JP5771323B1 - 坩堝およびそれを用いた単結晶サファイアの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
好ましくは、焼結は還元雰囲気で行われる。
本発明の実施形態にかかる坩堝の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
坩堝1では、C、N、Oの総和が100質量ppm以下であり、底面15と側面13の境界の角R部16のビッカース硬度が150HV以上、190HV以下であり、モリブデンを40質量%以上含む。残部はタングステンと不可避不純分である。含有するガス不純物のCが30質量ppm以下、Nが20質量ppm以下、Oが50質量ppm以下、である。
(1)Cが30質量ppm以下;30質量ppmを越えると、モリブデン或いは不純物元素への固溶量、合金化量が多くなっていると考えられる。その結果、結晶粒界の脆弱化に結びつき、膨れ不具合の発生確率が高くなる。
(1)モリブデン(理論密度10.2g/cm3);本願の真空高温熱処理によって残留する塑性加工歪は解放され、真空高温熱処理後のビッカース硬度は150から170である。
坩堝を構成する材料としてはサファイア溶融温度に耐える融点を持ち、高温強度が高いモリブデン、タングステン並びにモリブデン−タングステン合金が用いられている。モリブデン−タングステン合金中のタングステン含有量が60質量%を越えると、合金化技術が高度になり、コストアップとなるだけでなく、性質がタングステンに近似してくるため、採用するメリットは少ない。さらに、実施例においても膨れ解消の効果が認められなかった。
サファイア単結晶育成はCZ(Czochralski)法、HEM(Heat Exchange Method)法、EFG(Edge-defined Film-fed Growth)法などが適用され、商用生産が行われている。サファイア単結晶基板は、直径4インチ或いはそれ以上のサイズである。育成に使用されている高融点金属製坩堝形状の大部は円筒型であるので、サファイア単結晶基板用素材は疑円柱形状が多くを占めている。一方、EFG法により育成されるサファイア単結晶用素材は平板状であるが、これは育成用坩堝内側に平板育成専用の角形状工具をセットしている理由による。サファイア単結晶の結晶品質はアルミナ原料の融解・凝固時の熱勾配に影響を大きく受けるので、熱保持板などによる均熱凝固に留意した育成装置構成となっている。このため円筒型坩堝にセットできる工具の数は限定され、育成効率の点で改良が求められている。角型形状坩堝を採用により工具セット数を、円筒型坩堝に比べて増加させることが可能となり、効率的なサファイア単結晶用素材の育成に貢献することとなる。
工程1;原料
FSSS(Fisher sub-sieve sizer)粒度が4μm〜5μm、純度99.5質量%のモリブデン金属粉末、およびFSSS粒度が2μm〜3μm、純度99.5質量%のタングステン金属粉末を準備する。タングステン含有量が50質量%を越えるモリブデン‐タングステン合金用の原料は、それぞれの酸化物粉末を所要の合金比率に設計・秤量後混合し、さらに水素中還元する事前処理したものを使用する。事前に合金化処理を施した部分合金属金粉末はFSSS粒度1μm〜2μm、純度99.5質量%である。
角型坩堝用素材の焼結上がりサイズは概略、壁部厚さ35mm×底部厚さ25mm×短辺外寸140mm×長辺外寸220mm×総高さ105mmである。これを製作するために必要な粉末は、以下のとおりである。モリブデン焼結体用は15.0kg、7MW焼結体用はモリブデン12.3kg、タングステン5.2kgで、合計17.5kg。4MW焼結体用はモリブデン8.4kg、タングステン12.5kgで合計20.9kgであり、3MW焼結体用の部分合金粉末は22.4kgを秤量し、V型ミキサーで混合する。混合時間は60分とした。混合はダブルコーンミキサー、ボールミルなどを用いても所望の混合品質を得ることができる。
角型坩堝形状に金属粉末を成形する治具の構成は、底付き角筒状鉄ケースの中に角筒状ラバーケースをセッティングし、角筒状ラバーケース中央にステンレス鋼製の角部をR取りした直方体中子が置かれる。所要の秤量と混合を終えたそれぞれの粉末を直方体中子周囲に投入し、底付き角筒状鉄ケースごとタッピング動作を繰り返して直方体中子周囲の粉末面が直方体中子上面と均一になるように充填した。その後角型坩堝の底部となる分の粉末をさらに投入し、タッピング動作を繰り返して粉末充填作業を終了する。角筒状ラバーケースの開口部を締め金具で封止し、角筒状ラバーケース内を注射針を用いて真空引きした後、表面を水洗浄したうえで、静水圧プレス(CIP)装置内に装填し、2ton/cm2の圧力で成形した。徐圧後CIP装置から底付き角筒状鉄ケースごと取り出し、底付き角筒状鉄ケースから角筒状ラバーケースを引き出して表面の水分を除去した。締め金具を開放して角筒状ラバーケース内から角型坩堝形状の粉末成型体を取り出し、細かな突起やバリを紙やすりなどで除去し、成形を完了する。
角型坩堝形状の粉末成型体は連続式水素焼結炉を利用して焼結される。モリブデン製の焼結ボート上に融着防止用のアルミナ粒を散布し、焼結炉内へ挿入される。モリブデン角型坩堝用粉末成形体は1800℃、モリブデン‐タングステン合金角型坩堝用粉末成形体は2000℃、時間はそれぞれ10時間焼結した後に炉から取り出し、表面のアルミナ粒を金属ブラシなどで除去し、角型坩堝用焼結体が出来上がる。焼結上がりのままの焼結体の底部中央付近は坩堝内側へ凸状にやや変形していた。短辺壁部および長辺壁部も共に坩堝内側に弧状にやや変形し、短辺壁部の変形量が長辺壁部の変形量よりも少なかった。これらの現象は短辺壁部と長辺壁部をつなぐR部分、および底部と壁部をつなぐR部分がR20mm未満の場合に大きくなる傾向にあった。このため、製品寸法に仕上げるには、余肉量を多くする設計・実作が必要であった。
前工程4における水素焼結によって、粉末成型体の焼結密度は、どの合金比率の焼結体においても理論密度比約95%程度となり、焼結体内部には多くのガス不純物が内包されている。C、N、Oガス不純物含有量を減少させるために、2000℃で10時間の真空高温脱ガス処理を5×10-6Torr(5×10-6×133Pa)以下の真空下で行う。この高温処理によって焼結密度は約1%向上し、それぞれ96%程度へ上昇した。しかしながら、まだ多くのガス不純物を内包している。
マシニングセンター(以下、MCと略記)に角型坩堝用焼結体をセットし、フラットエンドミル並びにボールエンドミルを用いて外周面並びに内周面を切削して角型坩堝製品に仕上げた。仕上がり寸法は、壁部並びに底部の厚さが10mmで、短辺外寸130mm、長辺外寸210mm、総高さ85mmである。モリブデン-タングステン合金坩堝の被削性はモリブデン坩堝に比べて若干劣ってはいたが、仕上がり表面性状の差異に繋がるような違いはなく、切削仕上げ面のRaは3〜4μmで、割れ、ボイドなどの欠陥は目視検査、超音波探傷検査で認められず良好であった。
ガス不純物の低減を目的に、仕上げ加工を終了した坩堝に真空高温脱ガス処理を行った。加熱温度はモリブデン坩堝の場合は1800℃〜2000℃、モリブデン‐タングステン合金坩堝の場合は2000℃〜2200℃でそれぞれ1時間行った。到達真空度は5×10-6Torr(5×10-6×133Pa)以下であった。
サファイア育成装置を利用して、膨れ不具合の発生状況について調査した。製作したそれぞれの坩堝の中にアルミナ粉末を充填し、2100℃に加熱融解後10時間保持、そして500℃までの冷却を1サイクルとして、5サイクル終了後の状況を目視にて観察した。本願発明坩堝並びに比較例の坩堝、は同様の冷熱負荷を与えて評価した。高温加熱とともに冷熱負荷を与えた目的は、熱膨張・収縮が坩堝を構成する多結晶材料の結晶粒界面への熱ストレスを加速することで、膨れ不具合の発生頻度を高めることにある。評価結果を表1に示す。
Claims (4)
- モリブデンを40質量%以上含み、残部が実質的にタングステンである、焼結で製造された角型の坩堝であって、C、NおよびOの総含有率が100質量ppm以下であり底面と側面の境界の角R部での硬さが150HV以上190HV以下であり、Cの含有率が30質量ppm以下であり、Nの含有率が20質量ppm以下であり、Oの含有率が50質量ppm以下である、坩堝。
- 前記焼結の後に真空で脱ガス処理が行われる、請求項1に記載の坩堝。
- 前記焼結は還元雰囲気で行われる、請求項1または請求項2に記載の坩堝。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の坩堝内にアルミナの粉末を充填する工程と、
前記アルミナの粉末を加熱溶融した後に凝固させることで前記坩堝内に単結晶サファイアを形成する工程とを備えた、単結晶サファイアの製造方法。
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