以下に本発明について詳細に説明する。
本発明は、導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層を有する電子写真感光体の製造方法において、該表面層が架橋性モノマーを含有する表面層塗工液をスプレー塗工により塗布され、硬化させることによって形成される、膜厚3.8μm以下である架橋表面層であって、該スプレー塗工時のスプレーガンから噴射される液滴の粒径D90が5μm未満であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
架橋型の表面層を感光体に設けることで、感光体の機械的強度が高くなり、耐摩耗性を大幅に向上できる。しかし、架橋型の表面層は、電荷輸送構造を有する化合物を含有した場合、電荷輸送性は向上するが、画像面積率の高い画像を連続印刷した場合等に残留電位が急激に上昇し、濃度低下を引き起こす場合がある。このような残留電位の上昇は、特に架橋表面層の膜厚に大きく依存し、架橋表面層の膜厚を薄くすることで残留電位の上昇を抑制し、濃度低下を防ぐこと可能である。そうした理由から架橋表面層の膜厚は薄い方が良く、1〜3μm以下が好ましい。しかし、架橋表面層の膜厚3μm以下を狙いにスプレーで塗膜した場合、感光層上に着荷した表面層塗工液のハジキが発生する。熱可塑性樹脂の表面層であればハジキは乾燥工程での熱により平滑化され消失するが、架橋性樹脂膜では平滑化される前に硬化されるため、ハジキが凹欠陥として塗膜上に形成される。図1は凹欠陥が発生した架橋表面層の接写写真であるが、表面上に凹欠陥が多数形成されているのが観察される。この凹欠陥は数〜数十μmの大きさであるため、画像形成プロセス中でのクリーニング工程において凹欠陥上でトナーの埋没や、すり抜けが発生し、スジ状汚れが発生し、問題となる。
このような架橋表面層の薄膜スプレー塗工時の凹欠陥について、本発明者らが悦意検討した結果、導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層を有する電子写真感光体の製造方法において、該表面層が架橋性モノマーを含有する表面層塗工液をスプレー塗工により塗布され、硬化させることによって形成され、膜厚3.8μm以下である架橋表面層であって、該スプレー塗工時のスプレーガンから噴射される液滴の粒径D90が5μm未満とすることを特徴とする製造方法により、凹欠陥がなく良好な塗膜品質を有し、かつ電気特性、耐摩耗性に優れた電子写真感光体を製造することができることを見出した。
図2はスプレー塗工時の液滴の粒径D90を変化させたときの膜厚と凹欠陥数についてプロットした図である。D90が5μm以上である場合、膜厚3.8μm以下になると凹欠陥が発生し、膜厚が薄くなるほど凹欠陥数は増加する。一方、液滴の粒径D90を5μm未満とした場合、膜厚3.8μm以下でも凹欠陥は発生せず、膜厚3.0μm以下でも良好な塗膜品質の架橋表面層を形成することが可能となる。このように製造された架橋表面層を有する電子写真感光体は、耐摩耗性、電気特性に優れ、良好なクリーニング性を有し、高品質の画像形成を長期間にわたり実現できる。
本発明の目的とは直接関係しないので、未だ充分理由を確認した訳ではないが、本発明における構造が異なり従って性質も異なる2種類の架橋性モノマーの混合使用に原因の1端があり、つまり、本発明で好ましく用いられる架橋表面層の架橋性モノマーのうち、(ロ)の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(芳香族系モノマー)と、(イ)電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(エーテル結合を有する脂肪族系のモノマー)や有機溶媒等との相溶性の違いのため、スプレーガンから噴射される液滴の粒径D90が5μm以上に粗大化すると、スプレー塗工及び乾燥時に液滴中でのモノマーの均一混合性が若干損なわれのではないか等の理由も原因の1つと考えている。理由はいずれにしても、以下の詳細かつ具体的説明からよく理解されるように、上記本発明の電子写真感光体の製造方法により、凹欠陥がなく良好な塗膜品質を有し、クリーニング性に優れ、かつ電気特性、耐摩耗性に優れた架橋表面層を有する電子写真感光体を製造することができることだけは明らかである。
<架橋表面層>
本発明の架橋表面層は、架橋性モノマーを用いた架橋表面層であるが、特に電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)と、重合性官能基を有する表面処理剤で表面処理されたフィラーの混合物を硬化させることにより形成された架橋表面層であるが好ましい。表面層塗工液に電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)を用いることにより3次元の網目構造が発達し、架橋密度が非常に高い高硬度架橋表面層が得られ、高い耐摩耗性が達成される。また、表面層塗工液が電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)を含有することで、これらが同時に短時間で重合、硬化し、高硬度の架橋結合を構成し、耐久性の向上が達成される。さらに、反応性官能基が多く、硬化速度の速い、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)と電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)を硬化することで架橋層中に歪みの少ない均一な架橋膜を形成することが可能となり、この結果、架橋表面層中において電荷輸送物質の未反応部分が減少し、架橋膜内部の均質性が大きく改善される。これにより耐摩耗性の向上と同時に安定した静電特性およびクラックの発生しない電子写真感光体の両立が実現される。
以下に本発明で用いた、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)と電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)を含有する架橋表面層塗布液の構成材料について説明する。
(ラジカル重合性モノマー(イ))
電荷輸構送造を有しない3官能以上のとしては、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール等の正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送構造を有しておらず、かつラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(1)で表される官能基が好適に挙げられる。
ただし、前記一般式(1)中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R30)−基(ただし、R30は、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、又は−S−基を表す。
これらの置換基としては、具体的には、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基、等が挙げられる。
1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(2)で表される官能基が好適に挙げられる。
ただし、前記一般式(2)中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR31基(ただし、R31は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、)又は−CONR32R33(ただし、R32及びR33は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。)、また、X2は前記一般式(1)のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y、X2の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。
これらの置換基としては、例えば、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基、等が挙げられる。
なお、これらX1、X2、Yについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)の具体例としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマー(イ)としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、HPA変性(アルキレン変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性(エチレンオキシ変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性(プロピレンオキシ変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性(エピクロロヒドリン変性)グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート等が挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。前記変性を行なった理由はモノマーの粘度を下げ、扱い易くするためである。
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)は、架橋表面層中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、架橋表面層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示したモノマー等中、HPA、EO、PO等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。
架橋表面層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)の成分割合は、架橋表面層全量に対し20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%である。モノマー成分が20質量%未満では架橋表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、80質量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
(ラジカル重合性化合物(ロ))
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)は、例えばトリアリールアミン構造、ヒドラゾン構造、ピラゾリン構造、カルバゾール構造等の正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送構造を有しており、且つラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先にラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。また、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が、効果が高い。
さらに、下記一般式(3)又は(4)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
一般式(3)、(4)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR2(R2は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR3R4(R3及びR4は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar1、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わし、Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表わし、mとnは0〜3の整数を表わす。
前記一般式(3)、(4)において、R1における、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていても良い。R1のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表わす。本発明においては該アリール基としては、縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基を含むものであり、以下の基が挙げられる。
縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、As−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
Ar3、Ar4で表わされるアリール基は例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
(2)アルキル基。好ましくはC1〜C12、とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−ORa)。Raは(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)
式中、R10及びR11は各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表わす。アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R10及びR11は共同で環を形成してもよい。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
前記Ar1、Ar2で表わされるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基である。
Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
Xにおけるアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキシエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
Xにおけるシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基等の置換基を有していても良い。具体的なシクロアルキレン基としてはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
Xにおけるアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表わし、アルキレンエーテル基のアルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
Xにおけるビニレン基は、下記の2つの構造式で表される。
ただし、R12は水素、アルキル基〔前記(2)で定義されるアルキル基と同じ〕、アリール基(前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基と同じ)、aは1または2、bは1〜3を表わす。
Zは、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表わす。置換もしくは未置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、前記Xのアルキレンエーテル基が挙げられる。アルキレンオキシカルボニル基としては、カプロラクトン変性基が挙げられる。
本発明の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)としてさらに好ましくは、下記一般式(5)の構造の化合物が挙げられる。
式中、p、q、oはそれぞれ0又は1の整数、R5は水素原子、メチル基を表わし、R6、R7は水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表わす。Z2は単結合、メチレン基、エチレン基、のいずれかを表わす。
上記一般式(5)で表わされる化合物としては、R6、R7の置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
本発明で用いる上記一般式(3)及び(4)特に(5)で表される電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造をとりうるものと推測される。
また本発明においては下記一般式(6)で示した特定のアクリル酸エステル化合物も電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物として良好に用いることができる。
Ar5は置換基を持つ又は無置換の芳香族炭化水素骨格からなる一価基または二価基を表す。芳香族炭化水素骨格としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ベンジル基、ハロゲン原子が挙げられる。また、上記アルキル基、アルコキシ基は、さらにハロゲン原子、フェニル基を置換基として有していてもよい。
Ar6は、少なくとも1個の3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格からなる一価基または二価基、もしくは少なくとも1個の3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格からなる一価基または二価基を表すが、ここで、3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格とは下記一般式(7)で表わされる。
式中、R13、R14はアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar7はアリール基を表す。wは1〜3の整数を表す。
R13、R14のアシル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
R13、R14の置換もしくは無置換のアルキル基はAr5の置換基で述べたアルキル基と同様である。
R13、R14の置換もしくは無置換のアリール基は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基に加えて下記一般式(8)で表される基を挙げることができる。
式中、Bは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−及び以下の二価基から選ばれる。
ここで、R21は、水素原子、Ar5で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、R13で定義された置換もしくは無置換のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表し、R22は、水素原子、Ar5定義された置換もしくは無置換のアルキル基、R13で定義された置換もしくは無置換のアリール基を表し、iは1〜12の整数、jは1〜3の整数を表わす。
R21のアルコキシ基の具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
R21のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
R21のアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジベンジルアミノ基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
Ar7のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基を挙げることができる。
Ar7、R13、R14は、Ar5で定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していても良い。
3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格としては、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等のアミン構造を有する複素環化合物が挙げられる。これらは、Ar5で定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していても良い。
B1、B2はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルキル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルコキシ基を表す。アルキル基、アルコキシ基は、Ar5で述べたものが同様に適用される。これらB1、B2はどちらか一方のみが存在し、両方の存在は除外される。
一般式(6)のアクリル酸エステル化合物においてより好ましい構造として下記一般式(9)の化合物を挙げることができる。
式中、R8、R9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子を表し、Ar7、Ar8は、置換もしくは無置換のアリール基またはアリレン基、置換又は無置換のベンジル基をあらわす。アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子は前記Ar5で述べたものが同様に適用される。
アリール基は、一般式(7)におけるR13、R14で定義されたアリール基と同様である。アリレン基は、そのアリール基から誘導される二価基である。
B1〜B4は、一般式(6)におけるB1、B2と同様である。uは0〜5の整数、vは0〜4の整数を表わす。
特定のアクリル酸エステル化合物は次のような特徴を有する。スチルベン型共役構造を有した三級アミン化合物であり、発達した共役系を有している。こういった共役系の発達した電荷輸送性化合物を用いることで、架橋層界面部分での電荷注入性が非常に良好となり、さらに架橋結合間に固定化された場合でも分子間相互作用が阻害されにくく、電荷移動度に関しても良好な特性を有する。また、ラジカル重合性の高いアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を分子中に有しており、ラジカル重合時に速やかにゲル化するとともに過度な架橋歪を生じない。分子中のスチルベン構造部の二重結合が部分的に重合に参加し、しかもアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基よりも重合性が低いために架橋反応に時間差が生じることで歪みを最大に大きくすることがなく、しかも分子中の二重結合を使用する為に分子量当りの架橋反応数を上げることができるために、架橋密度を高めることができ、耐摩耗性のさらなる向上が実現可能となった。また、この二重結合は、架橋条件により重合度を調整することができ、容易に最適架橋膜を作製できる。この様なラジカル重合への架橋参加は、アクリル酸エステル化合物の特異的な特徴であり、前述したようなα−フェニルスチルベン型の構造では起こらない。
以上のことから、一般式(6)特に一般式(9)に示したラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を用いることで良好な電気特性を維持しつつ、且つ、クラック等の発生を起さずに架橋密度の極めて高い膜を形成することができ、それにより感光体の諸特性を満足し、且つシリカ微粒子等が感光体に刺さることを防止し、白斑点等の画像欠陥を減らすことができる。
ラジカル重合性官能基の数については架橋構造の均一性については官能基数の少ないものが好ましく、耐摩耗性については官能基数の多いものが好ましい。本発明においては両者のバランスから良好に選択して使用することが可能である。
以下に本発明において用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)は、架橋表面層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋表面層全量に対し20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%になるように塗工液成分の含有量を調整する。この成分が20質量%未満では架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇等の電気特性の劣化が現れる。また、80質量%を超えると電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
本発明の架橋表面層は、架橋表面層中にフィラー微粒子を含有することも有効である。架橋膜中にフィラー微粒子を含有することによって、より強固な表面層が形成され、機械的耐久性を向上させることができ、またフィラーを含有させることにより表面に微細凹凸を形成し、潤滑性付与剤の塗布性向上させクリーニング性を向上させることができる。フィラー微粒子としては、無機性フィラーと有機性フィラーが使用できる。無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末、酸化珪素、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の金属酸化物、チタン酸カリウム等の無機材料が挙げられる。特に金属酸化物が良好であり、さらには、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタンが有効に使用できる。また、コロイダルシリカやコロイダルアルミナ等の微粒子も有効に使用できる。有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、カーボン微粒子等が挙げられる。表面層の機械的耐久性を向上させる目的から、硬度が高く耐久性のある無機フィラーを用いることが有利である。
架橋表面層中のフィラー材料濃度は、高すぎる場合には残留電位の上昇、架橋表面層の書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。したがって、おおむね全固形分に対して、50重量%以下、好ましくは30重量%以下程度である。
またさらに、これらのフィラーは少なくとも一種の分散剤で処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。分散剤としては、従来用いられているものを使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる分散剤が好ましい。分散剤の添加量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、フィラー重量に対して3〜30重量%が適しており、5〜20重量%がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。これらフィラー材料は単独もしくは2種類以上混合して用いられる。
また、フィラー材料は、少なくとも有機溶剤、さらに必要であれば分散剤とともにボールミル、アトライター、サンドミル、超音波等の従来方法を用いて分散し、使用するのが好ましい。
本発明で用いられる架橋表面層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)と電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)を反応させて硬化することにより形成されるが、これ以外に塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減等の機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー、機能性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
1官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマー等が挙げられる。
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレート等のフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチル等のポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招くことがある。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100質量部に対し50質量部以下、好ましくは30質量部以下に制限することが好ましい。
本発明で用いた架橋表面層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を含有する単量体混合物の塗工液を塗布し、これを重合、硬化することにより形成されるものであるが、必要に応じてこの架橋反応を効率よく進行させるために塗工液中に重合開始剤(例えば熱重合開始剤や光重合開始剤)を使用してもよい。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、等のアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、等のベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、等のベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、等のチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、等が挙げられる。
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100質量部に対し、0.5〜40質量部、好ましくは1〜20質量部である。
さらに、本発明における塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質等の添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20質量%以下、好ましくは10質量%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3質量%以下が適当である。
本発明で用いた架橋表面層の製造方法では、塗工液は溶媒により希釈して塗布することが好ましい。このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系等が挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、目的とする膜厚により変わり、任意である。
(スプレー塗工方法)
本発明では架橋表面層の塗工液をスプレー塗工法にて感光層上に塗布する際に、スプレーガンから噴射される液滴の粒径D90が5μm未満とすることを特徴としている。本発明で使用されるスプレーガンはいかなるものでもよいが、液滴の粒径を制御するため、塗工液の吐出量、霧化エアー流量、霧化エアー圧等を制御できるものが好ましい。スプレーガンの例としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電スプレー等が挙げられる。また、スプレーは縦型でも横型でもよい。図3に本発明のスプレー塗工の概略を示す。符号(A)はスプレーガンを示し、符号(B)は塗布される基体を示す。図3において基体(B)は、支持体に感光層を塗工した感光体製造段階品を示し、支持体には円筒状のものを使用している。基体(B)は駆動手段により矢印方向に回転されており、スプレーガン(A)が基体上に表面層塗工液を霧化しながら塗布している。スプレーガン(B)は、基体(A)の左端から矢印方向にゆっくり移動し、表面層塗工液を基体(B)全面に塗工する。表面層塗工液の塗工回数は任意である。
スプレーガンの移動速度と基体の回転数は任意であるが、塗工ムラ発生を抑制する点から、スプレーガンの移動速度は10mm/s以下、基体の回転数は80rpm以上が好ましい。スプレーガンと基体の距離は20mm〜100mmが好ましい。20mm未満ではスプレーガンと基体との距離が近すぎるため塗工ムラが発生しやすくなる。また100mmを越えると、スプレーガンの種類にもよるが、一般に付着効率が低下する。塗工液の吐出量は、0.02〜0.20ml/sが好ましい。0.02ml/s以下では感光層樹脂の溶解が少なく、接着性が低下する。また0.20ml/s以上では、樹脂の溶解量が過多となり、表面層塗工液塗布時に膜厚ムラが発生する場合や、架橋性表面層では硬化不良が発生する場合がある。吐出量はスプレーガンのノズル開度や、シリンジポンプの押し出し量等で制御することができる。
本発明のスプレーガンから噴射される液滴の粒径は、支持体に着荷するときの液滴の粒径を示す。本発明でのスプレー液滴粒径分布は、レーザー光散乱方式粒度分布測定装置により測定を行っており、本発明ではレーザー粒度分布測定装置LDSA−3500A(東日コンピュータアプリケーションズ社製)にて測定を行っているが、これと同等の性能を有するいかなる装置で測定された値でも良い。測定においては、スプレーガンとレーザーの距離を表面層塗工時のノズル-支持体体間距離と同じになるように設定し、スプレーガンにより塗工液を霧化したときの液滴粒径をレーザーにより読み取り、粒径分布が得られる。測定間隔は0.1秒で、連続100回測定を行っており、各測定から図4のような粒径分布ヒストグラムが得られる。
n回目の測定の粒径分布から累積90%の値D90(n)(1≦n≦100)を算出し、さらに100回の測定の平均値を本発明のD90とした。
液滴の粒径の制御方法は何れの方法でもよく、塗工液の溶媒、粘度、希釈率、またスプレーガンの吐出量、霧化圧力、ノズル-支持体間の距離等によって変えることが可能である。本発明では、単一の塗工液で塗工可能なことから、スプレーの吐出量、霧化圧力、ノズル基体間距離等のスプレー条件で液滴粒径を制御する方が好ましい。また、膜厚の制御は、一般にスプレーガンの移動速度や吐出量等で制御することができるが、液滴の粒径を変えずに膜厚制御できる点で、スプレーガンの移動速度で膜厚を制御するのが好ましい。
(硬化方法)
本発明の表面層は、架橋表面層の塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え、硬化させ、形成するものである。このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。熱エネルギーを加える方法としては、空気、窒素等の気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度は100℃以上、170℃以下が好ましく、100℃未満では反応速度が遅く、完全に反応が終了しない。170℃より高温では反応が不均一に進行し架橋表面層中に大きな歪みが発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、さらに100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプ等のUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm2以上、好ましくは500mW/cm2以上、より好ましくは1000mW/cm2以上である。1000mW/cm2より強い照度の照射光を用いることで、重合反応の進行速度が大幅に大きくなり、より均一な架橋表面層を形成することが可能となる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
紫外線または放射線により架橋表面層を硬化した場合は、硬化後に残留溶媒を除去するため、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の温度および時間は、架橋表面層の塗工液に用いられた溶媒の沸点により任意に選択できるが、おおむね100℃〜150℃、10分〜30分程度が好ましい。
<電子写真感光体の層構造>
本発明で製造される電子写真感光体を図5に基づいて説明する。
図5は、電子写真感光体の層構造を表わす部分断面図である。図5−Aは導電性支持体(31)上に、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する感光層(32)が設けられた単層構造の感光層に、架橋表面層(33)が積層した感光体である。図5−Bは、導電性支持体(31)上に、電荷発生機能を有する電荷発生層(34)と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層(35)とが積層された積層構造の感光層に、架橋表面層(33)が積層した感光体である。
(導電性支持体)
導電性支持体(31)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板およびそれらを押し出し、引き抜き等の工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩等の表面処理を施した管等を使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体(31)として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体(31)として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体等が挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエン等に分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)等の素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体(31)として良好に用いることができる。
(感光層)
次に感光層について説明する。感光層は積層構造でも単層構造でもよい。積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて述べる。
(積層構造の感光層)
(電荷発生層)
電荷発生層(34)は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料等が挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(34)に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
前者の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
後者の具体例としては、例えば特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
電荷発生層(34)には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。電荷発生層(34)に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体、ジスチリル誘導体等、挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(34)を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
真空薄膜作製法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
溶液分散系からのキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法等を用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
(電荷輸送層)
電荷輸送層(35)は電荷輸送機能を有する層であり、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層(34)上に塗布、乾燥することにより形成する。電荷輸送物質としては、前記電荷発生層(34)で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。
これらの中でも本発明においてはジスチリル誘導体が有効に用いられる。ジスチリル誘導体とは、スチリル基を2つ有する材料を示す。これらの材料はπ共役が大きく、高移動であることから電荷の移動が起こりやすい。その結果、同等のイオン化ポテンシャルを有する正孔輸送物質に比べ、明部電位の上昇を抑制する効果があると考えられる。
さらにジスチリル誘導体の中でも一般式(10)で表されるジスチリルベンゼン誘導体が特に好ましい。一般式(10)で表されるジスチリルベンゼン誘導体は、電荷輸送機能の高いトリアリールアミン構造を複数有する上、構造式中央の芳香環基を介したπ共役が大きい特徴を有する。また、分子骨格が大きくトリアリールアミン構造が互いに離れているため、分子間で電荷移動が起こりやすい。
電荷輸送層の電荷輸送物質として、ジスチリル誘導体を用いることにより、優れた電気特性を持つ。ジスチリル誘導体とは、単一分子内にスチリル基を2つ有する材料を示す。これらの材料はπ共役が大きく、高移動であることから電荷の移動が起こりやすい。その結果、同等のイオン化ポテンシャルを有する電荷輸送物質に比べ、明部電位を低減させる効果があると考えられる。
さらにジスチリル誘導体の中でも、一般式(10)で現される誘導体は、電荷輸送機能の高いトリアリールアミン構造を複数有する上、構造式中央の芳香環基を会したπ共役が大きく、さらに、分子骨格が大きくトリアリールアミン構造が互いに離れているため、分子間で電荷移動がおこりやすい。
しかし、ジスチリル誘導体を用いた場合、1分子あたりの分子量が大きく平面性が高いため、π−πスタッキングにより凝集を起こしやすくなる。その結果、樹脂と十分に相溶しておらず、また、内部応力が高い状態で膜形成をしているため、ジスチリル誘導体を用いた電荷輸送層の上に、膜強度の弱い熱可塑性樹脂を表面層とした場合電荷輸送層から亀裂が入ってしまう場合がある。
この問題に対して、表面層として架橋密度が高く、膜強度の非常に強い架橋型表面層を用いることにより強固に電荷輸送層を押さえつけることができるため、クラックを防止することができる。この効果は、架橋型表面層中にフィラーを含有させることによりさらに強いものとなる。この理由は定かではないが、フィラーを含有させることにより表面層と電荷輸送層における界面の接触面積が増加するため、合計の接着力がより強固になるためだと考える。
以下に、本発明において有効な一般式(10)で表わされるジスチリルベンゼン誘導体の一例を挙げる。ただし、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
(結着樹脂)
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100質量部に対し、20〜300質量部、好ましくは40〜150質量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層の形成には電荷発生層(34)と同様な塗工法が可能である。
(その他の添加剤)
電荷輸送層には、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜1質量部程度が適当である。
電荷輸送層の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
(単層構造の感光層)
単層構造の感光層(32)は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層であり、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。電荷発生物質の分散方法、それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層(34)、電荷輸送層(35)において既に述べたものと同様なものが使用できる。結着樹脂としては、先に電荷輸送層(35)の説明で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層(34)で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は感光層全量に対し1〜30質量%が好ましく、感光層に含有される結着樹脂は全量の20〜80質量%、電荷輸送物質は10〜70質量%が良好に用いられる。また、かかる感光層の膜厚は、5〜30μm程度が適当であり、好ましくは10〜25μm程度が適当である。
(下引き層)
本発明の感光体の製造方法においては、導電性支持体(31)と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。さらに本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
<酸化防止剤>
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、表面架橋層、感光層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェロール類等。
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン等。
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン等。
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート等。
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン等。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類等の酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01〜10質量%である。
<画像形成方法及び画像形成装置>
次に図6に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、上述の本発明の製造方法で製造した感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経てトナー画像を形成した後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び必要に応じて感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法、並びにこれらの工程を実現する手段を備えた画像形成装置である。場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
図6は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体(1)を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャーや帯電ローラー等がある。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラー帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
特に本発明の画像形成装置の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような帯電手段からの近接放電により感光体組成物が分解する様な帯電手段を用いた場合に有効である。ここでいう接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラー、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方の近接帯電方式とは、例えば帯電ローラーが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲が適当である。
次に、均一に帯電された感光体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部5が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
次に、感光体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写体(9)を感光体(1)から分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにクリーニングブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
さらに、画像形成装置において、電子写真感光体表面に潤滑性付与剤を塗布する潤滑性付与剤塗布手段を備えることによって、クリーニングブレードに対する電子写真感光体表面の摩擦係数を長期間にわたって低減することができ、上記不具合を解消することができる、画像形成装置、及び画像形成方法を得ることができる。
図7は、潤滑性付与剤(113)を棒状にした固形物をクリーニングブラシ(114)に押し当てており、該クリーニングブラシ(114)が回転する際に潤滑性付与剤を掻き取り、ブラシに付着した潤滑性付与剤が感光体表面に塗布される仕組みとなっている。前記潤滑性付与剤は固形である必要はなく、液体や粉体、半練り状でも、感光体表面に塗布することができ、電子写真特性を満たすものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記潤滑性付与剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸;カルナウバ、ラノリン、木ろう等のワックス類;シリコーンオイル等の潤滑性オイル;等が挙げられる。これらの中でも、棒状に加工することが比較的容易で、潤滑性付与効果が高い点から、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムが特に好ましい。
図7に示す潤滑性付与剤塗布手段をクリーニングユニット(117)に備えることで、ドラム周りのレイアウト設計が容易になったり、装置を簡略化することができる等のメリットがある反面、クリーニングされたトナーに潤滑性付与剤が多量に混入するためトナーリサイクルが困難になったり、ブラシのクリーニング効率が低下する等の不具合が発生する場合もある。また、図示を省略しているが、潤滑性付与剤塗布手段を有した塗布ユニットをクリーニングユニットと別に独立して設けることで、上記不具合を解消することもできる。その場合、塗布ユニットは、クリーニングユニットの下流に設けることが好ましい。さらに、塗布ユニットを複数箇所に設け、それらを同時、又は順次働かせることで、潤滑性付与剤の塗布効率を高めたり、消費量をコントロールする等の効果を持たせることができる。図7の潤滑性付与剤塗布手段を備えたクリーニングユニットは図8のように画像形成装置に搭載され使用される。
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段として(図8)は除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知
のものが使用できる。
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図9に示す。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体(101)を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。図9に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
<電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の合成例>
本発明における電荷輸送性構造を有する化合物は、例えば特許第3164426号公報記載の方法にて合成される。下記に電荷輸送性構造を有する化合物の製造方法の一例を示す。
(トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物の合成)
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式B)の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式A)113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして下記構造式Bの白色結晶88.1g(収率=80.4%、融点:64.0〜66.0℃、元素分析値(%):表1に示す。)を得た。
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(表1中の例示化合物NO.54)の合成
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(構造式B)82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして例示化合物NO.54の白色結晶80.73g(収率=84.8%、融点:117.5〜119.0℃)を得た。元素分析結果(%)を以下に示す。
(アクリル酸エステル化合物の合成例)
(1)2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルの調製
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、2−ヒドロキシベンジルアルコール(東京化成品製)38.4g、o−キシレン80mlを入れ、窒素気流下、亜リン酸トリエチル(東京化成品製)62.8gを80℃でゆっくり滴下し、さらに同温度で1時間反応を行った。その後、減圧蒸留により、生成したエタノール、溶媒のo−キシレン、未反応の亜リン酸トリエチルを除去し、66gの2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルを得た(沸点 120.0℃/1.5mmHg)(収率90%)。
(2)2−ヒドロキシ−4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベンの調製
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、カリウム−tert−ブトキサイド14.8g、テトラヒドロフラン50mlを入れ、窒素気流下、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル9.90gと4−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)ベンズアルデヒド5.44gとをテトラヒドロフランに溶解させた溶液を室温でゆっくり滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。その後、水冷下、水を加え、次いで2規定の塩酸水溶液を加えて酸性化したのち、テトラヒドロフランをエバポレーターにより除き、粗生成物をトルエンで抽出した。トルエン相を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて脱水した。ろ過後、トルエンを除いてオイル状の粗収物を得、さらにシリカゲルによりカラム精製を行った後、ヘキサン中で晶析させ、5.09gの2−ヒドロキシ−4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベンを得た(収率72%、融点136.0〜138.0℃)。
(3)4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベン−2−イルアクリレートの調製
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、2−ヒドロキシ−4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベン14.9g、テトラヒドロフラン100ml、12%濃度の水酸化ナトリウム水溶液21.5gを入れ、窒素気流下、5℃でアクリル酸クロリド5.17gを30分かけて滴下した。その後、同温度で3時間反応させた。反応液を水にあけ、トルエンで抽出した後、濃縮してシリカゲルによるカラム精製を行った。得られた粗収物をエタノールで再結晶し、黄色針状晶の4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベン−2−イルアクリレート(例示化合物NO.109)13.5gを得た。(収率79.8%、融点104.1〜105.2℃)元素分析(%)結果を以下に示す。
以上の様に、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸エステル誘導体と種々のアミノ置換ベンズアルデヒド誘導体を反応させることにより数多くの2−ヒドロキシスチルベン誘導体を合成し、そのアクリル化またはメタクリル化を行なうことで種々のアクリル酸エステル化合物を合成することができる。
実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、特に断らない限りすべて質量部を表わす。
φ60mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.0μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層を形成した。
[下引き層用塗工液]
アルキッド樹脂: 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂: 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン: 40部
メチルエチルケトン: 50部
[電荷発生層用塗工液]
下記構造式(I)のチタニルフタロシアニン顔料: 1.5部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製): 1.0部
メチルエチルケトン: 80部
[電荷輸送層用塗工液]
ビスフェノールZポリカーボネート: 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式(II)の低分子電荷輸送物質: 10部
テトラヒドロフラン: 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液: 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
[架橋表面層用塗工液]
電荷輸送層上には、下記構成の架橋表面層塗工液を使用した。
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物: 10部
例示化合物NO.143(分子量:447、官能基数:1官能)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー: 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製、分子量:296、官能基数:3官能)
光重合開始剤: 1部
イルガキュア184(日本化薬製、分子量:204)
フィラー: 2部
AA03(アルミナ微粒子、平均1次粒径:0.3μm、住友化学製)
フィラーの分散剤: 0.2部
BYK−P104(ビックケミー製)
溶媒: 120部
テトラヒドロフラン
フィラーは、下記処方の分散溶液を調整した後、VIBRAX VXR basic(IKA製)を用い、1500回転/minで2時間分散した後、架橋表面層塗工液に添加して調整した。
(分散溶液)
市販のPSZボール(直径0.5mm):100部
架橋型電荷輸送層用溶媒 :20部
フィラー :2部
分散剤 :0.2部
上記の処方で調整した架橋表面層塗工液をスプレーにて感光層上に塗工した。スプレーガンにはオリンポス製PC308を用いて塗工した。下記にスプレー塗布の条件を示す。
ノズル-支持体間距離 :50mm
ガン先霧化エアー圧 :3.0kg/cm2
エアー流量 :16.0L/min
開度 :2.5/8
スプレーガンの移動速度:6.7mm/sec
ドラム回転数 :110rpm
架橋表面層塗工液のスプレー塗布時の液滴の粒径の測定は、レーザー粒度分布測定装置LDSA−3500A(東日コンピュータアプリケーションズ社製)を用い、スプレーガンとレーザーの距離を表面層塗工時のノズル-支持体体間距離と同じになるように設定し、スプレーガンにより塗工液を霧化したときの液滴粒径をレーザーにより読み取り、粒径分布が得られる。測定間隔は0.1秒で、連続100回測定を行っており、各測定から図2にような粒径分布ヒストグラムが得られる。n回目の測定の粒径分布から累積90%の値D90(n)(1≦n≦100)を算出し、さらに100回の測定の平均値を求めた。実施例1の液滴の粒径D90は3.1μmであった。
架橋表面層塗工液塗工後、紫外線照射装置Fusion製UVランプシステムを用い、支持体を30rpmで回転させながら紫外線照射を行い、硬化させた。紫外線照射のランプにはVバルブを使用し、紫外線ランプと感光体表面の距離を53mm、照射強度を500mW/cm2とし、60秒間の紫外線照射を行い、塗布膜を硬化させた。紫外線照射後は、130℃20分の乾燥を加え、膜厚3.6μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
架橋表面層の膜厚は、架橋表面層を塗工する前の感光層の膜厚と、架橋表面層を塗工し、硬化、乾燥後の膜厚を測定し、その差から架橋表面層の膜厚を測定した。膜厚測定は、渦電流式膜厚測定装置(フィッシャーインスツルメント製)を用いた。
実施例1において、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を7.6mm/sec、ドラム回転数を125rpmとした以外は全て実施例1と同様にし膜厚3.1μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作成した。
実施例1において、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を8.9mm/sec、ドラム回転数を150rpmとした以外は全て実施例1と同様にし膜厚2.6μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
実施例3において、電荷輸送層の低分子電荷輸送材料を下記構造の材料にした以外は全て実施例3と同様にし、膜厚2.5μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
実施例1において、電荷輸送層にシリコーンオイルを添加せずに電荷輸送層を設け、架橋表面層のスプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を12.8mm/sec、ドラム回転数を250rpmとした以外は全て実施例1と同様にし、膜厚1.7μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
実施例1において、架橋表面層塗工液の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を添加せず、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを20部とし、架橋表面層塗工時のスプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を12.8mm/sec、ドラム回転数を250rpmとした以外は全て実施例1と同様にし、膜厚1.5μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。実施例6の架橋表面層のスプレー塗工時の液滴の粒径D90は3.1μmであった。
実施例3において、架橋表面層塗工液の電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記構造の材料とした以外は全て実施例3と同様にし、膜厚2.8μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。実施例3の架橋表面層のスプレー塗工時の液滴の粒径D90は3.2μmであった。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(ヘキサアクリレート(a=5、b=1)とペンタアクリレート(a=6、b=0)
の質量比1:1混合物)
(日本化薬社製、KAYARAD DPHA)
官能基数:5官能化合物と6官能化合物(質量比1:1)
実施例1において、霧化エア圧を2.5kg/cm2、エア流量を14.5L/min、スプレー開度を3.3/8、スプレーガンの移動速度を7.0mm/sec、ドラム回転数を110rpmとした以外は全て実施例1と同様にし、膜厚2.8μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。実施例8の架橋表面層のスプレー塗工時の液滴の粒径D90は4.7μmであった。
実施例8において、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を8.5mm/sec、ドラム回転数を130rpmとした以外は全て実施例8と同様にし膜厚2.5μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
実施例8において、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を9.5mm/sec、ドラム回転数を150rpmとした以外は全て実施例8と同様にし膜厚2.3μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
実施例8において、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を11.0mm/sec、ドラム回転数を180rpmとした以外は全て実施例8と同様にし膜厚2.0μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
実施例8において、架橋表面層塗工液の光重合開始剤を下記熱重合開始剤に変え、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を12.5mm/sec、ドラム回転数を200rpmで感光層上に塗工し、紫外線照射をせずに130℃30分の乾燥して表面層を硬化させた以外は全て実施例8と同様にし膜厚1.7μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。実施例12の架橋表面層のスプレー塗工時の液滴の粒径D90は4.7μmであった。
熱重合開始剤 :1部
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン
(パーカドックス 12−EB20 化薬アクゾ製)
実施例8において、架橋表面層塗工液の溶媒をテトラヒドロフラン60部とアセトン60部の混合溶媒に変更した以外は全て実施例8と同様にし膜厚2.9μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。実施例13の架橋表面層のスプレー塗工時の液滴の粒径D90は3.8μmであった。
<比較例1>
実施例1において、霧化エアー圧を2.0kg/cm2、エア流量を13.0L/min、スプレー開度を3.3/8、スプレーガンの移動速度を5.5mm/sec、ドラム回転数を90rpmとした以外は全て実施例1と同様にし、膜厚4.2μmの表面層を設け、電子写真感光体を作製した。比較例1の架橋表面層のスプレー塗工時の液滴の粒径D90は5.3μmであった。
<比較例2>
比較例1において、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を6.4mm/sec、ドラム回転数を100rpmとした以外は全て比較例1と同様にし、膜厚3.9μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
<比較例3>
比較例1において、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を7.0mm/sec、ドラム回転数を110rpmとした以外は全て比較例1と同様にし、膜厚3.4μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
<比較例4>
比較例1において、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を7.6mm/sec、ドラム回転数を120rpmとした以外は全て比較例1と同様にし、膜厚3.1μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
<比較例5>
比較例1において、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を8.3mm/sec、ドラム回転数を140rpmとした以外は全て比較例1と同様にし、膜厚2.8μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
<比較例6>
比較例1において、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を10.3mm/sec、ドラム回転数を160rpmとした以外は全て比較例1と同様にし、膜厚2.3μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
<比較例7>
比較例1において、架橋表面層塗工液の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を添加せず、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを20部とし、架橋表面層塗工時のスプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を7.6mm/sec、ドラム回転数を120rpmとした以外は全て比較例1と同様にし、膜厚2.8μmの表面層を設け、電子写真感光体を作製した。比較例7の架橋表面層のスプレー塗工時の液滴の粒径D90は5.4μmであった。
<比較例8>
実施例1において、霧化エアー圧を1.5kg/cm2、エア流量を11.5L/min、スプレー開度を3.8/8、スプレーガンの移動速度を6.7mm/sec、ドラム回転数を110rpmとした以外は全て実施例1と同様にし、膜厚3.7μmの表面層を設け、電子写真感光体を作製した。比較例8の架橋表面層のスプレー塗工時の液滴の粒径D90は6.7μmであった。
<比較例9>
比較例8において、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を7.2mm/sec、ドラム回転数を120rpmとした以外は全て比較例8と同様にし、膜厚3.5μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
<比較例10>
比較例8において、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度を8.8mm/sec、ドラム回転数を140rpmとした以外は全て比較例8と同様にし、膜厚2.6μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
<比較例11>
比較例10において、架橋表面層塗工液の電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記構造の材料とした以外は全て比較例10と同様にし、膜厚2.6μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。比較例11の架橋表面層のスプレー塗工時の液滴の粒径D90は6.9μmであった。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(ヘキサアクリレート(a=5、b=1)とペンタアクリレート(a=6、b=0)の質量比1:1混合物)
(日本化薬社製、KAYARAD DPHA)
官能基数:5官能化合物と6官能化合物(質量比1:1)
(評価)
凹欠陥はマイクロスコープにて感光体の表面を5箇所観察し、8mm×6mm四方の凹欠陥の個数を計測し、5箇所の平均を凹欠陥の個数とした。本発明の実施例1〜13と比較例1〜11の液滴粒径D90、膜厚、凹欠陥数の結果を表4示す。また図2には膜厚と凹欠陥数をプロットしたものを示す。
スプレーガンから噴射される架橋表面層塗工液の液滴D90が5μm以上である比較例1〜11は凹欠陥が発生しているが、本発明のD90が5μm未満である実施例1〜13は凹欠陥の発生は見られない。
ステアリン酸亜鉛塗布機構を具備したプロセスカートリッジに10万枚通紙で使用したクリーニングブレードを取り付け、さらに実施例3の電子写真感光体を装着し、リコー製imagio MP C6000に搭載して、10℃15%環境下において、A4全ベタ画像1000枚を印刷し、その後すぐに全白画像を出力した。全白画像の画像評価を行った。その結果、異常な画像は見られなかった。
実施例11の電子写真感光体を用いて実施例14と同様の評価を行った。その結果、異常な画像は見られなかった。
<比較例12>
比較例5の電子写真感光体を用いて実施例14と同様の評価を行った。その結果、一部にスジ状汚れが発生した。
<比較例13>
比較例6の電子写真感光体を用いて実施例14と同様の評価を行った。その結果、全体にスジ状汚れが発生した。
ステアリン酸亜鉛塗布機構を具備したプロセスカートリッジに実施例3の電子写真感光体を装着し、リコー製imagio MP C6000に搭載し、画像面積率100%のA4サイズ画像1000枚を内蔵の電位センサで電位測定しながら連続出力し、1枚目と1000枚目の明部電位の差ΔVL、および1枚目と1000枚目の画像濃度差をマクベス製反射濃度計X−Lite937で評価した。その結果、ΔVLは11.3V、画像濃度差は0.01以下であり、濃度差は認められなかった。
実施例11の電子写真感光体を用いて実施例16と同様の評価を行った。その結果は1枚目と1000枚の明部電位の差ΔVL=5.4V、画像濃度差は0.01以下であり、濃度差は認められなかった。
<比較例14>
比較例2の電子写真感光体を用いて実施例16と同様の評価を行った。その結果は1枚目と1000枚の明部電位の差ΔVL=20.2V、画像濃度差は0.024であり、1枚目と1000枚で明らかな濃度差が見られた。
ステアリン酸亜鉛塗布機構を具備したプロセスカートリッジに実施例3の電子写真感光体を装着し、リコー製imagio MP C6000に搭載し、A4サイズ30万枚の通紙を行い、通紙後の画像評価、摩耗評価を行った。摩耗評価は、通紙前と後の感光体の膜厚を渦電流式膜厚測定装置(フィッシャーインスツルメント製)を用いて測定し、通紙前後の膜厚の差から算出した。その結果、通紙後においても異常な画像はなく、濃度低下も認められなかった。摩耗評価では感光体の摩耗量は0.21μmであり、高い耐久性が確認された。
したがって、本発明の導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層を有する電子写真感光体の製造方法において、該表面層が架橋性モノマーを含有する表面層塗工液をスプレー塗工により塗布され、硬化させることによって形成される、膜厚3.8μm以下である架橋表面層であって、該スプレー塗工時のスプレーガンから噴射される液滴の粒径D90が5μm未満であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法により、凹欠陥がなく良好な塗膜品質を有し、クリーニング性に優れ、かつ電気特性、耐摩耗性に優れた架橋表面層を有する電子写真感光体を製造できることが明らかとなった。また、本発明の電子写真感光体、その感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置および画像形成装置用プロセスカートリッジは高性能、高信頼性を有していることが明らかとなった。
下表に実施例1〜17および比較例1〜14の本発明における課題の対応表を示す。