JP5425675B2 - 無段変速機ベルト及び無段変速機ベルト用鋼 - Google Patents

無段変速機ベルト及び無段変速機ベルト用鋼 Download PDF

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Description

本発明は、製造性に優れ、従来鋼よりも大幅なコスト低減が可能な無段変速機ベルト、及びこれを製造するための素材である無段変速機ベルト用鋼に関する。
自動車は環境問題等から低燃費化が強く望まれており、最近の自動車用変速装置には燃費向上に有利なベルト式無段変速機(以下、適宜CVTという。)が多用されている。CVTに使用される動力伝達用ベルトとしては、金属ベルトが採用されている。具体的には、薄い板厚の金属ベルトを複数層重ねて1組のベルトを構成し、そのベルト2組にエレメントと呼ばれる摩擦部材を組み付けて使用される。
上記金属ベルトは、CVTにおけるプーリに直接接触するものではなないが、エレメントと組み付けた状態で回転して動力を伝え、その回転中に張力や繰り返し曲げ応力を受け、さらには組み付けたエレメントとの間で摩擦が生じる。そのため、上記金属ベルトには、強度、耐摩耗性などの様々な特性が要求されることから、現状では、強度、耐摩耗性等に非常に優れた特性を有するマルエージング鋼が金属ベルト用鋼材料として用いられている。
鋼材料の高強度化には合金元素の添加が一般的である。添加する合金元素としては、Ni、Mo、Coなどがあげられる。これらの合金元素は非常に高価な元素であるので、マルエージング鋼のようにこれらの元素を多量に添加して高強度化した鋼材料は非常に高価なものとなる。これを改善して安価にするために、準安定型オーステナイト系ステンレス鋼(特許文献1参照)の適用が検討されている。しかし、準安定型オーステナイト系ステンレス鋼は、高価な元素であるNiを多く含んでおり、価格低減効果が十分ではなく、また、疲労強度を満足することができないために製品化には至っていない。
また、構造用鋼を窒化処理した後に高周波焼き入れ処理を施すことで疲労強度を確保する提案(特許文献2参照)もある。しかし、この場合には、高周波焼き入れ処理により製品の歪みが発生し、金属ベルトの端面の振れ・クラウニングR形状等の悪化により、使用状態においてベルトが蛇行して端面摩耗が発生しやすく、また局部的な負荷応力増により破壊しやすいという欠点があった。また、高周波焼き入れ処理の追加等の生産性低下によって製造コストがアップする問題もあった。
特許第4210999号公報 特開2007−177317号公報
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、高強度で耐摩耗性に優れ、従来よりも低コストで提供可能な無段変速機ベルト及びこれを製造するための無段変速機ベルト用鋼を提供しようとするものである。
第1の発明は、化学成分が、質量%で、C:0.30〜0.40%、Si:0.50%以下、Mn:0.80%以下、Ni:4.00%以下、Cr:1.00〜4.00%、Mo:0.50〜1.50%、V:0.10〜1.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、
窒化処理により形成された表面硬化層を有し、最表面からの深さ0.03mmでの断面の硬度A(HV)と、厚み方向中央の断面の内部硬度B(HV)とが、A≦1.1B、B≧420HVの関係にあることを特徴とする無段変速機ベルトにある(請求項1)。
第2の発明は、上記第1の発明の無段変速機ベルトを製造するための無段変速機ベルト用鋼であって、
化学成分が、質量%で、C:0.30〜0.40%、Si:0.50%以下、Mn:0.80%以下、Ni:4.00%以下、Cr:1.00〜4.00%、Mo:0.50〜1.50%、V:0.10〜1.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなることを特徴とする無段変速機ベルト用鋼にある(請求項3)。
第1の発明の無段変速機ベルト及び第2の発明の無段変速機ベルト用鋼は、上記化学成分を有しており、高価な合金元素であるCoを無添加とし、かつ、Cr、Ni及びMoの添加量を比較的低い量に制限している。これにより、素材コストは従来のマルエージング鋼、準安定型オーステナイト系ステンレス鋼に比べて大幅に低減することができる。
そして、本発明は、CVTベルトの使用に耐えられる疲労強度、耐摩耗性、及び高強度特性を、最適な窒化処理と組み合わせることにより、従来のマルエージング鋼に比べ極端に少ない合金添加量で達成したことを最大の特徴とするものである。
特に、第1の発明の無段変速機ベルトにおいては、上記のごとく、窒化処理により形成された表面硬化層を有し、最表面からの深さ0.03mmでの断面の硬度A(HV)と、厚み方向中央の断面の内部硬度B(HV)とが、A≦1.1B、B≧420HVの関係にある。これにより、必要とする耐摩耗性と高強度の両立を図ることができるのである。
つまり、本発明によれば、高強度で耐摩耗性に優れ、従来よりも低コストで提供可能な無段変速機ベルト及びこれを製造するための無段変速機ベルト用鋼を提供することができる。
実施例における、素材リングに矯正加工を施している状態を示す説明図。 実施例における、(a)製品リングの外観形状を示す説明図、(b)製品リングのクラウニングR形状を示す部分拡大説明図。 実施例における、製品リングの使用状態を示す説明図。 実施例における、製品リングのうねりの試験を行っている状態を示す説明図。
第1の発明及び第2の発明における化学成分は、上記のごとく、質量%で、C:0.30〜0.40%、Si:0.50%以下、Mn:0.80%以下、Ni:4.00%以下、Cr:1.00〜4.00%、Mo:0.50〜1.50%、V:0.10〜1.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる。以下に、各成分範囲の限定理由について説明する。
C:0.30〜0.40%、
Cは、強度及び靱性を確保するために必須の元素である。その効果を得るため、Cの含有量の下限値は0.30%とする。一方、過度にCを含有すると粗大炭化物が生成して延性及び靱性が低下し、冷間加工性が極めて悪くなり、冷間圧延が困難となるだけでなく、Cr,V等の窒化処理時に硬度上昇に寄与する元素が炭化物となって存在する割合が増加し、窒化処理後に希望する表面硬さを得られなくなり疲労特性低下の原因となる。また、接合によりリング製造する工程における溶接性が確保できなくなる。そのため、C含有量の上限値は0.40%とする。
Si:0.50%以下、
Siは、任意元素であって含有させなくてもよいが、溶製時の脱酸剤として有効な元素であるので0.50%以下の範囲で含有させることができる。Si含有量が多すぎると延性が著しく低下し、冷間圧延が困難となるため、その上限値を0.50%とする。
Mn:0.80%以下、
Mnは、任意元素であって含有させなくてもよいが、溶製時の脱酸剤として有効な元素であるので少量含有させることができる。Mn含有量が多すぎると延性が低下し、冷間圧延が難しくなるため、その上限値を0.80%とする。
Ni:4.00%以下、
Niは、任意元素であって含有させなくてもよいが、焼き入れ性向上に有効であり、また、炭化物生成抑制にも有効であり、粒界炭化物の低減による強度、靱性の向上に寄与しうる元素であるので4.00%以下の範囲で含有させることができる。Niを過度に含有しても効果は飽和し、また、高価な元素でありコストアップを招くため、Ni含有量の上限値を4.00%とする。
Cr:1.00〜4.00%、
Crは、焼き入れ性向上に有効であり、また、窒化処理による表面硬化層の硬度向上に有効である。その効果を得るため、Cr含有量の下限値は1.00%とする。一方、Crを過度に含有すると炭化物安定効果により炭化物の成長を助長して強度低下を招くため、Cr含有量の上限値を4.00%とする。
Mo:0.50〜1.50%、
Moは、延性を損なうことなく強度、靱性を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るため、Mo含有量の下限値は0.50%とする。一方、Mo含有量が多くなりすぎてもその効果が飽和してコストアップを招くため、Mo含有量の上限値は1.50%とする。
V:0.10〜1.00%、
Vは、ピン止め効果による結晶粒径の微細化や、焼き戻し軟化抵抗性の向上により強度、靱性を向上させるのに有効な元素である。また、窒化処理による表面硬化層の硬度向上にも有効である。その効果を得るため、V含有量の下限値は0.10%とする。一方、V含有量が多くなりすぎてもその効果が飽和し、また、粗大な炭化物を生成して強度、靱性を低下させるおそれがあるため、V含有量の上限値は1.00%とする。
上記化学成分において、上記各元素以外の残部はFe及び不可避的不純物である。
上記不可避的不純物としては、少なくとも、Sは0.05%以下、Pは0.05%以下、Nは0.02%以下、Oは0.01%以下、Alは0.01%以下、Tiは0.01%以下に制限することが好ましい(請求項4)。以下に、各成分範囲の限定理由について説明する。
Sは0.05%以下、
Sの含有量を0.05%以下に制限できない場合には、鋼中のMnSが増加し、製品強度の低下につながるおそれがある。
Pは0.05%以下、
Pの含有量を0.05%以下に制限できない場合には、粒界に偏析して、粒界強度を低下させ、材料の靱性を低下させるおそれがある。
Nは0.02%以下、
Nの含有量を0.02%以下に制限できない場合には、鋼中に少量存在する可能性があるAl、Tiと結合して生成される窒化物が増加し、疲労強度低下の原因となるおそれがある。
Oは0.01%以下、
Oの含有量を0.01%以下に制限できない場合には、Al23等の酸化物系介在物の大きさが大きくなり、疲労破壊の起点となって疲労強度低下の原因となるおそれがある。
Alは0.01%以下、
Alは脱酸に効果があるため、0.01%以下の範囲で含有させることができ、かつ、その効果を得ることができる。Alを0.01%を超えて含有すると、鋼中に存在するAlの酸化物系介在物及び窒化物系介在物の量が増加し、これが疲労強度低下の原因となるおそれがある。
Tiは0.01%以下、
Tiの含有量を0.01%以下に制限できない場合には、Alと同様にTiの酸化物系介在物及び窒化物系介在物の量が増加し、これが疲労強度低下の原因となるおそれがある。
また、上記無段変速機ベルトは、窒化処理により形成された表面硬化層を有し、最表面からの深さ0.03mmでの断面の硬度A(HV)と、厚み方向中央の断面の内部硬度B(HV)とが、A≦1.1B、B≧420HVの関係にある。
即ち、上記無段変速機ベルトの厚み方向中央部分は窒化処理によって硬化されていない部分であるが、その部位の内部硬度Bは420HV以上である。内部硬度Bが420HV未満の場合には、強度が低くなりすぎて無段変速機ベルトとしての要求特性を満たさないおそれがある。一方、内部硬度Bが高くなると、材料の靱性が低下するため、繰り返し曲げ応力の負荷により発生した亀裂進展を抑制できなくなり、疲労強度を満足できなくなる。そのため、内部硬度Bの上限値は、560HVとすることが好ましい。
また、上記表面硬化層の最表面からの深さ0.03mmでの断面の硬度A(HV)は、上記の厚み方向中央の断面の内部硬度Bの1.1倍以下である。これは、表面硬化層がおよそ最表面からの深さ0.03mm以下の範囲に収まっていることを意味する。このように表面硬化層を非常に薄い範囲に制限することによって、優れた靱性を得ることができる。
また、上記無段変速機ベルトにおいては、さらに、上記表面硬化層の表面の硬度(HV)が650HV以上であることが好ましい(請求項2)。これにより、より一層耐摩耗性を向上させることができる。
(実施例1)
本例は、本発明の実施例にかかる無段変速機ベルト及び無段変速機ベルト用鋼につき、複数の試料を用いてその効果を説明する。
本例では、表1に示すごとく、本発明の実施例としての鋼である試料E1〜試料E13と、本発明の比較例としての鋼である試料C1〜試料C18を準備した。
Figure 0005425675
なお、表1には、不純物として含有するS、P、N、Oについて記載していないが、全ての供試材について好ましい上限値(請求項4)以下の範囲を満足するものであった。また、表1中で「−」と表記されたものは、Alについては脱酸処理のために含有する最低限必要な量(0.005〜0.007%)の含有を意味し、Al以外の元素については未添加を意味する。
各試料の試験材を得るために、まず、表1に示す各化学成分組成を有する鋳塊を30kgVIM溶解炉にて溶解して作製した。次いで、鋳塊を表面研削する皮削り工程を経た後、熱間鍛伸によって厚板に成形し、その後、冷間圧延によって薄板に成形した。次に、管状に成形して溶接した後切断し、肉厚0.42mm×直径φ100mm×幅10mmのリング材を得た。溶接はプラズマ溶接により行った。
次に、このリング材に、さらに、焼鈍熱処理、冷間圧延、焼き入れ・焼き戻しを施して、肉厚0.19mmのリング材とした。
上記焼鈍熱処理は、その前工程での溶接処理による熱影響をなくすと共に、その後の冷間圧延の圧延性を確保するためのものである。焼鈍熱処理条件は、850℃〜1000℃に0.5Hr保持した後空冷し、さらに640℃〜750℃に1Hr保持するという条件とした。
なお、上記850℃〜1000℃の温度範囲内での具体的設定温度は、各試料ごとにそのA3変態点+50℃(この温度が上記範囲の上限を超える場合には上限の1000℃、下限を切る場合には下限の850℃)に定めた。
また、上記640℃〜750℃の温度範囲内での具体的設定温度は、各試料ごとにそのA1変態点−50℃(この温度が上記範囲の上限を超える場合には上限の750℃、下限を切る場合には下限の640℃)に定めた。
また、上記冷間圧延後の焼き入れ・焼き戻しにおける焼き入れ条件は、900℃〜1100℃に1Hr保持した後空冷するという条件とした。上記温度範囲内での具体的設定温度は、各試料ごとにそのA3変態点+100℃(この温度が上記範囲の上限を超える場合には上限の1100℃、下限を切る場合には下限の950℃)に定めた。なお、この設定温度は、平均結晶粒径を30μm以下として未固溶炭化物サイズを1μm以下するためのものである。
焼き戻し条件は、原則として450℃に1時間保持するという条件とした。なお、試料E12、E13については焼き戻し温度を600℃に変更し、試料C16、C17については焼き戻し温度を700℃に変更し、上記試料C18については焼き戻し温度を350℃に変更した(表2備考欄参照)。
次に、上記焼き入れ焼き戻し処理を施したリング材に対して、原則として矯正加工を施した後、窒化処理を施した(以下、矯正加工を施した後の窒化処理前の状態を「素材リング」、窒化処理後の状態を「製品リング」と呼ぶ。そして「製品リング」が無段変速機ベルトとして使用される)。
矯正加工は、前処理である焼き入れ・焼き戻し時に生じた歪みを除去すると共に周長を調整するための加工であって、図1に示すごとく、一対のローラ51、52間に焼き入れ焼き戻し処理直後のリング材12を掛け渡し、ローラ51とローラ52との間を拡げる方向にテンションをかけながら回転させるという方法によって行う。図2に示すごとく、最終的な製品リング11の断面形状が、外方に凸となる曲線形状、いわゆるクラウニングR形状が得られるよう矯正する。但し、試料C14、C15については、この矯正加工を省略し、その効果を比較した。
なお、上記クラウニングR形状は、図3に示すごとく、エレメント8の両側の凹部81に複数の製品リング(無段変速機ベルト)11を重ねて1組のベルトに構成して挿入する場合に、その重なり合った状態を安定させるために設けられる。
窒化処理は、素材リングをNH3とN2の混合ガス雰囲気中において400℃〜450℃の温度に1〜4時間保持する条件で行った。具体的な条件は、処理後に、最表面からの深さ0.03mmでの断面の硬度A(HV)と、厚み方向中央の断面の内部硬度B(HV)とが、A≦1.1Bとなることを目標として調整した。なお、試料C13は、故意に、硬度A(HV)が厚み方向中央の断面の内部硬度B(HV)の1.1倍超え(A>1.1B)となる条件を採用した。
次に、上記工程を経て得られた素材リングと製品リングとを用いて各種特性を評価した。
まず、「素材リング」については、引張強度(MPa)、伸び(%)、溶接性、及び内部硬度(HV)を求めた。
<引張強度、伸び>
これらの特性を求める試験は、図示しない一対のローラに素材リングを掛け渡し、一対のローラを介して素材リングを引っ張って行った。素材リングの引張強度は、1400MPa以上の場合を合格、それ未満の場合を不合格とし、伸びは10%以上の場合を合格、それ未満の場合を不合格とした。
<内部硬度>
素材リングの断面において、厚み方向中央部のビッカース硬さ(HV)を測定した。内部硬度が420HV以上の場合を合格、それ未満の場合を不合格とした。
<溶接性>
溶接性は、溶接直後の溶接部を外観目視検査し、観察者の経験により接合不良の有無を判定した。接合不良がない場合は合格(○)、接合不良があれば不合格(×)とした。
次に、「製品リング」については、うねり、クラウニングR、表面硬度(HV)、最表面からの深さ0.03mmでの断面の硬度(HV)、及び疲労寿命について評価した。
<うねり>
うねりは、図4に示すごとく、一対のローラ61、62間に製品リング11を掛け渡し、ローラ61とローラ62との間を拡げる方向にテンションをかけた状態で製品リング11を回転させ、製品リング11の端部Pにダイヤルゲージを当てて製品の幅方向に変位する変位量を測定して評価した。変位量が0.3mm以下の場合は合格(○)、0.3mmを超える場合は不合格(×)とした。
<クラウニングR>
これは形状測定機を用いて形状を測定し、逆反りがなく、曲率半径Rが500mm以上1200mm以下の場合を合格(○)、この範囲から外れる場合を不合格(×)とした。
<表面硬度>
製品リングの表面からビッカース硬さ(HV)を測定した。表面硬度が650HV以上の場合をより好ましい結果として扱った。
<0.03mm深さの硬度>
製品リングの断面において、最表面からの深さ0.03mmの位置でのビッカース硬さ(HV)を測定した。0.03mm深さの硬度(A)が上述した内部硬度(B)の1.1倍以下(A≦1.1B)の場合を合格(○)、1.1倍を超える場合を不合格(×)とした。
<疲労寿命>
疲労寿命は、複数のローラを有し、そのローラ間で製品リングに定められたテンションをかけることができ、ローラを回転することにより製品リングに繰り返し曲げ応力をかけることのできる専用の疲労試験機を用いた試験方法によって評価を行った。評価は、現行品であるマルエージング鋼よりなるリングを上記の専用の疲労試験機により評価した場合の疲労寿命の平均繰り返し回数を基準回数として行う。試験対象試料の疲労試験の結果、破断するまでの繰り返し曲げ数が、上記基準回数以上の場合を合格で特に優れる(◎)と判定し、上記基準回数のばらつき下限回数(基準回数−4σ)以上基準回数未満の場合を合格(○)と判定し、上記基準回数のばらつき下限回数(基準回数−4σ)未満の回数で破断した場合を不合格(×)とした。
上記の試験結果を表2に示す。
Figure 0005425675
表2から知られるように、本発明の実施例としての試料E1〜E13は、素材リング、製品リング共に優れた特性を発揮した。
一方、比較例としての試料C1は、その化学成分組成からわかるように従来のマルエージング鋼であり、全ての特性は優れているが非常に素材価格が高いという問題がある。
比較例としての試料C2は、C含有量が本発明の範囲の下限を外れているため、引張強度が低い結果となった。
比較例としての試料C3は、C含有量が本発明の範囲の上限を外れているため、伸びが低く、また、溶接性、うねり、クラウニングR、および疲労寿命も悪い結果となった。
比較例としての試料C4は、Cr含有量が本発明の範囲の下限を外れているため、引張強度が低いという結果となった。
比較例としての試料C5は、Cr含有量が本発明の範囲の上限を外れているため、引張強度及び疲労寿命が悪い結果となった。
比較例としての試料C6は、Mo含有量が本発明の範囲の下限を外れているため、疲労寿命が悪い結果となった。
比較例としての試料C7は、V含有量が本発明の範囲の下限を外れているため、引張強度及び表面硬さが低い結果となった。
比較例としての試料C8は、V含有量が本発明の範囲の上限を外れているため、疲労寿命が悪い結果となった。
比較例としての試料C9は、Si含有量が本発明の範囲の上限を外れているため、伸び及び疲労強度が悪い結果となった。
比較例としての試料C10は、Mn含有量が本発明の範囲の上限を外れているため、伸び及び疲労強度が悪い結果となった。
比較例としての試料C11及びC12は、不可避的不純物としてのAl又はTiの含有量が好ましい範囲を超えているため、鋳造組織に酸化物系介在物および窒化物系介在物が存在しやすく、これらが最終製品においても光学顕微鏡にて観察したミクロ組織において、10μm以上の介在物が多く残ってしまう。そのため、伸び及び疲労強度が悪い結果となった。
比較例としての試料C13は、0.03mm深さの硬度(A)が内部硬度(B)の1.0倍超え(A>1.1B)となったことにより、硬化層が厚くなって疲労強度が悪い結果となった。
比較例としての試料C14、C15は、矯正工程を実施しなかったことにより、うねり及びクラウニングRが悪く、そのために負荷応力が不均一に製品リングにかかることになり、疲労寿命も悪い結果となった。
比較例としての試料C16は、焼き戻し温度を700℃に高めて靱性向上を図った例であるが、内部硬度が低下した影響で、引張強度が大きく低下した。
比較例としての試料C17は、試料C16と同様に、焼き戻し温度を700℃に高めた例であるが、C含有率が高いため、焼き戻し後において窒化処理後の硬さ上昇に寄与するCr、Vが炭化物となって存在する割合が増加し、その結果窒化処理後の硬さ上昇に寄与するCr、Vが減少し、表面硬さが低下した。そして、その結果、疲労寿命も悪い結果となった。なお、焼き戻し温度が高いため、引張強度も本発明の実施例に比べて低くなっている。
比較例としての試料C18は、焼き戻し温度を350℃に低くしたことにより靱性が大きく低下し、伸び及び疲労寿命が悪い結果となった。
11 製品リング(無段変速機ベルト)
12 リング材
51、52 (矯正加工用の)ローラ
8 エレメント
61、62 (うねり測定用の)ローラ

Claims (4)

  1. 化学成分が、質量%で、C:0.30〜0.40%、Si:0.50%以下、Mn:0.80%以下、Ni:4.00%以下、Cr:1.00〜4.00%、Mo:0.50〜1.50%、V:0.10〜1.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、
    窒化処理により形成された表面硬化層を有し、最表面からの深さ0.03mmでの断面の硬度A(HV)と、厚み方向中央の断面の内部硬度B(HV)とが、A≦1.1B、B≧420HVの関係にあることを特徴とする無段変速機ベルト。
  2. 請求項1に記載の無段変速機ベルトにおいて、さらに、上記表面硬化層の表面の硬度(HV)が650HV以上であることを特徴とする無段変速機ベルト。
  3. 請求項1又は2に記載の無段変速機ベルトを製造するための無段変速機ベルト用鋼であって、
    化学成分が、質量%で、C:0.30〜0.40%、Si:0.50%以下、Mn:0.80%以下、Ni:4.00%以下、Cr:1.00〜4.00%、Mo:0.50〜1.50%、V:0.10〜1.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなることを特徴とする無段変速機ベルト用鋼。
  4. 請求項3に記載の無段変速機ベルト用鋼において、上記化学成分における上記不可避的不純物としては、少なくとも、Sは0.05%以下、Pは0.05%以下、Nは0.02%以下、Oは0.01%以下、Alは0.01%以下、Tiは0.01%以下に制限することを特徴とする無段変速機ベルト用鋼。
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