以下、本発明のエアバッグ及びエアバッグ装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図3及び図4において、1はエアバッグ装置で、このエアバッグ装置1は、いわゆるカーテンエアバッグ装置であり、エアバッグ2を備え、図4に示すように、通常時には、車両である自動車の車体3の車室4の両側の被設置部であるルーフサイド部5に配置され、側面衝突の衝撃を受けた際や横転の際などに、主として上方から下方あるいはほぼ下方である所定方向(矢印F方向)に向かい、乗員の側方の所定面Sに沿って広く面状に展開し、被保護物である乗員を保護するようになっている。なお、以下の記載において、上下方向、長手方向である前後方向などの方向は、車両の直進方向を基準とし、内側及び外側は、車室4から両側の外方に向かう方向(図1に示す矢印A方向)を外側あるいは車外側、車外から車室4内に向かう方向(図1に示す矢印B方向)を内側あるいは車内側として説明する。
そして、この自動車の車体3は、車室4内に乗員が着座可能な前席及び後席を備え、これら前席及び後席に対応して、それぞれ窓部を備えた図示しないドアが設けられている。また、車室4の両側には、前側から順に、Aピラーとも呼ばれるフロントピラー11、Bピラーとも呼ばれるセンターピラー12、Cピラーとも呼ばれるリアピラー13が設けられている。そして、これら窓部、ドア及び各ピラー11,12,13により、車室4の両側部に所定面Sを構成する車体縦壁部が構成されている。また、これらピラー11,12,13の上側、すなわち窓部の一縁部である車体縦壁部の上縁部のルーフサイド部5にルーフサイドレールなどとも呼ばれる車体パネル15が設けられ、この車体パネル15を介して天井部としての天井パネル16が支持されている。
また、両側のフロントピラーの前側にはフロントガラス(フロントウインドシールド)17が設けられ、両側のリアピラー13の後側にはリアガラス(リアウインドシールド)が設けられている。そして、ルーフサイド部5は、天井パネル16の両側の縁部の部分から、この縁部といわば交差する前後方向に伸びるフロントピラー11の一部あるいは全長、及び、必要に応じてリアピラー13の一部あるいは全長にかかる部分に設定されている。
また、車体パネル15及び天井パネル16の車室4側の一部は、各ピラー11,12,13の一部とともに、軟質すなわち変形可能な天井板であり室内装飾パネルであるヘッドライニング(ルーフライニング)により覆われている。そして、各ピラー11,12,13の全長あるいは一部の車室4側には、それぞれ内装材である第1ないし第3のピラーガーニッシュが取り付けられ、これらピラー11,12,13が覆われている。例えば、センターピラー12には、図10に示すように、内装材としての樹脂製のガーニッシュ20が備えられている。
そして、エアバッグ装置1は、頭部保護装置、カーテンエアバッグモジュールあるいはルーフサイドモジュールなどとも呼ばれる車両の側面衝突時に乗員の頭部などを保護する膨張式拘束装置であり、エアバッグ2に加え、エアバッグ2にガスを供給するガス発生器であるインフレータ22、エアバッグ装置1を車体パネル15に取り付ける図示しない単数あるいは複数のブラケット、及び必要に応じてエアバッグ2に沿って配置される案内体であるプロテクタなどを組み合わせてモジュールが構成され、このモジュールが車体パネル15のルーフサイド部5に沿って配置されている。すなわち、エアバッグ装置1及び折り畳まれたエアバッグ2の軸方向である長手方向(図4における矢印L方向)が、ルーフサイド部5の長手方向である前後方向に沿うようにして、エアバッグ装置1が車体3に取り付けられている。
そして、エアバッグ2は、図1ないし図5に示すように、カーテンエアバッグ、サイドカーテンエアバッグあるいは側突用エアバッグなどとも呼ばれるもので、各図においては模式的に示しているが、単数あるいは複数の基布を組み合わせ、例えば1枚の基布を折り返し、あるいは2枚の基布を重ねて外周部などを糸で接合して、扁平な袋状に形成されたエアバッグ本体31と、このエアバッグ本体31の複数カ所から延設された取付片部32と、仮固定手段としてのテープ33と、エアバッグ本体31の前端部に連結されたテザーベルト34となどを備え、所定の折り畳み方法で長手方向を有して細長く折り畳まれたエアバッグ本体31が、複数カ所で巻き付けられたテープ33により折畳形状を保持されている。
そして、このエアバッグ2は、前後の座席の乗員を保護可能な、前後方向に長尺ないわゆる前後席用エアバッグであり、図4に示すように、エアバッグ本体31には、ガスが流入して膨張展開する袋状の膨張部36と、エアバッグ本体31の後端上部あるいは長手方向の中央上部などに位置して膨張部36を外部に連通するガス導入口37と、ガスが流入せず膨張展開しない非膨張部38となどが設けられている。そして、膨張部36は、中空部である気室であり、展開時に前席の乗員の側方に対向して展開する前席保護部36aと、展開時に後席の乗員の側方に対向して展開する後席保護部36bと、これら前席保護部36aと後席保護部36bとを連通するガス案内部36cとを備えている。また、このガス案内部36cは、エアバッグ本体31の上縁部に沿って前後方向を長手方向とする直線状をなし、前席保護部36aと後席保護部36bとを連通している。また、エアバッグ2の取付片部32は、エアバッグ本体31の上縁部に連続して複数形成されている。そして、各取付片部32は、エアバッグ本体31を構成する基布部と一体に形成され、エアバッグ本体31から舌片状に突設されているとともに、先端部近傍に円孔状をなす取付片部取付孔32aが形成されている。
また、テザーベルト34は、テンションストラップなどとも呼ばれるもので、エアバッグ本体31の前端部とフロントピラー11の前端部近傍とを連結する紐状の基布であり、先端部には、フロントピラー11に連結される金具34aが取り付けられている。
また、図示しないが、前席保護部36a及び後席保護部36bに位置し、基布同士を糸や基布で連結して、これら保護部36a,36bすなわち膨張部36の展開時の幅寸法を規制する規制部が形成されている。また、必要に応じて、基布同士の間には、ガスを案内し、あるいは、展開時の膨張部27の幅寸法を規制する手段として、筒状のインナパイプが縫合などして取り付けられている。
また、テープ33は、いわゆる紙テープなどの粘着テープであり、エアバッグ2の展開時の力で破断可能になっている。
また、インフレータ22は、後席の後方あるいは上方などに位置して収納された円柱状の本体部22aを備え、接続管22bを介してエアバッグ2のガス導入口37に接続されている。
また、図示しないブラケットは、例えば鉄板をプレス加工して形成された金属製の金具であり、このブラケットを介して、エアバッグ2の取付片部32を車両の両側のルーフサイド部5に取り付け固定する。さらに、プロテクタは、例えば合成樹脂製で、膨張展開するエアバッグ本体31を案内するとともに車体3の溶接部やバリなどから保護するもので、折り畳んだエアバッグ2の略全長あるいは一部に沿って配置されている。
次に、このエアバッグ2の折畳形状すなわち折畳方法を説明する。
このエアバッグ2は、図1、図2及び図5などに示すように、第1の折畳部41、第2の折畳部42、及び第3の折畳部43を備え、上側すなわち上流側の第1の折畳部41及び第2の折畳部42により、案内部45が形成され、下側すなわち下流側の第3の折畳部43により、集積部46が形成されている。より詳細には、第1の折畳部41、第2の折畳部42、及び第3の折畳部43は、ガス導入口37から順次連通しこのガス導入口37からガスが順次供給されて膨張展開する部分を折り畳んだもので、第1の折畳部41は、ガス導入口37に直接に連通する部分、すなわちガス案内部36cを含み展開時に最も上側に位置する膨張部36を含む部分について、前後方向を長手方向とする折り線である第1の折返し部41aで1回折り返して平板状に折り畳まれている。そして、第2の折畳部42は、第1の折畳部41の下側に直接に連通する膨張部36を含む部分について、前後方向を長手方向とする折り線である第2の折返し部42aで1回折り返して平板状に折り畳まれている。さらに、第3の折畳部43は、第2の折畳部42の下側に直接に連通する膨張部36を含む部分について、下端部から所定方向に、本実施の形態では、下端部から所定面S側にロール状に巻回して折り畳まれている。そして、第1の折畳部41及び第2の折畳部42は、この第3の折畳部43に対して互いに反対側に配置され、すなわち、第1の折畳部41と第2の折畳部42との間に位置して第3の折畳部43が折り畳まれている。そして、本実施の形態では、第1の折畳部41が車内側すなわち反所定面S側に配置され、第2の折畳部42が車外側すなわち所定面S側に配置されて、これら第1の折畳部41及び第2の折畳部42で第3の折畳部43を上側から包囲し、全体としていわばパラソル状に折り畳まれている。
さらに、第1の折畳部41と第2の折畳部42とは少なくとも一部が重ねられた状態であり、すなわち第1の折畳部41の下端の先端部となる第1の折返し部41aと、第2の折畳部42の下端の先端部となる第2の折返し部42aとが重なるように配置されている。そして、この実施の形態では、エアバッグ2の長手方向のほぼ全長について、第1の折畳部41の第1の折返し部41aの第3の折畳部43側に、第2の折畳部42の第2の折返し部42aを含む部分が重ねて配置され、すなわち、第1の折畳部41の第1の折返し部41aと第3の折畳部43との間に、第2の折畳部42の第2の折返し部42aを含む部分が挟まれた状態となっている。言い換えれば、案内部45を構成する第1の折畳部41及び第2の折畳部42の一方の下端部が他方の下端部を押さえるようになっている。
そして、具体的なエアバッグ2の折畳工程は、まず、図1(a)及び(b)に示すように、エアバッグ2のエアバッグ本体31を潰し基布同士を重ねて平板状にした状態から、図1(b)の矢印R、図1(c)及び(d)に示すように、エアバッグ2のエアバッグ本体31を下端部から巻回して細長い第3の折畳部43を形成し、次いで、図1(e)及び(f)に示すように、第3の折畳部43の上側の部分を第2の折返し部42aで折り返して第2の折畳部42を形成するとともに、この第2の折畳部42のさらに上側の部分を第1の折返し部41aで折り返して第1の折畳部41を形成する。そして、図2(a)及び(b)に示すように、これら第1の折畳部41と第2の折畳部42とを第3の折畳部43の両側に沿わせ、すなわち、これら第1の折畳部41と第2の折畳部42とで第3の折畳部43を囲み、複数カ所にテープ33を巻き付けて形状を保持する。なお、図1(c)における破線47は第1の折畳部41と第2の折畳部42との境界を示す仮想線である。
さらに、このように第1の折畳部41と第2の折畳部42とを第3の折畳部43の両側に沿わせる際に、図5(a)及び(b)に示すように、まず、第2の折畳部42を第3の折畳部43に沿わせ、次いで、第1の折畳部41を第3の折畳部43に沿わせることにより、第1の折畳部41の第1の折返し部41aの第3の折畳部43側に、第2の折畳部42の第2の折返し部42aを含む部分を重ねて配置している。
そして、図3に示すように、折り畳んだエアバッグ2のガス導入口37にインフレータ22を接続し、さらに、図示しないブラケットやプロテクタを取り付けることにより、エアバッグ装置1のモジュールが構成される。
そして、このようにモジュール化されたエアバッグ装置1を車体3に取り付ける際は、機械あるいは作業者により、取付片部32すなわちブラケットをルーフサイド部5に沿わせた状態で保持し、このブラケットを、図示しないビスあるいはリベットなどの固着具により車体パネル15に固定して車体3に取り付ける。さらに、インフレータ22を車体3側に備えた制御装置に電気的に接続するとともに、エアバッグ装置1をヘッドライニングで覆うことにより、エアバッグ装置1の車体3への取付作業が完了する。
次に、エアバッグ2の展開動作を説明する。
車両の側面衝突あるいは横転などの際には、制御装置によりインフレータ22が作動し、このインフレータ22から噴射されるガスが接続管22bを介しガス導入口37からエアバッグ本体31内の膨張部36に導入される。すると、前後方向を長手方向として細長く折り畳まれたエアバッグ本体31の膨張部36が膨張展開を開始し、テープ33を破断するとともに、ヘッドライニングなどを押しのけ、車体縦壁部に沿って膨張展開し、すなわち所定面Sに沿った所定方向Fである下方あるいは略下方に迅速にカーテン状に膨張展開して、図4に示すように、窓部及びセンターピラー12などを覆い、乗員とセンターピラー12などとの衝突の衝撃を緩和するとともに、乗員の車外放出を防止して保護する。
そして、このエアバッグ本体31の展開挙動をより詳細に説明すると、ガス導入口37からエアバッグ2の膨張部36にガスが導入されると、このガスは第1の折畳部41、第2の折畳部42、第3の折畳部43の順で導入され、すなわち、第1の折畳部41、第2の折畳部42、第3の折畳部43の順で膨張展開する。この際、先に展開する第1の折畳部41により第2の折畳部42及び第3の折畳部43を案内し、第2の折畳部42の展開時に第3の折畳部43を案内して、第3の折畳部43を所望の位置から所望の方向に展開させ、エアバッグを好ましい所望の挙動で膨張展開できる。
さらに、この実施の形態では、第1の折返し部41aの第3の折畳部43側すなわち内側に、第2の折畳部42の第2の折返し部42aを重ねて配置したため、第2の折畳部42は、第1の折畳部41と第3の折畳部43とに挟まれて位置決め規制され、確実に第1の折畳部41が膨張展開してから第2の折畳部42を膨張展開させ、第3の折畳部43を安定して所望の挙動で膨張展開させることができる。
また、第3の折畳部43は、車体縦壁部をこするようにして、車体縦壁部に沿って展開する。
このように、本実施の形態によれば、長手方向に沿って細長く折り畳んだ状態から車体縦壁部に沿ってエアバッグ2を膨張展開させるカーテンエアバッグ装置であるエアバッグ装置1について、エアバッグ2にガスを供給することにより、第1の折畳部41、第2の折畳部42、第3の折畳部43の順で膨張展開させ、先に展開する部分で後に展開する部分を案内して、好ましい所望の挙動でエアバッグ2を展開させることができる。
そして、第1の折畳部41及び第2の折畳部42はともに迅速に展開可能な折り畳み形状であるが、先端部が重なり合って片方がもう一方を抑え込むようになっており、特に、展開の最初期にガス導入口37から直接にガスが供給される第1の折畳部41の折り形状の先端部と、この第1の折畳部41から直接にガスが供給される第2の折畳部42の折り形状の先端部とを重ねて配置したため、これら順次展開する第1の折畳部41と第2の折畳部42との直接的な相互作用により、展開挙動を効果的に制御できる。そして、本実施の形態では、第1の折返し部41aの第3の折畳部43側に、第1の折畳部41からガスが供給される第2の折畳部42を重ねて配置したため、第1の折畳部41が膨張展開した後に第2の折畳部42が膨張展開する効果を促進できる。すなわち、第2の折畳部42の最初期の展開は第1の折畳部41と第3の折畳部43とで挟むことにより抑制するとともに、第1の折畳部41にガスの圧力を集中してこの第1の折畳部41の迅速な展開を促進し、第1の折畳部41が膨張展開してから第2の折畳部42を膨張展開させる挙動を確実に実現し、第3の折畳部43を安定して所望の挙動で膨張展開させることができる。
さらに、エアバッグ2を折り畳んだ状態で、第3の折畳部43は第1の折畳部41及び第2の折畳部42により包囲され、第1の折畳部41と第2の折畳部42とが重ねて配置されたため、この第1の折畳部41と第2の折畳部42とが重ねられた部分では、第1の折畳部41と第2の折畳部42と位置決めすなわち折り畳み形状の維持を容易にでき、長手寸法の大きいエアバッグ2を数カ所のテープ33により折り畳み形状を容易に維持できるとともに、折畳作業後にはこれら第1の折畳部41と第2の折畳部42に包囲された第3の折畳部43側にほこりなどの異物を侵入し難くして、製造時、保管状態や輸送状態などのエアバッグ2の取り扱いを容易にでき、エアバッグ装置1の製造コストを低減できる。
また、折り畳んだエアバッグ2の全体をサックなどとも呼ばれる筒状のカバーで覆う構成に比べ、製造コストを低減できるとともに、第1の折畳部41の第1の折返し部41aあるいは第2の折畳部42の第2の折返し部42aの外側に露出した部分の位置を確認することにより、エアバッグ2の折り畳み状態を容易に確認でき、エアバッグ2の取り扱いを容易にできる。また、容易に破断するスリットを設けた筒状のカバーを用いて折り畳んだエアバッグ2の全体を覆う場合にも、重ね合わせた部分をテープ33により押さえることで折り畳み形状を確実に保持できるため、所定の折り畳み形状を維持したままカバーへ挿入する作業を容易にできる。
なお、第1の折畳部41と第2の折畳部42との重ね合わせ部分について、図5に示すように、エアバッグ装置1の細長く折り畳まれたエアバッグ2の前方側から後方側まで同一とし、第1の折畳部41の第1の折返し部41aの内側に、第2の折畳部42の第2の折返し部42aを重ねた構成では、重ね合わせの位置は、例えば図6に示すように、0°(鉛直方向)とし、この0°を基準として例えば60°からマイナス10°の範囲(車室側への角度θ1について0≦θ1≦60、車外側への角度θ2について0≦θ2≦10)で車体3のレイアウトに応じて適宜設定することが望ましい。なお、ここでは、第3の折畳部43の中心であるエアバッグ2の下端部を中心とし、重ね合わせの位置は、第1の折畳部41の第1の折返し部41aと第2の折畳部42の第2の折返し部42aとの間の中央位置とする。
すなわち、インフレータ22をモジュールの後端部に配置し、ガス導入口37をエアバッグ2の後端上部に設けるとともに、第1の折畳部41を車内側(反所定面S側)に配置し、第2の折畳部42を車外側(所定面S側)に配置した構成では、第1の折畳部41と第2の折畳部42との重ね合わせ部分の位置がマイナス10°より小さいと、第3の折畳部43が所定面Sすなわち車体縦壁部側へと展開してしまい、所望の乗員拘束性能を発揮しにくい傾向にある。一方、第1の折畳部41と第2の折畳部42との重ね合わせ部分の位置が60°より大きいと、第3の折畳部43が第1の折畳部41を下方から押し上げ、第3の折畳部43が直接的に乗員の頭部に干渉する傾向が生じる。
一方、第1の折畳部41と第2の折畳部42との重ね合わせ部分について、エアバッグ装置1の細長く折り畳まれたエアバッグ2の前方側から後方側まで同一とし、第1の折畳部41の第1の折返し部41aの内側に、第2の折畳部42の第2の折返し部42aを重ねた構成において、図7に示すように、ガス導入口37をエアバッグ2の長手方向の中間位置、例えば中央上部に設けるとともに、第1の折畳部41を車内側(反所定面S側)に配置し、第2の折畳部42を車外側(所定面S側)に配置した構成では、重ね合わせの位置は、例えば図8に示すように、鉛直方向から車室側に45°傾斜した角度の位置としたが、0°(鉛直方向)から90°の範囲(車室側への角度θ1について0≦θ1≦90、車外側への角度θ2について0≦θ2≦90)で車体3のレイアウトに応じて適宜設定することが望ましい。
すなわち、インフレータ22をモジュールの上部に配置し、ガス導入口37をエアバッグ2の中央上部に設けるとともに、第1の折畳部41を車内側(反所定面S側)に配置し、第2の折畳部42を車外側(所定面S側)に配置した構成では、第1の折畳部41及び第2の折畳部42の前後の末端までガスが迅速に行きわたり、第1の折畳部41及び第2の折畳部42の展開速度が、ガス導入口37をエアバッグ2の長手方向の一端部に設けた図3に示す実施の形態より速くなる傾向がある。そこで、この構成では、第1の折畳部41と第2の折畳部42との重ね合わせ部分の位置が0°より小さいと、すなわち、重ね合わせ部分が所定面S側に向いていると、第3の折畳部43が所定面Sすなわち車体縦壁部側へと展開してしまい、所望の乗員拘束性能を発揮しにくい傾向にある。一方、第1の折畳部41と第2の折畳部42との重ね合わせ部分の位置が90°より大きいと、すなわち、重ね合わせ部分が上方に向いていると、第3の折畳部43が第1の折畳部41を下方から押し上げ、第3の折畳部43が直接的に乗員の頭部に干渉する傾向が生じる。
また、上記の各実施の形態では、第1の折畳部41と第2の折畳部42との重ね合わせについて、車室側に位置する第1の折畳部41と第3の折畳部43との間に、所定面S側に位置する第2の折畳部42を挟んだが、この構成に限られず、第1の折畳部41の第1の折返し部41aに対して、第3の折畳部43の反対側すなわち外側に、第2の折畳部42の第2の折返し部42aを重ねて配置し、すなわち、第2の折畳部42と第3の折畳部43との間に、第1の折畳部41を挟み込むこともできる。
この構成では、第1の折畳部41の第1の折返し部41aが、この第1の折畳部41からガスが供給される第2の折畳部42と第3の折畳部43とにより位置決め規制され、第1の折畳部41の最初期の展開を抑制し、ガスの上流側である第1の折畳部41と下流側である第2の折畳部42との相対的な展開時間の差を小さくする挙動を容易に実現でき、第3の折畳部43を容易に所望の所定方向に展開させることができる。そして、エアバッグ2の展開方向を容易に設定できるため、センターピラー12のガーニッシュ20などの内装部品に干渉することなく、エアバッグ2を容易に円滑に展開させることができる。
さらに、上記の各実施の形態では、第1の折畳部41と第2の折畳部42との重ね合わせについて、細長く折り畳まれたエアバッグ2の前方側から後方側まで同一としたが、この構成に限られず、長手方向の一部と他の部分とで重ね合わせの状態を変化させ、あるいは、第1の折畳部41と第2の折畳部42とを重ね合わせない部分を設けることも出来る。
例えば、図9ないし図11に示すように、センターピラー12に対向する部分以外の部分(以下、一般部と称する)と、センタピラー12に対向する部分すなわちガーニッシュ20が存在する部分(以下、ピラー部Pと称する)とで、重ね合わせの状態を変化させ、一般部では、図9に示すように、図2に示す構成と同様に、第1の折畳部41の第1の折返し部41aに対し第3の折畳部43側すなわち内側に第2の折畳部42の第2の折返し部42aを重ね合わせ、ピラー部Pでは、図10に示すように、第1の折畳部41の第1の折返し部41aに対し第3の折畳部43の反対側すなわち外側に第2の折畳部42の第2の折返し部42aを重ね合わせることができる。この構成では、一般部の重ね合わせ位置は、例えば0°(鉛直方向)とし、ピラー部Pの重ね合わせ位置は、車外側(所定面S側)に向け、例えばマイナス10°に設定している。そして、この構成によれば、一般部では、図2に示す構成と同じく、エアバッグ2に、所定面S側である車外側(矢印F1方向)に向かって展開する傾向を付与するとともに、ピラー部Pでは、エアバッグ2に、反所定面S側である車内側(矢印F2方向)に向かって展開する傾向を付与し、センターピラー12のガーニッシュ20に干渉することなくエアバッグ2を円滑に展開させることができる。
また、位置により重ね合わせの状態を変化させる折畳形状は、図11(a)に示すように、第1の折畳部41と第2の折畳部42とを形成した後、図11(b)に示すように、まず、ピラー部Pで矢印D1に示すように第1の折畳部41を第3の折畳部43に沿わせ、次いで、一般部で矢印D2に示すように第2の折畳部42を第3の折畳部43に沿わせ、次いで、一般部で矢印D3に示すように第1の折畳部41を第3の折畳部43に沿わせるとともに第2の折畳部42の外側に重ね、次いで、ピラー部Pで矢印D4に示すように第2の折畳部42を第3の折畳部43に沿わせるとともに第1の折畳部41の外側に重ねるとの容易な折畳作業により実現できる。
また、この構成では、エアバッグ2の全体を捩る必要がなく、重ね合わせの順序を変えるのみで、容易にエアバッグ2の展開方向を制御できる。
なお、この図9ないし図11に示す構成においても、ピラー部P及び一般部における重ね合わせ位置は、マイナス10°から60°の範囲で車体レイアウトに応じて適宜設定することもできる。
このようにして、折り畳んだエアバッグ2が配置される部位の条件及びエアバッグ2が展開する所定面の条件に応じて、すなわち、エアバッグ2が配置される車体レイアウトに応じて、エアバッグ2の挙動、例えば展開方向を容易に確実に制御でき、エアバッグ2の各部分を互いに異なる所望の挙動で膨張展開させ、エアバッグ2を所望の展開位置へ確実に展開させることができる。
また、上記の各実施の形態では、第3の折畳部43は、下端部から所定面S側にロール状に巻回して形成したが、この構成に限られない。例えば、下端部から反所定面S側にロール状に巻回し、展開時に所定面Sすなわち車体縦壁部を転がるように展開させることもできる。また、ロール折りに限られず、例えば図12に示すように、蛇腹状に折り畳むこともできる。
また、第1の折畳部41と第2の折畳部42との重ね合わせは、エアバッグ2の長手方向の全長に設ける構成のみならず、エアバッグ2の長手方向の一部のみに設けることもできる。
そして、第1の折畳部41と第2の折畳部42との重ね合わせていない部分などについて、非膨張部38で第3の折畳部43が露出しないように覆うこともできる。例えば、図13及び図14に示すように、エアバッグ2の上縁部から非膨張部38である片部38aを所定の長さだけ延設し、この片部38aの先端部が、第2の折畳部42側から第3の折畳部43を覆いさらに先端部が第1の折畳部41の第1の折返し部41aに重なるようにして、第3の折畳部43を覆い、折り畳み形状を維持する固定手段とするとともに第3の折畳部43側への異物の侵入などを防止できる。
また、エアバッグ装置1は、車体3の側部に備えられるいわゆるカーテンエアバッグ装置の他、車室4などの適宜の面に沿ってエアバッグ2を面状に展開するエアバッグ装置1に適用できる。