次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の感光体は、表面層に、一般式
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基又はアルキル基であり、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総数は、3、4又は5である。)
で示される電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー(A)及び一般式
(式中、R
7は、アルキル基であり、R
8、R
9及びR
10は、それぞれ独立に、アクリロイル基又はメタクリロイル基である。)
で示される電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー(B)の少なくとも一方を用いることで、表面性が優れ、3次元の網目構造が発達し、架橋密度が非常に高い高硬度の表面層が得られ、高い耐摩耗性が達成される。これは、ラジカル重合性モノマー(A)及び(B)が分子構造中に有する非極性基であるアルキル基が硬化反応時のスペーサー的役割を担って、急激な硬化収縮等により発生する塗膜のシワ及びそれに起因した白抜け等の異常画像を抑制するために、高い表面平滑性と耐摩耗性を得られるものと推定される。
また、本発明においては、ラジカル重合性モノマー(A)及び(B)の少なくとも一方に加え、一般式
(式中、R
11は、水素原子又はメチル基であり、R
12は、水素原子、メチル基又はエチル基であり、lは、3〜20の整数である。)
で示される電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー(C)を用いることで、感光層との密着性が高くなり、より一層耐磨耗性の高い表面層を形成することが可能となる。ラジカル重合性モノマー(C)を用いることにより、外部からの埃付着等を抑制し、硬化時の塗膜欠陥及びそれに起因した白ポチ等の異常画像を抑制することが可能となる。これは、ラジカル重合性モノマー(C)が分子内に有するポリオキシアルキレン鎖が最表面の電気抵抗を下げ、外部からの埃の付着等を抑制することが可能になるものと考えられる。
さらに、本発明においては、ラジカル重合性モノマー(A)及び(B)の少なくとも一方と、ラジカル重合性モノマー(C)に加え、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物(D)を用いることで、これらが同時に短時間で硬化され、高硬度の架橋結合を形成し、耐久性の向上が達成される。また、硬化速度の向上により、平滑な表面層の形成が可能となり、良好なクリーニング性を長期に亘って維持することが可能となる。すなわち、ラジカル重合性官能基が多く、硬化速度の速い、ラジカル重合性モノマー(A)及び(B)の少なくとも一方と、硬化収縮が小さく、感光層との接着性を損なわず、内部応力が高く、外部からの機械的なハザードを緩和することが可能なラジカル重合性モノマー(C)と、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物(D)とを硬化することで、表面層中に歪みの少ない均一な架橋構造を形成することが可能となる。その結果、表面層において、ラジカル重合性化合物(D)の未反応部分が減少し、均質性が大きく改善される。これにより、耐摩耗性の向上と同時に安定した静電特性の両立が実現される。つまり、感光体の耐摩耗性、クリーニング性、電気特性といった諸特性は、感光体の場所依存性を有さず、長期的通紙に対して安定した耐摩耗性と高画質形成が両立される。また、ラジカル重合性化合物(D)が表面層に組み込まれているために、安定な電気特性を長期に亘って示す。
これに対し、ラジカル重合性官能基を有さない低分子電荷輸送物質を表面層に含有させた場合、相溶性の低さから低分子電荷輸送物質の析出や白濁現象が起こり、表面層の機械的強度も低下する。また、電荷輸送性構造を有する2官能以上のラジカル重合性モノマーを用いた場合、電荷輸送性構造は、複数の結合で架橋構造中に固定されるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため、架橋構造中に歪みが発生し、表面層の内部応力が高くなり、キャリア付着等でクラックや傷の発生が頻発する。また、複数の結合で架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こる。これらの電気的特性の劣化は、画像濃度の低下、文字の細り等の画像として現れる。従って、本発明において、耐摩耗性の向上と同時に長期に亘って高画質化を維持することが可能な感光体を実現することができる。
本発明においては、表面層を構成する樹脂成分として、ラジカル重合性官能基を有する化合物、すなわち、ラジカル重合性モノマー(A)及び(B)の少なくとも一方と、ラジカル重合性モノマー(C)と、ラジカル重合性化合物(D)とを同時に重合し、表面層を形成させることで、耐摩耗性の向上、塗膜欠陥の少ない平滑な表面性、電気特性の長期に亘る安定性、高画質画像形成の持続性の向上を実現することができる。
次に、表面層塗布液を構成する材料について説明する。
本発明において、電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマーとしての、ラジカル重合性モノマー(A)及び(B)は、ラジカル重合性官能基(アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基)を3個以上有する。3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。
ラジカル重合性モノマー(A)としては、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(KAYARAD D−310)、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(KAYARAD D−320)、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート(KAYARAD D−330)(以上、日本化薬社製)が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
また、ラジカル重合性モノマー(B)としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA(日本化薬社製)、アロニックスM−309(東亜合成社製)、ビスコート#295(大阪有機化学社製)、ライトアクリレートTMP−A(共栄社化学社製)、NKエステルA−TMPT(新中村化学社製)、KS−TMPTA(化薬サートマー社製)、Laromer TMPTA(BASF社製)、TMPTA−N、(ダイセルUCB社製)、ブレンマーATT(日本油脂社製)、ニューフロンティアTMPT(第一工業製薬社製)、フォトマー4006(サンノプコ社製))等が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
さらに、本発明において、電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマーとしての、ラジカル重合性モノマー(C)は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の骨格を有しており、ラジカル重合性官能基(アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基)を2個有する。ここで、lが2以下であると、表面欠陥の低減効果が小さく、耐磨耗性が低下する傾向にある。また、lが21以上であると、表面層の架橋密度が低下し、3次元網目構造の発達が阻害され、耐摩耗性が低下する。さらに、材料の入手が困難であり、表面層が吸湿しやすくなる傾向がある。
ラジカル重合性モノマー(C)としては、ライトアクリレート3EG−A、4EG−A、9EG−A、14EG−A、ライトエステル3EG、4EG、9EG、14EG(以上、共栄社化学社製)、NKエステル3G、4G、9G、14G、NK エステルA−200、A−400、A−600(以上、新中村化学社製)、KAYARAD PEG400DA、SR−259、SR−268、SR−272、SR−344、SR−610、SR−209、SR−210E、SR−252、SR−603(以上、日本化薬社製)、アロニックスM−240、M−245、M−260(以上、東亞合成社製)が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
本発明において、ラジカル重合性モノマー(A)及び(B)の全量は、ラジカル重合性モノマー(A)〜(C)の全量に対して、通常、30〜95重量%であり、50〜90重量%が好ましい。また、ラジカル重合性モノマー(A)〜(C)の全量は、表面層に対して、通常、5〜80重量%であり、10〜70重量%が好ましい。ラジカル重合性モノマー(A)〜(C)の全量が5重量%未満では、表面層の架橋密度が低下し、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ、飛躍的な耐摩耗性の向上が達成されないことがある。また、80重量%以上では、電荷輸送性構造の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じることがある。
本発明において、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物(D)は、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール等の正孔輸送性構造、縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送性構造等の電荷輸送性構造を有すると共に、ラジカル重合性官能基を一つ有する。ラジカル重合性官能基とは、ラジカル重合が可能な炭素−炭素2重結合を有する官能基であれば、特に限定されない。ラジカル重合性官能基としては、例えば、以下に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
1−置換エチレン官能基としては、例えば、一般式
CH2=CH−X1−
(式中、X1は、置換若しくは無置換のフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換若しくは無置換のアルケニレン基、カルボニル基、オキシカルボニル基、一般式
−CONR1−
(式中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基である。)
で示される官能基又はチオ基である。)
で示される官能基が挙げられる。具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオ基等が挙げられる。
1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、一般式
CH2=CY−X2−
(式中、Yは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、一般式
−COOR2
(式中、R2は、水素原子、置換若しくは無置換のメチル基、エチル基等のアルキル基、置換若しくは無置換のベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基又は置換若しくは無置換のフェニル基、ナフチル基等のアリール基である。)
で示される官能基又は一般式
−CONR3R4
(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のメチル基、エチル基等のアルキル基、置換若しくは無置換のベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基又は置換若しくは無置換のフェニル基、ナフチル基等のアリール基である。)
で示される官能基である。また、X2は、X1と同一の官能基、単結合又はアルキレン基である。ただし、Y及びX2の少なくとも一方は、オキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基又は芳香族環を有する)。
で示される官能基が挙げられる。具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
なお、X1、X2、Yにおける置換基としては、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基が特に有用である。また、電荷輸送性構造としては、トリアリールアミン構造の効果が高い。さらに、ラジカル重合性化合物(D)として、一般式(1)
(式中、R
13及びR
14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、一般式
−COOR
15
(式中、R
15は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。)
で示される官能基、一般式
−COX
(式中、Xは、ハロゲン基である。)
で示される官能基又は一般式
−CONR
16R
17
(式中、R
16及びR
17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。)
で示される官能基であり、Ar
1、Ar
2及びAr
5は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアリーレン基である。Ar
3、Ar
4、Ar
6及びAr
7は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアリール基である。Xは、単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のオキシアルキレン基、オキシ基、チオ基又はビニレン基である。Z
1及びZ
2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のオキシアルキレン基又は一般式
−COOR
18−
(式中、R
18は、アルキレン基である。)
で示される官能基である。m及びnは、それぞれ独立に、0〜3の整数である。)
で示される化合物からなる群より選択される一種以上を用いると、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
上記一般式において、R13及びR14のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘプチロキシ基、ヘキシロキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
Ar3、Ar4、Ar6及びAr7のアリール基としては、縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が挙げられる。縮合多環式炭化水素基は、環を形成する炭素数が18個以下であることが好ましく、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基等が挙げられる。非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、ビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等の1価基が挙げられる。
また、Ar3、Ar4、Ar6及びAr7のアリール基の置換基としては、以下のような官能基が挙げられる。
(1)ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基
(2)アルキル基
C1〜C12、好ましくは、C1〜C8、さらに好ましくは、C1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基は、フルオロ基、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン基、C1〜C4のアルキル基若しくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基をさらに有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR1)
R1は、(2)で定義したアルキル基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、これらのアリール基は、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン基をさらに有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基又はアリールメルカプト基
具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)アミノ基(−NR2R3)
R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、(2)で定義したアルキル基又はアリール基である。アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン基をさらに有してもよい。また、R2及びR3は、共同で環を形成してもよい。具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジトリールアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)アルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基
具体的には、メチレンジオキシ基、メチレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基
Ar1、Ar2及びAr5のアリーレン基としては、Ar3、Ar4、Ar6及びAr7のアリール基から誘導されるアリーレン基が挙げられる。
Xの置換若しくは無置換のアルキレン基は、C1〜C12、好ましくは、C1〜C8、さらに好ましくは、C1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基は、フルオロ基、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン基、C1〜C4のアルキル基若しくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基をさらに有してもよい。具体的には、メチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、イソプロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
Xの置換若しくは無置換のシクロアルキレン基は、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらのシクロアルキレン基は、フルオロ基、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基をさらに有してもよい。具体的には、シクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
Xの置換若しくは無置換のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールのヒドロキシル基をオキシ基に変換した2価基が挙げられ、これらのオキシアルキレン基は、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基をさらに有してもよい。
Xのビニレン基は、一般式
で表わされ、Rは、水素原子、前述の(2)で定義したアルキル基又は前述のAr
3、Ar
4、Ar
6及びAr
7のアリール基であり、aは、1又は2であり、bは、1、2又は3である。
Z1及びZ2の置換若しくは無置換のアルキレン基としては、Xの置換若しくは無置換のアルキレン基が挙げられる。
Z1及びZ2の置換若しくは無置換のオキシアルキレン基としては、Xの置換若しくは無置換のオキシアルキレン基が挙げられる。
Z1及びZ2の一般式
−COOR18−
(式中、R18は、アルキレン基である。)
で示される官能基としては、カプロラクトン変性基が挙げられる。
また、ラジカル重合性化合物(D)は、一般式(2)
(式中、o、p及びqは、それぞれ独立に、0又は1であり、s及びtは、それぞれ独立に、0〜3の整数である。R
19は、水素原子又はメチル基であり、R
20及びR
21は、それぞれ独立に、炭素数が1〜6のアルキル基である。Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基又は一般式
で示される官能基である。)
で示される化合物からなる群より選択される一種以上であることがさらに好ましい。このとき、R
20及びR
21は、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基であることが好ましい。なお、sが2又は3である場合及びtが2又は3である場合は、R
20及びR
21は、それぞれ複数存在するが、複数のR
20及び複数のR
21は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本発明において、一般式(1)、特に、一般式(2)で示される電荷輸送構造を有する1官能のラジカル重合性化合物(D)は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー(A)〜(C)との重合で形成される重合体中に組み込まれ、末端構造とはなりにくい。このため、ラジカル重合性化合物(D)由来の構成単位は、重合体中では、高分子の主鎖中及び主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在し(架橋鎖には、1つの高分子と他の高分子が架橋されることにより生じる分子間架橋鎖と、1つの高分子内で主鎖のある部位と他の部位が架橋されることにより生じる分子内架橋鎖とがある)、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーである。しかしながら、トリアリールアミン構造は、鎖部分に直接結合しておらず、鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため、立体的位置取りに融通性がある状態で固定されている。その結果、トリアリールアミン構造は、重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
ラジカル重合性化合物(D)の具体例を以下に示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
また、ラジカル重合性化合物(D)の添加量は、表面層に電荷輸送性能を付与するためには、表面層の全量に対して、通常、20〜80重量%であり、30〜70重量%が好ましい。ラジカル重合性化合物(D)の添加量が20重量%未満では、表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度の低下、残留電位の上昇等の電気特性の劣化が発生することがある。また、80重量%以上では、電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマーの含有量が低下し、架橋密度が低下して、耐摩耗性が低下することがある。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため、一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると、ラジカル重合性化合物(D)の添加量は、30〜70重量%であることが好ましい。
本発明において、ラジカル重合性化合物(D)は、例えば、特許第3164426号公報に記載の方法で合成される。以下に、その一例を示す。
(1)ヒドロキシル基置換トリアリールアミン化合物の合成
で示されるメトキシ基置換トリアリールアミン化合物113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)に、スルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液に、トリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌した。この液に、トルエン約1.5lを加え、室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:体積比20/1のトルエン/酢酸エチル混合溶媒)により精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして、ヒドロキシル基置換トリアリールアミン化合物の白色結晶88.1g(収率80.4%)を得た。なお、融点は、64.0〜66.0℃であり、表1に、元素分析値(単位は%)を示す。
(2)ラジカル重合性化合物(D)(No.54)の合成
(1)で得られたヒドロキシル基置換トリアリールアミン化合物82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解させ、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH12.4g+水100ml)を滴下した。この液を5℃に冷却し、アクリル酸塩化物25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌した。この液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)により精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして、ラジカル重合性化合物(D)(No.54)の白色結晶80.73g(収率84.8%)を得た。なお、融点は、117.5〜119.0℃であり、表2に、元素分析値(単位は%)を示す。
本発明において、表面層は、ラジカル重合性モノマー(A)及び(B)の少なくとも一方と、ラジカル重合性モノマー(C)と、ラジカル重合性化合物(D)を同時に硬化させることにより形成されるが、表面層の塗工時の粘度調整、表面層の応力緩和、低表面自由エネルギー化、摩擦係数の低減等の機能を付与する目的で、以下に示すような、ラジカル重合性モノマー(E)及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。
ラジカル重合性モノマー(E)としては、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、アクリル酸3−メトキシブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸イソブチル、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、アクリル酸セチル、アクリル酸イソステアリル、アクリル酸ステアリル、スチレン、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。また、機能性モノマーとしては、アクリル酸オクタフルオロペンチル、アクリル酸2−パーフルオロオクチルエチル、メタクリル酸2−パーフルオロオクチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロイソノニルエチル等のフルオロ基を有するモノマーやラジカル重合性官能基を有する反応性添加剤が挙げられ、2種以上併用してもよい。機能性モノマーの添加量は、表面層の全量に対して、通常、0.01〜30重量%であり、0.05〜20重量%が好ましい。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。ただし、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に添加すると、表面層の架橋密度が低下し、耐摩耗性が低下することがある。このため、これらのモノマーやオリゴマーの添加量は、電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー(A)〜(C)の総重量に対して、通常、1.5倍以下であり、1倍以下が好ましい。
本発明において、表面層を形成する際の硬化反応を効率よく進行させるために、必要に応じて、重合開始剤を使用してもよい。
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられ、これらは、混合して用いてもよい。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物が挙げられる。
また、光重合促進効果を有する化合物を単独又は光重合開始剤と併用して用いることもできる。このような化合物としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4'−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
重合開始剤の添加量は、ラジカル重合性を有する化合物の全量に対して、通常、0.5〜40重量%であり、1〜20重量%が好ましい。
本発明において、表面層は、耐摩耗性の向上を目的として、フィラーを含有することができる。このとき、フィラーは、二種以上併用してもよい。
フィラーは、表面層の光透過率や耐摩耗性の点から、平均一次粒径が0.01〜0.5μmであることが好ましい。平均一次粒径が0.01μm未満である場合は、分散性の低下等を引き起こし、耐摩耗性の向上が不十分になることがあり、0.5μmを超える場合は、フィラーの分散液中における沈降性が促進されたり、トナーのフィルミングが発生したりすることがある。表面層中のフィラーの濃度が高い程、耐摩耗が向上するが、高すぎる場合には、残留電位の上昇、表面層の書き込み光の透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、フィラーの添加量は、表面層の全量に対して、通常、50重量%以下であり、30重量%以下が好ましい。
また、フィラーは、分散性の面から、少なくとも一種の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。フィラーの分散性の低下は、残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下を引き起こし、高耐久化あるいは高画質化を妨げることがある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤を使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。表面処理量は、フィラーの平均一次粒径によって異なるが、フィラーに対して、通常、3〜30重量%であり、5〜20重量%が好ましい。表面処理量が3重量%よりも少ないと、フィラーの分散効果が得られないことがあり、30重量%より多いと、残留電位の上昇を引き起こすことがある。
本発明において、表面層を形成する際に用いる塗工液は、必要に応じて、各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤等の添加剤を含有することができる。これらの添加剤としては、公知のものが使用可能である。可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能であり、その添加量は、塗工液の全固形分に対して、通常、20重量%以下であり、10重量%以下が好ましい。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その添加量は、塗工液の全固形分に対して、通常、3重量%以下である。
また、塗工液は、表面層の平滑性、電気特性あるいは耐久性を損なわない範囲であれば、バインダー樹脂を含有させることも可能である。しかしながら、塗工液がバインダー樹脂等の高分子材料を含有すると、ラジカル重合性を有する化合物の硬化反応により生成した硬化物との相溶性の悪さから相分離が生じ、表面層の表面の凹凸が激しくなることがある。したがって、塗工液は、バインダー樹脂を含有しないことが好ましい。
さらに、ラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解させて塗工液を調製することも可能であるが、必要に応じて、溶媒で希釈する。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系等が挙げられ、二種以上併用してもよい。溶媒による希釈率は、組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚に応じて、適宜選択される。塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法等を用いることができる。
本発明においては、塗工液を塗布した後、外部エネルギーを印加して硬化させることにより、表面層を形成するが、外部エネルギーとしては、熱、光、放射線が挙げられる。熱エネルギーを印加する際には、空気、窒素等の気体、蒸気あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用いて、塗布面側あるいは支持体側から加熱される。加熱温度は、100〜170℃であることが好ましい。加熱温度が100℃未満では、硬化反応の速度が遅く、完全に反応が終了しないことがあり、170℃を超えると、硬化反応が不均一に進行して表面層中に大きな歪みが発生することがある。このため、硬化反応を均一に進行するように、100℃未満の比較的低温で加熱した後、100℃以上に加温し、反応を完結させる方法も有効である。光のエネルギーを印加する際には、主に紫外光に発光波長を持つ高圧水銀灯、メタルハライドランプ等のUV(紫外線)の光源を利用できるが、ラジカル重合性を有する化合物や光重合開始剤の吸収波長に合わせて、可視光の光源も利用可能である。照射光量は、50〜1000mW/cm2であることが好ましい。照射光量が50mW/cm2未満では、硬化反応に時間を要することがあり、1000mW/cm2を超えると、硬化反応の進行が不均一となり、表面層の荒れが激しくなることがある。放射線としては、電子線(EB)が挙げられる。これらの外部エネルギーの中で、反応速度の制御の容易さ、装置の簡便さから、熱及び光を用いることが好ましい。
本発明において、表面層の膜厚は、感光体の層構造によって異なるため、以下の層構造の説明に従い、記載する。
図1に、本発明の感光体の一例を示す。図1に示す感光体は、導電性支持体上に、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する単層構造の感光層を有する。図1(a)は、感光層が前述の表面層である場合であり、図1(b)は、感光層及び表面層が積層されている場合である。
図2は、本発明の感光体の他の例を示す。図2に示す感光体は、導電性支持体上に、電荷発生機能を有する電荷発生層と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層が積層された積層構造の感光層を有する。図2(a)は、電荷輸送層が前述の表面層である場合であり、図2(b)は、感光層及び表面層が積層されている場合である。
本発明において、導電性支持体は、体積固有抵抗が1010Ω・cm以下であることが好ましい。このような導電性支持体としては、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状又は円筒状のプラスチック又は紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びそれらを押し出し、引き抜き等の工法で素管化した後、切削、超仕上げ、研摩等の表面処理を施した管等を使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他に、上記支持体上に、導電性粉体を結着樹脂に分散させて導電性層を塗工したものも、導電性支持体として用いることができる。導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉、導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体等が挙げられる。また、結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、導電性粉体と結着樹脂を、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエン等の溶剤に分散させて塗布することにより設けることができる。
さらに、円筒状の支持体上に、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)等の素材に導電性粉体を含有する熱収縮チューブを用いて導電性層が設けられたものも、導電性支持体として用いることができる。
本発明において、感光層は、積層構造及び単層構造のいずれであってもよい。感光層が積層構造である場合には、感光層は、電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層から構成される。また、感光層が単層構造である場合には、感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。
感光層が積層構造である場合、電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層であり、必要に応じて、バインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料が挙げられ、二種以上併用してもよい。
無機系材料としては、結晶セレン、アモルファスセレン、セレン−テルル化合物、セレン−テルル−ハロゲン化合物、セレン−ヒ素化合物、アモルファスシリコン等が挙げられる。アモルファスシリコンは、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが用いられる。
有機系材料としては、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン及び多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料等が挙げられる。
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアクリルアミド等が挙げられ、二種以上併用してもよい。また、バインダー樹脂としては、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質も用いることができる。高分子電荷輸送物質としては、アリールアミン骨格、ベンジジン骨格、ヒドラゾン骨格、カルバゾール骨格、スチルベン骨格、ピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料、ポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
前者の高分子電荷輸送物質の具体例は、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載されている。
また、後者の高分子電荷輸送物質の具体例は、特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に、ポリシリレン重合体として、例示される。
また、電荷発生層は、低分子電荷輸送物質を含有することができる。低分子電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質が挙げられる。
電子輸送物質としては、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられ、二種以上併用してもよい。
正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等の電子供与性物質が挙げられ、二種以上併用してもよい。
電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法、溶媒分散系からの塗布法が用いられる。真空薄膜作製法としては、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が挙げられる。また、キャスティング法を用いる場合は、電荷発生物質を、必要に応じて、バインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いて、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散させる。このようにして得られた分散液を適度に希釈して塗布することにより、電荷発生層を形成することができる。なお、分散液には、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布法としては、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法等を用いることができる。
電荷発生層の膜厚は、通常、0.01〜5μmであり、0.05〜2μmが好ましい。
電荷輸送層は、電荷輸送機能を有する層であり、前述の表面層は、電荷輸送層として、用いることができる。電荷輸送層が表面層である場合、前述したように、電荷発生層上にラジカル重合性を有する化合物を含有する塗工液を塗布し、必要に応じて、乾燥した後、外部エネルギーにより硬化させることにより、電荷輸送層(表面層)が形成される。
電荷輸送層(表面層)の膜厚は、通常、10〜30μmであり、10〜25μmが好ましい。膜厚が10μmより薄いと、充分な帯電電位が維持できないことがあり、30μmより厚いと、硬化時の体積収縮により電荷発生層との剥離が生じやすくなることがある。
また、表面層が電荷輸送層上に積層される場合、電荷輸送層は、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質及び結着樹脂を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成される。
電荷輸送物質としては、前述した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。特に、高分子電荷輸送物質を用いると、表面層を塗工する際の電荷輸送層の溶解性を低減させることができるため、有用である。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の添加量は、結着樹脂100重量部に対して、通常、20〜300重量部であり、40〜150重量部が好ましい。ただし、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、結着樹脂を使用しなくてもよいし、結着樹脂を併用してもよい。
電荷輸送層の塗布液に用いられる溶媒としては、電荷発生層と同様のものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂の溶解性が高いものが適している。これらの溶媒は、二種以上併用してもよい。また、電荷輸送層を形成する際には、電荷発生層と同様の塗工法を用いることが可能である。また、塗布液には、必要に応じて、可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等の一般の樹脂の可塑剤を使用することができ、その使用量は、結着樹脂に対して、通常、0〜30重量%である。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーを使用することができ、その使用量は、結着樹脂に対して、通常、0〜1重量%である。
電荷輸送層の膜厚は、通常、5〜40μmであり、10〜30μmが好ましい。
表面層は、前述したように、電荷輸送層上に、ラジカル重合性を有する化合物を含有する塗工液を塗布し、必要に応じて、乾燥した後、外部エネルギーにより硬化させることにより、形成される。
表面層の膜厚は、通常、1〜20μmであり、2〜10μmが好ましい。膜厚が1μmより薄いと、膜厚ムラによって耐久性がばらつくことがあり、20μmより厚いと、電荷輸送層と表面層の総膜厚が厚くなり、電荷の拡散により画像の再現性が低下することがある。
感光層が単層構造である場合、感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層であり、前述の表面層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質をさらに含有することにより、単層構造の感光層として、用いることができる。感光層が表面層である場合、電荷発生物質を、前述と同様の方法で、ラジカル重合性を有する化合物を含有する塗工液と共に分散させる。さらに、得られた分散液を、前述と同様の方法で、導電性支持体上に塗布し、必要に応じて、乾燥した後、外部エネルギーにより硬化させることにより、感光層(表面層)が形成される。なお、電荷発生物質を予め分散させた分散液を、ラジカル重合性を有する化合物を含有する塗工液と混合してもよい。電荷発生物質の添加量は、感光層(表面層)の全量に対して、1〜30重量%であることが好ましい。
感光層(表面層)の膜厚は、通常、10〜30μmであり、10〜25μmが好ましい。膜厚が10μmより薄いと、充分な帯電電位が維持できないことがあり、30μmより厚いと、硬化時の体積収縮により導電性支持体(又は下引き層)との剥離が生じやすくなることがある。
また、表面層が単層構造の感光層上に積層される場合、感光層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質と、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と、結着樹脂を溶媒に溶解又は分散させた塗布液を塗布、乾燥することによって形成される。なお、塗布液には、必要に応じて、可塑剤、レベリング剤等を添加することもできる。電荷発生物質の分散方法、電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は、前述と同様である。結着樹脂としては、電荷輸送層の結着樹脂を用いることができ、電荷発生層のバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、前述の高分子電荷輸送物質も使用可能であり、表面層への感光層組成物の混入を低減できる点で有用である。
電荷発生物質の添加量は、感光層の全量に対して、1〜30重量%であることが好ましく、結着樹脂の添加量は、感光層の全量に対して、20〜80重量%であることが好ましく、電荷輸送物質の添加量は、感光層の全量に対して、10〜70重量%であることが好ましい。
感光層の膜厚は、通常、5〜30μmであり、10〜25μmが好ましい。
表面層は、前述したように、感光層上に、ラジカル重合性を有する化合物を含有する塗工液を塗布し、必要に応じて、乾燥した後、外部エネルギーにより硬化させることにより、形成される。
表面層の膜厚は、通常、1〜20μmであり、2〜10μmが好ましい。膜厚が1μmより薄いと、膜厚ムラによって耐久性のバラツキが生じることがあり、20μmより厚いと、感光層と表面層の総膜厚が厚くなり、電荷の拡散により画像の再現性が低下することがある。
本発明においては、表面層が感光層上に積層される場合、表面層と感光層の間に中間層を設けることができる。中間層は、ラジカル重合性を有する化合物を含有する塗工液を塗布した際に、感光層の組成物が混入することにより生じる硬化反応の阻害や表面層の凹凸を抑制することができる。また、感光層と表面層の接着性を向上させることも可能である。
中間層は、一般に、樹脂を主成分とする。樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中間層は、前述したような一般に用いられる塗工法を用いて形成することができる。なお、中間層の膜厚は、通常、0.05〜2μmである。
本発明においては、導電性支持体と感光層の間に下引き層を設けることができる。下引き層は、一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂は、その上に溶剤を含有する感光層の塗布液を塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対する耐溶剤性が高いことが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられる。また、下引き層は、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を含有してもよい。下引き層は、前述したような溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。さらに、下引き層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することができる。この他、下引き層としては、陽極酸化により形成されたAl2O3、真空薄膜作成法により形成されたポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物も使用することができる。なお、下引き層の膜厚は、通常、0〜5μmである。
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を抑制する目的で、表面層、電荷発生層、電荷輸送層、感光層、中間層、下引き層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3'−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)酪酸]グリコールエステル、トコフェロール類等のフェノール系化合物;N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−s−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン等のパラフェニレンジアミン類;2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;3,3'−チオジプロピオン酸ジラウリル、3,3'−チオジプロピオン酸ジステアリル、3,3'−チオジプロピオン酸ジミリスチル、3,3'−チオジプロピオン酸ジテトラデシル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等の有機硫黄化合物類;トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t―ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4'−ビフェニレンジホスホナイト、ジラウリルホスファイト、ジフェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラキス(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラキス(トリデシル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマー等の有機リン化合物類が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、ゴム、プラスチック、油脂類等の酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。なお、酸化防止剤の添加量は、添加する層の全量に対して、0.01〜10重量%であることが好ましい。
本発明の画像形成方法及び画像形成装置は、本発明の感光体、例えば、平滑で低表面エネルギー性を有する電荷輸送性表面層を有する感光体を用い、少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、被転写体(転写紙)へのトナー像の転写、定着及び感光体の表面のクリーニングというプロセス(又は手段)を有する。なお、静電潜像を直接被転写体に転写し、現像する場合は、感光体への現像、被転写体へのトナー像の転写等のプロセス(又は手段)を有さない。また、帯電及び画像露光(像様露光)の代わりに、選択的帯電(像様帯電)して静電潜像を形成する場合は、画像露光のプロセス(又は手段)を有さない。
図3に、本発明の画像形成装置の一例を示す。感光体1を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ3が用いられる。帯電チャージャ3としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
次に、均一に帯電された感光体1上に、静電潜像を形成するために画像露光部5が用いられる。画像露光部5の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
次に、感光体1上に形成された静電潜像を可視化するために、現像ユニット6が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体1に正(又は負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体1の表面には、正(又は負)の静電潜像が形成される。これを負(又は正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また、正(又は負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、感光体1上で可視化されたトナー像を、レジストローラ8により搬送された被転写体9上に転写するために転写チャージャ10が用いられる。また、転写をより良好に行うために、転写前チャージャ7を用いてもよい。転写方式としては、転写チャージャ10を用いる静電転写方式の他に、バイアスローラを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式には、帯電チャージャ3と同様のものが利用可能である。
次に、被転写体9を感光体1より分離する手段として分離チャージャ11、分離爪12が用いられる。その他の分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ11としては、帯電チャージャ3と同様のものが利用可能である。
次に、転写後、感光体1上に残されたトナーをクリーニングするために、ファーブラシ14、クリーニングブレード15が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行うために、クリーニング前チャージャ13を用いてもよい。その他のクリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等が挙げられるが、複数の方式を併用してもよい。
次に、必要に応じて、感光体1上の静電潜像を取り除くために、除電ランプ2が用いられる。除電ランプ2としては、画像露光部5の光源の光源と同様のものが利用可能である。その他の除電手段としては、除電チャージャが用いられる。除電チャージャとしては、帯電チャージャ3と同様のものが利用可能である。
その他、感光体1に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは、公知のものが使用できる。
本発明の画像形成装置としては、複写装置、ファクシミリ、プリンタが挙げられるが、プロセスカートリッジが画像形成装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
図4に、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す。図4に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、ドラム状の感光体101は、矢印方向に回転しながら、帯電装置102による帯電、露光装置による露光103により、感光体101の表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置104によりトナーで現像され、トナー像は、転写装置106により、被転写体105に転写され、プリントアウトされる。次に、転写後の感光体101の表面は、クリーニングブレード107によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。なお、感光体101は、本発明の感光体である。
以上の説明から明らかなように、本発明の感光体は、電子写真複写機のみならず、レーザービームプリンタ、CRTプリンタ、LEDプリンタ、液晶プリンタ、レーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。