に電解液を誘導するように延びる切り込み構造だけで構成してもよい。図19は、切り込み構造の一例を示したものである。切り込み構造の詳細は後述する。
セパレータ420は、薄い導電性部材からなる正極部材410と、薄い金属からなり、電解液によって酸化される負極部材450との間に配置されて使用される。重ね合わされた正極部材410、負極部材450及びセパレータ420は、長手方向の少なくとも1ヶ所に設けられた折り目で折り畳まれてケース460に収容される。図18に示した使用態様では、重ね合わされた正極部材410、負極部材450及びセパレータ420が、それらの長手方向の3ヶ所に設けられた折り目491,492,493で折り畳まれている。この図18に示したセパレータ420は、その長手方向の両端部に吸液部420を、それぞれ1つずつ備えており、かつ、3ヶ所の折り目491,492,493で折り畳まれているので、長手方向の両端が同方向に向けられる。そのため、吸液部420は、ケース460の同じ面からその外側に張り出される。
また、第3使用態様でも、絶縁材470が正極部材410、負極部材450及びセパレータ420と共にケースに収容される。絶縁材470は、正極部材410と負極部材450とが対向する部分に配置されおり、正極部材410と、負極部材450とが短絡することを防止している。
セパレータ420が備える切り込み構造100Bは、図19に示すように、セパレータ420の長手方向の中央の折り目492を境に、対称になるように設けられている。なお、この切り込み構造100Bは、図7に示したセパレータ20eに設けられたものと同じ構造の切り込み構図である。
切り込み構造は、6本の切り込み111,112,113を備えている。6本の切り込み111,112,113のうち、中央側に設けられている2本の切り込み111は、基線BLと中央の折り目492とを結ぶようにして設けられている。なお、基線BLは、吸液部422から一定の距離を空けて設けられた扇状の仮想線である。切り込み構造111よりも外側の2本の切り込み112は、基線BLと折り目492の両端M,Nとを結ぶようにして設けられている。最も外側に位置する切り込み113は、基線BLとセパレータ420の側部の端縁とを結ぶようにして設けられている。こうした切り込み構造100Bは、セパレータ420が折り畳まれてケース460に収容された状態では、吸液部422を有する本体部421の端縁側と、この吸液部420が存在しない他の端縁側とを結ぶ方向に延びる状態になる。
なお、吸液部は、本体部の幅方向の中央に設けたり、幅方向の端部付近に設けたりすることができる。また、本体部の1箇所に吸液部を設けたり、本体部の複数の部分に設けたりすることができる。本体部の複数の部分に設ける場合、本体部の1辺に複数の吸液部を設けたり、本体部の異なる辺に吸液部を設けたりすることができる。