JP5418012B2 - 電子写真感光体、及びこれを用いた画像形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、及びこれを用いた画像形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジ Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体、及びこれを用いた画像形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジに関する。
近年、有機感光体(OPC)は良好な性能、様々な利点から、無機感光体に代わり複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。この理由としては、例えば(i)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(ii)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(iii)材料の選択範囲の広さ、(iv)製造の容易さ、(v)低コスト、(vi)無毒性等が挙げられる。
一方、最近、画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、表面層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を上げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下等の電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。現状では感光体の寿命はこの摩耗や傷が律速となり、交換に至っている。
したがって、有機感光体の高耐久化においては前述の摩耗量を低減することが不可欠であり、さらに優れたクリーニング性、転写性を付与させるために、良好な表面性を有する有機感光体が必要とされており、これらが当分野でもっとも解決が迫られている課題である。
感光層の耐摩耗性を改良する技術としては、(1)表面層に硬化性バインダーを用いたもの(特許文献1)、(2)高分子型電荷輸送物質を用いたもの(特許文献2)、(3)表面層に無機フィラーを分散させたもの(特許文献3)等が挙げられる。これらの技術の内、(1)の硬化性バインダーを用いたものは、電荷輸送物質との相溶性が悪いためや重合開始剤、未反応残基等の不純物により残留電位が上昇し画像濃度低下が発生しやすい傾向がある。また、(2)の高分子型電荷輸送物質を用いたもの、及び(3)の無機フィラーを分散させたものは、ある程度の耐摩耗性向上が可能であるものの、有機感光体に求められている耐久性を十二分に満足させるまでには至っていない。さらに(3)の無機フィラーを分散させたものは、無機フィラー表面に存在するトラップにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生しやすい傾向にある。これら(1)、(2)、(3)の技術では、有機感光体に求められる電気的な耐久性、機械的な耐久性をも含めた総合的な耐久性を十二分に満足するには至っていない。
さらに、(1)の耐摩耗性と耐傷性を改良するために多官能の硬化型アクリレートモノマーを含有させた感光体も知られている(特許文献4)。しかし、この感光体においては、感光層上に設けた保護層にこの多官能の硬化型アクリレートモノマーを含有させる旨の記載があるものの、この保護層においては電荷輸送物質を含有せしめてもよいことが記載されているのみで具体的な記載はなく、しかも、単に表面層に低分子の電荷輸送物質を含有させた場合には、上記硬化物との相溶性の問題があり、これにより、低分子電荷輸送物質の析出、クラックの発生が起こり、機械強度も低下してしまうことがあった。また相溶性向上のためにポリカーボネート樹脂を含有させる記載もあるが、硬化型アクリルモノマー含有量が減少し、結果的には十分な耐摩耗性を達成できていない。また表面層に電荷輸送物質を含まない感光体については、露光部電位低下のために表面層を薄膜とする記載があるが、膜が薄いために感光体の寿命が短い。また帯電電位や露光部電位の環境安定性が悪く温湿度環境の影響によりその値は大きく変動し、十分な値を維持するには至っていないのが現状である。
これらにかわる感光層の耐摩耗技術として、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を設けることが知られており(特許文献5)、このバインダー樹脂には、炭素−炭素二重結合を有し、上記電荷輸送物質に対して反応性を有するものと、上記二重結合を有せず反応性を有しないものが含まれる。この感光体は耐摩耗性と良好な電気的特性を両立させており注目されるが、バインダー樹脂として反応性を有しないものを使用した場合においては、バインダー樹脂と、上記モノマーと電荷輸送物質との反応により生成した硬化物との相溶性が悪く、層分離から架橋時に表面凹凸が生じ、クリーニング不良を引き起こす傾向が見られた。また、上記のように、この場合バインダー樹脂がモノマーの硬化を妨げる他、この感光体において使用される上記モノマーとして具体的に記載されているものは2官能性のものであり、この2官能性モノマーでは官能基数が少なく充分な架橋密度が得られず、耐摩耗性の点では未だ満足するには至らなかった。また、反応性を有するバインダーを使用した場合においても、上記モノマー及び上記バインダー樹脂に含有される官能基数の低さから、上記電荷輸送物質の結合量と架橋密度との両立は難しく、電気特性及び耐摩耗性も充分とは言えないものであった。
また、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有する感光層も知られている(特許文献6)。しかし、この感光層は嵩高い正孔輸送性化合物が二つ以上の連鎖重合性官能基を有するため硬化物中に歪みが発生し内部応力が高くなり、表面層の荒れや経時におけるクラックが発生しやすい場合があり、十分な耐久性を有していない。
さらに、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を硬化させた架橋型電荷輸送層も知られており(特許文献7、特許文献8、特許文献9)、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を用い、表面層を硬化することで、機械的及び電気的な耐久性と同時に感光層のクラックを抑制している。また、感光体の表面層にラジカル重合性化合物とフィラーを用いて硬化させた架橋型表面層も知られており(特許文献10)、架橋樹脂膜と高硬度のフィラーにより、より耐摩耗性の高い感光体を形成している。
しかし、感光体の表面層が強固になることで感光体の寿命は向上したが、感光体に接触するクリーニングブレードは従来の感光体以上に機械的ハザードを受けることになる。そのためクリーニングブレードは劣化しやすくなり、ブレードのめくれやエッジ部分の欠けが多く発生し、めくれ部分や欠け部分からトナーがすり抜けする現象が見られた。トナーのすり抜けはスジ状汚れのような異常画像として発生する場合がある。
クリーニング性を向上させる方法も多く開示されてり、特に感光体表面を粗面化する方法が多く公開されている。例えば、表面層を形成する際の乾燥条件を制御する事により、電子写真感光体の表面をユズ肌状に粗面化する方法(特許文献11)、また、表面層に粒子を含有させることで、電子写真感光体の表面を粗面化する技術(特許文献12)が開示されている。また、表面を機械的に粗面化する方法も開示されており、フィルム状研磨材を用いて表面層の表面を研磨することによって、感光体表面を粗面化する技術(特許文献13)、ブラスト処理により電子写真感光体の周面を粗面化する技術(特許文献14)が開示されている。しかしこれらの粗面化技術は初期的には良好なクリーニング性を示すが、長期の使用により感光体が摩耗し、粗面化によるクリーニング効果が低下する問題があった。
以上のようなことから、これら従来技術における感光体では、機械的特性、電気特性、クリーニング性に対して優れた総合特性を有しているとは言えない。
本発明は、感光体自体が高い耐摩耗性と良好な電気特性を有するともに、クリーニングブレードの劣化を抑制し、良好なクリーニング性を長期間にわたり持続できる感光体を提供することを課題とする。また、本発明のもう1つの目的は、上記の高性能感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用のプロセスカートリッジを提供することにある。
本発明は、下記(1)〜(10)によって解決される。
(1)導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面層を順次積層した電子写真感光体において、該表面層が少なくともフィラーと架橋性樹脂を含有し、該表面層が、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.05μm〜0.3μmでかつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.5mm〜1.5mmであることを特徴とする電子写真感光体。
(2)前記表面層の架橋性樹脂が、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを硬化させてなる樹脂から成ることを特徴とする前記(1)項記載の電子写真感光体。
(3)前記フィラーが無機フィラーであることを特徴とする前記(1)又は(2)項に記載の電子写真感光体。
(4)前記フィラーがアルミナであることを特徴とする前記(1)〜(3)項のいずれかに記載の電子写真感光体。
(5)前記表面層が光エネルギーにより硬化されることを特徴とする前記(1)〜(4)項のいずれかに記載の電子写真感光体。
(6)前記表面層がスプレー塗工法により塗工されることを特徴とする前記(1)〜(5)項のいずれかに記載の電子写真感光体。
(7)前記(1)〜(6)項のいずれかに記載の電子写真感光体と、電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、電子写真感光体上の転写残トナーを取り除くクリーニング手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
(8)前記クリーニング手段が、ブレード形状を有し、感光体に当接されていることを特徴とする前記(7)項記載の画像形成装置。
(9)前記(1)〜(6)項のいずれかに記載の電子写真感光体と、電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と、電子写真感光体上の転写残トナーを取り除くクリーニング工程とを有することを特徴とする画像形成方法。
(10)静電潜像形成手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段の少なくとも1つと、前記(1)〜(6)項のいずれかに記載の電子写真感光体とを具備してなることを特徴とするプロセスカートリッジ。
本発明によれば、導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面層を順次積層した電子写真感光体において、該表面層が少なくともフィラーと架橋性樹脂を含有し、該表面層が、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.05μm〜0.3μmでかつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.5mm〜1.5mmであることを特徴とする電子写真感光体により、感光体の耐摩耗性、電気特性に優れ、かつクリーニングブレードの劣化を低減し、良好なクリーニング性を長期に渡り持続可能とした電子写真感光体を提供することができる。また、もう一つの本発明によれば、優れたクリーニング性を長期に渡り実現した画像形成方法、画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することができる。
表面層をスプレー塗工する際の説明図である。 本発明の電子写真感光体の断面図の例である。Aは単層構造の感光層タイプ、Bは積層構造の感光層タイプである。 本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。 本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面層を順次積層した電子写真感光体において、該表面層が少なくともフィラーと架橋性樹脂を含有し、該表面層が、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.05μm〜0.3μmでかつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.5mm〜1.5mmであることを特徴とする電子写真感光体である。感光体の表面層に架橋性樹脂を用い、さらにフィラーを含有することで、表面層は非常に強固となり高い耐久性を持たせることができるとともにフィラーによる微細な凹凸形状を形成し、クリーニング性を向上させることができる。さらにこの感光体の表面に、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.05μm〜0.3μmでかつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.5mm〜1.5mmとなるような大きなうねり形状を持たせ、フィラーによる微細凹凸と大きなうねり形状の両方を持たせることで、クリーニング性を大幅に向上させ、さらにクリーニングブレードの劣化を抑制し、良好なクリーニング性を長期的に持続させることが可能であることを見出した。表面層の微細凹凸とうねり形状により、画像形成プロセス中におけるクリーニング工程で、感光体に当接するクリーニングブレードが感光体表面で微振動を起こし、感光体上の残トナーの拭き取りを向上させる。さらに、うねり形状により感光体とブレード接触面積を減らし、ブレードの劣化を抑制することができる。また表面層の架橋性樹脂とフィラーにより表面層は非常に強固となり、感光体の摩耗や傷を防ぎ、うねり形状を長期的に持続させることができる。本発明では、表面層のうねり形状が、算術平均うねりWaが0.05μm〜0.3μm、輪郭曲線要素の平均長さが0.5mm〜1.5mmであるとき、クリーニング性向上の効果があることを見出した。算術平均うねりWaが0.3μmより大きい場合、表面層の膜厚差が大きくなるため作像プロセスにおいて濃度ムラやドットチリを発生させることがある。Waが0.05μm未満の場合、表面層のうねりが小さいため、ブレードの振動が少なく、良好なクリーニング性は得られない。輪郭曲線要素の平均長さWSmが1.5mmより大きい場合は振幅の大きなうねりとなるためブレードの微振動が少なくなり、クリーニング性の効果が低減される。WSmが0.5mmより小さい場合、ブレードの振動が起こらずクリーニング性は低下し、またブレードのめくれが発生しやすくなる。表面層のうねり形状は、算術平均うねりWa(μm)が0.10μm〜0.27μmでかつ輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.6mm〜1.3mmが好ましく、Waが0.13μm〜0.25μmでかつWSmが0.7mm〜1.2mmがより好ましい。
本発明の算術平均うねりWa及び輪郭曲線要素の平均長さWSmは、0.25mm以下の短波長の粗さ成分と2.5mm以上の波長成分を取り除いたうねり曲線から得られるパラメータである。本発明の算術平均うねりWa及び輪郭曲線要素の平均長さWSmは、JIS B 0601:2001年規格に準拠したものであり、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線を求めて測定を行っている。
本発明では東京精密製表面粗さ計サーフコム1400Dを用いて測定を行っているが、JIS規格に準拠し、これと同等の測定が可能なものであればいかなる測定装置でもよい。
測定位置や測定数についての制限はないが、測定誤差を少なくするため複数点測定するのが好ましい。例えば円筒状の感光体では、長手方向の上端、中央、下端の3点、周方向90°おきに4点の計12点の測定を行い、12点の平均値を求めることで測定誤差の少ない値を得ることができる。
また、本発明においては、基準長さ2.5mm、測定長さ12.5mm、測定速度0.6mm/sで測定した。
従来においても感光体の表面層の形状制御については検討されており、例えば、フィラーを添加し、フィラーの粒径や添加量により表面粗さを調整する方法(特開昭52−026226号、特第4056097号)や、表面層の塗膜形成後に研磨する方法(特開平02−139566号、特開2006−301092)や、サンドブラストなどを行い機械的に表面粗さを形成する方法(特開平02−150850号、特許第3938210号)などがある。しかし、フィラーによる表面制御では微細な凹凸は形成されるが、本発明のような大きなうねりを形成するのは困難であり、また、機械的に表面粗さを形成する方法においても、スジ状の表面形状やディンプル形状となってしまい、うねりを形成するのは困難であった。また、表面層を形成させる一般的な方法として、浸漬塗工法、リング塗工法、ロールコート法、スプレー塗工法などがあるが、これらの塗工方法で塗工した場合、通常は平滑な塗膜が形成され、大きなうねりを持った表面層を形成するのは困難であった。
これに対し、本発明者ら悦意検討した結果、スプレー塗工法を用い、塗工液の処方や、塗工条件を適切に制御することによりと大きなうねりを持った表面層が形成できることを見出した。スプレー塗工法でのうねり形状制御は、スプレー塗工時の霧化エア圧や吐出量、スプレーガン−基体間距離、塗工回数などのスプレー塗布条件でうねりを制御することができる。また、スプレー塗工後に溶剤やエアを吹き付けることでうねりを形成することも可能である。塗工液の処方によりうねりを制御する場合は、塗工液中にレベリング剤や溶媒の種類や添加量、塗工液の固形分濃度によりうねりを制御することができる。これらの塗工液の処方とスプレー塗工法を組み合わせることでもより効果的にうねりを制御することが可能である。
以下にはうねりを制御する方法の一例を示すが、本発明のうねりの制御方法はこれに限られるものではない。スプレー塗工法により表面層を形成し、うねりを制御する場合、スプレー塗工時のスプレーガンはいかなるものでもよいが、塗工液の吐出量、霧化エア流量、霧化エア圧などを制御できるものが好ましい。スプレーガンの例としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電スプレー等が挙げられる。また、スプレーは縦型でも横型でもよい。本発明では明治機械製作所製のエアスプレーA100を用いて塗工をおこなっている。図1に本発明のスプレー塗工の概略を示す。符号(A)はスプレーガンを示し、符号(B)は塗布される基体を示す。図1において基体(B)は、支持体に感光層を塗工した感光体製造段階品を示し、支持体には円筒状のものを使用している。基体(B)は駆動手段により矢印方向に回転されており、スプレーガン(A)が基体上に表面層塗工液を霧化しながら塗布している。スプレーガン(A)は、基体(B)の左端から矢印方向にゆっくり移動し、表面層塗工液を基体(B)全面に塗工する。表面層塗工液の塗工回数は任意である。
スプレーガンの移動速度と基体の回転数は任意であるが、塗工ムラ発生を抑制する点から、スプレーガンの移動速度は10mm/s以下、基体の回転数は80rpm以上が好ましい。スプレーガンと基体の距離は20mm〜100mmが好ましく、30mm〜70mmがより好ましい。20mm未満ではスプレーガンと基体との距離が近すぎるため塗工ムラが発生しやすくなり、100mmを越えると、スプレーガンの種類にもよるが、一般に付着効率が低下する。またスプレーガンと基体との距離が長くなるとスプレーガンから吐出した霧化液滴中の溶剤が蒸発しやすくなり、液滴が小さくなるためうねりが形成しにくくなる。塗工液の吐出量は、0.02ml/s以上が好ましい。0.02ml/s未満では吐出量が少ないため液滴が細かくなり、うねりが形成されにくくなる。吐出量はスプレーガンのノズル開度や、シリンジポンプの押し出し量等で制御することができる。
また、塗工液を塗膜直後のウェットな状態で溶剤やエアを吹き付けることでうねりを形成することも可能である。溶剤を吹き付ける場合、溶剤の種類は任意であるが、吹き付け後、塗膜表面に残らないようにするため沸点の低いものが好ましい。
また、本発明では架橋性樹脂を用いるため、スプレー塗工後は塗膜を架橋させる工程が必要となる。スプレー塗工後から架橋させるまでの指触乾燥時間は10分以内が好ましい。指触乾燥時間が長い場合、塗膜がレベリングされてしまい、うねり形状が小さくなり、さらには消失してしまう場合がある。
感光体の表面にこのようなうねりを持たせることでクリーニングブレードの微振動を引き起こし、良好なクリーニング性を持たせることが可能となるが、このとき表面層に架橋性樹脂を用い、さらにフィラーを含有することで、感光体の機械的強度が増し、耐摩耗性を飛躍的に向上させ、表面層のうねり構造を持続させることが可能となる。また、フィラーは微細な凹凸を形成するため、クリーニングブレードの微振動をより効果的にする。架橋性樹脂やフィラーを用いなかった場合、長期の使用により感光体が削れ、うねり形状が消失するため、徐々にクリーニング性が低下する。そのため、本発明では架橋性樹脂とフィラーを含有させることで、うねり形状を長期的に持続させ、長期に渡り良好なクリーニング性を持たせることが可能となる。フィラー微粒子の粒子径は好ましくは0.1μm〜1.0μm、より好ましくは0.1μm〜0.5μmである。0.1μm未満の場合、フィラーによる耐摩耗性の向上が小さくなり、うねり形状の保持ができなくなる。フィラー粒径が1.0μmを超える場合、クリーニングブレードに対する局所的な抵抗が増加するため、クリーニングブレードの破損させる場合がある。フィラーは無機フィラー、有機フィラーが使えるが、より硬度の高い無機フィラーを用いることが好ましい。
本発明の架橋性樹脂は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)と、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)との混合物を硬化させてなる架橋性樹脂であることが好ましい。電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)を用いることにより3次元の網目構造が発達し、架橋密度が非常に高い高硬度架橋表面層が得られる。また、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)を含有することで、これらが同時に短時間で重合、硬化し、高硬度の架橋結合を構成し、耐久性の向上が達成される。さらに、反応性官能基が多く、硬化速度の速い、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)と電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)を硬化することで架橋層中に歪みの少ない均一な架橋膜を形成することが可能となり、この結果、架橋表面層中において電荷輸送物質の未反応部分が減少し、架橋膜内部の均質性が大きく改善される。これにより耐摩耗性の向上と同時に安定した静電特性及びクラックの発生しない電子写真感光体の両立が実現される。
以下に本発明で用いた、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)と電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)を含有する架橋表面層塗布液の構成材料について説明する。
―電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)―
電荷輸構送造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール等の正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送構造を有しておらず、かつラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(1)で表される官能基が好適に挙げられる。
Figure 0005418012
ただし、前記一般式(1)中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R30)−基(ただし、R30は、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表わす。)、又は−S−基を表わす。
これらの置換基としては、具体的には、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(2)で表される官能基が好適に挙げられる。
Figure 0005418012
ただし、前記一般式(2)中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR31基(ただし、R31は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、)又は−CONR3233(ただし、R32及びR33は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。)、また、X2は前記一般式(1)のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表わす。
ただし、Y、X2の少なくともいずれか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。
これらの置換基としては、例えばα−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
なお、これらX1、X2、Yについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)の具体例としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマー(イ)としては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、HPA変性(アルキレン変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性(エチレンオキシ変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性(プロピレンオキシ変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性(エピクロロヒドリン変性)グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート等が挙げられる。前記変性を行なった理由はモノマーの粘度を下げ、扱いやすくするためである。
これらのラジカル重合性モノマーは単独又は複数で使用してもよく、官能基数の異なる複数のモノマーを混合して使用することが好ましい。特に3官能のモノマーと6官能のモノマーを混合させることが電気特性、機械的特性上、比較的有効である。また、それらの比率については、7:3〜3:7の範囲が好ましく、5:5が最も好ましい。官能基数が変わることにより電気特性や機械的特性が向上するメカニズムが明確でないが、官能基数が変わることにより、膜の架橋密度が変わることや電荷輸送機能を有するラジカル重合性化合物の電荷輸送能が変わることが推測される。官能基数の少ないラジカル重合性モノマーを単独で用いた場合、架橋密度が高まるために表面硬度は高まり、フィルミング等も低減される傾向が見られるが、静電特性は低下し、特に残留電位が上昇する傾向が見られる。一方、より多官能の重合性化合物を単独で用いると、残留電位は低減され、静電特性は改善される傾向が見られるが、フィルミング等の副作用が増大する。また、ガス透過性が高くなり、耐ガス性がやや低下する傾向も見られる。官能基数の異なる複数の重合性化合物を組み合わせることによって、残留電位を低減させ、繰り返し経時でも電位が安定化し、かつ高い耐摩耗性並びに耐傷性が維持され、フィルミング等の異常も防止できる効果が得られ、結果的に長期繰り返し使用しても画質の安定化を実現できる効果を得られる。
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)は、架橋表面層中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、架橋表面層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示したモノマー等中、HPA、EO、PO等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。
架橋表面層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)の成分割合は、架橋表面層全量に対し20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%である。モノマー成分が20質量%未満では架橋表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、80質量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
―電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)―
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)は、例えばトリアリールアミン構造、ヒドラゾン構造、ピラゾリン構造、カルバゾール構造等の正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送構造を有しており、かつラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先にラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。また、電荷輸送性構造としては、トリアリールアミン構造が効果が高い。
さらに、下記一般式(3)又は(4)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
Figure 0005418012
一般式(3)、(4)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR2(R2は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR34(R3及びR4は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar1、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わし、Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表わし、mとnは0〜3の整数を表わす。
前記一般式(3)、(4)において、R1における、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。R1のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表わす。本発明においては該アリール基としては、縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基を含むものであり、以下の基が挙げられる。
縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、As−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
Ar3、Ar4で表わされるアリール基は例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
(2)アルキル基。好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基には、さらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR)。Rは(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基。具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)下記式(α)で示されるす基。
Figure 0005418012
式中、R10及びR11は各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表わす。アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R10及びR11は共同で環を形成してもよい。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
前記Ar1、Ar2で表わされるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基である。
Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
Xにおけるアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基には、さらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキシエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
Xにおけるシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。具体的なシクロアルキレン基としてはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
Xにおけるアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表わし、アルキレンエーテル基のアルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
Xにおけるビニレン基は、下記の2つの構造式で表される。
Figure 0005418012
ただし、R12は水素、アルキル基〔前記(2)で定義されるアルキル基と同じ〕、アリール基(前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基と同じ)、aは1または2、bは1〜3を表わす。
Zは、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表わす。置換もしくは未置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、前記Xのアルキレンエーテル基が挙げられる。アルキレンオキシカルボニル基としては、カプロラクトン変性基が挙げられる。
本発明の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)として、さらに好ましくは、下記一般式(5)の構造の化合物が挙げられる。
Figure 0005418012
式中、p、q、oはそれぞれ0または1の整数、R5は水素原子、メチル基を表わし、R6、R7は水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なってもよい。s、tは0〜3の整数を表わす。Z2は単結合、メチレン基、エチレン基、
Figure 0005418012
のいずれかを表わす。
上記一般式(5)で表わされる化合物としては、R6、R7の置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
本発明で用いる上記一般式(3)及び(4)特に(5)で表される電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在する(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが、架橋される分子内架橋鎖とがある)が、主鎖中に存在する場合であっても、また架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず、鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため、立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造をとりうるものと推測される。
また本発明においては下記一般式(6)で示した特定のアクリル酸エステル化合物も電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物として良好に用いることができる。
1−Ar5−CH=CH−Ar6−B2 一般式(6)
Ar5は、置換基を持つ又は無置換の芳香族炭化水素骨格からなる一価基、または二価基を表わす。芳香族炭化水素骨格としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニル、等が挙げられる。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ベンジル基、ハロゲン原子が挙げられる。また、上記アルキル基、アルコキシ基は、さらにハロゲン原子、フェニル基を置換基として有していてもよい。
Ar6は、少なくとも1個の3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格からなる一価基または二価基、もしくは少なくとも1個の3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格からなる一価基または二価基を表わすが、ここで、3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格とは下記一般式(7)で表される。
Figure 0005418012
式中、R13、R14はアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。Ar7はアリール基を表わす。wは1〜3の整数を表わす。
13、R14のアシル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
13、R14の置換もしくは無置換のアルキル基は、Ar5の置換基で述べたアルキル基と同様である。
13、R14の置換もしくは無置換のアリール基は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基に加えて下記一般式(8)で表される基を挙げることができる。
Figure 0005418012
式中、Bは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−及び以下の二価基から選ばれる。
Figure 0005418012
ここで、R21は、水素原子、Ar5で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、R13で定義された置換もしくは無置換のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表し、R22は、水素原子、Ar5で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、R13で定義された置換もしくは無置換のアリール基を表し、iは1〜12の整数、jは1〜3の整数を表わす。
21のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
21のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
21のアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジベンジルアミノ基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
Ar7のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基を挙げることができる。
Ar7、R13、R14は、Ar5で定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格としては、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等のアミン構造を有する複素環化合物が挙げられる。これらは、Ar5で定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
1、B2はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルキル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルコキシ基を表わす。アルキル基、アルコキシ基は、Ar5で述べたものが同様に適用される。これらB1、B2はどちらか一方のみが存在し、両方の存在は除外される。
一般式(6)のアクリル酸エステル化合物と同様に下記一般式(9)の化合物も良好に用いることができる。
Figure 0005418012
一般式(9)中、R8、R9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子を表し、Ar7、Ar8は、置換もしくは無置換のアリール基またはアリレン基、置換又は無置換のベンジル基を表わす。アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子は前記Ar5で述べたものが同様に適用される。
アリール基は、一般式(7)におけるR13、R14で定義されたアリール基と同様である。アリレン基は、そのアリール基から誘導される二価基である。
1〜B4は、一般式(6)におけるB1、B2と同様の基を表し、いずれか1つのみが存在し、2つ以上の存在は除外される。uは0〜5の整数、vは0〜4の整数を表わす。
特定のアクリル酸エステル化合物は、次のような特徴を有する。スチルベン型共役構造を有した三級アミン化合物であり、発達した共役系を有している。こういった共役系の発達した電荷輸送性化合物を用いることで、架橋層界面部分での電荷注入性が非常に良好となり、さらに架橋結合間に固定化された場合でも、分子間相互作用が阻害されにくく、電荷移動度に関しても良好な特性を有する。また、ラジカル重合性の高いアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を分子中に有しており、ラジカル重合時に速やかにゲル化するとともに過度な架橋歪を生じない。分子中のスチルベン構造部の二重結合が部分的に重合に参加し、しかもアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基よりも重合性が低いために架橋反応に時間差が生じることで歪みを最大に大きくすることがなく、しかも分子中の二重結合を使用するために分子量当りの架橋反応数を上げることができるために、架橋密度を高めることができ、耐摩耗性のさらなる向上が実現可能となった。また、この二重結合は、架橋条件により重合度を調整することができ、容易に最適架橋膜を作製できる。このようなラジカル重合への架橋参加は、アクリル酸エステル化合物の特異的な特徴であり、前述したようなα−フェニルスチルベン型の構造では起こらない。
以上のことから、一般式(6)特に一般式(9)に示したラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を用いることで良好な電気特性を維持しつつ、かつ、クラック等の発生を起さずに架橋密度の極めて高い膜を形成することができ、それにより感光体の諸特性を満足し、かつシリカ微粒子等が感光体に刺さることを防止し、白斑点等の画像欠陥を減らすことができる。
ラジカル重合性官能基の数については、架橋構造の均一性については官能基数の少ないものが好ましく、耐摩耗性については官能基数の多いものが好ましい。本発明においては、両者のバランスから良好に選択して使用することが可能である。
以下に、本発明において用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
Figure 0005418012
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本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)は、架橋表面層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋表面層全量に対し20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%になるように塗工液成分の含有量を調整する。この成分が20質量%未満では架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇等の電気特性の劣化が現れる。また、80質量%を超えると電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概にはいえないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
<フィラー添加の説明>
本発明の表面層は、微細凹凸の形成、機械的耐久性の向上のために、架橋性樹脂にフィラー微粒子を含有させた感光体であるが、このフィラー微粒子としては、以下のようなものが使用できる。有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、カーボン微粒子などが挙げられる。
カーボン微粒子としては、炭素が主成分の構造を有する粒子のことである。非晶質、ダイヤモンド、グラファイト、無定型炭素、フラーレン、ツェッペリン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の構造を有する粒子である。これらの構造の中で水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する粒子は、機械的及び化学的耐久性が良好である。水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン膜とは、SP3軌道を有するダイヤモンド構造、SP2軌道を有するグラファイト構造、非晶質カーボン構造などの類似構造が混在した粒子のことである。ダイヤモンド状カーボンもしくは非晶質カーボン微粒子は、炭素だけで構成されるのではなく、水素、酸素、窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素、沃素等の他の元素が含有されていてもかまわない。
無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、酸化珪素、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる。特に、フィラーの硬度の点からは、この中でも無機材料を用いることが有利である。特に金属酸化物が良好であり、さらには、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタンが有効に使用できる。また、コロイダルシリカやコロイダルアルミナなどの微粒子も有効に使用できる。
フィラーは有機性フィラー、無機フィラー両方が使用できるが、より強固な膜を形成するため、高硬度な無機フィラーを使用することが好ましい。
架橋型表面層中のフィラー材料濃度は、高すぎる場合には残留電位の上昇、架橋型表面層の書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、概ね全固形分に対して、0.1〜50質量%、好ましくは5〜20質量%程度である。
フィラーの粒径は、微細な凹凸形状を形成するため、0.1μm〜1.0μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜0.5μmである。0.1μmより小さい場合には粒径が小さすぎるため微細な凹凸が形成されないことがある。また1.0μmより大きい場合にはフィラーによる凸形状が大きくなり、クリーニングブレードの挙動を不安定にし、ブレードの劣化やクリーニング不良を引き起こす場合がある。
なお、本発明におけるフィラーの粒径とは、粒子群を代表する平均的な一次粒子の粒子径を意味し、個数平均径として表される。具体的には、直接フィラーを、もしくはフィラーが含有された保護層を含む感光体を切断し、その断面を電子顕微鏡等によって直接観察することにより得ることができる。
また更に、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、更には耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤を使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。
表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、フィラー質量に対して3〜30質量%が適しており、5〜20質量%がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。これらフィラー材料は単独もしくは2種類以上混合して用いられる。
本発明において架橋型表面層は、フィラーにより微細な凹凸形状を形成することにより、良好なクリーニング性を得ることができる。しかし、フィラーが均一分散されてない場合、クリーニング性が損なわれる。これを抑制するには、構造中にカルボキシル基を有する有機化合物を分散媒として採用すればよい。また、残留電位を低減させるには、10〜400(mgKOH/g)の酸価を有する分散媒を好ましく採用する。中でも、ポリカルボン酸誘導体を特に好ましく使用する。なお、酸価とは、1g中に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数である。
また、分散剤の酸価が10〜400(mgKOH/g)の範囲でなくても、酸価が10〜400(mgKOH/g)の樹脂や添加剤等を混合させたものを採用してもよい。このような樹脂や添加剤としては、例えば、有機脂肪酸や高酸価樹脂等などを採用できる。
架橋型表面層形成用に採用される分散剤(分散媒)は、公知のいずれかの分散剤を使用すればよいが、カルボキシル基をポリマーまたはコポリマー中に少なくとも一つ含む構造を有する有機化合物を好ましく採用し、分散性を向上させるポリカルボン酸誘導体を特に好ましく用いる。
分散剤におけるカルボン酸部位は、酸価を与えるとともに、分散性を高める重要な役割を果たしている。親水性の無機フィラーは、有機溶剤や結着樹脂との親和性が低く、そのままではいかなる分散手段を用いても上手く分散されない。これに対し、上記分散剤はカルボン酸部位では無機フィラーとの親和性が高く、その他のポリマー部位では結着樹脂や有機溶剤との親和性が高いため、分散剤を介して有機溶剤や結着樹脂等との親和性を高めることができる。これによって、フィラーの分散性を大幅に高めることが可能となる。
なお、上記分散剤は、一つのカルボキシル基を有するものであっても効果は認められるが、より多くのカルボキシル基を有するポリカルボン酸誘導体の方が、フィラーの分散性の向上や残留電位の低減等において有効である。分散剤とフィラーとの親和性がより高まるだけでなく、分散剤同士においても親和性が持てることにより、フィラーの分散性を向上させると同時に、その効果を持続させ、フィラーの沈降性を抑制する効果を得ることができるからである。
分散剤の酸価は、10〜400mgKOH/gが好ましく、より好ましくは30〜200mgKOH/gである。酸価が必要以上に高いと画像ボケの影響が現れる原因となり、酸価が低すぎると添加量を多くしなければならず、また、残留電位の低減効果が不充分となる。分散剤の酸価は、その添加量とのバランスにより決めることが必要である。分散剤の酸価は、残留電位低減効果に直接影響するものではなく、用いる分散剤の構造、分子量あるいはフィラーの種類や分散性によって影響される。場合によっては、これらの材料と有機脂肪酸等とを混合させることによって、残留電位の低減効果が高まることがある。
分散剤の添加量は、下記の関係式を満たすことが好ましい。
0.1<(分散剤の添加量×分散剤の酸価)/(フィラーの添加量)<20
特に、上記関係式において、必要最小量に設定することが好ましい。
添加量を必要以上に多くすると、画像ボケの影響が現れることがあり、添加量が少なすぎると分散性の向上や残留電位の低減効果が充分に発揮されなくなり、異常画像の発生を引き起こすことになる。
前記フィラー材料は、少なくとも有機溶剤、さらに必要であれば分散剤とともにボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などの従来方法を用いて分散できる。使用されるメディアの材質については、従来使用されているジルコニア、アルミナ、メノウ等のメディアを使用することができるが、フィラーの分散性及び残留電位低減効果の点からアルミナを使用することがより好ましく、耐摩耗性に優れたα型アルミナが特に好ましい。ジルコニアは、分散時のメディアの摩耗量が大きく、それらの混入によって残留電位が著しく増加するだけでなく、その摩耗粉の混入によって分散性が低下し、フィラーの沈降性が大幅に低下する。一方、メディアにアルミナを使用した場合には、分散時のメディアの摩耗量は低く抑えられる上に、混入した摩耗粉が残留電位に与える影響が非常に小さい。また、摩耗粉が混入しても分散性に対する影響が他のメディアに比べて少ない。したがって、分散に使用するメディアにはアルミナを使用することがより好ましい。
分散剤は、塗工液中のフィラーの凝集、さらにはフィラーの沈降性を抑制し、フィラーの分散性を著しく向上させることから、フィラーや有機溶剤とともに分散前に添加することが好ましい。
一方、バインダー樹脂や電荷輸送物質は、分散前に添加することも可能であるが、その場合分散性が若干低下する場合が見られる。したがって、バインダー樹脂や電荷輸送物質は、有機溶剤に溶解された状態で分散後に添加することが好ましい。
本発明で用いられる架橋表面層は、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)と電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)を反応させて硬化することにより形成されるが、これ以外に塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減等の機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー、機能性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
1官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマー等が挙げられる。
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレート等のフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチル等のポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招くことがある。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100質量部に対し、50質量部以下、好ましくは30質量部以下に制限することが好ましい。
本発明で用いた架橋表面層は、架橋性樹脂のモノマーを含む塗工液を塗布し、これを重合、硬化することにより形成されるものであるが、必要に応じてこの架橋反応を効率よく進行させるために該塗工液中に重合開始剤(例えば熱重合開始剤や光重合開始剤)を使用してもよい。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、等のアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、等のベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、等のベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、等のチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100質量部に対し、0.5〜40質量部、好ましくは1〜20質量部である。
さらに、本発明における塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質等の添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20質量%以下、好ましくは10質量%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3質量%以下が適当である。
本発明で用いた架橋表面層の塗工方法はいかなる方法でもよく、スプレー塗工法、浸漬塗工法、リングコート法、ビードコート法等が挙げられる。塗膜時にうねりを制御する場合は、スプレー塗工法により塗工するのが好ましい。塗工液は溶媒により希釈して塗布することも可能であり、このとき、用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系等が挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。塗工液の固形分濃度は組成物の溶解性、目的とする膜厚により変わり、任意であるが、固形分濃度が低い場合はうねり形状が形成しにくくなるた、固形分濃度は15%以上であることが好ましい。
架橋表面層の膜厚は、1μm〜8μm、好ましくは2μm〜6μmである。本発明の表面層はうねりを有するため膜厚1μm未満の場合、うねりの谷部分はより薄くなるため作像プロセスでの使用により表面層が剥離する可能性がる。また、8μmより厚い場合、残留電位が増大し、画像濃度低下を引き起こす場合がある。
(硬化方法)
本発明の表面層は、架橋表面層の塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え、硬化させ、形成するものである。このとき、用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素等の気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度は、100℃以上170℃以下が好ましく、100℃未満では反応速度が遅く、完全に反応が終了しない。170℃より高温では反応が不均一に進行し、架橋表面層中に大きな歪みが発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、さらに100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプ等のUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm以上、好ましくは500mW/cm以上、より好ましくは1000mW/cm以上である。1000mW/cmより強い照度の照射光を用いることで、重合反応の進行速度が大幅に大きくなり、より均一な架橋表面層を形成することが可能となる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、熱のエネルギーによる硬化は、硬化反応中、熱により架橋性樹脂がレベリングし、表面層のうねりを消失させる場合があるので、反応速度の速い光エネルギーや放射線エネルギーを用いたものが有用である。
光エネルギーまたは放射線エネルギーにより架橋表面層を硬化した場合は、硬化後に残留溶媒を除去するため、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の温度及び時間は、架橋表面層の塗工液に用いられた溶媒の沸点により任意に選択できるが、概ね100℃〜150℃、10分〜30分程度が好ましい。
<電子写真感光体の層構造>
本発明で製造される電子写真感光体を図2に基づいて説明する。
図2は、電子写真感光体の層構造を表わす部分断面図である。図2−Aは導電性支持体(31)上に、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する感光層(32)が設けられた単層構造の感光層に、架橋表面層(33)が積層した感光体である。図2−Bは、導電性支持体(31)上に、電荷発生機能を有する電荷発生層(34)と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層(35)とが積層された積層構造の感光層に、架橋表面層(33)が積層した感光体である。
(導電性支持体)
導電性支持体(31)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体(31)として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体(31)として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体(31)として良好に用いることができる。
(感光層)
次に感光層について説明する。感光層は積層構造でも単層構造でもよい。積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて述べる。
(積層構造の感光層)
(電荷発生層)
電荷発生層(34)は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(34)に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
前者の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
後者の具体例としては、例えば特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
電荷発生層(34)には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。電荷発生層(34)に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体、ジスチリル誘導体等、挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(34)を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
真空薄膜作製法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
溶液分散系からのキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
(電荷輸送層)
電荷輸送層(35)は電荷輸送機能を有する層であり、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層(34)上に塗布、乾燥することにより形成する。電荷輸送物質としては、前記電荷発生層(34)で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。
これらの中でも本発明においてはジスチリル誘導体が有効に用いられる。ジスチリル誘導体とは、スチリル基を2つ有する材料を示す。これらの材料はπ共役が大きく、高移動であることから電荷の移動が起こりやすい。その結果、同等のイオン化ポテンシャルを有する正孔輸送物質に比べ、明部電位の上昇を抑制する効果があると考えられる。
さらにジスチリル誘導体の中でも下記一般式(10)で表されるジスチリルベンゼン誘導体が特に好ましい。一般式(10)で表されるジスチリルベンゼン誘導体は、電荷輸送機能の高いトリアリールアミン構造を複数有する上、構造式中央の芳香環基を介したπ共役が大きい特徴を有する。また、分子骨格が大きくトリアリールアミン構造が互いに離れているため、分子間で電荷移動が起こりやすい。
Figure 0005418012
式中、R〜R30は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは無置換のフェニル基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。
しかし、ジスチリル誘導体を用いた場合、1分子あたりの分子量が大きく平面性が高いため、π−πスタッキングにより凝集を起こしやすくなる。その結果、樹脂と十分に相溶しておらず、また、内部応力が高い状態で膜形成をしているため、ジスチリル誘導体を用いた電荷輸送層の上に、膜強度の弱い熱可塑性樹脂を表面層とした場合電荷輸送層から亀裂が入ってしまう場合がある。
この問題に対して、表面層として架橋密度が高く、膜強度の非常に強い架橋型表面層を用いることにより強固に電荷輸送層を押さえつけることができるため、クラックを防止することができる。この効果は、架橋型表面層中にフィラーを含有させることにより更に強いものとなる。この理由は定かではないが、フィラーを含有させることにより表面層と電荷輸送層における界面の接触面積が増加するため、合計の接着力がより強固になるためだと考える。
以下に、本発明において有効な一般式(10)で表されるジスチリルベンゼン誘導体の一例を挙げる。ただし、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
Figure 0005418012
Figure 0005418012
Figure 0005418012
Figure 0005418012
Figure 0005418012
(結着樹脂)
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100質量部に対し、20〜300質量部、好ましくは40〜150質量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層の形成には電荷発生層(34)と同様な塗工法が可能である。
(その他の添加剤)
電荷輸送層には、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜1質量部程度が適当である。
電荷輸送層の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
(単層構造の感光層)
単層構造の感光層(32)は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層であり、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。電荷発生物質の分散方法、それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層(34)、電荷輸送層(35)において既に述べたものと同様なものが使用できる。結着樹脂としては、先に電荷輸送層(35)の説明で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層(34)で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は感光層全量に対し1〜30質量%が好ましく、感光層に含有される結着樹脂は全量の20〜80質量%、電荷輸送物質は10〜70質量%が良好に用いられる。また、かかる感光層の膜厚は、5〜30μm程度が適当であり、好ましくは10〜25μm程度が適当である。
(下引き層)
本発明の感光体の製造方法においては、導電性支持体(31)と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
<酸化防止剤>
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、表面架橋層、感光層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェロール類など。
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01〜10質量%である。
<画像形成方法及び画像形成装置>
次に図3に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、上述の本発明の感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経てトナー画像を形成した後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法、並びにこれらの工程を実現する手段を備えた画像形成装置である。場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
図3は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体1を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャーや帯電ローラーなどがある。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラー帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
次に、均一に帯電された感光体1上に静電潜像を形成するために画像露光部5が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
次に、感光体1上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット6が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体9上に転写するために転写チャージャ10が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ7を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写体9を感光体1から分離する手段として分離チャージャ11、分離爪12が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ11としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにクリーニングブラシ14、クリーニングブレード15が用いられる。転写後の感光体は残トナーの他に現像剤や紙粉なども付着しており、これらは次工程の画像形成プロセスで異常画像を引き起こす可能性があるため重要な工程となる。残トナーを主とする感光体付着物を良好に除去するには感光体に当接するクリーニングブレードが有効であり、さらに本発明の感光体を用いることによりクリーニング性能はより効果的となる。
また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ13を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ2、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図4に示す。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体101を内蔵し、他に帯電手段102、現像手段104、転写手段106、クリーニング手段107、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。図4に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体101は、時計回り方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段103による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段104でトナー現像され、該トナー現像は転写手段106により、転写体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
<電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の合成例>
本発明における電荷輸送性構造を有する化合物は、例えば特許第3164426号公報記載の方法にて合成される。下記に電荷輸送性構造を有する化合物の製造方法の一例を示す。
(トリアリールアミン構造を有するラジカル重合性化合物の合成)
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式B)の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式A)113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして下記構造式Bの白色結晶88.1g(収率=80.4%、融点:64.0〜66.0℃、元素分析値(%):表1に示す。)を得た。
Figure 0005418012
Figure 0005418012
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(例示化合物NO.54)の合成
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(構造式B)82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして例示化合物NO.54の白色結晶80.73g(収率=84.8%、融点:117.5〜119.0℃)を得た。元素分析結果(%)を以下に示す。
Figure 0005418012
実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、特に断らない限りすべて質量部を表わす。
(実施例1)
φ100mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.0μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層を形成した。
[下引き層用塗工液]
アルキッド樹脂: 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂: 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン: 40部
メチルエチルケトン: 50部
[電荷発生層用塗工液]
下記構造式(I)のチタニルフタロシアニン顔料: 1.5部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製): 1.0部
メチルエチルケトン: 80部
Figure 0005418012
[電荷輸送層用塗工液]
ビスフェノールZポリカーボネート: 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式(II)の低分子電荷輸送物質: 10部
テトラヒドロフラン: 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液: 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
Figure 0005418012
[架橋表面層用塗工液]
電荷輸送層上には、下記構成の架橋表面層塗工液を使用した。
フィラーの分散は、70ccのガラスポットにφ5mmのアルミナボールを入れ、さらに下記のフィラー、ポリカルボン酸化合物及びシクロペンタノンを入れ、ボールミルにより24時間分散(150rpm)を行った。その後、テトラヒドロフランを添加して撹拌することによって得られたミルベースと、その他の材料を予め混合した溶液とを混合することによって表面層用塗工液を作製した。
(ミルベース)
アルミナフィラー: 8部
(スミコランダムAA03、平均一次粒径:0.3μm、住友化学工業製)
ポリカルボン酸化合物: 0.2部
(低分子量不飽和ポリカルボン酸ポリマー溶液、BYK−P104、
不揮発分50%、酸価180mgKOH/g、BYKケミー社製)
シクロペンタノン: 8部
テトラヒドロフラン: 12部
(架橋表面層塗工液)
ミルベース: 6.5部
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物: 10部
例示化合物NO.54
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー:
トリメチロールプロパントリアクリレート 5部
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製、分子量:296、
官能基数:3官能)
ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート 5部
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬製、分子量:1947、
官能基数:6官能)
光重合開始剤: 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、日本化薬製、分子量:204)
レベリング剤: 0.2部
BYK−UV3570(ビックケミー製)
溶媒: 115部
テトラヒドロフラン
上記の処方で調整した架橋表面層塗工液をスプレーにて感光層上に塗工した。スプレーガンには明治機械製作所製A100を用いて塗工した。下記にスプレー塗布の条件を示す。
ノズル−支持体間距離 :50mm
霧化エア圧 :1.0kg/cm2
エアー流量 :15.0L/min
吐出量 :0.06ml/s
スプレーガンの移動速度:3.5mm/s
ドラム回転数 :150rpm
指触乾燥時間 :5分
架橋表面層塗工液塗工後、紫外線照射装置Fusion製UVランプシステムを用い、支持体を30rpmで回転させながら紫外線照射を行い、硬化させた。紫外線照射のランプにはVバルブを使用し、紫外線ランプと感光体表面の距離を53mm、照射強度を500mW/cm2とし、60秒間の紫外線照射を行い、塗布膜を硬化させた。紫外線照射後は、130℃20分の乾燥を加え、膜厚3μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
(実施例2)
実施例1において、スプレー塗工時の霧化エア圧を0.9kg/cm2に変更した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
(実施例3)
実施例1において、スプレー塗工時の霧化エア圧を0.8kg/cm2に変更した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
(実施例4)
実施例1において、スプレー塗工時の霧化エア圧を0.7kg/cm2に変更した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
(実施例5)
実施例1において、スプレー塗工時の霧化エア圧を0.6kg/cm2に変更した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
(実施例6)
実施例1において、架橋表面層塗工液の溶媒を54部とし、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度7.0mm/s、に変更した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
(実施例7)
実施例6において、霧化エア圧0.9kg/cm2に変更した以外は全て実施例6と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
(実施例8)
実施例6において、霧化エア圧0.8kg/cm2に変更した以外は全て実施例6と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
(実施例9)
実施例3において、フィラー微粒子をシリカ微粒子(KMPX−100、平均一次粒径:0.1μm、信越化学工業製)に変更した以外は全て実施例3と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
(実施例10)
実施例3において、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合製モノマーを下記材料単独に変更した以外は全て実施例3と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー:
ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート 10部
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬製、分子量:1947、
官能基数:6官能)
(実施例11)
実施例3において、フィラー微粒子をアルミナ微粒子(スミコランダムAA07、平均一次粒径:0.7μm、住友化学製)に変更した以外は全て実施例3と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
(実施例12)
実施例3において、フィラー微粒子をエポスターS6(メラミン・ホルムアルデヒド縮合 有機微粒子、平均1次粒径:0.6μm、日本触媒製)に変更した以外は全て実施例3と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
(実施例13)
実施例3において、光重合開始剤を以下の熱重合開始剤に変更し、架橋表面層塗工液の溶媒を34部とし、スプレー塗工時の霧化エア圧を1.0kg/cm2、霧化エア流量を15.0L/minに変更し、スプレー塗工後は紫外線照射を行わずに130℃30分の乾燥を行い、表面層を設けた。それ以外は全て実施例3と同様にして本発明の電子写真感光体を作製した。
熱重合開始剤: 1部
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン
(パーカドックス 12−EB20 化薬アクゾ製)
(実施例14)
実施例3において、架橋表面層塗工液の溶媒をテトラヒドロフラン69部、アセトン46部として架橋表面層塗工液を作製し、スプレー塗工した以外は全て実施例3と同様にして表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
(比較例1)
実施例1において、スプレー塗工時の霧化エア圧を1.1kg/cm2に変更した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、電子写真感光体を作製した。
(比較例2)
実施例1において、スプレー塗工時の霧化エア圧を1.3kg/cm2に変更した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、電子写真感光体を作製した。
(比較例3)
実施例1において、スプレー塗工時の霧化エア圧を0.5kg/cm2に変更した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、電子写真感光体を作製した。
(比較例4)
実施例1において、架橋表面層塗工液の溶媒を54部とし、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度7.0mm/sに、霧化エア圧を0.6kg/cm2に変更した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、電子写真感光体を作製した。
(比較例5)
実施例1において、架橋表面層塗工液の溶媒を208部とし、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度2.3mm/sに、霧化エア圧を0.5kg/cm2に変更した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、電子写真感光体を作製した。
(比較例6)
実施例1において、架橋表面層塗工液の溶媒を208部とし、スプレー塗工時のスプレーガンの移動速度2.3mm/sに、霧化エア圧を1.3kg/cm2に変更した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、電子写真感光体を作製した。
(比較例7)
実施例1において、架橋表面層をリング塗工法により塗工した以外は全て実施例1と同様にして表面層を設け、電子写真感光体を作製した。
(比較例8)
実施例1において、フィラーを添加せずに架橋表面層塗工液を作製し、スプレー塗工により表面層を設け、電子写真感光体を作製した。
(比較例9)
実施例1と同様にして電荷輸送層まで設けた。表面層には下記構成の熱可塑性表面層の塗工液を作製し、電荷輸送層上にスプレーで塗工し、150℃20分の乾燥を経て、膜厚5μmの表面層を設け、電子写真感光体を作製した。
フィラー: 2部
アルミナ微粒子(スミコランダムAA03、住友化学工業製)
下記構造式の電荷輸送物質 4部
Figure 0005418012
ポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成製) 6部
テトラヒドロフラン 220部
シクロヘキサノン 80部
(比較例10)
比較例9において、フィラーを添加せずに熱可塑性表面層の塗工液を作製し、電荷輸送層上にスプレーで塗工し、150℃20分の乾燥を経て、膜厚5μmの表面層を設け、電子写真感光体を作製した。
うねり形状の測定
表面層の算術平均うねりWaと輪郭曲線要素の平均長さWSaは、東京精密製表面粗さ計サーフコム1400Dを用い、JIS B 0601:2001年規格に準拠して測定を行った。測定は測定長さ12.5mm、λc輪郭曲線フィルタ0.25mm、λf輪郭曲線フィルタ2.5mm、測定速度0.6mm/sで断面曲線を測定し、傾斜補正は最小二乗法直線近似を選択した。測定点は感光体の長手方向の上端、中央、下端の3点、周方向90°おきに4点の計12点の測定を行い、12点の平均値を値とした。
クリーニング性評価
クリーニング性評価は、リコー製imagio MP 110改造機を用い、電子写真用プロセスカートリッジに電子写真感光体を装着し、クリーニング不良の起こりやすい10℃15%環境下において画像濃度100%の画像で10万枚の通紙を行い、画像評価を行った。紙は、NBSリコー製MyPaperA4を使用し、トナーおよびクリーニングブレードは純正のものを使用した。また、プロセスカートリッジからクリーニングブレードを取り出し、ブレードのエッジ部分を顕微鏡で観察し、エッジ部分の傷の評価を行った。
画像評価
○:異常なし
クリーニングブレード傷評価
◎:傷なし
○:小さな傷あり(画像に影響なし)
△:傷あり(画像に影響あり)
×:大きな傷あり
結果を表4に示す。
Figure 0005418012
以上の結果より、表面層が少なくともフィラーと架橋性樹脂を含有し、該表面層が、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.05μm〜0.3μmでかつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.5mm〜1.5mmである実施例1〜14は10℃15%環境での通紙試験においてもクリーニングブレードの傷はほとんど見られず、スジ状汚れや濃度ムラなどの異常画像の発生も認められなかった。一方、算術平均うねりWa、輪郭要素の平均長さWSmの一方もしくはその両方がこれを満たさない比較例1〜7はクリーニングブレードの傷が発生し、スジ状汚れの発生したものや、濃度ムラが発生していた。また、架橋性樹脂もしくはフィラーを含有していない比較例8〜10においても通紙後においてクリーニングブレードの劣化が見られ、スジ状汚れが発生していた。
(実施例15)
実施例4の感光体を用い、上記のクリーニング性評価をさらに40万枚追加して行った。その結果、異常画像の発生は認められず、クリーニングブレードの傷も見られなかった。また、合計50万枚の通紙評価の摩耗量を測定した。摩耗量は、渦電流式膜厚計フィッシャースコープMMS(フィッシャー製)を用い、中央部軸方向に10mm間隔で30点を周方向90°間隔に4個所測定し、それらの平均値を膜厚とし、通紙前後の膜厚差から求めた。その結果、50万枚通紙後の摩耗量は0.31μmであり、高い耐摩耗性を有していることが確認された。
以上の結果より導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面層を順次積層した電子写真感光体において、該表面層が少なくともフィラーと架橋性樹脂を含有し、該表面層が、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.05μm〜0.3μmでかつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.5mm〜1.5mmであることを特徴とする電子写真感光体により、クリーニングブレードの劣化がなく、長期間に渡り良好なクリーニング性を有し、かつ優れた耐久性及び電気特性を有していることが確認された。また、本発明の感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジが高性能、高信頼性を有していることが明らかとなった。
特開昭56−48637号公報 特開昭64−1728号公報 特開平4−281461号公報 特許第3262488号公報 特許第3194392号公報 特開2000−66425号公報 特開2004−302450号公報 特開2004−302451号公報 特開2004−302452号公報 特開2005−99688号公報 特開昭53−092133号公報 特開昭52−026226号公報 特開平02−139566号公報 特開平02−150850号公報

Claims (10)

  1. 導電性支持体上に少なくとも感光層及び表面層を順次積層した電子写真感光体において、該表面層が少なくともフィラーと架橋性樹脂を含有し、該表面層が、λc輪郭曲線フィルタ0.25mmで粗さ成分を遮断し、λf輪郭曲線フィルタ2.5mmでうねりより長い波長成分を遮断したうねり曲線から得られる算術平均うねりWa(μm)が0.05μm〜0.3μmでかつ、輪郭曲線要素の平均長さWSm(mm)が0.5mm〜1.5mmであることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記表面層の架橋性樹脂が、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを硬化させてなる樹脂から成ることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
  3. 前記フィラーが無機フィラーであることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真感光体。
  4. 前記フィラーがアルミナであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体。
  5. 前記表面層が光エネルギーにより硬化されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体。
  6. 前記表面層がスプレー塗工法により塗工されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真感光体と、電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、電子写真感光体上の転写残トナーを取り除くクリーニング手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
  8. 前記クリーニング手段が、ブレード形状を有し、感光体に当接されていることを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真感光体と、電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と、電子写真感光体上の転写残トナーを取り除くクリーニング工程とを有することを特徴とする画像形成方法。
  10. 静電潜像形成手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段の少なくとも1つと、請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真感光体とを具備してなることを特徴とするプロセスカートリッジ。
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