JP5433300B2 - モリブデン製ルツボとその製造方法、およびサファイア単結晶の製造方法 - Google Patents

モリブデン製ルツボとその製造方法、およびサファイア単結晶の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、モリブデン製ルツボとその製造方法、およびサファイア単結晶の製造方法に係り、特に底部と側壁部とを繋ぐ角部の高温強度に優れるモリブデン製ルツボとその製造方法、およびこのようなモリブデン製ルツボを用いたサファイア単結晶の製造方法に関する。
従来、金属蒸発容器、金属酸化物溶解容器、結晶製作用容器等の高温で用いられる製造装置の一構成部品として、底部と側壁部とが角部を介して連結された上部開放の有底筒状のモリブデン製ルツボが用いられている。
このようなモリブデン製ルツボは、モリブデン鍛造体を切削加工することにより、あるいはモリブデンからなる板材を絞り加工することにより製造されている。例えば、特開平11−169993号公報(特許文献1)には、モリブデン鍛造体を用いたルツボが開示されているが、鍛造加工は鍛造加工に伴う押圧や引き延ばしにより粒径の大きなモリブデン結晶粒が発生しやすく、特に加工量の大きい角部においてこのような現象が顕著となるために高温強度が低下しやすい。
また、モリブデンからなる板材を絞り加工する方法については、側壁部の肉厚減少が避けられず、また底部と側壁部とを繋ぐ角部の繊維組織がみだれやすくなるために高温強度に大きなバラツキが発生する。
特開平11−169993号公報
上記のように従来のモリブデン製ルツボは加工歪みが生じやすく、特に加工量の大きい角部には残留歪みが発生しやすく、これにより高温で使用した場合にモリブデン結晶粒の再結晶化が加速されて高温強度が低下しやすくなる。さらに、角部を厚くすることで高温強度を確保することも考えられるが、通常は板材を用いるために必ずしも角部についてのみ厚くすることは容易でない。
このようにモリブデン製ルツボの高温強度を向上させるために様々な検討が行われているものの、未だ十分な高温強度、特に底部と側壁部とを連結する角部の高温強度に優れるモリブデン製ルツボは得られていない。本発明は上記した課題を解決するためになされたものであって、高温強度、特に底部と側壁部とを連結する角部の高温強度に優れるモリブデン製ルツボを提供することを目的としている。また、本発明は、このような高温強度に優れるモリブデン製ルツボを容易に製造するための製造方法を提供することを目的としている。さらに、本発明は、このような高温強度に優れるモリブデン製ルツボを用いたサファイア単結晶の製造方法を提供することを目的としている。
本発明のモリブデン製ルツボは、純度99%以上のモリブデンからなり、底部と側壁部とが角部を介して連結された上部開放の有底筒状のものであって、前記モリブデンは、粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合が粒子数の割合で90%以上であり、前記側壁部に対する前記角部のモリブデン結晶粒の平均粒径の比が0.8以上1.2以下であることを特徴とする。
本発明のモリブデン製ルツボは、例えば開口部の内径が100mm以上のものとして好適に用いられる。本発明のモリブデン製ルツボは、例えば側壁部と角部との厚さが同じであってもよいし、異なるものとすることもできる。また、本発明のモリブデン製ルツボは、例えば密度が10g/cm以上であることが好ましい。
本発明のモリブデン製ルツボは、例えばサファイア単結晶を製造するための原料の融液を入れるものとして好適に用いられる。このような本発明のモリブデン製ルツボは、例えばHIP処理により製造されたことが好ましく、鍛造加工されていないことが好ましい。
本発明のモリブデン製ルツボの製造方法は、底部と側壁部とが角部を介して連結され、前記側壁部に対する前記角部のモリブデン結晶粒の平均粒径の比が0.8以上1.2以下である上部開放の有底筒状のモリブデン製ルツボを製造するためのものであって、少なくとも純度99%以上のモリブデン粉末をHIP処理する工程を有することを特徴とする。本発明のモリブデン製ルツボの製造方法については、HIP処理の後、塑性加工を行わないことが好ましい。
本発明のサファイア単結晶の製造方法は、原料の融液から結晶成長によりサファイア単結晶を製造するものであって、原料の融液を入れるルツボとして上記した本発明のモリブデン製ルツボを用いることを特徴とする。
本発明によれば、純度99%以上のモリブデンからなり、底部と側壁部とが角部を介して連結された上部開放の有底筒状のモリブデン製ルツボにおいて、上記モリブデンの粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合を粒子数の割合で90%以上とすることで、高温強度、特に底部と側壁部とを連結する角部の高温強度に優れるモリブデン製ルツボとすることができる。
また、本発明によれば、底部と側壁部とが角部を介して連結された上部開放の有底筒状のモリブデン製ルツボを製造するモリブデン製ルツボの製造方法において、少なくとも純度99%以上のモリブデン粉末をHIP処理する工程を有するものとすることで、高温強度、特に底部と側壁部とを繋ぐ角部の高温強度に優れるモリブデン製ルツボを容易に製造することができる。
さらに、本発明によれば、原料の融液から結晶成長によりサファイア単結晶を製造するサファイア単結晶の製造方法において、この原料の融液を入れるルツボとして本発明のモリブデン製ルツボを用いることで、サファイア単結晶の製造に用いられる製造装置の稼働時間を長くすることができ、これによりサファイア単結晶の生産性を向上し、その生産コストを低減することができる。
本発明のモリブデン製ルツボの一例を示す断面図。 本発明のモリブデン製ルツボの変形例を示す断面図。 本発明のモリブデン製ルツボの他の変形例を示す断面図。 本発明のモリブデン製ルツボのさらに他の変形例を示す断面図。
以下、本発明について図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明のモリブデン製ルツボの一例を示す断面図である。本発明のモリブデン製ルツボ1は純度99%以上のモリブデンからなるものであって、略板状の底部2と、この底部2の外周部を囲むように所定の高さに設けられる側壁部3と、これら底部2と側壁部3とを連結する角部4とを有し、これらが上部の開放された有底筒状となるように一体に形成されたものである。角部4は、例えば底部2や側壁部3と略同様な厚さとされると共に、弧状に湾曲するものとされており、側壁部3は、角部4から略垂直に立ち上がるものとされている。また、純度は99.9%以上と高純度である程よい。
なお、本発明のモリブデン製ルツボ1としては、少なくともルツボとしての機能を有するものであれば特にその形状は制限されるものではなく、例えば図2に示すように角部4が底部2や側壁部3よりも厚くされていてもよいし、また例えば図3に示すように角部4が略直角に折れ曲がるものとされていてもよいし、さらに例えば図4に示すように側壁部3が底部2から開口部側に向かって徐々に拡径するものとされていてもよい。
本発明のモリブデン製ルツボ1は、特に粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合が粒子数の割合で90%以上であることを特徴としている。すなわち、モリブデン結晶粒の全粒径の粒子数に対する粒径が10μm以上100μm以下の粒子数の割合((粒径が10μm以上100μm以下の粒子数)/(全粒径の粒子数)×100[%])が90%以上となるものである。
このように粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合を90%以上とすることで、言い換えれば粒径が10μm未満といった微小なモリブデン結晶粒や、粒径が100μmを超えるような過大なモリブデン結晶粒を少なくし、全体としての粒径の大幅なバラツキを抑えることで、高温強度、特に底部2と側壁部3とを連結する角部の高温強度に優れるものとすることができる。
なお、90%以上含まれる粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒は、必ずしも粒径が10μm以上100μm以下の中から選ばれる単一の粒径から構成されている必要はなく、粒径が10μm以上100μm以下の範囲内であれば異なる粒径のモリブデン結晶粒から構成されることができる。
また、粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合は、具体的には従来例である鍛造加工により製造した場合に粒径の大きなモリブデン結晶粒が発生しやすい角部4における任意の2箇所と、そうでない側壁部3における任意の2箇所との計4箇所の測定箇所について求められる粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合を平均して求められるものである。
それぞれの測定箇所における粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合は、具体的には線インターセプト法により求められるものである。すなわち、まずモリブデン製ルツボ1の個々の測定箇所となる断面について500μm×500μmの大きさの拡大写真を撮り、この写真上において任意に直線を引き、この直線が横切るモリブデン結晶粒の粒子数を測定すると共に、この直線が横切る個々のモリブデン結晶粒の粒径(直線が横切る部分における粒径、すなわちモリブデン結晶粒を横切る直線の長さ)を測定する。
そして、このようにして測定されたモリブデン結晶粒の粒子数と、粒径が10μm以上100μm以下となるモリブデン結晶粒の粒子数とから、上記式により個々の測定箇所における粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合を求めることができる。また、このようにして求められた個々の測定箇所(2箇所(角部4)+2箇所(側壁部3)、計4箇所)における粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合をさらに平均することで、最終的な平均値としての粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合を求めることができる。
このようなモリブデン製ルツボ1は、高温強度、特に底部2と側壁部3とを連結する角部の高温強度に優れていることから、大型のもの、特に開口部の内径が100mm以上となるようなものに好適に用いることができる。
モリブデン結晶粒の平均粒径は40μm以上70μm以下であることが好ましい。このような平均粒径であれば、高温強度、特に底部2と側壁部3とを連結する角部の高温強度に優れるものとなりやすい。なお、ここでのモリブデン結晶粒の平均粒径は、角部4における任意の2箇所と、側壁部3における任意の2箇所との計4箇所の測定箇所について求められるモリブデン結晶粒の平均粒径をさらに平均して求められるものである。個々の測定箇所におけるモリブデン結晶粒の平均粒径は、上記したような線インターセプト法によりモリブデン結晶粒の粒子数と個々のモリブデン結晶粒の粒径とを測定し、この個々のモリブデン結晶粒の粒径の合計をモリブデン結晶粒の粒子数で除すことにより求められるものである。
側壁部3と角部4との厚さは同じであってもよいし異なっていてもよいが、角部4の高温強度を確保する観点から側壁部3に対して角部4が厚くなっていることが好ましく、例えば側壁部3に対する角部4の厚さの比(角部4の厚さ/側壁部3の厚さ)が1.2以上となっていることが好ましい。厚さの比が上記した範囲よりも小さいと角部4の高温強度を向上させる効果が必ずしも十分でなく、また上記した範囲内であれば角部4の高温強度を十分なものとすることができ、これを超えて大きくなるとかえってモリブデン製ルツボ1の重量が不必要に増加するおそれがあるために好ましくない。
側壁部3、角部4における厚さを測定する部位は必ずしも限定されるものではないが、通常、側壁部3については、例えば図1の波線5で示すような側壁部3の高さ方向の略中間部であることが好ましく、また角部4については、例えば図1の波線6で示すように、角部4の湾曲部分における内面および外面のそれぞれの径方向の略中間部を結ぶ部分であることが好ましい。
また、側壁部3に対する角部4のモリブデン結晶粒の平均粒径の比(角部4のモリブデン結晶粒の平均粒径/側壁部3のモリブデン結晶粒の平均粒径)は0.8以上1.2以下であることが好ましい。平均粒径の比が上記した範囲外となる場合、いずれの場合についても側壁部3と角部4との間に平均粒径の大きなバラツキがあることとなり、高温強度に優れないものとなるおそれがある。
なお、側壁部3、角部4のモリブデン結晶粒の平均粒径は、具体的にはそれぞれ任意の2箇所の測定箇所について求められるモリブデン結晶粒の平均粒径をさらに平均して求められるものである。個々の測定箇所におけるモリブデン結晶粒の平均粒径は、上記したような線インターセプト法によりモリブデン結晶粒の粒子数と個々のモリブデン結晶粒の粒径とを測定し、この個々のモリブデン結晶粒の粒径の合計をモリブデン結晶粒の粒子数で除すことにより求められるものである。
側壁部3、角部4におけるモリブデン結晶粒の平均粒径の測定箇所は必ずしも限定されるものではないが、例えば側壁部3については、例えば図1の波線5で示すような側壁部3の高さ方向の略中間部であることが好ましい。また、角部4については、例えば図1に示すように角部4が弧状に湾曲するものについては、この弧状に湾曲する部分の範囲内であることが好ましく、また例えば図3に示すように角部4が角状であるものについては、同図に示す底部2の内面の延長面2aと側壁部3の内面の延長面3aとで囲まれる範囲内であることが好ましい。
また、モリブデン製ルツボ1の密度は10g/cm以上であることが好ましい。純モリブデンの理論密度は10.2g/cmであり、このような理論密度に近いものとすることで、例えばサファイア単結晶の製造に用いた場合、この原料の融液がモリブデン製ルツボ1から染みだすことを抑制することができる。
このようなモリブデン製ルツボ1は、モリブデン粉末をHIP(熱間静水圧プレス)処理することにより製造されたものであることが好ましく、特にHIP処理後に鍛造加工されていないことが好ましい。なお、本発明のモリブデン製ルツボ1については、鍛造加工されていないことが好ましいが、例えばHIP処理後に形状を整えるための切削加工等が行われていても構わない。
HIP処理によれば、結晶組織が緻密で安定したものを得ることができ、特に粒径が100μmを超えるような過大なモリブデン結晶粒の発生が少なく、上記した粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合が90%以上であるものを容易に得ることができる。また、HIP処理によれば、上記した密度が10g/cm以上のものや、側壁部3に対する角部4の平均粒径の比が0.8以上1.2以下のものを容易に得ることができる。
また、HIP処理によれば、厚さに関して従来の鍛造加工のような製造上の制限が少なく、側壁部3と角部4とで厚さが異なるものを容易に製造することができ、例えば側壁部3に対して角部4を厚くするようにすることで、角部4の高温強度に優れるものとすることができる。
さらに、鍛造加工を行う場合、加工時の押圧による引き延ばしなどにより粒径が100μmを超えるような過大なモリブデン結晶粒が発生しやすく、特に角部4のような加工量の大きい部分に過大なモリブデン結晶粒が発生して高温強度が低下しやすくなるが、HIP処理後に鍛造加工を行わないものとすることで、このような過大なモリブデン結晶粒の発生を抑制し、高温強度、特に角部4の高温強度に優れたものとすることができる。
また、鍛造加工を行う場合、角部4に残留歪みが発生しやすく、これにより高温での使用時に再結晶化が加速されて高温強度が低下しやすくなるが、HIP処理後に鍛造加工を行わないものとすることで角部4における残留歪みの発生を抑制し、これにより再結晶化を抑制して高温強度に優れたものとすることができる。
次に、本発明のモリブデン製ルツボ1の製造方法について説明する。
本発明のモリブデン製ルツボ1の製造方法は、底部2と側壁部3とが角部4を介して連結された上部開放の有底筒状のモリブデン製ルツボ1を製造するための製造方法であって、少なくとも純度99%以上のモリブデン粉末をHIP処理する工程を有するものである。また、本発明の製造方法については、主としてHIP処理により製造することが好ましく、HIP処理後に鍛造加工を行わないことが好ましい。
このような製造方法によれば、上記したような高温強度に優れる本発明のモリブデン製ルツボ1を容易に製造することができる。なお、本発明のモリブデン製ルツボ1の製造方法については、鍛造加工以外のものについては必ずしも制限されるものではなく、例えばHIP処理後に形状を整えるための切削加工等を行うことも可能である。
純度99%以上のモリブデン粉末は、直接HIP処理してモリブデン製ルツボ1とする他、例えばプレス成形により成形体とし、これをHIP処理することによりモリブデン製ルツボ1としてもよい。モリブデン粉末は、例えば平均粒径が1μm以上100μm以下、より好ましくは5μm以上70μm以下のものが好適に用いられる。モリブデン粉末の平均粒径が上記範囲外となる場合、最終的に得られるモリブデン製ルツボ1における粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合が90%以上とならず、高温強度が十分でなくなるおそれがある。
モリブデン粉末の成形方法は必ずしも限定されるものではなく、例えば一軸金型プレスを用いて行ってもよいし、また例えば一軸金型プレスを用いて予備成形した後、ゴム型を用いてCIP(冷間静水圧プレス)を行ってもよい。また、成形圧力は、例えば50MPa以上200MPa以下とすることが好ましい。成形圧力が上記した範囲よりも小さい場合、例えばHIP処理したとしても十分に緻密化させることができず、高温強度が十分でなく、また密度も十分なものとならないおそれがある。また、成形圧力が上記した範囲よりも大きい場合、例えば成形金型の耐久性が低下するおそれがあるため好ましくない。
HIP処理は、モリブデン粉末、またはその成形体を高温においても被覆可能な金属製あるいはガラス製容器等に封入脱気し、不活性雰囲気媒体を通じて等方的に加圧しながら加熱焼結する方法で、例えばホットプレスが一軸方向の加圧であるのに対し等方加圧であるためにより均質高密度の焼結体を低温焼結で得ることができる。
また、HIP処理は、例えば成形体を予め理論密度よりも僅かに低い密度となるように予備焼結した後、この予備焼結体をHIP処理することによりモリブデン製ルツボ1としてもよい。このように予め予備焼結を行った後、HIP処理することで、より均質高密度なモリブデン製ルツボ1を得ることができる。
HIP処理は、例えば不活性雰囲気媒体中、1000℃以上2000℃以下、圧力50MPa以上200MPa以下の条件で3時間以上10時間以下行うことが好ましい。HIP処理の温度、圧力が上記範囲よりも低い場合、また処理時間が上記範囲よりも短い場合、十分に緻密化させることができず、高温強度に優れないものとなるおそれがある。また、HIP処理の温度、圧力、処理時間は上記範囲内とすれば十分に緻密化させることができ、このような範囲を超えて温度、圧力を高くし、また処理時間を長くすると、かえってモリブデン結晶粒が過度に粒成長して高温強度が低下するおそれがあり、また製造装置に過大な負荷がかかり、生産性が低下するおそれがあるために好ましくない。
なお、HIP処理は、最終的に得られるモリブデン製ルツボ1における粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合が90%以上となるように、好ましくは密度が10g/cm以上、側壁部3に対する角部4の平均粒径の比が0.8以上1.2以下となるように、上記した温度、圧力、処理時間の範囲内において適宜、温度、圧力、処理時間を調整して行うことが好ましい。
また、HIP処理であれば内径100mm以上、さらには内径200mm以上の大型のルツボを製造することができる。なお、内径の上限は特に限定されるものではないが400mm以下が好ましい。400mmを超えるとHIP処理時に均一な焼結体を調製する工程が煩雑になる。
このようにして得られるモリブデン製ルツボ1は、金属蒸発容器、金属酸化物溶解容器、結晶製作用容器等の高温下で用いられる製造装置の一構成部品として好適に用いることができ、特に青色LED用のGaN成膜基板等の基板材料として好適に使用されるサファイア単結晶の製造に用いることができる。
サファイア単結晶の製造は、例えばルツボ内に原料を入れて溶融し、この融液にサファイア単結晶からなる種結晶を接触させ、これを回転させながら引き上げることで単結晶を成長させるものである。本発明のモリブデン製ルツボ1は、このような原料の融液を入れるためのルツボとして好適に用いられる。
具体的には、引き上げ装置として、例えば上部が開口する有底筒状の加熱炉と、この加熱炉の上方から挿入されるようにして配置される引き上げ棒とを有するものを用いる。引き上げ棒の下部先端側には種結晶が固定されている。また、モリブデン製ルツボ1は、このような引き上げ装置における加熱炉の内側底部に配置される。
このような引き上げ装置においては、まずモリブデン製ルツボ1内にサファイア単結晶の原料となる酸化アルミニウムを投入し、溶融させて融液を得る。その後、融液が入ったモリブデン製ルツボ1に種結晶を固定した引き上げ棒を入れて種付けを行う。その後、引き上げ棒を回転させながら引き上げて、サファイア単結晶である略円柱状の単結晶インゴットを得る。
以下、本発明について実施例を参照して具体的に説明する。
(実施例1〜3)
純度99%以上のモリブデン粉末(平均粒径10μm)を用い、1000℃以上2000℃以下、圧力50MPa以上200MPa以下の条件で3時間以上10時間以下のHIP処理を行うことによりモリブデン製ルツボを製造した。
なお、各実施例で製造したモリブデン製ルツボの全体形状、角部形状、厚さ(角部、側壁部)は表1に示す通りとした。すなわち、実施例1、3のモリブデン製ルツボは、図1に示すように角部が側壁部とほぼ同様な厚さであって弧状に湾曲し、側壁部3が角部4から略垂直に立ち上がるものとした。また、実施例2のモリブデン製ルツボは、図2に示すように角部が側壁部に比べて極端に厚いものとした。
さらに、各モリブデン製ルツボ1の全体形状等の調整は、主として成形段階における成形体の全体形状等を調整することにより行った。また、HIP処理は、最終的に得られるモリブデン製ルツボにおける粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合が90%以上となるように、上記した温度、圧力、時間の範囲内で適宜、温度、圧力、時間を調整して行った。
(比較例1)
純度99%以上のモリブデンからなる板材(モリブデン結晶粒の平均粒径10μm)に鍛造加工を行うことによりモリブデン製ルツボを製造した。なお、モリブデン製ルツボの全体形状、角部形状、厚さ(角部、側壁部)は表1に示す通りとした。
(比較例2)
モリブデン製ルツボにおける粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合が90%未満となるようにHIP処理を行った以外は実施例1〜3と同様の方法によりモリブデン製ルツボを製造した。なお、モリブデン製ルツボの全体形状、角部形状、厚さ(角部、側壁部)は表1に示す通りとした。
Figure 0005433300
次に、実施例1〜3、比較例1、2のモリブデン製ルツボについて、粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合、モリブデン結晶粒の平均粒径、側壁部に対する角部のモリブデン結晶粒の平均粒径の比、密度を測定した。
なお、粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合、モリブデン結晶粒の平均粒径、側壁部に対する角部のモリブデン結晶粒の平均粒径の比については、上記したインターセプト法を利用した方法により求めた。また、密度はアルキメデス法により求めた。結果を表2に示す。
また、実施例1〜3、比較例1、2のモリブデン製ルツボについて耐久性の評価を行った。耐久性の評価は、まずモリブデン製ルツボに対して2000℃で100時間の熱処理を行い、その後に上記したモリブデン結晶粒の平均粒径と同様にしてモリブデン結晶粒の平均粒径を測定し、熱処理前のものと比較した。結果を表2に併せて示す。なお、評価は、熱処理前と熱処理後のモリブデン結晶粒の平均粒径を比較し、粒成長が50%以下であったものを耐久性に優れるものとみなして「○」で示し、粒成長が50%を超えるものを耐久性が不十分であるものとみなして「×」で示した。
Figure 0005433300
表2から明らかなように、鍛造加工により製造した比較例1のモリブデン製ルツボについては、モリブデン結晶粒の平均粒径が70μmを超える大きなものとなり、粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合も50%と低く、また側壁部と角部とのモリブデン結晶粒の平均粒径に大きなバラツキが発生し、結果として耐久性に優れないものとなることが認められた。これに対して、HIP処理により製造した実施例1〜3のモリブデン製ルツボについては、モリブデン結晶粒の平均粒径を40μm以上70μm以下とすることができ、また粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合も90%以上とすることができ、さらに側壁部に対する角部のモリブデン結晶粒の平均粒径の比も0.8以上1.2以下とすることができ、結果として耐久性に優れるものとなることが認められた。また、密度についても10.10〜10.17g/cmと高密度のものが得られた。
(実施例4〜7)
モリブデン粉末として平均粒径が8〜15μmのものを用いると共に、モリブデン製ルツボの全体形状、厚さ(角部、側壁部)を表3に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてモリブデン製ルツボを製造した。なお、HIP処理は、最終的に得られるモリブデン製ルツボにおける粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合が90%以上となるように、上記した温度、圧力、時間の範囲内で適宜、温度、圧力、時間を調整して行った。
Figure 0005433300
次に、このようにして製造された実施例4〜7のモリブデン製ルツボについて、実施例1と同様にして粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合、モリブデン結晶粒の平均粒径、側壁部に対する角部のモリブデン結晶粒の平均粒径の比、密度を測定すると共に、耐久性の評価を行った。結果を表4に併せて示す。
Figure 0005433300
表4から明らかなように、HIP処理により製造した実施例4〜7のモリブデン製ルツボについては、その全体形状、特に大きさにかかわらず、モリブデン結晶粒の平均粒径を40μm以上70μm以下とすることができ、また粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合も90%以上とすることができ、さらに側壁部に対する角部のモリブデン結晶粒の平均粒径の比も0.8以上1.2以下とすることができ、結果として耐久性に優れるものとなることが認められた。
1…モリブデン製ルツボ
2…底部
3…側壁部
4…角部

Claims (10)

  1. 純度99%以上のモリブデンからなり、底部と側壁部とが角部を介して連結された上部開放の有底筒状のモリブデン製ルツボであって、
    前記モリブデンは、粒径が10μm以上100μm以下のモリブデン結晶粒の割合が粒子数の割合で90%以上であり、前記側壁部に対する前記角部のモリブデン結晶粒の平均粒径の比が0.8以上1.2以下であることを特徴とするモリブデン製ルツボ。
  2. 前記モリブデン製ルツボは開口部の内径が100mm以上であることを特徴とする請求項1記載のモリブデン製ルツボ。
  3. 前記モリブデン製ルツボは密度が10g/cm以上であることを特徴とする請求項1または2記載のモリブデン製ルツボ。
  4. 前記側壁部と前記角部との厚さが異なることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載のモリブデン製ルツボ。
  5. 前記モリブデン製ルツボはサファイア単結晶を製造するための原料の融液を入れるものとして用いられることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載のモリブデン製ルツボ。
  6. 前記モリブデン製ルツボはHIP処理により製造されたものであって、鍛造加工されていないことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載のモリブデン製ルツボ。
  7. モリブデン結晶粒の平均粒径が40μm以上70μm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のモリブデン製ルツボ。
  8. 底部と側壁部とが角部を介して連結され、前記側壁部に対する前記角部のモリブデン結晶粒の平均粒径の比が0.8以上1.2以下である上部開放の有底筒状のモリブデン製ルツボを製造するための製造方法であって、
    少なくとも純度99%以上のモリブデン粉末をHIP処理する工程を有することを特徴とするモリブデン製ルツボの製造方法。
  9. 前記HIP処理の後、鍛造加工を行わないことを特徴とする請求項8記載のモリブデン製ルツボの製造方法。
  10. 原料の融液から結晶成長によりサファイア単結晶を製造するサファイア単結晶の製造方法であって、
    前記原料の融液を入れるルツボとして請求項1乃至7のいずれか1項記載のモリブデン製ルツボを用いることを特徴とするサファイア単結晶の製造方法。
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